説明

撹拌脱泡装置に使用する容器、及び、撹拌脱泡装置

【課題】自転公転方式の撹拌脱泡装置の分野において、撹拌脱泡性能を高めることが可能な容器、及び、撹拌脱泡装置を提供する。
【解決手段】容器100は、容器ホルダ30に保持されて公転しながら自転することによって内部に収納された材料Mを撹拌脱泡する容器であって、その内面110は、円柱状の側面部120と、側面部の下端から延びる底部130とを含む。底部は、中央領域140と、最深領域150と、最深領域と側面部とをつなぐ第1傾斜領域160と、最深領域と中央領域とをつなぐ第2傾斜領域170とを含み、第1傾斜領域及び第2傾斜領域は、側面部の中心線120Lを含む平面で切断した断面において、円C1に沿って延びる曲線となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌脱泡装置に使用する容器、及び、撹拌脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料が収納された容器を公転させながら自転させることによって、容器内で材料を撹拌脱泡する装置(自転公転方式の撹拌脱泡装置)が知られている(例えば特許文献1参照)。この撹拌脱泡装置では、容器を公転させながら自転させることによって容器内の材料に作用する遠心力を利用して、材料を撹拌する(混練する、混合する、分散させる)とともに、材料に内在する気泡を放出させて脱泡することができる。
【0003】
そして、自転公転方式の撹拌脱泡装置の分野では、材料を均一に処理するために、容器の形状を調整する試みがなされてきた(特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-43568号公報
【特許文献2】特開2001-353405号公報
【特許文献3】特開2007-151468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自転公転方式の撹拌脱泡装置の分野では、材料の撹拌処理時に、容器内で材料が移動しやすければ、材料の撹拌処理効率が高くなると考えられている。この点、特許文献2には、容器の底部の中央部を、容器内へ突出する凸状とする技術が開示されており、これにより、「容器中央部でのよどみが減少し、より均一な混合状態が得られる(第0008段落参照)」としている。また、特許文献3の図7には、底面の中央部が球状面に突出された形状とし、その周囲に環状湾曲部が形成されている容器が開示されており、これにより、「加工対象物を移動し易くする(第0038段落参照)」としている。
【0006】
しかしながら、容器形状が、材料が移動しやすい形状となっていたとしても、容器の底部の一部に材料の流れが弱くなる領域が発生すると、当該領域で材料の撹拌むらが発生する恐れがある。
【0007】
本発明の一つの態様は、自転公転方式の撹拌脱泡装置の分野において、撹拌脱泡性能を高めることが可能な容器、及び、撹拌脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一つの実施態様は、
所定の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差する自転軸線を中心に自転する容器ホルダに保持され、公転しながら自転することによって内部に収納された材料を撹拌脱泡する容器であって、
前記材料を収納するための内部空間を区画する内面を有し、
前記内面は、
円柱状の側面部と、
前記側面部の下端から延びる底部と、
を含み、
前記底部は、
平面視において前記側面部の中央に位置する中央領域と、
平面視において前記中央領域を囲むように延びる最深領域と、
前記最深領域と前記側面部とをつなぐ第1傾斜領域と、
前記最深領域と前記中央領域とをつなぐ第2傾斜領域と、
を含み、
前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域は、前記側面部の中心線を含む平面で切断した断面において、前記下端を通り、前記下端から延びる法線上に中心が配置された、前記側面部の直径の半分の長さを直径とする円に沿って延びる曲線となるように構成されている容器を提供する。
【0009】
この実施態様によると、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分の沈降が発生しにくくなる容器を提供することができる。
【0010】
(2)この容器において、
前記第2傾斜領域は、前記中央領域に滑らかにつながるように構成されていてもよい。
【0011】
(3)この容器において、
前記中央領域は、上方に向かって径が小さくなる形状となっていてもよい。
【0012】
(4)本発明の別の実施態様は、
所定の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差する自転軸線を中心に自転する容器ホルダと、
材料を収納するための内部空間を区画する内面を有し、前記容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動する容器と、
前記容器ホルダを公転させながら自転させるための駆動機構と、
を含み、
前記容器の前記内面が、
円柱状の側面部と、
前記側面部の下端から延びる底部と、
を含み、
前記底部は、
平面視において前記側面部の中央に位置する中央領域と、
平面視において前記中央領域を囲むように延びる最深領域と、
前記最深領域と前記側面部とをつなぐ第1傾斜領域と、
前記最深領域と前記中央領域とをつなぐ第2傾斜領域と、
を含み、
前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域は、前記側面部の中心線を含む平面で切断した断面において、前記下端を通り、前記下端から延びる法線上に中心が配置された、前記側面部の直径の半分の長さを直径とする円に沿って延びる曲線となるように構成されている撹拌脱泡装置を提供する。
【0013】
この実施態様によると、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分の沈降が発生しにくくなる撹拌脱泡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る撹拌脱泡装置の構成を説明するための図。
【図2】本実施の形態に係る撹拌脱泡装置の構成を説明するための図。
【図3】本実施の形態に係る容器の構成を説明するための図。
【図4】本実施の形態に係る容器の構成を説明するための図。
【図5】本実施の形態に係る撹拌脱泡方法を説明するための図。
【図6】変形例に係る容器の構成を説明するための図。
【図7】変形例に係る容器の構成を説明するための図。
【図8】変形例に係る容器の構成を説明するための図。
【図9】変形例に係る容器の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0016】
(1)撹拌脱泡装置1の構成
以下、本実施の形態に係る撹拌脱泡装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0017】
(a)筐体10
撹拌脱泡装置1は、図1に示すように、筐体10を有する。筐体10内部には、後述する種々の機構を支持するための支持基板12が、防振ばねを介して取り付けられている。また、支持基板12には、後述する回転体20の回転軸22を保持するための保持部材14が取り付けられている。筐体10は、開閉可能に構成されたドアを有し、当該ドアを開けると容器ホルダ30が露出して、容器ホルダ30に容器100を着脱することが可能になる。
【0018】
(b)回転体20
撹拌脱泡装置1は、図1に示すように、回転体20を含む。回転体20は、支持基板12(筐体10)に対して回転可能に構成されている。具体的には、撹拌脱泡装置1では、回転体20には回転軸22が固定されており、回転軸22が、ベアリングを介して保持部材14に保持されている。これにより、回転体20を、支持基板12に対して回転可能とすることができる。なお、撹拌脱泡装置1では、回転体20の回転軸線L1と、回転軸22の延伸方向とが一致することになる。
【0019】
(c)容器ホルダ30
撹拌脱泡装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30を含む。容器ホルダ30は、後述する容器100を保持する役割を果たす。容器ホルダ30は、回転体20の、回転軸線L1から所定間隔離れた位置に保持されている。これにより、容器ホルダ30は、回転体20の回転に伴って、回転軸線L1を中心に公転することとなる。
【0020】
容器ホルダ30は、回転体20に対して自転(回転)可能に保持される。具体的には、撹拌脱泡装置1では、容器ホルダ30には自転軸32が固定されており、自転軸32が、ベアリング34を介して回転体20(回転体20に固定されたベアリング保持部)に保持された構成となっている。これにより、容器ホルダ30が、回転体20に対して自転可能となる。
【0021】
なお、本実施の形態では、容器ホルダ30は、その自転軸線L2が、回転軸線L1(公転軸線)と斜めに交差するように構成されている。具体的には、撹拌脱泡装置1は、自転軸線L2が回転軸線L1と45度の角度で交差するように構成されている。ただし、回転軸線L1と自転軸線L2との交差角は45度に限定されるものではなく、材料Mの性質に合わせて適宜設定することができる。
【0022】
本実施の形態では、容器ホルダ30は、上端に3個の凸部36が取り付けられた構成となっている(図4(B)参照)。凸部36によって、容器ホルダ30の内部で容器100が空回りすることを防止することができる。ただし、容器ホルダ30は、凸部36を有しない構成とすることも可能である(図示せず)。
【0023】
本実施の形態では、容器ホルダ30は、回転体20に一つのみ取り付けられている。そして、本実施の形態では、回転体20にはバランス錘38が取り付けられている。バランス錘38によって、回転体20を安定して回転させることができる。なお、本実施の形態では、バランス錘38は、回転軸線L1からの距離を変更することが可能に構成されている。ただし変形例として、撹拌脱泡装置を、一つの回転体20に、複数の容器ホルダ30が取り付けられた構成とすることも可能である(図示せず)。この場合、複数の容器ホルダは、回転軸線L1を中心とする点対称の配置となるように取り付けることができる。
【0024】
(d)駆動機構
撹拌脱泡装置1は、容器ホルダ30(容器100)を公転させながら自転させる駆動機構を含む。以下、駆動機構の構成について説明する。
【0025】
駆動機構は、モータ42を有する。モータ42は、回転体20(回転軸22)を回転させる役割を果たす。本実施の形態では、回転体20が回転すると、容器ホルダ30(容器100)が公転することになる。そのため、モータ42を、容器ホルダ30(容器100)を公転させるための公転駆動機構と称することができる。なお、モータ42は、インダクションモータやサーボモータ、あるいはPMモータなど、既に公知となっているいずれかのモータを利用することが可能である。
【0026】
駆動機構は、また、自転力付与機構を有する。本実施の形態では、自転力付与機構は、容器ホルダ30の公転に伴って(回転体20の回転に伴って)、容器ホルダ30に自転力を付与するように構成されている。以下、自転力付与機構について説明する。
【0027】
自転力付与機構は、自転プーリ46を有する。自転プーリ46は容器ホルダ30に固定されており、容器ホルダ30と一体的に挙動する。なお、本実施の形態では、自転プーリ46は、容器ホルダ30の外周に設けられている。また、自転力付与機構は、自転力付与プーリ48を有する。自転力付与プーリ48は、保持部材14の外周に固定されている。そして、自転力付与機構は、自転プーリ46と自転力付与プーリ48との間で動力を伝達する自転動力伝達機構50を有する。本実施の形態では、自転動力伝達機構50は、回転体20に対して回転可能に構成された第1中継プーリ52及び第2中継プーリ54と、自転プーリ46及び第1中継プーリ52にかけまわされた第1ベルト56と、自転力付与プーリ48及び第2中継プーリ54にかけまわされた第2ベルト58とを含んで構成されている。
【0028】
自転力付与機構によると、自転動力伝達機構50によって、自転プーリ46の挙動と、自転力付与プーリ48の挙動とが関連付けられ、自転プーリ46と自転力付与プーリ48とが、遊星歯車機構と同様の挙動を示すことになる。そして、本実施の形態では、自転力付与プーリ48が保持部材14に固定されていることから、回転体20を回転させると、自転プーリ46は、回転軸線L1を中心に公転しながら、自転軸線L2を中心に自転することになる。すなわち撹拌脱泡装置1では、モータ42で回転体20を回転させると、自転プーリ46は公転しながら自転し、自転プーリ46に固定された容器ホルダ30が、公転しながら自転することになる。
【0029】
なお、変形例として、駆動機構を、自転力付与プーリ48を保持部材14に対して回転可能に構成し、自転力付与プーリ48を所望の回転数で回転させるための調整機構をさらに備えた構成とすることも可能である(図示せず)。先に説明したとおり、駆動機構では、自転動力伝達機構50が、自転プーリ46の回転数と自転力付与プーリ48の回転数とを関連付ける役割を果たしている。そのため、自転プーリ46を公転させながら(回転体20を回転させながら)、自転力付与プーリ48の回転数を調整することにより、自転プーリ46の自転数を制御することが可能になる。なお、この調整機構は、例えばモータやブレーキなど、既に公知となっているいずれかの機構によって実現することができる。
【0030】
また、他の変形例として、動力伝達要素として、プーリ及びベルトにかえて、歯車を利用することも可能である(図示せず)。
【0031】
(e)制御手段60
撹拌脱泡装置1は、図2に示す制御手段60を含む。制御手段60は、撹拌脱泡装置1の動作を統括制御する役割を果たす。以下、制御手段60について説明する。図2は、制御手段60について説明するための図である。
【0032】
制御手段60は、マイクロプロセッサ(CPU62)と、公転駆動機構(モータ42)を制御する駆動制御部64とを含む。そして、CPU62は、運転データ(例えば、材料Mの処理条件に合わせてユーザが入力したデータ)に基づいて駆動制御部64に各種の信号を出力することにより、撹拌脱泡装置1(容器ホルダ30を駆動させるための回転駆動機構)の動作を制御する。
【0033】
先述したように、撹拌脱泡装置1では、容器ホルダ30は回転体20の回転に伴って公転することから、モータ42の出力を制御することによって、容器ホルダ30の公転数が制御される。すなわち、モータ42の出力を制御することにより、容器ホルダ30を所望の公転数で公転させることが可能になる。
【0034】
例えばモータ42としてインダクションモータを採用する場合には、駆動制御部64は、インバータの動作を制御し、モータ42に供給される交流電力の周波数を所定値とするためのインバータ制御部によって実現することができる。あるいは、モータ42としてサーボモータを採用する場合には、駆動制御部64は、専用のドライバ及びハードウェアによって実現され、モータ42を所望の回転数で動作させるための各種処理を行う。また、駆動制御部64を、回転センサ66で検出された容器ホルダ30の回転数情報を取得し(例えばCPU62を介して取得し)、当該回転数情報に基づいて、回転体20の回転数を調整するための種々の処理を行うように構成することも可能である。
【0035】
そして、CPU62は、所定のタイミングで、駆動制御部64に各種の信号(容器ホルダ30の目標回転数データ等)を送信する処理を行う。これにより、容器ホルダ30を所望の回転数で回転させることができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、CPU62は、回転センサ66を介して、回転体20の回転数情報(容器ホルダ30の回転数情報)を取得することが可能に構成されている。そして、CPU62は、この回転数情報を、経過時間と関連付けて図示しない記憶部に格納する処理を行うことも可能である。また、CPU62を、回転体20の回転数情報に基づいて容器ホルダ30の自転数情報を演算処理するように構成することも可能である。すなわち、撹拌脱泡装置1では、自転力付与プーリ48は回転不能に構成されているため、回転体20の回転数が明らかになれば、動力伝達機構の各要素のサイズデータから、容器ホルダ30の自転数を演算することが可能になる。
【0037】
さらに、CPU62は、操作部68から入力された動作データを受け付けて、図示しない記憶部に格納する処理や、表示部69に各種情報(操作部68から入力された動作データや、撹拌脱泡装置1の運転状況等)を表示させるための処理を行う。
【0038】
(2)容器100
次に、本実施の形態に適用可能な容器100について、図3(A)〜図4(B)を参照して説明する。ここで、図3(A)は容器100の側面図であり、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIB線断面図であり、図3(C)は図3(A)のIIIC−IIIC線断面図である。また、図4(A)は容器100が容器ホルダ30に保持された状態の側面の一部拡大図であり、図4(B)は図4(A)のIVB−IVB線断面図である。なお、容器100は、公転しながら自転することによって、内部に収納された材料Mを撹拌脱泡する役割を果たす。
【0039】
容器100は、図3(B)に示すように、内面110を有する。内面110は、材料Mを収納するための内部空間Aを区画する面である。そして、材料Mは、内部空間A内に保持されて、内面110(その一部)に接触する。
【0040】
内面110は、図3(B)及び図3(C)に示すように、側面部120を有する。側面部120は、円柱状の領域であって、内面110の上側に配置される領域である。側面部120は、その中心線120Lを含む平面で切断した断面において、直線状に延びる領域であるといえる(図3(B)参照)。
【0041】
内面110は、図3(B)及び図3(C)に示すように、底部130を有する。底部130は、側面部120の下端から延びている。また、底部130は、平面視において、側面部120の内側に配置される。以下、底部130について説明する。
【0042】
底部130は、図3(B)及び図3(C)に示すように、中央領域140を有する。中央領域140は、側面部120の中央に位置する領域である。本実施の形態では、中央領域140は、上方に向かって径が小さくなるように構成されている。また、本実施の形態では、中央領域140は、後述する第2傾斜領域170に滑らかにつながっている。
【0043】
底部130は、図3(B)及び図3(C)に示すように、最深領域150を有する。最深領域150は、図3(B)に示すように、内面110のうち最も低い領域である。最深領域150は、平面視において、中央領域140を囲むように延びる領域である。
【0044】
底部130は、図3(B)及び図3(C)に示すように、第1傾斜領域160及び第2傾斜領域170を有する。第1傾斜領域160は、最深領域150と側面部120とをつなぐ領域である。また、第2傾斜領域170は、最深領域150と底部130の中央領域140をつなぐ領域である。
【0045】
本実施の形態では、第1傾斜領域160及び第2傾斜領域170は、図3(B)に示すように、中心線120Lを含む平面で切断した断面において、円C1に沿って延びる形状となっている。なお、本実施の形態では、円C1とは、側面部120の下端を通り、当該下端の法線上に中心が配置された円である。すなわち、円C1は、側面部120を接線とする円であり、このことから、側面部120と第1傾斜領域160は滑らかにつながることになる。また、本実施の形態では、円C1は、側面部120の直径の半分の長さを直径とする円である。そのため、最深領域150は、側面部120と中心線120Lの中間領域に配置されることになる。
【0046】
容器100は、図3(A)及び図3(C)に示すように、空回り防止機構を有する。空回り防止機構は、容器100が、容器ホルダ30内で空回りすることを防止する役割を果たす。すなわち、空回り防止機構によって、容器100は、容器ホルダ30に保持されて、容器ホルダ30と一体的に挙動することが可能になる。本実施の形態では、空回り防止機構は、容器100の外周に間隔をあけて取り付けられた凹部182によって実現されている。すなわち本実施の形態では、図4(A)及び図4(B)に示すように、凹部182に、容器ホルダ30の凸部36をはめ合わせることで、容器ホルダ30内で容器100が空回りすることを防止することが可能になる。
【0047】
(c)その他
容器100は、図3(A)及び図3(B)に示すように、蓋体190を取り付けることが可能な構成となっている。蓋体190は、内面110(側面部120)の上端をふさぎ、材料Mが内部空間Aからこぼれ出ることを防止する役割を果たす。本実施の形態では、蓋体190は、内蓋192と、外蓋194とを含んで構成されている。
【0048】
(3)材料M
本実施の形態に適用可能な材料Mは、流体として挙動するものであればよく、その組成や用途は特に限定されるものではない。材料Mとして、流体成分(樹脂等)のみを含む材料や、流体成分のほかに粒状成分(粉状成分)を含む材料などを適用することができる。材料Mとして、例えば、接着剤、シーラント剤、液晶材料、LEDの蛍光体と樹脂とを含む混合材料、半田ペースト、成型に利用される硬化性の樹脂材料、歯科用印象材料、歯科用セメント(穴埋め剤等)、液状の薬剤等の種々の材料を適用することができる。また、容器100には、材料Mとともに、粒状(粉状)材料を粉砕するための粉砕用メディア(例えばジルコニアボール)を収納することも可能である。
【0049】
(4)撹拌脱泡方法
次に、本実施の形態に係る材料Mの撹拌脱泡方法について、図5を参照して説明する。ここで、図5は、撹拌脱泡方法を説明するためのフローチャートである。
【0050】
本実施の形態に係る撹拌脱泡方法は、図5に示すように、材料Mが収納された容器100を容器ホルダ30に保持させる工程(ステップS110)と、撹拌脱泡装置1を運転して容器ホルダ30(容器100)を公転させながら自転させる工程(ステップS120)とを含む。これにより、容器100内で、材料Mを撹拌脱泡することができる。
【0051】
(5)作用効果
以下、本実施の形態における容器100及び撹拌脱泡装置1が奏する作用効果について説明する。
【0052】
上述したとおり、容器100は、第1傾斜領域160及び第2傾斜領域170が、中心線120Lを含む平面で切断した断面において、円C1に沿った形状となるように構成されている。この構成によると、底部130の中央に凸部(中央領域140及び第2傾斜領域170)を設けた場合でも、底部130を滑らかな面とすることができ、かつ、底部130(第1傾斜領域160及び第2傾斜領域170)の曲率を十分に小さくすることができる。そのため、容器100を利用することにより、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、底部130の中央に材料が停留する事態の発生を防止することができると共に、底部130に沿って材料Mを滑らかに移動させることができる。すなわち、容器100によると、底部130上で、材料Mの流れが弱くなる領域が発生しにくくなる。このことから、容器100を利用することにより、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分(粒子成分)の沈降が発生しにくくなる。
【0053】
また、容器100は、側面部120と底部130(第1傾斜領域160)とが、滑らかにつながった形状となっている。そのため、側面部120と底部130との境界で、材料Mを滑らかに移動させることができ、側面部120と底部130との境界で、材料Mの撹拌むらが発生しにくくなる。
【0054】
また、容器100は、中央領域140と第2傾斜領域160とが、滑らかにつながった形状となっている。そのため、中央領域140と第2傾斜領域160との境界で、材料Mを滑らかに移動させることができ、中央領域140と第2傾斜領域160との境界で、材料Mの撹拌むらが発生しにくくなる。
【0055】
また、容器100は、中央領域140が、上方に向かって径が小さくなる形状となっている。そのため、中央領域140の先端の面積を小さくすることができ、当該先端への材料M(特に粒子成分)の沈降が発生しにくくなる。
【0056】
(6)変形例
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0057】
以下、図6(A)及び図6(B)を参照して、本実施の形態の一変形例としての容器200について説明する。
【0058】
容器200は、図6(A)に示すように、内面210を有する。内面210は、材料Mを収納するための内部空間を区画する面である。そして、材料Mは、内部空間に保持されて、内面210(その一部)に接触する。
【0059】
内面210は、図6(A)に示すように、側面部220を有する。側面部220は、円柱状の領域である。側面部220は、図6(A)に示すように、テーパ形状となっている。詳しくは、側面部220は、テーパの付された円柱状に構成されており、側面部220の径は、側面部220の下方へ向かうほど狭くなる(図6(A)参照)。すなわち、側面部220は、その法線が水平面よりも上方を向くことになる。
【0060】
内面210は、図6(A)に示すように、底部230を有する。底部230は、中央領域240と、最深領域250と、最深領域250と側面部220をつなぐ第1傾斜領域260と、最深領域250と中央領域240をつなぐ第2傾斜領域270とを含む。本実施の形態では、最深領域250は、側面部220とその中心線220Lの中間領域に配置されている。そして、本実施の形態では、第1傾斜領域260及び第2傾斜領域270は、円C2に沿って延びる形状となっている。ここで、円C2は、側面部220の下端を通り、当該下端から延びる法線上に中心が配置された円周である。また、円C2の直径は、側面部220の直径の半分よりも若干短くなっている。
【0061】
そして、容器200は、図6(B)に示すように、アダプタ300を介して、容器ホルダに保持されるように構成されている。
【0062】
容器200は、上記の構成となっており、この構成によると、底部230の中央に凸部(中央領域240及び第2傾斜領域270)を設けた場合でも、底部230の全体を滑らかな面とすることができ、かつ、底部230(第1傾斜領域260及び第2傾斜領域270)の曲率を十分に小さくすることができる。そのため、容器200を利用することにより、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分(粒子成分)の沈降が発生しにくくなる。
【0063】
なお、円C2の直径は、側面部220の直径の半分の長さの90パーセント程度(より好ましくは95パーセント程度)までであれば、最深領域250が側面部220と中心線220Lとの中間領域に配置され、上記効果を十分に発揮することが可能である。
【0064】
また、逆に、図7に示すように、第1傾斜領域262及び第2傾斜領域272を、側面部の中心線を含む平面で切断した断面において、円C3に沿って延びる形状とすることも可能である。ここで、円C3の直径は、側面部の直径の半分の長さよりも若干長くなっている。円C3の直径が、側面部の直径の半分の長さの110パーセント程度(より好ましくは105パーセント程度)までであれば、上記効果を十分に発揮することが可能である。
【0065】
さらに他の変形例として、図8に示すように、第1傾斜領域264及び第2傾斜領域274を、側面部222の中心線222Lを含む平面で切断した断面において、円C4に沿って延びる形状とすることも可能である。ここで、円C4は、側面部222及び中心線222Lに接する円である。この構成とした場合でも、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分(粒子成分)の沈降が発生しにくくなる。
【0066】
あるいは、図9(A)、図9(B)に示すように、容器を、中央領域242が、側面部224の中心線224Lからずれるように構成することも可能である。この構成とした場合でも、材料Mを撹拌脱泡処理する際に、材料Mの撹拌むらや、材料Mの成分(粒子成分)の沈降が発生しにくくなる。
【符号の説明】
【0067】
1…撹拌脱泡装置、 10…筐体、 12…支持基板、 14…保持部材、 20…回転体、 22…回転軸、 30…容器ホルダ、 32…自転軸、 34…ベアリング、 36…凸部、 38…バランス錘、 42…モータ、 46…自転プーリ、 48…自転力付与プーリ、 50…自転動力伝達機構、52…第1中継プーリ、 54…第2中継プーリ、 56…第1ベルト、 58…第2ベルト、 60…制御手段、 62…CPU、 64…駆動制御部、 66…回転センサ、 68…操作部、 69…表示部、 100…容器、 110…内面、 120…側面部、 120L…中心線、 130…底部、 140…中央領域、 150…最深領域、 160…第1傾斜領域、 170…第2傾斜領域、 182…凹部、 190…蓋体、 192…内蓋、 194…外蓋、 200…収納容器、 210…内面、 220…側面部、 220L…中心線、 222…側面部、 222L…中心線、 224…側面部、 224L…中心線、 230…底部、 240…中央領域、 242…中央領域、 250…最深領域、 260…第1傾斜領域、 262…第1傾斜領域、 264…第1傾斜領域、 270…第2傾斜領域、 272…第2傾斜領域、 274…第2傾斜領域、 300…アダプタ、 A…内部空間、 L1…回転軸線、 L2…自転軸線、 M…材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差する自転軸線を中心に自転する容器ホルダに保持され、公転しながら自転することによって内部に収納された材料を撹拌脱泡する容器であって、
前記材料を収納するための内部空間を区画する内面を有し、
前記内面は、
円柱状の側面部と、
前記側面部の下端から延びる底部と、
を含み、
前記底部は、
平面視において前記側面部の中央に位置する中央領域と、
平面視において前記中央領域を囲むように延びる最深領域と、
前記最深領域と前記側面部とをつなぐ第1傾斜領域と、
前記最深領域と前記中央領域とをつなぐ第2傾斜領域と、
を含み、
前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域は、前記側面部の中心線を含む平面で切断した断面において、前記下端を通り、前記下端から延びる法線上に中心が配置された、前記側面部の直径の半分の長さを直径とする円に沿って延びる曲線となるように構成されている容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記第2傾斜領域は、前記中央領域に滑らかにつながるように構成されている容器。
【請求項3】
請求項1に記載の容器において、
前記中央領域は、上方に向かって径が小さくなる形状となっている容器。
【請求項4】
所定の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差する自転軸線を中心に自転する容器ホルダと、
材料を収納するための内部空間を区画する内面を有し、前記容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動する容器と、
前記容器ホルダを公転させながら自転させるための駆動機構と、
を含み、
前記容器の前記内面が、
円柱状の側面部と、
前記側面部の下端から延びる底部と、
を含み、
前記底部は、
平面視において前記側面部の中央に位置する中央領域と、
平面視において前記中央領域を囲むように延びる最深領域と、
前記最深領域と前記側面部とをつなぐ第1傾斜領域と、
前記最深領域と前記中央領域とをつなぐ第2傾斜領域と、
を含み、
前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域は、前記側面部の中心線を含む平面で切断した断面において、前記下端を通り、前記下端から延びる法線上に中心が配置された、前記側面部の直径の半分の長さを直径とする円に沿って延びる曲線となるように構成されている撹拌脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−218309(P2011−218309A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91529(P2010−91529)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】