撹拌装置
【課題】真空環境下でなくとも気泡を発生することなく液体を良好に撹拌できる撹拌装置の提供。
【解決手段】所定の容積を有する撹拌槽1と、その撹拌槽1内に設けられる回転自在な主軸6と、その主軸6に固着される偏平状のフィン7と、主軸6に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段とを有する。駆動手段は、正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータ10を主軸6の一端部に連結するか、あるいは主軸6の一端部を撹拌槽1の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバー16を固着すると共に、該揺動レバー16の先端部に直動アクチュエータ15の伸縮ロッド部15Aを連結するなどして構成される。
【解決手段】所定の容積を有する撹拌槽1と、その撹拌槽1内に設けられる回転自在な主軸6と、その主軸6に固着される偏平状のフィン7と、主軸6に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段とを有する。駆動手段は、正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータ10を主軸6の一端部に連結するか、あるいは主軸6の一端部を撹拌槽1の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバー16を固着すると共に、該揺動レバー16の先端部に直動アクチュエータ15の伸縮ロッド部15Aを連結するなどして構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の撹拌や固液混合に用いられる撹拌装置に係わり、特に発泡性の高い液体でもその内部に気泡を発生させることなく良好な撹拌を行えるようにした撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の撹拌や固液混合を行う撹拌装置では、一般的にシャフトに固着した羽根を回転させるようにしている。
【0003】
その種の撹拌装置の構成例を図11に示して概説すれば、30は主として液体が収容される撹拌槽であり、この撹拌槽30は有底円筒状の撹拌槽本体31とその上端開口部に装着される開閉自在な上蓋32とにより構成される。撹拌槽30の内部には回転自在なシャフト33が設けられ、そのシャフト33には撹拌羽根34が固着される。又、上蓋32上にはモータ35が設置され、その駆動軸にシャフト33が直結又は減速機を介して連結される。
【0004】
特に、撹拌槽30の内壁にはバッフル板36が取り付けられ、これにより撹拌羽根34の回転による撹拌槽30内での液体の回流に乱流を生じせしめて撹拌が良好に行われるようにしてある。
【0005】
又、撹拌槽30の底部にはポンプ37を介在せしめた排出管38が接続されると共に、その排出管38から方向切換弁39を介して給送管40が分岐され、その給送管40が撹拌槽30の上部に接続されており、これにより撹拌槽30内の液体をその内外で循環させて撹拌効果を上げられるようにしている。又、撹拌効果を高めるため、羽根付のシャフト33を撹拌槽30の偏心位置に配置することも行われている。
【0006】
尚、上記のように撹拌槽30の内壁にバッフル板36を設けることは従来から一般に広く行われている(例えば、特許文献1)。
【0007】
しかし、撹拌槽の内壁にバッフル板を設けたり、撹拌羽根を高速回転させたりすると、撹拌効果を上げることはできても、液体内に多量の気泡が生じてしまうという不都合がある。
【0008】
そこで、撹拌に伴う発泡現象の発生を防止するため、撹拌槽内を真空とし、真空環境下において液体を撹拌することが行われている(例えば、特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】実開平5−80529号公報
【0010】
【特許文献2】実開平6−41831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、撹拌槽内を真空にするには真空発生装置を必要とすることのみならず、撹拌槽を高気密構造としなければならないし、負圧に対して十分な強度をもつ高耐圧性の撹拌槽にしなければならない。
【0012】
このため、装置コストやランニングコストが高くなり、真空の発生やその圧抜きに費やす時間により撹拌処理全体の効率も悪化するという問題がある。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は真空環境下でなくとも気泡を発生することなく液体を良好に撹拌できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明に係る撹拌装置は、所定の容積を有する撹拌槽と、その撹拌槽内に設けられる回転自在な主軸と、その主軸に固着される偏平状のフィンと、前記主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段と、を有して成ることを特徴とする。
【0015】
又、駆動手段は、
(1)正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータを主軸の一端部に連結して成ること、
(2)主軸の一端部を撹拌槽の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバーを固着すると共に、該揺動レバーの先端部に直動アクチュエータの伸縮ロッド部を連結して成ること、(3)主軸に連ねてその外周方向に突出する永久磁石を設けると共に、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に励磁電流の方向が切り換えられる電磁石を配備して成ること、
(4)主軸に固着されたフィンの反対側に突片を突設し、その突片を挟んで膨張および収縮が可能な2つのエアバックを設け、その両エアバッグに対して給排気を交互に行う給排気手段を接続して成ること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る撹拌装置によれば、撹拌槽内に設けられる主軸に偏平状のフィンが固着されると共に、その主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段を有することから、主軸に固着されるフィンに魚の尾鰭のような揺動運動を与え、撹拌槽の内容液を泡立てることなく、音の発生も少なくしながら良好に撹拌することができる。
【0017】
特に、駆動手段として、主軸に連結される回転アクチュエータや直動アクチュエータを用いるものでは、高粘性の液体に浸漬された高負荷環境下のフィンも確実に作動させることができる。
【0018】
又、主軸に連ねてその外周方向に突設される永久磁石と、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に配備される電磁石とにより構成される駆動手段では、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができるほか、主軸を撹拌槽に貫通させずに設置できるので高気密、高圧下での撹拌が必要な場合に用いて好適である。
【0019】
更に、駆動手段として空気圧により膨張/収縮するエアバッグを用いるものでも装置の全高を低くして設置スペースを省くことができるほか、撹拌槽の付近に電気を使用する機器を配置する必要がなくなることから、引火性の高い液体の撹拌に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る撹拌装置の構成例を示した縦断面図である。図1において、1は所定の容積を有する撹拌槽であり、この撹拌槽1は有底円筒状の撹拌槽本体2と、その上端開口部に装着される開閉自在な上蓋3とにより構成される。
【0021】
尚、撹拌槽本体2の底部には排出管4が接続されると共に、撹拌槽1の内部には撹拌槽本体2の上端開口部を通じて液体、若しくは液体および粉体が投入される。そして、それら内容物が後述の撹拌機構により撹拌され、撹拌済みの処理液が排出管4を通じて外部に排出されるようになっている。
【0022】
5は上記の撹拌機構であり、この撹拌機構5は、撹拌槽1の内部に設けられる回転自在な主軸6、その主軸6に固着されるフィン7、及び主軸6に所定の運動を行わせる駆動部8(駆動手段)などから構成される。
【0023】
本例において、主軸6は上下方向に向けられ、その上方側の一端部が上蓋3を貫通して撹拌槽1の外部上方に突出されている。そして、その突出部が上蓋3上に設置した架台9の部位で回転自在に支持される構成としてある。
【0024】
又、フィン7は、ステンレス鋼などの耐食性に富む金属、あるいは可撓性を有するゴムやプラスチックなどから成る偏平状の板材で、その一端縁が溶接やボルト/ナットなどにより主軸6に沿ってその外周部に固着されている。
【0025】
次に、図2により駆動部8の構成を説明すれば、10は正逆回転可能な回転アクチュエータ(モータ)であり、この回転アクチュエータ10は架台9の上部に設置され、その駆動軸には軸継手11(カップリング)によって主軸6の一端部(上端部)が直結されている。又、架台9は主軸6を回転自在に支持する軸受ユニット12を有し、主軸6が上蓋3を貫通する部分にはグランドシール13が取り付けられて気密性が保たれる構造となっている。
【0026】
尚、本例において、回転アクチュエータ10は図示せぬ制御装置に信号線を介して接続され、その駆動軸が正逆に所定の角度ずつ回転するよう制御され、これによって主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられる構成とされるが、これによる主軸6の角変位量は概ね60度に設定される。但し、駆動部8が回転アクチュエータ10で構成されるものによれば、主軸6の角変位量を最大180度まで設定することができる。
【0027】
ここに、架台9は鋼板や型鋼などを結合するなどして成るボックス形で、その上面部に回転アクチュエータ10がボルトで固定されていると共に、上記軸受ユニット12は架台9の下部に固定されている。又、架台9は上蓋3のメンバ14に着脱自在に固定されている。
【0028】
以上のように構成される撹拌装置の作用を説明すると、図3に示されるように、フィン7は主軸6の正逆交互の回転角変位によって魚の尾鰭のような揺動運動を行うのであり、これによれば、撹拌槽本体2の内容液に気泡を生ずるような渦流を形成せずして、その内容液を良好に撹拌することができる。
【0029】
次に、本発明の変更例について説明する。図4は、上記の回転アクチュエータ10に代えて直動アクチュエータ15を用いた例である。
【0030】
図4において、16は揺動レバーであり、この揺動レバー16は上蓋3上における主軸6の一端突出部に直交状態で固着されている。そして、係る揺動レバー16の先端に直動アクチュエータ15(本例において復動型の油圧シリンダであるが、これに空気圧シリンダや電磁ソレノイドを用いることも可)の伸縮ロッド部15Aを接続して主軸6に正逆交互の回転角変位を与える上記の駆動部8(駆動手段)が構成されている。つまり、直動アクチュエータ15に対し作動流体を給排してその伸縮ロッド部15Aを伸縮させることにより、その往復直線運動が揺動レバー10を介して主軸6の回転角運動に変換されるようになっている。尚、直動アクチュエータ15のシリンダ胴15Bは、上蓋3にピン17にて揺動自在に取り付けられている。
【0031】
次に、図5は磁気駆動方式とした構成例を示す。図5において、撹拌槽本体2の内壁には上下一対のブラケット20が固着されており、その両ブラケット20,20により主軸6がその上下両端部を回転自在に支持されている。特に、本例において、主軸6にはフィン7の反対方向に突出する突片21が固着され、該突片21の先端に永久磁石22が装着される構成となっている。つまり、永久磁石22は、突片21により主軸6に連ねてその外周方向に突出する状態に設けられている。尚、永久磁石22は一方の磁極(N極またはS極)が撹拌槽本体2の内壁に臨む状態で装置される。
【0032】
一方、撹拌槽本体2の外周部には、永久磁石22に対向して電磁石23が配備される。その電磁石23は制御器24に導電接続されており、その制御器24によって電磁石23に対する励磁電流の方向が切り換えられるようになっている。
【0033】
そして、本例では、電磁石23に対する励磁電流の方向を周期的に切り換えることにより、永久磁石22に作用する極性を交互反転せしめ、これにより突片21を介して主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられ、これによりフィン7が図6に示すような揺動運動を行うようにしている。
【0034】
尚、本例においても、主軸6にはフィン7が固着され、撹拌槽本体2の上端開口部には開閉自在な上蓋が装着されるが、主軸6に回転角変位を与える駆動手段として電磁石23を用いた構成のものでは、上記例のように撹拌槽1の上部に回転アクチュエータ10やこれを搭載する架台9などを設ける必要がなくなるので、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができる。
【0035】
次に、本発明の他の構成例をついて説明する。図7において、撹拌槽本体2の内壁には上記例と同じく上下一対のブラケット20が固着されており、その両ブラケット20,20により主軸6がその上下両端部を回転自在に支持されているほか、主軸6にはフィン7の反対方向に突出する突片21が固着されている。
【0036】
特に、図8および図9から明らかなように、本例によれば突片21を挟んで2つのエアバッグ25a,25bが設けられる。エアバッグ25a,25bは、その内部に対する空気の給排により膨張/収縮するもので、その両エアバッグ25a,25bは撹拌槽本体2の内壁に固着された上部開放型のバッグケース26内に収容されている。そして、それらエアバッグ25a,25bには給排気手段が接続される。
【0037】
図9のように、係る給排気手段は、空気圧源27(エアコンプレッサなど)、および該空気圧源27とエアバック25a,25bとを繋ぐ管路28(エアホース)を含み、その回路28には電磁弁29が介在される。
【0038】
ここに、エアバッグ25a,25bには空気圧源27から電磁弁29を介して圧縮空気が交互に給排され、これによりエアバッグ25a,25bが交互に膨張と収縮を繰り返し行い、しかして両エアバッグ25a,25bで挟まれる突片21を通じて主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられてフィン7が図10(A),(B)のように揺動するようになっている。
【0039】
尚、本例によれば、エアバッグ25a,25bに対する給排気のタイミングを変えることにより、フィン7の揺動回数や揺動角度を調整することができる。又、撹拌槽1の上部に回転アクチュエータ10やこれを搭載する架台9などを設ける必要がなくなるので、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る撹拌装置の構成例を示す縦断面図
【図2】同装置の一部分(駆動部)を示す正面図
【図3】フィンの動作説明図
【図4】駆動手段の変更例を示す平面図
【図5】本発明に係る撹拌装置の変更例を示す部分断面図
【図6】図5のX−X線における部分断面図
【図7】駆動手段にエアバッグを用いた例を示す部分断面図
【図8】図7の部分断面図
【図9】エアバッグとその給排気系統を示す説明図
【図10】エアバッグの膨張/収縮によるフィンの動作状態を示す説明図
【図11】従来装置を示す説明図
【符号の説明】
【0041】
1 撹拌槽
2 撹拌槽本体
3 上蓋
5 撹拌機構
6 主軸
7 フィン
8 駆動部(駆動手段)
9 架台
10 回転アクチュエータ
15 直動アクチュエータ
16 揺動レバー
21 突片
22 永久磁石
23 電磁石
24 制御器
25a,25b エアバッグ
26 バッグケース
27 空気圧源
28 管路
29 電磁弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の撹拌や固液混合に用いられる撹拌装置に係わり、特に発泡性の高い液体でもその内部に気泡を発生させることなく良好な撹拌を行えるようにした撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の撹拌や固液混合を行う撹拌装置では、一般的にシャフトに固着した羽根を回転させるようにしている。
【0003】
その種の撹拌装置の構成例を図11に示して概説すれば、30は主として液体が収容される撹拌槽であり、この撹拌槽30は有底円筒状の撹拌槽本体31とその上端開口部に装着される開閉自在な上蓋32とにより構成される。撹拌槽30の内部には回転自在なシャフト33が設けられ、そのシャフト33には撹拌羽根34が固着される。又、上蓋32上にはモータ35が設置され、その駆動軸にシャフト33が直結又は減速機を介して連結される。
【0004】
特に、撹拌槽30の内壁にはバッフル板36が取り付けられ、これにより撹拌羽根34の回転による撹拌槽30内での液体の回流に乱流を生じせしめて撹拌が良好に行われるようにしてある。
【0005】
又、撹拌槽30の底部にはポンプ37を介在せしめた排出管38が接続されると共に、その排出管38から方向切換弁39を介して給送管40が分岐され、その給送管40が撹拌槽30の上部に接続されており、これにより撹拌槽30内の液体をその内外で循環させて撹拌効果を上げられるようにしている。又、撹拌効果を高めるため、羽根付のシャフト33を撹拌槽30の偏心位置に配置することも行われている。
【0006】
尚、上記のように撹拌槽30の内壁にバッフル板36を設けることは従来から一般に広く行われている(例えば、特許文献1)。
【0007】
しかし、撹拌槽の内壁にバッフル板を設けたり、撹拌羽根を高速回転させたりすると、撹拌効果を上げることはできても、液体内に多量の気泡が生じてしまうという不都合がある。
【0008】
そこで、撹拌に伴う発泡現象の発生を防止するため、撹拌槽内を真空とし、真空環境下において液体を撹拌することが行われている(例えば、特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】実開平5−80529号公報
【0010】
【特許文献2】実開平6−41831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、撹拌槽内を真空にするには真空発生装置を必要とすることのみならず、撹拌槽を高気密構造としなければならないし、負圧に対して十分な強度をもつ高耐圧性の撹拌槽にしなければならない。
【0012】
このため、装置コストやランニングコストが高くなり、真空の発生やその圧抜きに費やす時間により撹拌処理全体の効率も悪化するという問題がある。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は真空環境下でなくとも気泡を発生することなく液体を良好に撹拌できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明に係る撹拌装置は、所定の容積を有する撹拌槽と、その撹拌槽内に設けられる回転自在な主軸と、その主軸に固着される偏平状のフィンと、前記主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段と、を有して成ることを特徴とする。
【0015】
又、駆動手段は、
(1)正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータを主軸の一端部に連結して成ること、
(2)主軸の一端部を撹拌槽の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバーを固着すると共に、該揺動レバーの先端部に直動アクチュエータの伸縮ロッド部を連結して成ること、(3)主軸に連ねてその外周方向に突出する永久磁石を設けると共に、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に励磁電流の方向が切り換えられる電磁石を配備して成ること、
(4)主軸に固着されたフィンの反対側に突片を突設し、その突片を挟んで膨張および収縮が可能な2つのエアバックを設け、その両エアバッグに対して給排気を交互に行う給排気手段を接続して成ること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る撹拌装置によれば、撹拌槽内に設けられる主軸に偏平状のフィンが固着されると共に、その主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段を有することから、主軸に固着されるフィンに魚の尾鰭のような揺動運動を与え、撹拌槽の内容液を泡立てることなく、音の発生も少なくしながら良好に撹拌することができる。
【0017】
特に、駆動手段として、主軸に連結される回転アクチュエータや直動アクチュエータを用いるものでは、高粘性の液体に浸漬された高負荷環境下のフィンも確実に作動させることができる。
【0018】
又、主軸に連ねてその外周方向に突設される永久磁石と、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に配備される電磁石とにより構成される駆動手段では、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができるほか、主軸を撹拌槽に貫通させずに設置できるので高気密、高圧下での撹拌が必要な場合に用いて好適である。
【0019】
更に、駆動手段として空気圧により膨張/収縮するエアバッグを用いるものでも装置の全高を低くして設置スペースを省くことができるほか、撹拌槽の付近に電気を使用する機器を配置する必要がなくなることから、引火性の高い液体の撹拌に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係る撹拌装置の構成例を示した縦断面図である。図1において、1は所定の容積を有する撹拌槽であり、この撹拌槽1は有底円筒状の撹拌槽本体2と、その上端開口部に装着される開閉自在な上蓋3とにより構成される。
【0021】
尚、撹拌槽本体2の底部には排出管4が接続されると共に、撹拌槽1の内部には撹拌槽本体2の上端開口部を通じて液体、若しくは液体および粉体が投入される。そして、それら内容物が後述の撹拌機構により撹拌され、撹拌済みの処理液が排出管4を通じて外部に排出されるようになっている。
【0022】
5は上記の撹拌機構であり、この撹拌機構5は、撹拌槽1の内部に設けられる回転自在な主軸6、その主軸6に固着されるフィン7、及び主軸6に所定の運動を行わせる駆動部8(駆動手段)などから構成される。
【0023】
本例において、主軸6は上下方向に向けられ、その上方側の一端部が上蓋3を貫通して撹拌槽1の外部上方に突出されている。そして、その突出部が上蓋3上に設置した架台9の部位で回転自在に支持される構成としてある。
【0024】
又、フィン7は、ステンレス鋼などの耐食性に富む金属、あるいは可撓性を有するゴムやプラスチックなどから成る偏平状の板材で、その一端縁が溶接やボルト/ナットなどにより主軸6に沿ってその外周部に固着されている。
【0025】
次に、図2により駆動部8の構成を説明すれば、10は正逆回転可能な回転アクチュエータ(モータ)であり、この回転アクチュエータ10は架台9の上部に設置され、その駆動軸には軸継手11(カップリング)によって主軸6の一端部(上端部)が直結されている。又、架台9は主軸6を回転自在に支持する軸受ユニット12を有し、主軸6が上蓋3を貫通する部分にはグランドシール13が取り付けられて気密性が保たれる構造となっている。
【0026】
尚、本例において、回転アクチュエータ10は図示せぬ制御装置に信号線を介して接続され、その駆動軸が正逆に所定の角度ずつ回転するよう制御され、これによって主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられる構成とされるが、これによる主軸6の角変位量は概ね60度に設定される。但し、駆動部8が回転アクチュエータ10で構成されるものによれば、主軸6の角変位量を最大180度まで設定することができる。
【0027】
ここに、架台9は鋼板や型鋼などを結合するなどして成るボックス形で、その上面部に回転アクチュエータ10がボルトで固定されていると共に、上記軸受ユニット12は架台9の下部に固定されている。又、架台9は上蓋3のメンバ14に着脱自在に固定されている。
【0028】
以上のように構成される撹拌装置の作用を説明すると、図3に示されるように、フィン7は主軸6の正逆交互の回転角変位によって魚の尾鰭のような揺動運動を行うのであり、これによれば、撹拌槽本体2の内容液に気泡を生ずるような渦流を形成せずして、その内容液を良好に撹拌することができる。
【0029】
次に、本発明の変更例について説明する。図4は、上記の回転アクチュエータ10に代えて直動アクチュエータ15を用いた例である。
【0030】
図4において、16は揺動レバーであり、この揺動レバー16は上蓋3上における主軸6の一端突出部に直交状態で固着されている。そして、係る揺動レバー16の先端に直動アクチュエータ15(本例において復動型の油圧シリンダであるが、これに空気圧シリンダや電磁ソレノイドを用いることも可)の伸縮ロッド部15Aを接続して主軸6に正逆交互の回転角変位を与える上記の駆動部8(駆動手段)が構成されている。つまり、直動アクチュエータ15に対し作動流体を給排してその伸縮ロッド部15Aを伸縮させることにより、その往復直線運動が揺動レバー10を介して主軸6の回転角運動に変換されるようになっている。尚、直動アクチュエータ15のシリンダ胴15Bは、上蓋3にピン17にて揺動自在に取り付けられている。
【0031】
次に、図5は磁気駆動方式とした構成例を示す。図5において、撹拌槽本体2の内壁には上下一対のブラケット20が固着されており、その両ブラケット20,20により主軸6がその上下両端部を回転自在に支持されている。特に、本例において、主軸6にはフィン7の反対方向に突出する突片21が固着され、該突片21の先端に永久磁石22が装着される構成となっている。つまり、永久磁石22は、突片21により主軸6に連ねてその外周方向に突出する状態に設けられている。尚、永久磁石22は一方の磁極(N極またはS極)が撹拌槽本体2の内壁に臨む状態で装置される。
【0032】
一方、撹拌槽本体2の外周部には、永久磁石22に対向して電磁石23が配備される。その電磁石23は制御器24に導電接続されており、その制御器24によって電磁石23に対する励磁電流の方向が切り換えられるようになっている。
【0033】
そして、本例では、電磁石23に対する励磁電流の方向を周期的に切り換えることにより、永久磁石22に作用する極性を交互反転せしめ、これにより突片21を介して主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられ、これによりフィン7が図6に示すような揺動運動を行うようにしている。
【0034】
尚、本例においても、主軸6にはフィン7が固着され、撹拌槽本体2の上端開口部には開閉自在な上蓋が装着されるが、主軸6に回転角変位を与える駆動手段として電磁石23を用いた構成のものでは、上記例のように撹拌槽1の上部に回転アクチュエータ10やこれを搭載する架台9などを設ける必要がなくなるので、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができる。
【0035】
次に、本発明の他の構成例をついて説明する。図7において、撹拌槽本体2の内壁には上記例と同じく上下一対のブラケット20が固着されており、その両ブラケット20,20により主軸6がその上下両端部を回転自在に支持されているほか、主軸6にはフィン7の反対方向に突出する突片21が固着されている。
【0036】
特に、図8および図9から明らかなように、本例によれば突片21を挟んで2つのエアバッグ25a,25bが設けられる。エアバッグ25a,25bは、その内部に対する空気の給排により膨張/収縮するもので、その両エアバッグ25a,25bは撹拌槽本体2の内壁に固着された上部開放型のバッグケース26内に収容されている。そして、それらエアバッグ25a,25bには給排気手段が接続される。
【0037】
図9のように、係る給排気手段は、空気圧源27(エアコンプレッサなど)、および該空気圧源27とエアバック25a,25bとを繋ぐ管路28(エアホース)を含み、その回路28には電磁弁29が介在される。
【0038】
ここに、エアバッグ25a,25bには空気圧源27から電磁弁29を介して圧縮空気が交互に給排され、これによりエアバッグ25a,25bが交互に膨張と収縮を繰り返し行い、しかして両エアバッグ25a,25bで挟まれる突片21を通じて主軸6に正逆交互の回転角変位が与えられてフィン7が図10(A),(B)のように揺動するようになっている。
【0039】
尚、本例によれば、エアバッグ25a,25bに対する給排気のタイミングを変えることにより、フィン7の揺動回数や揺動角度を調整することができる。又、撹拌槽1の上部に回転アクチュエータ10やこれを搭載する架台9などを設ける必要がなくなるので、装置の全高を低くして設置スペースを省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る撹拌装置の構成例を示す縦断面図
【図2】同装置の一部分(駆動部)を示す正面図
【図3】フィンの動作説明図
【図4】駆動手段の変更例を示す平面図
【図5】本発明に係る撹拌装置の変更例を示す部分断面図
【図6】図5のX−X線における部分断面図
【図7】駆動手段にエアバッグを用いた例を示す部分断面図
【図8】図7の部分断面図
【図9】エアバッグとその給排気系統を示す説明図
【図10】エアバッグの膨張/収縮によるフィンの動作状態を示す説明図
【図11】従来装置を示す説明図
【符号の説明】
【0041】
1 撹拌槽
2 撹拌槽本体
3 上蓋
5 撹拌機構
6 主軸
7 フィン
8 駆動部(駆動手段)
9 架台
10 回転アクチュエータ
15 直動アクチュエータ
16 揺動レバー
21 突片
22 永久磁石
23 電磁石
24 制御器
25a,25b エアバッグ
26 バッグケース
27 空気圧源
28 管路
29 電磁弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容積を有する撹拌槽と、その撹拌槽内に設けられる回転自在な主軸と、その主軸に固着される偏平状のフィンと、前記主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段と、を有して成ることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
駆動手段は、正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータを主軸の一端部に連結して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項3】
駆動手段は、主軸の一端部を撹拌槽の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバーを固着すると共に、該揺動レバーの先端部に直動アクチュエータの伸縮ロッド部を連結して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項4】
駆動手段は、主軸に連ねてその外周方向に突出する永久磁石を設けると共に、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に励磁電流の方向が切り換えられる電磁石を配備して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項5】
駆動手段は、主軸に固着されたフィンの反対側に突片を突設し、その突片を挟んで膨張および収縮が可能な2つのエアバックを設け、その両エアバッグに対して給排気を交互に行う給排気手段を接続して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項1】
所定の容積を有する撹拌槽と、その撹拌槽内に設けられる回転自在な主軸と、その主軸に固着される偏平状のフィンと、前記主軸に正逆交互の回転角変位を与える駆動手段と、を有して成ることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
駆動手段は、正逆に所定の角度ずつ回転される回転アクチュエータを主軸の一端部に連結して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項3】
駆動手段は、主軸の一端部を撹拌槽の外部上方に突出させて該突出部に揺動レバーを固着すると共に、該揺動レバーの先端部に直動アクチュエータの伸縮ロッド部を連結して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項4】
駆動手段は、主軸に連ねてその外周方向に突出する永久磁石を設けると共に、その永久磁石に対応して撹拌槽の外周部に励磁電流の方向が切り換えられる電磁石を配備して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【請求項5】
駆動手段は、主軸に固着されたフィンの反対側に突片を突設し、その突片を挟んで膨張および収縮が可能な2つのエアバックを設け、その両エアバッグに対して給排気を交互に行う給排気手段を接続して成ることを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−126102(P2008−126102A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310865(P2006−310865)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(302038855)株式会社深堀鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(302038855)株式会社深堀鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】
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