説明

撹拌混合用安全冶具とそれを用いた液状物の撹拌混合方法

【課題】ポリビーカー等の可撓性容器により液状物を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる撹拌混合用安全冶具とそれを用いた液状物の撹拌混合方法を提供する。
【解決手段】回転羽根により攪拌混合する液状物を収容する有底筒状の可撓性容器を保持する内周部6を有する枠体2と、この枠体2に設けられ、この枠体2に保持した可撓性容器内の液状物を回転羽根により攪拌混合する際に作業者が把むための把持部20とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌混合用安全冶具とそれを用いた液状物の撹拌混合方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、例えば、ポリビーカー等の可撓性容器を用いた比較的小さな実験スケールでの液状物の撹拌混合作業等に用いられる撹拌混合用安全冶具とそれを用いた液状物の撹拌混合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨てのポリビーカーを用いて液状物を攪拌混合する際には、攪拌機の回転軸に設けた回転羽根をポリビーカー内の液状物に浸漬し、この回転羽根を回転させることが行われている。
【0003】
このとき、回転羽根の回転速度が速い場合や、あるいは回転羽根の直径が大きい場合には、この回転羽根がポリビーカーの内周部に接触するとポリビーカーが破損することもあり、攪拌混合作業の安全性を確保することが要求される。
【0004】
また、ポリビーカー内の液状物を均一に混合するためには、ポリビーカー内での回転羽根の位置を上下方向や横方向に移動させて混ぜ合わせることが必要とされる場合が多い。
【0005】
従来、攪拌混合時には、手でポリビーカーを把み保持することや、あるいは撹拌機本体に治具等を用いてポリビーカーを固定して保持することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−85073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液状物の量が多い場合、粘度が高い場合、あるいは回転羽根の回転速度が速い場合等には、ポリビーカーには攪拌機のモータによる強い力が負荷される。そうすると、可撓性のポリビーカーは撹拌混合中に変形し易くなり、これにより回転羽根がポリビーカーの淵に接触する場合もある。このとき、素手でポリビーカーを保持すると、最悪の場合はポリビーカーが破損して作業者の手を傷つける場合もある。
【0008】
一方、撹拌機本体に治具等を用いてポリビーカーを固定して保持する場合、上記のような危険性を回避することはできる。ところが、ポリビーカー内の液状物を上下方向や横方向に混ぜ合わせる際にその方向へ回転羽根を移動させる必要がある。そしてポリビーカーの位置を固定すると、回転羽根を回転軸とともに移動するのは時間がかかり、また微調整もしにくいため、手による保持に比べると、どうしても撹拌混合不足が起こり易くなる。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ポリビーカー等の可撓性容器により液状物を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる撹拌混合用安全冶具とそれを用いた液状物の撹拌混合方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撹拌混合用安全冶具は、回転羽根により攪拌混合する液状物を収容する有底筒状の可撓性容器を保持する内周部を有する枠体と、この枠体に設けられ、この枠体に保持した可撓性容器内の液状物を回転羽根により攪拌混合する際に作業者が把むための把持部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この撹拌混合用安全冶具において、枠体の内周部に、可撓性容器と枠体との滑りを抑制する滑り抑制部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
この撹拌混合用安全冶具において、枠体の内周部は、下方に向かって縮径する傾斜勾配を有する可撓性容器の外周部に沿った傾斜勾配を有し、枠体の上面部および下面部が開口していることが好ましい。
【0013】
この撹拌混合用安全冶具において、枠体は、把持部が設けられた外枠部と、この外枠部の内側に設けられた内枠部とを備え、内枠部は、可撓性容器を保持する保持面を有する複数の保持部材を備え、複数の保持部材は、外枠部の側面部を貫通する螺合穴に螺着されたねじ部の内側先端部に設けられ、ねじ部を外枠部の外方から操作して螺進させることにより、複数の保持部材の各々の保持面から構成される枠体の内周部の径を調節して可撓性容器の外周部に適合させて可撓性容器を保持可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
この撹拌混合用安全冶具において、枠体の内周部は、傾斜勾配を有さず底面部に対して垂直に設けられた可撓性容器の外周部に沿って垂直に設けられるとともに、枠体の下面部側に、可撓性容器を下方から保持する底面板部を備えることが好ましい。
【0015】
本発明の液状物の撹拌混合方法は、上記の撹拌混合用安全冶具を用いて、液状物を収容した可撓性容器を枠体で保持し、把持部を作業者が把みながら可撓性容器を液状物に浸漬した回転羽根に対して上下方向および/または横方向に相対移動させて攪拌混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の撹拌混合用安全冶具によれば、可撓性容器により液状物を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる。
【0017】
本発明の撹拌混合方法によれば、可撓性容器により液状物を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の撹拌混合用安全冶具の一実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の撹拌混合用安全冶具の別の実施形態を概略的に示す平面図である。
【図4】図3の撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明の撹拌混合用安全冶具の別の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5の撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の撹拌混合用安全冶具の一実施形態を概略的に示す斜視図、図2は、この撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【0021】
この実施形態の撹拌混合用安全冶具1は、例えば、比較的小さな実験スケールでの液状物の撹拌混合作業に用いられる使い捨てのポリビーカー等の可撓性容器30を保持するものであり、枠体2を備えている。枠体2は、金属や合成樹脂等の剛性材料から形成され、図1に示すように上面部3および下面部4がともに開口している。
【0022】
枠体2の側面部5の内周部6は、図2に示す有底筒状の可撓性容器30の外周部33に沿った形状を有している。すなわち、可撓性容器30の外周部33は逆円錐状に下方に向かって縮径する傾斜勾配を有し、枠体2の内周部6は、この可撓性容器30の外周部33に沿って下方に向かって縮径する鋭角θの傾斜勾配(図1)を有している。
【0023】
図示はしないが、枠体2の内周部6には、可撓性容器30と枠体2との滑りを抑制する滑り抑制部材を設けることができる。例えば、枠体2の内周部6よりも可撓性容器30との摩擦力の高いクロロプレンゴム等のシートを滑り抑制部材として用いて、これを枠体2の内周部6の全面または一部の表面に接着する等により設けることができる。例えば、幅20mm程度、厚み3mm程度の短冊状シートを滑り抑制部材として枠体2の内周部6に巻くことにより設けることができる。
【0024】
枠体2の側面部5の外周部7には、外方に延びる棒状の把持部20が設けられている。この把持部20は、枠体2に取り付けたものであってもよく、枠体2と一体に成形されたものであってもよい。
【0025】
次に、以上のように構成される撹拌混合用安全冶具1を用いた撹拌混合操作について図2を参照しながら説明する。
【0026】
最初に、攪拌混合する液状物40を収容する可撓性容器30を枠体2で保持する。なお、液状物40の可撓性容器30内への投入は、可撓性容器30を枠体2で保持する前であってもよく、保持した後であってもよい。液状物40としては、例えば、水溶液、溶剤混合液、液体樹脂、液体と有機粉体もしくは無機粉体との混合物等が挙げられる。
【0027】
具体的には、可撓性容器30を底面部34側より撹拌混合用安全冶具1の枠体2に通過させる。これにより、可撓性容器30の高さ位置において外周部33と枠体2の内周部6との径がほぼ一致した箇所で可撓性容器30が枠体2に密着し保持される。
【0028】
次に、撹拌機50の回転羽根52を可撓性容器30内の液状物40に浸漬し、撹拌機50を駆動して回転羽根52を回転させる。撹拌機50は、例えば、比較的小さな実験スケールに従来より用いられているものを用いることができる。この実施形態では回転軸53の下端部に設けられた回転羽根52を不図示のモータで回転駆動するものを用いている。
【0029】
そして、把持部20を作業者が手60で把みながら、撹拌混合用安全冶具1の枠体2により保持した可撓性容器30を液状物40に浸漬した回転羽根52に対して上下方向および/または横方向に相対移動させて攪拌混合することができる。この操作は、把持部20を把む作業者が撹拌混合用安全冶具1により保持された可撓性容器30を持ち上げた状態で行うこともでき、あるいは可撓性容器30を攪拌機本体51に置いた状態で横方向にずらして行うこともできる。
【0030】
以上に説明したこの実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、可撓性容器30により液状物40を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる。すなわち、可撓性容器30に直接手60で触れずに安全に撹拌混合作業を行うことができる。そして、可撓性容器30に対する回転羽根52の相対位置を、回転羽根52自体を移動させるのではなく撹拌混合用安全冶具1により保持した可撓性容器30を手60で直接に移動させることで、均一な攪拌混合を簡易に行うことができる。
【0031】
また、この実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、枠体2の内周部6に可撓性容器30の外周部33に沿って下方に向かって縮径する鋭角θの傾斜勾配を設けている。これにより、可撓性容器30の外周部33と枠体2の内周部6との径がほぼ一致した箇所で枠体2に可撓性容器30が密着し保持される。また、可撓性容器30が液状物40を含むことにより、その自重により枠体2との密着性はさらに増すことになる。従って、撹拌混合用安全冶具1により可撓性容器30を密着性の高い状態で保持して安全に攪拌混合作業を行うことができる。
【0032】
また、この実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、可撓性容器30と枠体2との滑りを抑制する滑り抑制部材を枠体2の内周部6に設けることができる。これにより、攪拌混合時において可撓性容器30と枠体2との滑りが抑制される。従って、撹拌混合用安全冶具1により可撓性容器30を摩擦力で保持して安全に攪拌混合作業を行うことができる。
【0033】
図3は、本発明の撹拌混合用安全冶具の別の実施形態を概略的に示す平面図、図4は、この撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【0034】
この実施形態の撹拌混合用安全冶具1は、枠体2が、外枠部9と、この外枠部9の内側に設けられた内枠部12とを備えている。
【0035】
外枠部9は、一定の筒型形状を有し、その外周部11には把持部20が設けられている。
【0036】
内枠部12は、複数の保持部材13、13・・・を備えている。保持部材13は、可撓性容器30の外周部33に沿った円弧形状の横断面を有する板形状であり、これらは可撓性容器30を保持する保持面14を有している。そして複数の保持部材13、13・・・の各々の保持面14、14・・・より枠体2の内周部6が構成されている。
【0037】
保持部材13は、外枠部9の側面部10を貫通する螺合穴15に螺着された蝶ねじ等のねじ部16の内側先端部に固定して設けられている。
【0038】
ねじ部16を外枠部9の外方から回転操作して螺進させることにより、複数の保持部材13、13・・・の各々の保持面14、14・・・から構成される枠体2の内周部6の径を調節できるようになっている。
【0039】
次に、以上のように構成される撹拌混合用安全冶具1を用いた撹拌混合操作について図2を参照しながら説明する。
【0040】
最初に、攪拌混合する液状物40を収容する可撓性容器30を枠体2で保持する。例えば、可撓性容器30を底面部34側より撹拌混合用安全冶具1の枠体2に通過させ、これにより、可撓性容器30を囲むように撹拌混合用安全冶具1を配置する。このとき、複数の保持部材13、13・・・の各々の保持面14、14・・・から構成される枠体2の内周部6の径は、ねじ部16を適宜に調節することにより、可撓性容器30の外周部33の径と同等かそれよりもやや大きくしておく。
【0041】
次に、ねじ部16を外枠部9の外方から回転操作して螺進させることにより、これに対応する保持部材13を可撓性容器30側に押し出し、これにより複数の保持部材13、13・・・の各々の保持面14、14・・・から構成される枠体2の内周部6が可撓性容器30の外周部33に適合し、可撓性容器30が枠体2に密着し保持される。
【0042】
次に、撹拌機50の回転羽根52を可撓性容器30内の液状物40に浸漬し、撹拌機50を駆動して回転羽根52を回転させる。そして、把持部20を作業者が手60で把みながら、撹拌混合用安全冶具1の枠体2により保持した可撓性容器30を液状物40に浸漬した回転羽根52に対して上下方向および/または横方向に相対移動させて攪拌混合することができる。
【0043】
以上に説明したこの実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、可撓性容器30により液状物40を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる。すなわち、可撓性容器30に直接手60で触れずに安全に撹拌混合作業を行うことができる。そして、可撓性容器30に対する回転羽根52の相対位置を、回転羽根52自体を移動させるのではなく撹拌混合用安全冶具1により保持した可撓性容器30を手60で直接に移動させることで、均一な攪拌混合を簡易に行うことができる。
【0044】
また、この実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、保持部材13とねじ部16を用いて枠体2に内枠部12を設け、枠体2の内周部6の径を調節して可撓性容器30の外周部33に適合させて可撓性容器30を保持可能に構成している。従って、外周部33の径の異なる可撓性容器30ごとに撹拌混合用安全冶具1を作製する必要がなく、1つの撹拌混合用安全冶具1を径の異なる複数種の可撓性容器30の保持に用いることができる。
【0045】
図5は、本発明の撹拌混合用安全冶具の別の実施形態を概略的に示す斜視図、図6は、この撹拌混合用安全冶具の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【0046】
この実施形態の撹拌混合用安全冶具1は、外周部33が傾斜勾配を有さず底面部34に対して垂直に設けられた可撓性容器30に用いられるものである。そして撹拌混合用安全冶具1の枠体2の内周部6は、可撓性容器30の外周部33に沿って垂直に設けられている。
【0047】
さらに撹拌混合用安全冶具1は、下面部4側に、可撓性容器30を下方から保持する底面板部8を備えている。すなわち撹拌混合用安全冶具1は、垂直に設けられた内周部6を有する枠体2と底面板部8とからなり上面部3が開口した有底筒状に形成されている。
【0048】
そして枠体2の側面部5の外周部7には、外方に延びる棒状の把持部20が設けられている。
【0049】
次に、以上のように構成される撹拌混合用安全冶具1を用いた撹拌混合操作について図6を参照しながら説明する。
【0050】
最初に、攪拌混合する液状物40を収容する可撓性容器30を枠体2と底面板部8で保持する。具体的には、可撓性容器30を枠体2の上面部3側から収容し、可撓性容器30の外周部33とほぼ同径の枠体2の内周部6により可撓性容器30を保持するとともに、可撓性容器30を底面板部8で持ち上げて保持する。
【0051】
次に、撹拌機50の回転羽根52を可撓性容器30内の液状物40に浸漬し、撹拌機50を駆動して回転羽根52を回転させる。そして、把持部20を作業者が手60で把みながら、撹拌混合用安全冶具1の枠体2により保持した可撓性容器30を液状物40に浸漬した回転羽根52に対して上下方向および/または横方向に相対移動させて攪拌混合することができる。
【0052】
以上に説明したこの実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、可撓性容器30により液状物40を攪拌混合する作業を安全かつ簡易に行うことができる。すなわち、可撓性容器30に直接手60で触れずに安全に撹拌混合作業を行うことができる。そして、可撓性容器30に対する回転羽根52の相対位置を、回転羽根52自体を移動させるのではなく撹拌混合用安全冶具1により保持した可撓性容器30を手60で直接に移動させることで、均一な攪拌混合を簡易に行うことができる。
【0053】
また、この実施形態の撹拌混合用安全冶具1によれば、可撓性容器30を下方から保持する底面板部8を設けているので、外周部33が傾斜勾配を有さず底面部34に対して垂直に設けられた可撓性容器30であっても、底面板部8により可撓性容器30の落下を防止するとともに保持力を高め、安全に攪拌混合作業を行うことができる。
【0054】
以上に、実施形態により本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
可撓性容器30として外周部33が傾斜勾配を有する1Lポリビーカーを用いるとともに、図1および図2に示すように、把持部20を有し、枠体2の内周部6に可撓性容器30の外周部33に沿って傾斜勾配を設けた撹拌混合用安全冶具1を用いた。この撹拌混合用安全冶具1に可撓性容器30を保持し、回転羽根52を有する撹拌機50により攪拌混合作業を行った。
<実施例2>
可撓性容器30として実施例1と同様の1Lポリビーカーを用いるとともに、図3および図4に示す撹拌混合用安全冶具1を用いた。すなわち、枠体2に内枠部12を設け、複数の保持部材13の各々の保持面14から構成される枠体2の内周部6の径をねじ部16により調節して可撓性容器30の外周部33に適合させる撹拌混合用安全冶具1を用いた。この撹拌混合用安全冶具1に可撓性容器30を保持し、回転羽根52を有する撹拌機50により攪拌混合作業を行った。
<実施例3>
可撓性容器30として外周部33が傾斜勾配を有さず底面部34に対して垂直に設けられた1Lポリビーカーを用いるとともに、図5および図6に示すように、内周部6が垂直な枠体2と底面板部8とを備える撹拌混合用安全冶具1を用いた。この撹拌混合用安全冶具1に可撓性容器30を保持し、回転羽根52を有する撹拌機50により攪拌混合作業を行った。
<比較例1>
冶具を用いずに手で直接に可撓性容器30(ポリビーカー)を保持し、それ以外は実施例1と同様に攪拌混合作業を行った。
<比較例2>
撹拌機本体51に治具を用いて可撓性容器30(ポリビーカー)を固定して保持し、それ以外は実施例1と同様に攪拌混合作業を行った。
【0056】
上記の実施例および比較例において、撹拌機による攪拌混合作業は、液状物として不飽和ポリエステル樹脂(昭和高分子(株)製「M−580」)500gおよび炭酸カルシウム(白石工業(株)製「ホワイトンSB青」)750gの予備混合物を可撓性容器30(ポリビーカー)に1kg投入して行った。攪拌混合時には、均一な混合を促進するために適宜の方法にて回転羽根52の位置の変更を行った。
【0057】
作業の安全性および作業性について次の基準により評価した。
[安全性]
○:安全
×:危険
[作業性]
○:作業性が高い
△:作業性がやや低い
×:作業性が低い
その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より、実施例1〜3では安全に攪拌混合作業を行うことができ、撹拌混合用安全冶具1の把持部20を把みながらこれに保持した可撓性容器30を上下方向や横方向に移動して容易に回転羽根52の位置を変更することができた。
【0060】
一方、比較例1では手で直接に可撓性容器30を保持して攪拌混合作業を行ったが、作業の安全性に欠けるものであった。
【0061】
比較例2では撹拌機本体51に可撓性容器30を固定して攪拌混合作業を行ったが、作業の安全性は高いものの、回転羽根52の位置の移動に時間を要したり、位置の微調整が困難な場合があり、作業性が低下した。
【符号の説明】
【0062】
1 撹拌混合用安全冶具
2 枠体
3 上面部
4 下面部
6 内周部
8 底面板部
9 外枠部
12 内枠部
13 保持部材
14 保持面
16 ねじ部
20 把持部
30 可撓性容器
33 外周部
40 液状物
52 回転羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転羽根により攪拌混合する液状物を収容する有底筒状の可撓性容器を保持する内周部を有する枠体と、この枠体に設けられ、この枠体に保持した前記可撓性容器内の前記液状物を前記回転羽根により攪拌混合する際に作業者が把むための把持部とを備えることを特徴とする撹拌混合用安全冶具。
【請求項2】
前記枠体の内周部に、前記可撓性容器と前記枠体との滑りを抑制する滑り抑制部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撹拌混合用安全冶具。
【請求項3】
前記枠体の内周部は、下方に向かって縮径する傾斜勾配を有する前記可撓性容器の外周部に沿った傾斜勾配を有し、前記枠体の上面部および下面部が開口していることを特徴とする請求項1に記載の撹拌混合用安全冶具。
【請求項4】
前記枠体は、前記把持部が設けられた外枠部と、この外枠部の内側に設けられた内枠部とを備え、前記内枠部は、前記可撓性容器を保持する保持面を有する複数の保持部材を備え、前記複数の保持部材は、前記外枠部の側面部を貫通する螺合穴に螺着されたねじ部の内側先端部に設けられ、前記ねじ部を前記外枠部の外方から操作して螺進させることにより、前記複数の保持部材の各々の保持面から構成される前記枠体の内周部の径を調節して前記可撓性容器の外周部に適合させて前記可撓性容器を保持可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌混合用安全冶具。
【請求項5】
前記枠体の内周部は、傾斜勾配を有さず底面部に対して垂直に設けられた前記可撓性容器の外周部に沿って垂直に設けられるとともに、前記枠体の下面部側に、前記可撓性容器を下方から保持する底面板部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌混合用安全冶具。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか一項に記載の撹拌混合用安全冶具を用いて、前記液状物を収容した前記可撓性容器を前記枠体で保持し、前記把持部を作業者が把みながら前記可撓性容器を前記液状物に浸漬した前記回転羽根に対して上下方向および/または横方向に相対移動させて攪拌混合することを特徴とする液状物の撹拌混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245400(P2011−245400A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119887(P2010−119887)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】