説明

擁壁構造物、及びその製造方法、並びに穿孔機械

【課題】施工工数を増加させることなく自然石を安定的に積み上げ、石垣などの擁壁構造物が崩落しないように構築する。
【解決手段】基礎コンクリート3から法面に沿って鉄筋2を延在させる。鉄筋2は堤防の長さ方向に沿って縦格子状に多数配置されている。一方、多数の自然石4における所定の位置には、それぞれ1本の貫通孔が穿孔されている。次に、鉄筋2に対して自然石4の貫通孔を順次串刺しして積み上げ自然石連結ブロックを形成する。このようにして、幅方向に配列された鉄筋2へ、自然石4を順次串刺しして広げて行き、擁壁構造物を構築する。このとき、串刺しされて組み上げられた左右両隣の自然石4の各隙間には、その隙間幅より大きい間詰め石5をかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行く。さらに、その背後に存在する材料が自然石4の前部へ抜け出さないように粒度を調整した土砂を埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は擁壁構造物、及びその製造方法、並びに穿孔機械に関するものであり、特に、自然石を連結して構築された石垣などの擁壁構造物、及び自然石を連結して擁壁構造物を構築するための擁壁構造物の製造方法、並びに擁壁構造物を構築するための自然石に貫通孔を穿孔する穿孔機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より、自然石を用いて空積み工法により構築された石垣等の擁壁構造物は、城の外堀などに広く施工されている。このような自然石による擁壁構造物は、コンクリートブロック等を積み上げてゆく間知ブロックに比べて、自然環境と生態系に優しい擁壁構造物として今日でも好んで利用されている。ところが、前述の空積み工法によって自然石を石垣として崩れないように積み上げてゆくには相当の施工熟練を必要とすると共に、施工工数も多くかかるのでコスト高になる要因となる。そこで、このような不具合を解消するために、近年では、法面に自然石を1〜2段積み上げてコンクリートを打設し、一体化しながら組み上げて行く練積み工法によって自然石の崩落を防止する工法が盛んに行われている。
【0003】
すなわち、河川や海岸の護岸、宅地の擁壁、塀又は道路の擁壁などにおいては、景観に配慮した自然石による擁壁構造物の構築方法として、城の外堀のように自然石を組み合わせて構築する空積み工法や、コンクリートを用いて自然石を一体化する練積み工法などが用いられている。また、河川の護岸などにおいては、水の流速に耐え得る大きさの巨石を使用して組み上げる方式や、植石と呼ばれるコンクリート練積み方式などが実施されている。さらに、近年では、自然石を金網に固定化した工法なども行われている。
【0004】
さらに改良した技術として、連結金具を使用して複数の自然石を一体化した自然石連結工法なども開発されている。例えば、複数個の自然石に孔を明けて連結金具で一体化して一単位のブロックとし、この単位ブロックを法面に沿って積み上げて行くことで施工工数の低減化と石垣の安定化とを図る技術が知られている。また、予め、長尺な固定鉄筋の長手方向に多数の突起鉄筋を配列して、該固定鉄筋を法面に沿って所定の間隔で配置し、自然石に予め開口された小孔に前記突起鉄筋を挿入させて自然石を積み上げて行くことで石垣が崩れるのを防止する技術も知られている。このような擁壁構造物は自然石連結ブロックとも呼ばれている。
【0005】
また、複数(例えば4個)の自然石のそれぞれに所望の孔を明けて金具を通すことで自然石の集合体を構成し、この集合体を積み上げて行くことで護岸護床材を構築する技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、施工作業に専門技術が不要になると共に施工作業の工数低減を図ることができる。
【0006】
また、予め縦横に貫通孔を開けた多数の自然石を護岸に配置し、それらの自然石に連結用ワイヤを通して連結することで護岸用ブロックを構築する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、予め工場において自然石に孔明けをしておき、その自然石を現場において所望の形態に積み上げた後に、各自然石を連結ワイヤによって連結することで波などによって崩れないような強固な護岸を構築することができる。
【0007】
また、複数の自然石のそれぞれに小径貫通孔を明け、それらの複数の自然石を横方向に一列に並べて金属棒などの索条手段を通して両端をボルト等で固定することで1列ブロックの護岸材を構成し、この護岸材を順次護岸に積み上げてゆくことにより護岸補強ブロックを構成する技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によれば、個々の自然石を単独で積み上げる場合に比べて、1ブロックの護岸材の重量が増すので、波などによる海水の流勢に対して強く対抗することができるため、波などによって護岸の崩れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−253919号公報
【特許文献2】特開平6−108437号公報
【特許文献3】実開平6−53629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述のような、単独の自然石や自然石連結ブロックを空積み工法で積み上げた場合は、不安定な空積み擁壁が形成されるおそれがある。また、法面にコンクリートを塗布してからその上に自然石を並べる練積み工法は、擁壁構造物が崩落しないように安定化させることはできるが、コンクリートを使っているために、コンクリートブロックによる間知ブロックの場合と同様に、自然環境と生態系の保護に逆らう結果となる。さらに、突起鉄筋が多数配列された固定鉄筋を法面に沿って並列に配列し、自然石に明けた孔に該突起鉄筋を挿入しながら自然石を積み上げて行く工法は、突起鉄筋のピッチ間隔と自然石の大きさ(半径)とが一致しない部分には、所望の大きさの間詰め石を選択して上下の自然石間に嵌め込まなければならないので、施工工数が増加するなどの問題がある。
【0010】
また、前述の特許文献1に開示された技術は、複数の自然石に金具を通した集合体を積み上げて護岸を構築する技術であるが、3,4個の自然石の集合体を空積み方法で積み上げているので、自然石が集合体となっているために積載の安定性は増すものの、依然として崩落する要因は解消されていない。また、特許文献2に開示された技術は、予め孔を明けた自然石を現場に配置してからワイヤを通して連結することで護岸用ブロックを構築するために現場での施工工数が増加するおそれがある。さらに、特許文献3に開示された技術は、複数の自然石を横方向に一列に並べて連結した集合体の護岸材を積み上げて行くため、下段の護岸材と上段の護岸材との積み崩れは依然として解消されない。すなわち、不安定な自然石の空積み擁壁の問題は依然として解消されない。
【0011】
そこで、施工工数を増加させることなく自然石を安定的に積み上げ、石垣などの擁壁構造物が崩落しないように構築するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、自然石を用いて構築される擁壁構造物であって、1本以上の貫通孔が穿孔された複数の自然石と、下面の基礎コンクリートに一端が固着されて所定の長さに延在され、所定の間隔で縦格子状に配列された複数の棒状体とを備え、前記複数の自然石が、それぞれの貫通孔を通して前記複数の棒状体のそれぞれに串刺し状に挿入されて、自然石連結ブロックを壁状に構築したことを特徴とする擁壁構造物を提供する。
【0013】
この構成によれば、下面の基礎コンクリートから延びている1本又は複数本の棒状態に自然石の貫通孔を挿入して、複数の自然石を串刺し状にして一体化し、自然石連結ブロックを形成して壁体を構成している。これによって、自然石による擁壁構造物を安定的に構築することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、上記自然石には2本の貫通孔が穿孔され、且つ、上記棒状態は2本ずつが近接して縦格子状に配列され、前記2本の貫通孔には近接した2本の棒状体が個別に挿入されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁構造物を提供する。
【0015】
この構成によれば、自然石に2本の貫通孔を穿孔すると共に、基礎コンクリートから2本で一対の棒状態を延在させている。そして、2本で一対の棒状態のそれずれに自然石のそれぞれの貫通孔を挿入し、複数の自然石を串刺し状にして自然石連結ブロックを構成している。従って、1本の棒状態が断線したり、自然石の一本の貫通孔が壊れても、串刺し状にした自然石連結ブロックは崩落するおそれはないので、さらに安定した擁壁構造物を構築することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記棒状体が挿入された上記貫通孔には、シーリング剤、凝固剤、腐食防止剤の少なくとも1つが注入されていることを特徴とする請求項1又は2記載の擁壁構造物を提供する。
【0017】
この構成によれば、自然石の貫通孔に挿入する棒状体の隙間部分にシーリング剤、凝固剤、腐食防止剤などを注入しているので、棒状体の腐食を防止したり、自然石の貫通孔と棒状態との隙間部部に水などが浸入することを防止することができる。また、凝固剤によって自然石と棒状体とをより強固に一体化することができるので、さらに安定した擁壁構造物を構築することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、上記棒状体は、被覆加工又は亜鉛アルミニウム合金のメッキが施された鉄筋であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の擁壁構造物を提供する。
【0019】
この構成によれば、安価で入手し易い鉄筋を棒状態として使用しているので、より低コストで擁壁構造物を構築することができる。さらに、棒状態として用いる鉄筋には被覆加工又は亜鉛アルミニウム合金のメッキが施されているので、鉄筋の耐久性を高めることができる。その結果、信頼性が高く長寿命に耐え得る擁壁構造物を構築することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、上記棒状体は、ロープ状のスーパー繊維、プラスチック棒状体、又は木材棒状体の何れかであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の擁壁構造物を提供する。
【0021】
この構成によれば、棒状態としてロープ状のスーパー繊維、プラスチック棒状体、又は木材棒状体を使用しているので、棒状体の柔軟性を利用することで、自然石の貫通孔へ棒状体を挿入し易くなる。その結果、一般の作業者であっても容易に擁壁構造物を構築することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、串刺し状に挿入された上記自然石の左右の隙間部分には、該自然石間の隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックを間詰め石としてかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行くことを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5記載の擁壁構造物を提供する。
【0023】
この構成によれば、自然石連結ブロック間における左右の自然石の隙間部分には、その隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックが間詰め石として嵌め込まれている。これによって、擁壁構造物の前面の壁面から見た美観が向上すると共に、間詰め石の後部に存在する材料が壁面から前部に抜け出すことを防止することができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、自然石を用いて構築される擁壁構造物の製造方法であって、複数の自然石のそれぞれに1本以上の貫通孔を穿孔する第1の工程と、下面の基礎コンクリートに一端が固着されて所定の長さに延在された複数の棒状体を所定の間隔で縦格子状に配列する第2の工程と、前記複数の自然石を、それぞれの貫通孔を介して、前記複数の棒状体のそれぞれに串刺し状に挿入し、自然石連結ブロックを壁状に構築してゆく第3の工程とを含むことを特徴とする擁壁構造物の製造方法を提供する。
【0025】
この方法によれば、基礎コンクリートから延びている1本又は複数本の棒状態に自然石の貫通孔を挿入して、複数の自然石を串刺し状にして一体化し、自然石連結ブロックを形成して壁体を構成している。これによって、自然石による擁壁構造物を安定的に構築することができる。好適な方法としては、自然石に2本の貫通孔を穿孔すると共に、基礎コンクリートから2本で一対の棒状態を延在させている。そして、2本で一対の棒状態のそれずれに自然石のそれぞれの貫通孔を挿入し、複数の自然石を串刺し状にして自然石連結ブロックを構成している。従って、1本の棒状態が断線したり、自然石の一本の貫通孔が壊れても、串刺し状にした自然石連結ブロックは崩落するおそれはないので、さらに安定した擁壁構造物を構築することができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、上記棒状体が挿入された上記貫通孔には、シーリング剤、凝固剤、腐食防止剤の少なくとも1つが注入されていることを特徴とする請求項7記載の擁壁構造物の製造方法を提供する。
【0027】
この方法によれば、自然石の貫通孔に挿入する棒状体の隙間部分にシーリング剤、凝固剤、腐食防止剤などを注入しているので、棒状体の腐食を防止したり、自然石の貫通孔と棒状態との隙間部部に水などが浸入することを防止することができる。また、凝固剤によって自然石と棒状体とをより強固に一体化することができるので、さらに安定した擁壁構造物を構築することができる。
【0028】
請求項9記載の発明は、串刺し状に挿入された上記自然石の左右の隙間部分には、該自然石間の隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックを間詰め石としてかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行くことを特徴とする請求項7又は8記載の擁壁構造物の製造方法を提供する。
【0029】
この方法によれば、自然石連結ブロック間における左右の自然石の隙間部分には、その隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックが間詰め石として嵌め込まれている。これによって、擁壁構造物の前面の壁面から見た美観が向上すると共に、間詰め石の後部に存在する材料が壁面から前部に抜け出すことを防止することができる。
【0030】
請求項10記載の発明は、擁壁構造物を構築するための自然石に貫通孔を穿孔する穿孔機械であって、圧縮空気を送出するエアコンプレッサと、前記エアコンプレッサから送出された圧縮空気の圧力によって上下に駆動する、2組が対で構成されたルートハンマーと、前記ルートハンマーの先端に固着され、該ルートハンマーの上下駆動によって前記自然石の所望の箇所に貫通孔を穿孔する穿孔ビッドと、前記自然石を前記穿孔ビッドの下部の所定位置へ搬送する搬送ローラとを備えることを特徴とする穿孔機械を提供する。
【0031】
この構成によれば、エアコンプレッサから送出された圧縮空気によってルートハンマーを上下駆動させることにより、穿孔ビッドを上下駆動させることができる。従って、搬送ローラによって自然石が穿孔ビッドの下部へ搬送されてくると、該穿孔ビッドによって自然石の所望の箇所に貫通孔を穿孔することができる。このとき、搬送ローラの駆動により、多量の自然石に対して流れ作業で貫通孔を穿孔することができる。穿孔機械の好適な構成例によれば、エアコンプレッサから送出される圧縮空気の送出ルートを制御することにより、2組のルートハンマーを同時に上下駆動させることもできるし、1個のルートハンマーのみを単独で上下駆動させることもできる。これにより、自然石に対して、必要に応じて、1個の穿孔ビッドを駆動させて1本の貫通孔を穿孔することもできるし、2個の穿孔ビッドを同時に駆動させて2本の貫通孔を穿孔することもできる。
【0032】
請求項11記載の発明は、上記自然石を用いて上記擁壁構造物を構築する現場において駆動可能であることを特徴とする請求項10記載の穿孔機械を提供する。
【0033】
この構成によれば、建設機械などが投入できない作業現場においては、穿孔機械のみを作業現場へ持ち込み、その作業現場で掘り起こされた自然石に対して該穿孔機械で穿孔を行う。そして、貫通孔が穿孔された自然石を鉄筋に串刺しして擁壁構造物を構築して行く。これによって、建設機械が投入できないような地形の作業現場においても、手作業によって容易に擁壁構造物を構築することができる。
【発明の効果】
【0034】
請求項1記載の発明は、基礎コンクリートから延びた1本又は複数本の棒状態に自然石の貫通孔を挿入することで、容易に、自然石連結ブロックを形成して壁体を構成することができる。これにより、自然石による擁壁構造物を構築するための作業工数を低減することが可能となる。
【0035】
請求項2記載の発明は、自然石の2本の貫通孔に2本で一対の棒状態を挿入しているので、1本の棒状態が断線したり自然石の一本の貫通孔が壊れても、自然石連結ブロックを安定的に維持できる。従って、請求項1記載の発明の効果に加えて、さらに安定した擁壁構造物を構築することができる。
【0036】
請求項3記載の発明は、自然石の貫通孔に挿入する棒状体の隙間部分にシーリング剤、凝固剤、腐食防止剤などを注入しているので、請求項1、又は2記載の発明の効果に加えて、棒状体の腐食を防止したり、自然石の貫通孔と棒状態との隙間部部に水などが浸入することを防止することができる。さらには、凝固剤によって自然石と棒状体とをより強固に一体化することができる。
【0037】
請求項4記載の発明は、安価で入手し易い鉄筋に被覆加工又は亜鉛アルミニウム合金のメッキを施した棒状態を使用しているので、請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、より低コストで擁壁構造物を構築することができると共に、鉄筋の耐久性をさらに高めることができる。その結果、信頼性が高く長寿命に耐え得る擁壁構造物を構築することが可能となる。
【0038】
請求項5記載の発明は、棒状態としてロープ状のスーパー繊維、プラスチック棒状体、又は木材棒状体を使用しているので、請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、棒状態に柔軟性を持たせることができるので、一般の作業者であっても容易に自然石の貫通孔へ棒状体を串刺しすることができる。そのため、擁壁構造物を構築する作業が容易になる。
【0039】
請求項6記載の発明は、自然石連結ブロック間における左右の自然石の隙間部分に、その隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックが間詰め石として嵌め込まれているので、請求項1、2、3、4又は5記載の発明の効果に加えて、擁壁構造物の前面の壁面から見た美観を向上させると共に、間詰め石の後部に存在する材料が壁面から前部に抜け出すことを防止することができる。
【0040】
請求項7記載の発明は、基礎コンクリートから延びた1本又は複数本の棒状態に自然石の貫通孔を挿入することで、容易に、自然石連結ブロックを形成して壁体を構成している。これにより、自然石による擁壁構造物を構築するための作業工数を低減することが可能となる。好適な実施例としては、自然石の2本の貫通孔に2本で一対の棒状態を挿入しているので、1本の棒状態が断線したり自然石の一本の貫通孔が壊れても、自然石連結ブロックを安定的に維持することができる。
【0041】
請求項8記載の発明は、自然石の貫通孔に挿入する棒状体の隙間部分にシーリング剤、凝固剤、腐食防止剤などを注入しているので、請求項7記載の発明の効果に加えて、棒状体の腐食を防止したり、自然石の貫通孔と棒状態との隙間部部に水などが浸入することを防止することができる。さらには、凝固剤によって自然石と棒状体とをより強固に一体化することができる。
【0042】
請求項9記載の発明は、自然石連結ブロック間における左右の自然石の隙間部分に、その隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックが間詰め石として嵌め込まれているので、請求項7又は8記載の発明の効果に加えて、擁壁構造物の前面の壁面から見た美観を向上させると共に、間詰め石の後部に存在する材料が壁面から前部に抜け出すことを防止することができる。
【0043】
請求項10記載の発明は、エアコンプレッサから送出された圧縮空気によってルートハンマーを上下駆動させて穿孔ビッドを駆動させることにより、自動的に自然石の所望の箇所に貫通孔を穿孔することができる。従って、搬送ローラによって、多量の自然石を穿孔ビッドの下部へ順次搬送すれば、流れ作業で自然石に貫通孔を穿孔することができる。好適な実施例としては、エアコンプレッサからルートハンマーへ送出される圧縮空気の送出ルートを制御することにより、2個の穿孔ビッドを同時に上下駆動させることもできるし、1個の穿孔ビッドのみを単独で上下駆動させることもできる。従って、必要に応じて、自然石に対して1本の貫通孔を穿孔することもできるし、2本の貫通孔を穿孔することも可能となる。
【0044】
請求項11記載の発明は、穿孔機械を建設現場へ自在に持ち込むことができるので、請求項10記載の発明の効果に加えて、建設機械が投入できないような地形の作業現場においても、手作業によって容易に擁壁構造物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1に係る擁壁構造物を側面から見た断面図。
【図2】図1に示す擁壁構造物を正面から見た断面図。
【図3】図1に示す擁壁構造物の基礎部分を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る擁壁構造物を側面から見た断面図。
【図5】図4に示す擁壁構造物を正面から見た断面図。
【図6】本発明の擁壁構造物を構築するための自然石に2連式連続穿孔を行う穿孔機械の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、施工工数を増加させることなく自然石を安定的に積み上げ、石垣などの擁壁構造物を崩落しないように構築するという目的を達成するために、自然石を用いて構築される擁壁構造物であって、1本以上の貫通孔が穿孔された複数の自然石と、下面の基礎コンクリートに一端が固着されて所定の長さに延在され、所定の間隔で縦格子状に配列された複数の棒状体とを備え、複数の自然石が、それぞれの貫通孔を通して複数の棒状体のそれぞれに串刺し状に挿入されて、自然石連結ブロックを壁状に構築するように構成したことによって実現した。
【0047】
すなわち、本発明は、自然石による擁壁、護岸、塀などの擁壁構造物を構築するための技術に関するものであり、従来のコンクリートブロックによる間知ブロックに代わる自然石の間知ブロックとして位置付けられた擁壁構造物、及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、前記擁壁構造物を構成する自然石に所望の貫通孔を穿孔するための穿孔機械にまで及ぶものである。
【0048】
言い換えると、自然石は現場に多く存在するか、又は工事などで発生した自然石を活用できるので、自然石を利用して擁壁構造物を構築することはリサイクル工法とも言える。本発明による擁壁構造物の製造方法は、基本的には所定の大きさの自然石を前記穿孔機械に運び込み、その穿孔機械によって自然石に1個又は複数個の孔を貫通させる。そして、穿孔貫通された自然石を、基礎コンクリートから所定の間隔で法面に沿って延在された鉄筋に串刺しして固定化し、自然石を順番に上へ組み上げ、且つ幅方向へ広げて行くことにより擁壁構造物を構築が実現される。
【0049】
このとき、串刺しされた左右両隣の自然石の各隙間には、その隙間幅より大きい間詰め自然石をかみ合わせて組み上げ壁面を構築して行く。このような工程を順次繰り返して行くことにより、自然石を積み上げて行きながら幅方向へ広げて行くことによって一連の擁壁構造物が構築されて行く。すなわち、古来から行われている自然石の空積み工法を用いて鉄筋に自然石を串刺しして行くことで、自然石を一体化させることにより、強固で安定化した擁壁構造物を構築することが可能となる。
【0050】
本発明による自然石の擁壁構造物は、いわゆる『そろばん玉方式』で自然石に貫通させた孔に鉄筋を通すことにより自然石を縦方向に一体化させ、これを横方向に密に配列して擁壁構造物を構築する串刺し並列方式である。このような串刺し並列方式を用いることにより、生態系にも環境にも優しい自然石による擁壁構造物を実現することができる。
【実施例1】
【0051】
以下、本発明に係る擁壁構造物の好適な実施例の幾つかを図1乃至図6に従って説明する。図1は、本発明の実施例1に係る擁壁構造物を側面から見た側部断面図である。又、図2は、図1に示す擁壁構造物を正面から見た正面図である。図1、図2の例では、擁壁構造物を河川堤防の法面に沿って構築する場合の一例を示している。
【0052】
図1に示すように、川岸の底部において、砕石1を敷いた上にアンカー2aを有する鉄筋2を配置してから基礎コンクリート3を打つ。このとき、鉄筋2は堤防の法面に沿って所定の長さまで延在させる。このような鉄筋2は、図2に示すように、堤防の長さ方向に沿って擁壁構造物を構築する長さと同じだけ縦格子状に並列に配置されている。
【0053】
このような準備工程の後、所定の大きさを有した多数の自然石4を後述する穿孔機械に運び込み、その穿孔機械によって各自然石4の所定の位置に1個の孔を貫通させる。そして、穿孔貫通された自然石4を、基礎コンクリート3から法面に沿って延在された鉄筋2に串刺しして固定化し、図1に示すように、自然石4を順番に上へ組み上げて行く。このようにして幅方向に配列された鉄筋2へ自然石4を順次串刺しして広げて行くにより、図2に示すような自然石4の壁面を構築して行く。
【0054】
このとき、串刺しされて組み上げられた左右両隣の自然石4の各隙間には、その隙間幅より大きい間詰め石5をかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行く。間詰め石5としては、自然石、コンクリートブロック、又はガラなどを用いて、自然石4の隙間の背後に中詰めし、さらに、その背後に存在する材料が自然石4の前部へ抜け出さないように粒度調整を行う。
【0055】
尚、間詰め石5の背後に埋め込む材料としては、裏込め材6の土砂として栗石、砕石を使用して埋めて行く。このようにして、表面の自然石4の粒径から背後の裏込め材6の土砂に至るまで粒径を順次小さくして行く。その後、吸出し防止材(図示せず)を背後に塗布して、裏込め材6の背面土砂が抜け出さないようにする。
【0056】
すなわち、幅方向に配列された全ての鉄筋2に自然石4を串刺しする串刺工程が終了したら、左右の自然石4の隙間に間詰め石5をかみ合わせる間詰工程を行い、さらに、間詰め石5の背後に土砂の裏込め材6を埋め込む裏込工程を行った後に、最後に、裏込め材6の背後に吸出し防止材を塗布する吸出し防止材塗布工程を行う。尚、間詰工程、裏込工程、及び吸出し防止材塗布工程は、従来から行われている工程であり、本発明の必須の構成要件ではない。
【0057】
このような工程を繰り返して行くことにより、図2に示すような、自然石4を積み上げて幅方向へ広げた擁壁構造物を構築することができる。すなわち、古来から行われている自然石の空積み工法を用いて鉄筋に自然石を串刺しして行くことで、自然石を一体化させることにより、強固で安定化した擁壁構造物を構築することが可能となる。
【0058】
図3は、図1に示す擁壁構造物の基礎部分を示す拡大図である。図3に示すように、基礎コンクリート3に接する最下段の自然石4の下部にはパッキン8を介在させて、衝撃による自然石4の破損を防止することが望ましい。また、穿孔された自然石4を鉄筋2に通し、該自然石4を鉄筋2に一体的に固定する場合は、穿孔された孔に凝固剤(固定剤)9を注入する。さらに、必要に応じて穿孔された孔にシーリング剤や腐食防止剤を注入してもよい。
【0059】
また、鉄筋2が腐食しないようにするために、鉄筋2を被覆加工するか、あるいは、鉄筋2に亜鉛アルミニウム合金メッキを施す。このようにすることにより鉄筋2の耐久性を高めることができる。尚、鉄筋2の代わりに、スーパー繊維をロープ状にしたものやプラスチック棒状体や木材棒状体を用いることもできる。尚、スーパー繊維とは、一般的に、2Gpa以上の高強度と50Gpa以上の高弾性率の性能を有する繊維である。
【実施例2】
【0060】
次に、本発明の実施例2における擁壁構造物について説明する。図4は、本発明の実施例2に係る擁壁構造物を側面から見た側部断面図である。又、図5は、図4に示す擁壁構造物を正面から見た正面図である。
【0061】
前述の実施例1では、個々の自然石に1本の貫通孔を穿孔し、該自然石の1本の貫通孔に基礎コンクリートから延在した1本の鉄筋を差し込むことにより、一体化した自然石の擁壁構造物を構築した。ところが、実施例2では、個々の自然石に2本の貫通孔を穿孔し、該自然石の2本の貫通孔に、基礎コンクリートから延在した2本が近接して一対になった鉄筋をそれぞれ差し込むことにより、一体化した自然石の擁壁構造物を構築する。
【0062】
図4に示す擁壁構造物の側部断面図では実施例2の構成は表現されないが、図5の擁壁構造物の正面図に示すように、基礎コンクリート3から、2本が一対になって近接した鉄筋11a、11bが幅方向に縦格子状に配列されている。一方、自然石4には、鉄筋11a、11bとほぼ同じ間隔で2本の貫通孔が2連式で穿孔されている。以下、このような穿孔を2連式連続穿孔という。従って、前述の実施例1と同様の方法で、2連式連続穿孔を有する自然石4を、近接した鉄筋11a、11bに順次差し込んで行けば、一体化した自然石の擁壁構造物を構築することができる。
【0063】
すなわち、実施例2の場合は、自然石4に2本の鉄筋11a、11bが貫通されているので、1本の鉄筋がせん断して破壊したり、自然石4の1本の貫通孔が割れたりしても、自然石は連結状態を保持しているので、擁壁構造物は崩れるおそれはない。言い換えると、1本の鉄筋や1本の貫通孔に不具合が生じても、自然石が変位したり移動したりすることはないので、擁壁構造物の安全性は確保される。すなわち、自然石に複数本の貫通孔を穿孔し、複数本の鉄筋を通すことによって擁壁構造物をより安定化させることができる。
【実施例3】
【0064】
実施例3では、擁壁構造物を構築するための自然石に貫通孔を穿孔する穿孔機械について説明する。尚、この実施例では、自然石に2連式連続穿孔を行う穿孔機械について説明する。
【0065】
図6は、本発明の擁壁構造物を構築するための自然石に2連式連続穿孔を行う穿孔機械の説明図である。図6に示すように、穿孔機械20は、圧縮空気を生成するエアコンプレッサ21、エアコンプレッサ21からの圧縮空気によって上下駆動する2連式のルートハンマー22a,22b、2連式のルートハンマー22a,22bのそれぞれに連動して上下駆動する穿孔ビッド23a,23b、自然石4を外部から穿孔ビッド23a,23bの下部へ搬送する搬送ローラ24、及び2連式のルートハンマー22a,22bを保持すると共に穿孔機械20の枠組みを構成する筐体25とによって構成されている。
【0066】
エアコンプレッサ21は、2連式のルートハンマー22a,22bへ個別に圧縮空気を送出しているので、2連式のルートハンマー22a,22bを独立して上下駆動させることができる。例えば、搬送ローラ24によって穿孔ビッド23a,23bの下部へ搬送されてきた自然石4に2連式連続穿孔を行う場合は、エアコンプレッサ21からルートハンマー22a,22bへ同時に圧縮空気を送出すれば、2連式のルートハンマー22a,22bを同時に駆動させて、穿孔ビッド23a,23bによって自然石4に2個の貫通孔を穿孔することができる。
【0067】
また、自然石4に1本の貫通孔を穿孔する場合は、エアコンプレッサ21に付設された図示しないバルブの一方を閉塞して、エアコンプレッサ21から例えばルートハンマー22aのみへ圧縮空気を送出すれば、ルートハンマー22aのみを駆動させて、穿孔ビッド23aによって自然石4に1個の貫通孔を穿孔することができる。
【0068】
このような穿孔機械20は、例えば、工場に配置しておき、該工場へ搬送されてきた多量の自然石を流れ作業によって穿孔してもよいし、また、擁壁構造物を構築する現場に穿孔機械20を持ち込んで、現場で掘り起こされた自然石を該穿孔機械20によって順次穿孔して行ってもよい。すなわち、穿孔機械20の使用方法は、現場の状況と擁壁構造物の構築状態に応じて適宜に決めればよい。
【実施例4】
【0069】
実施例4では、図1、図2及び図6を参照しながら、自然石に貫通孔を穿孔してから擁壁構造物を構築するまでの具体的な実施例について説明する。本発明は、自然石による聞知ブロックの利用であるという前提に立ち、多量の自然石に貫通孔を穿孔して間知ブロックを製作し、これを現場に運んで手積みによる空積み工法によって擁壁構造物を構築する。すなわち、従来のコンクリート工場で行われている連続機械式のコンクリートブロック貫通システムを導入し、図6に示すような穿孔機械20を用いて、直径が20〜25cm程度の多量の自然石に貫通孔を穿孔して自然石間知ブロックを製作し、これを現場に搬送して擁壁構造物を構築する。
【0070】
以下、多量の自然石を工場で穿孔してから擁壁構造物を構築するまでの工程を順に説明する。
工程1:工場に設置された図6に示すような穿孔機械により、直径が20〜25cm程度で重量が10kg〜20kg程度の多量の自然石に1〜2個の貫通穴を穿孔する。
工程2:工場で穿孔された多量の自然石を擁壁構造物の工事現場へ搬入する。
工程3:擁壁構造物を施工する所定の位置に通常の基礎コンクリートを打設する。その際、防食加工した鉄筋を法面の幅方向へ縦格子状に立ち上げる。
【0071】
工程4:鉄筋の高さ1m当たりに付き16個の穿孔加工した自然石聞知ブロックを該鉄筋に串刺し、その背後に抜け出さない大きさの間詰め石を詰め込む。また、自然石の上下間は上からの自然石の挿入落下による衝撃を緩和するために、下部にある自然石の上にパッキン等のクッション材を敷く。
工程5:間詰め石を詰め込んだ背後に裏込め材を投入するか、又は間詰め石の隙間にクラッシャー等の目潰し材を入れて締め固め、背面土砂の流失を防止する。
工程6:河川護岸などの残留水圧が高い場所においては、背面土砂の流失を防止するために、吸出し防止材を塗布する。尚、土砂の粒度調整によって背面土砂の流失を防止することもできる。
【0072】
工程7: 上部の表面流水が擁壁の隙間から内部に引き込まないように天端コンクリートを打設する。尚、天端コンクリートの打設以外に、必要に応じて、天端保護工や斜面部排水工などを適宜実施する。
工程8:鉄筋の耐久性を向上させるために、必要に応じて鉄筋と貫通孔との隙間に凝固材(固定剤)を注入して自然石と鉄筋とを一体化する。さらに、鉄筋の腐食防止のために鉄筋は亜鉛アルミニウム合金のメッキ加工を施す。また、擁壁の安全性を高めるために、必要に応じて鉄筋を2本対で近接して配置し、2本の貫通孔が穿孔された自然石に2本対の鉄筋を貫通させる。
【0073】
《まとめ》
以上説明したように、本発明によれば、多数の自然石に1本または複数本の貫通孔を穿孔し、基礎コンクリートから延在した鉄筋に順次自然石を刺し込むことにより、一体化した自然石の擁壁構造物を構築している。このとき、自然石に複数本の貫通孔を穿孔して複数本の鉄筋をすることにより、1本の鉄筋又は貫通孔に不具合が生じても擁壁が崩れないように安全性を一層高めることもできる。尚、鉄筋の代わりに、ロープ状のスーパー繊維やプラスチック棒状体や木材棒状体を用いることも可能である。
【0074】
また、本発明の自然石を用いた擁壁構造物によれば、擁壁の安定性や通水性に優れると共に、河川護岸などにおいては生態系に優しい環境を創造することができる。さらに、本発明の自然石を用いた擁壁構造物は手作業による施工も可能であるので、建設機械等が導入できないような現場や、コンクリートブロックでは構築できない急カーブ道路の法面のような地形であっても、安定性の高い擁壁構造物を構築することができる。
【0075】
また、本発明の擁壁構造物によれば、自然石の貫通孔に鉄筋を通すだけで擁壁構造物を構築することができるため、特殊技能を有する石工技術者を必要としないので、一般の作業者によって簡単に擁壁構造物を構築することができる。さらに、自然石は通常の工事現場において簡単に入手できるので、自然石のリユースは二酸化炭素の排出量が少ないため、自然環境の保護に大いに貢献することができる。また、重機や建設機械を投入できない場所の擁壁や護岸の構築を行うことも可能である。
【0076】
また、従来の擁壁構造物は壁背面の残留水圧を抜くために排水管を設ける必要があったが、本発明の擁壁構造物によれば排水管を設ける必要がない。さらに、擁壁の効果としては、自然石による擁壁構造物の隙間部分が動植物の生態系にとって快適な空間となる。また、擁壁構造物の隙間部分における植物の繁茂が二酸化炭素の吸収効果を呈し、且つ植物の繁茂による緑化の復元が景観的によい環境となるな。
【0077】
また、護岸の効果としては、本発明による擁壁構造物の河川護岸が自然石の護岸となるため、魚類や水際植物にとっては良好な環境となる。また、従来のコンクリート護岸やブロック護岸と比べて、本発明による擁壁構造物は凹凸のある護岸となるので、適当な粗度係数を有した多孔質護岸を構築することができるため、自然的な水質浄化作用を期待することができる。さらに、自然的な景観性を良好に維持することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の擁壁構造物について詳細に説明したが、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の擁壁構造物は、自然石を活用して容易に構築することができるので、河川分野においては河川護岸、河川構造物、堤脚保護工などに利用することができ、海岸分野においては、港湾、海岸、漁港の護岸や消波工、消波構造物などに利用することができる。さらに、市街地においては道路、公園、宅地造成地などに設置されるる擁壁などに有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 砕石
2、11a、11b 鉄筋
2a アンカー
3 基礎コンクリート
4 自然石
5 間詰め石
6 裏込め材
7 天端コンクリート
8 パッキン
9 凝固剤(固定剤)
20 穿孔機械
21 エアコンプレッサ
22a、22b ルートハンマー
23a、23b 穿孔ビッド
24 搬送ローラ
25 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然石を用いて構築される擁壁構造物であって、
1本以上の貫通孔が穿孔された複数の自然石と、
下面の基礎コンクリートに一端が固着されて所定の長さに延在され、所定の間隔で縦格子状に配列された複数の棒状体とを備え、
前記複数の自然石が、それぞれの貫通孔を通して前記複数の棒状体のそれぞれに串刺し状に挿入されて、自然石連結ブロックを壁状に構築したことを特徴とする擁壁構造物。
【請求項2】
上記自然石には2本の貫通孔が穿孔され、且つ、上記棒状態は2本ずつが近接して縦格子状に配列され、前記2本の貫通孔には近接した2本の棒状体が個別に挿入されていることを特徴とする請求項1記載の擁壁構造物。
【請求項3】
上記棒状体が挿入された上記貫通孔には、シーリング剤、凝固剤、腐食防止剤の少なくとも1つが注入されていることを特徴とする請求項1又は2記載の擁壁構造物。
【請求項4】
上記棒状体は、被覆加工又は亜鉛アルミニウム合金のメッキが施された鉄筋であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の擁壁構造物。
【請求項5】
上記棒状体は、ロープ状のスーパー繊維、プラスチック棒状体、又は木材棒状体の何れかであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の擁壁構造物。
【請求項6】
串刺し状に挿入された上記自然石の左右の隙間部分には、該自然石間の隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックを間詰め石としてかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行くことを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5記載の擁壁構造物。
【請求項7】
自然石を用いて構築される擁壁構造物の製造方法であって、
複数の自然石のそれぞれに1本以上の貫通孔を穿孔する第1の工程と、
下面の基礎コンクリートに一端が固着されて所定の長さに延在された複数の棒状体を所定の間隔で縦格子状に配列する第2の工程と、
前記複数の自然石を、それぞれの貫通孔を介して、前記複数の棒状体のそれぞれに串刺し状に挿入し、自然石連結ブロックを壁状に構築してゆく第3の工程と
を含むことを特徴とする擁壁構造物の製造方法。
【請求項8】
上記棒状体が挿入された上記貫通孔には、シーリング剤、凝固剤、腐食防止剤の少なくとも1つが注入されていることを特徴とする請求項7記載の擁壁構造物の製造方法。
【請求項9】
串刺し状に挿入された上記自然石の左右の隙間部分には、該自然石間の隙間幅より大きい自然石又はコンクリートブロックを間詰め石としてかみ合わせて組み上げ、壁面を構築して行くことを特徴とする請求項7又は8記載の擁壁構造物の製造方法。
【請求項10】
擁壁構造物を構築するための自然石に貫通孔を穿孔する穿孔機械であって、
圧縮空気を送出するエアコンプレッサと、
前記エアコンプレッサから送出された圧縮空気の圧力によって上下に駆動する、2組が対で構成されたルートハンマーと、
前記ルートハンマーの先端に固着され、該ルートハンマーの上下駆動によって前記自然石の所望の箇所に貫通孔を穿孔する穿孔ビッドと、
前記自然石を前記穿孔ビッドの下部の所定位置へ搬送する搬送ローラと
を備えることを特徴とする穿孔機械。
【請求項11】
上記自然石を用いて上記擁壁構造物を構築する現場において駆動可能であることを特徴とする請求項10記載の穿孔機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−153441(P2011−153441A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14788(P2010−14788)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】