説明

操作された抗−IL−23p19抗体

【課題】操作された抗−IL−23p19抗体を提供すること。
【解決手段】ヒトIL−23p19に結合する、ヒト化抗体またはキメラ組換え抗体を含めた抗体またはその断片などの結合性化合物であって、特定のアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを有する抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む結合性化合物。一実施形態において、結合性化合物は、特定のアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL1、CDRL2、および、CDRL3を含む軽鎖可変ドメインを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、インターロイキン−23p19(IL−23p19)特異抗体およびその使用に関する。より具体的には、本発明は、ヒトIL−23p19を認識し、特に炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害でその活性を調整するヒト化抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系は、感染性因子、たとえば細菌、多細胞生物、およびウイルスからならびに癌から個体を防御するために機能する。この系は、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、および好中球などのいくつかのタイプのリンパ系細胞および骨髄系細胞を含む。これらのリンパ系細胞および骨髄系細胞は、サイトカインとして知られているシグナル伝達タンパク質を産生することが多い。免疫応答は、炎症、つまり、全身的なまたは体の特定の位置での免疫細胞の蓄積を含む。感染性因子または外来性物質に応答して、免疫細胞は、免疫細胞の増殖、発生、分化、または遊走を引き続いて調整するサイトカインを分泌する。免疫応答は、たとえば、免疫応答が、自己免疫障害でのように過剰な炎症を伴う場合、病的結果をもたらし得る(たとえばAbbasら(編)(2000年)Cellular and Molecular Immunology、W.B. Saunders Co.、Philadelphia、PA;OppenheimおよびFeldmann(編)(2001年)Cytokine Reference、Academic Press、San Diego、CA;von AndrianおよびMackay(2000年)New Engl. J. Med. 343:1020〜1034頁;DavidsonおよびDiamond(2001年)New Engl. J. Med. 345:340〜350頁を参照されたい)。
【0003】
インターロイキン−12(IL−12)は、p35サブユニットおよびp40サブユニットから構成されるヘテロ二量体分子である。研究により、IFNγを分泌するT−ヘルパー1型CD4+リンパ球へのナイーブT細胞の分化にIL−12が重大な役割を果たすことが示されている。IL−12は、インビボでのT細胞依存性の免疫応答および炎症応答に必須であることもまた示されている。たとえばCuaら(2003年)Nature
421:744〜748頁を参照されたい。IL−12受容体は、IL−12β1サブユニットおよびIL−12β2サブユニットから構成される。
【0004】
インターロイキン−23(IL−23)は、2つのサブユニット、IL−23に特有のp19およびIL−12と共有されるp40から構成されるヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL−6、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびIL−12のp35サブユニットに構造的に関係する。IL−23は、IL−23RおよびIL−12受容体によって共有されるIL−12β1から構成されるヘテロ二量体受容体に結合することによってシグナル伝達を媒介する。p40の遺伝子欠損の結果(p40ノックアウトマウス;p40KOマウス)は、p35KOマウスで認められるものよりも重症であることが多くの初期の研究で実証された。これらの結果のいくつかは、IL−23の発見およびp40KOがIL−12だけではなくIL−23の発現をも妨げるといった知見によって最終的に説明された(たとえばOppmannら(2000年)Immunity 13:715〜725頁;Wiekowskiら(2001年)J. Immunol. 166:7563〜7570頁;Parhamら(2002年)J. Immunol. 168:5699〜708頁;Frucht(2002年)Sci STKE 2002、E1−E3; Elkinsら(2002年)Infection Immunity 70:1936〜1948頁を参照されたい)。
【0005】
p40KOマウスの使用を通しての最近の研究は、IL−23およびIL−12の両方の遮断が多様な炎症性障害および自己免疫障害の有効な処置となることを示した。しかしながら、p40を通してのIL−12の遮断は、日和見微生物感染に対する感受性の増加などの多様な全身性の結果を有するようにみえる。Bowmanら(2006年)Curr. Opin. Infect. Dis. 19:245頁。
【0006】
治療用抗体は、サイトカイン活性を遮断するために使用されてもよい。インビボで治療薬として抗体を使用する際の最も重要な制約は抗体の免疫原性である。ほとんどのモノクローナル抗体はげっ歯類に由来するので、ヒトで繰り返し使用すると、治療用抗体に対する免疫応答が発生する。そのような免疫応答は、少なくとも治療効果の損失をもたらし、最大で、致命的になる可能性のあるアナフィラキシー応答をもたらす。げっ歯類抗体の免疫原性を低下させるための最初の試みは、マウス可変領域をヒト定常領域と融合させるキメラ抗体の産生を伴った。Liuら(1987年)Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 84:3439〜43頁。しかしながら、ヒト可変領域およびマウス定常領域のハイブリッドを注射されたマウスは、ヒト可変領域に対して向けられる強い抗抗体応答を起こし、そのようなキメラ抗体中でのげっ歯類Fv領域全体の保持が患者で、望まれない免疫原性をなおもたらし得ることを示唆する。
【0007】
可変ドメインの相補性決定領域(CDR)ループは、抗体分子の結合部位を含むと一般に考えられている。そのため、げっ歯類CDRループのヒトフレームワークへの移植(つまりヒト化)が、げっ歯類配列をさらに最小限とするために試みられた。Jonesら(1986年)Nature 321:522頁;Verhoeyenら(1988年)Science 239:1534頁。しかしながら、CDRループの交換は、なお、元の抗体と同じ結合特性を有する抗体を均一にもたらさない。ヒト化抗体中の、CDRループ支持に関与する残基であるフレームワーク残基(FR)の変更もまた、抗原結合親和性を維持するために必要とされる。Kabatら(1991年)J. Immunol. 147:1709頁。多くのヒト化抗体構築物でのCDR移植の使用およびフレームワーク残基維持が報告されてきたが、特定の配列が、所望の結合特性および時に生物学的特性を有する抗体をもたらすかどうかを予測するのは困難である。たとえばQueenら(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029頁、Gormanら(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4181頁、およびHodgson(1991年)Biotechnology (NY) 9:421〜5頁を参照されたい。その上、ほとんどの先の研究は、異なるヒト配列を、動物の軽鎖可変配列および重鎖可変配列に使用し、そのような研究の予測的な性質を疑わしいものにした。知られている抗体の配列が使用されてきたまたはより典型的には、知られているX線構造を有する抗体、抗体NEWおよび抗体KOLの配列が使用されてきた。たとえばJonesら、前掲;Verhoeyenら、前掲;およびGormanら、前掲を参照されたい。正確な配列情報は、少数のヒト化構築物について報告されてきた。IL−23p19に対する、例示的な操作された抗体は、同一の譲受人に譲渡された米国仮特許出願第60/891,409号および第60/891,413号(両方とも2007年2月23日に出願された)に、特許文献1および特許文献2に、ならびに特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示される。
【0008】
たとえば炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害の処置での使用のための抗−huIL−23p19抗体の必要性が存在する。好ましくは、そのような抗体は、たとえばフレームワーク領域中に、ヒト被験体での免疫原性を低下させるためにヒト生殖細胞系列配列を導入するように操作される。好ましくは、そのような抗体は、huIL−23p19に対する高い親和性を有し、huIL−23p19に対する高い特異性で結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0009526号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0048315号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/076524号
【特許文献4】国際公開第2007/024846号
【特許文献5】国際公開第2007/147019号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、ヒトIL−23p19に結合する、ヒト化抗体またはキメラ組換え抗体を含めた抗体またはその断片などの結合性化合物であって、配列番号32〜46からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを有する抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む結合性化合物を提供する。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号32〜36からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL1、配列番号37〜41からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL2、および配列番号42〜46からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖可変ドメインを含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号32〜46からなる群から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目2)
配列番号15〜31からなる群から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目3)
項目1に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
項目2に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目4)
配列番号32〜46からなる群から選択される2つ以上のCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目1に記載の結合性化合物。
(項目5)
配列番号15〜31からなる群から選択される2つ以上のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目2に記載の結合性化合物。
(項目6)
項目4に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および項目5に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、項目3に記載の結合性化合物。
(項目7)
配列番号32〜46からなる群から選択される3つのCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目4に記載の結合性化合物。
(項目8)
配列番号15〜31からなる群から選択される3つのCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目5に記載の結合性化合物。
(項目9)
項目7に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
項目8に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、項目6に記載の結合性化合物。
(項目10)
配列番号32〜36からなる群からの少なくとも1つのCDRL1、
配列番号37〜41からなる群からの少なくとも1つのCDRL2、および
配列番号42〜46からなる群からの少なくとも1つのCDRL3
を含む軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目11)
配列番号15〜19からなる群からの少なくとも1つのCDRH1、
配列番号20〜26からなる群からの少なくとも1つのCDRH2、および
配列番号27〜31からなる群からの少なくとも1つのCDRH3
を含む重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目12)
項目10に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
項目11に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目13)
CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物であって、
CDRL1は、配列番号36の配列またはその改変体を含み、
CDRL2は、配列番号41の配列またはその改変体を含み、
CDRL3は、配列番号46の配列またはその改変体を含み、
各改変体は、5つまでの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目14)
前記軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片は、配列番号14の残基1〜108を含む、項目13に記載の結合性化合物。
(項目15)
CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物であって、
CDRH1は、配列番号19の配列またはその改変体を含み、
CDRH2は、配列番号24〜26からなる群から選択される配列またはその改変体を含み、
CDRH3は、配列番号31の配列またはその改変体を含み、
各改変体は、5つまでの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目16)
前記重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片は、配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列を含む、項目15に記載の結合性化合物。
(項目17)
項目13に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
項目15に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目18)
項目14に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
項目16に記載の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23p19に結合する結合性化合物。
(項目19)
軽鎖および重鎖を含み、
前記軽鎖は、配列番号14の配列を含み、
前記重鎖は、配列番号6〜8からなる群から選択される配列を含む、
項目18に記載の結合性化合物。
(項目20)
配列番号14の残基1〜108の配列またはその改変体を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列またはその改変体を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物であって、
各改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目21)
配列番号14の残基1〜108の配列から本質的になる抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列から本質的になる抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目22)
配列番号14の残基1〜108に対して少なくとも90%の相同性を有する軽鎖可変ドメインおよび
配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の相同性を有する重鎖可変ドメイン
を含む、ヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目23)
配列番号47の残基20〜30または残基82〜110を含むエピトープでヒトIL−23に結合する結合性化合物。
(項目24)
前記結合性化合物は、配列番号47の残基20〜30および残基82〜110を含むエピトープに結合する、項目23に記載の結合性化合物。
(項目25)
前記結合性化合物は、配列番号47の残基K20、T23、W26、S27、P30、E82、S95、L96、L97、P98、D99、P101、G103、Q104、H106、A107、およびL110を含むエピトープに結合する、項目24に記載の結合性化合物。
(項目26)
交差遮断アッセイで、項目19に記載の結合性化合物とヒトIL−23の結合を遮断することができる抗体。
(項目27)
項目17に記載の結合性化合物の軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインの少なくとも1つをコードする単離核酸。
(項目28)
制御配列に作動可能に連結された項目27に記載の核酸を含む発現ベクターであって、宿主細胞に該ベクターをトランスフェクトした際、該制御配列が、該宿主細胞によって認識される発現ベクター。
(項目29)
項目28に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目30)
ポリペプチドを産生するための方法であって、
前記核酸配列が発現される条件下で培地中で項目29に記載の宿主細胞を培養し、それによって、前記軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを含むポリペプチドを産生する工程ならびに該宿主細胞または培地から該ポリペプチドを回収する工程
を含む方法。
(項目31)
γ1ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域をさらに含み、該定常領域改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、項目17に記載の結合性化合物。
(項目32)
γ4ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域をさらに含み、該定常領域改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、項目17に記載の結合性化合物。
(項目33)
Fab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)2、およびダイアボディからなる群から選択される抗体断片である、項目17に記載の結合性化合物。
(項目34)
ヒト被験体で免疫応答を抑制する方法であって、IL−23の生物学的活性を遮断するのに有効な量で、IL−23に特異的な抗体またはその抗原結合性断片をその必要のある被験体に投与する工程を含み、該抗体は項目17に記載の抗体である方法。
(項目35)
前記免疫応答は炎症性応答である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記被験体は、関節炎、乾癬、および炎症性腸疾患からなる群から選択される障害を有する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記免疫応答は自己免疫応答である、項目34に記載の方法。
(項目38)
前記被験体は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、および糖尿病からなる群から選択される障害を有する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記被験体は癌を有し、前記免疫応答はTh17応答である、項目34に記載の方法。(項目40)
免疫抑制剤または抗炎症剤を投与する工程をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目41)
薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせた項目17に記載の結合性化合物を含む医薬組成物。
(項目42)
免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む、項目41に記載の医薬組成物。
【0011】
一実施形態では、結合性化合物は、配列番号15〜31からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを有する抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号15〜19からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH1、配列番号20〜26からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH2、および配列番号27〜31からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0012】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、前の2つの段落に記載の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、結合性化合物は、フレームワーク領域を含み、ここでフレームワーク領域のアミノ酸配列は、すべてまたは実質的にすべてのヒト免疫グロブリンアミノ酸配列である。
【0014】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメインは、1つまたは複数のCDRの改変体を含む。種々の実施形態では、改変体ドメインは、各配列番号の配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の保存的に改変されたアミノ酸残基を含む。保存的アミノ酸置換は、表1に提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号14の残基1〜108またはその改変体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号6、配列番号7、または配列番号8などの配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列を含む。種々の実施形態では、改変体可変ドメインは、各配列番号の配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、もしくは50またはそれ以上の保存的に改変されたアミノ酸残基を含む。まだその上さらなる実施形態では、結合性化合物は、本段落に記載の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。
【0016】
一実施形態では、結合性化合物は、配列番号14の軽鎖配列および/または配列番号6〜8からなる群から選択される重鎖配列を含む。
【0017】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号14の残基1〜108から本質的になる軽鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片および/または配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8などの配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列から本質的になる重鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片を含む。
【0018】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号14の残基1〜108と少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列相同性を有する軽鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片および/または配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8などの配列番号6〜8の残基1〜116からなる群から選択される配列と少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列相同性を有する重鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片を含む。
【0019】
一実施形態では、本発明の結合性化合物は、残基20〜30もしくは残基82〜110またはその両方を含むエピトープでヒトIL−23p19(配列番号47)に結合する。他の実施形態では、IL−23p19結合性化合物は、残基K20、T23、W26、S27、P30、E82、S95、L96、L97、P98、D99、P101、G103、Q104、H106、A107、およびL110のいくつかまたはすべてならびに任意選択で残基L24、L85、T91、S100、およびV102を含むエピトープに結合する。種々の実施形態では、興味のある抗体に対するエピトープは、抗体:抗原複合体のX線結晶構造を得ることによっておよびIL−23p19上のどの残基が、興味のある抗体上の残基の特定された距離内にあるのかを決定することによって決定され、ここで特定された距離はたとえば4Åまたは5Åである。いくつかの実施形態では、エピトープは、残基の少なくとも30%、40%、45%、50%、または54%は抗体の特定された距離内にある、IL−23p19配列に沿った11個以上の長さの隣接アミノ酸残基であると定義される。
【0020】
一実施形態では、本発明は、交差遮断アッセイ(cross−blocking assay)で、本発明の結合性化合物とヒトIL−23の結合を遮断することができる抗体に関する。他の実施形態では、本発明は、IL−23媒介性の活性を遮断することができる結合性化合物に関し、そのような活性は、その受容体に結合することおよびTH17細胞の増殖または生存を促進することを含むが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の結合性化合物は、重鎖定常領域をさらに含み、ここで重鎖定常領域は、γ1、γ2、γ3、もしくはγ4のヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む。種々の実施形態では、軽鎖定常領域は、ラムダ(lambda)ヒト軽鎖定常領域またはカッパ(kappa)ヒト軽鎖定常領域を含む。
【0022】
種々の実施形態では、本発明の結合性化合物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくは完全ヒト抗体またはその断片である。本発明はまた、抗原結合性断片が、たとえばFab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)2、およびダイアボディからなる群から選択される抗体断片であることを企図する。
【0023】
本発明は、ヒト被験体で免疫応答を抑制する方法であって、IL−23の生物学的活性を遮断するのに有効な量で、IL−23に特異的な抗体(またはその抗原結合性断片)をその必要のある被験体に投与する工程を含む方法を包含する。いくつかの実施形態では、IL−23に特異的な抗体は、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。更なる実施形態では、免疫応答は、関節炎、乾癬、および炎症性腸疾患を含む炎症応答である。他の実施形態では、免疫応答は、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含む自己免疫応答である。他の実施形態では、被験体は癌を有し、免疫応答はTh17応答である。
【0024】
本発明はまた、さらなる免疫抑制剤または抗炎症剤を投与することをも企図する。本発明の結合性化合物は、薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて、結合性化合物またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物の形とすることができる。更なる実施形態では、医薬組成物は、免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む。
【0025】
本発明は、本発明の結合性化合物の抗体の実施形態のポリペプチド配列をコードする単離核酸を包含する。核酸は、発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結された発現ベクターの形とすることができる。ベクターを含む宿主細胞、ならびに核酸配列が発現される条件下で宿主細胞を培養し、それによってポリペプチドを産生する工程および宿主細胞または培地からポリペプチドを回収する工程を含む、ポリペプチドを産生するための方法もまた包含される。
【0026】
種々の実施形態では、本発明は、炎症疾患、自己免疫疾患、癌、感染症(たとえば、慢性感染症を含む細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、または真菌感染症)、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含むが、これらに限定されない障害を処置するための薬剤の製造における本発明の結合性化合物の使用に関する。
【0027】
他の実施形態では、本発明は、炎症疾患、自己免疫疾患、癌、感染症(たとえば、慢性感染症を含む細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、または真菌感染症)、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含むが、これらに限定されない障害を処置するための、本発明の結合性化合物を含む医薬組成物に関する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明の結合性化合物または医薬組成物は、たとえば再発寛解型疾患の処置において、被験体での投薬間隔を結合性化合物の半減期よりもはるかに長くまで延長することができるので、被験体において、疾患症状からの長期の寛解をもたらす。種々の実施形態では、一方の投与と他方の投与の間隔は、6、8、10、12、16、20、24、30週間、またはそれ以上である。他の実施形態では、単回投与は、再発を永続的に防止するのに十分である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの重鎖可変ドメイン配列の比較を示す図である。クローンm1A11、m11C1、m5F5、m21D1、m13B8、h13B8a、h13B8bおよびh13B8cに関する配列を提供する。CDR(複数)を示す。両図中で、接頭辞「m」はマウス抗体を意味し、かつ「h」はヒト化抗体を意味する。接尾辞「a」、「b」および「c」は、以下でさらに詳細に論じるように、ヒト化13B8重鎖可変ドメインの配列改変体を指す。
【図2】マウス抗ヒトIL−23p19抗体クローンの軽鎖可変ドメイン配列の比較を示す図である。クローンm1A11、m11C1、m5F5、m21D1、m13B8、h13B8に関する配列を提供する。CDR(複数)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本明細書に使用されるように、添付される特許請求の範囲を含めて、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」などの単語の単数形は、文脈が明瞭に別段の記載をしない限り、それらの対応する複数形の言及を含む。下記の表7は、本出願で使用される配列識別名の一覧を提供する。本明細書で引用されるすべての参考文献は、あたかも各個々の刊行物、特許出願、または特許が、参照によって組み込まれるように具体的におよび個別に示されるのと同程度に、参照によって組み込まれる。本明細書での参考文献の引用は、前述のもののいずれも、関連する先行技術であるといったことを許容するものとして意図されず、引用は、これらの刊行物または文書の内容または日付に関するどのような許容をも成さない。
I.定義
「増殖活性」は、たとえば、正常な細胞分裂ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞の形質転換、転移、および新脈管形成を促進するまたはそれに必要であるまたはそれに特異的に関連する活性を包含する。
【0031】
「投与」および「処置」は、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官、または生物学的液体に適用されるように、外因性の医薬品、治療剤、診断用薬、または組成物の、動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官、または生物学的液体に対する接触を指す。「投与」および「処置」は、たとえば、治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法、および実験方法を指すことができる。細胞の処置は、細胞に対する試薬の接触および細胞と接触している液体に対する試薬の接触を包含する。「投与」および「処置」はまた、たとえば、試薬、診断薬、結合性組成物による、または他の細胞による細胞のインビトロおよびエキソビボ(ex vivo)での処置をも意味する。「処置」は、ヒト被験体、獣医学的被験体、または研究被験体に適用されるように、治療処置、予防的または防止的手段、研究への応用、および診断への応用を指す。「処置」は、ヒト被験体、獣医学的被験体、もしくは研究被験体または細胞、組織、もしくは器官に適用されるように、動物被験体、細胞、組織、生理的コンパートメント、または生理的液体との作用物質(agent)の接触を包含する。「細胞の処置」はまた、作用物質が、たとえば液体相またはコロイド相中でIL−23受容体(IL−23R/IL−12Rベータ1ヘテロ二量体)と接触する状況だけではなく、アゴニストまたはアンタゴニストが細胞または受容体と接触しない状況をも包含する。
【0032】
本明細書に使用されるように、用語「抗体」は、所望の生物学的活性を呈する抗体の任意の形態を指す。したがって、それは、最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体などを包含する。
【0033】
本明細書に使用されるように、用語「IL−23p19結合性断片」、「その結合性断片」、または「その抗原結合性断片」は、IL−23p19活性を阻害するその生物学的活性をなお実質的に保持する、抗体の断片または誘導体を包含する。したがって、用語「抗体断片」またはIL−23p19結合性断片は、完全長抗体の一部分、一般にその抗原結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、1本鎖抗体分子、たとえばscFv、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。典型的には、結合性断片または誘導体は、そのIL−23p19阻害活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、結合性断片または誘導体は、そのIL−23p19阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%(またはそれ以上)を保持するが、所望の生物学的効果を発揮するのに十分な親和性を有するあらゆる結合性断片が有用である。IL−23p19結合性断片は、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有する改変体を含むことができることもまた意図される。
【0034】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書に使用されるように、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す、つまり、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある自然発生の変異がなければ同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原エピトープに対して向けられる。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、異なるエピトープに対して向けられる(またはそれに特異的な)多数の抗体を典型的には含む。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。たとえば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975年)Nature 256:495頁によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいまたは組換えDNA法によって作製されてもよい(たとえば米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClacksonら(1991年)Nature 352:624〜628頁およびMarksら(1991年)J. Mol. Biol. 222:581〜597頁に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0035】
本明細書のモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分は、特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性であるが、鎖(複数可)の残りの部分は、他の種に由来するまたは他の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)ならびに所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を具体的には含む。米国特許第4,816,567号;Morrisonら(1984年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851〜6855頁。
【0036】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。いくつかの例では、2個以上のVH領域は、ペプチドリンカーを用いて共有結合で結合されて、2価ドメイン抗体を作り出す。2価ドメイン抗体の2個のVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的にしてもよい。
【0037】
「2価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの例では、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかしながら、2価抗体は、二重特異性であってもよい(下記を参照されたい)。
【0038】
本明細書に使用されるように、用語「1本鎖Fv」抗体または「scFv」抗体は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する抗体断片を指す。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VHドメインおよびVLドメインの間にさらに含む。sFvの検討については、Pluckthun(1994年)THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES、第113巻、RosenburgおよびMoore編Springer−Verlag、New York、269〜315頁を参照されたい。
【0039】
本明細書のモノクローナル抗体はまた、ラクダ化単一ドメイン抗体をも含む。たとえばMuyldermansら(2001年)Trends Biochem. Sci. 26:230頁;Reichmannら(1999年)J. Immunol. Methods 231:25頁;国際公開第94/04678号;国際公開第94/25591号;米国特許第6,005,079号を参照されたい)。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるような改変を有する2個のVHドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0040】
本明細書に使用されるように、用語「ダイアボディ」は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同一ポリペプチド鎖(VH−VLまたはVL−VH)中に軽鎖可変ドメイン(VL)につなぎ合わされた重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短過ぎるために、同一鎖上の2個のドメインの間で対合させることができないリンカーを使用することによって、ドメインは、他の鎖の相補ドメインと対合することを強いられて、2個の抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、たとえば欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;およびHolligerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444〜6448頁に、より十分に記載されている。操作された抗体改変体の検討については、一般に、HolligerおよびHudson(2005年)Nat. Biotechnol. 23:1126〜1136頁を参照されたい。
【0041】
本明細書に使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(たとえばマウス)抗体およびヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分を任意選択で含む。接頭語「hum」、「hu」、または「h」は、ヒト化抗体(たとえばhum13B8)をげっ歯類親抗体(たとえばマウス13B8またはm13B8)から区別するのに必要な場合、抗体クローンの名称に付加される。げっ歯類抗体のヒト化形態は、げっ歯類親抗体と同じCDR配列を一般に含むが、ヒト化抗体の親和性を増加させるために、安定性を増加させるために、または他の理由で、ある種のアミノ酸置換が含まれていてもよい。
【0042】
本発明の抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するために改変(または遮断)Fc領域を有する抗体を含む。たとえば米国特許第5,624,821号;国際公開第2003/086310号;国際公開第2005/120571号;国際公開第2006/0057702号;Presta(2006年)Adv. Drug Delivery
Rev. 58:640〜656頁を参照されたい。そのような改変は、診断および治療での可能性のある有益な効果を伴って、免疫系の多様な反応を増強するまたは抑制するために使用することができる。Fc領域の変更は、アミノ酸変化(置換、欠失、および挿入)、糖鎖付加または糖鎖除去、ならびに複数のFcの付加を含む。Fcに対する変更はまた、治療用抗体中の抗体の半減期を変化させることもでき、より長い半減期により、投薬がそれほど頻繁ではなくなり、同時に利便性が増加し、材料の使用量が減少する。Presta(2005年)J. Allergy Clin. Immuno1.116:731および734〜35頁を参照されたい。
【0043】
用語「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマ中で産生される場合、マウス糖鎖を含有していてもよい。同様に、「マウス抗体」は、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、ヒトで、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系列配列を有するトランスジェニック動物で、ファージディスプレイ法によって、または他の分子生物学的方法によって生成されてもよい。
【0044】
本明細書に使用されるように、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(たとえば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)、および89〜97(CDRL3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)、および95〜102(CDRH3)(Kabatら(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.)ならびに/または「超可変ループ」からのそれらの残基(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)(ChothiaおよびLesk(1987年)J. Mol. Biol. 196:901〜917頁)を含む。本明細書に使用されるように、用語「フレームワーク」または「FR」残基は、CDR残基として本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。残基の上記番号付けは、Kabat番号体系に関するものであり、添付の配列表の配列番号付けと詳細には必ずしも対応しない。
【0045】
「結合性化合物(binding compound)」は、標的に結合することができる分子、小分子、高分子、ポリペプチド、抗体またはその断片もしくは類似体、または可溶性受容体を指す。「結合性化合物」はまた、標的に結合することができる、分子の複合体、たとえば非共有結合複合体、イオン化分子、共有結合でまたは非共有結合で改変された分子、たとえばリン酸化、アシル化、架橋、環化、または限定切断で改変された分子を指すものであってもよい。抗体に関して使用される場合、用語「結合性化合物」は、抗体およびその抗原結合性断片の両方を指す。「結合(binding)」は、結合性組成物の標的との関連性を指し、その関連性は、結合性組成物が溶液中に溶解するまたは懸濁することができる場合、結合性組成物の通常のブラウン運動の低下をもたらす。「結合性組成物」は、安定剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒、または添加剤と組み合わせた、標的に結合することができる分子、たとえば結合性化合物を指す。
【0046】
「保存的修飾改変体」または「保存的置換」は、当業者に公知のアミノ酸の置換を指し、ポリペプチドの必須領域中でさえ、結果として生じる分子の生物学的活性を変化させずに一般に作製されてもよい。そのような例示的な置換は、好ましくは、以下の通り表1に記載の置換に従って成される。
【0047】
【表1】

加えて、当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する。たとえばWatsonら(1987年)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub. Co.、224頁(第4版)を参照されたい。
【0048】
明細書および特許請求の範囲の全体にわたって使用されるような語句「〜から本質的になる(consists essentially of)」または「〜から本質的になる(consist essentially of)」もしくは「〜から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、任意の記載される要素または要素の群の包含および特定された投薬計画、方法、または組成物の基本的なまたは新規な特性を実質的に変化させない、記載される要素と類似のまたはそれと異なる性質を持つ他の要素の任意選択の包含を示す。非限定的な例として、記載されるアミノ酸配列から本質的になる結合性化合物はまた、結合性化合物の特性に実質的に影響しない1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含む、1つまたは複数のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0049】
「有効量」は、病状(medical condition)の症候または徴候を改善するまたは防止するのに十分な量を包含する。有効量はまた、診断を可能にするまたは容易にするのに十分な量をも意味する。特定の患者または獣医学的被験体にとっての有効量は、処置されている状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法の経路および用量、ならびに副作用(side affect)の重症度などの要因に依存して変動してもよい。たとえば米国特許第5,888,530号を参照されたい。有効量は、著しい副作用(side effect)または毒性作用を回避する最大用量または投薬プロトコルとすることができる。その効果は、100%を、正常被験体によって示される診断パラメーターとして定義する場合、少なくとも5%、一般に少なくとも10%、より一般に少なくとも20%、最も一般に少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、および最も理想的には少なくとも90%、診断の尺度または診断パラメーターの改善をもたらす。たとえばMaynardら(1996年)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice、Interpharm Press、Boca Raton、FL;Dent(2001年)Good Laboratory and Good Clinical Practice、Urch Publ.、London、UKを参照されたい。
【0050】
「免疫状態」または「免疫障害」は、たとえば、病的炎症、炎症性障害、および自己免疫障害または自己免疫疾患を包含する。「免疫状態」はまた、免疫系による根絶に抵抗する感染症、腫瘍、ならびに癌を含む感染症、持続性感染症、ならびに癌、腫瘍、および新脈管形成などの増殖状態を指す。「癌性状態」は、たとえば、癌、癌細胞、腫瘍、新脈管形成、および異形成などの前癌性状態を含む。
【0051】
「炎症性障害」は、その病理が、全体的にまたは部分的に、たとえば、免疫系の細胞の数の変化、遊走の速度の変化、または活性化の変化から生じる障害または病的状態を意味する。免疫系の細胞は、たとえば、T細胞、B細胞、単球もしくはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ミクログリア、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫に特異的に関連する他の任意の細胞、たとえば、サイトカイン産生内皮細胞もしくはサイトカイン産生上皮細胞を含む。
【0052】
「IL−17産生細胞」は、TH17細胞と呼ばれる、古典的TH1型T細胞または古典的TH2型T細胞ではないT細胞を意味する。TH17細胞は、CuaおよびKastelein(2006年)Nat. Immunol. 7:557〜559頁;TatoおよびO’Shea(2006年)Nature 441:166〜168頁;IwakuraおよびIshigame(2006年)J. Clin. Invest. 116:1218〜1222頁により詳細に論じられる。「IL−17産生細胞」はまた米国特許出願公開第2004/0219150号の表10Bの遺伝子またはポリペプチド(たとえばマイトジェン応答Pタンパク質、ケモカインリガンド2、インターロイキン−17(IL−17)、RAR関連転写因子、および/またはサイトカインシグナル伝達抑制因子3)を発現するT細胞を意味し、IL−23アゴニストによる処置を用いる発現は、IL−12アゴニストを用いる処置よりも大きく、ここで「よりも大きい」は、以下のように定義される。IL−23アゴニストを用いる発現は、通常、IL−12処置を用いるよりも、少なくとも5倍大きい、典型的には少なくとも10倍大きい、より典型的には少なくとも15倍大きい、最も典型的には少なくとも20倍大きい、好ましくは少なくとも25倍大きい、および最も好ましくは少なくとも30倍大きい。発現は、たとえば、実質的に純粋なIL−17産生細胞の集団の処置で測定することができる。Th17応答は、Th17細胞の活性および/または増殖が、Th1応答の抑制と典型的には共役して増強される免疫応答である。
【0053】
その上、「IL−17産生細胞」は、上記に定義されるように、細胞発生または細胞分化の経路で、IL−17産生細胞への分化に傾倒する前駆細胞(progenitor cell)または前駆細胞(precursor cell)を含む。IL−17産生細胞に至る前駆細胞(progenitor cell)または前駆細胞(precursor cell)は、流入領域リンパ節(DLN)中に見つけることができる。加えて、「IL−17産生細胞」は、たとえばホルボールエステル、イオノフォア、および/または発癌物質によってたとえば活性化された、さらに分化された、保存された、凍結された、乾燥された、不活性化された、たとえばアポトーシス、タンパク質分解、もしくは脂質酸化によって部分的に分解された、またはたとえば組換え技術によって改変された上記に定義されるようなIL−17産生細胞を包含する。
【0054】
本明細書に使用されるように、用語「単離核酸分子」は、単離核酸分子が抗体核酸の天然源(natural source)中に通常付随している少なくとも1つの混入核酸分子から同定され、分離される核酸分子を指す。単離核酸分子は、自然に見つけられる形態または状況以外のものである。したがって、単離核酸分子は、天然細胞中に存在する核酸分子と区別される。しかしながら、単離核酸分子は、たとえば、核酸分子が、天然細胞の位置と異なる染色体位置にある、抗体を通常発現する細胞中に含有される核酸分子を含む。
【0055】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物中で作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適切な制御配列は、たとえば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0056】
核酸は、他の核酸配列との機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。たとえば、プレ配列もしくは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結される、プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される、またはリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように位置する場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されているDNA配列が隣接することを意味し、分泌リーダーの場合には、隣接し、リーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接する必要はない。連結は、好都合な制限部位でライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドのアダプターまたはリンカーが、従来の方式に従って使用される。
【0057】
本明細書に使用されるように、「細胞」、「細胞系列」、および「細胞培養」という表現は、交換可能に使用され、そのような名称はすべて子孫を含む。したがって、単語「形質転換体」および「形質転換細胞」は、初代被験体細胞および植え継ぎ数に関係なくそれらに由来する培養物を包含する。計画的なまたは偶発性の変異のために、すべての子孫はDNA含有量が正確に同一であるとは限らないこともまた理解される。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が包含される。個別の名称が表わされる場合、それは文脈から明らかとなる。
【0058】
本明細書に使用されるように、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、たとえば米国特許第4,683,195号に記載されるように、核酸、RNA、および/またはDNAの微量の特定片が増幅される手順または技術を指す。一般に、興味のある領域の末端からの配列情報またはそれ以降の配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができるために、入手可能である必要があり、これらのプライマーは、増幅されることとなる鋳型の反対の鎖に配列が同一であるまたは類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅物質の末端と一致し得る。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などを増幅するために使用することができる。一般にMullisら(1987年)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263頁;Erlich編、(1989年)PCR TECHNOLOGY(Stockton Press、N.Y.)を参照されたい。本明細書に使用されるように、PCRは、核酸の特定片を増幅するまたは生成するためのプライマーとして知られている核酸および核酸ポリメラーゼの使用を含む、核酸試験サンプルを増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の一例とみなすが、唯一の例とはみなさない。
【0059】
本明細書に使用されるように、用語「生殖細胞系列配列」は、げっ歯類(たとえばマウス)生殖細胞系列配列およびヒト生殖細胞系列配列を含む非再配列免疫グロブリンDNA配列の配列を指す。非再配列免疫グロブリンDNAの任意の適切な供給源が使用されてもよい。ヒト生殖細胞系列配列は、たとえば、米国National Institutes of HealthのNational Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseasesのウェブサイト上のJOINSOLVER(登録商標)生殖細胞系列データベースから得られてもよい。マウス生殖細胞系列配列は、たとえばGiudicelliら(2005年)Nucleic Acids Res. 33:D256〜D261頁に記載されるように得られてもよい。
【0060】
IL−23活性の阻害の程度を検査するために、たとえば、所与の、たとえばタンパク質、遺伝子、細胞、または生物を含むサンプルまたはアッセイは、可能な活性化作用物質または阻害作用物質を用いて処置し、作用物質なしの対照サンプルと比較される。対照サンプル、つまり作用物質を用いて処置されていないサンプルに100%の相対的活性値を割り当てる。阻害は、対照と比較した活性値が、約90%以下、典型的には85%以下、より典型的には80%以下、最も典型的には75%以下、一般に70%以下、より一般に65%以下、最も一般に60%以下、典型的には55%以下、一般に50%以下、より一般に45%以下、最も一般に40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは25%以下、および最も好ましくは25%未満である場合、達成される。活性化は、対照と比較した活性値が、約110%、一般に少なくとも120%、より一般に少なくとも140%、より一般に少なくとも160%、多くの場合、少なくとも180%、より多くの場合、少なくとも2倍、最も多くの場合、少なくとも2.5倍、一般に少なくとも5倍、より一般に少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍、および最も好ましくは40倍、より高い場合、達成される。
【0061】
活性化または阻害の終点(endpoint)は、以下のようにモニターすることができる。たとえば細胞、生理的液体、組織、器官、および動物またはヒト被験体の、処置に対する活性化、阻害、および応答は、終点によってモニターすることができる。終点は、サイトカイン、毒性酸素、またはプロテアーゼの放出などの、所定の数量またはパーセンテージのたとえば炎症、腫瘍原性、または細胞脱顆粒もしくは細胞分泌の兆候を含んでいてもよい。終点は、たとえば、所定の数量のイオンフラックス(ion flux)または輸送、細胞遊走、細胞接着、細胞増殖、転移の可能性、細胞分化、および表現型の変化、たとえば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関する遺伝子の発現の変化を含んでいてもよい(たとえばKnight(2000年)Ann. Clin. Lab. Sci. 30:145〜158頁;HoodおよびCheresh(2002年)Nature Rev. Cancer 2:91〜100頁;Timmeら(2003年)Curr. Drug Targets 4:251〜261頁;RobbinsおよびItzkowitz(2002年)Med. Clin. North Am. 86:1467〜1495頁;GradyおよびMarkowitz(2002年)Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 3:101〜128頁;Bauerら(2001年)Glia 36:235〜243頁;StanimirovicおよびSatoh(2000年)Brain Pathol. 10:113〜126頁を参照されたい)。
【0062】
阻害の終点は、一般に対照の75%以下、好ましくは、対照の50%以下、より好ましくは、対照の25%以下、および最も好ましくは、対照の10%以下である。一般に、活性化の終点は、少なくとも対照の150%、好ましくは、少なくとも対照の2倍、より好ましくは、少なくとも対照の4倍、および最も好ましくは、少なくとも対照の10倍である。
【0063】
「小分子」は、10kDa未満、典型的には2kDa未満、および好ましくは、1kDa未満である分子量を有する分子として定義される。小分子は、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物質、および抗体模倣物質を含むが、これらに限定されない。治療剤として、小分子は、大分子よりも細胞に対してより透過性があり、分解に対してより感受性が少なく、および免疫応答を誘発する傾向がより少なくあり得る。抗体およびサイトカインのペプチド模倣物質などの小分子ならびに小分子トキシンが記載されている。たとえばCassetら(2003年)Biochem. Biophys. Res. Commun. 307:198〜205頁;Muyldermans(2001年)J. Biotechnol. 74:277〜302頁;Li(2000年)Nat. Biotechnol. 18:1251〜1256頁;Apostolopoulosら(2002年)Curr. Med. Chem. 9:411〜420頁;Monfardiniら(2002年)Curr. Pharm. Des. 8:2185〜2199頁;Dominguesら(1999年)Nat. Struct. Biol. 6:652〜656頁;SatoおよびSone(2003年)Biochem. J. 371:603〜608頁;米国特許第6,326,482号を参照されたい。
【0064】
「特異的に」または「選択的に」結合するは、リガンド/受容体、抗体/抗原、または他の結合対を指す場合、タンパク質および他の生物製剤の不均質な集団中のタンパク質の存在の決定因である結合反応を示す。したがって、指定された条件下で、特定されたリガンドは、特定の受容体に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に相当な量で結合しない。本明細書に使用されるように、抗体が、IL−23p19の配列を含むポリペプチドに結合するが、IL−23p19の配列を欠くタンパク質に結合しない場合、抗体は、所与の配列(この場合、IL−23p19)を含むポリペプチドに特異的に結合すると表現される。たとえば、IL−23p19を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、IL−23p19のFLAG(登録商標)タグ付き形態に結合してもよいが、他のFLAG(登録商標)タグ付きタンパク質に結合しない。
【0065】
企図される方法の抗体または抗体の抗原結合部位に由来する結合性組成物は、無関係な抗原との親和性よりも、少なくとも2倍大きい、好ましくは、少なくとも10倍大きい、より好ましくは、少なくとも20倍大きい、および最も好ましくは、少なくとも100倍大きい親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、たとえば、スキャチャード解析(Scatchard analysis)によって決定されるように、約109リットル/モルよりも大きな親和性を有する。 Munsenら(1980年)Analyt. Biochem. 107:220〜239頁。
【0066】
本明細書に使用されるように、用語「免疫調節剤」は、免疫応答を抑制するまたは調整する天然作用物質または合成作用物質を指す。免疫応答は、液性応答または細胞性応答であり得る。免疫調節剤は、免疫抑制剤または抗炎症剤を包含する。
【0067】
本明細書に使用されるような「免疫抑制剤」、「免疫抑制薬」、または「免疫抑制物質」は、免疫系の活性を阻害するまたは防止するために免疫抑制治療で使用される治療剤である。臨床的に、それらは、移植器官および移植組織(たとえば骨髄、心臓、腎臓、肝臓)の拒絶を防止するためにならびに/または自己免疫疾患もしくは自己免疫性が起源である可能性がすこぶる高い疾患(たとえば関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症)の処置で使用される。免疫抑制薬は、4つの群に分類することができる:グルココルチコイド細胞増殖抑制剤;抗体(生物学的応答調節物質またはDMARDを含む);イムノフィリンに作用する薬剤;増殖障害の処置で使用される既知の化学療法剤(chemotherpeutic agent)を含む他の薬剤。多発性硬化症については、特に、本発明の抗体は、コパキソン(copaxone)として知られている、新しいクラスのミエリン結合性タンパク質様治療剤と共に投与することができる。
【0068】
「抗炎症剤」または「抗炎症薬」は、ステロイド性治療剤および非ステロイド性治療剤の両方を表わすために使用される。コルチコステロイドとしても知られているステロイドは、副腎によって天然に産生されるホルモンであるコルチゾールに非常によく類似している薬剤である。ステロイドは、全身性血管炎(血管の炎症)および筋炎(筋肉の炎症)などのある種の炎症状態の主な処置として使用される。ステロイドはまた、関節リウマチ(体の両側の関節に生じる慢性炎症性関節炎);全身性エリテマトーデス(異常な免疫系機能によって引き起こされる全身性疾患);シェーグレン症候群(眼乾燥症および口腔乾燥症を引き起こす慢性の障害)などの炎症状態を処置するために選択的に使用されてもよい。
【0069】
NSAIDと一般に略される非ステロイド性抗炎症薬は、鎮痛効果、解熱効果、および抗炎症効果を有する薬剤であり、それらは、痛み、発熱、および炎症を低下させる。用語「非ステロイド性」は、これらの薬剤とステロイドを区別するために使用され、これらは(広範囲の他の効果の中で)、類似のエイコサノイド抑制、抗炎症作用を有する。NSAIDは、以下の状態の症状の軽減のために一般に必要とされる:関節リウマチ;骨関節炎;炎症性関節症(たとえば強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群);急性痛風;月経困難症;転移部骨痛;頭痛および片頭痛;術後痛;炎症および組織傷害のための軽度から中程度の痛み;発熱;ならびに腎仙痛。NSAIDは、サリチル酸塩、アリールアルカン酸(arlyalknoic acid)、2−アリールプロピオン酸(プロフェン)、N−アリールアントラニル酸(フェナム酸)、オキシカム、コキシブ、およびスルホンアニリドを含む。
II.総論
本発明は、炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害を処置するための操作された抗IL−23抗体およびその使用を提供する。
【0070】
多くのサイトカインは、神経障害の病理または回復での役割を有する。IL−6、IL−17、インターフェロン−ガンマ(IFNガンマ、IFN−γ)、および顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)は、多発性硬化症と関連してきた。Matuseviciusら(1999年)Multiple Sclerosis 5:101〜104頁;Lockら(2002年)Nature Med. 8:500〜508頁。IL−1アルファ、IL−1ベータ、および形質転換成長因子ベータ1(TGF−ベータ1)は、ALS、パーキンソン病、およびアルツハイマー病で役割を果たす。Hoozemansら(2001年)Exp. Gerontol. 36:559〜570頁;GriffinおよびMrak(2002年)J. Leukocyte Biol. 72:233〜238頁;Ilzeckaら(2002年)Cytokine 20:239〜243頁。TNF−アルファ、IL−1ベータ、IL−6、IL−8、インターフェロン−ガンマ、およびIL−17は、脳虚血に対する応答を調整するようにみえる。たとえばKostulasら(1999年)Stroke 30:2174〜2179頁;Liら(2001年)J. Neuroimmunol. 116:5〜14頁を参照されたい。血管内皮細胞成長因子(VEGF)はALSと関連する。ClevelandおよびRothstein(2001年)Nature 2:806〜819頁。
【0071】
炎症性腸障害、たとえばクローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、および過敏性腸症候群は、免疫系の細胞およびサイトカインによって媒介される。たとえば、潰瘍性大腸炎は、IL−5、IL−13、および形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)の増加と関連するが、クローン病は、IL−12およびIFNγの増加と関連する。IL−17発現もまた、クローン病および潰瘍性大腸炎を増加させ得る。たとえばPodolsky(2002年)New Engl. J. Med. 347:417〜429頁;BoumaおよびStrober(2003年)Nat. Rev. Immunol. 3:521〜533頁;Bhanら(1999年)Immunol. Rev. 169:195〜207頁;Hanauer(1996年)New Engl. J. Med. 334:841〜848頁;Green(2003年)The Lancet 362:383〜391頁;McManus(2003年)New Engl. J. Med. 348:2573〜2574頁;HorwitzおよびFisher(2001年)New Engl. J. Med. 344:1846〜1850頁;Andohら(2002年)Int. J. Mol. Med. 10:631〜634頁;Nielsenら(2003年)Scand. J. Gastroenterol. 38:180〜185頁;Fujinoら(2003年)Gut 52:65〜70頁を参照されたい。
【0072】
IL−23受容体は、IL−23RサブユニットおよびIL−12Rβ1サブユニットのヘテロ二量体複合体である。Parhamら(2000年)J. Immunol. 168:5699頁を参照されたい。IL−12受容体は、IL−12Rβ1サブユニットおよびIL−12Rβ2サブユニットの複合体である。Preskyら(1996年)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 93:14002頁を参照されたい。IL−23Rは、重大な遺伝因子(genetic factor)として炎症性腸障害、クローン病および潰瘍性大腸炎に関係してきた。Duerrら(2006年)Sciencexpress 26−2006年10月:1頁。全ゲノム関連研究により、IL−23Rの遺伝子は、まれなコード改変体(Arg381Gln)を有するクローン病と非常に関連し、疾患から強く保護することが分かった。この遺伝的関連性は、先の生物学的知見を確証するものであり(Yenら(2006年)J. Clin. Investigation 116:1218頁)、IL−23およびその受容体は、IBDの処置に近づくための新しい治療剤の有望な標的であることを示唆する。
【0073】
皮膚、関節、CNSの炎症疾患および増殖障害は、類似の免疫応答を誘発し、したがって、IL−23遮断は、全身性感染症と戦うための宿主の能力を含まずに、これらの免疫媒介性炎症性障害の阻害をもたらすはずである。IL−23の拮抗は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、およびアトピー性皮膚炎に関連する炎症を軽減するはずである。IL−23阻害剤の使用はまた、増殖障害、たとえば癌、自己免疫障害、たとえば多発性硬化症、I型糖尿病、およびSLEの阻害をもたらす。これらの多様な障害におけるIL−23の記載は、以下の公開されたPCT出願に見つけることができる:国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号。IL−23阻害剤はまた細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、および真菌感染症などの慢性感染症を含む感染症の処置での使用を見い出し得る。
【0074】
IL−23のp19サブユニットは、造血性サイトカインの「長鎖」ファミリーのメンバーであり(Oppmannら(2000年)前掲)、アップ−アップ−ダウン−ダウントポロジーを有する、A、B、C、およびDと称される4つのまとめられたα−ヘリックスを含む。4個のヘリックスは3個のポリペプチドループによってつなぎ合わされている。A−BループおよびC−Dループは、それらが平行ヘリックスをつなぎ合わせるので、比較的長く形作られている。短いB−Cループは、逆平行のBヘリックスおよびCヘリックスをつなぎ合わせている。IL−23のp19サブユニットは、ヘリックス状サイトカインのIL−6ファミリーのメンバーである。サイトカインのこのファミリーは、3つの保存されたエピトープを通してそれらの同族の受容体に結合する。(部位I、II、およびIII;BravoおよびHeath(2000年)EMBO J. 19:2399〜2411頁)。p19サブユニットは、3つのサイトカイン受容体サブユニットと相互作用して、十分な(competent)シグナル伝達複合体を形成する。細胞中で発現されると、p19サブユニットは、第1に、それがIL−12と共有するp40サブユニットと複合体を形成する。上記に示されるように、p19p40複合体は、ヘテロ二量体タンパク質として細胞から分泌され、IL−23と呼ばれる。たとえばOppmannら、前掲を参照されたい。IL−23シグナルを伝達するために必要とされる細胞受容体複合体は、サイトカインのIL−6/IL−12ファミリーのトール(tall)シグナル伝達受容体サブユニットの2つのメンバー、IL−23特異的IL−23R(たとえばParhamら、前掲を参照されたい)およびIL−12と共有されるIL−12Rb1からなる。
【0075】
「長鎖」サイトカイン/受容体認識の構造的な基礎に対する洞察により、大部分のタンパク質表面は、サイトカイン−受容体複合体の形成の際に埋没するが、相互作用の親和性は、結合界面の中心でエネルギー性の「ホットスポット」を形成する少数の、密接に密集することが多いアミノ酸残基によって支配されることを示した。大きなタンパク質−タンパク質界面の結合エネルギーを支配する残基の正体は、「機能的エピトープ」と称された。結果的に、相互作用の親和性(したがって生物学的特異性)は、リガンドおよび受容体の機能的エピトープの構造的相補性によって規定される。詳細な変異誘発研究により、サイトカインおよび受容体の機能的エピトープを構成する最も重要な残基は、トリプトファンなどの非極性側鎖、非極性側鎖の脂肪族成分、またはポリペプチド主鎖のいずれかを含む疎水性接触部分であることを示した。この非極性「コア」は、結合エネルギーにとってそれほど重要ではない極性残基の輪(halo)によって囲まれている。速度論的研究により、機能的エピトープの主要な役割は、複合体の解離速度を減少させることによって、タンパク質−タンパク質相互作用を安定化させることであることが示されている。サイトカインおよび受容体の間の最初の接触は、多くの不安定な接触部分をもたらすタンパク質表面のランダム拡散または「回転(rolling)」によって支配されることが示唆されてきた。次いで、受容体およびリガンドの機能的エピトープがかみ合うと、複合体は安定化する。たとえばBravoおよびHeath、前掲を参照されたい。
III.IL−23特異抗体の生成
モノクローナル抗体を生成するための任意の適切な方法が使用されてもよい。たとえば、IL−23ヘテロ二量体の連結形態もしくは非連結(たとえば自然発生)形態またはその断片を用いてレシピエントは免疫されてもよい。免疫の任意の適切な方法を使用することができる。そのような方法は、アジュバント、他の免疫刺激剤、繰り返しの追加免疫、および1つまたは複数の免疫経路の使用を含むことができる。
【0076】
IL−23の任意の適切な供給源は、本明細書に開示される組成物および方法の、p19サブユニットに特異的な非ヒト抗体の生成のための免疫原として使用することができる。そのような形態は、当技術分野で知られている組換え手段、合成手段、化学的手段、または酵素分解手段を通して生成される連結ヘテロ二量体および自然発生ヘテロ二量体を含む全タンパク質、ペプチド(複数可)、ならびにエピトープを含むが、これらに限定されない。
【0077】
抗原の任意の形態は、生物学的活性抗体を生成するのに十分な抗体を生成するために使用することができる。したがって、誘発性抗原は、単独のまたは当技術分野で知られている1つもしくは複数の免疫原性増強剤と組み合わせた単一のエピトープ、複数のエピトープ、または全タンパク質であってもよい。誘発性抗原は、単離完全長タンパク質、細胞表面タンパク質(たとえば、抗原の少なくとも一部分をトランスフェクトした細胞を用いて免疫する)、または可溶性タンパク質(たとえば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみを用いて免疫する)であってもよい。抗原は、遺伝的改変細胞中で産生されてもよい。抗原をコードするDNAは、ゲノムDNAまたは非ゲノムDNA(たとえばcDNA)であってもよく、細胞外ドメインの少なくとも1つの一部分をコードする。本明細書に使用されるように、用語「部分」は、適宜に、興味のある抗原の免疫原性エピトープを成すための最小数のアミノ酸または核酸を指す。アデノウイルスベクター、プラスミド、および陽イオン性脂質などの非ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない、興味のある細胞の形質転換に適切な任意の遺伝子ベクターが用いられてもよい。
【0078】
任意の適切な方法は、IL−23を阻害するための所望の生物学的特性を有する抗体を誘発するために使用することができる。マウス、げっ歯類、霊長類、ヒトなどの多様な哺乳類宿主からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技術の説明は、たとえばStitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第4版)Lange Medical Publications、Los Altos、CA、およびそこに引用される参考文献;HarlowおよびLane(1988年)ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986年)MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE(第2版)Academic Press、New York、NY.に見出され得る。したがって、モノクローナル抗体は、当業者によく知られている種々の技術によって得られてもよい。典型的には、所望の抗原を用いて免疫された動物からの脾臓細胞は、骨髄腫細胞との融合によって通例、不死化される。KohlerおよびMilstein(1976年)Eur. J. Immunol. 6:511〜519頁を参照されたい。不死化の代替方法は、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスを用いる形質転換または当技術分野で知られている他の方法を含む。たとえばDoyleら(1994年版および定期的な増刊)CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES、John Wiley
and Sons、New York、NYを参照されたい。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生のためにスクリーニングされ、そのような細胞によって産生されたモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含む多様な技術によって増強されてもよい。あるいは、たとえば、Huseら(1989年)Science 246:1275〜1281頁によって概要を述べられる一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をコードするDNA配列を単離してもよい。
【0079】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクター中の抗体のライブラリーの選択を含む。たとえばHuseら前掲;およびWardら(1989年)Nature 341:544〜546頁を参照されたい。キメラ抗体またはヒト化抗体を含む、本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変を伴ってまたは改変を伴わずに使用されてもよい。ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合でまたは非共有結合のいずれかで結合することによって標識されることが多い。種々様々な標識およびコンジュゲーション技術が知られており、科学文献および特許文献の両者で広範囲に報告されている。適切な標識は、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光成分、化学発光成分、磁気粒子などを含む。そのような標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号を含む。さらに、組換え免疫グロブリンは、産生されてもよく、Cabilly 米国特許第4,816,567号;およびQueenら(1989年)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029〜10033頁を参照されたい;またはトランスジェニックマウス中で作製されてもよく、Mendezら(1997年)Nature Genetics 15:146〜156頁を参照されたい。AbgenixおよびMedarexの技術もまた参照されたい。
【0080】
IL−23の所定の断片に対する抗体または結合性組成物は、ポリペプチド、断片、ペプチド、またはエピトープと担体タンパク質とのコンジュゲートを用いる動物の免疫によって出現させることができる。モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。これらの抗体は、正常IL−23または欠損IL−23に対する結合性についてスクリーニングすることができる。これらのモノクローナル抗体は、一般にELISAによって決定される、一般に少なくとも約1μM、より一般に少なくとも約300nM、30nM、10nM、3nM、1nM、300pM、100pM、30pMの、またはそれよりも良好なKdで結合する。適切な非ヒト抗体はまた、以下の実施例5および6に記載される生物学的アッセイを使用して同定されてもよい。
【0081】
抗体13B8を発現するハイブリドーマは、アクセッション番号PTA−7803下で2006年8月17日にAmerican Type Culture Collection(ATCC−Manassas、Virginia、USA)にブダペスト条約に従って寄託された。
【0082】
IV.IL−23特異抗体のヒト化
任意の適切な非ヒト抗体は、超可変領域のための供給源として使用することができる。非ヒト抗体の供給源は、マウス、ウサギ目(ウサギを含む)、ウシ、および霊長類を含むが、これらに限定されない。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、および能力(capacity)を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基と交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基と交換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見つけられない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、所望の生物学的活性の抗体性能をさらに改善するために成される。より詳細については、Jonesら(1986年)Nature 321:522〜525頁;Reichmannら(1988年)Nature 332:323〜329頁;およびPresta(1992年)Curr. Op. Struct. Biol. 2:593〜596頁を参照されたい。
【0083】
抗体を組換え操作するための方法は、たとえばBossら(米国特許第4,816,397号)、Cabillyら(米国特許第4,816,567号)、Lawら(欧州特許出願公開第438310A1号)およびWinter(欧州特許第239400B1号)に記載されている。
【0084】
ヒト化抗IL−23抗体のアミノ酸配列改変体は、適正なヌクレオチド変更をヒト化抗IL−23抗体DNAの中に導入することによってまたはペプチド合成によって調製される。そのような改変体は、たとえば、ヒト化抗IL−23抗体について示されるアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組合せは、最終的な構築物に到達するために成されるが、ただし、最終的な構築物が所望の特徴を持つことを条件とする。アミノ酸変化はまた、糖鎖付加部位の数または位置の変更などの、ヒト化抗IL−23抗体の翻訳後プロセスをも変更し得る。
【0085】
変異誘発の好ましい位置である、ヒト化抗IL−23p19抗体ポリペプチドのある種の残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science 244:1081〜1085頁に記載されているように「アラニンスキャニング変異誘発(alanine scanning mutagenesis)」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基の群は、同定され(たとえば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)、IL−23抗原とアミノ酸との相互作用に影響するように、中性アミノ酸または負に荷電したアミノ酸と交換される(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)。次いで、置換に対して機能的な感度を示すアミノ酸残基は、置換の部位にまたはその代わりにさらなる改変体または他の改変体を導入することによって改善される。したがって、アミノ酸配列改変を導入するための部位は予め決定されるが、変異の性質自体を予め決定する必要はない。たとえば、所与の部位での変異の性能を分析するために、Alaスキャニングまたはランダム変異誘発は、標的コドンまたは標的領域で行われ、発現されたヒト化抗IL−23p19抗体改変体は、所望の活性についてスクリーニングされる。
【0086】
アミノ酸配列の挿入は、長さが1残基から100個以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合ならびに単一のアミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有するヒト化抗IL−23抗体またはエピトープタグに融合された抗体を含む。ヒト化抗IL−23抗体分子の他の挿入改変体は、ヒト化抗IL−23抗体のN末端またはC末端と、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドとの融合を含む。
【0087】
他のタイプの改変体は、アミノ酸置換改変体である。これらの改変体は、ヒト化抗IL−23p19抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発にとって最も興味のある部位は、超可変ループを含むが、FR変更もまた企図される。
【0088】
抗体の他のタイプのアミノ酸改変体は、抗体の元の糖鎖付加パターンを変化させる。変化させることによって、抗体中に見つけられる1つもしくは複数の糖鎖成分を欠失させることおよび/または抗体中に存在しない1つもしくは複数の糖鎖付加部位を付加することを意味する。抗体の糖鎖付加は、典型的には、N連結(N−linked)またはO連結(O−linked)のいずれかである。N連結は、アスパラギン残基の側鎖への糖鎖成分の付加を指す。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸である、トリペプチド配列、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニンは、糖鎖成分のアスパラギン側鎖への酵素的付加のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的な糖鎖付加部位が作り出される。O連結糖鎖付加は、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も通例ではセリンまたはトレオニンへの付加を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンが使用されてもよい。
【0089】
抗体への糖鎖付加部位の追加は、抗体が、1つまたは複数の上記トリペプチド配列を含有するように(N連結糖鎖付加部位について)、アミノ酸配列を変化させることによって好都合に達成される。変更はまた、元の抗体の配列に対する1つまたは複数のセリン残基またはトレオニン残基の追加またはそれによる置換によって成されてもよい(O連結糖鎖付加部位について)。
【0090】
さらに他のタイプのアミノ酸改変体は、最終的なヒト化抗体のより大きな化学的安定性をもたらすための残基の置換である。たとえば、げっ歯類CDR内の任意のNG配列でイソアスパラギン酸の形成の能力を低下させるために、アスパラギン(N)残基を変更してもよい。類似の問題は、DG配列で生じ得る。ReissnerおよびAswad(2003年)Cell. Mol. Life Sci.60:1281頁。イソアスパラギン酸形成は、その標的抗原に対する抗体の結合を弱め得るかまたは完全に抑止し得る。Presta(2005年)J. Allergy Clin. Immunol. 116:731および734頁。一実施形態では、アスパラギンは、グルタミン(Q)に変更される。加えて、げっ歯類CDR中のメチオニン残基は、抗原結合親和性を低下させ得るおよび最終的な抗体調製物中の分子の不均質性の一因ともなり得る、メチオニンの硫黄が酸化する可能性を低下させるために変更されてもよい。同上文献。一実施形態では、メチオニンは、アラニン(A)に変更される。そのような置換を有する抗体は、置換が、許容できないレベルまでIL−23p19結合親和性を減少させていないことを確認するためにその後スクリーニングされる。
【0091】
ヒト化IL−23特異抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当技術分野で知られている種々の方法によって調製される。これらの方法は、天然源からの単離(自然発生アミノ酸配列改変体の場合)または先に調製された改変体バージョンもしくは非改変体バージョンのヒト化抗IL−23p19抗体のオリゴヌクレオチド媒介性の(もしくは部位特異的な)変異誘発、PCR変異誘発、およびカセット変異誘発による調製を含むが、これらに限定されない。
【0092】
通常、ヒト化抗IL−23抗体のアミノ酸配列改変体は、重鎖または軽鎖のいずれかの元のヒト化抗体アミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、および最も好ましくは、少なくとも95、98、または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関しての同一性または相同性は、配列を整列させ、必要であればギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後に、配列同一性の一部としてのあらゆる保存的置換も考慮に入れず、ヒト化抗IL−23残基と同一となる、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書に定義される。N末端、C末端、または内部の延長、欠失、または抗体配列中への挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響しないものと見なす。
【0093】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンから選択することができる。好ましくは、抗体は、IgG抗体である。IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、IgGの任意のアイソタイプを使用することができる。IgGアイソタイプの改変体もまた企図される。ヒト化抗体は、1つを超えるクラスまたはアイソタイプからの配列を含んでいてもよい。所望の生物学的活性を生成するのに必要な定常ドメイン配列の最適化は、下記の生物学的アッセイで抗体をスクリーニングすることによって容易に達成される。
【0094】
同様に、いずれかのクラスの軽鎖は、本明細書の組成物および方法で使用することができる。具体的には、カッパ、ラムダ、またはその改変体が本発明の組成物および方法で有用である。
【0095】
非ヒト抗体からのCDR配列の任意の適切な部分を使用することができる。CDR配列は、CDR配列が、用いられるヒト抗体配列および非ヒト抗体配列と別個なものとなるように、少なくとも1つの残基の置換、挿入、または欠失によって変異誘発することができる。そのような変異は、最小限となるように企図される。典型的には、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、および最も好ましくは95%超は、非ヒトCDR残基のそれに対応する。
【0096】
ヒト抗体からのFR配列の任意の適切な部分を使用することができる。FR配列は、FR配列が、用いられるヒト抗体配列および非ヒト抗体配列と別個なものとなるように、少なくとも1つの残基の置換、挿入、または欠失によって変異誘発することができる。そのような変異は、最小限となるように企図される。典型的には、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、および最も好ましくは95、98、または99%超は、ヒトFR残基のそれに対応する。
【0097】
CDR残基およびFR残基は、Kabatの標準的な配列定義によって決定される。Kabatら(1987年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda Md。配列番号:1〜5は、様々なマウス抗ヒトIL−23p19抗体の重鎖可変ドメイン配列を示し、配列番号9〜13は、軽鎖可変ドメイン配列を表わす。図1および2は、本発明の様々な抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの配列一覧を提供する。CDRは、図に示され、個々のCDR配列は、表7に示されるように特有の配列識別名を用いてそれぞれ提示される。
【0098】
抗体13B8のヒト化形態が提供される。ヒト化軽鎖13B8配列(カッパ定常領域を有する)は、配列番号14に提供され、軽鎖可変ドメインは、その配列の残基1〜108を含む。ヒト化重鎖13B8配列(γ1定常領域を有する)の3つのバージョンは、配列番号6〜8に提供され、重鎖可変ドメインは、それらの配列の残基1〜116を含む。13B8重鎖改変体は、太字体で示される、親配列との差異を伴って表2に示される。Met(M)は、残基の酸化および抗体の不活性化の可能性を回避するために、Lys(K)に改変された。NEMFEに対するAQKLQの置換は、抗体をヒト化するために選択されるヒトフレームワークからのヒト生殖細胞系列配列とのマウスCDR配列の交換である。
【0099】
【表2】

本明細書に開示される他の抗体のヒト化形態は、配列番号14および6に提供されるヒト化13B8について軽鎖配列および重鎖配列の中にげっ歯類親抗体CDRを単純に置換することによって作り出されてもよい。このアプローチは、抗体13B8のCDRと高い相同性を有するCDRを持った抗体鎖、たとえば重鎖上にクローン11C1ならびに軽鎖上にクローン11C1および21D1を有する抗体鎖にとって最も成功する可能性が高い。あるいは、マウス抗体は、本明細書(たとえば実施例2)に概要が示されるアプローチを使用して、独立してヒト化されてもよい。
【0100】
一実施形態では、CDRは、本明細書に開示される任意の単一配列CDRの改変体を含み(配列番号15〜46)、その改変体は、表1のデータを使用して決定されるように、開示される配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む。
【0101】
キメラ抗体もまた企図される。上記に示されるように、典型的なキメラ抗体は、特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性である重鎖および/または軽鎖の一部分を含むが、鎖(複数可)の残りの部分は、他の種に由来するまたは他の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性であり、ならびにキメラ抗体が所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む。米国特許第4,816,567号およびMorrisonら(1984年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851〜6855頁を参照されたい。
【0102】
二重特異性抗体もまた本発明の方法および組成物で有用である。本明細書に使用されるように、用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原エピトープ、たとえばIL−23p19、およびIL−17に対する結合特異性を有する抗体、典型的にはモノクローナル抗体を指す。一実施形態では、エピトープは、同じ抗原に由来する。他の実施形態では、エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野で知られている。たとえば、二重特異性抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を使用して組換えで産生することができる。たとえばMilsteinら(1983年)Nature 305:537〜39頁を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。たとえばBrennanら(1985年)Science 229:81頁を参照されたい。二重特異性抗体は、二重特異性抗体の断片を含む。たとえばHolligerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444〜48頁、Gruberら(1994年)J. Immunol. 152:5368頁を参照されたい。
【0103】
さらに他の実施形態では、異なる定常ドメインは、本明細書に提供されるヒト化VL領域およびヒト化VH領域に付加されてもよい。たとえば、本発明の抗体(または断片)の特定の意図される使用が、エフェクター機能の変更を求めるためのものである場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用されてもよい。IgG1抗体は、長い半減期ならびに補体活性化および抗体依存性細胞傷害などのエフェクター機能を提供するが、そのような活性は、抗体のすべての使用には望めない。そのような例では、たとえばIgG4定常ドメインが使用されてもよい。
【0104】
V.ヒト化抗IL−23の生物学的活性
ヒト化抗IL−23抗体で望ましいとして本明細書で同定される特徴を有する抗体は、インビトロでの阻害性生物学的活性または適切な結合親和性についてスクリーニングすることができる。興味のある抗体(たとえば、サイトカインのその受容体への結合を遮断するもの)が結合する、ヒトIL−23(つまりp19サブユニット)上のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、HarlowおよびDavid Lane編(1988年)に記載されているものなどのルーチン的な交差遮断アッセイを行うことができる。同じエピトープに結合する抗体は、そのようなアッセイで交差遮断する可能性が高いが、交差遮断が、重複するエピトープまたは近くの重複しないエピトープに結合する抗体による抗体結合の立体障害に起因し得るため、すべての交差遮断抗体は、必ずしも、正確に同じエピトープに結合するとは限らない。
【0105】
あるいは、エピトープマッピングは、たとえばChampeら(1995年)J. Biol. Chem. 270:1388〜1394頁に記載されているように、抗体が、興味のあるエピトープに結合するかどうかを決定するために行うことができる。CunninghamおよびWells(1989年)Science 244:1081〜1085頁に記載されている「アラニンスキャニング変異誘発」またはヒトIL−23中のアミノ酸残基の点変異誘発の他のある形態もまた、本発明の抗IL−23抗体について機能的エピトープを決定するために使用されてもよい。しかしながら、変異誘発研究はまた、IL−23の全体的な三次元構造にとって重大であるが、抗体−抗原接触に直接関与しないアミノ酸残基をも明らかにし得、したがって、他の方法は、この方法を使用して決定される機能的エピトープを確証するために必要となり得る。
【0106】
特異抗体が結合するエピトープはまた、ヒトIL−23p19(配列番号47)の断片を含むペプチドへの抗体の結合を評価することによって決定されてもよい。IL−12およびIL−23のp40サブユニットの配列は、GenBankアクセッション番号P29460に見つけられる。IL−23p19の配列を包含する、一連の重複するペプチドは、合成され、たとえば直接ELISAで、競合的ELISAで(ここでペプチドは、マイクロタイタープレートのウェルに結合されたIL−23p19への抗体の結合を妨害するその能力について評価される)、またはチップ上で、結合についてスクリーニングされてもよい。そのようなペプチドスクリーニング法は、いくつかの不連続な機能的エピトープ、つまり、IL−23p19ポリペプチド鎖の一次配列に沿って隣接していないアミノ酸残基を含む機能的エピトープを検出でき得ない。
【0107】
本発明の抗体が結合するエピトープはまた、X線結晶構造決定(たとえば国際公開第2005/044853号)、分子モデリング、ならびに遊離している場合および興味のある抗体との複合体中で結合している場合の、IL−23中の不安定なアミド水素のH−D交換速度のNMR決定を含む核磁気共鳴(NMR)分光法などの構造的な方法によって決定されてもよい(Zinn−Justinら(1992年)Biochemistry 31:11335〜11347頁;Zinn−Justinら(1993年)Biochemistry 32:6884〜6891頁)。
【0108】
X線結晶学に関して、結晶化は、マイクロバッチ(microbatch)(たとえばChayen(1997年)Structure 5:1269〜1274頁)、懸滴蒸気拡散(たとえばMcPherson(1976年)J. Biol. Chem. 251:6300〜6303頁)、シーディング(seeding)、および透析を含む当技術分野で知られている方法のいずれかを使用して達成されてもよい(たとえばGiegeら(1994年)Acta Crystallogr. D50:339〜350頁;McPherson(1990年)Eur. J. Biochem. 189:1〜23頁)。少なくとも約1mg/mL、好ましくは約10mg/mL〜約20mg/mLの濃度を有するタンパク質調製物を使用することが望ましい。結晶化は、ポリエチレングリコール1000〜20,000(PEG:約1000〜約20,000Daに及ぶ平均分子量)、好ましくは約5000〜約7000Da、より好ましくは約6000Daを、約10%〜約30%(w/v)に及ぶ濃度で含有する沈殿剤溶液中で最も良好に達成され得る。望ましくは、タンパク質安定化剤、たとえばグリセロールを、約0.5%〜約20%に及ぶ濃度で含み得る。望ましくは、塩化ナトリウム、塩化リチウム、クエン酸ナトリウムなどの適切な塩もまた、好ましくは約1mM〜約1000mMに及ぶ濃度で沈殿剤溶液中に入ってよい。沈殿剤は、好ましくは、約4.0〜約10.0、多くの場合、約7.0〜8.5、たとえばpH8.0のpHに緩衝化される。沈殿剤溶液中で有用な特別の緩衝液は変えられてもよく、当技術分野でよく知られている。Scopes、Protein
Purification: Principles and Practice、第3版、(1994年)Springer−Verlag、New York。有用な緩衝液の例は、HEPES、Tris、MES、および酢酸塩を含むが、これらに限定されない。結晶は、2℃、4℃、8℃、および26℃を含む広範囲の温度で成長し得る。
【0109】
抗体:抗原結晶は、周知のX線回析技術を使用して研究されてもよく、X−PLOR(Yale University、1992、Molecular Simulations,Inc.によって販売;たとえばBlundell & Johnson(1985年)Meth. Enzymol. 114 & 115、H. W. Wyckoffら編、Academic Press;米国特許出願公開第2004/0014194号を参照されたい)およびBUSTER(Bricogne(1993年)Acta Cryst. D49:37〜60頁;Bricogne(1997年)Meth. Enzymol. 276A:361〜423頁、Carter & Sweet編;Roversiら(2000年)Acta Cryst. D56:1313〜1323頁)などのコンピューターソフトウェアを使用して改善されてもよい。
【0110】
本発明の抗体と同じエピトープに結合するさらなる抗体は、たとえば、エピトープへの結合でIL−23に対して出現させた抗体をスクリーニングすることによってまたはエピトープ配列を含むヒトIL−23の断片を含むペプチドを用いる動物の免疫によって得られてもよい。同じ機能的エピトープに結合する抗体は、受容体結合の遮断などの類似の生物学的活性を呈することを予想し得、そのような活性は、抗体の機能アッセイによって確証することができる。
【0111】
抗体親和性(たとえばヒトIL−23に対する)は、標準的な分析を使用して決定されてもよい。好ましいヒト化抗体は、ヒトIL−23p19に、約1×10−7以下、好ましくは、約1×10−8以下、より好ましくは、約1×10−9以下、および最も好ましくは、約1×10−10以下または1×10−11MのKd値で結合する抗体である。
【0112】
本発明の組成物および方法に有用な抗体およびその断片は、生物学的活性抗体および生物学的活性断片である。本明細書に使用されるように、用語「生物学的活性」は、所望の抗原エピトープに結合し、直接または間接的に生物学的作用を発揮することができる抗体または抗体断片を指す。典型的には、これらの作用は、IL−23がその受容体に結合することができないことに起因する。本明細書に使用されるように、用語「特異的」は、抗体の標的抗原エピトープへの選択的結合を指す。抗体は、所与の条件下で、IL−23への結合を、関係のない抗原または抗原混合物への結合と比較することによって、結合の特異性について試験することができる。抗体が、関係のない抗原または抗原混合物に対するよりも、少なくとも10倍、および好ましくは50倍多くIL−23に結合する場合、それは特異的とみなす。IL−12に結合する抗体は、IL−23特異抗体ではない。IL−23p19に「特異的に結合する」抗体は、IL−23p19由来の配列を含まないタンパク質に結合しない、つまり、本明細書に使用されるような「特異性」は、IL−23p19特異性に関するものであり、問題のタンパク質中に存在し得る任意の他の配列にも関するものではない。たとえば、本明細書に使用されるように、IL−23p19に「特異的に結合する」抗体は、IL−23p19およびFLAG(登録商標)ペプチドタグを含む融合タンパク質であるFLAG(登録商標)−hIL−23p19に典型的には結合するが、FLAG(登録商標)ペプチドタグ単独のものにはまたはそれがIL−23p19以外のタンパク質に融合している場合は結合しない。
【0113】
阻害性IL−23p19特異抗体などの本発明のIL−23特異的結合性化合物は、任意の様式で、腹腔マクロファージによるIL−1βおよびTNFの産生ならびにTH17
T細胞によるIL−17の産生を含むが、これらに限定されないその生物学的活性を阻害することができる。Langrishら(2004年)Immunol. Rev. 202:96〜105頁を参照されたい。抗IL−23p19抗体はまた、IL−17A、IL−17F、CCL7、CCL17、CCL20、CCL22、CCR1、およびGM−CSFの遺伝子発現を阻害することもできる。Langrishら(2005年)J. Exp. Med. 201:233〜240頁を参照されたい。抗IL−23p19抗体などの本発明のIL−23特異的結合性化合物はまた、TH17細胞の増殖または生存を増強するIL−23の能力をも遮断する。CuaおよびKastelein(2006年)Nat. Immunol. 7:557〜559頁。操作された抗IL−23p19の阻害活性は、炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害の処置で有用である。そのような障害の例は、PCT特許出願国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号に記載されている。
【0114】
VI.医薬組成物
IL−23p19抗体を含む医薬組成物または無菌組成物を調製するために、サイトカイン類似体もしくはムテイン、それに対する抗体、またはそれの核酸は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と混合される。たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984年)を参照されたい。
【0115】
治療薬および診断用薬の処方物は、生理学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤と混ぜることによって、たとえば凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液、または懸濁液の形態で調製されてもよい。たとえばHardmanら(2001年)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw−Hill、New York、NY;Gennaro(2000年)Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott, Williams,
and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse
Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker, Inc.、New York、NYを参照されたい。
【0116】
単独でまたは免疫抑制剤と組み合わせて投与される抗体組成物の毒性および治療効果は、たとえばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物での標準的な薬学の手順によって決定することができる。毒性作用および治療的作用の間の用量比は、治療指数であり、それは、ED50に対するLD50の比として表現することができる。高い治療指数を呈する抗体が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで使用されるある範囲の投薬量を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与の経路に依存して、この範囲内で変動してもよい。
【0117】
投与のモードは、特に重要ではない。投与の適切な経路は、たとえば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸管投与;筋肉内注射、皮内注射、皮下注射、髄内注射、および鞘内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口的送達を含んでいてもよい。医薬組成物中に使用されるまたは本発明の方法を実施するための抗体の投与は、経口摂取、吸入、局所適用または皮膚注射、皮下注射、腹腔内注射、非経口的注射、動脈内注射、もしくは静脈内注射などの種々の従来の方法で実行されてもよい。
【0118】
あるいは、多くの場合デポー処方物または徐放性処方物で、たとえば、直接、関節炎の関節または免疫病理によって特徴付けられる病原体誘発性の病巣の中へ、抗体の注射を介して、全身性の様式よりもむしろ局所性の様式で、抗体を投与してもよい。さらに、標的薬剤送達系(たとえば、たとえば関節炎の関節または免疫病理によって特徴付けられる病原体誘発性の病巣を標的とする組織特異的抗体でコートされたリポソーム)で、抗体を投与してもよい。リポソームは、罹患組織を標的とし、罹患組織によって選択的に取り込まれる。
【0119】
治療剤に対する投与計画の選択は、その実体(entity)の血清代謝回転速度または組織代謝回転速度、症状のレベル、その実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中での標的細胞の到達性を含むいくつかの要因に依存する。好ましくは、投与計画は、許容可能なレベルの副作用と調和した、患者に送達される治療剤の量を最大限にする。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、特定の実体および処置されている状態の重症度に依存する。抗体、サイトカイン、および小分子の適正用量の選択の手引き(guidance)が入手可能である。たとえばWawrzynczak(1996年)Antibody Therapy、Bios Scientific Pub. Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991年)Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993年)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy
in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、NY;Baertら(2003年)New Engl. J. Med.
348:601〜608頁;Milgromら(1999年)New Engl. J. Med. 341:1966〜1973頁;Slamonら(2001年)New Engl. J. Med. 344:783〜792頁;Beniaminovitzら(2000年)New Engl. J. Med. 342:613〜619頁;Ghoshら(2003年)New Engl. J. Med. 348:24〜32頁;Lipskyら(2000年)New Engl. J. Med. 343:1594〜1602頁を参照されたい。
【0120】
適正用量の決定は、たとえば、処置に影響することが当技術分野で知られているもしくは疑われるまたは処置に影響することが予測されるパラメーターまたは因子を使用して、臨床家によって成される。一般に、用量は、やや最適用量未満の量から始まり、その後、あらゆる負の副作用と比較して所望または最適の効果が達成されるまで少量ずつ増加させることによって増加する。重要な診断尺度は、たとえば炎症の症状または産生される炎症性サイトカインのレベルの尺度を含む。好ましくは、使用される生物製剤は、実質的に、処置の標的とされる動物と同じ種に由来し(たとえば、ヒト被験体の処置のためのヒト化抗体)、それによって、試薬に対するあらゆる免疫応答を最小限とする。
【0121】
抗体、抗体断片、およびサイトカインは、連続注入によってまたはたとえば1日、1週間当たり1〜7回、1週間、2週間、毎月、隔月などの間隔の用量で提供することができる。用量は、静脈内に、皮下に、局所に、経口的に、経鼻的に、直腸に、筋肉内に、脳内に、髄腔内に、または吸入によって提供されてもよい。好ましい用量プロトコルは、著しい望ましくない副作用を回避する最大用量または最大用量頻度を含むものである。毎週の用量の合計は、一般に、少なくとも0.05μg/kg体重、0.2μg/kg体重、0.5μg/kg体重、1μg/kg体重、10μg/kg体重、100μg/kg体重、0.2mg/kg体重、1.0mg/kg体重、2.0mg/kg体重、10mg/kg体重、25mg/kg体重、50mg/kg体重、またはそれ以上である。たとえばYangら(2003年)New Engl. J. Med. 349:427〜434頁;Heroldら(2002年)New Engl. J. Med. 346:1692〜1698頁;Liuら(1999年)J. Neurol. Neurosurg.
Psych. 67:451〜456頁;Portieljiら(20003)Cancer Immunol. Immunother. 52:133〜144頁を参照されたい。小分子治療剤、たとえばペプチド模倣物質、天然産物、または有機化学物質の所望の用量は、モル/kgベースで、抗体またはポリペプチドとほぼ同じである。
【0122】
本明細書に使用されるように、「阻害する」または「処置する」または「処置」は、自己免疫疾患もしくは病原体誘発性の免疫病理と関連する症状の発達の遅延および/または発達するもしくは発達が予想されるような症状の重症度の低下を含む。用語は、既存の制御されないまたは望まれない、自己免疫に関係するまたは病原体誘発性の免疫病理症状を改善すること、さらなる症状を防止すること、およびそのような症状の根本的な原因を改善することもしくは防止することをさらに含む。したがって、その用語は、有益な結果が、自己免疫性のもしくは病原体誘発性の免疫病理疾患もしくは症状を有するまたはそのような疾患もしくは症状を発達させる可能性を有する脊椎動物被験体に与えられることを意味する。
【0123】
本明細書に使用されるように、用語、「治療有効量(therapeutically
effective amount)」または「有効量」は、単独でまたはさらなる治療薬と組み合わせて細胞、組織、または被験体に投与される場合、自己免疫疾患または病原体誘発性の免疫病理関連性の疾患もしくは状態またはその疾患の進行を防止するまたは改善するのに有効である、IL−23p19特異的結合性化合物、たとえば抗体の量を指す。治療有効用量は、症状の改善、たとえば、関係のある病状の処置、治癒、防止、もしくは改善またはそのような状態の処置、治癒、防止、もしくは改善の速度の増加をもたらすのに十分な、化合物のその量をさらに指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、治療有効用量はその成分を単独で指す。組合せに適用される場合、組み合わせて、連続的に、または同時に投与されるかどうかに関わらず、治療有効用量は、治療的作用をもたらす、有効成分の組み合わせられた量を指す。治療剤の有効量は、典型的には少なくとも10%、一般に少なくとも20%、好ましくは、少なくとも約30%、より好ましくは、少なくとも40%、および最も好ましくは、少なくとも50%、症状を減少させる。
【0124】
第2の治療薬、たとえばサイトカイン、抗体、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線との同時投与または同時処置のための方法は、当技術分野でよく知られている。たとえばHardmanら(編)(2001年)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、McGraw−Hill、New York、NY;PooleおよびPeterson(編)(2001年)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice: A Practical Approach、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PA;ChabnerおよびLongo(編)(2001年)Cancer Chemotherapy and Biotherapy、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PAを参照されたい。本発明の医薬組成物はまた、他の免疫抑制剤または免疫調節剤を含有してもよい。抗炎症剤、コルチコステロイド、シクロスポリン、タクロリムス(つまりFK−506)、シロリムス、インターフェロン、可溶性サイトカイン受容体(たとえばsTNRFおよびsIL−1R)、サイトカイン活性を中和する作用物質(たとえばインフリキシマブ(inflixmab)、エタネルセプト)、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパーガリン、サリドマイド、グラチラマー、アザチオプリン、レフルノミド、シクロホスファミド、メトトレキサートなどを含むが、これらに限定されない任意の適切な免疫抑制剤を用いることができる。医薬組成物はまた、光線療法および放射線などの他の治療様式と共に用いることができる。
【0125】
典型的な獣医学的被験体、実験被験体、または研究被験体は、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマ、およびヒトを含む。
VII.抗体産生
一実施形態では、本発明の抗体の組換え産生のために、2つの鎖をコードする核酸は、単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために1つまたは複数の複製可能なベクターの中に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して配列決定される(たとえば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。多くのベクターは入手可能である。ベクター成分は、一般に、1つまたは複数の次のものを含むが、これらに限定されない:シグナル配列、複製開始点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。一実施形態では、本発明のヒト化抗IL−23p19抗体の軽鎖および重鎖の両方は、同じベクター、たとえばプラスミドまたはアデノウイルスベクターから発現される。
【0126】
本発明の抗体は、当技術分野で知られている任意の方法によって産生されてもよい。一実施形態では、抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞、マウス骨髄腫NSO細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、Spodoptera frugiperda卵巣(Sf9)細胞などの、培養物中の哺乳類細胞または昆虫細胞中で発現される。一実施形態では、CHO細胞から分泌された抗体は、回収され、プロテインAクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの標準的なクロマトグラフ法によって精製される。結果として生じる抗体は、濃縮され、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5中に保存される。
【0127】
他の実施形態では、本発明の抗体は、国際公開第2005/040395号に記載の方法に従って酵母中で産生される。手短かに言えば、興味のある抗体の個々の軽鎖または重鎖をコードするベクターは、異なる酵母半数体細胞、たとえば、異なる交配型の酵母Pichia pastorisの中に導入される。これらの酵母半数体細胞は、任意選択で、相補的な栄養素要求株である。次いで、形質転換された半数体酵母細胞は、交配してまたは融合して、重鎖および軽鎖の両方を産生することができる二倍体酵母細胞を生じ得る。二倍体系統は、次いで、完全に構築された生物学的活性抗体を分泌することができる。2つの鎖の相対的な発現レベルは、たとえば、異なるコピー数を有するベクターを使用すること、異なる強度の転写プロモーターを使用すること、または一方もしくは両方の鎖をコードする遺伝子の転写を駆動する誘発性のプロモーターからの発現を誘発することによって最適化することができる。
【0128】
一実施形態では、複数の異なる抗IL−23p19抗体(「元の」抗体)の各重鎖および軽鎖は、酵母半数体細胞の中に導入されて、複数の軽鎖を発現する一方の交配型の半数体酵母系統のライブラリーおよび複数の重鎖を発現する異なる交配型の半数体酵母系統のライブラリーを作り出す。半数体系統のこれらのライブラリーは、交配して(またはスフェロプラストとして融合して)、様々な可能性のある順列の軽鎖および重鎖から構成される抗体のコンビナトリアルライブラリーを発現する一連の二倍体酵母細胞を産生することができる。次いで、抗体のコンビナトリアルライブラリーは、抗体のいずれかが、元の抗体の特性よりも優れた特性(たとえばIL−23に対するより高い親和性)を有するかどうか決定するためにスクリーニングすることができる。たとえば国際公開第2005/040395号を参照されたい。
【0129】
他の実施形態では、本発明の抗体は、抗体可変ドメインの部分が、分子量約13kDaのポリペプチド中で連結されているヒトドメイン抗体である。たとえば、米国特許公開第2004/0110941号を参照されたい。そのような単一ドメイン低分子量作用物質は、合成の容易性、安定性、および投与の経路の点から多数の利点を提供する。
VIII.使用
本発明は、たとえば中枢神経系、末梢神経系、および胃腸管の炎症性障害および炎症性状態ならびに自己免疫障害および増殖障害の処置ならびに診断のための、操作された抗IL−23抗体およびその断片を使用するための方法を提供する。
【0130】
方法は、たとえば再発寛解型MSおよび原発性進行性MSを含む多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(別名ALS;ルー ゲーリック病)、虚血性脳傷害、プリオン病、およびHIV関連認知症の処置のために提供される。神経障害性疼痛、外傷後ニューロパシー、ギラン−バレー症候群(GBS)、末梢多発性神経障害、および神経再生を処置するための方法もまた提供される。
【0131】
多発性硬化症または神経系の他の炎症性障害もしくは炎症性状態の1つまたは複数の以下の特徴、症状、側面、所見、または徴候を処置するまたは改善するための方法が提供される:脳病変、ミエリン病変、脱髄、脱髄斑、視覚障害、バランスまたは協調の喪失、痙縮、感覚障害、失禁、疼痛、脱力、疲労、麻痺、認知障害、精神緩徐、複視、視神経炎、感覚異常、歩行失調、疲労、ウートッフ症状(Uhtoff’s symptom)、神経痛、失語症、失行症、痙攣、視野損失、認知症、錐体外路系の徴候、うつ病、健康感または他の情緒的症状、慢性進行性ミエロパシー、およびガドリニウム増強病変を含む、磁気共鳴画像法(MRI)によって検出される症状、誘発電位記録によって検出される症状、または脳脊髄液の検査によって検出される症状。たとえばKenealyら(2003年)J. Neuroimmunol. 143:7〜12頁;Noseworthyら(2000年)New Engl. J. Med. 343:938〜952頁;Millerら(2003年)New Engl. J. Med. 348:15〜23頁;Changら(2002年)New Engl. J. Med. 346:165〜173頁;BruckおよびStadelmann(2003年)Neurol. Sci. 24 増刊5:S265〜S267頁を参照されたい。
【0132】
その上、本発明は、炎症性腸障害、たとえばクローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、および過敏性腸症候群を処置するおよび診断するための方法を提供する。炎症性腸障害の1つまたは複数の以下の症状、側面、所見、または徴候を処置するまたは改善するための方法が提供される:食物の吸収不良、腸運動性の変化、感染症、発熱、腹痛、下痢、直腸出血、体重減少、栄養失調の徴候、肛門周囲の疾患、腹部塊、および成長不全、ならびに狭窄、フィステル、中毒性巨大結腸症、穿孔、および癌などの腸管合併症、ならびに脆弱性、アフタ性潰瘍、および線状潰瘍などの内視鏡的な知見、敷石状外観、偽ポリープ、ならびに直腸合併症、および加えて抗酵母抗体を含む。たとえばPodolsky、前掲;Hanauer、前掲;HorwitzおよびFisher、前掲を参照されたい。
【0133】
乾癬、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、骨関節炎、および乾癬性関節炎を含む関節炎などの炎症性障害、全身性エリテマトーデスおよびI型糖尿病などの自己免疫障害、ならびに癌などの増殖障害の処置もまた企図される。たとえばPCT特許出願国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号を参照されたい。
【0134】
本発明のIL−23p19結合性化合物はまた、IL−17A、IL−17F、IL−1β、IL−6、およびTGF−βを含むが、これらに限定されない他のサイトカインの1つまたは複数のアンタゴニスト(たとえば抗体)と組み合わせて使用することができる。たとえばVeldhoen(2006年)Immunity 24:179〜189頁;Dong(2006年)Nat. Rev. Immunol. 6(4):329〜333頁を参照されたい。種々の実施形態では、本発明のIL−23p19結合性化合物は、抗−IL−17A抗体などの1つまたは複数の他のアンタゴニストの投与の前に、それと同時に、またはその投与の後に投与される。一実施形態では、IL−17A結合性化合物は、有害な免疫応答(たとえばMS、クローン病)の急性初期の処置で、単独でまたは本発明のIL−23アンタゴニスト抗体と組み合わせて使用される。後者の場合では、IL−17A結合性化合物は、徐々に減少させてもよく、IL−23のアンタゴニストを単独で用いる処置は、有害な応答の抑制を維持するために継続される。あるいは、IL−1β、IL−6、および/またはTGF−βに対するアンタゴニストは、本発明のIL−23p19結合性化合物の前にまたはその後に同時に投与されてもよい。CuaおよびKastelein(2006年)Nat. Immunol. 7:557〜559頁;TatoおよびO’Shea(2006年)Nature 441:166〜168頁;IwakuraおよびIshigame(2006年)J. Clin. Invest. 116:1218〜1222頁を参照されたい。
【0135】
広範囲の本発明は、以下の実施例に関して最も理解され、これらは、本発明を特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載の特定の実施形態は、ただ例の目的で提示され、本発明は、添付される特許請求の範囲が権利を与えられる全範囲の等価物と共に、添付される特許請求の範囲の用語によって限定されるものとする。
【実施例】
【0136】
(実施例1)
一般的な方法
分子生物学における標準的な方法を記載する。Maniatisら、(1982年)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Sambrook and Russell(2001年)Molecular Cloning、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993年)Recombinant DNA、第217巻、Academic Press、San Diego、CA。標準的な方法はAusbelら、(2001年)Current Protocols in Molecular Biology、第1〜4巻、John Wiley and Sons、Inc.New York、NY中にも載っており、これは細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、およびバイオインフォマティクス(第4巻)を記載している。
【0137】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含めたタンパク質精製のための方法を記載する。Coliganら、(2000年)Current Protocols in Protein Science、第1巻、John Wiley and Sons、Inc.、New York。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化を記載する。たとえば、Coliganら、(2000年)Current Protocols in Protein
Science、第2巻、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Ausubelら、(2001年)Current Protocols
in Molecular Biology、第3巻、John Wiley and
Sons、Inc.、NY、NY、16.0.5〜16.22.17頁;Sigma−Aldrich、Co.(2001年)Products for Life Science Research、St.Louis、MO;45〜89頁;Amersham
Pharmacia Biotech(2001年)BioDirectory、Piscataway、N.J.384〜391頁を参照。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化を記載する。Coliganら、(2001年)Current Protocols in Immunology、第1巻、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Harlow and Lane(1999年)Using Antibodies、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY; Harlow and Lane、上記。リガンド/受容体相互作用を特徴付けするための標準的な技法が利用可能である。たとえば、Coliganら、(2001年)Current Protocols in Immunology、第4巻、John Wiley Inc.、New Yorkを参照。
【0138】
蛍光標識細胞分取(fluorescence activated cell sorting)検出システム(FACS(登録商標))を含めた、フローサイトメトリーのための方法が利用可能である。たとえば、Owensら、(1994年)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ;Givan(2001年)Flow Cytometry、第2版;Wiley−Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003年)Practical Flow Cytometry、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ中を参照。たとえば診断用試薬として使用するための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチド、および抗体を含めた核酸を改変するのに適した蛍光試薬が利用可能である。Molecular Probes(2003年)Catalogue、Molecular Probes、Inc.、Eugene、OR;Sigma−Aldrich(2003年)Catalogue、St.Louis、MO。
【0139】
免疫系の組織学の標準的な方法を記載する。たとえば、Muller−Harmelink(ed.)(1986年)Human Thymus:Histopathology and Pathology、Springer Verlag、New York、NY;Hiattら、(2000年)Color Atlas of Histology、Lippincott、Williams、and Wilkins、Phila、PA;Louisら、(2002年)Basic Histology:Text and Atlas、McGraw−Hill、New York、NYを参照。
【0140】
たとえば抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能性ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するための、ソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である。たとえば、GenBank、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax、Inc、Bethesda、MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys、Inc.、San Diego、CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogicCrop.、Crystal Bay、Nevada);Menneら、(2000年)Bioinformatics 16:741〜742頁;Menneら、(2000年)Bioinformatics Applications Note 16:741〜742頁;Wrenら、(2002年)Comput.Methods Programs Biomed. 68:177〜181頁;von Heijne(1983年)Eur.J.Biochem. 133:17〜21頁;von Heijne(1986年)Nucleic Acids Res. 14:4683〜4690頁を参照。
【0141】
(実施例2)
抗ヒトIL−23p19抗体の作製およびヒト化
抗ヒトIL−23p19抗体を、キメラIL−23(ヒトp19:マウスp40)でIL−23p19ノックアウトマウスを免疫処置することによって作製した。モノクローナル抗体は標準的な方法によって調製した。
【0142】
マウス抗体13B8(マウスIgG1/カッパ)の可変ドメインのヒト化は、本質的にPCT特許出願国際公開第2005/047324号および国際公開第2005/047326号中に記載されたように実施した。
【0143】
簡単に言うと、抗体13B8の非ヒトVHドメインのアミノ酸配列を、5つのヒトVH生殖細胞系列アミノ酸配列の群;亜群IGHV1およびIGHV4由来の1つの代表的配列、および亜群IGHV3由来の3つの代表的配列と比較した。VH亜群は、M.−P.Lefranc(2001年)「Nomenclature of the Human
Immunoglobulin Heavy(IGH)Genes」、Experimental and Clinical Immunogenetics 18:100〜116頁中に記載されている。抗体13B8は、亜群VH1中でヒト重鎖生殖細胞系列DP−14に対して最高値を記録した。
【0144】
抗体13B8のVL配列は、VLのカッパサブクラスの配列である。非ヒトVLドメインのアミノ酸配列を、4つのヒトVLカッパ生殖細胞系列アミノ酸配列の群と比較した。4つの群は、V.Barbie and M.−P.Lefranc(1998年)「The Human Immunoglobulin Kappa Variable(IGKV)Genes and Joining(IGKJ)Segments」、Experimental and Clinical Immunogenetics 15:171〜183頁およびM.−P.Lefranc(2001年)「Nomenclature of the Human Immunoglobulin Kappa(IGK)Genes」、Experimental and Clinical Immunogenetics 18:161〜174頁中に記載された4つの確立したヒトVL亜群の各々からの代表的な1つを構成する。4つの亜群は、Kabatら(1991年、第5版)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、米国保健社会福祉省、NIH Pub.91−3242、103〜130頁中に記載された4つの亜群にも対応する。抗体13B8は、亜群VLkI中でヒト軽鎖生殖細胞系列Z−012に対して最高値を記録した。
【0145】
追加的なアミノ酸置換を、前掲で論じ配列番号24〜26で開示するようにCDRH2に施した。ヒト化13B8重鎖および軽鎖可変ドメインを、それぞれヒトγ1(IgG1)重鎖定常ドメインおよびカッパ軽鎖定常ドメインをコードするベクターにクローニングした。生成したヒト化13B8抗体(IgG1/カッパ)はヒトおよびカニクイザルIL−23と結合するが、ヒトIL−12、ヒトp40またはマウスIL−23とは結合しない。
【0146】
可変重鎖および軽鎖の標的アミノ酸配列を決定した後、完全長ヒト化抗体をコードするプラスミドを作製することができる。プラスミド配列はKunkel変異誘発(Kunkel(1985年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 82:488〜492頁)を使用して、DNA配列を変更して標的ヒト化抗体配列に変えることができる。同時に、コドン最適化を実施して可能で最適な発現をもたらすことができる。
【0147】
本明細書に開示するヒト化型の他の抗体は、ヒト化13B8抗体に関して開示するヒトフレームワークを置換することによって、または本実施例中に開示する方法により最良ヒトフレームワークを選択するための手順を反復することによって構築することができる。ヒト化抗体13B8の一部としての本明細書に開示するヒトフレームワークの置換は、13B8と同様のCDR配列を有する抗体に最も適している。
【0148】
(実施例3)
KinExA技術を使用したヒト化抗ヒトIL−23に関する平衡解離定数(Kd)の決定
抗ヒトIL−23抗体に関する平衡解離定数(Kd)を、KinEx3000機器を使用して決定する。Sapidyne Instruments Inc.、Boise Idaho、USA.KinExAは、抗体、抗原および抗体−抗原複合体の混合物中で複合体を形成していない抗体の濃度の測定に基づいた結合平衡除外(kinetic exclusion)アッセイ法の原理を使用する。遊離抗体の濃度は、非常に短い時間の間、固相固定化抗原に混合物を曝すことによって測定する。実際、溶液相の抗原−抗体混合物をフローセル中に流し抗原コート粒子(antigen−coated particle)を通して捕捉することによってこれを実施する。この機器によって作製したデータは、カスタムソフトウェアを使用して分析する。平衡定数は、以下の仮定に基づく数学的理論を使用して計算する:
1.結合は、平衡に関する可逆的結合の等式に従う:
kon[Ab][Ag]=koff[AbAg]
2.抗体と抗原は1:1で結合し、かつ全抗体は抗原−抗体複合体および遊離抗体に等しい
3.機器シグナルは、遊離抗体の濃度と直線的関係がある。
【0149】
98ミクロンのPMMA粒子(Sapidyne、カタログ番号440198)を、Sapidyneの「Protocol for coating PMMA particles with biotinylated ligands having short or nonexistent linker arms」に従って、ビオチン化IL−23でコートする。この実験では、ビオチン化IL−23はマウスIL−12p40とヒトIL−23p19の複合体を含む。EZ−リンクTFP PEO−ビオチン(Pierce、カタログ番号21219)を使用して、製造者の推奨(Pierce会報0874)に従ってビオチン化IL−23を作製する。すべての実験手順は、KinExA3000のマニュアルに従って行う。
【0150】
抗IL−23p19抗体の結合は競合結合アッセイにおいて評価し、その中で抗体は、一連の濃度で、2つのジスルフィド結合鎖、ヒトp19(配列番号47)およびヒトp40(GenBankアクセッション番号P29460)を含む非結合(天然)ヒトIL−23と共にプレインキュベートする。非結合抗体とIL−23結合抗体の混合物を含む生成したサンプルは、次いで前段落中に記載したrhIL−23(「elastikine」)PMMA粒子の一面に流す。次いでPMMA粒子によって捕捉された抗体の量を、蛍光標識した二次抗体を使用して検出する。
【0151】
表3は、各抗体に関する反復測定を含めた、KinExA分析の結果を示す。
【0152】
【表3】

(実施例4)
BIAcore技術を使用したヒト化抗ヒトIL−23p19抗体に関する平衡解離定数(Kd)の決定
BIAcore測定は、本質的に同一譲渡人に譲渡された米国特許出願公開第2007/0048315号の実施例4に記載されたように実施する。簡単に言うと、リガンド(抗IL−23モノクローナル抗体)を、標準的なアミンカップリング手順を使用してBIAcoreCM5センサーチップに固定する。IL−23をPBSに希釈して様々な濃度を生成する。様々な相互作用に関する運動定数(kinetic constant)を、BIA評価ソフトウェア(BIAevaluation software)3.1を使用して決定する。Kdは計算した解離および会合速度定数を使用して決定する。
【0153】
表4は、反復測定を含めた、BIAcoreによって決定したKd値を与える。
【0154】
【表4−1】

【0155】
【表4−2】

(実施例5)
抗IL−23抗体の中和を評価するための増殖バイオアッセイ
IL−23を生物学的に中和するモノクローナル抗体の能力を、組換えIL−23受容体を発現する細胞を使用する短期の増殖バイオアッセイの適用によって評価した。IL−23Rトランスフェクタント細胞系列(Ba/F3−2.2lo−hIL−23R)はhIL−23とhIL−12Rβ1の両方を発現し、ヒトIL−23とカニクイザルIL−23の両方に対して応答性がある。トランスフェクタントBa/F3−2.2lo細胞はヒトIL−23に応答して増殖し、かつ応答は中和抗IL−23抗体によって阻害され得る。抗体は、用量応答曲線の直線領域内、プラトー付近およびEC50を超える選択したIL−23の濃度で滴定する。増殖、またはその欠如は、アラマーブルー(alamar
blue)、代謝活性の検出に基づく増殖指標色素を使用する、比色分析手段によって測定する。IL−23を中和する抗体の能力は、そのIC50値、またはIL−23増殖の半最大阻害を誘導する抗体の濃度によって評価する。
【0156】
Ba/F3トランスフェクタントは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μMの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、50μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン、および10ng/mLのマウスIL−3中に維持する。Ba/F3増殖バイオアッセイは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μMの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、および50μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン中で実施する。
【0157】
手順
ウェル当たり150μLで96ウェルの平底プレート(Falcon3072または同様のもの)においてアッセイを実施する。抗IL−23抗体は30〜60分間IL−23と共にプレインキュベートし、次に細胞を加え、40〜48時間インキュベートする。アラマーブルー(Biosourceカタログ番号DAL1100)を加え、5〜12時間放置して発色させる。次いで吸光度を570nmおよび600nmで読み取り(VERSAmaxマイクロプレートリーダー、Molecular Probes、Eugene、Oregon、USA)、かつOD570−600を得る。
【0158】
細胞は一般に3〜8×105/mLの密度で、健康な増殖状態で使用する。細胞を計数し、ペレット状にし、バイオアッセイ培地中で2回洗浄し、かつ平板培養に適した密度に懸濁する。IL−23の用量応答は、IL−23の連続1:3希釈(25:50μL、バイオアッセイ培地中)を使用して実施する。3ng/ml(50pM)のIL−23濃度を、抗体アッセイ中で使用するために選択する。中和抗体の用量応答も、連続1:3希釈(25:50μL、バイオアッセイ培地中)を使用して実施する。
【0159】
IC50値はGraphPad Prism(登録商標)3.0ソフトウェア(GraphPad Software Inc.、San Diego、California、USA)を使用して決定し、その中では吸光度をサイトカインまたは抗体濃度に対してプロットし、かつIC50値はS字状(sigmoidal)用量応答曲線の非線形回帰(曲線の当てはめ)を使用して決定する。
【0160】
表5は、抗IL−23p19抗体によるBa/F3細胞増殖の遮断に関するIC50値を示す。いくつかの抗体の多重測定の値を含む。
【0161】
【表5】

(実施例6)
IL−17産生に基づくIL−23に関するマウス脾細胞アッセイ
本発明の抗IL−23p19抗体の生物学的活性を、本質的にAggarwalら、(2003年)J.Biol.Chem.278:1910頁およびStumhoferら、(2006年)Nature Immunol. 7:937頁中に記載されたように、脾細胞アッセイを使用して評価する。このマウス脾細胞アッセイは、マウス脾細胞によるIL−17産生のレベルとしてサンプル中のIL−23の活性を測定する。次いで抗IL−23p19抗体の阻害活性を、所与のサンプル中のIL−23の活性を50%低下させるのに必要な抗体の濃度(IC50)を決定することによって評価する。このアッセイによって測定したようにIC50は平衡解離結合定数(Kd)以上である、すなわち、KdはIC50以下であり得る。通常通り、より低いIC50およびKd値はより高い活性および親和性を反映する。
【0162】
簡単に言うと、8〜12週齢の雌性C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maine、USA)から脾臓を得る。脾臓を砕き、2回ペレット状にし、かつ細胞濾過器(70μmナイロン製)を通して濾過する。回収した細胞は、ヒトIL−23(10ng/ml、約170pM)およびマウス抗CD3e抗体(1μg/ml)(BD Pharmingen、Franklin Lakes、New Jersey、USA)の存在下で、アッセイする抗IL−23p19抗体有りまたはなしで、96ウェルプレート中において培養する(4×105個細胞/ウェル)。抗IL−23p19抗体は、10μg/mlおよび一連の3倍希釈で加える。細胞は72時間培養し、ペレット状にし、かつ上清はサンドウィッチELISAによりIL−17のレベルに関してアッセイする。
【0163】
IL−17のELISAは以下のように実施する。プレートは捕捉抗IL−17抗体(100ng/ウェル)で4℃において一晩コートし、洗浄およびブロッキングする。サンプルおよび標準物を加え、振とうしながら室温で2時間インキュベートする。プレートを洗浄し、ビオチン化抗IL−17検出抗体(100ng/ウェル)を加え、振とうしながら室温で1時間インキュベートする。捕捉抗体と検出抗体は、いずれもマウスIL−17と結合するが交差遮断しない異なる抗体である。プレートを洗浄し、かつ結合した検出抗体は、ストレプトアビジン−HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)およびTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を使用して検出する。次いでプレートを450−650nmで読み取り、かつサンプル中のIL−17の濃度は、標準物との比較によって計算する。
【0164】
いくつかの反復測定を含めた、脾細胞アッセイのIC50値を表6に与える。
【0165】
【表6】

(実施例7)
抗IL−23p19抗体13B8−bの調製の特徴付け
ヒト化抗IL−23p19抗体13B8−bを、それぞれ配列番号49および50で与えるように13B8−bの重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を有するベクターを使用して、哺乳動物細胞から調製する。
【0166】
本質的に実施例4(上記)中に記載したようにBIAcore分析によりアッセイしたとき、ヒト(hum)13B8−bはヒトIL−23に関して297pMのKdを有する。
【0167】
ヒト13B8−bの生物学的活性は、本質的に実施例5(上記)中に記載したようにBa/F3増殖アッセイを使用して評価する、ただし50pMではなく340pMのIL−23を使用して増殖を刺激する。抗IL−23p19抗体の阻害活性(IC50)は、所与のサンプル中のIL−23の活性を50%低下させるのに必要な抗体の濃度を決定することによって評価する。通常通り、より低いIC50値はより高い活性を反映する。ヒト13B8−bは、Ba/F3増殖アッセイにおいて187pMのIC50を示す。
【0168】
ヒト13B8−bの生物学的活性は、本質的に実施例6(上記)中に記載したようにヒト脾細胞アッセイを使用しても評価する、ただし脾細胞はマウスではなくヒト脾臓から得て、抗CD3e抗体は使用せず、かつIL−17ではなくIFN−γが読み出しである。このアッセイは、ヒト初代脾細胞によるIFN−γ産生のレベルを決定することによってサンプル中のIL−23の活性を測定する。ヒト脾細胞は、様々な濃度の抗IL−23p19抗体ヒト13B8−bの存在下、または抗体の不在下で、ヒトIL−23(170pM)に曝す。IFN−γはサンドウィッチELISAによって検出する。ヒト13B8−bは、ヒト脾細胞アッセイにおいて59〜144pMのIC50を示す。
【0169】
ヒト13B8−bの生物学的活性は、本質的にParhamら、(2002年)J.Immunol. 168:5699頁中に記載されたように、KIT225STAT−3リン酸化アッセイを使用してさらに評価する。ヒトKIT225細胞、白血病性のT細胞系列は、様々な濃度の抗IL−23p19抗体ヒト13B8−bの存在下、または抗体の不在下で、138pMのヒトIL−23で刺激する。IL−23活性はSTAT3リン酸化のレベルを検出することによって測定する。ヒト13B8−bは、KIT225アッセイにおいて130pMのIC50を示す。
【0170】
(実施例8)
ヒト化抗IL−23p19抗体13B8−bに関するエピトープ
ヒト化抗体13B8−bとヒトIL−23p19(配列番号47)の結合に関するエピトープを、x線結晶学によって決定した。p19およびp40サブユニットを含む、ヒト化抗IL−23p19抗体13B8−bのFab断片と非結合ヒトIL−23の複合体に関する座標を決定した。結晶構造を決定するために使用したIL−23中のp40サブユニットは、Asn222がGlnによって置換されているN222Q置換を有する。ヒトIL−23p19の配列は配列番号47で見られ、かつ成熟形態のヒトIL−12/IL−23p40の配列はGenBankアクセッション番号P29460の残基23〜328で見られる。ヒト化抗IL−23p19抗体13B8−bは、ヒト化13B8−b重鎖(配列番号7)ヒト化13B8−b軽鎖(配列番号14)を含む。結晶化条件は15%ポリエチレングリコール4000、60mM酢酸ナトリウム、100mMTRIS−HCl(pH8)である。結晶は他のバッファーをpH8でまたはpH8の周りで用いて得ることもできる。
【0171】
抗体13B8−b上の残基の4.0Å以内のIL−23アミノ酸残基には、K20、T23、W26、S27、P30、E82、S95、L96、L97、P98、D99、P101、G103、Q104、H106、A107およびL110がある。更なる残基L24、L85、T91、S100およびV102は5.0Å以内に存在する。IL−23p19上のアミノ酸残基は、残基の任意の原子の座標が抗体の任意の原子の座標の所与の距離内に存在する場合、抗体の所与の距離内(たとえば、4.0Åまたは5.0Å)に存在するとみなす。
【0172】
これらの接触残基の大部分は、IL−23p19の一次構造に沿った2つの主なクラスターの範疇にあり、第1のクラスターは残基20〜30を含み(その中で11個の残基の6個が抗体の5.0Å以内に存在し、かつ11個の残基の5個が4.0Å以内に存在する)、かつ第2のクラスターは残基82〜110を含む(その中で29個の残基の16個が抗体の5.0Å以内に存在し、かつ29個の残基の12個が4.0Å以内に存在する)。これらのクラスターは、その中で30%、40%、45%、50%または54%以上の残基が抗体の4.0Åまたは5.0Å以内に存在するIL−23p19の、11個以上の隣接アミノ酸残基の広がりを含むエピトープを規定する。
【0173】
これらのクラスターの片方または両方と結合する抗体は、抗体13B8−bの結合を妨げると予想され、かつ類似の生物学的活性を示すと予想される。
【0174】
表7は、配列表中の配列の簡単な記載を与える。
【0175】
【表7−1】

【0176】
【表7−2】

【0177】
【表7−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−228259(P2012−228259A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−154567(P2012−154567)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2009−550920(P2009−550920)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】One Merck Drive,Whitehouse Station,New Jersey 08889,U.S.A.
【Fターム(参考)】