説明

撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法

【課題】ゴーストやフレアをより低減させ、良好な光学性能を有する撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供する。
【解決手段】撮影レンズSLは、物体側より順に、正屈折力の第1レンズ群GFと、正屈折力の第2レンズ群GRとを有し、第1レンズ群及び第2レンズ群は、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、第1レンズ群と第2レンズ群との移動量が異なるように移動し、第2レンズ群は、正屈折力の第1レンズL21と負屈折力の第2レンズL22とが貼り合わされた接合レンズG7を有し、所定の条件式を満足し、第1レンズ群および第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む反射防止膜が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラやビデオカメラ等で、Fナンバーが比較的明るく、光学性能が容易に得られるレンズタイプとして、いわゆるガウス型レンズがあり、現在も多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。また近年、このような撮影レンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−072359号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の撮影レンズは十分に高い光学性能を有しているとは言えなかった。それと同時に、このような撮影レンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという課題もあった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ゴーストやフレアをより低減させ、良好な光学性能を有する撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、を有し、第1レンズ群及び第2レンズ群は、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、第1レンズ群の移動量と第2レンズ群の移動量とが異なるように移動し、第2レンズ群は、正の屈折力を有する第1レンズと負の屈折力を有する第2レンズとが貼り合わされた接合レンズを有し、以下の条件式を満足することを特徴とし、第1レンズ群および第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とする撮影レンズを提供する。
14 < GRν1−GRν2 < 30
1.50 < yR1/yF1 < 2.80
但し、
GRν1:第1レンズの媒質のd線に対するアッベ数
GRν2:第2レンズの媒質のd線に対するアッベ数
yF1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第1レンズ群の光軸上の移動量
yR1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第2レンズ群の光軸上の移動量
【0007】
また、本発明は、前記撮影レンズを有することを特徴とする光学機器を提供する。
【0008】
また、本発明は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、第1レンズ群及び第2レンズ群を、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、第1レンズ群の移動量と第2レンズ群の移動量とが異なるように移動するように配置し、第2レンズ群は、正の屈折力を有する第1レンズと負の屈折力を有する第2レンズとが貼り合わされた接合レンズを有し、以下の条件式を満足するように配置し、第1レンズ群および第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とする撮影レンズの製造方法を提供する。
14 < GRν1−GRν2 < 30
1.50 < yR1/yF1 < 2.80
但し、
GRν1:第1レンズの媒質のd線に対するアッベ数
GRν2:第2レンズの媒質のd線に対するアッベ数
yF1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第1レンズ群の光軸上の移動量
yR1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第2レンズ群の光軸上の移動量
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴーストやフレアをより低減させ、良好な光学性能を有する撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図2】第1実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図3】第1実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図であって、入射した光線が第1番目の反射光発生面と第2番目の反射光発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【図4】第2実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図5】第2実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図6】第3実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図7】第3実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図8】第4実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図9】第4実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図10】第5実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図11】第5実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図12】第6実施例に係る撮影レンズのレンズ構成を示す断面図である。
【図13】第6実施例に係る撮影レンズの諸収差図であって、(a)は無限遠合焦状態を示し、(b)は撮影倍率−0.01倍に合焦したときの中間撮影距離合焦状態を示し、(c)は撮影倍率−0.07倍に合焦したときの近距離合焦状態を示す。
【図14】撮影レンズを搭載する一眼レフカメラの断面図を示す。
【図15】撮影レンズの製造方法を説明するためのフロ−チャ−トである。
【図16】反射防止膜の層構造の一例を示す説明図である。
【図17】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図18】変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図19】変形例に係る反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【図20】従来技術で作成した反射防止膜の、分光特性を示すグラフである。
【図21】従来技術で作成した反射防止膜の、分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る撮影レンズSLは、光軸に沿って、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群GFと、正の屈折力を有する第2レンズ群GRと、を有し、第2レンズ群GRは、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ(両凸形状の正レンズL21)と負の屈折力を有する第2レンズ(負メニスカスレンズL22)とが貼り合わされた接合レンズG7を有して構成されている。このような構成とすることにより、本実施形態に係る撮影レンズSLは、有効径が25mmから30mm程度の大口径レンズとすることができる。また、最も像側のレンズに、第1レンズ及び第2レンズを張り合わせた接合レンズG7を配置することで、像側に配置されたレンズでも色消し効果があり、全体として色収差が補正できる。特に、合焦時の色収差の変動を少なくすることができる。また、この接合レンズG7は、第2レンズ群G2の最も物体側から順に、第1レンズと第2レンズとが配置されていることが好ましい。また、この2枚の第1及び第2レンズを、このような接合レンズG7とすることにより、この接合レンズG7での迷光の発生を防ぎ、当該撮影レンズSLにおいて光線を良好に通すことができる。
【0012】
このような撮影レンズSLの具体的な実施の形態としては、図1に示すように、第1レンズ群GFは、正の屈折力を有するレンズ成分G1(物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11)、正の屈折力を有するレンズ成分G2(物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12)、正の屈折力を有するレンズ成分G3(物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13)、負の屈折力を有するレンズ成分G4(物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14)、負の屈折力を有するレンズ(両凹形状の負レンズL15)と正の屈折力を有するレンズ(両凸形状の正レンズL16)とを貼り合わせた接合レンズG5、及び、正の屈折力を有するレンズ成分G6(物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17)から構成されており、また、第2レンズ群GRは、上述の接合レンズG7から構成されており、全体として、7群9枚のレンズで構成されていることが望ましい。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GFの負レンズ成分G4と接合レンズG5との間に配置されている。
【0013】
このように、本実施形態に係る撮影レンズSLは、いわゆるガウスタイプのレンズを変形したものである。ガウスタイプでは、絞りの前後にてレンズが略対称の形状をしているため、その対称性により、歪曲収差などの補正が容易である。
【0014】
それでは、このような撮影レンズSLを構成するための条件について説明する。まず、本実施形態に係る撮影レンズSLは、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、第1レンズ群GFの移動量と第2レンズ群GRの移動量とが異なるように移動するように構成されている。合焦に際し、第1及び第2レンズ群GF、GRをこのように移動させると、収差の発生を抑え良好な光学性能を得ることができる。
【0015】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
【0016】
14 < GRν1−GRν2 < 30 (1)
但し、
GRν1:第1レンズL21の媒質のd線に対するアッベ数
GRν2:第2レンズL22の媒質のd線に対するアッベ数
【0017】
条件式(1)は、第2レンズ群GR中の正の屈折力を有する第1レンズL21と負の屈折力を有する第2レンズL22との分散を規定するための条件式である。この条件式(1)を満足することによって、良好な色収差補正が可能である。この条件式(1)の下限値を下回ると、色収差補正が困難になり、球面収差も補正不足となってしまい良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を15にすることが好ましい。また、この条件式(1)の上限値を上回ると、色収差補正が不足してしまい良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の上限値を20にすることが好ましい。
【0018】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0019】
1.50 < yR1/yF1 < 2.80 (2)
但し、
yF1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第1レンズ群GFの光軸上の移動量
yR1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第2レンズ群GRの光軸上の移動量
【0020】
条件式(2)は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRの中間撮影距離時の合焦における移動比率の適切な範囲を規定するための条件式である。条件式(2)の下限値を下回ると、第2レンズ群GR単体で発生する倍率色収差が悪化してしまうため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の下限値を1.60にすることが好ましい。また、条件式(2)の上限値を上回ると、コマ収差及び像面湾曲が補正過剰になってしまうため好ましくない。なお本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を2.50にすることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、第1レンズ群および第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、本実施形態に係る撮影レンズSLは、物体からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアをさらに低減することができ、高い結像性能を達成することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、反射防止膜は多層膜であり、ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0023】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、屈折率ndが1.30以下であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0024】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、開口絞りを有し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおける光学面のうち反射防止膜が設けられた光学面は、開口絞りから見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおける光学面のうち開口絞りから見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このようにすれば、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおいて反射防止膜が設けられた、開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることが好ましい。第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおける光学面のうち開口絞りから見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0026】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおいて反射防止膜が設けられた、開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることが好ましい。第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRにおける光学面のうち開口絞りから見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、第2レンズ群GRにおける光学面のうち反射防止膜が設けられた光学面は、像面側から見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、第2レンズ群GRにおける光学面のうち像面側から見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、第2レンズ群GRにおける光学面のうち反射防止膜が設けられた、像面側から見て凹形状のレンズ面は、第2レンズ群GRの最も物体側のレンズの、物体側レンズ面であることが好ましい。第2レンズ群GRにおける光学面のうち像面側から見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0029】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成しても良い。この際、反射防止膜は屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。反射防止膜が、屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこの時、屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0031】
1.78 < (GRn1+GRn2)/2 < 2.00 (3)
但し、
GRn1:第1レンズL21の媒質のd線に対する屈折率
GRn2:第2レンズL22の媒質のd線に対する屈折率
【0032】
条件式(3)は、第2レンズ群GR中の接合レンズG7を構成する正の屈折力を有する第1レンズL21の媒質の屈折率と、負の屈折力を有する第2レンズL22の媒質の屈折率とを規定するための条件式である。条件式(3)を満足することによって、ペッツバ−ル和の増大を防ぐことができる。この条件式(3)の下限値を下回ると、球面収差が過剰補正されてしまい良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を1.80にすることが好ましい。また、この条件式(3)の上限値を上回ると、ペッツバール和が増大してしまい良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の上限値を1.85にすることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLにおいて、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRは、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、移動する区間の少なくとも一部において、互いの移動量の変化率が異なるように移動することが好ましい。このように構成することにより、無限遠から近距離物体までの撮影距離全域において球面収差と像面湾曲を良好に補正することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLでは、第1レンズ群GF内に開口絞りSを有することが好ましい。このように構成することにより、合焦の際に、コマ収差を良好に補正することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLにおいて、第1レンズ群GFは、最も物体側に配置された正の屈折力を有する第1レンズ成分G1(正メニスカスレンズL11)と、正の屈折力を有する第2レンズ成分G2(正メニスカスレンズL12)と、を有し、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0036】
58.0 < (GFν1+GFν2)/2 < 65.0 (4)
但し、
GFν1:第1レンズ成分G1の媒質のd線に対するアッベ数
GFν2:第2レンズ成分G2の媒質のd線に対するアッベ数
【0037】
条件式(4)は、第1レンズ群GF中の正の屈折力を有する第1レンズ成分G1と正の屈折力を有する第2レンズ成分G2との分散を規定するための条件式である。条件式(4)を満足することによって、色収差を良好に補正することができる。特に、コマ収差を良好に補正できる。この条件式(4)の下限値を下回ると、倍率色収差補正が不足してしまい良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の下限値を60.0にすることが好ましい。また、この条件式(4)の上限値を上回ると、倍率色収差補正が過剰となり良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の上限値を62.5にすることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0039】
1.49 < (GFn1+GFn2)/2 < 1.80 (5)
但し、
GFn1:第1レンズ成分G1の媒質のd線に対する屈折率
GFn2:第2レンズ成分G2の媒質のd線に対する屈折率
【0040】
条件式(5)は、第1レンズ群GF中の正の屈折力を有する第1レンズ成分G1の媒質の屈折率と正の屈折力を有する第2レンズ成分G2の媒質の屈折率とを規定するための条件式である。条件式(5)を満足することによって、コマ収差及び倍率色収差を良好に補正することができる。この条件式(5)の下限値を下回ると、コマ収差及び倍率色収差が補正不足となり良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の下限値を1.59にすることが好ましい。また、この条件式(5)の上限値を上回ると、コマ収差及び倍率色収差が補正過剰となり良好な性能を維持することが困難なため好ましくない。なお、本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の上限値を1.72にすることが好ましい。
【0041】
図14に、上述の撮影レンズSLを備える光学機器として、一眼レフカメラ1(以後、単にカメラと記す)の略断面図を示す。このカメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2(撮影レンズSL)で集光されて、クイックリタ−ンミラ−3を介して焦点板4に結像される。そして、焦点板4に結像された光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へと導かれる。これにより、撮影者は、物体(被写体)像を、接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
【0042】
また、撮影者によって不図示のレリ−ズボタンが押されると、クイックリタ−ンミラ−3が光路外へ退避し、撮影レンズ2で集光された不図示の物体(被写体)の光は撮像素子7上に被写体像を形成する。これにより、物体(被写体)からの光は、当該撮像素子7により撮像され、物体(被写体)画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による物体(被写体)の撮影を行うことができる。なお、図14に記載のカメラ1は、撮影レンズSLを着脱可能に保持するものでも良く、撮影レンズSLと一体に成形されるものでも良い。また、カメラ1は、いわゆる一眼レフカメラでも良く、クイックリタ−ンミラ−等を有さないコンパクトカメラ若しくはミラ−レスカメラでも良い。
【0043】
なお、以上の説明において、「レンズ成分」とは、1枚の単レンズ(レンズ要素)、若しくは、2枚以上の単レンズ(レンズ要素)を接合した接合レンズを指すものとする。
【0044】
また、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0045】
本実施形態では、2群または3群構成の撮影レンズSLを示したが、以上の構成条件等は、4群、5群等の他の群構成にも適用可能である。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。また、レンズ群とは、変倍時若しくは合焦時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0046】
また、単独または複数のレンズ群、または部分レンズ群を光軸方向に移動させて、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う合焦レンズ群としても良い。この場合、前記合焦レンズ群はオートフォーカスにも適用でき、オートフォーカス用の(超音波モーター等を用いた)モーター駆動にも適している。
【0047】
また、レンズ群または部分レンズ群を光軸に垂直な方向の成分を持つように移動させ、または、光軸を含む面内方向に回転移動(揺動)させて、手ぶれによって生じる像ぶれを補正する防振レンズ群としても良い。特に、第1レンズ群GFのレンズ成分G5(レンズL15,L16)及びレンズ成分G6の少なくとも一枚を防振レンズ群とするのが好ましい。
【0048】
また、レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を妨げるので好ましい。また、光軸方向に像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモ−ルド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としても良く、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしても良い。
【0049】
また、開口絞りは第1レンズ群GF内に配置されるのが好ましいが、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用しても良い。
【0050】
さらに、各レンズ面には、フレアやゴ−ストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施しても良い。
【0051】
また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、35mmフィルムサイズ換算での焦点距離が、60mmから150mm程度、好ましくは80mmから90mm程度である。また、本実施形態に係る撮影レンズSLは、例えば、最も像側に配置される負の屈折力を有する第2レンズL22の像側面から像面Iまでの光軸上の距離(バックフォーカス)が最も小さい状態で10mmから30mm程度とするのが望ましい。
【0052】
以下、本実施形態に係る撮影レンズSLの製造方法の概略を、図15を参照して説明する。まず、第1レンズ群および第2レンズ群の各レンズを配置して各レンズ群をそれぞれ準備する(ステップS100)。そして、第1レンズ群および第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように形成されている。具体的に、本実施形態では、例えば、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14、両凹形状の負レンズL15と両凸形状の正レンズL16とを接合した接合レンズ、及び、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17を配置して第1レンズ群GFとし、物体側から順に、両凸形状の正レンズL21と両凹形状の負レンズL22とを接合した接合レンズを配置して第2レンズ群GRとする。また、開口絞りSを、第1レンズ群GFの負レンズ成分G4と接合レンズG5との間に配置し、フィルター群FLを第2レンズ群と像面Iとの間に配置する。このようにして準備した各レンズ群を配置して撮影レンズSLを製造する。
【0053】
この際、第1レンズ群GF及び前記第2レンズ群GRを、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、第1レンズ群GFの移動量と第2レンズ群GRの移動量とが異なるように移動するように配置する(ステップS200)。また、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが上述の条件式(1)及び条件式(2)を満足するように配置する(ステップS300)。
【実施例】
【0054】
以下に、本実施形態に係る撮影レンズSLの各実施例を図面に基づいて説明する。なお、図1、図4、図6、図8、図10及び図12は、各実施例に係る撮影レンズSL(SL1からSL6)の構成及び屈折力配分並びに無限遠合焦状態から近距離合焦状態への合焦状態の変化における各レンズ群の移動の様子を示す断面図である。これらの図に示すように、本実施例に係る撮影レンズSL(例えば、SL1からSL4)は、いずれも上述のように、光軸に沿って、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群GFと、正の屈折力を有する第2レンズ群GRと、を有する。また、第1レンズ群GFは、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ成分(第1レンズ成分)G1、正の屈折力を有するレンズ成分(第2レンズ成分)G2、正の屈折力を有するレンズ成分G3、負の屈折力を有するレンズ成分G4、開口絞りS、負の屈折力を有するレンズL15と正の屈折力を有するレンズL16とを貼り合わせた接合レンズG5、及び、正の屈折力を有するレンズ成分G7から構成される。また、第2レンズ群GRは、正の屈折力を有する第1レンズL21と負の屈折力を有する第2レンズL22とを貼り合わせた接合レンズG7から構成される。なお、開口絞りSは、負レンズ成分G4と接合レンズG5との間に配置される。また、第2レンズ群GRと像面Iとの間に、フィルター群FLが配置されている。ここで、フィルター群FLは、ロ−パスフィルターや赤外カットフィルター等から構成されている。そして、無限遠合焦状態から近距離合焦状態への変化(すなわちフォ−カシング)に際して、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRは、像面Iに対して光軸上を移動し、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの間隔が変化する。像面Iは、撮像素子(例えば、フィルム、CCD、CMOS等)に結像される。
【0055】
[第1実施例]
図1は、第1実施例に係る撮影レンズSL1のレンズ構成を示す断面図である。この図1の撮影レンズSL1において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第2レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、両凹形状の負レンズL15と両凸形状の正レンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と両凹形状の負レンズ(第2レンズ)L22とを張り合わせて構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0056】
また、このような構成に係る撮影レンズSL1において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。
【0057】
本第1実施例に係る撮影レンズSL1は、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL17の物体側レンズ面(面番号13)と、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の物体側レンズ面(面番号15)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0058】
以下の表1に、本第1実施例に係る撮影レンズSL1の諸元の値を掲げる。この表1の全体諸元において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角[°]、Yは像高、TLは全長を表している。なお、これらの値は無限遠合焦時のものである。また、全長TLは、撮影レンズSL1の最も物体側のレンズ面(第1面)から像面Iまでの光軸上の距離である。また、レンズデ−タにおいて、第1欄mは、光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序(面番号)を、第2欄rは、各光学面の曲率半径を、第3欄dは、各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)を、第4欄nd及び第5欄νdは、それぞれd線(λ=587.6nm)に対する屈折率及びアッベ数を示している。なお、この表1に示す面番号1〜23は、図1に示す番号1〜23に対応している。また、物面および像面の曲率半径「∞」、曲率半径0.0000は平面を示す。また、空気の屈折率1.000000は省略してある。また、最も像側の面(第23面)の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。また、レンズ群焦点距離は、各レンズ群が開始する面番号(始面)および各レンズ群の焦点距離をそれぞれ示している。ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0059】
(表1)第1実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.24
2ω = 25.87
Y = 8.19
TL = 58.02
空気換算全長=59.21

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 37.5685 4.8000 1.696800 55.52
2 411.9694 0.2000
3 30.0000 4.6000 1.593190 67.90
4 44.0000 0.1000
5 21.0000 5.0000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.0000
7 61.7324 1.4000 1.728250 28.38
8 11.9180 4.8000
9 0.0000 4.4000 開口絞りS
10 -11.4439 1.4000 1.688930 31.16
11 889.1944 4.0000 1.902650 35.73
12 -18.9486 0.1000
13 -267.0096 3.0000 1.772500 49.62
14 -28.4461 (d14)
15 43.4744 4.8000 1.883000 40.66
16 -21.7824 1.4000 1.805180 25.45
17 245.1702 (d17)
18 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
19 0.0000 1.1100
20 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
21 0.0000 0.3000
22 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
23 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 51.17
第2レンズ群 15 48.44
【0060】
また、上述したように、この第1実施例に係る撮影レンズSL1において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRとフィルター群FLとの軸上空気間隔d17、及び、バックフォーカスBfが変化する。次の表2に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表2において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第2レンズ群GRの最も像側のレンズ面(第17面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0061】
(表2)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.55 3.30
d17 10.80 11.03 12.42
Bf 15.70 15.93 17.32
【0062】
次の表3に、この第1実施例における各条件式対応値を示す。なおこの表3において、GFn1は第1レンズ成分G1の媒質のd線に対する屈折率、GFn2は第2レンズ成分G2の媒質のd線に対する屈折率、GFν1は第1レンズ成分G1の媒質のd線に対するアッベ数、GFν2は第2レンズ成分G2の媒質のd線に対するアッベ数、yF1は無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第1レンズ群GFの光軸上の移動量を、yR1は無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの第2レンズ群GRの光軸上の移動量を、GRn1は第1レンズL21の媒質のd線に対する屈折率、GRn2は第2レンズL22の媒質のd線に対する屈折率、GRν1は第1レンズL21の媒質のd線に対するアッベ数、GRν2は第2レンズL22の媒質のd線に対するアッベ数をそれぞれ表している。これらの符号の説明は以降の実施例においても同様である。
【0063】
(表3)
GFn1=1.69680
GFn2=1.59319
GFν1=55.52
GFν2=67.90
yF1=-0.46
yR1=-0.23
GRn1=1.88300
GRn2=1.80518
GRν1=40.66
GRν2=25.45
(1)GRν1−GRν2=15.21
(2)yR1/yF1=2.00
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.84
(4)(GFν1+GFν2)/2=61.71
(5)(GFn1+GFn2)/2=1.65
【0064】
このように、第1実施例に係る撮影レンズSL1は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0065】
図2に、この第1実施例に係る撮影レンズSL1の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。各収差図において、FNOはFナンバーを、Aは光線入射角[°]を、NAは開口数を、H0は物体高を、それぞれ示している。また、各収差図において、dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)に対する収差を表しており、記載のないものはd線に対する収差を表している。また、非点収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリジオナル像面を示している。また、コマ収差図は、各入射角A又は物体高H0において、実線はd線及びg線に対するメリジオナルコマ収差を表し、原点より右側の破線はd線に対するサジタルコマ収差を表している。なお、この収差図の説明は以降の実施例においても同様である。
【0066】
この図2に示す各収差図から明らかなように、この第1実施例に係る撮影レンズSL1では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0067】
図3において、物体側からの光線BMが図示のように撮影レンズSL1に入射すると、両凸形状の正レンズL21における物体側のレンズ面(第1番目の反射光発生面でありその面番号は15)で反射し、その反射光は正メニスカスレンズL17における物体側のレンズ面(第2番目の反射光発生面でありその面番号は13)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストやフレアを発生させてしまう。なお、第1番目の反射光発生面15は、像面側から見て凹形状のレンズ面、第2番目の反射光発生面13は開口絞りから見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0068】
[第2実施例]
図4は、第2実施例に係る撮影レンズSL2のレンズ構成を示す断面図である。この図4の撮影レンズSL2において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第2レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、負メニスカスレンズL15と正メニスカスレンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と負メニスカスレンズ(第2レンズ)L22とを張り合わせて構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0069】
また、このような構成に係る撮影レンズSL2において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。
【0070】
本第2実施例に係る撮影レンズSL2は、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL17の像面側レンズ面(面番号14)と、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の物体側レンズ面(面番号15)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0071】
以下の表4に、本第2実施例に係る撮影レンズSL2の諸元の値を掲げる。なお、この表4に示す面番号1〜23は、図4に示す番号1〜23に対応している。また、第23面の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。
【0072】
(表4)第2実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.24
2ω = 25.87
Y = 8.50
TL = 58.64
空気換算全長=60.08

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 33.3687 5.0000 1.741000 52.77
2 187.2256 0.2000
3 35.3251 4.2000 1.593190 67.90
4 55.3641 0.1000
5 21.0000 5.2000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.2000
7 61.1242 1.4000 1.728250 28.38
8 11.3597 5.4000
9 0.0000 4.6000 開口絞りS
10 -10.5025 1.4000 1.698950 30.13
11 -67.5115 3.4000 1.883000 40.66
12 -17.8894 0.1000
13 -50.2106 2.9000 1.755000 52.34
14 -20.0233 (d14)
15 35.9724 5.4000 1.883000 40.66
16 -25.5094 1.4000 1.784720 25.64
17 -1109.8746 (d17)
18 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
19 0.0000 1.1100
20 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
21 0.0000 0.3000
22 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
23 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 65.12
第2レンズ群 15 34.76
【0073】
また、上述したように、この第2実施例に係る撮影レンズSL2において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRとフィルター群FLとの軸上空気間隔d17、及び、バックフォーカスBfが変化する。次の表5に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表4において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第2レンズ群GRの最も像側のレンズ面(第17面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0074】
(表5)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.50 3.24
d17 10.52 10.79 12.43
Bf 15.42 15.69 17.33
【0075】
次の表6に、この第2実施例における各条件式対応値を示す。
【0076】
(表6)
GFn1=1.74100
GFn2=1.59319
GFν1=52.77
GFν2=67.90
yF1=-0.46
yR1=-0.28
GRn1=1.88300
GRn2=1.78472
GRν1=40.66
GRν2=25.64
(1)GRν1−GRν2=15.02
(2)yR1/yF1=1.67
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.83
(4)(GFν1+GFν2)/2=60.34
(5)(GFn1+GFn2)/2=1.67
【0077】
このように、第2実施例に係る撮影レンズSL2は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0078】
図5に、この第2実施例に係る撮影レンズSL2の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この図5に示す各収差図から明らかなように、この第2実施例に係る撮影レンズSL2では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0079】
[第3実施例]
図6は、第3実施例に係る撮影レンズSL3のレンズ構成を示す断面図である。この図6の撮影レンズSL3において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第2レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、負メニスカスレンズL15と正メニスカスレンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と両凹形状の負レンズ(第2レンズ)L22とを張り合わせて構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0080】
また、このような構成に係る撮影レンズSL3において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。
【0081】
本第3実施例に係る撮影レンズSL3は、第1レンズ群GFの負メニスカスレンズL14の像面側レンズ面(面番号8)と、負メニスカスレンズL15の物体側レンズ面(面番号10)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0082】
以下の表7に、本第3実施例に係る撮影レンズSL3の諸元の値を掲げる。なお、この表7に示す面番号1〜23は、図6に示す番号1〜23に対応している。また、第23面の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。
【0083】
(表7)第3実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.23
2ω = 26.02
Y = 8.50
TL = 58.84
空気換算全長=60.19

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 36.5161 5.0000 1.696800 55.52
2 276.0257 0.2000
3 29.4465 4.2000 1.593190 67.90
4 44.6384 0.1000
5 21.0000 5.2000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.2000
7 48.7652 1.4000 1.728250 28.38
8 11.1893 5.2000
9 0.0000 5.0000 開口絞りS
10 -10.3948 1.4000 1.698950 30.13
11 -30.7156 3.4000 1.883000 40.66
12 -17.1583 0.1000
13 -47.6459 2.9000 1.755000 52.34
14 -19.1703 (d14)
15 33.6552 5.4000 1.883000 40.66
16 -23.6890 1.4000 1.784720 25.64
17 299.3305 (d17)
18 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
19 0.0000 1.1100
20 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
21 0.0000 0.3000
22 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
23 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 63.96
第2レンズ群 15 36.09
【0084】
また、上述したように、この第3実施例に係る撮影レンズSL3において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRとフィルター群FLとの軸上空気間隔d17、及び、バックフォーカスBfが変化する。次の表8に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表8において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第2レンズ群GRの最も像側のレンズ面(第17面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0085】
(表8)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.57 3.14
d17 10.52 10.77 12.34
Bf 15.42 15.67 17.24
【0086】
次の表9に、この第3実施例における各条件式対応値を示す。
【0087】
(表9)
GFn1=1.69680
GFn2=1.59319
GFν1=55.52
GFν2=67.90
yF1=−0.51
yR1=−0.26
GRn1=1.88300
GRn2=1.78472
GRν1=40.66
GRν2=25.64
(1)GRν1−GRν2)=15.02
(2)yR1/yF1=1.99
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.83
(4)(GFν1+GFν2)/2=61.71
(5)(GFn1+GFn2)/2 =1.64
【0088】
このように、第3実施例に係る撮影レンズSL3は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0089】
図7に、この第3実施例に係る撮影レンズSL3の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この図7に示す各収差図から明らかなように、この第3実施例に係る撮影レンズSL3では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0090】
[第4実施例]
図8は、第4実施例に係る撮影レンズSL4のレンズ構成を示す断面図である。この図8の撮影レンズSL4において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第2レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、負メニスカスレンズL15と正メニスカスレンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と両凹形状の負レンズ(第2レンズ)L22とを張り合わせて構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0091】
また、このような構成に係る撮影レンズSL4において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。
【0092】
本第4実施例に係る撮影レンズSL4は、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL13の物体側レンズ面(面番号5)と、負メニスカスレンズL15の物体側レンズ面(面番号10)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0093】
以下の表10に、本第4実施例に係る撮影レンズSL4の諸元の値を掲げる。なお、この表10に示す面番号1〜23は、図8に示す番号1〜23に対応している。また、第23面の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。
【0094】
(表10)第4実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.24
2ω = 25.87
Y = 8.50
TL = 58.33
空気換算全長=59.45

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 30.6584 5.0000 1.696800 55.52
2 188.4206 0.2000
3 47.2236 4.2000 1.593190 67.90
4 111.1195 0.1000
5 21.0000 5.0000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.2000
7 137.0774 1.4000 1.717360 29.57
8 12.0035 5.1000
9 0.0000 4.8000 開口絞りS
10 -11.2423 1.4000 1.672700 32.19
11 -171.9181 3.4000 1.883000 40.66
12 -18.5997 0.1000
13 -76.6435 3.0000 1.772500 49.62
14 -24.0738 (d14)
15 37.5074 5.3000 1.883000 40.66
16 -23.2407 1.4000 1.784720 25.64
17 483.1470 (d17)
18 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
19 0.0000 1.1100
20 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
21 0.0000 0.3000
22 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
23 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 59.71
第2レンズ群 15 38.45
【0095】
また、上述したように、この第4実施例に係る撮影レンズSL4において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRとフィルター群FLとの軸上空気間隔d17、及び、バックフォーカスBfが変化する。次の表11に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表8において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第2レンズ群GRの最も像側のレンズ面(第17面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0096】
(表11)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.61 2.89
d17 10.52 10.75 12.44
Bf 15.42 15.35 17.34
【0097】
次の表12に、この第4実施例における各条件式対応値を示す。
【0098】
(表12)
GFn1=1.69680
GFn2=1.59319
GFν1=55.52
GFν2=67.90
yF1=-0.53
yR1=-0.24
GRn1=1.88300
GRn2=1.78472
GRν1=40.66
GRν2=25.64
(1)GRν1−GRν2=15.02
(2)yR1/yF1=2.50
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.83
(4)(GFν1+GFν2)/2=61.71
(5)(GFn1+GFn2)/2=1.65
【0099】
このように、第4実施例に係る撮影レンズSL4は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0100】
図9に、この第4実施例に係る撮影レンズSL4の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この図9に示す各収差図から明らかなように、この第4実施例に係る撮影レンズSL4では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0101】
[第5実施例]
図10は、第5実施例に係る撮影レンズSL5のレンズ構成を示す断面図である。この図10の撮影レンズSL5において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第1レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、負メニスカスレンズL15と正メニスカスレンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と両凹形状の負レンズ(第2レンズ)L22と両凸形状の正レンズ(第3レンズ)L23とを張り合わせて構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0102】
また、このような構成に係る撮影レンズSL5において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。
【0103】
本第5実施例に係る撮影レンズSL5は、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の物体側レンズ面(面番号15)と、両凸形状の正レンズL23の像面側レンズ面(面番号18)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0104】
以下の表13に、本第5実施例に係る撮影レンズSL5の諸元の値を掲げる。なお、この表13に示す面番号1〜24は、図10に示す番号1〜24に対応している。また、第24面の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。
【0105】
(表13)第5実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.24
2ω = 28.88
Y = 8.19
TL = 61.44
空気換算全長=62.94

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 35.2230 5.0000 1.696800 55.52
2 2329.3924 0.2000
3 38.0458 4.2000 1.593190 67.90
4 50.0837 0.1000
5 21.0000 5.0000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.2000
7 105.3654 1.4000 1.717360 29.57
8 12.3545 5.1000
9 0.0000 4.8000 開口絞りS)
10 -11.5166 1.4000 1.672700 32.19
11 -88.9746 3.4000 1.902650 35.73
12 -19.2301 0.1000
13 -43.6774 3.0000 1.741000 52.77
14 -21.6579 (d14)
15 39.5177 4.4000 1.883000 40.66
16 -31.6025 1.4000 1.761820 26.58
17 38.3587 4.0000 1.772500 49.62
18 -159.4859 (d18)
19 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
20 0.0000 1.1100
21 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
22 0.0000 0.3000
23 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
24 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 74.83
第2レンズ群 15 32.85
【0106】
また、上述したように、この第5実施例に係る撮影レンズSL5において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRとフィルター群FLとの軸上空気間隔d18、及び、バックフォーカスBfが変化する。次の表14に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表14において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第2レンズ群GRの最も像側のレンズ面(第18面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0107】
(表14)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.51 3.17
d18 10.52 10.80 12.87
Bf 15.42 15.70 17.77
【0108】
次の表15に、この第5実施例における各条件式対応値を示す。なお、第2レンズ群GRに配置された接合レンズG7において、第1レンズは両凸形状の正レンズL21が相当し、第2レンズは両凹形状の負レンズL22が相当する。
【0109】
(表15)
GFn1=1.69680
GFn2=1.59319
GFν1=55.52
GFν2=67.90
yF1=-0.48
yR1=-0.29
GRn1=1.88300
GRn2=1.76182
GRν1=40.66
GRν2=26.58
(1)GRν1−GRν2=14.08
(2)yF1/yR1=1.65
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.82
(4)(GFν1+GFν2)/2=61.71
(5)(GFn1+GFn2)/2=1.64
【0110】
このように、第5実施例に係る撮影レンズSL5は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0111】
図11に、この第5実施例に係る撮影レンズSL5の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この図11に示す各収差図から明らかなように、この第5実施例に係る撮影レンズSL5では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0112】
[第6実施例]
図12は、第6実施例に係る撮影レンズSL6のレンズ構成を示す断面図である。この図12の撮影レンズSL6は、上述の第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを有し、さらに、第2レンズ群GRの像側にレンズ成分G8からなる第3レンズ群GSを有して構成されている。この撮影レンズSL6において、レンズ成分(第1レンズ成分)G1は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11で構成され、レンズ成分(第2レンズ成分)G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12で構成され、レンズ成分G3は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13で構成され、レンズ成分G4は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14で構成され、接合レンズG5は、両凹形状の負レンズL15と両凸形状の正レンズL16とを張り合わせて構成され、レンズ成分G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17で構成され、接合レンズG7は、両凸形状の正レンズ(第1レンズ)L21と物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズ(第2レンズ)L22とを張り合わせて構成され、レンズ成分G8は物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL31で構成される。また、フィルター群FLは、3枚の平板状のフィルターで構成される。
【0113】
また、このような構成に係る撮影レンズSL6において、無限遠から近距離物体への合焦は、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRを別々に物体側に繰出すことにより行われる。なお、開口絞りSは、第1レンズ群GF内(上述のように、レンズ成分G4と接合レンズG5との間)に配置され、無限遠から近距離物体への合焦に際して第1レンズ群GFと一体に移動する。また、第3レンズ群GSは、合焦に際しに、光軸方向に固定されている。
【0114】
本第6実施例に係る撮影レンズSL6は、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL12の物体側レンズ面(面番号3)と、正メニスカスレンズL12の像面側レンズ面(面番号4)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0115】
以下の表16に、本第6実施例に係る撮影レンズSL6の諸元の値を掲げる。なお、この表16に示す面番号1〜25は、図12に示す番号1〜25に対応している。また、第25面の面間隔は、像面Iまでの光軸上の距離である。
【0116】
(表13)第6実施例
[全体諸元]
f = 32.0
FNo= 1.24
2ω = 28.85
Y = 8.19
TL = 59.84
空気換算全長=61.35

[レンズデ−タ]
m r d nd νd
物面 ∞ ∞
1 28.0439 5.0000 1.696800 55.52
2 162.3070 0.2000
3 52.1325 4.2000 1.593190 67.90
4 112.4201 0.1000
5 21.0000 5.0000 1.816000 46.59
6 29.5000 1.2000
7 151.8454 1.4000 1.717360 29.57
8 11.6217 5.1000
9 0.0000 4.8000 開口絞りS
10 -11.0935 1.4000 1.672700 32.19
11 530.1295 3.4000 1.902650 35.73
12 -19.7010 0.1000
13 -774.3486 3.0000 1.804000 46.60
14 -27.6600 (d14)
15 80.1743 5.3000 1.755000 52.34
16 -20.6545 1.4000 1.805180 25.45
17 -62.8846 (d17)
18 34.2721 4.0000 1.883000 40.66
19 35.2568 7.3207
20 0.0000 0.5000 1.516800 63.88
21 0.0000 1.1100
22 0.0000 1.5900 1.516800 63.88
23 0.0000 0.3000
24 0.0000 0.7000 1.516800 63.88
25 0.0000 0.7000
像面 ∞

[レンズ群焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 52.80
第2レンズ群 15 51.48
第3レンズ群 18 478.39
【0117】
また、上述したように、この第6実施例に係る撮影レンズSL6において、無限遠物体から近距離物体への合焦に際し、第1レンズ群GF及び第2レンズ群GRが光軸上を移動するため、第1レンズ群GFと第2レンズ群GRとの軸上空気間隔d14、第2レンズ群GRと第3レンズ群G3との軸上空気間隔d17が変化する。次の表17に、無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態、及び、近距離合焦状態における可変間隔を示す。なお、この表17において、中間撮影距離は撮影倍率−0.01倍の撮影距離であり、近距離は撮影倍率−0.07倍の撮影距離である。また、バックフォーカスBfは第3レンズ群G3の最も像側のレンズ面(第19面)から像面Iまでの光軸上の距離を表している。
【0118】
(表17)
無限遠 中間撮影距離 近距離
d14 1.32 1.52 3.19
d17 0.70 0.99 3.08
Bf 12.22 12.22 12.22
【0119】
次の表18に、この第6実施例における各条件式対応値を示す。
【0120】
(表18)
GFn1=1.69680
GFn2=1.59319
GFν1=55.22
GFν2=67.90
yF1=-0.49
yR1=-0.29
GRn1=1.75500
GRn2=1.80518
GRν1=52.34
GRν2=25.45
(1)GRν1−GRν2=26.89
(2)yF1/yR1=1.69
(3)(GRn1+GRn2)/2=1.78
(4)(GFν1+GFν2)/2=61.56
(5)(GFn1+GFn2)/2=1.64
【0121】
このように、第6実施例に係る撮影レンズSL6は、上記条件式(1)〜(5)を全て満足している。
【0122】
図13に、この第6実施例に係る撮影レンズSL6の無限遠合焦状態、中間撮影距離合焦状態及び近距離合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差、及び、コマ収差の諸収差図を示す。この図13に示す各収差図から明らかなように、この第6実施例に係る撮影レンズSL6では、各合焦状態において諸収差が良好に補正されており、高い光学性能を有していることが分かる。
【0123】
ここで、本願の撮影レンズSLに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図16は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0124】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0125】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(a)に示す。
【0126】
2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH (a)
【0127】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0128】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について図17に示す分光特性を用いて説明する。
【0129】
本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表19に示す条件で形成されている。ここで表19は、基準波長をλとし、基板の屈折率(光学部材)が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表19では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0130】
(表19)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0131】
図17は、表19において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0132】
図17から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表19において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図17に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0133】
次に、本反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表19と同様、以下の表20で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0134】
(表20)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0135】
図18は、表20において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図18から本変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表20において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図18に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0136】
図19は、図18に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図18、図19には表20に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0137】
また比較のため、図20に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図20は、表20と同じ基板の屈折率1.52に以下の表21で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図21は、図20に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0138】
(表21)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52

【0139】
図17〜図19で示される本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図20および図21で示される従来例の分光特性と比較すると、本反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかもより広い帯域を有することが良くわかる。
【0140】
次に、本願の第1実施例から第6実施例に、上記表19および表20に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0141】
本第1実施例の撮影レンズSL1において、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL17の屈折率は、表1に示すように、nd=1.772500であり、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の屈折率は、nd=1.883000であるため、正メニスカスレンズL17における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、両凸形状の正レンズL21における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0142】
本第2実施例の撮影レンズSL2において、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL17の屈折率は、表4に示すように、nd=1.755000であり、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の屈折率は、nd=1.883000であるため、正メニスカスレンズL17における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、両凸形状の正レンズL21における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0143】
本第3実施例の撮影レンズSL3において、第1レンズ群GFの負メニスカスレンズL14の屈折率は、表7に示すように、nd=1.728250であり、第1レンズ群GFの負メニスカスレンズL15の屈折率は、nd=1.698950であるため、負メニスカスレンズL14における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、負メニスカスレンズL15における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0144】
本第4実施例の撮影レンズSL4において、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL13の屈折率は、表10に示すように、nd=1.816000であり、第1レンズ群GFの負メニスカスレンズL15の屈折率は、nd=1.672700であるため、正メニスカスレンズL13における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、負メニスカスレンズL15における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0145】
本第5実施例の撮影レンズSL5において、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL21の屈折率は、表13に示すように、nd=1.883000であり、第2レンズ群GRの両凸形状の正レンズL23の屈折率は、nd=1.772500であるため、両凸形状の正レンズL21における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、両凸形状の正レンズL23における像面側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0146】
本第6実施例の撮影レンズSL6において、第1レンズ群GFの正メニスカスレンズL12の屈折率は、表16に示すように、nd=1.593190であるため、正メニスカスレンズL12における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜101(表19参照)を用い、正メニスカスレンズL12における像面側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜(表19参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0147】
以上の各実施例によれば、Fナンバーが1.2程度であり、画面全体の諸収差、特に色収差を良好に補正することができ、ゴーストやフレアをより低減させ、画面全体にわたり高い光学性能を有した撮影レンズSLを得ることができる。
【0148】
なお、以上の各実施例に示す光学系SL1〜SL6を、上述したカメラ1に搭載することにより、上述した効果を奏することは言うまでもない。また、上記各実施例は本発明の一具体例を示しているものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
本発明によれば、ゴーストやフレアをより低減させ、良好な光学性能を有する撮影レンズ、この撮影レンズを有する光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0150】
SL(SL1〜SL6) 撮影レンズ
GF 第1レンズ群
GR 第2レンズ群
G1 第1レンズ成分
G2 第2レンズ成分
G7 接合レンズ
L21 第1レンズ
L22 第2レンズ
S 開口絞り
1 一眼レフカメラ(光学機器)
I 像面
101 反射防止膜
101a 第1層
101b 第2層
101c 第3層
101d 第4層
101e 第5層
101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、を有し、
前記第1レンズ群及び前記第2レンズ群は、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、前記第1レンズ群の移動量と前記第2レンズ群の移動量とが異なるように移動し、
前記第2レンズ群は、正の屈折力を有する第1レンズと負の屈折力を有する第2レンズとが貼り合わされた接合レンズを有し、
以下の条件式を満足し、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とする撮影レンズ。
14 < GRν1−GRν2 < 30
1.50 < yR1/yF1 < 2.80
但し、
GRν1:前記第1レンズの媒質のd線に対するアッベ数
GRν2:前記第2レンズの媒質のd線に対するアッベ数
yF1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの前記第1レンズ群の光軸上の移動量
yR1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの前記第2レンズ群の光軸上の移動量
【請求項2】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記ウェットプロセスで形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1に記載の撮影レンズ。
【請求項3】
前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、ndは1.30以下であることを特徴とする請求項1から2に記載の撮影レンズ。
【請求項4】
開口絞りを有し、
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、前記開口絞りから見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項5】
前記開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズの物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項6】
前記開口絞りから見て凹形状のレンズ面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズの像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項7】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、像面側から見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項8】
前記反射防止膜が設けられた前記凹形状のレンズ面は、前記第2レンズ群の最も物体側のレンズの物体側レンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の撮影レンズ。
【請求項9】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
1.78 < (GRn1+GRn2)/2 < 2.00
但し、
GRn1:前記第1レンズの媒質のd線に対する屈折率
GRn2:前記第2レンズの媒質のd線に対する屈折率
【請求項10】
前記第1レンズ群及び前記第2レンズ群は、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、移動する区間の少なくとも一部において、互いの移動量の変化率が異なるように移動することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項11】
前記第1レンズ群内に開口絞りを有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項12】
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置された正の屈折力を有する第1レンズ成分と、正の屈折力を有する第2レンズ成分と、を有し、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
58 < (GFν1+GFν2)/2 < 65
但し、
GFν1:前記第1レンズ成分の媒質のd線に対するアッベ数
GFν2:前記第2レンズ成分の媒質のd線に対するアッベ数
【請求項13】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項12に記載の撮影レンズ。
1.49 < (GFn1+GFn2)/2 < 1.80
但し、
GFn1:前記第1レンズ成分の媒質のd線に対する屈折率
GFn2:前記第2レンズ成分の媒質のd線に対する屈折率
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の撮影レンズを有することを特徴とする光学機器。
【請求項15】
物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、
前記第1レンズ群及び前記第2レンズ群を、無限遠から近距離物体へ合焦する際に、光軸に沿って移動するとともに、移動する区間の少なくとも一部において、前記第1レンズ群の移動量と前記第2レンズ群の移動量とが異なるように移動するように配置し、
前記第2レンズ群は、正の屈折力を有する第1レンズと負の屈折力を有する第2レンズとが貼り合わされた接合レンズを有し、以下の条件式を満足するように配置し、
前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されていることを特徴とする撮影レンズの製造方法。
14 < GRν1−GRν2 < 30
1.50 < yR1/yF1 < 2.80
但し、
GRν1:前記第1レンズの媒質のd線に対するアッベ数
GRν2:前記第2レンズの媒質のd線に対するアッベ数
yF1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの前記第1レンズ群の光軸上の移動量
yR1:無限遠から撮影倍率−0.01倍に合焦するときの前記第2レンズ群の光軸上の移動量

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−109025(P2013−109025A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251615(P2011−251615)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】