擁壁形成用の基礎ブロック
【課題】擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックにおいて、非土留め面側道路面等が傾斜している場合にも適切な排水機能を付与する。
【解決手段】擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口を形成した。
【解決手段】擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、道路脇の傾斜面地等の所定の高低差を有する段差面における高壁面側の土留めを図る擁壁形成用の基礎ブロックの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば道路に対して、道路よりも高さの高い宅地等の造成地や山の傾斜面が隣接するような場合には、道路面側高壁面の土留めを図る必要がある。
【0003】
このような場合、従来の構成では、例えばL型ブロックなどの成型ブロック材を用いて擁壁部を形成し、同擁壁部によって土留めを図る構造が採用されていた(例えば特許文献1中の記載を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来例の内のL型ブロックを用いた擁壁構造の場合、例えば図13に示すように、次のような問題があった。
【0006】
例えば図示擁壁高Hが1〜5mのL型ブロック40(側壁部40a、底壁部40b)の場合だと、規定上、洗掘防止の見地から少なくとも30〜50cmの根入れ深さhが必要であり、その分底壁部40bの幅Waに応じた幅よりも少し広い幅Wa′の溝を掘る必要がある。
【0007】
このため、設置部の掘削範囲が広く、また掘削量が多くなり、擁壁設置作業に時間がかかる。
【0008】
また、図13から明らかなように、根入れ部の深さh分だけ道路部Aから上方に延びる側壁部40aの高さが低くなるため(H−h)、最初から同根入れ部の深さhの減少分を見込んだ高擁壁高HのL型ブロック(大型のもの)を準備しなければ、造成地Bの高さに対応することができない。
【0009】
その結果、さらにL型ブロック40の底壁部40bの幅Waも拡大され、上記根入れのための掘削範囲が広くなり、掘削量も多くなる。
【0010】
さらに、ブロック材が大型化した分だけ、コストもアップする。
【0011】
また、道路部Aの側方には、例えば図14に示すように、断面U状の排水路(排水溝)50を設けることが多い。その場合、従来の擁壁構造の場合、上記のように掘削範囲が拡大されることに加えて、同排水路50の幅Wo分だけ道路幅Wcが狭くなる問題がある。
【0012】
そこで、このような問題を解決するために、例えば擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックを形成し、その内側に排水溝を設けるとともに、その道路部A側等非土留め部側の側壁部に水導入用の開口を形成し、道路部A側の水を水導入口を介して排水溝部分に導入し、下流側に排出することが考えられる(例えば本件出願人の先願である特願2010−209414号の明細書および図面を参照)。
【0013】
このような構成によると、基礎上げ部が根入れ部として機能するので、上部に比べて底部の幅が広い擁壁部自体は、埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。その結果、同擁壁部の擁壁高は、そのままの高さか、または所定寸法低くて済むようになり、コストが低減される。
【0014】
そして、上記基礎ブロックは、内部に排水溝を備えており、側壁部に設けられた水導入口を介して道路部等非土留め面側の水を排水溝に導入して、下流側に排出することができるようになる。したがって、図14のようなU状の排水路が不要となり、道路の幅も有効に拡大される。
【0015】
ところが、このような構成の場合にも、例えば道路面等非土留め部側上面が傾斜面となっていると、上記水導入口と道路面等非土留め部側上面が対応せず、適切な水の導入が不可能となる問題が発生する。
【0016】
もちろん、基礎ブロック側水導入口の位置を当該非土留め部側上面の傾斜状態に合わせて形成することが考えられるが、プレキャスト構造の基礎ブロックでは、そのような対応は不可能である。
【0017】
本願発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックにおいて、その内側に排水溝を設けるとともに、その道路部側等非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて水導入用の開口を形成し、道路面等非土留め部上面側の傾斜によって道路面等非土留め部上面側の高さが変化しても、それに対応して適切に水を導入できるようにした擁壁形成用の基礎ブロックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願各発明は、上記の目的を達成するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0019】
(1) 請求項1記載の発明
この発明は、擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口が形成されていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によると、基礎ブロックが根入れ部として機能するので、擁壁部自体は埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。その結果、同擁壁部の擁壁高は、そのままの高さか、または所定寸法低くて済むようになる。その結果、コストが低減される。
【0021】
そして、上記基礎ブロックは、内部に排水溝を備えており、しかも、その非土留め部側側壁部の下端部側から上端部側に長く延びる形で、例えば連続的又は間欠的に配設された水導入口を介して、道路面等非土留め部側上面の水を導入するようになっており、同上下方向に延びる形で配設された水導入用の開口部が道路面等非土留め部側上面の高さの変化に対応することができるので、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何に拘わらず、その上面側の水を適切に導入して、下流側に排出することができるようになる。
【0022】
したがって、従来一般的に道路脇に設置されているようなU状の排水路が不要となり、道路の幅も有効に拡大される。
【0023】
(2) 請求項2記載の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて、連続して形成されていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によると、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、連続する形で開口している水導入用の開口によって、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何にかかわらず、適切な水の導入が可能となる。
【0025】
(3) 請求項3記載の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて、所定の間隔を置いて間欠的に形成されていることを特徴としている。
【0026】
このような構成によると、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側まで所定の間隔を置いて間欠的に配設される形で開口している水導入用の開口によって、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何にかかわらず、適切な水の導入が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上の結果、本願発明によると、道路面等非土留め部上面の傾斜によって、基礎ブロック側壁部の水導入口に対する道路面等非土留め部上面側の高さが変化しても、それに対応して適切に水を導入できるようにした擁壁形成用の基礎ブロックを低コストに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態1に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図2】同擁壁構造の構成を示す図1の左側方から見た図である。
【図3】同擁壁構造の基礎ブロック部における水導入口の設置形態を示す縦断面図(図1のI−I線断面図)である。
【図4】同擁壁構造における各部の寸法関係を示す図1と同様の横断面図である。
【図5】同擁壁構造における道路部が傾斜した状態に対応した複数のブロックの設置形態を示す図である。
【図6】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態2に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図7】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態3に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図8】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態4に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図9】同擁壁構造の基礎ブロック部における水導入口の設置形態を示す図3と同様の縦断面図である。
【図10】同擁壁構造における道路部が傾斜した状態に対応した複数のブロックの設置形態を示す図である。
【図11】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態5に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図12】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態6に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図13】従来の土留め用擁壁構造の基本例(排水路なし)の構成を示す横断面図である。
【図14】同従来の土留め用擁壁構造の変形例(排水路あり)の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
先ず図1〜図4は、本願発明の擁壁形成用基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態1に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0031】
この実施の形態の土留め用擁壁構造は、一例として、道路部Aと造成地部Bとの間の段差面部等擁壁設置部Cの下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす基礎ブロック1と、該基礎ブロック1の上部に設置され、土留め機能を果たす断面L型の擁壁ブロック4とからなり、上記基礎ブロック1の幅Wbは上記擁壁ブロック4の底壁部4bの幅Waよりも遥かに小さく形成されている(図4参照)。
【0032】
基礎ブロック1は、一例として、横方向(水平方向)の幅Wbに比べて縦方向(上下方向)の高さHaが少し大きい断面略長方形状(もちろん、他の例として正方形状の場合でもかまわない)の角筒体構造をなし、その天面部は開放されて蓋2が掛けられる構造になっているとともに、内側には、例えば断面略長方形状の排水溝3が形成されている。
【0033】
基礎ブロック1は、上述した擁壁設置部Cにおいて、その横方向の幅Wbに応じた幅よりも少し広い幅Wb′で、かつ所定の深さの溝9(同じく図4参照)を掘り、同溝9の底部に基礎砕石5を埋込み、その上にモルタル(またはコンクリート)6を敷いた上で設置し、この実施形態の場合、例えば道路部Aの道路面よりも少し高くなる状態に埋設される。
【0034】
また、擁壁ブロック4は、造成地部Bの高さに応じた高さHの上下方向に延びる側壁部(側板部)4aと該側壁部4aの下端部から直角に曲成され、上記造成地部Bの下方部に向けて水平方向に延びる底壁部(底板部)4bとからなり、底壁部4bの幅Waは、上記側壁部4aの高さHに応じて安定した擁壁機能を果たすことができる寸法(例えば0.6H〜0.7H)のものとなっている。
【0035】
この擁壁ブロック4は、例えば図1に示すように、上記基礎ブロック1の蓋2が掛けられた状態においてフラットで水平方向に面一に拡がる天面部1d上に、底壁部4bの基端側(コーナー部側)を載置し、側壁部4aの反造成地側外側面(道路側面)と基礎ブロック1の反造成地側外側面(道路側面)とが上下方向に面一な状態となるように組み合わせて上下方向に積層される。
【0036】
この時、上記基礎ブロック1の天面部1dより低い造成地B側の下層部分に、上記基礎ブロック1の設置時と同様に所定の深さの溝を掘り、上記基礎砕石5と敷モルタル(またはコンクリート)6とによって上記天面部1dと同じ高さの支持面を形成した上で(もちろん、この場合、先ずコンクリートを打設し、その上面に敷モルタルすることも可能である)、上記擁壁ブロック4を設置し、その底壁部4bの基礎ブロック1の天面部1dから造成地B側に延出された部分を支持する。
【0037】
そして、その上で、上記擁壁ブロック4の内側に土を盛り、十分に締め固めることにより、安定した土留め機能を発揮させる。
【0038】
この場合、上記基礎ブロック1の道路部A側の側壁部1bには、その下端部側から上端部側にかけて、例えば図2および図3に示すように、一例として、等径で上下方向に長いスリット構造の水導入口7a,7a・・・が長手方向に所定の間隔を保って多数個並設されおり、その上下方向の長さHbによって道路部A側道路面の傾斜状態(勾配i%)如何にかかわらず、道路部A側の雨水等が確実に導入されるように設置され、上記水導入口7a,7a・・・によって案内導入された雨水は排水溝3を通して下流側に排出される。
【0039】
これは、道路部Aの傾斜状態に応じて、複数の基礎ブロック1,1・・・および擁壁ブロック4,4・・・が並設される場合にも全く同様であり、下段側ほど高くなる擁壁高Hに合った側壁高の擁壁ブロック4を採用して設置することにより、図5のように、全体としても適切に道路部A面上の水を導入できる状態で施工することができる。
【0040】
そして、この場合、上述のように基礎ブロック1の設置工事が終わった上記蓋2を掛ける前の排水溝3のオープン状態において、相互に段階状に連続する各排水溝3,3・・・の底部には、例えば上段側の排水溝3の下流端側底部に連続する形で、所定の厚さのコンクリート8が打たれ、相互に開口部が重なり合う形で上段側から下段側に連接される排水溝3の底部面3aが段差のない傾斜面状態で連続して行く様に施工される。
【0041】
以上のような基礎ブロック1および同基礎ブロック1を用いた擁壁構造によると、上記コンクリートブロック構造の基礎ブロック1が根入れ部として機能するので、断面L型で底壁部4bの幅が広いコンクリートブロック構造の擁壁ブロック4の底壁部4bは、土中に埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。
【0042】
その結果、同擁壁ブロック4の擁壁高Hは、そのままの高さのものか、または同そのままの高さのものよりも所定寸法低い小型のものを利用することができることになる。その結果、コストが低減される。
【0043】
一方、根入れ部として機能する上記基礎ブロック1は、上記コンクリートブロック構造の擁壁ブロック4の側壁部4aの下方に位置して、しかも上記擁壁ブロック4の底壁部4bの幅Waよりも遥かに小さな幅Wbに形成されているから、必然的に同基礎ブロック1設置のための掘削幅は、上述した従来の構成に比べて遥かに小さくて済み、もちろん掘削量も大きく減少する。したがって、設置作業も容易になる。
【0044】
また、上記基礎ブロック1は、内部に排水溝3を備えており、側壁部1bの水導入口7a,7a・・・を介して道路部A面側の雨水を導入し、下流側に排出することができるようになっているので、従来一般的に道路脇に設置されているようなU状の排水路(前述した図14中の符号50を参照)が不要となる。その結果、道路部Aの幅が有効に拡大される。
【0045】
なお、この場合、必要に応じて、上記造成地B側の土中に含まれている水を排水溝3内に導入する通水孔7b,7b・・・も形成され、造成地B中の水も排水溝3内に導入されて下流側に排出される。
【0046】
また、このように排水溝3を形成するようにすると、形成しない場合に比べて基礎ブロック1自体のコンクリート材料を大きく節減することができ、その点でも、さらにコストを低減することができる。
【0047】
しかも、この場合、上記排水溝3は上下方向に長く、図5のように道路部Aの勾配に応じて順次所定の段差を有して設置された場合にも、相互に開口面が重なり合う形で確実に連通して配設されることになる。
【0048】
そして、その道路部A側の側壁部1bには、当該側壁部1bの下端部側から上端部側にかけて、例えば等しい開口径で上下方向に連続する形で長く延びるスリット構造の水導入口7a,7a・・・(高さHb・・・図4参照)が設けられており、同水導入口7a,7a・・・を介して水を導入するようになっており、同上下方向に長く延びる水導入口7a,7a・・・が、その高さHbにより道路部A上面の高さの変化(段差)に十分に対応することができるので、道路部A上面側の傾斜状態如何に拘わらず、その上面側の水を排水溝3内に適切に導入して、下流側に排出することができるようになる。
【0049】
(変形例)
なお、上記側壁部1b部分の排水溝3に連通する水導入口7a,7a・・・は、もちろん上述のように上下方向にストレートに延びるもののみに限られるものではなく、例えば一定の傾斜角を有して斜目方向に延びるもの、また上下方向に連続するものではなく、所定の間隔を置いて上下方向に間欠的に配設された複数の孔部よりなるもの(その場合、長手方向に所定の間隔を置いて上下方向に整列するものだけでなく、側壁部1bの全体に亘って多数点在させるものも含む)、またスリット構造のものと上下方向の複数の孔部構造のものを交互に組み合わせたもの、さらにはスリット構造の場合において下方から上方に等径でなく、径の異なるものとしたものなども、自由に採用することができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に図6は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態2に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0051】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1の天面部1d側を蓋2のない全オープン型のものとし、蓋掛け用の凹部3bも無くしたものとしたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態1のものと全く同様であり、同様の作用を奏する。
【0052】
このような構成では、蓋2および蓋掛け作業が不要となり、その分コストが低減される。
【0053】
(実施の形態3)
次に図7は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態3に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0054】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1において、その道路部A側の側壁部1bの上端側に擁壁ブロック4係止用の係止片1eを設けたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態1のものと同様であり、同様の作用を奏する。
【0055】
このような構成では、基礎ブロック1に対面する上記断面L型の擁壁ブロック4の基端部が確実に係止されるようになり、擁壁ブロック4の設置状態の安定度が向上する。
【0056】
(実施の形態4)
次に図8〜図10は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態4に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0057】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1の水導入口7a,7a・・・を、その道路部A側側壁部1bの下端部側から上端部に到る途中までではなく、上端面側(天面1d側)まで連続的に開口したものとし、しかも道路部A側の開口面を広くしたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態2のものと同様であり、同様の作用を奏する。
【0058】
すなわち、図8〜図10の構成では、上述の実施形態2のものと同様に蓋2のない全オープン型の基礎ブロック1の側壁部1bが上記断面L型の擁壁ブロック4の側壁部4aと面一な状態で、その下方に位置する形で設置されており、その天面1d側は蓋2を設けることなく、U状に開放されている。
【0059】
そして、上記側壁部1bの水導入口7a,7a・・・は、例えば図8のように、上記側壁部1bの下端部側から上端部側上端面まで連続して延び、その下端側から上端面までの道路部A面側開口部72の全体が道路部Aの道路面側に開放されている。
【0060】
この水導入口7a,7a・・・の道路部A面側の開口部72は、例えば図9に示すように、排水溝3側に貫通する主口部71部分に比べて左右方向に幅が広く形成され、水を導入しやすくなっている。
【0061】
そして、設置時において、道路部Aの道路面から道路部A面側開口部72の下端までの間には、上記主口部71部分への土砂の流入を防ぐための鉄板その他の土砂流入防止板10が介設される。
【0062】
このような構成によると、上下方向に長く開口された水導入口7a,7a・・・の道路部A側開口部72の上下方向長さが上述の実施の形態1〜3の場合よりも長くなり、例えば図10のように、道路部Aの勾配が一層大きな場合にも十分に余裕をもって対応できるようになる。
【0063】
また、水導入口7a,7a・・・の道路部A面側開口部72の開口面積が広いことから、水の導入効率も向上する。
【0064】
(変形例)
なお、この実施の形態4では、上記水導入口7a,7a・・・の道路部A面側の幅の広い開口部72は、例えば図9に示すように、排水溝3側に貫通する主口部71部分の全体に対応して、その下端側から上端面まで形成されているが、これは下端側上方部の途中位置から上方部までを部分的に広くする構成でもよい。
【0065】
(実施の形態5)
次に図11は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態5に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0066】
この実施の形態のものは、上記実施の形態4の構成において、基礎ブロック1の天面部1d上に設置される擁壁ブロック4を、水導入口7a,7a・・・の天面1d側開口部を避けた状態で設置することによって、道路部Aの道路面と基礎ブロック1の天面1dとが同一面となる状態で設置できるようにしたことを特徴とするものである。
【0067】
このようにしても、水導入口7a,7a・・・は、その天面1d側の開口部から水の導入が可能となる。
【0068】
(実施の形態6)
次に図12は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態6に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0069】
この実施の形態のものは、上記実施の形態5と同様の構成を、上記実施の形態1と同様の蓋掛け型の基礎ブロックによって実現したことを特徴とするものである。
【0070】
その他の構成は、実施の形態1および5のものと全く同様であり、同様の作用を奏する。
【0071】
(変形例)
実施の形態4〜6のような構成の場合、道路面A側側壁部1bの前面側に水導入口7a,7a・・・が下端側から上面側まで大きく開放されることになるので、上述のように同水導入口7a,7a・・・に対面する道路面A側から土砂等が流入する可能性がある。
【0072】
そこで、同構成を採用する場合には、それぞれ図示のように、必要に応じて、道路面から所定の深さ位置まで鉄板その他の土砂流入防止板10を設けるようにするが、これは例えば道路部A面側にモルタルを押し込んで土砂等が流入しないようにする構成でもよい。
【符号の説明】
【0073】
1は基礎ブロック、1aは底壁部、1bは道路部側の側壁部、1cは造成地側の側壁部、1dは天面部、2は蓋、3は排水溝、3bは蓋掛用の凹部、4は擁壁ブロック、4aは側壁部、4bは底壁部、7aは水導入口である。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、道路脇の傾斜面地等の所定の高低差を有する段差面における高壁面側の土留めを図る擁壁形成用の基礎ブロックの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば道路に対して、道路よりも高さの高い宅地等の造成地や山の傾斜面が隣接するような場合には、道路面側高壁面の土留めを図る必要がある。
【0003】
このような場合、従来の構成では、例えばL型ブロックなどの成型ブロック材を用いて擁壁部を形成し、同擁壁部によって土留めを図る構造が採用されていた(例えば特許文献1中の記載を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来例の内のL型ブロックを用いた擁壁構造の場合、例えば図13に示すように、次のような問題があった。
【0006】
例えば図示擁壁高Hが1〜5mのL型ブロック40(側壁部40a、底壁部40b)の場合だと、規定上、洗掘防止の見地から少なくとも30〜50cmの根入れ深さhが必要であり、その分底壁部40bの幅Waに応じた幅よりも少し広い幅Wa′の溝を掘る必要がある。
【0007】
このため、設置部の掘削範囲が広く、また掘削量が多くなり、擁壁設置作業に時間がかかる。
【0008】
また、図13から明らかなように、根入れ部の深さh分だけ道路部Aから上方に延びる側壁部40aの高さが低くなるため(H−h)、最初から同根入れ部の深さhの減少分を見込んだ高擁壁高HのL型ブロック(大型のもの)を準備しなければ、造成地Bの高さに対応することができない。
【0009】
その結果、さらにL型ブロック40の底壁部40bの幅Waも拡大され、上記根入れのための掘削範囲が広くなり、掘削量も多くなる。
【0010】
さらに、ブロック材が大型化した分だけ、コストもアップする。
【0011】
また、道路部Aの側方には、例えば図14に示すように、断面U状の排水路(排水溝)50を設けることが多い。その場合、従来の擁壁構造の場合、上記のように掘削範囲が拡大されることに加えて、同排水路50の幅Wo分だけ道路幅Wcが狭くなる問題がある。
【0012】
そこで、このような問題を解決するために、例えば擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックを形成し、その内側に排水溝を設けるとともに、その道路部A側等非土留め部側の側壁部に水導入用の開口を形成し、道路部A側の水を水導入口を介して排水溝部分に導入し、下流側に排出することが考えられる(例えば本件出願人の先願である特願2010−209414号の明細書および図面を参照)。
【0013】
このような構成によると、基礎上げ部が根入れ部として機能するので、上部に比べて底部の幅が広い擁壁部自体は、埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。その結果、同擁壁部の擁壁高は、そのままの高さか、または所定寸法低くて済むようになり、コストが低減される。
【0014】
そして、上記基礎ブロックは、内部に排水溝を備えており、側壁部に設けられた水導入口を介して道路部等非土留め面側の水を排水溝に導入して、下流側に排出することができるようになる。したがって、図14のようなU状の排水路が不要となり、道路の幅も有効に拡大される。
【0015】
ところが、このような構成の場合にも、例えば道路面等非土留め部側上面が傾斜面となっていると、上記水導入口と道路面等非土留め部側上面が対応せず、適切な水の導入が不可能となる問題が発生する。
【0016】
もちろん、基礎ブロック側水導入口の位置を当該非土留め部側上面の傾斜状態に合わせて形成することが考えられるが、プレキャスト構造の基礎ブロックでは、そのような対応は不可能である。
【0017】
本願発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックにおいて、その内側に排水溝を設けるとともに、その道路部側等非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて水導入用の開口を形成し、道路面等非土留め部上面側の傾斜によって道路面等非土留め部上面側の高さが変化しても、それに対応して適切に水を導入できるようにした擁壁形成用の基礎ブロックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願各発明は、上記の目的を達成するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0019】
(1) 請求項1記載の発明
この発明は、擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口が形成されていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によると、基礎ブロックが根入れ部として機能するので、擁壁部自体は埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。その結果、同擁壁部の擁壁高は、そのままの高さか、または所定寸法低くて済むようになる。その結果、コストが低減される。
【0021】
そして、上記基礎ブロックは、内部に排水溝を備えており、しかも、その非土留め部側側壁部の下端部側から上端部側に長く延びる形で、例えば連続的又は間欠的に配設された水導入口を介して、道路面等非土留め部側上面の水を導入するようになっており、同上下方向に延びる形で配設された水導入用の開口部が道路面等非土留め部側上面の高さの変化に対応することができるので、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何に拘わらず、その上面側の水を適切に導入して、下流側に排出することができるようになる。
【0022】
したがって、従来一般的に道路脇に設置されているようなU状の排水路が不要となり、道路の幅も有効に拡大される。
【0023】
(2) 請求項2記載の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて、連続して形成されていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によると、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、連続する形で開口している水導入用の開口によって、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何にかかわらず、適切な水の導入が可能となる。
【0025】
(3) 請求項3記載の発明
この発明は、上記請求項1の発明の構成において、水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて、所定の間隔を置いて間欠的に形成されていることを特徴としている。
【0026】
このような構成によると、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側まで所定の間隔を置いて間欠的に配設される形で開口している水導入用の開口によって、道路面等非土留め部上面側の傾斜状態如何にかかわらず、適切な水の導入が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上の結果、本願発明によると、道路面等非土留め部上面の傾斜によって、基礎ブロック側壁部の水導入口に対する道路面等非土留め部上面側の高さが変化しても、それに対応して適切に水を導入できるようにした擁壁形成用の基礎ブロックを低コストに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態1に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図2】同擁壁構造の構成を示す図1の左側方から見た図である。
【図3】同擁壁構造の基礎ブロック部における水導入口の設置形態を示す縦断面図(図1のI−I線断面図)である。
【図4】同擁壁構造における各部の寸法関係を示す図1と同様の横断面図である。
【図5】同擁壁構造における道路部が傾斜した状態に対応した複数のブロックの設置形態を示す図である。
【図6】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態2に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図7】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態3に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図8】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態4に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図9】同擁壁構造の基礎ブロック部における水導入口の設置形態を示す図3と同様の縦断面図である。
【図10】同擁壁構造における道路部が傾斜した状態に対応した複数のブロックの設置形態を示す図である。
【図11】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態5に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図12】本願発明の基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態6に係る土留め用擁壁構造の構成を示す横断面図である。
【図13】従来の土留め用擁壁構造の基本例(排水路なし)の構成を示す横断面図である。
【図14】同従来の土留め用擁壁構造の変形例(排水路あり)の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
先ず図1〜図4は、本願発明の擁壁形成用基礎ブロックを用いた本願発明の実施の形態1に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0031】
この実施の形態の土留め用擁壁構造は、一例として、道路部Aと造成地部Bとの間の段差面部等擁壁設置部Cの下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす基礎ブロック1と、該基礎ブロック1の上部に設置され、土留め機能を果たす断面L型の擁壁ブロック4とからなり、上記基礎ブロック1の幅Wbは上記擁壁ブロック4の底壁部4bの幅Waよりも遥かに小さく形成されている(図4参照)。
【0032】
基礎ブロック1は、一例として、横方向(水平方向)の幅Wbに比べて縦方向(上下方向)の高さHaが少し大きい断面略長方形状(もちろん、他の例として正方形状の場合でもかまわない)の角筒体構造をなし、その天面部は開放されて蓋2が掛けられる構造になっているとともに、内側には、例えば断面略長方形状の排水溝3が形成されている。
【0033】
基礎ブロック1は、上述した擁壁設置部Cにおいて、その横方向の幅Wbに応じた幅よりも少し広い幅Wb′で、かつ所定の深さの溝9(同じく図4参照)を掘り、同溝9の底部に基礎砕石5を埋込み、その上にモルタル(またはコンクリート)6を敷いた上で設置し、この実施形態の場合、例えば道路部Aの道路面よりも少し高くなる状態に埋設される。
【0034】
また、擁壁ブロック4は、造成地部Bの高さに応じた高さHの上下方向に延びる側壁部(側板部)4aと該側壁部4aの下端部から直角に曲成され、上記造成地部Bの下方部に向けて水平方向に延びる底壁部(底板部)4bとからなり、底壁部4bの幅Waは、上記側壁部4aの高さHに応じて安定した擁壁機能を果たすことができる寸法(例えば0.6H〜0.7H)のものとなっている。
【0035】
この擁壁ブロック4は、例えば図1に示すように、上記基礎ブロック1の蓋2が掛けられた状態においてフラットで水平方向に面一に拡がる天面部1d上に、底壁部4bの基端側(コーナー部側)を載置し、側壁部4aの反造成地側外側面(道路側面)と基礎ブロック1の反造成地側外側面(道路側面)とが上下方向に面一な状態となるように組み合わせて上下方向に積層される。
【0036】
この時、上記基礎ブロック1の天面部1dより低い造成地B側の下層部分に、上記基礎ブロック1の設置時と同様に所定の深さの溝を掘り、上記基礎砕石5と敷モルタル(またはコンクリート)6とによって上記天面部1dと同じ高さの支持面を形成した上で(もちろん、この場合、先ずコンクリートを打設し、その上面に敷モルタルすることも可能である)、上記擁壁ブロック4を設置し、その底壁部4bの基礎ブロック1の天面部1dから造成地B側に延出された部分を支持する。
【0037】
そして、その上で、上記擁壁ブロック4の内側に土を盛り、十分に締め固めることにより、安定した土留め機能を発揮させる。
【0038】
この場合、上記基礎ブロック1の道路部A側の側壁部1bには、その下端部側から上端部側にかけて、例えば図2および図3に示すように、一例として、等径で上下方向に長いスリット構造の水導入口7a,7a・・・が長手方向に所定の間隔を保って多数個並設されおり、その上下方向の長さHbによって道路部A側道路面の傾斜状態(勾配i%)如何にかかわらず、道路部A側の雨水等が確実に導入されるように設置され、上記水導入口7a,7a・・・によって案内導入された雨水は排水溝3を通して下流側に排出される。
【0039】
これは、道路部Aの傾斜状態に応じて、複数の基礎ブロック1,1・・・および擁壁ブロック4,4・・・が並設される場合にも全く同様であり、下段側ほど高くなる擁壁高Hに合った側壁高の擁壁ブロック4を採用して設置することにより、図5のように、全体としても適切に道路部A面上の水を導入できる状態で施工することができる。
【0040】
そして、この場合、上述のように基礎ブロック1の設置工事が終わった上記蓋2を掛ける前の排水溝3のオープン状態において、相互に段階状に連続する各排水溝3,3・・・の底部には、例えば上段側の排水溝3の下流端側底部に連続する形で、所定の厚さのコンクリート8が打たれ、相互に開口部が重なり合う形で上段側から下段側に連接される排水溝3の底部面3aが段差のない傾斜面状態で連続して行く様に施工される。
【0041】
以上のような基礎ブロック1および同基礎ブロック1を用いた擁壁構造によると、上記コンクリートブロック構造の基礎ブロック1が根入れ部として機能するので、断面L型で底壁部4bの幅が広いコンクリートブロック構造の擁壁ブロック4の底壁部4bは、土中に埋設する必要がなくなる。つまり、根入れが不要となる。
【0042】
その結果、同擁壁ブロック4の擁壁高Hは、そのままの高さのものか、または同そのままの高さのものよりも所定寸法低い小型のものを利用することができることになる。その結果、コストが低減される。
【0043】
一方、根入れ部として機能する上記基礎ブロック1は、上記コンクリートブロック構造の擁壁ブロック4の側壁部4aの下方に位置して、しかも上記擁壁ブロック4の底壁部4bの幅Waよりも遥かに小さな幅Wbに形成されているから、必然的に同基礎ブロック1設置のための掘削幅は、上述した従来の構成に比べて遥かに小さくて済み、もちろん掘削量も大きく減少する。したがって、設置作業も容易になる。
【0044】
また、上記基礎ブロック1は、内部に排水溝3を備えており、側壁部1bの水導入口7a,7a・・・を介して道路部A面側の雨水を導入し、下流側に排出することができるようになっているので、従来一般的に道路脇に設置されているようなU状の排水路(前述した図14中の符号50を参照)が不要となる。その結果、道路部Aの幅が有効に拡大される。
【0045】
なお、この場合、必要に応じて、上記造成地B側の土中に含まれている水を排水溝3内に導入する通水孔7b,7b・・・も形成され、造成地B中の水も排水溝3内に導入されて下流側に排出される。
【0046】
また、このように排水溝3を形成するようにすると、形成しない場合に比べて基礎ブロック1自体のコンクリート材料を大きく節減することができ、その点でも、さらにコストを低減することができる。
【0047】
しかも、この場合、上記排水溝3は上下方向に長く、図5のように道路部Aの勾配に応じて順次所定の段差を有して設置された場合にも、相互に開口面が重なり合う形で確実に連通して配設されることになる。
【0048】
そして、その道路部A側の側壁部1bには、当該側壁部1bの下端部側から上端部側にかけて、例えば等しい開口径で上下方向に連続する形で長く延びるスリット構造の水導入口7a,7a・・・(高さHb・・・図4参照)が設けられており、同水導入口7a,7a・・・を介して水を導入するようになっており、同上下方向に長く延びる水導入口7a,7a・・・が、その高さHbにより道路部A上面の高さの変化(段差)に十分に対応することができるので、道路部A上面側の傾斜状態如何に拘わらず、その上面側の水を排水溝3内に適切に導入して、下流側に排出することができるようになる。
【0049】
(変形例)
なお、上記側壁部1b部分の排水溝3に連通する水導入口7a,7a・・・は、もちろん上述のように上下方向にストレートに延びるもののみに限られるものではなく、例えば一定の傾斜角を有して斜目方向に延びるもの、また上下方向に連続するものではなく、所定の間隔を置いて上下方向に間欠的に配設された複数の孔部よりなるもの(その場合、長手方向に所定の間隔を置いて上下方向に整列するものだけでなく、側壁部1bの全体に亘って多数点在させるものも含む)、またスリット構造のものと上下方向の複数の孔部構造のものを交互に組み合わせたもの、さらにはスリット構造の場合において下方から上方に等径でなく、径の異なるものとしたものなども、自由に採用することができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に図6は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態2に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0051】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1の天面部1d側を蓋2のない全オープン型のものとし、蓋掛け用の凹部3bも無くしたものとしたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態1のものと全く同様であり、同様の作用を奏する。
【0052】
このような構成では、蓋2および蓋掛け作業が不要となり、その分コストが低減される。
【0053】
(実施の形態3)
次に図7は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態3に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0054】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1において、その道路部A側の側壁部1bの上端側に擁壁ブロック4係止用の係止片1eを設けたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態1のものと同様であり、同様の作用を奏する。
【0055】
このような構成では、基礎ブロック1に対面する上記断面L型の擁壁ブロック4の基端部が確実に係止されるようになり、擁壁ブロック4の設置状態の安定度が向上する。
【0056】
(実施の形態4)
次に図8〜図10は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態4に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0057】
この実施の形態のものは、上記実施の形態1の構成における基礎ブロック1の水導入口7a,7a・・・を、その道路部A側側壁部1bの下端部側から上端部に到る途中までではなく、上端面側(天面1d側)まで連続的に開口したものとし、しかも道路部A側の開口面を広くしたことを特徴とするものであり、その他の構成は基本的に上記実施の形態2のものと同様であり、同様の作用を奏する。
【0058】
すなわち、図8〜図10の構成では、上述の実施形態2のものと同様に蓋2のない全オープン型の基礎ブロック1の側壁部1bが上記断面L型の擁壁ブロック4の側壁部4aと面一な状態で、その下方に位置する形で設置されており、その天面1d側は蓋2を設けることなく、U状に開放されている。
【0059】
そして、上記側壁部1bの水導入口7a,7a・・・は、例えば図8のように、上記側壁部1bの下端部側から上端部側上端面まで連続して延び、その下端側から上端面までの道路部A面側開口部72の全体が道路部Aの道路面側に開放されている。
【0060】
この水導入口7a,7a・・・の道路部A面側の開口部72は、例えば図9に示すように、排水溝3側に貫通する主口部71部分に比べて左右方向に幅が広く形成され、水を導入しやすくなっている。
【0061】
そして、設置時において、道路部Aの道路面から道路部A面側開口部72の下端までの間には、上記主口部71部分への土砂の流入を防ぐための鉄板その他の土砂流入防止板10が介設される。
【0062】
このような構成によると、上下方向に長く開口された水導入口7a,7a・・・の道路部A側開口部72の上下方向長さが上述の実施の形態1〜3の場合よりも長くなり、例えば図10のように、道路部Aの勾配が一層大きな場合にも十分に余裕をもって対応できるようになる。
【0063】
また、水導入口7a,7a・・・の道路部A面側開口部72の開口面積が広いことから、水の導入効率も向上する。
【0064】
(変形例)
なお、この実施の形態4では、上記水導入口7a,7a・・・の道路部A面側の幅の広い開口部72は、例えば図9に示すように、排水溝3側に貫通する主口部71部分の全体に対応して、その下端側から上端面まで形成されているが、これは下端側上方部の途中位置から上方部までを部分的に広くする構成でもよい。
【0065】
(実施の形態5)
次に図11は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態5に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0066】
この実施の形態のものは、上記実施の形態4の構成において、基礎ブロック1の天面部1d上に設置される擁壁ブロック4を、水導入口7a,7a・・・の天面1d側開口部を避けた状態で設置することによって、道路部Aの道路面と基礎ブロック1の天面1dとが同一面となる状態で設置できるようにしたことを特徴とするものである。
【0067】
このようにしても、水導入口7a,7a・・・は、その天面1d側の開口部から水の導入が可能となる。
【0068】
(実施の形態6)
次に図12は、本願発明の基礎ブロックおよび同本願発明の基礎ブロックを用いた実施の形態6に係る土留め用擁壁構造の構成を示している。
【0069】
この実施の形態のものは、上記実施の形態5と同様の構成を、上記実施の形態1と同様の蓋掛け型の基礎ブロックによって実現したことを特徴とするものである。
【0070】
その他の構成は、実施の形態1および5のものと全く同様であり、同様の作用を奏する。
【0071】
(変形例)
実施の形態4〜6のような構成の場合、道路面A側側壁部1bの前面側に水導入口7a,7a・・・が下端側から上面側まで大きく開放されることになるので、上述のように同水導入口7a,7a・・・に対面する道路面A側から土砂等が流入する可能性がある。
【0072】
そこで、同構成を採用する場合には、それぞれ図示のように、必要に応じて、道路面から所定の深さ位置まで鉄板その他の土砂流入防止板10を設けるようにするが、これは例えば道路部A面側にモルタルを押し込んで土砂等が流入しないようにする構成でもよい。
【符号の説明】
【0073】
1は基礎ブロック、1aは底壁部、1bは道路部側の側壁部、1cは造成地側の側壁部、1dは天面部、2は蓋、3は排水溝、3bは蓋掛用の凹部、4は擁壁ブロック、4aは側壁部、4bは底壁部、7aは水導入口である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口が形成されていることを特徴とする擁壁形成用の基礎ブロック。
【請求項2】
水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側まで連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁形成用の基礎ブロック。
【請求項3】
水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて所定の間隔を置いて間欠的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁形成用の基礎ブロック。
【請求項1】
擁壁設置部の下部に位置して所定の深さ埋設され、根入れ部としての機能を果たす土留め擁壁形成用の基礎ブロックであって、内側に排水溝を有するとともに、非土留め部側の側壁部の下端部側から上端部側にかけて、当該排水溝に連通する水導入用の開口が形成されていることを特徴とする擁壁形成用の基礎ブロック。
【請求項2】
水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側まで連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁形成用の基礎ブロック。
【請求項3】
水導入用の開口は、側壁部の下端部側から上端部側にかけて所定の間隔を置いて間欠的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁形成用の基礎ブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−122293(P2012−122293A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275391(P2010−275391)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(502443105)有限会社アスラック (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(502443105)有限会社アスラック (15)
【Fターム(参考)】
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