説明

撮影用ハンディクレーン

【課題】人手により持ち運びでき、被写体の正面側から俯瞰側までの移動のサポートができ、電源がなくても動作する撮影用ハンディクレーンの提供。
【解決手段】撮影用ハンディクレーン1は、本体部3に支持脚2を取付けて設置されると共に、撮影カメラCmを支持して予め設定された軌道上を移動して撮影可能であって、駆動機構10と、第1支持アーム20と、第2支持アーム30と、を備え、駆動機構は、第1歯車4と、第2歯車5と、伝達手段6と、第1歯車と供回りする第1接続シャフト7と、第2歯車と供回りする第2接続シャフト8と、を備え、第1支持アームは、第1接続シャフトに直交して固定される第1アーム部21と、この第1アーム部に設けたカメラ支持部25を有し、第2支持アームは、第1接続シャフトの他方に直交して第1アーム部と異なる角度で設けた第2アーム部26と、この第2アーム部の一端側に設けたウエイト支持部27を有する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影カメラを支持して被写体の正面撮影から俯瞰撮影までを連続的に行なう撮影用ハンディクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、撮影カメラを支持して被写体を撮影する場合において、その被写体の正面から俯瞰までを取るためには、室内のスタジオに設置される大型のクレーン装置で行われている場合が多く見受けられる。
このクレーン装置は、撮影カメラを支持するアームがモータなどの動力により作動して撮影カメラの位置を自在に配置することができるものである。また、クレーン装置は、カメラマンごとクレーンに載せて撮影するような大型のものである。
前記した構成のクレーン装置は、据え置きタイプとしての構成であるため、スタジオ外等、短時間で設置位置を自在に移動して使用するようには想定されていないものである。
【0003】
また、小型のカメラを支持して移動させることができる雲台装置についても知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
例えば、雲台装置は、チルト台座を所定角度において回転させる歯車の側面に小さな突起となるピンを所定間隔で設け、このピンの間に板バネを配置する構成としている。そして、歯車が回転して角度が大きくなると板バネがその回転に対して反対方向にピンを付勢する力を大きくしてバックラッシュを防ぐように構成されている(特許文献1)。
【0004】
また、その他の例として、移動カメラ装置が提案されている。この移動カメラ装置は、カメラを外部から遮蔽する遮蔽管を配置し、カメラを遮蔽管内で移動させるものである。そして、移動カメラ装置は、遮蔽管内を移動する構成として、カメラを無端ベルトに保持して、その無端ベルトの両側に配置した駆動プーリ及び従動プーリにより、無端ベルトを移動させることで、カメラの位置を左右あるいは上下に移動する構成としている。さらに、移動カメラ装置は、無端ベルトの所定位置においてガイドローラを設けて無端ベルトの張力をガイドしている。また、移動カメラ装置は、無端ベルトの間に予圧ローラ及び背面ローラを設け、無端ベルトの間に配置した予圧ローラに無端ベルトの外側からその予圧ローラに無端ベルトを押し付ける背面ベルトがあることで、無端ベルトの張力を高める構成としている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−33151号公報
【特許文献2】特開2001−78058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のカメラを移動させる装置では、以下に示すような問題点が存在した。
特許文献1の装置では、ハンディであり撮影場所が移動しても対応することはできるが、例えば、小さな昆虫が葉の表面から裏側に移動するときの様子を連続して撮影するような場合に、カメラの移動を垂直方向にすることができず、被写体の移動に伴う連続的な移動に対応できなかった。
【0007】
また、特許文献2の装置では、遮蔽管内をカメラが移動する構成としているため、テレビ映像で使用するようなカメラマンの操作を行うことができず、そのような操作として例えば、被写体に近接あるいは離間させるサポートを行うことができなかった。
さらに、実際の撮影現場では屋外等の電源が確保できない環境での使用についても要求があり、特許文献1,2では、電源が確保できない場所での駆動対応ができなかった。
【0008】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、ハンディで作業者等人手により持ち運びでき、垂直方向の移動となる被写体の正面側から俯瞰側までの移動のサポートができ、かつ、電源がなくても動作することができる撮影用ハンディクレーンを提供することを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮影用ハンディクレーンは、前記した課題を解決するために、以下のような構成とした。すなわち、撮影用ハンディクレーンは、支持脚に取付けられて設置されると共に、撮影カメラを支持して予め設定された軌道上を移動して撮影可能な撮影用ハンディクレーンであって、前記支持脚に取付けられる本体部と、この本体部内に設けた駆動機構と、この駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の一側方に突出して前記撮影カメラを支持する第1支持アームと、前記駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の他側方に突出して、前記撮影カメラの重量に対応するカウンタウエイトを支持する第2支持アームと、を備えている。さらに、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記駆動機構は、第1歯車と、第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に亘って設けられる当該歯車の伝達手段と、前記第1歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第1接続シャフトと、前記第2歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第2接続シャフトと、を備え、前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、当該接続シャフトに直交する方向に固定される第1アーム部と、この第1アーム部の一端側に設けられ前記撮影カメラを着脱自在に支持するカメラ支持部とを有し、前記第2支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、前記第1アーム部の固定した方向と異なる方向になるように固定される第2アーム部と、この第2アーム部の一端側に前記カウンタウエイトを着脱自在に支持するウエイト支持部を有する構成とした。
【0010】
かかる構成により、撮影用ハンディクレーンは、第1支持アームのカメラ支持部に撮影カメラを支持し、第2支持アームのウエイト支持部に支持する撮影カメラに対応する重さのカウンタウエイトを支持する。そして、撮影用ハンディクレーンは、操作者(カメラマン)が撮影カメラを操作しながら撮影カメラを押し引きすると、その押し引きした力により第1支持アームの第1アームから第1接続シャフト(第2接続シャフト)を回転させ、第1歯車を回転させることで、伝達手段を介して第2歯車を回転させ、第1支持アームの回転する軌道において撮影カメラを移動させることができる。なお、撮影用ハンディクレーンは、第1アームが第1接続シャフト又は第2接続シャフトに固定されている場合には、操作者は、撮影カメラを常に保持することが必要になるが、第1アームを第1接続シャフト及び第2接続シャフトの両方に設けた場合には、操作者が撮影カメラを放しても、カウンタウエイトとバランスをとりその状態で静止して配置することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る撮影用ハンディクレーンは、支持脚に支持されて設定されると共に、撮影カメラを載置して予め設定された軌道上を移動して撮影可能な撮影用ハンディクレーンであって、前記撮影カメラを支持する前記支持脚に支持される本体部と、この本体部内に設けた駆動機構と、この駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の一側方に突出して前記撮影カメラを支持する第1支持アームと、前記駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の他側方に突出して、前記撮影カメラの重量に対応するカウンタウエイトを支持する第2支持アームと、前記駆動機構に沿って設けた押圧機構と、を備えている。さらに、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記駆動機構は、第1歯車と、第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に亘って設けられる無端ベルトと、前記第1歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第1接続シャフトと、前記第2歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第2接続シャフトと、を備え、前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、当該接続シャフトに直交する方向に固定される第1アーム部と、この第1アーム部の一端側に設けられ前記撮影カメラを着脱自在に支持するカメラ支持部とを有し、前記第2支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、前記第1アーム部の固定した方向と異なる方向になるように固定される第2アーム部と、この第2アーム部の一端側に前記カウンタウエイトを着脱自在に支持するウエイト支持部を有し、前記押圧機構は、前記無端ベルトを押圧する押圧部を有し、前記押圧部により前記無端ベルトの掛け渡したベルト間の距離が小さくなるように押圧する構成とした。
【0012】
かかる構成により、撮影用ハンディクレーンは、第1支持アームのカメラ支持部に撮影カメラを支持し、第2支持アームのウエイト支持部に支持する撮影カメラに対応する重さのカウンタウエイトを支持する。そして、撮影用ハンディクレーンは、操作者(カメラマン)が撮影カメラを操作しながら撮影カメラを押し引きすると、その押し引きした力により第1支持アームの第1アームから第1接続シャフト(第2接続シャフト)を回転させ、第1歯車を回転させることで、伝達手段を介して第2歯車を回転させ、第1支持アームの回転する軌道において撮影カメラを移動させることができる。撮影用ハンディクレーンは、第1歯車及び第2歯車が回転して撮影カメラを移動するときに、第1支持アームが正中線を越えたとき、第1歯車及び第2歯車が回転して無端ベルトの押出側と引込側との関係が反転しても、押圧機構の押圧部が無端ベルトにテンションを掛けることで、バックラッシュが小さくなり、スムーズな移動を確保できる。なお、撮影用ハンディクレーンは、第1アームが第1接続シャフト又は第2接続シャフトに固定されている場合には、操作者は、撮影カメラを常に保持することが必要になるが、第1アームを第1接続シャフト及び第2接続シャフトの両方に設けた場合には、操作者が撮影カメラを放しても、カウンタウエイトとバランスをとりその状態で静止して配置することができる。
【0013】
また、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトに同じ角度(方向)となるようにそれぞれ設けた前記第1アーム部と、この第1アーム部に亘って設けた取付板と、この取付板に設けた前記カメラ支持部とを有し、前記取付板を前記第1アームに回動軸受を介して設けた構成とした。
【0014】
かかる構成により、撮影用ハンディカメラは、第1支持アームのカメラ支持部に撮影カメラを支持したときに、カメラマンが撮影カメラから手指を離しても、カウンタウエイトとバランスを取った状態を維持できる。また、撮影用ハンディクレーンは、カメラ支持部の撮影カメラの支持されている方向が常に同じ方向となるように回転させ、予め設定されている回転する軌道上において移動することができる。
【0015】
さらに、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記無端ベルトは、チェーンベルトであり、前記押圧部は、前記チェーンベルトに係合する係合歯車であり、前記押圧機構は、前記第1歯車及び前記第2歯車に掛け渡して並列する前記チェーンベルトの押出側ベルト及び引入側ベルトの少なくとも一方側を押圧する前記係合歯車と、この係合歯車を支持する押圧支持部と、を備え、前記押圧支持部が前記本体部に設けられた構成としてもよい。
【0016】
かかる構成により、撮影用ハンディカメラは、本体部に設けた押圧機構の押圧支持部における押圧部である係合歯車により無端ベルトであるチェーンベルトを押圧して、そのチェーンベルトが第1歯車及び第2歯車を移動するときに生じるバックラッシュを最小限に抑えることができる。
【0017】
そして、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記押圧支持部は、前記無端ベルトの並列する押出側ベルトと引入側ベルトに渡って延びる長尺部材と、この長尺部材の中央側に設けた角度調整部と、この角度調整部を支持する支持台とを備え、前記係合歯車は、前記長尺部材の一端側に設けた第1係合歯車と、前記長尺部材の他端側に設けた第2係合歯車とを備え、前記角度調整部は、前記支持台に支持する前記長尺部材の支持角度を無段階に調整する調整ネジとしてのボルト部及びナット部を備え、前記第1係合歯車が前記押出側ベルト及び前記引入側ベルトの一方に噛合して押圧し、かつ、前記第2係合歯車が前記押出側ベルト及び前記引入側ベルトの他方に噛合して押圧するように前記長尺部材の位置を調整して前記調整ネジにより前記長尺部材を前記支持台に支持する構成とした。
【0018】
かかる構成において、撮影用ハンディクレーンは、押圧機構の長尺部材について、調整ネジを緩めて支持台に対する角度を調整することで、その長尺部材の両端に設けた第1係合歯車及び第2係合歯車が、チェーンベルトの押出側ベルト及び引入側ベルトが互いに近接するようにそれぞれ押圧する状態とする。そして、撮影用ハンディクレーンは、調整ネジを締め付けて長尺部材を固定し、その状態で第1支持アームに支持した撮影カメラを操作すると、第1歯車及び第2歯車の回転が第1支持アームの移動における正中線を越える状態になっても、チェーンベルトが第1係合歯車及び第2係合歯車により押圧されていることで、バックラッシュが小さくなりトルクの変動にも対応することができる。
【0019】
また、前記撮影用ハンディクレーンにおいて、前記長尺部材は、長尺方向に直交する方向に突出して貫通穴を形成した突出片を有し、前記押圧機構に並列して設けられ、前記突出片に係合して前記長尺部材の傾斜位置を固定する傾斜位置固定手段をさらに備え、前記傾斜位置固定手段は、前記本体部の外側にボルト頭を配して前記本体部の内部に立設するように設けたボルト部と、このボルト部に前記突出片を挟持するように設けたナット部とを備え、前記貫通穴が前記ボルト部よりも大きな穴径である構成とした。
【0020】
かかる構成において、撮影用ハンディクレーンは、押圧機構の長尺部材に形成した突出片を傾斜位置固定手段により固定することで、長尺部材の位置を確実に維持し、第1係合歯車及び第2係合歯車の押圧状態を安定させる。また、撮影用ハンディクレーンは、傾斜位置固定手段のボルト部とナット部により押える長尺部材の突出片に、そのボルト部の直径より大きな貫通穴を形成していることで、長尺部材を調整ネジの位置を支点として回転する方向に移動させて傾斜角度を調整するときに対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る撮影用ハンディクレーンは、以下に示すような優れた効果を奏するものである。
撮影用ハンディクレーンは、駆動機構を第1歯車、第2歯車及び無端ベルト(伝達手段)とし、第1歯車及び第2歯車の回転に供回りする第1接続シャフト及び第2接続シャフトに設けた第1支持アーム及び第2支持アームのそれぞれに撮影カメラとその撮影カメラの重量につり合うカウンタウエイトとを支持させている。そのため、撮影ハンディクレーンは、電源がなくてもカメラマンの操作で容易に撮影カメラを安定した状態で、予め設定された弧を描く軌道において移動でき、被写体の正面側からの俯瞰側、見上げ側等、垂直方向の移動において、被写体に対して近接及び離間も容易に行うことができる。
【0022】
撮影用ハンディクレーンは、さらに、押圧機構を備えることで、第1歯車、第2歯車に掛け渡した無端ベルトの移動に際して発生するバックラッシュを小さくして、撮影カメラの移動を予め設定された弧を描く軌道の全てにおいてスムーズにすることができる。
【0023】
撮影用ハンディクレーンは、押圧機構の支持台に角度調整部により長尺部材の角度を自在になるようにして、その長尺部材の両端に設けた第1係合歯車及び第2係合歯車によりチェーンベルトが互いに近づくように押圧するので、チェーンベルトの押圧状態を自在に変更して撮影カメラの重量に最適な状態に調整することができる。
【0024】
撮影用ハンディクレーンは、押圧機構と、傾斜位置固定手段とを備えることで、チェーンベルトを押圧する第1係合歯車及び第2係合歯車の位置を確実に固定できるので、使用により押圧状態が変化することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る撮影用ハンディクレーンの使用状態において全体を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る撮影用ハンディクレーンの本体部から蓋部を取って駆動機構を示す平面図である。
【図3】本発明に係る撮影用ハンディクレーンの本体部から蓋部を取って駆動機構、押圧機構及び傾斜位置固定手段を示す側面図である。
【図4】本発明に係る撮影用ハンディクレーンの一部を省略して本体部から蓋部を取って正面側からの状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る撮影用ハンディクレーンの押圧機構及び傾斜位置固定手段の分解斜視図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は、本発明に係る撮影用ハンディクレーンの第1支持アーム及び第2支持アームの移動状態を模式的に示す側面図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は、本発明に係る撮影用ハンディクレーンに支持された撮影カメラの軌道における撮影状態を模式的に示す模式図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は、本発明に係る撮影用ハンディクレーンにおける第2支持アームの応用例をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明に係る撮影用ハンディクレーンにおける駆動機構の応用例をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)、(c)は、本発明に係る撮影用ハンディクレーンのカメラ支持台の応用例を模式的に示す斜視図、正面からの断面図及び側面からの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る撮影用ハンディクレーンについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、撮影用ハンディクレーン1は、撮影現場に自由に持ち運びができ、撮影カメラCmを支持してカメラマンSの撮影作業をサポートするものである。この撮影用ハンディクレーン1は、支持脚2に支持される本体部3と、この本体部3内に設置される駆動機構10と、この駆動機構10により作動する第1支持アーム20及び第2支持アーム30と、駆動機構10に沿って設けた押圧機構11とを主に備えている。
【0027】
支持脚2は、本体部3を着脱自在に支持してフロアあるいは地面から所定高さの位置に配置するものである。この支持脚2は、一般的な構成のものであり、脚部が伸縮あるいは開脚して所定高さに調整できるものである。なお、支持脚2は、ここでは、直線的な脚部を三本備える構成であるが、その本数や、形状は特に限定されるものではない。
【0028】
図1及び図3に示すように、本体部3は、駆動機構10を収納して支持脚2に固定されるものである。この本体部3は、その裏面に支持脚2と着脱自在に係合する係合部(図示せず)を備えている。この本体部3は、ここでは、駆動機構10を保持するベース部分の筐体部3aと、この筐体部3aの内部を覆う蓋部3bとを備えている。そして、筐体部3aは、支持平面に駆動機構10、押圧機構11(傾斜位置固定手段18)及び軸受9が取付けられている。また、蓋部3bは、後記する第1接続シャフト7及び第2接続シャフト8を突出させるための長穴開口3cが四箇所に形成されている。この本体部3は、ここでは、金属板から構成されており、その形状は直方体に形成されているが、その材質及び形状は特に限定されるものではない。
【0029】
図2及び図3に示すように、駆動機構10は、撮影カメラCm(図1参照)とカウンタウエイトKwとをカメラマンS(図1参照)の操作によりサポートして駆動させるものである。この駆動機構10は、ここでは電気的なモータ等の駆動源を使用することなく構成され、カウンタウエイトKwの重さを調整することで、カウンタウエイトKwと撮影カメラCmのバランスを取り、支持される撮影カメラCmの移動をカメラマンSの小さな力で容易にコントロールできるようにサポートしている。
【0030】
図1から図4に示すように、駆動機構10は、第1歯車4と、この第1歯車4と供回りするように貫通して当該第1歯車4に設けた第1接続シャフト7と、この第1接続シャフト7を回転自在に支持する軸受9,9と、第2歯車5と、この第2歯車5と供回りするように貫通して当該第2歯車5に設けた第2接続シャフト8と、この第2接続シャフト8を回転自在に支持する軸受9,9と、第1歯車4及び第2歯車5に掛け渡される伝達手段としての無端状に設けたチェーンベルト(無端ベルト)6と、を備えている。
【0031】
図2及び図3に示すように、第1歯車4及び第2歯車5は、ここでは平歯車が用いられ、それぞれ同じ構成のものが使用されている。そして、第1歯車4は、第1接続シャフト7と供回りをするように、キー溝(図示せず)等により第1接続シャフト7のほぼ長手方向におけるほぼ中央に設置されている。第1歯車4と同様に第2歯車5は、第2接続シャフト8と供回りをするように、キー溝(図示せず)等により第2接続シャフト8のほぼ長手方向における中央に設定されている。なお、第1歯車4及び第1接続シャフト7の接続関係は、供回りする構成であれば、第1接続シャフト7が、第1歯車4に貫通している構成でも、その第1歯車4の側面に取り付けられている構成でもどちらでも構わない。第2歯車5と第2接続シャフト8との接続関係も同様である。
【0032】
図2から図4に示すように、第1接続シャフト7は、筐体部3aの一方(前方側)の両隅に設けた軸受9,9に回動自在に支持されている。この第1接続シャフト7は、ここではステンレス鋼等の合金金属で形成されているが、中空であっても中実であってもよく、撮影カメラCm及びカウンタウエイトKwの重量に対して十分な強度を備える素材、太さおよび形状であればよい。
【0033】
第2接続シャフト8は、筐体部3aの他方(後方側)の両隅に設けた軸受9,9に回動自在に支持されている。この第2接続シャフト8は、ここではステンレス鋼等の合金金属で形成されているが、中空であっても中実であってもよく、撮影カメラCmの重量に対して十分な強度を備える素材、太さおよび形状であればよい。また、第2接続シャフト8は、他端側には、何も接続されていないことから、撮影カメラCmの重量により捩れが生じることがない強度を備える太さ形状に形成されている。
なお、第1接続シャフト7及び第2接続シャフト8は、ここでは、同じ太さ、同じ形状、同じ素材で形成されているが、それぞれ異なるように形成しても構わない。
【0034】
図2及び図3に示すように、チェーンベルト6は、第1歯車4及び第2歯車5に掛け渡して第1歯車4及び第2歯車5の回転駆動を伝達するものである。このチェーンベルト6は、外側リンク及び内側リンクを交互に接続して無端状に形成されている。また、チェーンベルト6は、撮影カメラCm及びカウンタウエイトKwの重量に対して十分な強度を備える素材、太さであれば特に限定されるものではない。
【0035】
図2から図4に示すように、第1支持アーム20は、撮影カメラCmを支持するものである。この第1支持アーム20は、第1接続シャフト7の一端にその第1接続シャフト7と直交する方向に固定されて取り付けられている。この第1支持アーム20は、ここでは、第1接続シャフト7及び第2接続シャフト8の一端に直交する方向で同一角度(方向)に固定された第1アーム部21,21と、この第1アーム部21,21の一端側に設けた回動取付部22,22と、この回動取付部22,22に設けた取付板23と、この取付板23に設けたカメラ支持台24と、このカメラ支持台24に設けた撮影カメラCmを着脱自在に支持するカメラ支持部25とを備えている。なお、第1支持アーム20は、ここでは第1接続シャフト7の一端にボルトにより着脱自在に取付けられるように構成されている。
【0036】
第1アーム部21,21は、その一端が、第1接続シャフト7及び第2接続シャフト8に直交してそれぞれ同じ角度(方向)になるように固定されている。この第1アーム部21,21は、ここでは、四角柱状に形成されており、その他端に回転支持軸21a,21aが接続されている。そして、回転支持軸21a,21aには、その軸線方向における前後となる位置に取付板23を挟持するように設けた回動軸受が取り付けられ、この回動軸受を回動取付部22,22としている。
【0037】
取付板23は、ここでは、第1アーム部21,21と平行に設けられている。この取付板23には、リブ23a、23aを介してカメラ支持台24が設けられている。
カメラ支持台24は、取付板23のリブ23a,23aに設けられ取付板23に直交するように設置されている。カメラ支持台24の中央には、撮影カメラCmを着脱自在に支持するカメラ支持部25が設けられている。
カメラ支持部25は、撮影カメラCmが一般的に備えている取付機構に対応して着脱自在に支持できる一般的な構造のものである。
なお、カメラ支持部25の位置は、図2に示すように、第1接合シャフト7の軸線上に配置されている。
【0038】
図2から図4に示すように、第2支持アーム30は、第1接続シャフト7の他端に設けられており、カウンタウエイトKwを支持するためのものである。なお、第2支持アーム30は、ここでは第1接続シャフト7の他端にボルトにより着脱自在に取付けられるように構成されている。
第2支持アーム30は、第2アーム部26と、この第2アーム部26に設けたウエイト支持部27と、ウエイト固定部28とを備えている。この第2支持アーム30は、その第2アーム部26が第1接続シャフト7に直交する方向で、第1支持アーム20の第1アーム部21,21とは異なる角度(方向)に固定して設定されている。なお、第2支持アーム30は、ここでは、第2アーム部26が、第1支持アーム20の第1アーム部21,21に対して180度異なる角度(方向)になるように設置されている。
【0039】
ウエイト支持部27は、第2アーム部26の一端にその第2アーム部26とは直交する方向に設けられている。このウエイト支持部27は、カウンタウエイトKwとして使用する既存のダンベル等で使用される円板状で中央に貫通穴が形成されたダンベルプレートを挿通して支持できる太さ及び長さに形成されている。なお、ウエイト支持部27の位置は、図2に示すように、第1接合シャフト7の軸線上に配置されている。
【0040】
ウエイト固定部28は、ウエイト支持部27の一端側に形成されたネジ部に螺合する蝶ナット及びにより構成されている。このウエイト固定部28は、ここでは、蝶ナットとナットとを両方使用することで、カウンタウエイトKwの取付け状態をより強固にしている。
【0041】
以上のように構成された駆動機構10により第2支持アーム30にバランスが取れるようにカウンタウエイトKwを支持させ、第1支持アーム20に支持された撮影カメラCmを操作する場合は、次のようになる。
つまり、カメラマンSが撮影カメラCmを第1支持アーム20の軌道に沿って移動させるように操作することで、第1支持アーム20を所定角度回転させると、第1接続シャフト7、第2接続シャフト8が所定角度回転すると共に、第1歯車4及び第2歯車5並びにチェーンベルト6が移動する。それと同時に、第1接続シャフト7が回転するときに、第1接続シャフト7の他端側に接続された、第2支持アーム30が回転する。
【0042】
このとき、カメラマンSは、撮影カメラCmを軌道上の所定位置で停止させた状態で、操作する手指を離しても、撮影カメラCmが、その位置で静止した状態を維持することができ、操作がし易い。また、第1支持アーム20は、撮影カメラCmが移動する予め規定されている軌道上において、第1支持アーム20の正中線を越すような移動を行なう場合には、第1歯車4及び第2歯車5のトルクの変動が発生することになる。そのため、撮影カメラCmの移動をスムーズに行なう場合には、次に説明する押圧機構11あるいは、押圧機構11及び傾斜位置固定手段18を備える構成にすることでスムーズな移動を実現することが可能となる。
【0043】
押圧機構11は、駆動機構10の動作をスムーズにするものである。この押圧機構11は、ここでは、チェーンベルト6を押圧して互いに近づけるようにすることで、第1歯車4及び第2歯車5において発生するバックラッシュを小さくしている。
図2及び図5に示すように、押圧機構11は、筐体部3aにネジで固定されて立設する支持台12と、この支持台12の上部側に形成した角度調整部14と、この角度調整部14を介して取付られる長尺部材としての押圧アーム13と、この押圧アーム13の一端側に設けた押圧部としての第1係合歯車15と、押圧アーム13の他端側に設けた押圧部としての第2係合歯車16とを備えている。
【0044】
図3及び図5に示すように、支持台12は、押圧アーム13を支持するものである。この支持台12は、水平部分と垂直部分とによりL字形状に形成され、その水平部分がネジにより筐体部3aに固定されている。そして、支持台12には、垂直部分の中央上端側に角度調整部14が設けられている。なお、垂直部分は、図5に示すように、ここでは、先端側を斜めに切欠いた斜辺とし、この斜辺が後記する押圧アーム13の傾斜位置の基準であることを示唆するように形成されている。なお、支持台12は、図2に示すように、後記する押圧アーム13をチェーンベルト6に平行となる位置で隣接して支持している。
【0045】
図5に示すように、角度調整部14は、ここでは、支持台12の垂直部分に形成した貫通穴14aと、この貫通穴14aと押圧アーム13の抜き穴13aとに挿通するボルト部14bと、このボルト部14bに螺合されるナット部14cとを備えている。角度調整部14は、ナット部14cを緩めることで後記する押圧アーム13の傾斜位置を自在に調整できるようにして、押圧アーム13の傾斜位置を作業者等が決めたら、その位置でナット部14cを締めることで押圧アーム13の傾斜位置を固定している。
【0046】
図3及び図5に示すように、押圧アーム13は、第1歯車4及び第2歯車5に掛け渡されるチェーンベルト6の押出側ベルト及び引入側ベルトに亘るように長尺形状に形成された板状の部材であり、第1係合歯車15及び第2係合歯車16を支持するものである。この押圧アーム13は、中央からやや一端側に寄った位置に角度調整部14で調整されるための抜き穴13aが形成されている。また、押圧アーム13には、ここでは、後記する傾斜位置固定手段18の突出片17が設けられている。さらに、押圧アーム13は、ここでは、第1係合歯車15及び第2係合歯車16を、第1歯車4及び第2歯車5を結ぶ軸線の内側に配置できる長さに形成されている。
【0047】
なお、図2及び図3に示すように、押圧アーム13の長さは、第1歯車4及び第2歯車5の内側となる長さに形成され、後記する第1係合歯車15及び第2係合歯車16を、第1歯車4及び第2歯車5からそれぞれ近い位置に配置することのできる長さに形成されている。ちなみに、ここでは、第1歯車4(第2歯車5)の係合から離れた外側リンクから数えて、2つめの外側リンクに第1係合歯車15(第2係合歯車16)が係合できる状態としている。このように、押圧アーム13の長さが、所定寸法であり、かつ、第1係合歯車15及び第2係合歯車16が、第1歯車4及び第2歯車5の近い位置に配置されることで、押圧アーム13の小さな角度調整でも、より効果的にバックラッシュを抑えることが可能となる。
【0048】
また、押圧機構11は、押圧アーム13の支持台12に対する支持位置が、左右非対称となる位置に支持されていることにより、よりバックラッシュがより発生しやすい第1歯車4側に対しての押圧をより大きくすることができる。図2に示す構成では、第1歯車4の第1接続シャフト7の両側に撮影カメラCm及びカウンタウエイトKwの荷重が大きくかかる状態となっているので、第1歯車4側のチェーンベルト6に対する押圧状態が、第2歯車5側のチェーンベルト6に対する押圧状態よりも大きくなるように設定されている。
【0049】
第1係合歯車15及び第2係合歯車16は、チェーンベルト6を押圧してチェーンベルト6にテンションを掛けるものである。この第1係合歯車15及び第2係合歯車16は、押圧アーム13の一端と他端にそれぞれ回動自在に設けられている。なお、第1係合歯車15及び第2係合歯車16は、ここでは、押圧アーム13の側面端側に突出する位置にボルト及びダブルナットにより回動自在に取り付けられている。第1係合歯車15及び第2係合歯車16は、ここでは、チェーンベルト6の構成に対応して係合できる歯の形状に形成されている。
【0050】
以上の構成を有する押圧機構11は、押圧アーム13の傾斜位置の角度を角度調整部14により調整して第1係合歯車15及び第2係合歯車16をチェーンベルト6の押出側ベルト及び引入側ベルトを互いに近づける方向から押圧している(図3参照)。このように、押圧機構11により、チェーンベルト6を押圧することで、第1支持アーム20が正中線を越えて移動することでトルクが変化しても、第1歯車4、第2歯車5に対してチェーンベルト6との関係においてバックラッシュが小さくなっているので、第1支持アーム20の移動はスムーズに行なうことが可能となる。
この押圧機構11は、単独であってもバックラッシュを小さくする構成であるが、さらに、後記する傾斜位置固定手段18が設けられることで、より好ましい構成となる。
【0051】
図2、図3及び図5に示すように、押圧機構11は、ここでは、支持台12に隣り合う位置に、傾斜位置固定手段18を備えている。
この傾斜位置固定手段18は、押圧アーム13の傾斜位置をより確実に位置決めするためのものである。傾斜位置固定手段18は、図5に示すように、筐体部3aに形成したネジ穴18dに螺合するボルト部18aと、このボルト部18aのねじ部分を挿通する押圧アーム13に設けた貫通穴17aを有する突出片17と、この突出片17の貫通穴17aにボルト部18aを挿通した状態で当該突出片17を挟持するように固定するナット部18Bである第1ナット18b,第2ナット18cとを備えている。なお、突出片17に形成されている貫通穴17aは、ボルト径よりも大きく形成されており、押圧アーム13がその角度調整部14を中心に円運動しても、ある程度許容してナット部18Bにより固定できるように構成されている。
【0052】
したがって、傾斜位置固定手段18は、押圧機構11の角度調整部14のナット部14cを緩めて、さらに、ナット部18Bを緩めた状態で、ボルト部18aを回転させることで、押圧アーム13の角度を調整することができ、また、押圧アーム13の角度を調整した後には、角度調整部14及びナット部18Bを締め付けることで、押圧アーム13の位置を確実に固定してその位置から押圧アームがずれ難い構成となる。そのため、押圧アーム13の位置が確実に固定されることで第1係合歯車15及び第2係合歯車16によるチェーンベルト6の押圧状態が変動することなく常に設定した状態を維持してより安定する。
【0053】
押圧機構11は、前記した構成のみであっても、押圧アーム13の傾斜位置の角度を角度調整部14により固定した状態とすることができるが、傾斜位置固定手段18があることで、押圧アーム13の傾斜位置の角度をより確実に維持して第1係合歯車15及び第2係合歯車16によりチェーンベルト6を押圧してテンションを掛けることが可能となる。
【0054】
次に、撮影用ハンディクレーン1の作用及び動作を説明する。
撮影用ハンディクレーン1は、はじめに、押圧機構11及び傾斜位置固定手段18を使用して第1係合歯車15及び第2係合歯車16により駆動機構10のチェーンベルト6を押圧してテンションの調整を行なう。
【0055】
カメラマン(作業者)S(図1参照)は、図4に示すように、第1支持アーム20に撮影カメラCmを支持し、第2支持アーム30にカウンタウエイトKwを支持し、バランスが取れるように調整する。つぎに、押圧機構11の押圧アーム13の傾斜位置の角度を調整して第1係合歯車15及び第2係合歯車16により平行に配置されたチェーンベルト6の押出側ベルト及び引入側ベルトの両側から互いに近接するように押圧する傾斜位置で押圧アーム13を固定する。その状態で、カメラマンSは、図6(a)〜(c)に示すように、第1支持アーム20に支持された撮影カメラCmを軌道となる360度に亘って第1支持アーム20を回転させると、移動初めから180度回転させたときに、その180度(正中線)を越えるときに、チェーンベルト6の押圧が不足しているときには、バックラッシュにより移動状態がスムーズにできない(ガクンとなる位置がある)ことが分かる。
【0056】
その場合には、再度、押圧アーム13の傾斜位置の角度を調整して(より角度をつけること)同じ動作を行い、360度の移動がスムーズになるようにすることで調整が行われる。また、この押圧状態の調整を行う場合には、図5に示すように、押圧機構11の角度調整部14のボルト部14bと、傾斜位置固定手段18の第1ナット18b及び第2ナット18cを緩めた状態で、傾斜位置固定手段18のボルト部18aを回転させることで、押圧アーム13の角度を仮調整することができる。そして、前記した第1支持アーム20を回転させて移動がスムーズに行える押圧アーム13の傾斜位置が確認できたら、角度調整部14のボルト部14bと、傾斜位置固定手段18の第1ナット18b、第2ナット18cを締めて調整を完了する。
【0057】
撮影カメラCmとカウンタウエイトKwの調整、駆動機構10に対する押圧機構11の調整が完了すると、撮影を開始することができる。
例えば、図7(a)〜(c)に示すように、カメラマンSは、観葉植物の葉の表面に飛来したテントウムシを被写体Wとして、被写体Wが移動してその葉の表面からゆっくり歩いて裏面に回りこんだ過程をすべて撮影することとする。
【0058】
はじめに、図1及び図7(a)に示すように、撮影カメラCmは、カメラマンSの操作により葉の表面を移動する被写体Wに対して、俯瞰する方向からのカメラアングルとなるように撮影カメラCmのチルト角度を調整すると共に、撮影用ハンディクレーン1の第1支持アーム20の角度を軌道上の適切な位置になるように、撮影カメラCmを押し引きする方向に力を加えることで調整して撮影を開始する。
【0059】
そして、図7(a)、(b)に示すように、被写体Wが葉の先端の縁側に移動するに伴って、徐々に撮影カメラCmの位置を俯瞰側から正面に回るように操作する。この操作を行う場合には、撮影用ハンディクレーンに支持されている撮影カメラCmとカウンタウエイトKwの重さのバランスが取れていることから、カメラマンSの小さな力により容易に撮影カメラCmの軌道上における移動を行うことが可能となる。
【0060】
そして、図7(b)、(c)に示すように、被写体Wが葉の表面から裏面に移動して行くときには、支持されている撮影カメラCmのチルト角度を調整しながら、撮影カメラCmの軌道上における位置を移動させ、被写体Wを見上げるように撮影することができる。
また、図7(a)〜(c)に示すように、撮影用ハンディクレーン1では、第1支持アーム20が正中線を越えるように移動したときに、押圧機構11(図2参照)によりチェーンベルト6を押圧して第1歯車4及び第2歯車5に対してバックラッシュを小さくするようにしているので、第1支持アーム20の動作がスムーズであり、撮影カメラCmの撮影に対して軌道上の移動に伴う悪影響をほとんど与えることはない。
【0061】
撮影用ハンディクレーン1は、以上説明したように、被写体の都合で撮影場所が屋外等に決定されても、簡単に持ち運びができ、被写体に対して予め設定された垂直方向における軌道上において、移動しながら撮影することができる。
【0062】
なお、カウンタウエイトKwは、第1接続シャフト7に接続した第2支持アーム30に取り付ける構成として説明したが、図8(a)〜(c)に示すような第2支持アームの構成としても構わない。なお、図8(a)〜(c)において、すでに説明した構成は、同じ符号を付し説明を省略する。
図8(a)に示すように、第2支持アーム30Aは、第1接続シャフト7及び第2接続シャフト8に第2アーム部26,26を同じ角度(方向)で設け、その第2アーム部26,26のそれぞれにカウンタウエイトKw,Kwを支持する構成とし、撮影カメラCmと同じ重量となるようにカウンタウエイトKw,Kwを分散して取り付けてもよい。
【0063】
また、図8(b)に示すように、第2支持アーム30Bは、第2アーム部26,26を同じ角度(方向)で設け、その第2アーム部26,26に回動取付部(図4の構成と同じもの)22を介して錘用取付板29aを設ける。そして、第2支持アーム30Bは、その錘用取付板29aに錘用支持台29bを設け、その錘用支持台29bの中央にカウンタウエイトKwのウエイト支持部27及びウエイト固定部28を垂直方向に設ける構成としてもよい。このように、第2支持アームの構成を第1支持アーム20の構成と近い構成とすることで、撮影カメラCmの移動時のバランスがより安定して操作しやすくなる。なお、カウンタウエイトKwが錘用支持台29bの中央に位置する場合には、撮影カメラCmのカメラ支持部25も取付板23の中央の位置にあることが望ましい。
【0064】
さらに、図8(c)に示すように、第2支持アーム30Cは、第2接続シャフト8に接続して、当該第2支持アーム30Cに、第2アーム部26、ウエイト支持部27、ウエイト固定部28を取り付ける構成としてもよい。
【0065】
そして、撮影用ハンディクレーンの第1歯車4及び第2歯車5の伝達手段としては、図9(a)、(b)に示す構成としても構わない。なお、図9(a)、(b)において、すでに説明した構成は、同じ符号を付し説明を省略する。
すなわち、図9(a)に示すように、駆動機構10Aは、第1歯車4及び第2歯車5の間の伝達手段として、ドライブシャフト6Aを使用してもよい。ドライブシャフト6Aを使用する場合には、第1歯車4及び第2歯車5として、笠歯車4A,5Aが使用される。
【0066】
また、図9(b)に示すように、駆動機構10Bは、第1歯車4及び第2歯車5の間の伝達手段として歯車6Bを複数使用する構成としてもよい。
このように、伝達手段として笠歯車、歯車を使用することで、無端ベルトを使用する場合に比較してバックラッシュを小さな状態とすることが可能となる。
【0067】
さらに、一例として、図10(a)〜(c)に示すように、撮影用ハンディクレーンのカメラ支持台34をスライド自在にできる構成としても構わない。なお、すでに説明した構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
カメラ支持台34は、回動取付部22に取付けられた取付板33の係合部33Tに係合してスライドできるように構成されている。
取付板33は、回動取付部22を取付ける垂直な取付面33aと、この取付面33aを折り曲げて形成した係合部33Tとを有している。
【0068】
係合部33Tは、取付面33aから折り曲げて形成した水平面33bと、この水平面33bから立ち上げ方向に折り曲げて形成した立上面33cと、この立上面33cから水平方向に折り曲げて形成した係合水平面33dと、この係合水平面33dの長手方向に沿って形成した係合溝部33eとを備えている。そして、係合溝部33eは、係合水平面33dの長手方向における一端側と他端側から所定間隔をあけた位置から長溝に形成されている。
【0069】
カメラ支持台34は、水平な面となるカメラ支持面34aと、このカメラ支持面34aに連続して形成したスライド係合部34Sと、カメラ支持面34aに設けたカメラ支持部25とを備えている。
スライド係合部34Sは、カメラ支持面34aから垂直方向に立ち上げて形成した立上当接面34bと、この立上当接面34bから水平方向に折り曲げて形成した係合水平面34cと、この係合水平面34cから垂直方向に折り曲げて形成した係合垂直面34dと、この係合垂直面34dを水平方向に折り曲げて形成した係合スライド面34eとを備えている。そして、係合水平面34cにネジ穴34f,34fを形成し、そのネジ穴34f,34fにストッパの役割となるボルト34g,34gを螺合させている。係合水平面34cに形成されたネジ穴34f,34fは、スライド係合部34Sが係合部33Tに係合したときに、係合溝部33eに対応する位置に形成されている。
【0070】
図10(c)に示すように、カメラ支持台34は、取付板33の端側(図10の紙面において左側あるいは右側)から、取付板33の係合部33Tに、スライド係合部34Sを係合させる。そして、カメラ支持台34は、ボルト34g,34gをネジ穴34f,34fに螺合し、ボルト34g,34gの先端が係合溝部33e内を移動できる状態にすることで取付板33にスライド自在に係合される。
【0071】
カメラ支持台34は、取付板33の係合部33Tに沿って移動させた場合、スライド係合部34Sがスライドして移動して行き、係合溝部33eに沿って移動するボルト34gが、係合溝部33eの端部に当接してそれ以上移動できない状態となるまで移動することができる。カメラ支持台34は、反対方向の移動についても、同様に、ボルト34gが、係合溝部33eの端部に当接してそれ以上移動できない状態となるまで移動することができる。
【0072】
また、カメラ支持台34は、スライドさせないで固定状態で使用する場合には、ボルト34g,34gを締めて、係合溝部33eの溝底を押圧するようにすることで、取付板33に固定した状態で使用することが可能となる。
【0073】
このように、取付板33に対してカメラ支持台34をスライド可能に移動できる構成にすることで、撮影カメラCmのアングルのバリエーションを増やすことが可能となり、都合がよい。
【0074】
以上、図1〜図10を参照して撮影用ハンディクレーン1について説明したが、その他として、第1支持アーム20は、第1接続シャフト7あるいは第2接続シャフト8に第1アーム部21の一本により取付板23を取り付け、その取付板23にカメラ支持台24あるいはカメラ支持台34を設ける構成としてもよい。このような構成では、カメラマンSは、常に撮影カメラCmの姿勢を手指で保持して安定させる必要があるが、撮影カメラCmの重さはカウンタウエイトKwで相殺されているので、短時間の撮影であれば、十分使用することが可能となる。
【0075】
また、筐体部3aには、図5では、押圧アーム13及び第2係合歯車16に対面する位置を貫通させた開口を形成したことで、押圧アーム13が支持している第1歯車4及び第2歯車5の設置面からの高さを抑えるようにしたが、第1歯車4及び第2歯車5の支持位置を高くして開口を形成しない構成としてもよい。
さらに、無端ベルトは、チェーンベルト6を具体例として説明したが、駆動機構に使用される平ベルトであっても構わない。平ベルトが使用される場合には、押圧部として円筒形状の押圧ローラが使用されることになる。
また、第1係合歯車15及び第2係合歯車16の一方のみを押圧アーム13に設けて、その一方によりチェーンベルト6を押圧する構成としても構わない。
【符号の説明】
【0076】
1 撮影用ハンディクレーン
2 支持脚
3 本体部
4 第1歯車
5 第2歯車
6 無端チェーン(無端ベルト:チェーンベルト:伝達手段)
7 第1接続シャフト
8 第2接続シャフト
9 軸受
10 駆動機構
11 押圧機構
12 支持台
13 押圧アーム
14 角度調整部
15 第1係合歯車(押圧部:係合歯車)
16 第2係合歯車(押圧部:係合歯車)
18 傾斜位置固定手段
20 第1支持アーム
21 第1アーム部
22 回動取付部
23 取付板
24 カメラ支持台
25 カメラ支持部
26 第2アーム部
27 ウエイト支持部
30 第2支持アーム
Cm 撮影カメラ
Kw カウンタウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持脚に取付けられて設置されると共に、撮影カメラを支持して予め設定された軌道上を移動して撮影可能な撮影用ハンディクレーンであって、
前記支持脚に取付けられる本体部と、この本体部内に設けた駆動機構と、この駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の一側方に突出して前記撮影カメラを支持する第1支持アームと、前記駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の他側方に突出して、前記撮影カメラの重量に対応するカウンタウエイトを支持する第2支持アームと、を備え、
前記駆動機構は、第1歯車と、第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に亘って設けられる当該歯車の伝達手段と、前記第1歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第1接続シャフトと、前記第2歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第2接続シャフトと、を備え、
前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、当該接続シャフトに直交する方向に固定される第1アーム部と、この第1アーム部の一端側に設けられ前記撮影カメラを着脱自在に支持するカメラ支持部とを有し、
前記第2支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、前記第1アーム部の固定した方向と異なる方向になるように固定される第2アーム部と、この第2アーム部の一端側に前記カウンタウエイトを着脱自在に支持するウエイト支持部を有することを特徴とする撮影用ハンディクレーン。
【請求項2】
支持脚に支持されて設定されると共に、撮影カメラを載置して予め設定された軌道上を移動して撮影可能な撮影用ハンディクレーンであって、
前記撮影カメラを支持する前記支持脚に支持される本体部と、この本体部内に設けた駆動機構と、この駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の一側方に突出して前記撮影カメラを支持する第1支持アームと、前記駆動機構により駆動するように設けられ前記本体部の他側方に突出して、前記撮影カメラの重量に対応するカウンタウエイトを支持する第2支持アームと、前記駆動機構に沿って設けた押圧機構と、を備え、
前記駆動機構は、第1歯車と、第2歯車と、前記第1歯車及び前記第2歯車に亘って設けられる無端ベルトと、前記第1歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第1接続シャフトと、前記第2歯車と供回りするように当該歯車側面の両側に突出して設けた第2接続シャフトと、を備え、
前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、当該接続シャフトに直交する方向に固定される第1アーム部と、この第1アーム部の一端側に設けられ前記撮影カメラを着脱自在に支持するカメラ支持部とを有し、
前記第2支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトの少なくとも一方に設けられ、前記第1アーム部の固定した方向と異なる方向になるように固定される第2アーム部と、この第2アーム部の一端側に前記カウンタウエイトを着脱自在に支持するウエイト支持部を有し、
前記押圧機構は、前記無端ベルトを押圧する押圧部を有し、前記押圧部により前記無端ベルトの掛け渡したベルト間の距離が小さくなるように押圧することを特徴とする撮影用ハンディクレーン。
【請求項3】
前記第1支持アームは、前記第1接続シャフト及び前記第2接続シャフトに同じ角度となるようにそれぞれ設けた前記第1アーム部と、この第1アーム部に亘って設けた取付板と、この取付板に設けた前記カメラ支持部とを有し、
前記取付板を前記第1アームに回動軸受を介して設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮影用ハンディクレーン。
【請求項4】
前記無端ベルトは、チェーンベルトであり、
前記押圧部は、前記チェーンベルトに係合する係合歯車であり、
前記押圧機構は、前記第1歯車及び前記第2歯車に掛け渡して並列する前記チェーンベルトの押出側ベルト及び引入側ベルトの少なくとも一方側を押圧する前記係合歯車と、この係合歯車を支持する押圧支持部と、を備え、前記押圧支持部が前記本体部に設けられたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の撮影用ハンディクレーン。
【請求項5】
前記押圧支持部は、前記無端ベルトの並列する押出側ベルトと引入側ベルトに渡って延びる長尺部材と、この長尺部材の中央側に設けた角度調整部と、この角度調整部を支持する支持台とを備え、
前記係合歯車は、前記長尺部材の一端側に設けた第1係合歯車と、前記長尺部材の他端側に設けた第2係合歯車とを備え、
前記角度調整部は、前記支持台に支持する前記長尺部材の支持角度を無段階に調整する調整ネジとしてのボルト部及びナット部を備え、
前記第1係合歯車が前記押出側ベルト及び前記引入側ベルトの一方に噛合して押圧し、かつ、前記第2係合歯車が前記押出側ベルト及び前記引入側ベルトの他方に噛合して押圧するように前記長尺部材の位置を調整して前記調整ネジにより前記長尺部材を前記支持台に支持することを特徴とする請求項4に記載の撮影用ハンディクレーン。
【請求項6】
前記長尺部材は、長尺方向に直交する方向に突出して貫通穴を形成した突出片を有し、
前記押圧機構に並列して設けられ、前記突出片に係合して前記長尺部材の傾斜位置を固定する傾斜位置固定手段をさらに備え、
前記傾斜位置固定手段は、前記本体部の外側にボルト頭を配して前記本体部の内部に立設するように設けたボルト部と、このボルト部に前記突出片を挟持するように設けたナット部とを備え、
前記貫通穴が前記ボルト部よりも大きな穴径であることを特徴とする請求項5に記載の撮影用ハンディクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−160053(P2011−160053A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18058(P2010−18058)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(594044646)株式会社エヌエイチケイメディアテクノロジー (20)
【Fターム(参考)】