説明

撮影用ライト及びこれを用いた照明方法

【課題】被写体に対して均一に光を照射することによって最適の照明が可能な撮影用ライトを提供する。
【解決手段】本発明の撮影用ライト1は、板状の基板2上に、面状発光部30を有する有機EL素子3が複数配列されている。各有機EL素子3R、3G、3Bは、赤、緑、青の3原色で発光する機能を有している。各有機EL素子3R、3G、3Bは、制御回路4に接続され、それぞれ独立して点灯させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を用いた撮影用ライトに関し、特に、テレビカメラで撮影する際に適した照明技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、明るさが足りない室内等においてテレビカメラ等によって撮影する際には、被写体を照明するための撮影用照明装置が用いられている。
【0003】
従来、この種の撮影用照明装置の光源としては、白熱電球が用いられていたが、寿命の短かさや消費電力が大きいことから、近年、発光ダイオードを用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、このような発光ダイオードを用いた撮影用照明装置においては、被写体において陰影が強くなったり、明るさに偏りが生ずるという問題があり、近年これを改善する技術がもとめられている。
【特許文献1】特開2003−163835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を考慮してなされたもので、被写体に対して均一に光を照射することによって最適の照明が可能な撮影用ライト及びこれを用いた照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、板状の基板上に、所定の色で発光する面状発光部を有する有機EL素子が複数配列され、前記有機EL素子をそれぞれ独立して点灯させるように構成されていることを特徴とする撮影用ライトである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、光の3原色で発光する有機EL素子を有することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の発明において、白色で発光する有機EL素子を有することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトを用い、被写体に対して下方側から光を照射することを特徴とする照明方法である。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトを用い、赤色で発光する有機EL素子を点灯させて照明を行うことを特徴とする照明方法である。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトが、装置本体に一体的に取り付けられるように構成されていることを特徴とする撮影用カメラである。
【0007】
本発明の撮影用ライトの場合、面発光する有機EL素子によって照明を行うことから、従来技術に比べて被写体における陰影は弱く、明るさに偏りが生ずることが少ない。
【0008】
特に、本発明の場合は、複数の有機EL素子をそれぞれ独立して点灯させるように構成されているため、被写体の形状、大きさ等に応じて特定の有機EL素子を点灯させることによって、被写体に対して均一で最適の照明を行うことが可能になる。
【0009】
本発明において、光の3原色で発光する有機EL素子を有する場合には、種々の色の照明光を作り出して幅広い被写体に対して照明を行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明において、白色で発光する有機EL素子を有する場合には、柔らかい種々のニュアンスに富む色の照明光を作り出して照明を行うことが可能になる。
【0011】
さらに、上記本発明の撮影用ライトを用い、被写体に対して下方側から光を照射すれば、通常の採光の陰影が打ち消されるため、被写体が人間の場合に肌の色を美しく撮影することが可能になる。
【0012】
一方、上記本発明の撮影用ライトが、装置本体に一体的に取り付けられるように構成されている撮影用カメラによれば、屋外等の種々の場所において、均一で最適の照明を行いつつ撮影を行うことができる。
【0013】
また、本発明の撮影用ライトは低電圧で発光する有機EL素子を用いるものであるから、長時間の使用が可能になるというメリットがあるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被写体に対して均一に光を照射することによって最適の照明が可能な撮影用ライト及びこれを用いた照明方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の撮影用ライトの基本構成を示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の撮影用ライト1は、保持用の基板2を有し、この基板2上にパネル状の複数の有機EL素子3が配列されている。
【0017】
本発明の場合、基板2としてはリジッド(硬質)又はフレキシブル(軟質)のいずれを用いることができ、その材料は特に限定されない。
なお、基板2の大きさについては、照明する部分及び有機EL素子1の大きさに応じて変更することができる。
【0018】
本実施の形態の場合、有機EL素子3は、平面状の面状発光部30を有するもので、図1に示す例においては、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色で発光する機能を有する有機EL素子3R、3G、3Bが用いられる。
【0019】
ここで、各有機EL素子3R、3G、3Bは所定の制御回路4に接続され、この制御回路4からの命令に応じて独立して所定のタイミングで点灯するように構成されている。
【0020】
本発明の場合、有機EL素子3(3R、3G、3B)の配列は特に限定されることはないが、太陽光に近い自然なコントラストを強調する観点からは、いわゆるデルタ配列を採用することが好ましい。
【0021】
図2は、本実施の形態の撮影用ライトの他の例を示す平面図である。
図2に示すように、本例の場合、上記撮影用ライト1と基本構成は同じであるが、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色で発光する有機EL素子3R、3G、3Bに加えて、白色(W)で発光する有機EL素子3Wを有している。
【0022】
この場合、各有機EL素子3R、3G、3B、3Wの配列は特に限定されることはないが、各素子のピーク波長を分散させる観点からは、有機EL素子3Rと有機EL素子3Wを隣接しないように配列することが好ましい。
【0023】
上述した撮影用ライト1の場合、有機EL素子3をそれぞれ種々組み合わせて照明を行うことができる。
例えば、図1に示す撮影用ライト1の場合、R(赤)、G(緑)、B(青)の有機EL素子3R、3G、3Bを単独又は任意に組み合わせて点灯させることができる。
【0024】
また、図2に示す撮影用ライト1においても、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の有機EL素子3R、3G、3B、3Wを単独又は任意に組み合わせて点灯させることができる。
【0025】
なお、有機EL素子3のうち所定の色のものの発光量を増減することによって明度、彩度、色相を変化させることも可能である。
【0026】
図3は、本発明の照明方法の実施の形態を示す説明図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、被写体5として例えば人に対してテレビカメラ等によって撮影を行う際に、上述した撮影用ライト1を用いて照明を行う。
【0027】
この場合、撮影用ライト1は、被写体5に対して対向させ種々の角度で光を照射することができる。
【0028】
例えば、被写体5より低い位置(例えば床上)に配置して被写体5の下方から光を照射する場合(撮影用ライト1A)、被写体5とほぼ同じ高さに配置して被写体5の正面、側面又は後方側から光を照射する場合(撮影用ライト1B)、被写体5より高い位置(例えば天井)に配置して被写体5の上方から光を照射する場合(撮影用ライト1C)など種々の配置が考えられる。
被写体5が人間の場合、肌の色を美しく撮影する観点からは、被写体5の下方から光を照射することが好ましい。
【0029】
図4は、本発明における撮影用ライトの配置の他の例を示す説明図である。
図4に示すように、アナウンサー等のようにデスク6の前で座った状態の被写体5を撮影する場合には、例えばデスク6の下に撮影用ライト1を配置し、被写体5に対してその下方から光を照射するようにする。
【0030】
この場合、撮影用ライト1を例えばデスク6の下側に配置して撮影画面7上においてデスク6の陰に隠れるようにすれば、美観を向上させる点で好ましい。
【0031】
以上述べたように本実施の形態の撮影用ライト1にあっては、面発光する有機EL素子3によって照明を行うことから、従来技術に比べて被写体5における陰影は弱く、明るさに偏りが生ずることが少ない。
【0032】
特に、本実施の形態の場合は、複数の有機EL素子3をそれぞれ独立して点灯させるように構成されおり、被写体5の形状、大きさ等に応じて特定の有機EL素子3を点灯させることによって、被写体5に対して均一で最適の照明を行うことができる。
【0033】
また、図1に示す撮影用ライト1によれば、光の3原色で発光する有機EL素子3R、3G、3Bを有することから、種々の色の照明光を作り出して幅広い被写体5に対して照明を行うことができる。
【0034】
また、図2に示す撮影用ライト1によれば、白色で発光する有機EL素子3Wを更に有することから、柔らかい種々のニュアンスに富む色の照明光を作り出して照明を行うことができる。
【0035】
他方、本実施の形態の撮影用ライト1を用い、被写体5に対して下方側から光を照射することにより、乱反射光による効果のため、被写体5が人間の場合に肌の色を美しく撮影することができる。
【0036】
図5は、本発明に係る撮影用カメラの実施の形態の外観構成図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態の撮影用カメラ10は、持ち運び可能なハンディタイプのテレビカメラで、上記実施の形態の撮影用ライト1が、装置本体11に一体的に取り付けられるように構成されているものである。
【0038】
ここで、撮影用ライト1は、装置本体11の上部前方側で撮像レンズ12の近傍に設けられている。
そして、撮影用ライト1の発光面1aが被写体(図示せず)に対向して撮影の際に被写体に対して光を照射するように構成されている。
【0039】
このような構成を有する本実施の形態によれば、屋外等の種々の場所において、均一で最適の照明を行いつつ撮影を行うことができる。
【0040】
特に、本発明の撮影用ライト1は低電圧で発光する有機EL素子を用いるものであるから、長時間の使用が可能になるというメリットがある。その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0041】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態においては、テレビカメラによって撮影する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、例えばビデオカメラや写真用カメラで撮影する場合に適用することも可能である。
【0042】
また、撮影用ライトに用いる有機EL素子は、異なる色で発光するもののみならず、同一色で発光するものを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態の撮影用ライトの基本構成を示す平面図
【図2】同実施の形態の撮影用ライトの他の例を示す平面図
【図3】本発明の照明方法の実施の形態を示す説明図
【図4】本発明における撮影用ライトの配置の他の例を示す説明図
【図5】本発明に係る撮影用カメラの実施の形態の外観構成図
【符号の説明】
【0044】
1…撮影用ライト 2…基板 3…有機EL素子 5…被写体 6…デスク 10…撮影用カメラ 30…面状発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基板上に、所定の色で発光する面状発光部を有する有機EL素子が複数配列され、前記有機EL素子をそれぞれ独立して点灯させるように構成されていることを特徴とする撮影用ライト。
【請求項2】
光の3原色で発光する有機EL素子を有することを特徴とする請求項1記載の撮影用ライト。
【請求項3】
白色で発光する有機EL素子を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の撮影用ライト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトを用い、被写体に対して下方側から光を照射することを特徴とする照明方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトを用い、赤色で発光する有機EL素子を点灯させて照明を行うことを特徴とする照明方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の撮影用ライトが、装置本体に一体的に取り付けられるように構成されていることを特徴とする撮影用カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−227188(P2006−227188A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39333(P2005−39333)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】