説明

撹拌礁およびそれを用いた海底の撹拌構造

【課題】海苔の芽落ちや色落ちを防止することが可能な撹拌礁およびそれを用いた海底の撹拌構造を提供する。
【解決手段】撹拌礁1は、河口の付近の海中に設置される撹拌礁であって、複数の格子壁を有する中空の枠体2の上流側格子壁2dから空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流を当該空間部10の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流を空間部10の内部で縦方向に回転させて渦流S7を生成する案内部3を備えている。案内部3は、枠体2の下流側格子壁2cおよび上側格子壁2bに設けられている。さらに、案内部3は、枠体2の空間部10の内部の海水を撹拌礁1の外部へ吹き出す吹出口13、14を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底に設置され、海水の撹拌を行う撹拌礁およびそれを用いた海底の撹拌構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚類や海苔などの繁殖のために、鋼材またはコンクリートなどで構成された枠体などからなる魚礁が海底に設置されている。
【0003】
従来の魚礁には、例えば特許文献1記載の魚礁のように、海底の餌を巻き上げるために傾斜整流板を備えたものが種々提案されている。このような魚礁では、枠体内部に流入した潮流を、傾斜整流板により上向きに流れを変えて湧昇流に変えるとともに、その湧昇流をさらに水平整流板に当てて渦流を伴わせることにより、海底の栄養塩類を豊富に含んだ湧昇流を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3812857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、海苔の養殖がさかんに行われるようになり、海岸に近い河口付近においても海苔の養殖が行われるようになっているが、河口付近で海苔を養殖する場合にはその立地条件特有の問題として以下のような問題がある。すなわち、河口付近の海底では、河川から海に流入する淡水は、海水よりも冷たく比重が重いので、海水と交じり合わずにそのまま層となって海底付近を流れていく性質がある。このような冷たい淡水を多く含む水流がそのまま層となって海苔の養殖場所に流れ込むと、海苔の芽落ちや色落ちの原因になる。
【0006】
このような問題を解決するために、従来における特許文献1記載のような魚礁を河口付近に設置することが考えられるが、このような魚礁を用いても冷たい淡水を含む水流がその層を維持したまま上昇して海苔に接触するので、上記のような海苔の芽落ちや色落ちを解決することができない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、海苔の芽落ちや色落ちを防止することが可能な撹拌礁およびそれを用いた海底の撹拌構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、海底に沿って自然に流れる水流(例えば、河口付近の海底に沿って流れる冷たい淡水を含む水流など)の向きを変えて縦回転の渦流を生成することによってその水流と当該水流の周囲に存在する海水とを撹拌できるようにしたものである。
【0009】
すなわち、本発明の撹拌礁は、河口の付近の海中に設置される撹拌礁であって、複数の格子壁を有し、当該格子壁として、水流の上流側を向く上流側格子壁と、水流の下流側を向く下流側格子壁と、上側を向く上側格子壁とを含み、これらの格子壁がその内側に所定の空間部を囲むように配置され、当該空間部内に前記上流側格子壁を通じて前記水流が前記空間部内に進入可能な中空の枠体と、前記枠体の前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流を当該空間部の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流を前記空間部の内部で縦方向に回転させて渦流を生成する案内部とを備えており、前記空間部は、その内部に前記水流が縦回転して渦流を発生しながら当該水流の周囲の海水とともに撹拌されることが可能な大きさを有しており、前記案内部は、前記枠体の前記下流側格子壁および前記上側格子壁に設けられており、さらに、前記枠体の前記空間部の内部の海水を前記撹拌礁の外部へ吹き出す吹出口を有していることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、中空の枠体の上流側格子壁から空間部の内部へ流入して当該枠体の下流側格子壁まで来る水流を当該空間部の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流を空間部の内部で縦方向に回転させて渦流を生成する案内部を備えている。これにより、河口付近の海底に沿って流れる水流が上流側格子壁から枠体の空間部の内部へ流入したとき、当該水流は空間部内部において案内部によって上方へ案内されてから上流側へ案内され、空間部の内部で水流が縦回転して渦流を発生しながら当該水流の周囲の海水とともに撹拌される。そして、空間部の内部の海水は、案内部が有する吹出口から撹拌礁の外部へ吹き出される。したがって、撹拌礁に流入する水流の流れを利用して連続的に渦流を生成することが可能となり、それによって水流とその周囲の海水とが速やかに撹拌することができる。そして、撹拌後の海水が吹出口から撹拌礁の外部に吹き出されるので、海底付近を流れる冷たい淡水などの水流がそのまま層になって海苔に接触することがなくなり、海苔の芽落ちや色落ちを防止できる。
【0011】
前記案内部は、前記枠体の下流側格子壁の少なくとも一部を覆い、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流を上方へ案内するとともに当該下流側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する下流側案内板と、前記下流側案内板に隣接して配置され、前記枠体の上側格子壁の少なくとも一部を覆い、前記下流側案内板に沿って上昇する前記水流を上流側へ案内するとともに当該上側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する上側案内板とを有しているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、枠体の上流側格子壁から空間部の内部へ流入して下流側格子壁まで来る水流が、枠体の下流側格子壁の少なくとも一部を覆う下流側案内板によって、上方へ案内されるとともに当該下流側格子壁から枠体の外部へ流出することが阻止される。ついで、下流側案内板に沿って上昇する水流は、枠体の上側格子壁の少なくとも一部を覆う上側案内板によって、上流側へ案内されるとともに当該上側格子壁から枠体の外部へ流出することが阻止される。このように空間部内部に導入された水流が下流側案内板および上流側案内板によって連続的に案内されることによって縦回転の渦流を確実に発生させることができる。
【0013】
前記枠体の下流側格子壁は、当該枠体の上下方向に延びる立直格子壁と、当該立直格子壁の上端から上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁とを有しており、前記下流側案内板は、前記枠体の立直格子壁を覆うとともに前記下流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、前記水流を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、枠体の下流側格子壁が上流側へ向けて傾斜した斜面を有する構造、すなわち、下流側格子壁が上下方向に延びる立直格子壁と上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁とを有している場合において、下流側案内板が当該下流側格子壁の形状に合わせて立直格子壁を覆うとともに下流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、水流を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁から枠体の外部へ流出することを阻止するようにしている。これにより、下流側格子壁の立直格子壁および下流側斜行格子壁に設けられた下流側案内板に沿って水流を上方へ案内してから上流側の斜め上方へ案内することができるので、水流の流速が遅くても確実に渦流を生成できる。
【0015】
前記吹出口は、前記枠体の下流側斜行格子壁に配置されているのが好ましい。かかる構成によれば、吹出口が枠体の下流側斜行格子壁に配置されているので、撹拌した海水を撹拌礁から下流側へ向けて円滑に供給することができる。
【0016】
前記吹出口は、前記枠体の上側格子壁に配置されているのが好ましい。かかる構成によれば、吹出口が枠体の上側格子壁に配置されているので、海中におけるより水深の浅い所へ向けて、撹拌後の海水を吹き出すことができる。
【0017】
また、枠体の上側格子壁および下流側斜行格子壁の両方に吹出口が分散して形成された場合、撹拌後の海水を海中に分散して供給することができ、海底付近を流れる冷たい淡水などの水流をより速やかに撹拌礁の周囲の海水に分散させることができ、海苔の芽落ちや色落ちの防止効果がさらに増大する。
【0018】
前記枠体の上流側格子壁は、当該枠体の上下方向に延びる立直格子壁と、当該立直格子壁の上端から下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁とを有しており、前記案内部は、前記上側案内板に隣接して配置され、前記上流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、前記空間部の内部を前記上側案内板によって案内されて上流側へ流れる前記水流を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する上流側案内板をさらに備えているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、枠体の上流側格子壁が下流側へ向けて傾斜した斜面を有する構造、すなわち、上流側格子壁が上下方向に延びる立直格子壁と下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁とを有している場合において、案内部は、枠体の上流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、空間部の内部を上側案内板によって案内されて上流側へ流れる水流を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁から枠体の外部へ流出することを阻止する上流側案内板をさらに備えているので、空間部内部において上流側へ戻る水流が上流側案内板に沿って斜め下方へ案内され、上流側格子壁から連続的に導入される水流と円滑に合流することが可能になる。そのため、水流の流速が遅くてもより確実に渦流を生成できる。
【0020】
前記枠体は、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入する前記水流の流れと平行の方向に向かって延び、かつ、前記下流側格子壁、上側格子壁ならびに上流側格子壁のそれぞれに隣接する流れ方向格子壁を有しており、前記案内部は、前記下流側案内板の両側の縁に隣接して配置され、前記流れ方向格子壁の少なくとも一部を覆い、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流が前記下流側案内板に沿って水平方向へ流れて前記枠体の外部へ流出することを規制する規制板をさらに有しているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、案内部が、下流側案内板の両側の縁に隣接して配置され、枠体の流れ方向格子壁の少なくとも一部を覆う規制板を有しているので、この規制板によって、上流側格子壁から空間部の内部へ流入する水流が下流側案内板に沿って水平方向へ流れて枠体の外部へ流出することを規制することができる。そのため、水流の水平方向への流出を規制しながら水流を縦回転させて効率よく渦流を生成させることが可能になり、撹拌効果を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の海底の撹拌構造は、複数の撹拌礁を備え、これらの撹拌礁が河口付近の海底に設置された海底の撹拌構造であって、前記各撹拌礁は、上記のいずれかの撹拌礁からなり、前記水流の流れに直交する方向であって互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並べて配置され、前記第2列は、前記第1列よりも下流側に位置しており、前記第2列に並べられた撹拌礁は、前記水流の流れの方向から見て、隣接する前記第1列に並べられた撹拌礁の間に位置するように、配置されていることを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、上記のように構成された本発明の撹拌礁が水流の流れに直交する方向であって互いに平行に延びる複数の列に沿って並べられ、第1列よりも下流側に位置する第2列に並べられた撹拌礁が、水流の流れの方向から見て、隣接する第1列に並べられた撹拌礁の間に位置するように配置されており、当該第1列および第2列の撹拌礁がいわゆる千鳥状に配置されている。これにより、隣接する第1列の撹拌礁の間を流れる水流は、流路幅が狭められることによって流速が増す。そのため、下流側の第2列の撹拌礁には、流速が増した水流が流入されるので、より速く回転する渦流が生成され、水流とその周囲の海水との撹拌効果が向上し、その結果、海苔の芽落ちや色落ちの防止効果がさらに向上する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の撹拌礁によれば、河口付近における水流とその周囲の海水とが撹拌されることにより、海苔の芽落ちや色落ちを防止することができる。
【0025】
また、本発明の海底の撹拌構造によれば、水流とその周囲の海水との撹拌効果が向上するので、海苔の芽落ちや色落ちの防止効果がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係わる撹拌礁の斜視図である。
【図2】図1の撹拌礁の正面図である。
【図3】図1の撹拌礁の上流側の側面図である。
【図4】図1の撹拌礁の下流側の側面図である。
【図5】図1の撹拌礁の平面図である。
【図6】図5の撹拌礁のVI―VI線断面図である。
【図7】図5の撹拌礁のVII―VII線断面図である。
【図8】図2の撹拌礁のVIII―VIII線断面図である。
【図9】図1の撹拌礁を海底に設置した場合の撹拌礁内外における水の流れを示す断面説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係わる海底の撹拌構造であって、図1の撹拌礁を海底に千鳥状に配列した構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
つぎに、図面を参照しながら、本発明の撹拌礁についてさらに詳細に説明する。
【0028】
図1〜5に示される撹拌礁1は、河口の付近の海底に設置され、その内部で、河口付近の淡水を含む水流の流れによって自然に渦流が発生して水流とその周囲の海水を撹拌できるようにしたものである。
【0029】
すなわち、撹拌礁1は、中空の枠体2と、当該枠体の外周面に取り付けられた案内部3と、当該枠体2の上部に取り付けられた多孔質コンクリート板9とから構成されている。
【0030】
枠体2は、複数の格子壁、すなわち、下側格子壁2a、上側格子壁2b、下流側格子壁2c、上流側格子壁2dおよび流れ方向格子壁2iを備えている。これら複数の格子壁は、複数の棒状の鋼材、すなわち、横梁材31、斜め梁材32および支柱33のうちの少なくとも1種が格子状に組み合わされることにより構成されている。本実施形態では、横梁材31は水平方向に延びる棒材であり、斜め梁材32は斜め上方に延びる棒材であり、支柱33は上下方向に延びる棒材である。また、枠体2は、これらの格子壁がその内側に所定の空間部10を囲むように配置され、当該空間部10内に上流側格子壁2dを通じて水流S1(図9参照)が空間部10内に進入できるように構成されている。枠体2の各格子壁は、具体的には、以下のように構成されている。
【0031】
下側格子壁2aは、図1および図8に示されるように、下側を向く格子壁であり、H形鋼などからなる横梁材31が井桁状に互いに連結されることによって構成されている。なお、下側格子壁2aは、H型鋼以外の他の材料(例えば、竹などの素材など)によって構成されてもよい。また、枠体2の強度が下側格子壁2a以外の他の格子壁によって十分維持できる場合には、下側格子壁2aを省略してもよい。
【0032】
上側格子壁2bは、上側を向く格子壁であり、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる横梁材31で構成されている。本実施形態では、互いに離間して水流S1の方向に延びる複数本の横梁材31がそれらの上流側端部および下流側端部がそれぞれ水流S1と直交する方向に延びる横梁材31によって連結されることにより、上側格子壁2bが構成されている。下側格子壁2aと上側格子壁2bとは、それぞれ水平方向に延びており、互いに平行になるように向き合っている。
【0033】
下流側格子壁2cは、水流S1の下流側を向く格子壁であり、枠体2の上下方向に延びる立直格子壁2eと、当該立直格子壁2eの上端から上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁2fとを有している。立直格子壁2eは、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる横梁材31と支柱33とを組み合わせた横長の直方体形状の格子壁である。また、下流側斜行格子壁2fは、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる斜め梁材32と支柱33とを組み合わせて構成された上流側に向けて斜めに延びる直方体形状の格子壁である。
【0034】
上流側格子壁2dは、水流S1の上流側を向く格子壁であり、枠体2の上下方向に延びる立直格子壁2gと、当該立直格子壁2gの上端から下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁2hとを有している。立直格子壁2gは、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる横梁材31と支柱33とを組み合わせた横長の直方体形状の格子壁である。また、上流側斜行格子壁2hは、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる斜め梁材32と支柱33とを組み合わせて構成された下流側に向けて斜めに延びる直方体形状の格子壁である。
【0035】
さらに、枠体2は、その上流側格子壁2dにおいて、上流から海底に沿って流れてくる水流S1が流入可能な形状を有する導入口11、12を有する。すなわち、上流側格子壁2dの立直格子壁2gには下側導入口11が開口しており、上流側斜行格子壁2hには上側導入口12が開口している。これらの下側導入口11および上側導入口12は、水平方向に並ぶ複数の矩形の開口からなり、海底に沿って流れる淡水C(図9参照)を含む水流S1を大量かつ円滑に導入できるようになっている。下側導入口11および上側導入口12を合わせた開口の全高は、淡水Cの層の厚さよりも高ければ、淡水Cの層全体を空間部10の内部に導入して撹拌することができるので、好ましい。
【0036】
空間部10は、導入口11および上側導入口12からその内部に導入された冷たい淡水Cを含む水流S1が縦回転して渦流S7を発生しながら当該水流S1の周囲の海水とともに撹拌されることが可能な大きさを有している。空間部10の高さは、当該空間部10の内部で渦流が生成できるように、すなわち、上側案内板7に沿って上流側に戻る流れS5、S6を生成して渦流S7が連続して生成できるように、下側導入口11および上側導入口12を合わせた開口の全高よりも大きく設定されている。
【0037】
流れ方向格子壁2iは、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入する水流S1の流れと平行の方向に向かって延び、かつ、下流側格子壁2c、上側格子壁2bならびに上流側格子壁2dのそれぞれに隣接する格子壁である。流れ方向格子壁2iは、L形アングルまたは細長い鋼板などの軽量な鋼材からなる横梁材31、斜め梁材32および支柱33を組み合わせた扁平な略台形形状の格子壁である。
【0038】
本実施形態の枠体2は、略台形形状の垂直断面を有する扁平な立体形状を呈しており、上流側斜行格子壁2hおよび下流側斜行格子壁2fからなる2つの斜面を有している。枠体2は、略台形形状の垂直断面を有する扁平な立体形状を呈しているので、網掛りしにくい。また、この枠体2の平面形状は、図5および図8に示されるように正方形形状であるので、撹拌礁1を海中に沈めて海底に設置する際にバランスが取りやすく、海底への設置作業が容易である。
【0039】
案内部3は、上側格子壁2bの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1を当該空間部10の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流S1を空間部10の内部で縦方向に回転させて渦流S7を生成する。案内部3は、枠体2の下流側格子壁2c、上側格子壁2b、および上流側格子壁2dにわたって設けられている。
【0040】
案内部3は、下流側案内板4と、上側案内板7と、上流側案内板6と、規制板8とを備えている。また、案内部3は、後述するように、枠体2の空間部10の内部の海水を撹拌礁1の外部へ吹き出す下流側吹出口13および上側吹出口14を有している。
【0041】
下流側案内板4は、枠体2の下流側格子壁2cの少なくとも一部を覆い、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1を上方へ案内するとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することを阻止する。本実施形態の下流側案内板4は、枠体2の立直格子壁2eの全範囲を覆う立直部分4aと、下流側斜行格子壁2fの下側の範囲を部分的に覆う斜行部分4bとを有しており、水流S1を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することを阻止する。
【0042】
上側案内板7は、下流側案内板4に隣接して配置され、枠体2の上側格子壁2bの少なくとも一部を覆い、下流側案内板4に沿って上昇する水流S1を上流側へ案内するとともに当該上側格子壁2bから枠体2の外部へ流出することを阻止する。本実施形態の上側案内板7は、上側格子壁2bの中央付近に上側吹出口14が配置されるように、当該上側格子壁2bの上流側端部から下流側へ向かう所定の長さの区間と、当該上側格子壁2bの下流側端部から上流側へ向かう所定の長さの区間とを部分的に覆っている。
【0043】
上流側案内板6は、上側案内板7に隣接して配置され、上流側斜行格子壁2hの少なくとも一部を覆い、空間部10の内部を上側案内板7によって案内されて上流側へ流れる水流S1を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁2hから枠体2の外部へ流出することを阻止する。
【0044】
下流側吹出口13は、枠体2の下流側斜行格子壁2fに配置されており、撹拌後の海水を撹拌礁1から下流側へ向けて吹き出すことができる。なお、下流側吹出口13を設けない場合は、下流側案内板4の斜行部分4bによって、下流側斜行格子壁2fの全範囲を覆うようにしてもよい。
【0045】
また、上側吹出口14は、枠体2の上側格子壁2bに配置されており、海中におけるより水深の浅い所へ向けて、撹拌後の海水を吹き出すことができる。なお、下流側吹出口13のみを設けて上側吹出口14を設けない場合は、上側案内板7によって、上側格子壁2bの全範囲を覆うようにしてもよい。
【0046】
また、規制板8は、下流側案内板4の両側の縁に隣接して配置され、流れ方向格子壁2iの少なくとも一部を覆い、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1が下流側案内板4に沿って水平方向へ流れて枠体2の外部へ流出することを規制する。本実施形態では、規制板8は、流れ方向格子壁2iの下半分を当該流れ方向格子壁2iの全長にわたって覆っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、流れ方向格子壁2iにおける少なくとも下流側案内板4の両側の縁の近傍の部分を覆っていれば、水流が下流側案内板4に沿って水平方向へ流れて枠体2の外部へ流出することができる。なお。規制板8は、流れ方向格子壁2iの全面を覆ってもよい。
【0047】
多孔質コンクリート板9は、多孔質コンクリートなどからなる多数の空孔を含む板材からなり、撹拌礁1が浮いたり、潮に流されたりしないように重量を増して海底に安定して設置させるための重りとして機能する。本実施形態では、一対の多孔質コンクリート板9が、上側案内板7の上において、上側吹出口14を挟むように配置されている。また、多孔質コンクリート板9は、その表面に多数の空孔を有しているので、ホンダワラナなどの海藻などが付着しやすくなっている。
【0048】
一対の多孔質コンクリート板9は、その表面に付着する海藻などが上側吹出口14から吹き出す水流S3(図9参照)によって流されることを防止するために、上側吹出口14の開口縁から上側案内板7の縁部7aの長さの分だけ離間して配置されているのが好ましい。
【0049】
本実施形態の撹拌礁1は、例えば、水深2.0〜2.5mの浅い海底で用いられ、底面の寸法が1辺4m程度、撹拌礁1全体の高さが1.8m程度になるようにそれぞれの寸法が設定される。
【0050】
つぎに、図9を参照しながら、本実施形態の撹拌礁1を用いた海水の撹拌方法を説明する。
【0051】
まず、上記のように構成された本実施形態の撹拌礁1は、河口付近の海底に設置される。このとき、導入口11、12は、河口から海底に沿って流れる冷たい淡水Cを含む水流S1に対向するように位置決めされる。
【0052】
このように設置された撹拌礁1では、まず、河口付近の海底に沿って連続的に流れる水流S1が上流側格子壁2dの導入口11、12から枠体2の空間部10の内部へ流入される。このとき、水流S1は、空間部10内部において案内部3によって上方へ案内されてから上流側へ案内される。
【0053】
具体的には、まず、枠体2の上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1が、下流側格子壁2cの立直格子壁2eの全範囲および下流側斜行格子壁2fの下側の範囲を部分的に覆う下流側案内板4によって、水流S4のように上方かつ斜め上流側へ案内される。
【0054】
ついで、下流側案内板4に沿って上昇する水流S4は、枠体2の上側格子壁2bの中央付近以外の範囲を覆う上側案内板7によって、水流S5のように上流側へ案内される。
【0055】
さらに、空間部10内部において上流側へ戻る水流S5は、上流側案内板6に沿って斜め下方へ案内され、上流側格子壁2dの導入口11、12から連続的に導入される水流S1と円滑に合流する。
【0056】
このように、空間部10の内部で水流S4、S5、S6のように縦方向に回転する流れが連続的に行われることにより、空間部10の内部全体では、大きな渦流S7が発生し、それによって、空間部10の内部に導入された冷たい淡水Cを含む水流S1はその周囲の海水とともに撹拌される。また、このときの空間部10の内部の圧力は、水流S1が連続的に空間部10に流れ込むため、空間部10の外部の圧力よりも高くなっている。
【0057】
そして、空間部10の内部で撹拌された後の海水は、空間部10の内外の圧力差によって、案内部3が有する下流側吹出口13から下流側へ水流S2のように吹き出すとともに、上側吹出口14から水流S3のように撹拌礁1の外部へ吹き出される。撹拌礁1から外部へ吹き出した水流S2およびS3は、海中を流れる潮の流れS0と合流することにより、冷たい淡水Cは、海中に広範囲に分散されるので、淡水Cがそのまま層になって海苔の生育場所に接触するおそれがなくなり、海苔の芽落ちや色落ちを防止することができる。
【0058】
なお、上記のように構成された撹拌礁1は、海底付近を流れる遅い水流(例えば、10〜12cm/s程度の流速の水流)があれば、海中のどのような場所でも渦流を生成して水流を撹拌することが可能である。
【0059】
(撹拌礁1の特徴)
(1)
本実施形態の撹拌礁1は、河口の付近の海中に設置される撹拌礁1であり、中空の枠体2の空間部10内部に渦流S7を発生するために案内部3を備えている。この案内部3は、枠体2の上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して当該枠体2の下流側格子壁2cまで来る水流S1を当該空間部10の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流S1を空間部10の内部で縦方向に回転させて渦流S7を生成する。
【0060】
かかる構成によって、河口付近の海底に沿って流れる水流S1が上流側格子壁2dの導入口11、12から枠体2の空間部10の内部へ流入したとき、当該水流S1は空間部10内部において案内部3によって上方へ案内されてから上流側へ案内され、空間部10の内部で水流が縦回転して渦流S7を発生しながら当該水流S7の周囲の海水とともに撹拌される。そして、空間部10の内部の海水は、水流S2よびS3のように、案内部3が有する吹出口13、14から撹拌礁1の外部へ吹き出される。したがって、撹拌礁1に流入する水流S1の流れを利用して連続的に渦流S7を生成することが可能となり、それによって水流S7とその周囲の海水とが速やかに撹拌することができる。そして、撹拌後の海水が吹出口13、14から撹拌礁1の外部に吹き出される。その結果、海底付近を流れる冷たい淡水などの水流S1がそのまま層になって海苔に接触することがなくなり、海苔の芽落ちや色落ちを防止できる。
【0061】
(2)
また、本実施形態の撹拌礁1では、案内部3は、枠体2の下流側格子壁2cの少なくとも一部を覆い、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1を上方へ案内するとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することを阻止する下流側案内板4と、下流側案内板4に隣接して配置され、枠体2の上側格子壁2bの少なくとも一部を覆い、下流側案内板4に沿って上昇する水流S1を上流側へ案内するとともに当該上側格子壁2bから枠体2の外部へ流出することを阻止する上側案内板7とを有している。
【0062】
かかる構成によれば、枠体2の上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1が、枠体2の下流側格子壁2cの少なくとも一部を覆う下流側案内板4によって、上方へ案内されるとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することが阻止される。ついで、下流側案内板4に沿って上昇する水流S1は、枠体2の上側格子壁2bの少なくとも一部を覆う上側案内板7によって、上流側へ案内されるとともに当該上側格子壁2bから枠体2の外部へ流出することが阻止される。このように空間部10内部に導入された水流S1が下流側案内板4および上流側案内板6によって連続的に案内されることによって縦回転の渦流S7を確実に発生させることができる。
【0063】
(3)
さらに、本実施形態の撹拌礁1では、枠体2の下流側格子壁2cは、当該枠体2の上下方向に延びる立直格子壁2eと、当該立直格子壁2eの上端から上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁2fとを有しており、下流側案内板4は、枠体2の立直格子壁2eを覆うとともに下流側斜行格子壁2fの少なくとも一部を覆い、水流S1を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することを阻止する。
【0064】
かかる構成によれば、枠体2の下流側格子壁2cが上流側へ向けて傾斜した斜面を有する構造、すなわち、下流側格子壁2cが上下方向に延びる立直格子壁2eと上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁2fとを有している場合において、下流側案内板4が当該下流側格子壁2cの形状に合わせて立直格子壁2eを覆うとともに下流側斜行格子壁2fの少なくとも一部を覆い、水流S1を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁2cから枠体2の外部へ流出することを阻止するようにしている。これにより、下流側格子壁2cの立直格子壁2eおよび下流側斜行格子壁2fに設けられた下流側案内板4に沿って水流S1を上方へ案内してから上流側の斜め上方へ案内することができるので、水流S1の流速が遅くても確実に渦流S7を生成できる。
【0065】
(4)
また、本実施形態の撹拌礁1では、下流側吹出口13が枠体2の下流側斜行格子壁2fに配置されているので、撹拌した海水を撹拌礁1から下流側へ向けて円滑に供給することができる。
【0066】
(5)
さらに、本実施形態の撹拌礁1では、上側吹出口14が枠体2の上側格子壁2bに配置されているので、海中におけるより水深の浅い所へ向けて、撹拌後の海水を吹き出すことができる。
【0067】
(6)
また、本実施形態では、枠体2の上側格子壁2bおよび下流側斜行格子壁2fの両方に下流側吹出口13および上側吹出口14が分散して形成されているので、撹拌後の海水を海中に分散して供給することができ、海底付近を流れる冷たい淡水Cを含む水流S1をより速やかに撹拌礁1の周囲の海水に分散させることができ、海苔の芽落ちや色落ちの防止効果がさらに増大する。
【0068】
(7)
さらに、本実施形態の撹拌礁1では、枠体2の上流側格子壁2dは、当該枠体2の上下方向に延びる立直格子壁2gと、当該立直格子壁2gの上端から下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁2hとを有しており、案内部3は、上側案内板7に隣接して配置され、上流側斜行格子壁2hの少なくとも一部を覆い、空間部10の内部を上側案内板7によって案内されて上流側へ流れる水流S6を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁2hから枠体2の外部へ流出することを阻止する上流側案内板6をさらに備えている。
【0069】
かかる構成によれば、枠体2の上流側格子壁2dが下流側へ向けて傾斜した斜面を有する構造、すなわち、上流側格子壁2dが上下方向に延びる立直格子壁2gと下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁2hとを有している場合において、案内部3は、枠体2の上流側斜行格子壁2hの少なくとも一部を覆い、空間部10の内部を上側案内板7によって案内されて上流側へ流れる水流S6を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁2hから枠体2の外部へ流出することを阻止する上流側案内板6をさらに備えているので、空間部10内部において上流側へ戻る水流S6が上流側案内板6に沿って斜め下方へ案内され、上流側格子壁2dの導入口11、12から連続的に導入される水流S1と円滑に合流することが可能になる。そのため、水流S1の流速が遅くてもより確実に渦流S7を生成できる。
【0070】
(8)
さらに、本実施形態の撹拌礁1では、枠体2は、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入する水流S1の流れと平行の方向に向かって延び、かつ、下流側格子壁2c、上側格子壁2bならびに上流側格子壁2dのそれぞれに隣接する流れ方向格子壁2iを有しており、案内部3は、下流側案内板4の両側の縁に隣接して配置され、流れ方向格子壁2iの少なくとも一部を覆い、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入して下流側格子壁2cまで来る水流S1が下流側案内板4に沿って水平方向へ流れて枠体2の外部へ流出することを規制する規制板8を有している。
【0071】
かかる構成によれば、案内部3が、下流側案内板4の両側の縁に隣接して配置され、枠体2の流れ方向格子壁2iの少なくとも一部を覆う規制板8を有しているので、この規制板8によって、上流側格子壁2dの導入口11、12から空間部10の内部へ流入する水流S1が下流側案内板4に沿って水平方向へ流れて枠体2の外部へ流出することを規制することができる。そのため、水流S1の水平方向への流出を規制しながら水流S1を縦回転させて効率よく渦流S7を生成させることが可能になり、撹拌効果を向上させることができる。
【0072】
(撹拌礁1を用いた海底の撹拌構造についての説明)
上記のように構成された撹拌礁1を河口付近の海底に設置する場合、撹拌効果を向上させるために、図10に示されるように、複数個の撹拌礁1によって以下のように海底の撹拌構造を構成するのが好ましい。
【0073】
図10に示される海底の撹拌構造は、複数の撹拌礁1を備え、これらの撹拌礁1が河口付近の海底に設置された海底の撹拌構造であって、各撹拌礁1は、上記実施形態の撹拌礁1からなり、冷たい淡水などを含む水流S11、S12の流れに直交する方向であって互いに平行に延びる第1列Iおよび第2列IIに沿って並べて配置されている。第1列Iよりも下流側に位置する第2列IIに並べられた撹拌礁1は、水流S11、S12の流れの方向から見て、隣接する第1列Iに並べられた撹拌礁1の間に位置するように配置されており、当該第1列Iおよび第2列IIの撹拌礁1がいわゆる千鳥状に配置されている。これにより、隣接する第1列Iの撹拌礁1の間を流れる水流S12は、流路幅が狭められることによって流速が増す。そのため、下流側の第2列IIの撹拌礁1には、流速が増した水流S12が導入口11、12(図1参照)から流入されるので、より速く回転する渦流が撹拌礁1の内部で生成され、水流S12とその周囲の海水との撹拌効果が向上する。その結果、海苔の芽落ちや色落ちの防止効果がさらに向上する。
【符号の説明】
【0074】
1 撹拌礁
2 枠体
2a 下側格子壁
2b 上側格子壁
2c 下流側格子壁
2d 上流側格子壁
3 案内部
4 下流側案内板
6 上流側案内板
7 上側案内板
8 規制板
10 空間部
11 下側導入口
12 上側導入口
13 下流側吹出口
14 上側吹出口
S1 空間部へ流入する水流
S2 空間部から下流側へ吹き出す水流
S3 空間部から上側へ吹き出す水流
S7 渦流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
河口の付近の海中に設置される撹拌礁であって、
複数の格子壁を有し、当該格子壁として、水流の上流側を向く上流側格子壁と、水流の下流側を向く下流側格子壁と、上側を向く上側格子壁とを含み、これらの格子壁がその内側に所定の空間部を囲むように配置され、当該空間部内に前記上流側格子壁を通じて前記水流が前記空間部内に進入可能な中空の枠体と、
前記枠体の前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流を当該空間部の内部において上方へ案内してから上流側へ案内することにより、当該水流を前記空間部の内部で縦方向に回転させて渦流を生成する案内部と
を備えており、
前記空間部は、その内部に前記水流が縦回転して渦流を発生しながら当該水流の周囲の海水とともに撹拌されることが可能な大きさを有しており、
前記案内部は、前記枠体の前記下流側格子壁および前記上側格子壁に設けられており、さらに、前記枠体の前記空間部の内部の海水を前記撹拌礁の外部へ吹き出す吹出口を有している、
ことを特徴とする撹拌礁。

【請求項2】
前記案内部は、
前記枠体の下流側格子壁の少なくとも一部を覆い、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流を上方へ案内するとともに当該下流側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する下流側案内板と、
前記下流側案内板に隣接して配置され、前記枠体の上側格子壁の少なくとも一部を覆い、前記下流側案内板に沿って上昇する前記水流を上流側へ案内するとともに当該上側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する上側案内板と
を有している、
請求項1に記載の撹拌礁。

【請求項3】
前記枠体の下流側格子壁は、当該枠体の上下方向に延びる立直格子壁と、当該立直格子壁の上端から上流側へ向けて斜め上方に延びる下流側斜行格子壁とを有しており、
前記下流側案内板は、前記枠体の立直格子壁を覆うとともに前記下流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、前記水流を上流側へ向けて斜め上方へ案内するとともに当該下流側格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する
請求項2に記載の撹拌礁。

【請求項4】
前記吹出口は、前記枠体の下流側斜行格子壁に配置されている、
請求項3に記載の撹拌礁。

【請求項5】
前記吹出口は、前記枠体の上側格子壁に配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の撹拌礁。

【請求項6】
前記枠体の上流側格子壁は、当該枠体の上下方向に延びる立直格子壁と、当該立直格子壁の上端から下流側へ向けて斜め上方に延びる上流側斜行格子壁とを有しており、
前記案内部は、前記上側案内板に隣接して配置され、前記上流側斜行格子壁の少なくとも一部を覆い、前記空間部の内部を前記上側案内板によって案内されて上流側へ流れる前記水流を上流側へ向けて斜め下方へ案内するとともに当該上流側斜行格子壁から前記枠体の外部へ流出することを阻止する上流側案内板をさらに備えている、
請求項2から5のいずれかに記載の撹拌礁。

【請求項7】
前記枠体は、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入する前記水流の流れと平行の方向に向かって延び、かつ、前記下流側格子壁、上側格子壁ならびに上流側格子壁のそれぞれに隣接する流れ方向格子壁を有しており、
前記案内部は、前記下流側案内板の両側の縁に隣接して配置され、前記流れ方向格子壁の少なくとも一部を覆い、前記上流側格子壁から前記空間部の内部へ流入して前記下流側格子壁まで来る前記水流が前記下流側案内板に沿って水平方向へ流れて前記枠体の外部へ流出することを規制する規制板をさらに有している、
請求項2から6のいずれかに記載の撹拌礁。

【請求項8】
複数の撹拌礁を備え、これらの撹拌礁が河口付近の海底に設置された海底の撹拌構造であって、
前記各撹拌礁は、上記請求項1から7記載のいずれかの撹拌礁からなり、前記水流の流れに直交する方向であって互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並べて配置され、
前記第2列は、前記第1列よりも下流側に位置しており、
前記第2列に並べられた撹拌礁は、前記水流の流れの方向から見て、隣接する前記第1列に並べられた撹拌礁の間に位置するように、配置されている、
海底の撹拌構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143167(P2012−143167A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2100(P2011−2100)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】