撮影装置および撮影装置の制御方法並びにプログラム
【課題】被写体が静止し、背景が流れた画像を取得する際に、背景が多重化しないようにする。
【解決手段】本撮影前にプレ画像を取得し、プレ画像から流し撮りモード時における複数回の撮影時の露光時間を設定する。この際、撮像素子の最高電荷読み出し時間以上の露光時間となるように露光時間を設定する。次いで複数回の撮影を行って複数の画像を取得し、複数の画像を合成して、所望の被写体が静止し、背景が流れた合成画像を生成する。
【解決手段】本撮影前にプレ画像を取得し、プレ画像から流し撮りモード時における複数回の撮影時の露光時間を設定する。この際、撮像素子の最高電荷読み出し時間以上の露光時間となるように露光時間を設定する。次いで複数回の撮影を行って複数の画像を取得し、複数の画像を合成して、所望の被写体が静止し、背景が流れた合成画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに流し撮りに適した撮影装置および撮影装置の制御方法並びに撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の動きのある被写体を撮影してスピード感ある画像を得る場合に、シャッタ速度を通常よりも遅く設定した状態で、撮影者が被写体の動きに合わせてカメラを移動することにより、被写体が静止し、背景が流れた画像を得ることができる流し撮りのテクニックが用いられる。このような流し撮りは、スピード感のある画像を得ることができるものの、被写体の動きに併せてカメラを移動させる必要があるため、熟練者でないと動いている被写体がぶれてしまう可能性が高い。
【0003】
このため、流し撮り時に、通常の流し撮りを行う場合のシャッタ速度よりも短いシャッタ速度により、複数の画像を連続して撮影して複数の画像を取得し、複数の画像に含まれる動体の位置合わせを行いつつ、複数の画像を合成して合成画像を取得する手法が提案されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3の手法によれば、1つ1つの撮影のシャッタ速度は短いため、動体のブレを低減させることができ、その結果、熟練者が流し撮りを行った場合と同様に、動体が静止し、背景が流れている合成画像を取得することができる。
【特許文献1】特開2005−135091号公報
【特許文献2】特開2006−339903号公報
【特許文献3】特開2006−25312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載された手法において、撮影前にはプレ撮影が行われて、シャッタスピードおよび絞り値が露出設定値として設定され、露出設定値により撮影が行われて複数の画像が取得される。しかしながら、撮像素子が電荷を読み出すことが可能な最高速度よりもシャッタスピードが速く設定されると、撮像素子が露光されている期間が連続しなくなるため、複数の画像の撮影が時間的に連続しないこととなる。このように複数の画像の撮影が時間的に連続しないと、合成画像において連続すべき背景が断続的に存在するため、背景が滑らかに流れず、その結果、背景が多重化してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、被写体が静止し、背景が流れた画像を取得する際に、背景が多重化しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による撮影装置は、撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段と、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する露出処理手段と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する合成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
「撮像素子の最高読み出し時間」とは、撮像素子において1枚の画像に相当する電荷を読み出すために必要な読み出し時間の最短値を意味する。
【0008】
ここで、CMOSのような撮像素子は、水平1ラインごとの露光および読み出しを繰り返すことにより高速読み出しを実現している。具体的には、1回の撮影において撮像素子の1ライン目が露光された直後から2ライン目、3ライン目と順次露光され、露光終了と同時に1ラインごとに電荷が読み出され、電荷読み出し直後からそのラインの次の露光が開始される。このような露光および電荷の読み出しを繰り返すことにより、複数の画像を連続して取得することができる。
【0009】
例えば、撮像素子の最高フレームレートが60fpsであるとすると、撮像素子の最高読み出し時間は全ラインの読み出し時間の和である1/60秒となる。そしてこの読み出しを60回繰り返した時間の総和が1秒となり、これにより60fpsを実現することができる。その際の各画素の露光時間は読み出し時間の総和と略等しくなり、これによりシャッタスピードとして1/60秒を実現でき、さらに読み出し時間を除いて複数回の露光を略連続させることができる。
【0010】
しかしながら、設定されたシャッタスピードが1/60秒よりも高速であると、撮像素子の電荷の読み出し時間が露光時間よりも長くなるため、露光を連続させることができない。このため、本発明においては、撮像素子の露光時間を撮像素子の最高電荷読み出し時間以上に設定することにより、露光を連続して行うことができるようにしたものである。
【0011】
「複数の画像の動きを解析する」とは、各画像内の画素がどのように移動しているかを解析することを意味する。具体的には、複数の画像のうちの1つの画像を基準とし、基準となる画像および他の画像間の対応する画素の移動方向および移動量を求め、移動方向および移動量に基づいて、基準となる画像における画素がどのように移動しているかを解析することを意味する。
【0012】
なお、本発明による撮影装置においては、前記合成手段を、前記動きの解析結果に基づいて前記複数の画像のそれぞれから動体を検出し、該複数の画像のそれぞれにおける前記動体の位置が略一致するように前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手段としてもよい。
【0013】
また、本発明による撮影装置においては、前記露出処理手段を、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を同一に設定する手段としてもよい。
【0014】
本発明による撮影装置の制御方法は、撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法であって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定し、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得し、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成することを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明による撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の画像を時間的に連続して取得するに際し、撮像素子の露光時間を撮像素子の最高読み出し時間以上に設定することにより、撮影手段の露出が設定される。これにより、複数の画像を取得する際に、撮像素子への露光を連続させることができるため、複数の画像を時間的に連続して取得することができる。したがって、合成画像上において背景が断続的に存在することがなくなり、その結果、背景の多重化を防止することができる。
【0017】
また、動きの解析結果に基づいて複数の画像のそれぞれから動体を検出し、複数の画像のそれぞれにおける動体の位置が略一致するように複数の画像を合成して合成画像を生成することにより、精度よく動体が静止し、背景が流れた画像を得ることができる。
【0018】
また、複数の画像を取得するための各撮影時における撮像素子の露光時間を同一に設定することにより、露光時間の設定を簡易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1および図2は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1の外観を示す図である。図1および図2に示すように、このデジタルカメラ1の上部には、レリーズボタン2、電源ボタン3およびズームレバー4が備えられている。
【0020】
レリーズボタン2は、2段階の押下により2種類の動作を指示できる構造となっている。例えば、自動露出調整機能(AE:Auto Exposure)、自動焦点調節機能(AF:Auto Focus)を利用した撮影では、デジタルカメラ1は、レリーズボタン2が軽く押下される第1の押下操作(半押しともいう)がなされたときに、露出調整、焦点合わせ等の撮影準備を行う。その状態で、レリーズボタン2が強く押下される第2の押下操作(全押しともいう)がなされると、デジタルカメラ1は露光を開始し、露光により得られた1画面分の画像データを記録メディアに記録する。
【0021】
デジタルカメラ1の背面には、液晶等のモニタ5、撮影モード等の設定に利用されるモードダイヤル6、および後各種操作ボタン8が備えられている。なお、本実施形態においては、撮影を行う撮影モード、および記録メディアに記録された画像をモニタ5に再生する再生モード等を設定可能とされている。また、撮影モードとしては通常の撮影を行うための通常撮影モードの他、流し撮りを行うための流し撮りモードが設定可能とされている。
【0022】
次いで、デジタルカメラ1の内部構成について説明する。図3は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図である。図3に示すように本実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1は、撮像系9を有する。
【0023】
撮像系9は、被写体にピントを合わせるためのフォーカスレンズ10aおよびズーム機能を実現するためのズームレンズ10bからなる撮影レンズ10を有する。各々のレンズは、モータとモータドライバとからなるフォーカスレンズ駆動部11およびズームレンズ駆動部12によって光軸方向に移動可能である。フォーカスレンズ駆動部11は、後述するAF処理部28からの指示に基づいて、ズームレンズ駆動部12はズームレバー4の操作に応じたCPU40からの指示に基づいて、各々のレンズの移動を制御する。
【0024】
絞り14は、複数の絞り羽根からなる。絞り駆動部15は、ステッピングモータ等小型のモータで、AE処理部29から出力される絞り値データに応じて、絞りの開口サイズが目的に適ったサイズになるように絞り羽根の位置を調整する。
【0025】
シャッタ16はメカニカルシャッタであり、シャッタ駆動部17によって駆動される。シャッタ駆動部17は、レリーズボタンの押下により発生する信号と、AE処理部29から出力されるシャッタスピードデータとに応じて、シャッタ16の開閉の制御を行う。
【0026】
シャッタ16の後方には撮像素子18を有している。本実施形態においては、CMOSタイプの撮像素子18を用いるものとする。撮像素子18は、多数の受光素子を2次元的に配列した光電面を有しており、撮影レンズ10等の光学系を通過した被写体光がこの光電面に結像し、光電変換される。光電面の前方には、各画素に光を集光するためのマイクロレンズアレイと、R,G,B各色のフィルタが規則的に配列されたカラーフィルタアレイとが配置されている。撮像素子18は、撮像素子制御部19から供給される読み出し信号に同期して、画素毎に蓄積された電荷を1画素ずつアナログ撮影信号として出力する。なお、各画素において電荷を蓄積する時間、すなわち露光時間は、撮像素子制御部19から与えられる電子シャッタ駆動信号によって決定される。この露光時間は、後述するAE処理部29により設定される。また、撮像素子18は撮像素子制御部19により、あらかじめ定められた大きさのアナログ撮像信号が得られるようにゲインが調整されている。
【0027】
撮像素子18から読み出されたアナログ撮影信号は、アナログフロントエンド(AFE)20に入力される。AFE20は、アナログ信号のノイズを除去する相関2重サンプリング回路(CDS)と、アナログ信号のゲインを調節するオートゲインコントローラ(AGC)と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(ADC)とからなる。このデジタル信号に変換された画像データは、画素毎にR,G,Bの濃度値を持つRAWデータである。
【0028】
タイミングジェネレータ21は、同期信号を発生させるものであり、このタイミング信号をシャッタ駆動部17、撮像素子制御部19、およびAFE20に供給することにより、レリーズボタンの操作、シャッタ16の開閉、撮像素子18からの電荷の読み出し、およびAFE20の処理の同期をとっている。なお、撮像素子18からの電荷の読み出しの最高値(最高電荷読み出し時間)は、撮像素子18およびタイミングジェネレータ21の仕様によりあらかじめ定められている。
【0029】
また、デジタルカメラ1は撮影時において必要なときに発光されるフラッシュ24を有する。フラッシュ24は、発光制御部23によりその発光が制御される。
【0030】
また、デジタルカメラ1は、AFE20が出力した画像データをデータバス41を介して他の処理部に転送する画像入力コントローラ25、および画像入力コントローラ25から転送された画像データを一時記憶するフレームメモリ26を備える。
【0031】
フレームメモリ26は、画像データに対して後述の各種処理を行う際に使用する作業用メモリであり、例えば、一定周期のバスクロック信号に同期してデータ転送を行うSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)が使用される。
【0032】
表示制御部27は、フレームメモリ26に格納された画像データをスルー画像としてモニタ5に表示させたり、再生モード時に記録メディア34に保存されている画像をモニタ5に表示させたりするためのものである。なお、スルー画像は、撮影モードが選択されている間、タイミングジェネレータ21が発生する同期信号に同期して、所定時間間隔で撮像系9により撮影される。
【0033】
AF処理部28およびAE処理部29は、プレ画像に基づいて撮影条件を決定する。このプレ画像とは、レリーズボタンが半押しされることによって発生する半押し信号を検出したCPU40が撮像素子18にプレ撮影を実行させた結果、フレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像である。
【0034】
AF処理部28は、プレ画像に基づいてフォーカスレンズ10aの合焦位置を検出する。合焦位置の検出方式としては、例えば、所望とする被写体にピントが合った状態では画像のコントラストが高くなるという特徴を利用して合焦位置を検出するTTL方式を用いる。
【0035】
AE処理部29は、プレ画像に基づいて被写体輝度を測定し、測定した被写体輝度に基づいて絞り値およびシャッタスピードを露出設定値として設定して出力する(AE処理)。具体的には図4に示すようにプレ画像を8×8の64の測光領域に分割し、各領域の明るさおよびあらかじめ定められて後述する内部メモリ35に記憶されたプログラム線図に基づいて、シャッタスピードおよび絞り値を設定する。なお、シャッタスピードが撮像素子18の露光時間に相当する。
【0036】
ここで、本実施形態によるデジタルカメラ1においては、通常撮影モードに設定されている場合には、1回のレリーズボタンの全押し操作により1回の露光による撮影を行う。一方、流し撮りモードに設定されている場合には、通常1回の露光により撮影を行うところを、複数回に分割して露光を行い、複数回の露光にそれぞれ対応する複数の画像を取得する。なお、複数の画像は後述するように合成されて合成画像が生成される。このため、流し撮りモードでは、AE処理部29は、プレ画像に基づいて設定したシャッタスピード、すなわち露光時間(T0とする)に基づいて、分割後の1回分の露光時間(T1とする)および露光回数nを算出する。
【0037】
なお、通常撮影モードによる撮影時においては、AE処理部29が設定したシャッタスピードによりシャッタ16が開放して撮像素子18がシャッタスピードに対応する露光時間T0露光される。一方、流し撮りモードによる撮影時においては、レリーズボタンの押下後、設定された露光回数nの撮影が行われるまでの間シャッタ16は開放とされ、その間、設定された露光時間T1の間隔により撮像素子18から繰り返し電荷が読み出される。
【0038】
図5は通常撮影モード時における1回の撮影によるシャッタスピードすなわち露光時間を示す図、図6は流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図である。図5に示すように、分割しての撮影を行わない場合の露光時間T0が1/7.5秒である場合、露光時間T1が1/480秒であるとすると、流し撮りモード時においては図6に示すように露光時間T1が1/480秒の露光が64回行われることとなる。なお、図6においては6回までの露光を示している。
【0039】
ここで、撮像素子18が最高で毎秒300フレームの分の電荷を読み出すことが可能なものである場合、最高電荷読み出し時間は1/300秒であるため、露光時間T1が1/480秒の場合、露光時間T1は最高電荷読み出し時間よりも短くなる。このように、撮像素子18の最高電荷読み出し時間よりも露光時間T1が短いと、撮像素子18への露光を連続させることができない。したがって、複数の画像の撮影は時間的に連続しなくなるため、合成画像において連続すべき背景が断続的に存在することとなり、その結果、背景が滑らかに流れずに多重化してしまう。
【0040】
このため、本実施形態においては、流し撮りモードに設定されている場合、撮像素子18の最高電荷読み出し時間以上となるように、複数の画像を取得するための各撮影時のシャッタスピードすなわち露光時間T1を設定し、設定された露光時間T1およびデジタルカメラ1において設定された設定されたISO感度に応じて、内部メモリ35に記憶されたプログラム線図を参照して、絞り値を設定する。図7はプログラム線図の例を示す図である。なお、図7において横軸はシャッタスピード(すなわち露光時間)TVを、縦軸は絞り値AVをそれぞれ表す。EVは測光により得られる露出値である。なお、N,T,Aはあらかじめ定められた値である。図7に示すように、AE処理部29は、デジタルカメラ1が流し撮りモードが設定されている場合、例えば、各撮影時のシャッタスピードをT+3に設定し、デジタルカメラ1に設定されたISO感度に応じて各撮影時の絞り値を設定する。
【0041】
ここで、分割しての撮影を行わない場合の露光時間T0が1/7.5秒である場合、設定された露光時間T1が1/60であるとすると、流し撮りモード時においては図8に示すように露光時間T1が1/60秒の露光が連続して8回行われることとなる。また、撮像素子18の最高読み出し時間が1/300秒の場合、露光時間T1は撮像素子18の最高電荷読み出し時間よりも長いため、図8に示すように撮像素子18への露光を連続させることができる。
【0042】
AWB処理部30は、撮影時のホワイトバランスを自動調整する(AWB処理)。
【0043】
画像処理部31は、本画像の画像データに対して、明るさ補正、階調補正、シャープネス補正、および色補正等の画質補正処理、並びにRAWデータを輝度信号であるYデータと、青色色差信号であるCbデータおよび赤色色差信号であるCrデータとからなるYCデータに変換するYC処理を行う。この本画像とは、レリーズボタンが全押しされることによって実行される本撮影により撮像素子18から取り込まれ、AFE20、画像入力コントローラ25経由でフレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像である。
【0044】
圧縮/伸長処理部32は、画像処理部31によって処理が行われた本画像の画像データに対して、例えば、JPEG等の圧縮形式で圧縮処理を行い、画像ファイルを生成する。この画像ファイルには、Exifフォーマット等に基づいて、撮影日時等の付帯情報が格納されたタグが付加される。
【0045】
メディア制御部33は、不図示のメディアスロットルに着脱自在にセットされた記録メディア34にアクセスして、画像ファイルの書き込みと読み込みの制御を行う。
【0046】
内部メモリ35は、デジタルカメラ1において設定される各種定数、ルックアップテーブル、およびCPU40が実行するプログラム等を記憶する。
【0047】
また、デジタルカメラ1は、動き解析部36および合成部37を備える。
【0048】
動き解析部36は、画像の動きを解析する。具体的には、流し撮りモードによる撮影により取得された複数の画像において1つの基準画像を設定し、基準画像および他の画像間の対応する画素の移動方向および移動量を求め、移動方向および移動量に基づいて基準画像における画素がどのように移動しているかを解析する。例えば、流し撮りモードの撮影により図9に示すように3つの画像G1〜G3が取得された場合において、基準画像を画像G1とすると、基準画像G1における自動車に対応する部分の画素の移動量は非常に小さいため、動き解析部36は基準画像G1における自動車に対応する領域の画素の動きが小さいとの解析結果を出力する。なお、動きが小さいか否かの判断は、移動量が所定のしきい値より小さいか否かを判定することにより行えばよい。一方、基準画像G1における背景の家は大きく移動しているため、動き解析部36は基準画像G1における自動車に対応する領域以外の領域の画素の動きが大きいとの解析結果を出力する。
【0049】
なお、本撮影の前においては、連続して取得される2つのスルー画像間において、動きの解析を行うようにしてもよい。
【0050】
合成部37は、動き解析部36による解析結果に基づいて、流し撮りモードの撮影により取得された複数の画像を合成する。具体的には、複数の画像における動きの小さい領域の位置が同じ位置になるように重ね合わせることにより合成して、合成画像を生成する。例えば、複数の画像において中央の領域の動きが小さければ、中央の領域の位置が同じ意位置になるように複数の画像を重ね合わせることにより合成画像を生成する。なお、合成は、複数の画像について動きが小さい領域の位置の位置合わせを行った後に、複数の画像間の対応する画素値の平均値を算出することにより行えばよい。ここで、位置合わせは、複数の画像から1つの基準画像を選択し、基準画像に含まれる動きが小さい領域の位置に他の画像における動きが小さい領域の位置が一致するように、他の画像を回転、拡大縮小等、変形することにより行えばよい。
【0051】
なお、動き解析部36による解析結果に基づいて、複数の画像の動きが小さい領域を動体として検出し、動体の位置が同じ位置になるように複数の画像を重ね合わせることにより合成して合成画像を生成するようにしてもよい。
【0052】
これにより、図9に示すように3つの画像G1〜G3から生成された合成画像G0は、図10に示すように自動車が静止し、背景の家が流れたものとなる。ここで、図10においては背景の家の画像が流されている状態を横方向の線により表すものとする。
【0053】
CPU40は、レリーズボタン2、操作ボタン8およびAE処理部29等の各種処理部からの信号に応じてデジタルカメラ1の本体各部を制御する。
【0054】
データバス41は、各種処理部、フレームメモリ26およびCPU40等に接続されており、画像データおよび各種指示等のやり取りを行う。
【0055】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図11は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、本発明は流し撮りモードにおける撮影の処理に特徴を有するため、以下に説明する実施形態においては、流し撮りモードが設定されている場合の処理について説明する。
【0056】
CPU40はレリーズボタン2が半押しされたか否かを監視しており(ステップST1)、レリーズボタン2が半押しされると、撮像系9がプレ撮影を行い(ステップST2)、AE処理部29がプレ撮影により取得されたプレ画像を用いてAE処理を行う(ステップST3)。この際、上述したようにシャッタスピードすなわち露光時間T1は、撮像素子18の最高読み出し時間以上となるように設定される。
【0057】
次いでCPU40はレリーズボタン2が全押しされたか否かの監視を開始し(ステップST4)、ステップST4が肯定されると本撮影を行い、複数の画像を取得する(ステップST5)。次いで、動き解析部36が本撮影により取得された複数の画像の動きを解析し(ステップST6)、合成部37が動きの解析結果に基づいて複数の画像を重ね合わせることにより合成画像を生成する(ステップST7)。さらに画像処理部31が合成画像に対して画像処理を行う(ステップST8)。そして、圧縮/伸長処理部32が、画像処理が施された合成画像の画像データから画像ファイルを生成し(ステップST9)、メディア制御部33が画像ファイルを記録メディア34に記録し(ステップST10)、処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、複数の画像を時間的に連続して取得するに際し、撮像素子18の最高読み出し時間以上の露光時間となるように撮像系9の露出を設定するようにしたため、撮像素子18への露光を連続させることができる。したがって、複数の画像を時間的に連続して取得することができるため、合成画像上において背景が断続的に存在することがなくなり、その結果、背景の多重化を防止することができる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、複数の画像を取得するための各撮影時の露光時間を同一としているが、各撮影時において別々の露光時間を設定するようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1について説明したが、コンピュータを、上記のAE処理部29、動き解析部36および合成部37に対応する手段として機能させ、図11に示すような処理を行わせるプログラムも本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(正面側)
【図2】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(背面側)
【図3】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図
【図4】測光領域への分割の一例を示す図
【図5】通常撮影モード時における1回の撮影による露光時間を示す図
【図6】流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図(その1)
【図7】プログラム線図を示す図
【図8】流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図(その2)
【図9】流し撮りモードにより取得された複数の画像を示す図(飽和領域無し)
【図10】合成画像を示す図(飽和領域無し)
【図11】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0062】
1 デジタルカメラ
5 モニタ
9 撮像系
10 撮影レンズ
11 フォーカスレンズ駆動部
23 発光制御部
24 フラッシュ
28 AF処理部
29 AE処理部
36 動き解析部
37 合成部
40 CPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに流し撮りに適した撮影装置および撮影装置の制御方法並びに撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の動きのある被写体を撮影してスピード感ある画像を得る場合に、シャッタ速度を通常よりも遅く設定した状態で、撮影者が被写体の動きに合わせてカメラを移動することにより、被写体が静止し、背景が流れた画像を得ることができる流し撮りのテクニックが用いられる。このような流し撮りは、スピード感のある画像を得ることができるものの、被写体の動きに併せてカメラを移動させる必要があるため、熟練者でないと動いている被写体がぶれてしまう可能性が高い。
【0003】
このため、流し撮り時に、通常の流し撮りを行う場合のシャッタ速度よりも短いシャッタ速度により、複数の画像を連続して撮影して複数の画像を取得し、複数の画像に含まれる動体の位置合わせを行いつつ、複数の画像を合成して合成画像を取得する手法が提案されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3の手法によれば、1つ1つの撮影のシャッタ速度は短いため、動体のブレを低減させることができ、その結果、熟練者が流し撮りを行った場合と同様に、動体が静止し、背景が流れている合成画像を取得することができる。
【特許文献1】特開2005−135091号公報
【特許文献2】特開2006−339903号公報
【特許文献3】特開2006−25312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載された手法において、撮影前にはプレ撮影が行われて、シャッタスピードおよび絞り値が露出設定値として設定され、露出設定値により撮影が行われて複数の画像が取得される。しかしながら、撮像素子が電荷を読み出すことが可能な最高速度よりもシャッタスピードが速く設定されると、撮像素子が露光されている期間が連続しなくなるため、複数の画像の撮影が時間的に連続しないこととなる。このように複数の画像の撮影が時間的に連続しないと、合成画像において連続すべき背景が断続的に存在するため、背景が滑らかに流れず、その結果、背景が多重化してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、被写体が静止し、背景が流れた画像を取得する際に、背景が多重化しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による撮影装置は、撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段と、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する露出処理手段と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する合成手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
「撮像素子の最高読み出し時間」とは、撮像素子において1枚の画像に相当する電荷を読み出すために必要な読み出し時間の最短値を意味する。
【0008】
ここで、CMOSのような撮像素子は、水平1ラインごとの露光および読み出しを繰り返すことにより高速読み出しを実現している。具体的には、1回の撮影において撮像素子の1ライン目が露光された直後から2ライン目、3ライン目と順次露光され、露光終了と同時に1ラインごとに電荷が読み出され、電荷読み出し直後からそのラインの次の露光が開始される。このような露光および電荷の読み出しを繰り返すことにより、複数の画像を連続して取得することができる。
【0009】
例えば、撮像素子の最高フレームレートが60fpsであるとすると、撮像素子の最高読み出し時間は全ラインの読み出し時間の和である1/60秒となる。そしてこの読み出しを60回繰り返した時間の総和が1秒となり、これにより60fpsを実現することができる。その際の各画素の露光時間は読み出し時間の総和と略等しくなり、これによりシャッタスピードとして1/60秒を実現でき、さらに読み出し時間を除いて複数回の露光を略連続させることができる。
【0010】
しかしながら、設定されたシャッタスピードが1/60秒よりも高速であると、撮像素子の電荷の読み出し時間が露光時間よりも長くなるため、露光を連続させることができない。このため、本発明においては、撮像素子の露光時間を撮像素子の最高電荷読み出し時間以上に設定することにより、露光を連続して行うことができるようにしたものである。
【0011】
「複数の画像の動きを解析する」とは、各画像内の画素がどのように移動しているかを解析することを意味する。具体的には、複数の画像のうちの1つの画像を基準とし、基準となる画像および他の画像間の対応する画素の移動方向および移動量を求め、移動方向および移動量に基づいて、基準となる画像における画素がどのように移動しているかを解析することを意味する。
【0012】
なお、本発明による撮影装置においては、前記合成手段を、前記動きの解析結果に基づいて前記複数の画像のそれぞれから動体を検出し、該複数の画像のそれぞれにおける前記動体の位置が略一致するように前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手段としてもよい。
【0013】
また、本発明による撮影装置においては、前記露出処理手段を、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を同一に設定する手段としてもよい。
【0014】
本発明による撮影装置の制御方法は、撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法であって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定し、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得し、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成することを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明による撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の画像を時間的に連続して取得するに際し、撮像素子の露光時間を撮像素子の最高読み出し時間以上に設定することにより、撮影手段の露出が設定される。これにより、複数の画像を取得する際に、撮像素子への露光を連続させることができるため、複数の画像を時間的に連続して取得することができる。したがって、合成画像上において背景が断続的に存在することがなくなり、その結果、背景の多重化を防止することができる。
【0017】
また、動きの解析結果に基づいて複数の画像のそれぞれから動体を検出し、複数の画像のそれぞれにおける動体の位置が略一致するように複数の画像を合成して合成画像を生成することにより、精度よく動体が静止し、背景が流れた画像を得ることができる。
【0018】
また、複数の画像を取得するための各撮影時における撮像素子の露光時間を同一に設定することにより、露光時間の設定を簡易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1および図2は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1の外観を示す図である。図1および図2に示すように、このデジタルカメラ1の上部には、レリーズボタン2、電源ボタン3およびズームレバー4が備えられている。
【0020】
レリーズボタン2は、2段階の押下により2種類の動作を指示できる構造となっている。例えば、自動露出調整機能(AE:Auto Exposure)、自動焦点調節機能(AF:Auto Focus)を利用した撮影では、デジタルカメラ1は、レリーズボタン2が軽く押下される第1の押下操作(半押しともいう)がなされたときに、露出調整、焦点合わせ等の撮影準備を行う。その状態で、レリーズボタン2が強く押下される第2の押下操作(全押しともいう)がなされると、デジタルカメラ1は露光を開始し、露光により得られた1画面分の画像データを記録メディアに記録する。
【0021】
デジタルカメラ1の背面には、液晶等のモニタ5、撮影モード等の設定に利用されるモードダイヤル6、および後各種操作ボタン8が備えられている。なお、本実施形態においては、撮影を行う撮影モード、および記録メディアに記録された画像をモニタ5に再生する再生モード等を設定可能とされている。また、撮影モードとしては通常の撮影を行うための通常撮影モードの他、流し撮りを行うための流し撮りモードが設定可能とされている。
【0022】
次いで、デジタルカメラ1の内部構成について説明する。図3は本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図である。図3に示すように本実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラ1は、撮像系9を有する。
【0023】
撮像系9は、被写体にピントを合わせるためのフォーカスレンズ10aおよびズーム機能を実現するためのズームレンズ10bからなる撮影レンズ10を有する。各々のレンズは、モータとモータドライバとからなるフォーカスレンズ駆動部11およびズームレンズ駆動部12によって光軸方向に移動可能である。フォーカスレンズ駆動部11は、後述するAF処理部28からの指示に基づいて、ズームレンズ駆動部12はズームレバー4の操作に応じたCPU40からの指示に基づいて、各々のレンズの移動を制御する。
【0024】
絞り14は、複数の絞り羽根からなる。絞り駆動部15は、ステッピングモータ等小型のモータで、AE処理部29から出力される絞り値データに応じて、絞りの開口サイズが目的に適ったサイズになるように絞り羽根の位置を調整する。
【0025】
シャッタ16はメカニカルシャッタであり、シャッタ駆動部17によって駆動される。シャッタ駆動部17は、レリーズボタンの押下により発生する信号と、AE処理部29から出力されるシャッタスピードデータとに応じて、シャッタ16の開閉の制御を行う。
【0026】
シャッタ16の後方には撮像素子18を有している。本実施形態においては、CMOSタイプの撮像素子18を用いるものとする。撮像素子18は、多数の受光素子を2次元的に配列した光電面を有しており、撮影レンズ10等の光学系を通過した被写体光がこの光電面に結像し、光電変換される。光電面の前方には、各画素に光を集光するためのマイクロレンズアレイと、R,G,B各色のフィルタが規則的に配列されたカラーフィルタアレイとが配置されている。撮像素子18は、撮像素子制御部19から供給される読み出し信号に同期して、画素毎に蓄積された電荷を1画素ずつアナログ撮影信号として出力する。なお、各画素において電荷を蓄積する時間、すなわち露光時間は、撮像素子制御部19から与えられる電子シャッタ駆動信号によって決定される。この露光時間は、後述するAE処理部29により設定される。また、撮像素子18は撮像素子制御部19により、あらかじめ定められた大きさのアナログ撮像信号が得られるようにゲインが調整されている。
【0027】
撮像素子18から読み出されたアナログ撮影信号は、アナログフロントエンド(AFE)20に入力される。AFE20は、アナログ信号のノイズを除去する相関2重サンプリング回路(CDS)と、アナログ信号のゲインを調節するオートゲインコントローラ(AGC)と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(ADC)とからなる。このデジタル信号に変換された画像データは、画素毎にR,G,Bの濃度値を持つRAWデータである。
【0028】
タイミングジェネレータ21は、同期信号を発生させるものであり、このタイミング信号をシャッタ駆動部17、撮像素子制御部19、およびAFE20に供給することにより、レリーズボタンの操作、シャッタ16の開閉、撮像素子18からの電荷の読み出し、およびAFE20の処理の同期をとっている。なお、撮像素子18からの電荷の読み出しの最高値(最高電荷読み出し時間)は、撮像素子18およびタイミングジェネレータ21の仕様によりあらかじめ定められている。
【0029】
また、デジタルカメラ1は撮影時において必要なときに発光されるフラッシュ24を有する。フラッシュ24は、発光制御部23によりその発光が制御される。
【0030】
また、デジタルカメラ1は、AFE20が出力した画像データをデータバス41を介して他の処理部に転送する画像入力コントローラ25、および画像入力コントローラ25から転送された画像データを一時記憶するフレームメモリ26を備える。
【0031】
フレームメモリ26は、画像データに対して後述の各種処理を行う際に使用する作業用メモリであり、例えば、一定周期のバスクロック信号に同期してデータ転送を行うSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)が使用される。
【0032】
表示制御部27は、フレームメモリ26に格納された画像データをスルー画像としてモニタ5に表示させたり、再生モード時に記録メディア34に保存されている画像をモニタ5に表示させたりするためのものである。なお、スルー画像は、撮影モードが選択されている間、タイミングジェネレータ21が発生する同期信号に同期して、所定時間間隔で撮像系9により撮影される。
【0033】
AF処理部28およびAE処理部29は、プレ画像に基づいて撮影条件を決定する。このプレ画像とは、レリーズボタンが半押しされることによって発生する半押し信号を検出したCPU40が撮像素子18にプレ撮影を実行させた結果、フレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像である。
【0034】
AF処理部28は、プレ画像に基づいてフォーカスレンズ10aの合焦位置を検出する。合焦位置の検出方式としては、例えば、所望とする被写体にピントが合った状態では画像のコントラストが高くなるという特徴を利用して合焦位置を検出するTTL方式を用いる。
【0035】
AE処理部29は、プレ画像に基づいて被写体輝度を測定し、測定した被写体輝度に基づいて絞り値およびシャッタスピードを露出設定値として設定して出力する(AE処理)。具体的には図4に示すようにプレ画像を8×8の64の測光領域に分割し、各領域の明るさおよびあらかじめ定められて後述する内部メモリ35に記憶されたプログラム線図に基づいて、シャッタスピードおよび絞り値を設定する。なお、シャッタスピードが撮像素子18の露光時間に相当する。
【0036】
ここで、本実施形態によるデジタルカメラ1においては、通常撮影モードに設定されている場合には、1回のレリーズボタンの全押し操作により1回の露光による撮影を行う。一方、流し撮りモードに設定されている場合には、通常1回の露光により撮影を行うところを、複数回に分割して露光を行い、複数回の露光にそれぞれ対応する複数の画像を取得する。なお、複数の画像は後述するように合成されて合成画像が生成される。このため、流し撮りモードでは、AE処理部29は、プレ画像に基づいて設定したシャッタスピード、すなわち露光時間(T0とする)に基づいて、分割後の1回分の露光時間(T1とする)および露光回数nを算出する。
【0037】
なお、通常撮影モードによる撮影時においては、AE処理部29が設定したシャッタスピードによりシャッタ16が開放して撮像素子18がシャッタスピードに対応する露光時間T0露光される。一方、流し撮りモードによる撮影時においては、レリーズボタンの押下後、設定された露光回数nの撮影が行われるまでの間シャッタ16は開放とされ、その間、設定された露光時間T1の間隔により撮像素子18から繰り返し電荷が読み出される。
【0038】
図5は通常撮影モード時における1回の撮影によるシャッタスピードすなわち露光時間を示す図、図6は流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図である。図5に示すように、分割しての撮影を行わない場合の露光時間T0が1/7.5秒である場合、露光時間T1が1/480秒であるとすると、流し撮りモード時においては図6に示すように露光時間T1が1/480秒の露光が64回行われることとなる。なお、図6においては6回までの露光を示している。
【0039】
ここで、撮像素子18が最高で毎秒300フレームの分の電荷を読み出すことが可能なものである場合、最高電荷読み出し時間は1/300秒であるため、露光時間T1が1/480秒の場合、露光時間T1は最高電荷読み出し時間よりも短くなる。このように、撮像素子18の最高電荷読み出し時間よりも露光時間T1が短いと、撮像素子18への露光を連続させることができない。したがって、複数の画像の撮影は時間的に連続しなくなるため、合成画像において連続すべき背景が断続的に存在することとなり、その結果、背景が滑らかに流れずに多重化してしまう。
【0040】
このため、本実施形態においては、流し撮りモードに設定されている場合、撮像素子18の最高電荷読み出し時間以上となるように、複数の画像を取得するための各撮影時のシャッタスピードすなわち露光時間T1を設定し、設定された露光時間T1およびデジタルカメラ1において設定された設定されたISO感度に応じて、内部メモリ35に記憶されたプログラム線図を参照して、絞り値を設定する。図7はプログラム線図の例を示す図である。なお、図7において横軸はシャッタスピード(すなわち露光時間)TVを、縦軸は絞り値AVをそれぞれ表す。EVは測光により得られる露出値である。なお、N,T,Aはあらかじめ定められた値である。図7に示すように、AE処理部29は、デジタルカメラ1が流し撮りモードが設定されている場合、例えば、各撮影時のシャッタスピードをT+3に設定し、デジタルカメラ1に設定されたISO感度に応じて各撮影時の絞り値を設定する。
【0041】
ここで、分割しての撮影を行わない場合の露光時間T0が1/7.5秒である場合、設定された露光時間T1が1/60であるとすると、流し撮りモード時においては図8に示すように露光時間T1が1/60秒の露光が連続して8回行われることとなる。また、撮像素子18の最高読み出し時間が1/300秒の場合、露光時間T1は撮像素子18の最高電荷読み出し時間よりも長いため、図8に示すように撮像素子18への露光を連続させることができる。
【0042】
AWB処理部30は、撮影時のホワイトバランスを自動調整する(AWB処理)。
【0043】
画像処理部31は、本画像の画像データに対して、明るさ補正、階調補正、シャープネス補正、および色補正等の画質補正処理、並びにRAWデータを輝度信号であるYデータと、青色色差信号であるCbデータおよび赤色色差信号であるCrデータとからなるYCデータに変換するYC処理を行う。この本画像とは、レリーズボタンが全押しされることによって実行される本撮影により撮像素子18から取り込まれ、AFE20、画像入力コントローラ25経由でフレームメモリ26に格納された画像データにより表される画像である。
【0044】
圧縮/伸長処理部32は、画像処理部31によって処理が行われた本画像の画像データに対して、例えば、JPEG等の圧縮形式で圧縮処理を行い、画像ファイルを生成する。この画像ファイルには、Exifフォーマット等に基づいて、撮影日時等の付帯情報が格納されたタグが付加される。
【0045】
メディア制御部33は、不図示のメディアスロットルに着脱自在にセットされた記録メディア34にアクセスして、画像ファイルの書き込みと読み込みの制御を行う。
【0046】
内部メモリ35は、デジタルカメラ1において設定される各種定数、ルックアップテーブル、およびCPU40が実行するプログラム等を記憶する。
【0047】
また、デジタルカメラ1は、動き解析部36および合成部37を備える。
【0048】
動き解析部36は、画像の動きを解析する。具体的には、流し撮りモードによる撮影により取得された複数の画像において1つの基準画像を設定し、基準画像および他の画像間の対応する画素の移動方向および移動量を求め、移動方向および移動量に基づいて基準画像における画素がどのように移動しているかを解析する。例えば、流し撮りモードの撮影により図9に示すように3つの画像G1〜G3が取得された場合において、基準画像を画像G1とすると、基準画像G1における自動車に対応する部分の画素の移動量は非常に小さいため、動き解析部36は基準画像G1における自動車に対応する領域の画素の動きが小さいとの解析結果を出力する。なお、動きが小さいか否かの判断は、移動量が所定のしきい値より小さいか否かを判定することにより行えばよい。一方、基準画像G1における背景の家は大きく移動しているため、動き解析部36は基準画像G1における自動車に対応する領域以外の領域の画素の動きが大きいとの解析結果を出力する。
【0049】
なお、本撮影の前においては、連続して取得される2つのスルー画像間において、動きの解析を行うようにしてもよい。
【0050】
合成部37は、動き解析部36による解析結果に基づいて、流し撮りモードの撮影により取得された複数の画像を合成する。具体的には、複数の画像における動きの小さい領域の位置が同じ位置になるように重ね合わせることにより合成して、合成画像を生成する。例えば、複数の画像において中央の領域の動きが小さければ、中央の領域の位置が同じ意位置になるように複数の画像を重ね合わせることにより合成画像を生成する。なお、合成は、複数の画像について動きが小さい領域の位置の位置合わせを行った後に、複数の画像間の対応する画素値の平均値を算出することにより行えばよい。ここで、位置合わせは、複数の画像から1つの基準画像を選択し、基準画像に含まれる動きが小さい領域の位置に他の画像における動きが小さい領域の位置が一致するように、他の画像を回転、拡大縮小等、変形することにより行えばよい。
【0051】
なお、動き解析部36による解析結果に基づいて、複数の画像の動きが小さい領域を動体として検出し、動体の位置が同じ位置になるように複数の画像を重ね合わせることにより合成して合成画像を生成するようにしてもよい。
【0052】
これにより、図9に示すように3つの画像G1〜G3から生成された合成画像G0は、図10に示すように自動車が静止し、背景の家が流れたものとなる。ここで、図10においては背景の家の画像が流されている状態を横方向の線により表すものとする。
【0053】
CPU40は、レリーズボタン2、操作ボタン8およびAE処理部29等の各種処理部からの信号に応じてデジタルカメラ1の本体各部を制御する。
【0054】
データバス41は、各種処理部、フレームメモリ26およびCPU40等に接続されており、画像データおよび各種指示等のやり取りを行う。
【0055】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図11は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、本発明は流し撮りモードにおける撮影の処理に特徴を有するため、以下に説明する実施形態においては、流し撮りモードが設定されている場合の処理について説明する。
【0056】
CPU40はレリーズボタン2が半押しされたか否かを監視しており(ステップST1)、レリーズボタン2が半押しされると、撮像系9がプレ撮影を行い(ステップST2)、AE処理部29がプレ撮影により取得されたプレ画像を用いてAE処理を行う(ステップST3)。この際、上述したようにシャッタスピードすなわち露光時間T1は、撮像素子18の最高読み出し時間以上となるように設定される。
【0057】
次いでCPU40はレリーズボタン2が全押しされたか否かの監視を開始し(ステップST4)、ステップST4が肯定されると本撮影を行い、複数の画像を取得する(ステップST5)。次いで、動き解析部36が本撮影により取得された複数の画像の動きを解析し(ステップST6)、合成部37が動きの解析結果に基づいて複数の画像を重ね合わせることにより合成画像を生成する(ステップST7)。さらに画像処理部31が合成画像に対して画像処理を行う(ステップST8)。そして、圧縮/伸長処理部32が、画像処理が施された合成画像の画像データから画像ファイルを生成し(ステップST9)、メディア制御部33が画像ファイルを記録メディア34に記録し(ステップST10)、処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、複数の画像を時間的に連続して取得するに際し、撮像素子18の最高読み出し時間以上の露光時間となるように撮像系9の露出を設定するようにしたため、撮像素子18への露光を連続させることができる。したがって、複数の画像を時間的に連続して取得することができるため、合成画像上において背景が断続的に存在することがなくなり、その結果、背景の多重化を防止することができる。
【0059】
なお、上記実施形態においては、複数の画像を取得するための各撮影時の露光時間を同一としているが、各撮影時において別々の露光時間を設定するようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1について説明したが、コンピュータを、上記のAE処理部29、動き解析部36および合成部37に対応する手段として機能させ、図11に示すような処理を行わせるプログラムも本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も本発明の実施形態の1つである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(正面側)
【図2】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの外観を示す図(背面側)
【図3】本発明の実施形態による撮影装置を適用したデジタルカメラの内部構成を示す概略ブロック図
【図4】測光領域への分割の一例を示す図
【図5】通常撮影モード時における1回の撮影による露光時間を示す図
【図6】流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図(その1)
【図7】プログラム線図を示す図
【図8】流し撮りモード時における1回の撮影による露光時間を示す図(その2)
【図9】流し撮りモードにより取得された複数の画像を示す図(飽和領域無し)
【図10】合成画像を示す図(飽和領域無し)
【図11】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0062】
1 デジタルカメラ
5 モニタ
9 撮像系
10 撮影レンズ
11 フォーカスレンズ駆動部
23 発光制御部
24 フラッシュ
28 AF処理部
29 AE処理部
36 動き解析部
37 合成部
40 CPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段と、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する露出処理手段と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記複数の画像の動きを解析する動き解析手段と、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する合成手段とを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記合成手段は、前記動きの解析結果に基づいて前記複数の画像のそれぞれから動体を検出し、該複数の画像のそれぞれにおける前記動体の位置が略一致するように前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手段であることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記露出処理手段は、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を同一に設定する手段であることを特徴とする請求項1または2記載の撮影装置。
【請求項4】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法であって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定し、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得し、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成することを特徴とする撮影装置の制御方法。
【請求項5】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する手順と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得する手順と、
前記複数の画像の動きを解析する手順と、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段と、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する露出処理手段と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得するよう、前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、
前記複数の画像の動きを解析する動き解析手段と、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する合成手段とを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記合成手段は、前記動きの解析結果に基づいて前記複数の画像のそれぞれから動体を検出し、該複数の画像のそれぞれにおける前記動体の位置が略一致するように前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手段であることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記露出処理手段は、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を同一に設定する手段であることを特徴とする請求項1または2記載の撮影装置。
【請求項4】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法であって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定し、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得し、
前記複数の画像の動きを解析し、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成することを特徴とする撮影装置の制御方法。
【請求項5】
撮影により画像を取得する、撮像素子を有する撮影手段を備えた撮影装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
複数の画像を時間的に連続させて順次取得するに際し、前記複数の画像を取得するための各撮影時における前記撮像素子の露光時間を前記撮像素子の最高読み出し時間以上に設定する手順と、
前記設定された露光時間により前記複数の画像を時間的に連続させて順次取得する手順と、
前記複数の画像の動きを解析する手順と、
該動きの解析結果に基づいて、前記複数の画像を合成して合成画像を生成する手順とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−141483(P2010−141483A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314321(P2008−314321)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
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