説明

撮像装置

【課題】撮像装置の小型化を維持しつつ、撮像素子で発生した熱を効率よく放熱するとともに、メイン回路基板の熱が撮像素子に伝わりにくくする仕組みを提供する。
【解決手段】撮像装置は、排気口及び吸気口が設けられ、吸気口から取り込んだ空気を排気口から装置本体の外部に排気する空気流通路を有する放熱ダクト26を備える。空気流通路は、装置本体1の外部とは連通するが装置本体の内部とは連通しないようになっている。そして、放熱ダクト26は、撮像素子23の受光面の裏面と電子部品が実装されたメイン回路基板27との間に配置され、かつ撮像素子23側の部材26bがメイン回路基板27側の部材26aより熱伝導率の高い部材で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等では、近年の小型化の要請により、撮像素子が実装された回路基板や、制御信号や画像信号を処理する電子部品が実装されたメイン回路基板の配置スペースが小さくなり、これらの基板が密集状態で配置されている。
【0003】
一方、高画質化に伴い、撮像素子の消費電力が大きくなり、発熱量も増大している。撮像素子は、一般的に高温になるほど性能が低下するため、撮像素子で発生した熱を放散する必要がある。また、メイン回路基板に実装された電子部品で発生した熱が撮像素子に伝わり、撮像素子の温度を上昇させてしまうことを抑制する必要がある。
【0004】
そこで、装置内部に、外筺の一面に開口され、外筺の内部に連通しない放熱用の空気流通路を備える撮像装置が提案されている(特許文献1)。この提案では、撮像素子が配置された第一の空間と、電子部品の回路基板が配置された第二の空間とを空気流通路を挟むように配設し、空気流通路の第一の空間側を第二の空間側より熱伝導性の低い材料によって形成している。
【0005】
また、レンズマウントのレンズが装着される側と反対側に配置された撮像素子と、撮像素子を制御する回路基板と、コントローラを含むメイン回路基板と、撮像素子とメイン回路基板との間に配置される放熱板とを備える撮像装置が提案されている(特許文献2)。この提案では、放熱板に、メイン回路基板と反対側に延びる熱伝導部が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4264583号公報
【特許文献2】特開2010−93797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、メイン回路基板に実装された電子部品で発生した熱が撮像素子に伝わり難くすることはできるが、撮像素子自体で発生した熱を放散することについては開示されていない。従って、撮像素子が高温になり、性能が劣化してしまう可能性がある。
【0008】
上記特許文献2では、撮像素子とメイン回路基板との間に配置した放熱板によって、撮像素子で発生した熱をレンズマウント側に放散しているため、レンズマウントの周辺部が高温になり、レンズマウントを構成する部材が熱膨張を起こす場合がある。この場合、レンズマウントと撮像素子との間の距離が変動し、レンズの合焦位置がずれてしまうおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献2では、撮像素子と放熱板とは隙間を介して対向配置されているだけで、撮像素子の熱を有効に放散できないばかりか、メイン回路基板が高温になった場合、メイン回路基板の熱が撮像素子に伝わり、撮像素子の温度を上げてしまうおそれもある。
【0010】
そこで、本発明は、撮像装置の小型化を維持しつつ、撮像素子で発生した熱を効率よく放散するとともに、メイン回路基板の熱が撮像素子に伝わりにくくする仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、装置本体と、排気口及び吸気口が設けられ、前記吸気口から取り込んだ空気を前記排気口から前記装置本体の外部に排気する、前記装置本体の内部とは連通しない空気流通路を有する放熱ダクトと、前記装置本体の内部に配置される撮像素子と、前記装置本体の内部に配置され、電子部品が実装されたメイン回路基板とを備え、前記放熱ダクトは、前記撮像素子の受光面の裏面と前記メイン回路基板との間に配置され、かつ前記撮像素子の側の部材が前記メイン回路基板の側の部材より熱伝導率の高い部材で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像装置の小型化を維持しつつ、撮像素子で発生した熱を効率よく放熱することができるとともに、メイン回路基板の熱が撮像素子に伝わりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の撮像装置の実施形態の一例であるレンズ交換式のデジタルビデオカメラを前方から見た斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルビデオカメラを後方から見た斜視図である。
【図3】カメラ本体の要部の分解斜視図である。
【図4】図3の矢印A方向から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の撮像装置の実施形態の一例であるレンズ交換式のデジタルビデオカメラを前方から見た斜視図、図2は図1に示すデジタルビデオカメラを後方から見た斜視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態のデジタルビデオカメラは、カメラ本体1の前方に不図示のレンズユニットを着脱するためのマウント部2が配置され、マウント部2には、レンズユニットとのデータ通信用の電気的接点3が設けられている。マウント部2側から見てカメラ本体1の左側方には、撮影時にカメラ本体1を把持するためのグリップ4が取り付けられ、グリップ4には、トリガーボタン5が設けられている。ここで、カメラ本体1は、本発明の装置本体の一例に相当する。
【0017】
カメラ本体1の底面カバー34には、三脚取り付け部材35(図3参照)が設けられ、カメラ本体1の上面部には、アクセサリシュー12が設けられている。また、カメラ本体1の後方には、ファインダ6、バッテリカバー7、外部機器と接続するための入出力端子部8、及び記録メディア装着部9が設けられている。
【0018】
そして、カメラ本体1の外装カバー10のグリップ4側の側面に、後述する放熱ダクト26(図3参照)に外気を取り込む貫通穴11b,11cが設けられている。また、カメラ本体1の外装カバー10のグリップ4とは逆の側面の下方にも、放熱ダクト26に外気を取り込む吸気口としての貫通穴11aが設けられている。
【0019】
図3はカメラ本体1の要部の分解斜視図、図4は図3の矢印A方向から見た分解斜視図である。
【0020】
カメラ本体1には、前方から順に、マウントリング20、マウントバネ21、マウント保持部材22、撮像素子23、撮像素子回路基板24、撮像素子保持部材25、放熱ダクト26、及びメイン回路基板27が配置されている。
【0021】
マウントリング20は、マウントバネ21を挟んでマウント保持部材22にビス等により保持される。また、撮像素子23の外周部で、且つ、撮像素子23の受光面23aの裏面には、撮像素子23の出力接点23bが配置され、出力接点23bは、撮像素子回路基板24に半田付け等により実装される。撮像素子回路基板24には、撮像素子23の出力接点23b部分より内側に角穴24aが形成されている。
【0022】
撮像素子保持部材25は、撮像素子回路基板24の後方に配置され、撮像素子回路基板24の角穴24aより小さい角状の凸部25aを備える。そして、撮像素子保持部材25は、撮像素子23が凸部25aに接着された状態でワッシャ28を介してマウント保持部材22にビス等により保持される。
【0023】
ここで、撮像素子保持部材25の凸部25aの突出量は、撮像素子回路基板24の厚みより十分に大きい。また、撮像素子保持部材25の凸部25aの中央部には、角穴25bが形成されており、撮像素子23の受光面23aの裏面が角穴25bから露出するようになっている。
【0024】
そして、弾性部材29に巻き付けられたカーボングラファイトシート30が、角穴25bから露出した撮像素子23の受光面23aの裏面、及び放熱ダクト26にそれぞれ密着するように配置される。
【0025】
このように配置された撮像素子23の受光面23aには、マウント部2に装着されたレンズユニットからの被写体像が結像される。そして、撮像素子23の受光面23aに結像した被写体像は、撮像素子23で画像データに変換された後、撮像素子回路基板24を介してメイン回路基板27に出力され、画像処理が施される。
【0026】
このとき、撮像素子23の受光面23aとマウントリング20との距離が所定の寸法からずれると、レンズの合焦位置がずれ、正確な画像データが得られなくなる。このため、撮像素子保持部材25とマウント保持部材22との間のワッシャ28の厚みを換えることにより、撮像素子23の受光面23aとマウントリング20との距離を正確に調整する必要がある。
【0027】
この調整のために撮像素子23の位置がばらつき、撮像素子23と放熱ダクト26との隙間が変動するが、弾性部材29に巻き付けられたカーボングラファイトシート30が撮像素子23と放熱ダクト26との間に介装されている。このため、弾性部材29が光軸方向に弾性変形して、撮像素子23の裏面と放熱ダクト26との両方に熱伝導率の高いカーボングラファイトシート30が安定して密着し、撮像素子23の熱を効率良く放熱ダクト26に伝えることができる。ここで、カーボングラファイトシート30は、本発明の第1の熱伝導性部材の一例に相当する。
【0028】
従って、撮像素子23の熱は、カメラ本体1の後方に放散されることになるため、マウント保持部材22の温度が撮像素子23の熱によって上昇するのを抑制することができる。このため、マウント保持部材22が熱膨張を起こして、マウントリング20と撮像素子23の受光面23aとの間の距離が変わり、レンズの合焦位置がずれてしまうのを回避することができる。
【0029】
放熱ダクト26は、前方に開口する凹状カバー26aと、板状プレート26bとで構成される。凹状カバー26aは、樹脂材料などの熱伝導率の低い部材で形成されてメイン回路基板27側に配置され、板状プレート26bは、アルミニウムなどの熱伝導率の高い部材で形成されて撮像素子23側に配置される。
【0030】
凹状カバー26aには、カメラ本体1の外装カバー10のグリップ4側の側面に設けられた貫通穴11b,11c、及びグリップ4と逆の外装カバー10の側面の下方に設けられた貫通穴11aにそれぞれ対応する吸気口26d,26e,26cが設けられる。凹状カバー26aの吸気口26d,26e,26cは、外装カバー10の貫通穴11b,11c,11aの形成部分の内面に密着するようになっている。
【0031】
また、凹状カバー26aには、撮像素子23の真上方向の位置に排気口26fが形成され、排気口26fに設けられたファン31によって、排気口26fから排気された空気を上部カバー32の開口穴32aからカメラ本体1の外部に排気可能とされている。
【0032】
そして、凹状カバー26aの前方の開口を塞ぐように板状プレート26bがビス等により凹状カバー26aに固定される。これにより、凹状カバー26aと板状プレート26bとの間に、カメラ本体1の外部とは連通するがカメラ本体1の内部とは連通しない空気流通路が形成される。
【0033】
ここで、上述したように、撮像素子23の熱は、カーボングラファイトシート30を介して放熱ダクト26の板状プレート26bに伝えられる。一方、外装カバー10に形成された貫通穴11b,11c,11aから取り込まれた外気が放熱ダクト26内の空気流通路を通り、ファン31により排気口26fから上部カバー32の開口穴32aを介して強制排気される。
【0034】
従って、カーボングラファイトシート30を介して放熱ダクト26の板状プレート26bに伝えられた撮像素子23の熱は、放熱ダクト26内の空気流通路を通って排気口26f及び開口穴32aを介して強制排気される空気とともに外気に放熱されることになる。
【0035】
また、メイン回路基板27側に配置された放熱ダクト26の凹状カバー26aを熱伝導率の低い部材で形成しているので、メイン回路基板27の熱を、放熱ダクト26内を流れる空気に放散し難くなる。従って、撮像素子23にメイン回路基板27の熱が伝わり難くなり、撮像素子23から効率良く放熱可能となる。
【0036】
また、放熱ダクト26の吸気口26cは、メイン回路基板27の実装部品の無い位置27a、すなわち高温になる電子部品を避けた位置の前方に配置される。このため、吸気口26cから放熱ダクト26に取り込まれる空気がメイン回路基板27の熱によって暖められるのを防止することができ、より効率良く撮像素子23を放熱可能である。
【0037】
メイン回路基板27に実装された電子部品27bには、略短冊状のグラファイトシート33の一端が張り付け等により接続され、グラファイトシート33の他端は、熱伝導率の高い金属製等の底面カバー34に設けられた凸部34aに張り付け等により接続される。ここで、グラファイトシート33は、本発明の第2の熱伝導性部材の一例に相当する。
【0038】
底面カバー34には、三脚取り付け部材35が取り付けられるため、カメラ本体1を三脚に取り付けた際にカメラ本体1がぐらついては操作性に劣るため、十分に剛性を上げる必要がある。従って、底面カバー34は、構造上、剛性を上げるためにも金属製であることが望ましい。
【0039】
ここで、グラファイトシート33は、面方向に熱を伝達し易いが、厚み方向には熱を伝達し難い特性を有する。従って、メイン回路基板27に実装された電子部品27bで発生した熱は、グラファイトシート33を介して金属製の底面カバー34に効率良く伝わるが、放熱ダクト26側には伝わり難い。このため、放熱ダクト26の凹状カバー26aの温度上昇を抑制することができ、撮像素子23の熱を効率良く放散することが可能となる。
【0040】
また、カメラ本体1を三脚に取り付け場合、底面カバー34から三脚取り付け部材35を介して三脚にも放熱できるため、メイン回路基板27に実装された電子部品27bの熱を更に効率良く放散することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、デジタルビデオカメラの小型化を維持しつつ、撮像素子23で発生した熱を効率よく放散することができるとともに、メイン回路基板27の熱を撮像素子23に伝わりにくくすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、放熱ダクト26の排気口26fを撮像素子23の真上方向に設けると共に、吸気口26cをメイン回路基板27の高温になる実装部品を避けた位置に配置している。これにより、低温の空気を吸気し、放熱ダクト26内で暖まった高温の空気を上方へ移動させることが可能となり、冷却効率を向上させることができる。
【0043】
更に、本実施形態では、メイン回路基板27に実装された高温になる電子部品27bとカメラ本体1の底面カバー34とを熱伝導率の高いグラファイトシート33等の部材で接続している。これにより、メイン回路基板27の熱をカメラ本体1の底面カバー34に効率よく放散することができる。
【0044】
なお、本発明の構成は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 カメラ本体
23 撮像素子
24 撮像素子回路基板
25 撮像素子保持部材
26 放熱ダクト
27 メイン回路基板
30 カーボングラファイトシート
33 グラファイトシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
排気口及び吸気口が設けられ、前記吸気口から取り込んだ空気を前記排気口から前記装置本体の外部に排気する、前記装置本体の内部とは連通しない空気流通路を有する放熱ダクトと、
前記装置本体の内部に配置される撮像素子と、
前記装置本体の内部に配置され、電子部品が実装されたメイン回路基板とを備え、
前記放熱ダクトは、前記撮像素子の受光面の裏面と前記メイン回路基板との間に配置され、かつ前記撮像素子の側の部材が前記メイン回路基板の側の部材より熱伝導率の高い部材で形成されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子の受光面の裏面と前記放熱ダクトとの間に、光軸方向に弾性変形が可能な第1の熱伝導性部材を、前記撮像素子及び前記放熱ダクトの両方に密着するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記吸気口は、前記メイン回路基板に実装された前記電子部品を避けた位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記メイン回路基板に実装された前記電子部品と前記装置本体の底面カバーとが、第2の熱伝導性部材で接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−93697(P2013−93697A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233807(P2011−233807)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】