説明

操作された抗IL−23R抗体

【課題】ヒトIL−23Rに対する抗体ならびにたとえば炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害の処置でのその使用を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態では、交差遮断アッセイで、ヒトIL−23Rと本発明の結合性化合物の結合を遮断することができる抗体に関し、別の実施形態では、IL−23R媒介性の活性を遮断することができる結合性化合物に関するものであり、そのような活性は、IL−23の結合またはTH17細胞の増殖もしくは生存の媒介を含むが、これらに限定されない。また、本発明は、ヒト被験体において免疫応答を抑制する方法であって、IL−23シグナル伝達を遮断するのに有効な量で、IL−23Rに特異的な抗体(またはその抗原結合性断片)をその必要のある被験体に投与する工程を含む方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、インターロイキン−23R(IL−23R)に特異的な抗体およびその使用に関する。より具体的には、本発明は、ヒトIL−23Rを認識し、特に炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害でその活性を調整するヒト化抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、感染体、たとえば細菌、多細胞生物、およびウイルスからならびに癌から個体を防御するために機能する。この系は、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、および好中球などのいくつかのタイプのリンパ系細胞および骨髄性細胞を含む。これらのリンパ系細胞および骨髄性細胞は、サイトカインとして知られているシグナル伝達タンパク質を産生することが多い。免疫応答は、炎症、つまり、全身的なまたは体の特定の位置での免疫細胞の蓄積を含む。感染体または外来性物質に応答して、免疫細胞は、免疫細胞の増殖、発達、分化、または移動を交互に調整するサイトカインを分泌する。免疫応答は、たとえば、免疫応答が、自己免疫障害における場合のように過剰な炎症を伴う場合、病的結果をもたらし得る。たとえば非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照されたい。
【0003】
インターロイキン−12(IL−12)は、p35サブユニットおよびp40サブユニットから構成されるヘテロ二量体分子である。研究により、IFNγを分泌するT−ヘルパー1型CD4リンパ球へのナイーブT細胞の分化にIL−12が重大な役割を果たすことが示されている。IL−12は、インビボでのT細胞依存性の免疫応答および炎症応答に必須であることもまた示されている。たとえば非特許文献5を参照されたい。IL−12受容体は、IL−12Rβ1サブユニットおよびIL−12Rβ2サブユニットから構成される。
【0004】
インターロイキン−23(IL−23)は、2つのサブユニット、IL−23に特有のp19およびIL−12と共有されるp40から構成されるヘテロ二量体サイトカインである。p19サブユニットは、IL−6、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびIL−12のp35サブユニットに構造的に関係する。IL−23は、IL−23RおよびIL−12受容体によって共有されるIL−12Rβ1から構成されるヘテロ二量体受容体に結合することによってシグナル伝達を媒介する。非特許文献6を参照されたい。IL−12受容体は、IL−12Rβ1サブユニットおよびIL−12Rβ2サブユニットの複合体である。非特許文献7を参照されたい。
【0005】
p40の遺伝子欠損の結果(p40ノックアウトマウス;p40KOマウス)は、p35KOマウスで認められるものよりも重症であることが多くの初期の研究で実証された。これらの結果のいくつかは、IL−23の発見およびp40KOがIL−12だけではなくIL−23の発現をも妨げるといった知見によって最終的に説明された(たとえば非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12を参照されたい)。
【0006】
p40KOマウスの使用を通しての最近の研究は、IL−23およびIL−12の両方の遮断が多様な炎症性障害および自己免疫障害の有効な処置となることを示した。しかしながら、p40を通してのIL−12の遮断は、日和見微生物感染に対する感受性の増加などの多様な全身性の結果を有するようにみえる。非特許文献13。
【0007】
IL−23Rは、重大な遺伝的要因として炎症性腸障害クローン病および潰瘍性大腸炎に関連付けられてきた。非特許文献14。全ゲノム関連研究(genome−wide association study)により、IL−23Rの遺伝子は、クローン病と高度に関連し、まれなコード改変体(Arg381Gln)はこの疾患から強く保護することが分かった。この遺伝的関連性は、先の生物学的知見を確証するものであり(非特許文献15)、IL−23およびその受容体は、IBDの処置に対する新しい治療的アプローチのための有望な目標となることを示唆する。
【0008】
治療用抗体は、サイトカイン活性を遮断するために使用されてもよい。インビボで治療薬として抗体を使用する際の最も重要な制約は抗体の免疫原性である。ほとんどのモノクローナル抗体はげっ歯類に由来するので、ヒトで繰り返し使用すると、治療用抗体に対する免疫応答が発生する。そのような免疫応答は、最小で治療効果の損失をもたらし、最大で、致命的になる可能性のあるアナフィラキシー応答をもたらす。げっ歯類抗体の免疫原性を低下させるための最初の試みは、マウス可変領域をヒト定常領域と融合させるキメラ抗体の産生を伴った。非特許文献16。しかしながら、ヒト可変領域およびマウス定常領域のハイブリッドを注射されたマウスは、ヒト可変領域に対して向けられる強い抗抗体応答を起こし、そのようなキメラ抗体中でのげっ歯類Fv領域全体の保持が患者において、望まれない免疫原性をなおもたらし得ることを示唆する。
【0009】
可変ドメインの相補性決定領域(CDR)ループは、抗体分子の結合部位を含むと一般に考えられている。そのため、げっ歯類CDRループのヒトフレームワークへの移植(つまりヒト化)が、げっ歯類配列をさらに最小化するために試みられた。非特許文献17;非特許文献18。しかしながら、CDRループの交換は、なお、元の抗体と同じ結合特性を有する抗体を均一にもたらさない。ヒト化抗体中の、CDRループ支持に関与する残基であるフレームワーク残基(FR)の変更もまた、抗原結合親和性を維持するために必要とされる。非特許文献19。多くのヒト化抗体構築物でのCDR移植の使用およびフレームワーク残基維持が報告されてきたが、特定の配列が、所望の結合特性および時に生物学的特性を有する抗体をもたらすかどうかを予測するのは困難である。たとえば非特許文献20、非特許文献21、および非特許文献22を参照されたい。その上、ほとんどの先の研究は、異なるヒト配列を、動物の軽鎖可変配列および重鎖可変配列(light and heavy variable sequences)に使用し、そのような研究の予測的な性質を疑わしいものにした。知られている抗体の配列が使用されてきたまたはより典型的には、知られているX線構造を有する抗体、抗体NEWおよび抗体KOLの配列が使用されてきた。たとえば非特許文献17、前掲;非特許文献18、前掲;および非特許文献21、前掲を参照されたい。正確な配列情報は、いくつかのヒト化構築物について報告されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Abbasら(編)(2000年)Cellular andMolecular Immunology、W.B. Saunders Co.、Philadelphia、PA
【非特許文献2】OppenheimおよびFeldmann(編)(2001年)CytokineReference、Academic Press、SanDiego、CA
【非特許文献3】von AndrianおよびMackay(2000年)NewEngl. J. Med. 343:1020〜1034頁
【非特許文献4】DavidsonおよびDiamond(2001年)NewEngl. J. Med. 345:340〜350頁
【非特許文献5】Cuaら(2003年)Nature 421:744〜748頁
【非特許文献6】Parhamら(2000年)J. Immunol. 168:5699頁
【非特許文献7】Preskyら(1996年)Proc. Nat'l Acad.Sci. USA 93:14002頁
【非特許文献8】Oppmannら(2000年)Immunity 13:715〜725頁
【非特許文献9】Wiekowskiら(2001年)J. Immunol. 166:7563〜7570頁
【非特許文献10】Parhamら(2002年)J. Immunol. 168:5699〜708頁
【非特許文献11】Frucht(2002年)Sci STKE 2002、E1-E3
【非特許文献12】Elkinsら(2002年)InfectionImmunity 70:1936〜1948頁
【非特許文献13】Bowmanら(2006年)Curr. Opin.Infect. Dis. 19:245頁
【非特許文献14】Duerrら(2006年)Science 314:1461頁
【非特許文献15】Yenら(2006年)J. Clin.Investigation 116:1218頁
【非特許文献16】Liuら(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 84:3439〜43頁
【非特許文献17】Jonesら(1986年)Nature 321:522頁
【非特許文献18】Verhoeyenら(1988年)Science 239:1534頁
【非特許文献19】Kabatら(1991年)J. Immunol. 147:1709頁
【非特許文献20】Queenら(1989年)Proc. Natl. Acad.Sci. USA 86:10029頁
【非特許文献21】Gormanら(1991年)Proc. Natl. Acad.Sci. USA 88:4181頁
【非特許文献22】Hodgson(1991年)Biotechnology(NY) 9:421〜5頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
たとえば、IL−23およびIL−23受容体の相互作用のアンタゴニストなどの、その受容体を介したIL−23シグナル伝達を妨げる作用物質を使用することにより、炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害を処置するための改善された方法および組成物の必要性が存在する。あるいは、そのような作用物質は、特異的切断のために、IL−23Rを発現する標的細胞に対して使用することができる。好ましくは、そのようなアンタゴニストは、標的分子に対して高い親和性を有し、および、比較的低用量で、IL−23とその受容体の相互作用を遮断することができる。好ましくは、そのような方法および組成物は、IL−23に高度に特異的であり、IL−12などの他のサイトカインの活性に干渉しない。好ましくは、そのような方法および組成物は、標的細胞への細胞傷害性ペイロードの送達のための改変に適切でかつ、非細胞傷害性の使用のためにも適切なアンタゴニストを用いる。好ましくは、そのような方法および組成物は、その必要のある被験体に投与される場合、それらの抗原性を制限するために改変された抗体を用いる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、当技術分野でのこれらの必要性を満たし、さらには、ヒトIL−23Rのアンタゴニスト、たとえばヒト化抗ヒトIL−23R抗体を提供することによって満たす。
【0013】
一局面では、本発明は、配列番号26〜40および52からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを有する抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する、ヒト化抗体またはキメラ組換え抗体を含む抗体またはその断片などの結合性化合物を提供する。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号26〜30および52からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL1、配列番号31〜35からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL2、ならびに配列番号36〜40からなる群から選択される少なくとも1つのCDRL3を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0014】
一実施形態では、結合性化合物は、配列番号11〜25からなる群から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを有する抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。一実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号11〜15からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH1、配列番号16〜20からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH2、および配列番号21〜25からなる群から選択される少なくとも1つのCDRH3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0015】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、前の2つの段落に記載の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、結合性化合物は、フレームワーク領域を含み、ここでフレームワーク領域のアミノ酸配列は、すべてまたは実質的にすべてのヒト免疫グロブリンアミノ酸配列である。
【0017】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインおよび/または重鎖可変ドメインは、1つまたは複数のCDRの改変体を含む。種々の実施形態では、改変体ドメインは、各配列番号の配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の保存的に改変されたアミノ酸残基を含む。保存的アミノ酸置換は、表1に提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号48〜49および53からなる群から選択される配列またはその改変体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号45〜47からなる群から選択される配列を含む。種々の実施形態では、改変体可変ドメインは、各配列番号の配列と比較して、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、もしくは50またはそれ以上の保存的に改変されたアミノ酸残基を含む。その上更なる実施形態では、結合性化合物は、本段落に記載の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。
【0019】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号48〜49および53からなる群から選択される配列から本質的になる軽鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片ならびに/または配列番号45〜47からなる群から選択される配列から本質的になる重鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片を含む。
【0020】
他の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号6〜10、48〜49、および53からなる群から選択される配列と、少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列相同性を有する軽鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片ならびに/または配列番号1〜5および45〜47からなる群から選択される配列と、少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列相同性を有する重鎖可変ドメインもしくはその抗原結合性断片を含む。
【0021】
別の実施形態では、本発明の結合性化合物は、配列番号49または53の抗体軽鎖可変ドメインおよび配列番号47の抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。さらなる実施形態では、結合性化合物は、配列番号51または54の軽鎖および配列番号50の重鎖またはその抗原結合性断片を含む。その上更なる実施形態では、結合性化合物は、配列番号55(重鎖)および配列番号56(軽鎖)の核酸配列によってコードされる。さらなる実施形態では、結合性化合物は、配列番号58の軽鎖可変ドメインおよび配列番号57の重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む。
【0022】
一実施形態では、本発明は、交差遮断アッセイ(cross−blocking assay)で、ヒトIL−23Rと本発明の結合性化合物の結合を遮断することができる抗体に関する。種々の実施形態では、抗体は、本明細書に開示されるように、ヒトIL−23Rと、抗体41F11、8B10、3C11、20D7(S32T配列改変を有するまたは有していない)、20E5のCDR配列を含む抗体との結合を遮断することができる。他の実施形態では、抗体は、交差遮断アッセイで、ヒトIL−23Rと、アクセッション番号PTA−7800の下でATCCに寄託された抗体および/またはATCCアクセッション番号PTA−7801の下で寄託された抗体との結合を遮断することができる。別の実施形態では、本発明は、IL−23R媒介性の活性を遮断することができる結合性化合物に関するものであり、そのような活性は、IL−23の結合またはT17細胞の増殖もしくは生存の媒介を含むが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の結合性化合物は、親抗体のげっ歯類フレームワークの位置のヒト生殖細胞系列の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列および重鎖可変ドメインフレームワーク配列と組み合わせて、本明細書に開示される抗体のCDRから選択されるCDRまたはその改変体を含むヒト化抗体を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の結合性化合物は、重鎖定常領域をさらに含み、ここで重鎖定常領域は、γ1、γ2、γ3、もしくはγ4のヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む。種々の実施形態では、軽鎖定常領域は、ラムダ(lambda)ヒト軽鎖定常領域またはカッパ(kappa)ヒト軽鎖定常領域を含む。
【0025】
種々の実施形態では、本発明の結合性化合物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくは完全ヒト抗体またはその断片である。本発明はまた、抗原結合性断片が、Fab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)、およびダイアボディからなる群から選択される抗体断片であることを企図する。
【0026】
本発明は、ヒト被験体において免疫応答を抑制する方法であって、IL−23シグナル伝達を遮断するのに有効な量で、IL−23Rに特異的な抗体(またはその抗原結合性断片)をその必要のある被験体に投与する工程を含む方法を包含する。いくつかの実施形態では、IL−23Rに特異的な抗体は、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。さらなる実施形態では、免疫応答は、関節炎、乾癬、および炎症性腸疾患を含む炎症応答である。他の実施形態では、免疫応答は、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含む自己免疫応答である。別の実施形態では、被験体は癌を有し、免疫応答はTh17応答である。
【0027】
本発明はまた、さらなる免疫抑制剤または抗炎症剤を投与する工程をも企図する。本発明の結合性化合物は、薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて、結合性化合物またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物の形とすることができる。さらなる実施形態では、医薬組成物は、免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む。
【0028】
本発明は、本発明の結合性化合物の抗体の実施形態のポリペプチド配列をコードする単離核酸を包含する。核酸は、発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結された発現ベクターの形とすることができる。ベクターを含む宿主細胞、ならびに核酸配列が発現される条件下で宿主細胞を培養し、それによってポリペプチドを産生する工程および宿主細胞または培地からポリペプチドを回収する工程を含む、ポリペプチドを産生するための方法もまた包含される。
【0029】
種々の実施形態では、本発明は、炎症疾患、自己免疫疾患、癌、感染症(たとえば、慢性感染症を含む細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、または真菌感染症)、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含むが、これらに限定されない障害を処置するための薬剤の製造における本発明の結合性化合物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、前述の使用によって限定される組成物に関する。
【0030】
他の実施形態では、本発明は、炎症疾患、自己免疫疾患、癌、感染症(たとえば、慢性感染症を含む細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、または真菌感染症)、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、および糖尿病を含むが、これらに限定されない障害を処置するための、本発明の結合性化合物を含む医薬組成物に関する。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の結合性化合物または医薬組成物は、被験体において疾患症状からの長期の寛解を招来するので、たとえば再発寛解型疾患の処置において、被験体で、投薬間隔を結合性化合物の半減期よりもはるかに長くまで延長することができる。種々の実施形態では、一方の投与と他方の投与の間隔は、6、8、10、12、16、20、24、30週間、またはそれ以上に長い。他の実施形態では、単回投与は、再発を永続的に防止するのに十分である。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号26〜40および52からなる群から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目2)
配列番号11〜25からなる群から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目3)
項目1に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号11〜25からなる群から選択される1つまたは複数のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含むヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目4)
配列番号26〜40および52からなる群から選択される2つ以上のCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目1に記載の結合性化合物。
(項目5)
配列番号11〜25からなる群から選択される2つ以上のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目2に記載の結合性化合物。
(項目6)
項目4に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号11〜25からなる群から選択される2つ以上のCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、項目3に記載の結合性化合物。
(項目7)
配列番号26〜40および52からなる群から選択される3つのCDR配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目4に記載の結合性化合物。
(項目8)
配列番号11〜25からなる群から選択される3つのCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、項目5に記載の結合性化合物。
(項目9)
項目7に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号11〜25からなる群から選択される3つのCDR配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、項目6に記載の結合性化合物。
(項目10)
配列番号26〜30および52からなる群からの少なくとも1つのCDRL1、
配列番号31〜35からなる群からの少なくとも1つのCDRL2、および
配列番号36〜40からなる群からの少なくとも1つのCDRL3
を含む軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目11)
配列番号11〜15からなる群からの少なくとも1つのCDRH1、
配列番号16〜20からなる群からの少なくとも1つのCDRH2、および
配列番号21〜25からなる群からの少なくとも1つのCDRH3
を含む重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目12)
項目10に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号11〜15からなる群からの少なくとも1つのCDRH1、
配列番号16〜20からなる群からの少なくとも1つのCDRH2、および
配列番号21〜25からなる群からの少なくとも1つのCDRH3を含む
重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目13)
CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物であって、
CDRL1は、配列番号29または52の配列またはその改変体を含み、
CDRL2は、配列番号34の配列またはその改変体を含み、および
CDRL3は、配列番号39の配列またはその改変体を含み、
各改変体は、5つまでの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目14)
前記軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片は、配列番号48、49および53からなる群から選択される配列を含む、項目13に記載の結合性化合物。
(項目15)
CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物であって、
CDRH1は、配列番号14の配列またはその改変体を含み、
CDRH2は、配列番号19の配列またはその改変体を含み、および
CDRH3は、配列番号24の配列またはその改変体を含み、
各改変体は、5つまでの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目16)
前記重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片は、配列番号45、46および47からなる群から選択される配列を含む、項目15に記載の結合性化合物。
(項目17)
項目13に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片を含み、
CDRH1は、配列番号14の配列またはその改変体を含み、
CDRH2は、配列番号19の配列またはその改変体を含み、
CDRH3は、配列番号24の配列またはその改変体を含み、
各改変体は、5つまでの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目18)
項目14に記載の抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号45、46および47からなる群から選択される配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目19)
配列番号48、49および53からなる群から選択される配列またはその改変体を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号45、46および47からなる群から選択される配列またはその改変体を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物であって、
各改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む結合性化合物。
(項目20)
配列番号48、49および53からなる群から選択される配列から本質的になる抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および配列番号45、46および47からなる群から選択される配列から本質的になる抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目21)
配列番号48、49および53からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の相同性を有する軽鎖可変ドメインおよび
配列番号45、46および47からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の相同性を有する重鎖可変ドメイン
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目22)
交差遮断アッセイで、項目18に記載の結合性化合物とヒトIL−23Rの結合を遮断することができる抗体。
(項目23)
項目17に記載の結合性化合物の軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインの少なくとも1つをコードする単離核酸。
(項目24)
制御配列に作動可能に連結された項目23に記載の核酸を含む発現ベクターであって、宿主細胞に該ベクターをトランスフェクトした際、該制御配列が、該宿主細胞によって認識される発現ベクター。
(項目25)
項目24に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目26)
ポリペプチドを産生するための方法であって、
前記核酸配列が発現される条件下で培地中で項目25に記載の宿主細胞を培養し、それによって、前記軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを含むポリペプチドを産生する工程ならびに
該宿主細胞または培地から該ポリペプチドを回収する工程
を含む方法。
(項目27)
a)前記抗体軽鎖可変ドメイン中のヒト生殖細胞系列軽鎖フレームワーク配列および
b)前記抗体重鎖可変ドメイン中のヒト生殖細胞系列重鎖フレームワーク配列
をさらに含む、項目17に記載の結合性化合物。
(項目28)
γ1ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域をさらに含み、該定常領域改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、項目17に記載の結合性化合物。
(項目29)
γ4ヒト重鎖定常領域またはその改変体を含む重鎖定常領域をさらに含み、該定常領域改変体は、20個までの保存的に改変されたアミノ酸置換を含む、項目17に記載の結合性化合物。
(項目30)
Fab、Fab’、Fab’−SH、Fv、scFv、F(ab’)、およびダイアボディからなる群から選択される抗体断片である、項目17に記載の結合性化合物。
(項目31)
ヒト被験体で免疫応答を抑制する方法であって、IL−23Rの生物学的活性を遮断するのに有効な量で、項目17に記載の抗体またはその抗原結合性断片をその必要のある被験体に投与する工程を含む方法。
(項目32)
前記生物学的活性は炎症性応答である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記被験体は、関節炎、乾癬、および炎症性腸疾患からなる群から選択される障害を有する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記生物学的活性は自己免疫応答である、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記被験体は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、および糖尿病からなる群から選択される障害を有する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記被験体は癌を有し、前記生物学的活性はTh17応答である、項目31に記載の方法。
(項目37)
免疫抑制剤または抗炎症剤を投与する工程をさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目38)
薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて項目17に記載の結合性化合物を含む医薬組成物。
(項目39)
免疫抑制剤または抗炎症剤をさらに含む、項目38に記載の医薬組成物。
(項目40)
交差遮断アッセイで、アクセッション番号PTA−7800の下でATCCに寄託された抗体へのヒトIL−23Rの結合を遮断することができる抗体。
(項目41)
交差遮断アッセイで、アクセッション番号PTA−7801の下でATCCに寄託された抗体へのヒトIL−23Rの結合を遮断することができる抗体。
(項目42)
配列番号53の配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号47の配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
(項目43)
配列番号54の配列を含む抗体軽鎖またはその抗原結合性断片および
配列番号50の配列を含む抗体重鎖またはその抗原結合性断片
を含む、項目42に記載の結合性化合物。
(項目44)
配列番号58の配列を含む抗体軽鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片および
配列番号57の配列を含む抗体重鎖可変ドメインまたはその抗原結合性断片
を含む、ヒトIL−23Rに結合する結合性化合物。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ラット(「r」)、マウス(「m」)、およびヒト化(「hu」)抗ヒトIL−23R抗体クローン重鎖可変ドメイン配列の比較を示す図である。配列は、クローンr41F11、r8B10、hu8B10、r3C11、m20E5、m20D7、hu20D7−a、hu20D7−b、およびhu20D7−cについて提供される。CDRを示す。配列表中の配列識別子に対する相互参照は表4に提供される。
【図2】ラット、マウス、およびヒト化抗ヒトIL−23R抗体クローン軽鎖可変ドメイン配列の比較を示す図である。配列は、クローンr41F11、r8B10、hu8B10、r3C11、m20E5、m20D7、hu20D7−IV、hu20D7−II−a、およびhu20D7−II−bについて提供される。CDRを示す。配列表中の配列識別子に対する相互参照は表4に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に使用されるように、添付される特許請求の範囲を含めて、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」などの単語の単数形は、文脈が明瞭に他を指図しない限り、それらの対応する複数形の言及を含む。下記の表4は、本出願で使用される配列識別子の一覧を提供する。本明細書に引用される参考文献はすべて、あたかも各個々の刊行物、データベースエントリー(たとえばGenbank配列もしくはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許が参照によって組み込まれるように具体的におよび個別に示されるのと同じ程度に参照によって組み込まれる。本明細書での参考文献の引用は、該参考文献が、関連する先行技術であることを承認するものとして意図されたものでもなく、これらの刊行物または文書の内容または日付に関し如何なる承認をなすものでもない。
I.定義
「増殖活性」は、たとえば、正常な細胞分裂ならびに癌、腫瘍、異形成、細胞の形質転換、転移、および新脈管形成を促進するまたはそれに必要であるまたはそれに特異的に関連する活性を包含する。
【0034】
「投与」および「処置」は、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官、または生物学的液体に適用されるように、外因性の医薬品、治療剤、診断用薬、または組成物の、動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官、または生物学的液体に対する接触を指す。「投与」および「処置」は、たとえば、治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法、および実験方法を指すことができる。細胞の処置は、細胞に対する試薬の接触および細胞と接触している液体に対する試薬の接触を包含する。「投与」および「処置」はまた、たとえば、試薬、診断薬、結合性組成物による、または他の細胞による細胞のインビトロおよびエキソビボ(ex vivo)での処置をも意味する。「処置」は、ヒト被験体、獣医学的被験体、または研究被験体に適用されるように、治療処置、予防的または防止的手段、研究への応用、および診断への応用を指す。「処置」は、ヒト被験体、獣医学的被験体、もしくは研究被験体または細胞、組織、もしくは器官に適用されるように、動物被験体、細胞、組織、生理的コンパートメント、または生理的液体との作用物質(agent)の接触を包含する。「細胞の処置」はまた、作用物質が、たとえば液体相またはコロイド相中でIL−23受容体(IL−23R/IL−12Rβ1ヘテロ二量体)と接触する状況だけではなく、アゴニストまたはアンタゴニストが細胞または受容体と接触しない状況をも包含する。
【0035】
本明細書に使用されるように、用語「抗体」は、所望の生物学的活性を呈する抗体の任意の形態を指す。したがって、それは、最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体などを包含する。
【0036】
本明細書に使用されるように、用語「IL−23R結合性断片」、「その結合性断片」、または「その抗原結合性断片」は、IL−23Rに結合するその生物学的活性をなお実質的に保持する、抗体の断片または誘導体を包含する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、IL−23受容体を介してのIL−23シグナル伝達を阻害し、そのような阻害は、本明細書で、「IL−23R阻害活性」と呼ばれる。IL−23Rのアンタゴニストは、IL−23シグナル伝達を阻害する生物学的活性を有するので、そのようなアンタゴニストは、IL−23Rを阻害する、IL−23を阻害する、またはIL−23/IL−23Rの両方を阻害すると表現される(交換可能に)。用語「抗体断片」またはIL−23R結合性断片は、完全長抗体の一部分、一般にその抗原結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、1本鎖抗体分子、たとえばscFv、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。典型的には、結合性断片または誘導体は、そのIL−23R阻害活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、結合性断片または誘導体は、そのIL−23R阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、もしくは100%(またはそれ以上)を保持するが、所望の生物学的効果を発揮するのに十分な親和性を有するあらゆる結合性断片が有用である。IL−23R結合性断片は、特定される場合、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有する改変体を含むことができることもまた意図される。
【0037】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書に使用されるように、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す、つまり、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある自然発生の変異がなければ同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原エピトープに対して向けられる。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、異なるエピトープに対して向けられる(またはそれに特異的な)多数の抗体を典型的には含む。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。たとえば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975年)Nature256:495頁によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいまたは組換えDNA法によって作製されてもよい(たとえば米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClacksonら(1991年)Nature352:624〜628頁およびMarksら(1991年)J.Mol. Biol. 222:581〜597頁に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0038】
本明細書のモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分は、特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性であるが、鎖(複数可)の残りの部分は、他の種に由来するまたは他の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)ならびに所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を具体的には含む。米国特許第4,816,567号;Morrisonら(1984年)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 81:6851〜6855
頁。
【0039】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。いくつかの例では、2個以上のV領域は、ペプチドリンカーを用いて共有結合で結合されて、2価ドメイン抗体を作り出す。2価ドメイン抗体の2個のV領域は、同じまたは異なる抗原を標的にしてもよい。
【0040】
「2価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの例では、2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかしながら、2価抗体は、二重特異性であってもよい(下記を参照されたい)。
【0041】
本明細書に使用されるように、用語「1本鎖Fv」抗体または「scFv」抗体は、抗体のVドメインおよびVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する抗体断片を指す。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VドメインおよびVドメインの間にさらに含む。scFvの検討については、Pluckthun(1994年)THEPHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES、第113巻、RosenburgおよびMoore編Springer-Verlag、NewYork、269〜315頁を参照されたい。
【0042】
本明細書のモノクローナル抗体はまた、ラクダ化単一ドメイン抗体をも含む。たとえばMuyldermansら(2001年)TrendsBiochem. Sci.26:230頁;Reichmannら(1999年)J. Immunol. Methods 231:25頁;国際公開第94/04678号;国際公開第
94/25591号;米国特許第6,005,079号を参照されたい)。一実施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるような改変を有する2個のVドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0043】
本明細書に使用されるように、用語「ダイアボディ」は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同一ポリペプチド鎖(V−VまたはV−V)中に軽鎖可変ドメイン(V)につなぎ合わされた重鎖可変ドメイン(V)を含む。短過ぎるために、同一鎖上の2個のドメインの間で対合させることができないリンカーを使用することによって、ドメインは、他の鎖の相補ドメインと対合することを強いられて、2個の抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、たとえば欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;およびHolligerら(1993年)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 90:6444〜6448頁に、より十分に記載されている。操作された抗体改変体の検討については、一般に、HolligerおよびHudson(2005年)Nat.Biotechnol.23:1126〜1136頁を参照されたい。
【0044】
本明細書に使用されるように、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(たとえばマウス)抗体およびヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分を任意選択で含む。接頭語「hum」、「hu」、または「h」は、ヒト化抗体をげっ歯類親抗体から区別するのに必要な場合、抗体クローンの名称に付加される(これらの同じ名称はまた、文脈に依存して、特定のタンパク質のヒト形態を示し得る)。げっ歯類抗体のヒト化形態は、げっ歯類親抗体と同じCDR配列を一般に含むが、ヒト化抗体の親和性を増加させるために、安定性を増加させるために、または他の理由で、ある種のアミノ酸置換が含まれていてもよい。
【0045】
本発明の抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するために改変(または遮断)Fc領域を有する抗体を含む。たとえば米国特許第5,624,821号;国際公開第2003/086310号;国際公開第2005/120571号;国際公開第2006/0057702号;Presta(2006年)Adv.Drug Delivery Rev. 58:640〜656頁を参照されたい。そのような改変は、診断および治療での可能性のある有益な効果を伴って、免疫系の多様な反応を増強するまたは抑制するために使用することができる。Fc領域の変更は、アミノ酸変化(置換、欠失、および挿入)、糖鎖付加または糖鎖除去、ならびに複数のFcの付加を含む。Fcに対する変更はまた、治療用抗体中の抗体の半減期を変化させることもできる。より長い半減期により、投薬がそれほど頻繁ではなくなり、同時に利便性が増加し、材料の使用量が減少し得る。Presta(2005年)J.AllergyClin. Immuno1.116:731および734〜35頁を参照されたい。
【0046】
本発明の抗体はまた、標的細胞中で、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発する、全エフェクター機能を提供する完全なFc領域を有する抗体、たとえばアイソタイプIgG1の抗体をも含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、細胞の集団からIL−23R陽性細胞を選択的に除去するために投与される。一実施形態では、このIL−23R陽性細胞の除去は、病原性Th17細胞の除去である。そのような病原性T細胞サブセットの除去は、再発/寛解型自己免疫疾患に罹患している被験体で効果を示した場合、寛解の持続をもたらし得る。
【0047】
本発明の抗体はまた、細胞傷害性作用物質または放射性核種などの細胞傷害性ペイロードとコンジュゲートした抗体をも含む。そのような抗体コンジュゲートは、それらの表面上に1L−23Rを発現する細胞を選択的に標的とし、殺滅するために、免疫治療で使用されてもよい。例示的な細胞傷害性作用物質は、リシン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、アメリカヤマゴボウ外毒素、サポリン、ジフテリア毒素、シスプラチン、ドキソルビシン、アブリン毒素、ゲロニン、およびpokeweed抗ウイルスタンパク質を含む。本発明の抗体を用いる免疫治療で使用される例示的な放射性核種は、125I、131I、90Y、67Cu、211At、177Lu、143Pr、および213Biを含む。たとえば、米国特許出願公開第2006/0014225号を参照されたい。
【0048】
用語「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマ中で産生される場合、マウス糖鎖を含有していてもよい。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれマウス免疫グロブリン配列またはラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、ヒトで、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系列配列を有するトランスジェニック動物で、ファージディスプレイ法によって、または他の分子生物学的方法によって生成されてもよい。
【0049】
本明細書に使用されるように、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(たとえば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)、および89〜97(CDRL3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)、および95〜102(CDRH3)(Kabatら(1991年)Sequencesof Proteins of Immunological Interest、第5版PublicHealth Service、NationalInstitutes of Health、Bethesda、Md.)ならびに/または「超可変ループ」からのそれらの残基(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)(ChothiaおよびLesk(1987年)J.Mol.Biol. 196:901〜917頁)を含む。本明細書に使用される
ように、用語「フレームワーク」または「FR」残基は、CDR残基として本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。残基の上記番号付けは、Kabat番号体系に関するものであり、添付の配列表の配列番号付けと詳細には必ずしも対応しない。CDRおよびフレームワーク領域の両方の配列改変体は、企図され、「XbbZ」として表わされてもよく、位置「bb」のアミノ酸「X」は、アミノ酸「Z」と交換され、XおよびZは、3文字(tiple)または単一文字のアミノ酸コードであり、位置番号「bb」は、典型的には、配列表に開示される特定の配列の番号付けに関して定義される。
【0050】
「結合性化合物(binding compound)」は、標的に結合することができる分子、小分子、高分子、ポリペプチド、抗体またはその断片もしくは類似体、または可溶性受容体を指す。「結合性化合物」はまた、標的に結合することができる、分子の複合体、たとえば非共有結合複合体、イオン化分子、共有結合でまたは非共有結合で改変された分子、たとえばリン酸化、アシル化、架橋、環化、または限定切断で改変された分子を指すものであってもよい。抗体に関して使用される場合、用語「結合性化合物」は、抗体およびその抗原結合性断片の両方を指す。「結合(binding)」は、結合性化合物の標的との関連性を指し、その関連性は、結合性化合物が溶液中に溶解するまたは懸濁することができる場合、結合性化合物の通常のブラウン運動の低下をもたらす。「結合性組成物」は、安定剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒、または添加剤と組み合わせた、標的に結合することができる分子、たとえば結合性化合物を指す。
【0051】
「保存的修飾改変体」または「保存的置換」は、当業者に公知のアミノ酸の置換を指し、多くの場合、ポリペプチドの必須領域中でさえ、結果として生じる分子の生物学的活性を変化させずに作製されてもよい。そのような例示的な置換は、好ましくは、以下の通り表1に記載の置換に従って成される。
【0052】
【表1−1】

【0053】
【表1−2】

当業者らは、一般に、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化させ得ないことを認識する。たとえばWatsonら(1987年)MolecularBiology of the Gene、The Benjamin/CummingsPub. Co.、224頁(第4版)を参照されたい。
【0054】
明細書および特許請求の範囲の全体にわたって使用されるような語句「〜から本質的になる(consists essentially of)」または「〜から本質的になる(consist essentially of)」もしくは「〜から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、任意の記載される要素または要素の群の包含および特定された投薬計画、方法、または組成物の基本的なまたは新規な特性を実質的に変化させない、記載される要素と類似のまたはそれと異なる性質を持つ他の要素の任意選択の包含を示す。非限定的な例として、記載されるアミノ酸配列から本質的になる結合性化合物はまた、結合性化合物の特性に実質的に影響しない1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含む、1つまたは複数のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0055】
「有効量」は、病状(medical condition)の症候または徴候を改善するまたは防止するのに十分な量を包含する。そのような有効量は、そのような症状または徴候を必ずしも完全に改善するまたは防止する必要はない。有効量はまた、診断を可能にするまたは容易にするのに十分な量をも意味する。特定の患者または獣医学的被験体にとっての有効量は、処置されている状態、患者の全体的な健康状態、投与の方法の経路および用量、ならびに副作用(side affect)の重症度などの要因に依存して変動してもよい。たとえば米国特許第5,888,530号を参照されたい。有効量は、著しい副作用(side effect)または毒性作用を回避する最大用量または投薬プロトコルとすることができる。その効果は、100%を、正常被験体によって示される診断パラメーターとして定義する場合、少なくとも5%、一般に少なくとも10%、より一般に少なくとも20%、最も一般に少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、および最も理想的には少なくとも90%、診断の尺度または診断パラメーターの改善をもたらす。たとえばMaynardら(1996年
)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice、InterpharmPress、Boca Raton、FL;Dent(2001年)GoodLaboratory and Good Clinical Practice、UrchPubl.、London、UKを参照されたい。
【0056】
「免疫状態」または「免疫障害」は、たとえば、病的炎症、炎症性障害、および自己免疫障害または自己免疫疾患を包含する。「免疫状態」はまた、免疫系による根絶に抵抗する感染症、腫瘍、ならびに癌を含む感染症、持続性感染症、ならびに癌、腫瘍、および新脈管形成などの増殖状態を指す。「癌性状態」は、たとえば、癌、癌細胞、腫瘍、新脈管形成、および異形成などの前癌性状態を含む。
【0057】
「炎症性障害」は、その病理が、全体的にまたは部分的に、たとえば、免疫系の細胞の数の変化、移動の速度の変化、または活性化の変化から生じる障害または病的状態を意味する。免疫系の細胞は、たとえば、T細胞、B細胞、単球もしくはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ミクログリア、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫に特異的に関連する他の任意の細胞、たとえば、サイトカイン産生内皮細胞もしくはサイトカイン産生上皮細胞を含む。
【0058】
「IL−17産生細胞」は、T17細胞と呼ばれる、古典的TH1型T細胞または古典的TH2型T細胞ではないT細胞を意味する。T17細胞は、CuaおよびKastelein(2006年)Nat.Immunol. 7:557〜559頁;TatoおよびO'Shea(2006年)Nature441:166〜168頁;IwakuraおよびIshigame(2006年)J.Clin. Invest. 116:1218〜1222頁により詳細に論じられる。「IL−17産生細胞」はまた米国
特許出願公開第2004/0219150号の表10Bの遺伝子またはポリペプチド(たとえばマイトジェン応答Pタンパク質、ケモカインリガンド2、インターロイキン−17(IL−17)、RAR関連転写因子、および/またはサイトカインシグナル伝達抑制因子3)を発現するT細胞を意味し、IL−23アゴニストによる処置を用いる発現は、IL−12アゴニストを用いる処置よりも大きく、ここで「よりも大きい」は、以下のように定義される。IL−23アゴニストを用いる発現は、通常、IL−12処置を用いるよりも、少なくとも5倍大きい、典型的には少なくとも10倍大きい、より典型的には少なくとも15倍大きい、最も典型的には少なくとも20倍大きい、好ましくは少なくとも25倍大きい、および最も好ましくは少なくとも30倍大きい。発現は、たとえば、実質的に純粋なIL−17産生細胞の集団の処置で測定することができる。Th17応答は、Th17細胞の活性および/または増殖が、Th1応答の抑制と典型的には共役して増強される免疫応答である。
【0059】
その上、「IL−17産生細胞」は、上記に定義されるように、細胞発生または細胞分化の経路で、IL−17産生細胞への分化に傾倒する前駆細胞(progenitor cell)または前駆細胞(precursor cell)を含む。IL−17産生細胞に至る前駆細胞(progenitor cell)または前駆細胞(precursor cell)は、流入領域リンパ節(DLN)中に見つけることができる。加えて、「IL−17産生細胞」は、たとえばホルボールエステル、イオノフォア、および/または発癌物質によってたとえば活性化された、さらに分化された、保存された、凍結された、乾燥された、不活性化された、たとえばアポトーシス、タンパク質分解、もしくは脂質酸化によって部分的に分解された、またはたとえば組換え技術によって改変された上記に定義されるようなIL−17産生細胞を包含する。
【0060】
本明細書に使用されるように、用語「単離核酸分子」は、単離核酸分子が抗体核酸の天然源(natural source)中に通常付随している少なくとも1つの混入核酸分子から同定され、分離される核酸分子を指す。単離核酸分子は、自然に見つけられる形態または状況以外のものである。したがって、単離核酸分子は、天然細胞中に存在する核酸分子と区別される。しかしながら、単離核酸分子は、たとえば、核酸分子が、天然細胞の位置と異なる染色体位置にある、抗体を通常発現する細胞中に含有される核酸分子を含む。
【0061】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物中で作動可能に連結されたコード配列の発現に関与するDNA配列を指す。原核生物に適切な制御配列は、たとえば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを用いることが知られている。
【0062】
核酸は、他の核酸配列との機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。たとえば、プレ配列もしくは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結される、プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される、またはリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように位置する場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されているDNA配列が隣接することを意味し、分泌リーダーの場合には、隣接し、リーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接する必要はない。連結は、好都合な制限部位でライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドのアダプターまたはリンカーが、従来の方式に従って使用される。
【0063】
本明細書に使用されるように、「細胞」、「細胞系列」、および「細胞培養」という表現は、交換可能に使用され、そのような名称はすべて子孫を含む。したがって、単語「形質転換体」および「形質転換細胞」は、初代被験体細胞および植え継ぎ数に関係なくそれらに由来する培養物を包含する。計画的なまたは偶発性の変異のために、すべての子孫はDNA含有量が正確に同一であるとは限らないこともまた理解される。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が包含される。個別の名称が表わされる場合、それは文脈から明らかとなる。
【0064】
本明細書に使用されるように、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、たとえば米国特許第4,683,195号に記載されるように、核酸、RNA、および/またはDNAの微量の特定片が増幅される手順または技術を指す。一般に、興味のある領域の末端からの配列情報またはそれ以降の配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができるために、入手可能である必要があり、これらのプライマーは、増幅されることとなる鋳型の反対の鎖に配列が同一であるまたは類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅物質の末端と一致し得る。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などを増幅するために使用することができる。一般にMullisら(1987年)ColdSpring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263頁;Erlich編、(1989年)PCRTECHNOLOGY(StocktonPress、N.Y.)を参照されたい。本
明細書に使用されるように、PCRは、核酸の特定片を増幅するまたは生成するためのプライマーとして知られている核酸および核酸ポリメラーゼの使用を含む、核酸試験サンプルを増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の一例とみなすが、唯一の例とはみなさない。
【0065】
本明細書に使用されるように、用語「生殖細胞系列配列」は、げっ歯類(たとえばマウス)生殖細胞系列配列およびヒト生殖細胞系列配列を含む非再配列免疫グロブリンDNA配列の配列を指す。非再配列免疫グロブリンDNAの任意の適切な供給源が使用されてもよい。ヒト生殖細胞系列配列は、たとえば、米国National Institutes of HealthのNational Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseasesのウェブサイト上のJOINSOLVER(登録商標)生殖細胞系列データベースから得られてもよい。マウス生殖細胞系列配列は、たとえばGiudicelliら(2005年)NucleicAcids Res. 33:D256〜D261頁に記載されるように得られてもよい。
【0066】
IL−23/IL−23R活性の阻害の程度を検査するために、たとえば、所与の、たとえばタンパク質、遺伝子、細胞、または生物を含むサンプルまたはアッセイは、可能な活性化作用物質または阻害作用物質を用いて処置し、作用物質なしの対照サンプルと比較される。対照サンプル、つまり作用物質を用いて処置されていないサンプルに100%の相対的活性値を割り当てる。阻害は、対照と比較した活性値が、約90%以下、典型的には85%以下、より典型的には80%以下、最も典型的には75%以下、一般に70%以下、より一般に65%以下、最も一般に60%以下、典型的には55%以下、一般に50%以下、より一般に45%以下、最も一般に40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは25%以下、および最も好ましくは20%未満である場合、達成される。活性化は、対照と比較した活性値が、約110%、一般に少なくとも120%、より一般に少なくとも140%、より一般に少なくとも160%、多くの場合、少なくとも180%、より多くの場合、少なくとも2倍、最も多くの場合、少なくとも2.5倍、一般に少なくとも5倍、より一般に少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍、および最も好ましくは40倍より高い場合、達成される。
【0067】
活性化または阻害の終点(endpoint)は、以下のようにモニターすることができる。たとえば細胞、生理的液体、組織、器官、および動物またはヒト被験体の、処置に対する活性化、阻害、および応答は、終点によってモニターすることができる。終点は、サイトカイン、毒性酸素、またはプロテアーゼの放出などの、所定の数量またはパーセンテージのたとえば炎症、腫瘍原性、または細胞脱顆粒もしくは細胞分泌の兆候を含んでいてもよい。終点は、たとえば、所定の数量のイオンフラックス(ion flux)または輸送、細胞移動、細胞接着、細胞増殖、転移の可能性、細胞分化、および表現型の変化、たとえば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関する遺伝子の発現の変化を含んでいてもよい(たとえばKnight(2000年)Ann.Clin. Lab. Sci. 30
:145〜158頁;HoodおよびCheresh(2002年)NatureRev. Cancer 2:91〜100頁;Timmeら(2003年)Curr.Drug Targets 4:251〜261頁;RobbinsおよびItzkowitz(2002年)Med.Clin. North Am. 86:1467〜1495頁;GradyおよびMarkowitz(2002年)Annu.Rev. Genomics Hum.Genet. 3:101〜128頁;Bauerら(2001年)Glia 36:235〜243頁;StanimirovicおよびSatoh(2000年)BrainPathol.10:113〜126頁を参照されたい)。
【0068】
阻害の終点は、一般に対照の75%以下、好ましくは、対照の50%以下、より好ましくは、対照の25%以下、および最も好ましくは、対照の10%以下である。一般に、活性化の終点は、少なくとも対照の150%、好ましくは、少なくとも対照の2倍、より好ましくは、少なくとも対照の4倍、および最も好ましくは、少なくとも対照の10倍である。
【0069】
「小分子」は、10kDa未満、典型的には2kDa未満、および好ましくは、1kDa未満である分子量を有する分子として定義される。小分子は、無機分子、有機分子、無機成分を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物質、および抗体模倣物質を含むが、これらに限定されない。治療剤として、小分子は、大分子よりも細胞に対してより透過性があり、分解に対してより感受性が少なく、および免疫応答を誘発する傾向がより少なくあり得る。抗体およびサイトカインのペプチド模倣物質などの小分子ならびに小分子トキシンが記載されている。たとえばCassetら(2003年)Biochem.Biophys. Res. Commun. 307:198〜205頁;Muyldermans(2001年)J.Biotechnol. 74:277〜302頁;Li(2000年)Nat.Biotechnol. 18:1251〜1256頁;Apostolopoulosら(2002年)Curr.Med. Chem. 9:411〜420頁;Monfardiniら(2002年)Curr.Pharm. Des. 8:2185〜2199頁;Dominguesら(1999年)Nat.Struct. Biol. 6:652〜656頁;SatoおよびSone(2003年)Biochem.J. 371:603〜608頁;米国特許第6,326,482号を参照されたい。
【0070】
「特異的に」または「選択的に」結合するは、リガンド/受容体、抗体/抗原、または他の結合対を指す場合、タンパク質および他の生物製剤の不均質な集団中のタンパク質の存在の決定因である結合反応を示す。したがって、指定された条件下で、特定されたリガンドは、特定の受容体に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に相当な量で結合しない。本明細書に使用されるように、抗体が、IL−23Rの配列を含むポリペプチドに結合するが、IL−23Rの配列を欠くタンパク質に結合しない場合、抗体は、所与の配列(この場合、IL−23R)を含むポリペプチドに特異的に結合すると表現される。たとえば、IL−23Rを含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、IL−23RのFLAG(登録商標)タグ付き形態に結合してもよいが、他のFLAG(登録商標)タグ付きタンパク質に結合しない。
【0071】
企図される方法の抗体または抗体の抗原結合部位に由来する結合性組成物は、無関係な抗原との親和性よりも、少なくとも2倍大きい、好ましくは、少なくとも10倍大きい、より好ましくは、少なくとも20倍大きい、および最も好ましくは、少なくとも100倍大きい親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、たとえば、スキャチャード解析(Scatchard analysis)によって決定されるように、約10リットル/モルよりも大きな親和性を有する。Munsenら(1980年)Analyt. Biochem. 107:220〜239頁。
【0072】
本明細書に使用されるように、用語「免疫調節剤」は、免疫応答を抑制するまたは調整する天然作用物質または合成作用物質を指す。免疫応答は、液性応答または細胞性応答であり得る。免疫調節剤は、免疫抑制剤または抗炎症剤を包含する。
【0073】
本明細書に使用されるような「免疫抑制剤」、「免疫抑制薬」、または「免疫抑制物質」は、免疫系の活性を阻害するまたは防止するために免疫抑制治療で使用される治療剤である。臨床的に、それらは、移植器官および移植組織(たとえば骨髄、心臓、腎臓、肝臓)の拒絶を防止するためにならびに/または自己免疫疾患もしくは自己免疫性が起源である可能性がすこぶる高い疾患(たとえば関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症)の処置で使用される。免疫抑制薬は、4つの群に分類することができる:グルココルチコイド細胞増殖抑制剤;抗体(生物学的応答調節物質またはDMARDを含む);イムノフィリンに作用する薬剤;増殖障害の処置で使用される、既知の化学療法剤を含む他の薬剤。多発性硬化症については、特に、本発明の抗体は、コパキソン(copaxone)として知られている、新しいクラスのミエリン結合性タンパク質様治療剤と共に投与することができる。
【0074】
「抗炎症剤」または「抗炎症薬」は、ステロイド性治療剤および非ステロイド性治療剤の両方を表わすために使用される。コルチコステロイドとしても知られているステロイドは、副腎によって天然に産生されるホルモンであるコルチゾールに非常によく類似している薬剤である。ステロイドは、全身性血管炎(血管の炎症)および筋炎(筋肉の炎症)などのある種の炎症状態の主な処置として使用される。ステロイドはまた、関節リウマチ(体の両側の関節に生じる慢性炎症性関節炎);全身性エリテマトーデス(異常な免疫系機能によって引き起こされる全身性疾患);シェーグレン症候群(眼乾燥症および口腔乾燥症を引き起こす慢性の障害)などの炎症状態を処置するために選択的に使用されてもよい。
【0075】
NSAIDと一般に略される非ステロイド性抗炎症薬は、鎮痛効果、解熱効果、および抗炎症効果を有する薬剤であり、それらは、痛み、発熱、および炎症を低下させる。用語「非ステロイド性」は、これらの薬剤とステロイドを区別するために使用され、これらは(広範囲の他の効果の中で)、類似のエイコサノイド抑制、抗炎症作用を有する。NSAIDは、以下の状態の症状の軽減のために一般に必要とされる:関節リウマチ;骨関節炎;炎症性関節症(たとえば強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群);急性痛風;月経困難症;転移部骨痛;頭痛および片頭痛;術後痛;炎症および組織傷害のための軽度から中程度の痛み;発熱;ならびに腎仙痛。NSAIDは、サリチル酸塩、アリールアルカン酸(arlyalknoic acid)、2−アリールプロピオン酸(プロフェン)、N−アリールアントラニル酸(フェナム酸)、オキシカム、コキシブ、およびスルホンアニリドを含む。
II.総論
本発明は、炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害を処置するための操作された抗IL−23R抗体およびその使用を提供する。
【0076】
多くのサイトカインは、神経障害の病理または回復での役割を有する。IL−6、IL−17、インターフェロン−ガンマ(IFNガンマ、IFN−γ)、および顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)は、多発性硬化症と関連してきた。Matuseviciusら(1999年)MultipleSclerosis 5:101〜104頁;Lockら(2002年)NatureMed. 8:500〜508頁。IL−1アルファ、IL−1ベータ、および形質転換成長因子ベータ1(TGF−ベータ1)は、ALS、パーキンソン病、およびアルツハイマー病で役割を果たす。Hoozemansら(2001年)Exp.Gerontol.36:559〜570頁;GriffinおよびMrak(2002年)J. Leukocyte Biol. 72:233〜238頁;Ilzeckaら(2002年)Cytokine20:239〜243頁。TNF−アルファ、IL−1ベータ、IL−6、IL−8、インターフェロン−ガンマ、およびIL−17は、脳虚血に対する応答を調整するようにみえる。たとえばKostulasら(1999年)Stroke30:2174〜2179頁;Liら(2001年)J.Neuroimmunol. 116:5〜14頁を参照されたい。血管内皮細胞成長因子(VEGF)はALSと関連する。ClevelandおよびRothstein(2001年)Nature2:806〜819頁。
【0077】
炎症性腸障害、たとえばクローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、および過敏性腸症候群は、免疫系の細胞およびサイトカインによって媒介される。たとえば、潰瘍性大腸炎は、IL−5、IL−13、および形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)の増加と関連するが、クローン病は、IL−12およびIFNγの増加と関連する。IL−17発現もまた、クローン病および潰瘍性大腸炎を増加させ得る。たとえばPodolsky(2002年)NewEngl. J. Med. 347:417〜429頁;BoumaおよびStrober(2003年)Nat.Rev. Immunol. 3:521〜533頁;Bhanら(1999年)Immunol.Rev. 169:195〜207頁;Hanauer(1996年)NewEngl. J. Med. 334:841〜848頁;Green(2003年)TheLancet 362:383〜391頁;McManus(2003年)NewEngl. J. Med. 348:2573〜2574頁;HorwitzおよびFisher(2001年)NewEngl. J. Med. 344:1846〜1850頁;Andohら(2002年)Int.J. Mol. Med. 10:631〜
634頁;Nielsenら(2003年)Scand. J. Gastroenterol. 38:180〜185頁;Fujinoら(2003年)Gut52:65〜70頁を参照されたい。
【0078】
IL−23受容体は、IL−23RサブユニットおよびIL−12Rβ1サブユニットのヘテロ二量体複合体である。Parhamら(2000年)J. Immunol.168:5699頁を参照されたい。IL−12受容体は、IL−12Rβ1サブユニットおよびIL−12Rβ2サブユニットの複合体である。Presleyら(1996年)Proc.Nat'lAcad. Sci. USA 93:14002頁を参照されたい。IL−23Rは、重大な遺伝因子(genetic factor)として炎症性腸障害、クローン病および潰瘍性大腸炎に関係してきた。Duerrら(2006年)Science314:1461頁。全ゲノム関連研究により、IL−23Rの遺伝子は、まれなコード改変体(Arg381Gln)を有するクローン病と非常に関連し、疾患から強く保護することが分かった。この遺伝的関連性は、先の生物学的知見を確証するものであり(Yenら(2006年)J.Clin.Investigation 116:1218頁)、IL−23およびその受容体(IL−23Rを含む)は、IBDの処置に近づくための新しい治療剤の有望な標的であることを示唆する。
【0079】
皮膚、関節、CNSの炎症疾患および増殖障害は、類似の免疫応答を誘発し、したがって、IL−23/IL−23R遮断は、全身性感染症と戦うための宿主の能力を含まずに、これらの免疫媒介性炎症性障害の阻害をもたらすはずである。IL−23/IL−23Rの拮抗は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、およびアトピー性皮膚炎に関連する炎症を軽減するはずである。IL−23/IL−23R阻害剤の使用はまた、増殖障害、たとえば癌、自己免疫障害、たとえば多発性硬化症、I型糖尿病、およびSLEの阻害をもたらす。これらの多様な障害におけるIL−23の記載は、以下の公開されたPCT出願に見つけることができる:国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号。IL−23/IL−23R阻害剤はまた細菌感染症、マイコバクテリア感染症、ウイルス感染症、および真菌感染症などの慢性感染症を含む感染症の処置での使用を見い出し得る。
【0080】
IL−23のp19サブユニットは、ヘリカルサイトカインのIL−6ファミリーのメンバーである。p19サブユニットは、3つのサイトカイン受容体サブユニットと相互作用して、十分な(competent)シグナル伝達複合体を形成する。細胞中で発現されると、p19サブユニットは、第1に、それがIL−12と共有するp40サブユニットと複合体を形成する。上記に示されるように、p19p40複合体は、ヘテロ二量体タンパク質として細胞から分泌され、IL−23と呼ばれる(たとえばOppmannら、前掲を
参照されたい)。IL−23シグナルを伝達するために必要とされる細胞受容体複合体は、サイトカインのIL−6/IL−12ファミリーのトール(tall)シグナル伝達受容体サブユニットの2つのメンバー、IL−23特異的IL−23R(たとえばParhamら、前掲を参照されたい)およびIL−12と共有されるIL−12Rβ1サブユニットからなる。ヒトIL−23Rのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AAM44229(配列番号41)に見つけられ、mRNAの配列は、GenBankアクセッション番号NM_144701に見つけられる。ヒトIL−23R遺伝子は、NCBI遺伝子ID番号149233に記載されている。マウス(mus musculus)IL−23Rのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AAM44230に見つけられ、配列番号42に提供される。ヒトおよびマウスの両方のIL−23R配列のアミノ酸残基1〜23は、IL−23Rの成熟形態に存在しないシグナル配列を表わす。ヒトおよびマウス(mus musculus)のIL−12Rβ1のアミノ酸配列は、それぞれ、GenBankアクセッション番号NP_005526およびQ60837に見つけられ、配列番号43および44に提供される。アミノ酸残基1〜24および1〜19は、ヒトおよびマウスのIL−12Rβ1のシグナル配列をそれぞれ表わす。
【0081】
IL−12およびIL−23の天然の役割を比較すると、IL−12の阻害またはIL−23およびIL−12の両方の阻害と比較した場合、IL−23を標的とした阻害において有害な副作用の発生がより少ないことを示唆する。Bowmanら(2006年)Curr.Opin. Infect. Dis. 19:245頁。IL−12は、全身性Th1媒介性免疫応答の開始に決定的であるが、IL−23(IL−6およびTNF−αと共に)は、Th−17細胞の促進および維持を担うと考えられる。そのようなTh−17細胞は、肺または消化管の粘膜関門の破れなどの破局的な傷害に対する応答ならびに致命的な病原体K.pneumoniaeおよびC.rodentiumへの結果として生じる曝露に関与すると考えられる。そのような破局的な傷害は、ほぼ確実に、大量の好中球流入の形態での即時の免疫応答を必要とする。CuaおよびKastelein(2006年)NatureImmunology7:557頁を参照されたい。そのような破局的な傷害および感染症は、現代社会で比較的まれであり、それらが生じた場合、抗生物質を用いて処置することができるので、このTh−17「中心の選択肢」は、ヒト進化でのより初期ほど生存にとって重大ではないといい得る。その天然の活性は、現代社会でほとんど重要ではないので、これは、IL−23/IL−23受容体シグナル伝達の破壊が比較的小さな副作用プロファイルを有し得ることを示唆する。McKenzieら(2006年)TrendsImmunol.27:17頁を参照されたい。
【0082】
IL−12受容体およびIL−23受容体の別個のサブユニット組成物は、IL−12受容体ではなく、IL−23受容体のみを標的とする治療を設計することを可能にする。IL−23p19またはIL−23Rに結合し、およびIL−23p19またはIL−23Rの活性を阻害する化合物は、遊離状態でまたはそれらの各ヘテロ二量体複合体の成分として、IL−12ではなくIL−23を阻害する。IL−12ではなくIL−23に存在する場合に、IL−12p40に結合することができる化合物も存在し得、またはIL−12受容体ではなくIL−23受容体に存在する場合に、IL−12Rβ1に結合し、阻害する化合物もまた存在し得る。そのような特異的な結合性作用物質もまた、IL−12活性ではなくIL−23活性を阻害する。IL−23/IL−23R特異的作用物質は、IL−12もまた阻害する作用物質よりも安全である(つまり、より小さい副作用のプロファイルを有する)と予想される。
【0083】
IL−12の阻害の初期の研究の多くは、IL−12p40の阻害を伴った。これらの実験は、IL−12の阻害だけではなくIL−23の阻害をも伴い、実際に、これらの実験の多くにおける効果は、IL−23阻害の結果であったことがその後認められた。IL−12の阻害によって改善することができる、病原性のTh1応答によって引き起こされると以前考えられていた多くの障害は、その代りに、IL−23の阻害によって改善されるTh17応答によって引き起こされることが示された。Yenら(2006年)J.Clin. Invest. 116:1310頁;IwakuraおよびIshingame(2006年)J.Clin. Invest. 116:1218頁。
【0084】
IL−23受容体、および具体的にはIL−23Rは、治療的介入のための魅力的な標的を表わす。IL−23Rは、T17細胞の表面上に発現され、本発明の抗体は、具体的にはそのT細胞サブセットに、細胞傷害性ペイロードを送達するために使用されてもよい。新しい標的組織への浸潤および疾患(たとえばCNSのMS)の誘発に先立って、細胞は標的とされ、殺滅され得るので、そのような細胞特異的免疫治療は、それらが誘発される組織(たとえば消化管、肺、または皮膚)からCNSなどの他の組織にT17細胞が移動する障害の処置に特に適合する。Chenら(2006年)J.Clin. Invest. 116:1317頁を参照されたい。
【0085】
しかしながら、他の実施形態では、IL−23Rを発現する細胞における細胞傷害性効果を好ましくは回避し得、その代りに、IL−23シグナル伝達を単純に遮断してよい。たとえば腫瘍の処置の場合には(たとえば国際公開第2004/081190号を参照されたい)、好ましくはTh0細胞中でIL−23シグナル伝達を遮断し、したがって、細胞の殺滅を誘発することなくTh17形成を遮断し得る。次いで、Th0細胞は、IL−12によって誘発されるTh1系列の細胞産生に利用可能になる、次いで、これらは、有益な効果を伴って、腫瘍細胞の生産的な免疫監視に参加することができる。本発明の組成物および方法は、どちらが特定の治療的使用にとって好ましいアプローチであるかに依存して、IL−23R発現細胞の殺滅を増強してもよいまたは増強しなくてもよい結合性化合物(抗体)を提供することによる両方のシナリオを包含する。いくつかの実施形態では、サブクラスIgG以外のIgG抗体またはFabもしくは他の抗体断片などの、エフェクター機能を欠く抗体またはその断片が使用されてもよい。
【0086】
IL−23Rの阻害は、IL−23シグナル伝達を破壊するが、IL−12シグナル伝達を破壊しないので、IL−23Rを標的とすることは、ヘテロ二量体IL−23受容体の他方のサブユニットであるIL−12Rβ1を標的とすることに対して利点を有する。IL−12Rβ1の阻害は、IL−23およびIL−12の両方のシグナル伝達を破壊する。一般的な原理では、より厳密な標的治療は、好ましく、この特定の場合では、IL−12の破壊は、ある感染症に抵抗し、腫瘍監視を維持するための被験体の能力を低下させるということを予想するのに十分な理由がある。
【0087】
その2つの治療的アプローチが、共に、その受容体を通してのIL−23シグナル伝達を破壊することによって作用するという事実にも関わらず、IL−23Rを標的とすることは、IL−23p19を標的とすることに対して利点を有する。IL−23Rは、IL−23p19よりも著しく低いレベルで存在し、IL−23Rを遮断するのに必要な抗IL−23R抗体の量は、相応して、被験体でp19の活性を遮断するために必要とされる量よりも低いことが予想される。抗体の量のこの低下は、処置の費用の低減、送達される薬剤の濃度および/または容量の減少、ならびに投与頻度の低減を容易にするなどのいくつかの利点を提供し得る。加えて、IL−23p19を標的とすることは、IL−23およびIL−12の両方のサブユニットであり、p40ホモ二量体形態でも存在するように現れるIL−12p40の循環レベルを変化させ得る。IL−12および/またはIL−12p40ホモ二量体のレベルの変化の潜在的な生物学的作用は、十分に理解されていないので、可溶性サイトカイン(IL−23)を標的とすることを伴わず、その代りに、IL−23特異的受容体サブユニットIL−23Rを標的とする方法でIL−23シグナル伝達を遮断することは、好ましい。
III.IL−23R特異抗体の生成
モノクローナル抗体を生成するための任意の適切な方法が使用されてもよい。たとえば、IL−23Rまたはその断片を用いてレシピエントは免疫されてもよい。免疫の任意の適切な方法を使用することができる。そのような方法は、アジュバント、他の免疫刺激剤、繰り返しの追加免疫、および1つまたは複数の免疫経路の使用を含むことができる。IL−23Rの任意の適切な供給源は、本明細書に開示される組成物および方法の、非ヒト抗体の生成のための免疫原として使用することができる。そのような形態は、当技術分野で知られている組換え手段、合成手段、化学的手段、または酵素分解手段を通して生成される全タンパク質、ペプチド(複数可)、ならびにエピトープを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、免疫原は、IL−23Rの細胞外部分を含む。IL−23Rのドメイン構造は、米国特許第6,756,481号に論じられ、この中で細胞外ドメインは、本出願の配列番号41の残基24〜351に対応する、ヒトIL−23Rの成熟形態のアミノ酸1〜328を含むことが予測される。国際公開第2004/052157号もまた参照されたい。細胞外ドメインは、免疫原性ポリペプチド構築物の設計などの提唱される目的に依存して別々に定義されてもよい。
【0088】
抗原の任意の形態は、生物学的活性抗体を生成するのに十分な抗体を生成するために使用することができる。したがって、誘発性抗原は、単独のまたは当技術分野で知られている1つもしくは複数の免疫原性増強剤と組み合わせた単一のエピトープ、複数のエピトープ、または全タンパク質であってもよい。誘発性抗原は、単離完全長タンパク質、細胞表面タンパク質(たとえば、抗原の少なくとも一部分をトランスフェクトした細胞を用いて免疫する)、または可溶性タンパク質(たとえば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみを用いて免疫する)であってもよい。抗原は、遺伝的改変細胞中で産生されてもよい。抗原をコードするDNAは、ゲノムDNAまたは非ゲノムDNA(たとえばcDNA)であってもよく、細胞外ドメインの少なくとも1つの一部分をコードする。本明細書に使用されるように、用語「部分」は、適宜に、興味のある抗原の免疫原性エピトープを成すための最小数のアミノ酸または核酸を指す。アデノウイルスベクター、プラスミド、および陽イオン性脂質などの非ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない、興味のある細胞の形質転換に適切な任意の遺伝子ベクターが用いられてもよい。
【0089】
任意の適切な方法は、IL−23/IL−23Rを阻害するための所望の生物学的特性を有する抗体を誘発するために使用することができる。マウス、ラット、他のげっ歯類、ヒト、他の霊長類などの多様な哺乳類宿主からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技術の説明は、たとえばStitesら(編)BASICAND CLINICAL IMMUNOLOGY(第4版)Lange MedicalPublications、Los Altos、CA、およびそこに引用される参考文献;HarlowおよびLane(1988年)ANTIBODIES:ALABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986年)MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLESANDPRACTICE(第2版)Academic Press、New York、NY.に見出され得る
。したがって、モノクローナル抗体は、当業者によく知られている種々の技術によって得られてもよい。典型的には、所望の抗原を用いて免疫された動物からの脾臓細胞は、骨髄腫細胞との融合によって通例、不死化される。KohlerおよびMilstein(1976年)Eur.J.Immunol. 6:511〜519頁を参照されたい。不死化の代替方法は、エプスタイン
バーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスを用いる形質転換または当技術分野で知られている他の方法を含む。たとえばDoyleら(1994年版および定期的な増刊)CELLANDTISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES、John Wiley and Sons、New York、NYを
参照されたい。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生のためにスクリーニングされ、そのような細胞によって産生されたモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含む多様な技術によって増強されてもよい。あるいは、たとえば、Huseら(1989年)Science246:1275〜1281頁によって概要を述べられる一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片をコードするDNA配列を単離してもよい。
【0090】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクター中の抗体のライブラリーの選択を含む。たとえばHuseら前掲;およびWardら(1989年)Nature 341:544〜546頁を参照されたい。キメラ抗体またはヒト化抗体を含む、本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変を伴ってまたは改変を伴わずに使用されてもよい。ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合でまたは非共有結合のいずれかで結合することによって標識されることが多い。種々様々な標識およびコンジュゲーション技術が知られており、科学文献および特許文献の両者で広範囲に報告されている。適切な標識は、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光成分、化学発光成分、磁気粒子などを含む。そのような標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号を含む。さらに、組換え免疫グロブリンは、産生されてもよく、Cabilly 米国特許第4,816,567号;
およびQueenら(1989年)Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029〜10033
頁を参照されたい;またはトランスジェニックマウス中で作製されてもよく、Mendezら(1997年)NatureGenetics 15:146〜156頁を参照されたい。AbgenixおよびMedarexの技術もまた参照されたい。
【0091】
IL−23Rの所定の断片に対する抗体または結合性組成物は、ポリペプチド、断片、ペプチド、またはエピトープと担体タンパク質とのコンジュゲートを用いる動物の免疫によって出現させることができる。モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。これらの抗体は、正常IL−23Rまたは欠損IL−23Rに対する結合性についてスクリーニングすることができる。これらのモノクローナル抗体は、一般にELISAまたはBlAcore(登録商標) label−free interaction analysis systemによって決定される、一般に少なくとも約1μM、より一般に少なくとも約300nM、30nM、10nM、3nM、1nM、300pM、100pM、30pM、10pM、1pM、またはそれよりも良好なKdで結合する。適切な非ヒト抗体はまた、以下の実施例5、6、および7に記載される生物学的アッセイを使用して同定されてもよい。
【0092】
抗体8B10(ラットIgG2aカッパ)および20D7(マウスIgG1カッパ)を発現するハイブリドーマは、それぞれアクセッション番号PTA−7800およびPTA−7801の下で、2006年8月17日に、American Type Culture Collection(ATCC−Manassas、Virginia、USA)にブダペスト条約に従って寄託された。
IV.IL−23R特異抗体のヒト化
任意の適切な非ヒト抗体は、超可変領域のための供給源として使用することができる。非ヒト抗体の供給源は、マウス(たとえばMus musculus)、ラット(たとえばRattus norvegicus)、ウサギ目(ウサギを含む)、ウシ、および霊長類を含むが、これらに限定されない。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、および能力(capacity)を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基と交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基と交換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見つけられない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、所望の生物学的活性の抗体性能をさらに改善するために成される。より詳細については、Jonesら(1986年)Nature321:522〜525頁;Reichmannら(1988年)Nature 332:323〜329頁;およびPresta(1992年)Curr.Op.Struct. Biol. 2:593〜596頁を参照されたい。
【0093】
抗体を組換え操作するための方法は、たとえばBossら(米国特許第4,816,397号)、Cabillyら(米国特許第4,816,567号)、Lawら(欧州特許出願公開第438310A1号)およびWinter(欧州特許出願公開第239400B1号)に記載されている。
【0094】
ヒト化抗IL−23R抗体のアミノ酸配列改変体は、適正なヌクレオチド変更をヒト化抗IL−23R抗体DNAの中に導入することによってまたはペプチド合成によって調製される。そのような改変体は、たとえば、ヒト化抗IL−23R抗体について示されるアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組合せは、最終的な構築物に到達するために成されるが、ただし、最終的な構築物が所望の特徴を持つことを条件とする。アミノ酸変化はまた、糖鎖付加部位の数または位置の変更などの、ヒト化抗IL−23R抗体の翻訳後プロセスをも変更し得る。
【0095】
変異誘発の好ましい位置である、ヒト化抗IL−23R抗体ポリペプチドのある種の残基または領域の同定のための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science244:1081〜1085頁に記載されているように「アラニンスキャニング変異誘発(alanine scanning mutagenesis)」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基の群は、同定され(たとえば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)、IL−23R抗原とアミノ酸との相互作用に影響するように、中性アミノ酸または負に荷電したアミノ酸と交換される(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)。次いで、置換に対して機能的な感度を示すアミノ酸残基は、置換の部位にまたはその代わりにさらなる改変体または他の改変体を導入することによって改善される。したがって、アミノ酸配列改変を導入するための部位は予め決定されるが、変異の性質自体を予め決定する必要はない。たとえば、所与の部位での変異の性能を分析するために、Alaスキャニングまたはランダム変異誘発は、標的コドンまたは標的領域で行われ、発現されたヒト化抗IL−23R抗体改変体は、所望の活性についてスクリーニングされる。
【0096】
アミノ酸配列の挿入は、長さが1残基から100個以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合ならびに単一のアミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有するヒト化抗IL−23R抗体またはエピトープタグに融合された抗体を含む。ヒト化抗IL−23R抗体分子の他の挿入改変体は、ヒト化抗IL−23R抗体のN末端またはC末端と、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドとの融合を含む。
【0097】
他のタイプの改変体は、アミノ酸置換改変体である。これらの改変体は、ヒト化抗IL−23R抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発にとって最も興味のある部位は、超可変ループを含むが、FR変更もまた企図される。
【0098】
抗体の他のタイプのアミノ酸改変体は、抗体の元の糖鎖付加パターンを変化させる。変化させることによって、抗体中に見つけられる1つもしくは複数の糖鎖成分を欠失させることおよび/または抗体中に存在しない1つもしくは複数の糖鎖付加部位を付加することを意味する。抗体の糖鎖付加は、典型的には、N連結(N−linked)またはO連結(O−linked)のいずれかである。N連結は、アスパラギン残基の側鎖への糖鎖成分の付加を指す。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸である、トリペプチド配列、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニンは、糖鎖成分のアスパラギン側鎖への酵素的付加のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的な糖鎖付加部位が作り出される。O連結糖鎖付加は、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も通例ではセリンまたはトレオニンへの付加を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンが使用されてもよい。
【0099】
抗体への糖鎖付加部位の追加は、抗体が、1つまたは複数の上記トリペプチド配列を含有するように(N連結糖鎖付加部位について)、アミノ酸配列を変化させることによって好都合に達成される。変更はまた、元の抗体の配列に対する1つまたは複数のセリン残基またはトレオニン残基の追加またはそれによる置換によって成されてもよい(O連結糖鎖付加部位について)。
【0100】
その上更なるタイプのアミノ酸改変体は、最終的なヒト化抗体のより大きな化学的安定性をもたらすための残基の置換である。たとえば、げっ歯類CDR内の任意のNG配列でイソアスパラギン酸の形成の能力を低下させるために、アスパラギン(N)残基を変更してもよい。類似の問題は、DG配列で生じ得る。ReissnerおよびAswad(2003年)Cell.Mol. Life Sci.60:1281頁。イソアスパラギン酸形成は、その標的抗原に対する
抗体の結合を弱め得るかまたは完全に抑止し得る。Presta(2005年)J.Allergy Clin. Immunol. 116:731および734頁。一実施形態では、アスパラギンは、グルタミン(Q)に変更される。小さなアミノ酸が、アスパラギンまたはグルタミンに近接して生じる場合、より大きな率で生じる脱アミド化の可能性を低下させるために、アスパラギン(N)残基またはグルタミン(Q)残基に近接するアミノ酸を変化させることもまた望ましいかもしれない。BischoffおよびKolbe(1994年)J.Chromatog.662:261頁。加
えて、げっ歯類CDR中のメチオニン残基は、抗原結合親和性を低下させ得るおよび最終的な抗体調製物中の分子の不均質性の一因ともなり得る、メチオニンの硫黄が酸化する可能性を低下させるために変更されてもよい。同上文献。一実施形態では、メチオニンは、アラニン(A)に変更される。そのような置換を有する抗体は、置換が、許容できないレベルまでIL−23R結合親和性を減少させていないことを確認するためにその後スクリーニングされる。
【0101】
ヒト化IL−23R特異抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当技術分野で知られている種々の方法によって調製される。これらの方法は、天然源からの単離(自然発生アミノ酸配列改変体の場合)または先に調製された改変体バージョンもしくは非改変体バージョンのヒト化抗IL−23R抗体のオリゴヌクレオチド媒介性の(もしくは部位特異的な)変異誘発、PCR変異誘発、およびカセット変異誘発による調製を含むが、これらに限定されない。
【0102】
通常、ヒト化抗IL−23R抗体のアミノ酸配列改変体は、重鎖または軽鎖のいずれかの元のヒト化抗体アミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、および最も好ましくは、少なくとも95%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関しての同一性または相同性は、配列を整列させ、必要であればギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後に、配列同一性の一部としてのあらゆる保存的置換も考慮に入れず、ヒト化抗IL−23R残基と同一となる、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書に定義される。N末端、C末端、または内部の延長、欠失、または抗体配列中への挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響しないものと見なされるものと見なす。
【0103】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンから選択することができる。好ましくは、抗体は、IgG抗体である。IgG、IgG、IgG、およびIgGを含む、IgGの任意のアイソタイプを使用することができる。IgGアイソタイプの改変体もまた企図される。ヒト化抗体は、1つを超えるクラスまたはアイソタイプからの配列を含んでいてもよい。所望の生物学的活性を生成するのに必要な定常ドメイン配列の最適化は、実施例に記載の生物学的アッセイで抗体をスクリーニングすることによって容易に達成される。
【0104】
同様に、いずれかのクラスの軽鎖は、本明細書の組成物および方法で使用することができる。具体的には、カッパ、ラムダ、またはその改変体が本発明の組成物および方法で有用である。
【0105】
非ヒト抗体からのCDR配列の任意の適切な部分を使用することができる。CDR配列は、CDR配列が、用いられるヒト抗体配列および非ヒト抗体配列と別個なものとなるように、少なくとも1つの残基の置換、挿入、または欠失によって変異誘発することができる。そのような変異は、最小限となるように企図される。典型的には、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、および最も好ましくは95%超は、非ヒトCDR残基のそれに対応する。
【0106】
ヒト抗体からのFR配列の任意の適切な部分を使用することができる。FR配列は、FR配列が、用いられるヒト抗体配列および非ヒト抗体配列と別個なものとなるように、少なくとも1つの残基の置換、挿入、または欠失によって変異誘発することができる。そのような変異は、最小限となるように企図される。典型的には、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、および最も好ましくは95%、98%、または99%超は、ヒトFR残基のそれに対応する。
【0107】
CDR残基およびFR残基は、Kabatの標準的な配列定義によって決定される。Kabatら(1987年)Sequencesof Proteins ofImmunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda Md。配列番号:1〜5は、様々なマウス抗ヒトIL−23R抗体および様々なラット抗ヒトIL−23R抗体の重鎖可変ドメイン配列を示し、配列番号6〜10は、軽鎖可変ドメイン配列を表わす。配列番号45〜47は、ヒト化マウス抗ヒトIL−23Rクローン20D7抗体の様々な形態の重鎖可変ドメイン配列を示し、配列番号48〜49および53は、軽鎖可変ドメイン配列を表わす。図1および2は、本発明の様々な抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの配列一覧を提供する。CDRは、図に示され、個々のCDR配列は、表2および表4に示されるように特有の配列識別名(配列番号11〜40)を用いてそれぞれ提示される。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

一実施形態では、CDRは、本明細書に開示される任意の単一配列CDRの改変体を含み(配列番号11〜40および52)、その改変体は、表1を使用して決定されるように、開示される配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含む。
【0110】
キメラ抗体もまた企図される。上記に示されるように、典型的なキメラ抗体は、特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性である重鎖および/または軽鎖の一部分を含むが、鎖(複数可)の残りの部分は、他の種に由来するまたは他の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるまたはそれに相同性であり、ならびにキメラ抗体が所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む。米国特許第4,816,567号およびMorrisonら(1984年)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 81:
6851〜6855頁を参照されたい。
【0111】
二重特異性抗体もまた本発明の方法および組成物で有用である。本明細書に使用されるように、用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原エピトープに対する結合特異性を有する抗体、典型的にはモノクローナル抗体を指す。一実施形態では、エピトープは、同じ抗原に由来する。他の実施形態では、エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異性抗体を作製するための方法は、当技術分野で知られている。たとえば、二重特異性抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を使用して組換えで産生することができる。たとえばMilsteinら(1983年)Nature305:537〜39頁を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。たとえばBrennanら(1985年)Science229:81頁を参照されたい。二重特異性抗体は、二重特異性抗体の断片を含む。たとえばHolligerら(1993年)Proc.Natl. Acad.Sci. U.S.A. 90:6444〜48頁、Gruberら(1994年)J. Immunol. 152:5368頁を参照されたい。
【0112】
その上更なる実施形態では、異なる定常ドメインは、本明細書に提供される、CDRに由来するヒト化V領域およびヒト化V領域に付加されてもよい。たとえば、本発明の抗体(または断片)の特定の意図される使用が、エフェクター機能の変更を求めるためのものである場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用されてもよい。IgG1抗体は、長い半減期ならびに補体活性化および抗体依存性細胞傷害などのエフェクター機能を提供するが、そのような活性は、抗体のすべての使用に使用には望めない。そのような例では、たとえばIgG4定常ドメインが使用されてもよい。
V.ヒト化抗IL−23R抗体の生物学的活性
ヒト化抗IL−23R抗体で望ましいとして本明細書で同定される特徴を有する抗体は、インビトロでの阻害性生物学的活性または適切な結合親和性についてスクリーニングすることができる。アンタゴニスト抗体は、実施例5、6、および7に提供される生物学的アッセイを使用してアゴニスト抗体から区別されてもよい。アゴニスト活性を呈する抗体は、IL−23の活性を遮断しないが、その代り、実施例5のBa/F3アッセイでの細胞増殖の増加および/または実施例6の脾細胞アッセイでのIL−17産生の増加などの、IL−23によって典型的には引き起こされる応答を刺激する。アゴニスト抗体は、いくつかの治療的適応で使用を見い出し得るが、本明細書に開示される抗IL−23R抗体は、他に示されない限り、アンタゴニスト抗体であることが意図される。
【0113】
興味のある抗体(たとえば、IL−23の結合を遮断するもの)が結合する、ヒトIL−23R上のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、HarlowおよびDavidLane編(1988年)に記載されているものなどのルーチン的な交差遮断アッセイを行うことができる。同じエピトープに結合する抗体は、そのようなアッセイで交差遮断する可能性が高いが、交差遮断が、重複するエピトープまたは近くの重複しないエピトープに結合する抗体による抗体結合の立体障害に起因し得るため、すべての交差遮断抗体は、必ずしも、正確に同じエピトープに結合するとは限らない。
【0114】
あるいは、エピトープマッピングは、たとえばChampeら(1995年)J.Biol. Chem. 270:1388〜1394頁に記載されているように、抗体が、興味のあるエピトープに結合するかどうかを決定するために行うことができる。CunninghamおよびWells(1989年)Science244:1081〜1085頁に記載されている「アラニンスキャニング変異誘発」またはヒトIL−23R中のアミノ酸残基の点変異誘発の他のある形態もまた、本発明の抗IL−23R抗体について機能的エピトープを決定するために使用されてもよい。しかしながら、変異誘発研究はまた、IL−23Rの全体的な三次元構造にとって重大であるが、抗体−抗原接触に直接関与しないアミノ酸残基をも明らかにし得、したがって、他の方法は、この方法を使用して決定される機能的エピトープを確証するために必要となり得る。
【0115】
特異抗体が結合するエピトープはまた、ヒトIL−23R(配列番号41)の断片を含むペプチドへの抗体の結合を評価することによって決定されてもよい。IL−23Rの配列を包含する、一連の重複するペプチドは、合成され、たとえば直接ELISAで、競合的ELISAで(ここでペプチドは、マイクロタイタープレートのウェルに結合されたIL−23Rへの抗体の結合を妨害するその能力について評価される)、またはチップ上で結合についてスクリーニングされてもよい。そのようなペプチドスクリーニング法は、いくつかの不連続な機能的エピトープ、つまり、IL−23Rポリペプチド鎖の一次配列に沿って隣接していないアミノ酸残基を含む機能的エピトープを検出でき得ない。
【0116】
本発明の抗体が結合するエピトープはまた、X線結晶構造決定(たとえば国際公開第2005/044853号)、分子モデリング、ならびに遊離している場合および興味のある抗体との複合体中で結合している場合の、IL−23R中の不安定なアミド水素のH−D交換速度のNMR決定を含む核磁気共鳴(NMR)分光法などの構造的な方法によって決定されてもよい(Zinn-Justinら(1992年)Biochemistry31:11335〜11347頁;Zinn-Justinら(1993年)Biochemistry32:6884〜6891頁)。
【0117】
X線結晶学に関して、結晶化は、マイクロバッチ(microbatch)(たとえばChayen(1997年)Structure5:1269〜1274頁)、懸滴蒸気拡散(たとえばMcPherson(1976年)J.Biol. Chem. 251:6300〜6303頁)、シーディング(seeding)、および透析を含む当技術分野で知られている方法のいずれかを使用して達成されてもよい(たとえばGiegeら(1994年)ActaCrystallogr.D50:339〜350頁;McPherson(1990年)Eur. J. Biochem. 189:1〜23頁)。少なくとも約1mg/mL、好ましくは約10mg/mL〜約20mg/mLの濃度を有するタンパク質調製物を使用することが望ましい。結晶化は、ポリエチレングリコール1000〜20,000(PEG:約1000〜約20,000Daに及ぶ平均分子量)、好ましくは約5000〜約7000Da、より好ましくは約6000Daを、約10%〜約30%(w/v)に及ぶ濃度で含有する沈殿剤溶液中で最も良好に達成され得る。望ましくは、タンパク質安定化剤、たとえばグリセロールを、約0.5%〜約20%に及ぶ濃度で含み得る。望ましくは、塩化ナトリウム、塩化リチウム、クエン酸ナトリウムなどの適切な塩もまた、好ましくは約1mM〜約1000mMに及ぶ濃度で沈殿剤溶液中に入ってよい。沈殿剤は、好ましくは、約4.0〜約10.0、好ましくは、約7.0〜8.5、たとえば8.0のpHに緩衝化される。沈殿剤溶液中で有用な特別の緩衝液は変えられてもよく、当技術分野でよく知られている。Scopes、ProteinPurification:Principles and Practice、第3版、(1994年)Springer-Verlag、New York。有用な緩衝液の例は、HEPES、Tris、MES、および酢酸塩を含むが、これらに限定されない。結晶は、2℃、4℃、8℃、および26℃を含む広範囲の温度で成長し得る。
【0118】
抗体:抗原結晶は、周知のX線回析技術を使用して研究されてもよく、X−PLOR(Yale University、1992、Molecular Simulations,Inc.によって販売;たとえばBlundell& Johnson(1985年)Meth. Enzymol. 114 & 115、H. W.Wyckoffら編、Academic Press;米国特許出願公開第2004/0014194号を参照されたい)およびBUSTER(Bricogne(1993年)ActaCryst.D49:37〜60頁;Bricogne(1997年)Meth.Enzymol. 276A:361〜423頁、Carter &Sweet編;Roversiら(2000年)Acta Cryst. D56:1313〜1323頁)などのコンピューターソフトウェアを使用して改善されてもよい。
【0119】
本発明の抗体と同じエピトープに結合するさらなる抗体は、たとえば、エピトープへの結合でIL−23Rに対して出現させた抗体をスクリーニングすることによってまたはエピトープ配列を含むヒトIL−23Rの断片を含むペプチドを用いる動物の免疫によって得られてもよい。同じ機能的エピトープに結合する抗体は、受容体結合の遮断などの類似の生物学的活性を呈することを予想し得、そのような活性は、抗体の機能アッセイによって確証することができる。
【0120】
抗体親和性は、標準的な分析を使用して決定されてもよい。好ましいヒト化抗体は、ヒトIL−23Rに、約1×10−7M以下、好ましくは、約1×10−8M以下、より好ましくは、約1×10−9M以下、および最も好ましくは、約1×10−10M以下または1×10−11MのK値で結合する抗体である。
【0121】
本発明の組成物および方法に有用な抗体およびその断片は、生物学的活性抗体および生物学的活性断片である。本明細書に使用されるように、用語「生物学的活性」は、所望の抗原エピトープに結合し、直接または間接的に生物学的作用を発揮することができる抗体または抗体断片を指す。典型的には、これらの作用は、IL−23がIL−23受容体に結合することができないことに起因する。本明細書に使用されるように、用語「特異的」は、抗体の標的抗原エピトープへの選択的結合を指す。抗体は、所与の条件下で、IL−23Rへの結合を、関係のない抗原または抗原混合物への結合と比較することによって、結合の特異性について試験することができる。抗体が、関係のない抗原または抗原混合物に対するよりも、少なくとも10倍、および好ましくは50倍多くIL−23Rに結合する場合、それは特異的とみなす。IL−23Rに「特異的に結合する」抗体は、IL−23R由来の配列を含まないタンパク質に結合しない、つまり、本明細書に使用されるような「特異性」は、IL−23R特異性に関するものであり、問題のタンパク質中に存在し得る任意の他の配列にも関するものではない。たとえば、本明細書に使用されるように、IL−23Rを含むポリペプチドに「特異的に結合する」抗体は、IL−23RおよびFLAG(登録商標)ペプチドタグを含む融合タンパク質であるFLAG(登録商標)−hIL−23Rに典型的には結合するが、FLAG(登録商標)ペプチドタグ単独のものにはまたはそれがIL−23R以外のタンパク質に融合している場合は結合しない。
【0122】
阻害性IL−23R特異抗体などの本発明のIL−23R特異的結合性化合物は、任意の様式で、腹腔マクロファージによるIL−1βおよびTNFの産生の減少ならびにT17 T細胞によるIL−17の産生の減少を含むが、これらに限定されないその生物学的活性を阻害することができる。Langrishら(2004年)Immunol.Rev. 202:96〜105頁を参照されたい。抗IL−23R抗体はまた、IL−17A、IL−17F、CCL7、CCL17、CCL20、CCL22、CCR1、およびGM−CSFの遺伝子発現を阻害することもできる。Langrishら(2005年)J.Exp.Med. 201:233〜240頁を参照されたい。抗IL−23R抗体などの本発明のIL−23R特異的結合性化合物はまた、T17細胞の増殖または生存を増強するIL−23の能力をも遮断する。CuaおよびKastelein(2006年)Nat.Immunol.7:557〜559頁。抗IL−23R抗体の阻害活性は、炎症性障害、自己免疫障害、および増殖障害の処置で有用である。そのような障害の例は、PCT特許出願国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号に記載されている。
VI.医薬組成物
IL−23R抗体を含む医薬組成物または無菌組成物を調製するために、サイトカイン類似体もしくはムテイン、それに対する抗体、またはその核酸は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と混合される。たとえばRemington'sPharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia: NationalFormulary、Mack PublishingCompany、Easton、PA(1984年)を参照されたい。
【0123】
治療薬および診断用薬の処方物は、生理学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤と混ぜることによって、たとえば凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液、または懸濁液の形態で調製されてもよい。たとえばHardmanら(2001年)Goodmanand Gilman's The Pharmacological Basis ofTherapeutics、McGraw-Hill、New York、NY;Gennaro(2000年)Remington:The Science andPractice of Pharmacy、Lippincott, Williams, and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993年)PharmaceuticalDosageForms: Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)PharmaceuticalDosageForms: Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)PharmaceuticalDosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)ExcipientToxicityand Safety、Marcel Dekker, Inc.、New York、NY
を参照されたい。
【0124】
単独でまたは免疫抑制剤と組み合わせて投与される抗体組成物の毒性および治療効果は、たとえばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物での標準的な薬学の手順によって決定することができる。毒性作用および治療的作用の間の用量比は、治療指数であり、それは、ED50に対するLD50の比として表現することができる。高い治療指数を呈する抗体が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで使用されるある範囲の投薬量を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および投与の経路に依存して、この範囲内で変動してもよい。
【0125】
投与のモードは、特に重要ではない。投与の適切な経路は、たとえば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸管投与;筋肉内注射、皮内注射、皮下注射、髄内注射、および鞘内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口的送達を含んでいてもよい。医薬組成物中に使用されるまたは本発明の方法を実施するための抗体の投与は、経口摂取、吸入、局所適用または皮膚注射、皮下注射、腹腔内注射、非経口的注射、動脈内注射、もしくは静脈内注射などの種々の従来の方法で実行されてもよい。
【0126】
あるいは、多くの場合デポー処方物または徐放性処方物で、たとえば、直接、関節炎の関節または免疫病理によって特徴付けられる病原体誘発性の病巣の中へ、抗体の注射を介して、全身性の様式よりもむしろ局所性の様式で、抗体を投与してもよい。さらに、標的薬剤送達系(たとえば、たとえば関節炎の関節または免疫病理によって特徴付けられる病原体誘発性の病巣を標的とする組織特異的抗体でコートされたリポソーム)で、抗体を投与してもよい。リポソームは、罹患組織を標的とし、罹患組織によって選択的に取り込まれる。
【0127】
治療剤に対する投与計画の選択は、その実体(entity)の血清代謝回転速度または組織代謝回転速度、症状のレベル、その実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中での標的細胞の到達性を含むいくつかの要因に依存する。好ましくは、投与計画は、許容可能なレベルの副作用と調和した、患者に送達される治療剤の量を最大限にする。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、特定の実体および処置されている状態の重症度に依存する。抗体、サイトカイン、および小分子の適正用量の選択の手引き(guidance)が入手可能である。たとえばWawrzynczak(1996年)AntibodyTherapy、Bios Scientific Pub. Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991年)MonoclonalAntibodies,Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993年)MonoclonalAntibodiesand Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、NY;Baertら(2003年)NewEngl.J. Med. 348:601〜608頁;Milgromら(1999年)New Engl. J. Med. 341:1966〜1973頁;Slamonら(2001年)NewEngl.J. Med. 344:783〜792頁;Beniaminovitzら(2000年)New Engl. J. Med. 342:613〜619頁;Ghoshら(2003年)NewEngl.J.Med. 348:24〜32頁;Lipskyら(2000年)New Engl. J. Med. 343:1594〜1602頁を参照されたい。
【0128】
適正用量の決定は、たとえば、処置に影響することが当技術分野で知られているもしくは疑われるまたは処置に影響することが予測されるパラメーターまたは因子を使用して、臨床家によって成される。一般に、用量は、やや最適用量未満の量から始まり、その後、あらゆる負の副作用と比較して所望または最適の効果が達成されるまで少量ずつ増加させることによって増加する。重要な診断尺度は、たとえば炎症の症状または産生される炎症性サイトカインのレベルの尺度を含む。好ましくは、使用される生物製剤は、実質的に、処置の標的とされる動物と同じ種に由来し(たとえば、ヒト被験体の処置のためのヒト化抗体)、それによって、試薬に対するあらゆる免疫応答を最小限とする。
【0129】
抗体、抗体断片、およびサイトカインは、連続注入によってまたはたとえば1日、1週間当たり1〜7回、1週間、2週間、毎月、隔月などの間隔の用量で提供することができる。用量は、たとえば静脈内に、皮下に、局所に、経口的に、経鼻的に、直腸に、筋肉内に、脳内に、髄腔内に、または吸入によって提供されてもよい。好ましい用量プロトコルは、著しい望ましくない副作用を回避する最大用量または最大用量頻度を含むものである。毎週の用量の合計は、一般に、少なくとも0.05μg/kg体重、0.2μg/kg体重、0.5μg/kg体重、1μg/kg体重、10μg/kg体重、100μg/kg体重、0.2mg/kg体重、1.0mg/kg体重、2.0mg/kg体重、10mg/kg体重、25mg/kg体重、50mg/kg体重、またはそれ以上である。たとえばYangら(2003年)NewEngl. J. Med. 349:427〜434頁;Heroldら(2002年)New Engl.J. Med. 346:1692〜1698頁;Liuら(1999年)J.Neurol. Neurosurg. Psych. 67:451〜456頁;Portieljiら(20003)CancerImmunol.Immunother. 52:133〜144頁を参照されたい。小分子治療剤、たとえばペプチド模倣物質、天然産物、または有機化学物質の所望の用量は、モル/kgベースで、抗体またはポリペプチドとほぼ同じである。
【0130】
本明細書に使用されるように、「阻害する」または「処置する」または「処置」は、自己免疫疾患もしくは病原体誘発性の免疫病理と関連する症状の発達の遅延および/または発達するもしくは発達が予想されるような症状の重症度の低下を含む。用語は、既存の制御されないまたは望まれない、自己免疫に関係するまたは病原体誘発性の免疫病理症状を改善すること、さらなる症状を防止すること、およびそのような症状の根本的な原因を改善することもしくは防止することをさらに含む。したがって、その用語は、有益な結果が、自己免疫性のもしくは病原体誘発性の免疫病理疾患もしくは症状を有するまたはそのような疾患もしくは症状を発達させる可能性を有する脊椎動物被験体に与えられることを意味する。
【0131】
本明細書に使用されるように、用語、「治療有効量(therapeutically effective amount)」または「有効量」は、単独でまたはさらなる治療薬と組み合わせて細胞、組織、または被験体に投与される場合、自己免疫疾患または病原体誘発性の免疫病理関連性の疾患もしくは状態またはその疾患の進行を防止するまたは改善するのに有効である、IL−23R特異的結合性化合物、たとえば抗体の量を指す。治療有効用量は、症状の改善、たとえば、関係のある病状の処置、治癒、防止、もしくは改善またはそのような状態の処置、治癒、防止、もしくは改善の速度の増加をもたらすのに十分な、化合物のその量をさらに指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、治療有効用量はその成分を単独で指す。組合せに適用される場合、組み合わせて、連続的に、または同時に投与されるかどうかに関わらず、治療有効用量は、治療的作用をもたらす、有効成分の組み合わせられた量を指す。治療剤の有効量は、典型的には少なくとも10%、一般に少なくとも20%、好ましくは、少なくとも約30%、より好ましくは、少なくとも40%、および最も好ましくは、少なくとも50%、症状を減少させる。
【0132】
第2の治療薬、たとえばサイトカイン、抗体、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線との同時投与または同時処置のための方法は、当技術分野でよく知られている。たとえばHardmanら(編)(2001年)Goodmanand Gilman's The Pharmacological Basis ofTherapeutics、第10版、McGraw-Hill、New York、NY;PooleおよびPeterson(編)(2001年)PharmacotherapeuticsforAdvanced Practice: A Practical Approach、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PA;ChabnerおよびLongo(編)(2001年)CancerChemotherapyand Biotherapy、Lippincott, Williams & Wilkins、Phila.、PAを参照されたい。本発明の医薬組成物はまた、他の免疫抑制剤または免疫調節剤を含有してもよい。抗炎症剤、コルチコステロイド、シクロスポリン、タクロリムス(つまりFK−506)、シロリムス、インターフェロン、可溶性サイトカイン受容体(たとえばsTNRFおよびsIL−1R)、サイトカイン活性を中和する作用物質(たとえばインフリキシマブ(inflixmab)、エタネルセプト)、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスパーガリン、サリドマイド、グラチラマー、アザチオプリン、レフルノミド、シクロホスファミド、メトトレキサートなどを含むが、これらに限定されない任意の適切な免疫抑制剤を用いることができる。医薬組成物はまた、光線療法および放射線などの他の治療様式と共に用いることができる。
【0133】
典型的な獣医学的被験体、実験被験体、または研究被験体は、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマ、およびヒトを含む。
VII.抗体産生
一実施形態では、本発明の抗体の組換え産生のために、2つの鎖をコードする核酸は、単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために1つまたは複数の複製可能なベクターの中に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して配列決定される(たとえば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。多くのベクターは入手可能である。ベクター成分は、一般に、1つまたは複数の次のものを含むが、これらに限定されない:シグナル配列、複製開始点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。一実施形態では、本発明のヒト化抗IL−23R抗体の軽鎖および重鎖の両方は、同じベクター、たとえばプラスミドまたはアデノウイルスベクターから発現される。
【0134】
本発明の抗体は、当技術分野で知られている任意の方法によって産生されてもよい。一実施形態では、抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来(HEK)293細胞、マウス骨髄腫NSO細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、Spodopterafrugiperda卵巣(Sf9)細胞などの、培養物中の哺乳類細胞または昆虫細胞
中で発現される。一実施形態では、CHO細胞から分泌された抗体は、回収され、プロテインAクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの標準的なクロマトグラフ法によって精製される。一実施形態では、結果として生じる抗体は、濃縮され、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5中に保存される。
【0135】
他の実施形態では、本発明の抗体は、国際公開第2005/040395号に記載の方法に従って酵母中で産生される。手短かに言えば、興味のある抗体の個々の軽鎖または重鎖をコードするベクターは、異なる酵母半数体細胞、たとえば、異なる交配型の酵母Pichiapastorisの中に導入される。これらの酵母半数体細胞は、任意選択で、相補的な栄養
素要求株である。次いで、形質転換された半数体酵母細胞は、交配してまたは融合して、重鎖および軽鎖の両方を産生することができる二倍体酵母細胞を生じ得る。二倍体系統は、次いで、完全に構築された生物学的活性抗体を分泌することができる。2つの鎖の相対的な発現レベルは、たとえば、異なるコピー数を有するベクターを使用すること、異なる強度の転写プロモーターを使用すること、または一方もしくは両方の鎖をコードする遺伝子の転写を駆動する誘発性のプロモーターからの発現を誘発することによって最適化することができる。
【0136】
一実施形態では、複数の異なる抗IL−23R抗体(「元の」抗体)の各重鎖および軽鎖は、酵母半数体細胞の中に導入されて、複数の軽鎖を発現する一方の交配型の半数体酵母系統のライブラリーおよび複数の重鎖を発現する異なる交配型の半数体酵母系統のライブラリーを作り出す。半数体系統のこれらのライブラリーは、交配して(またはスフェロプラストとして融合して)、様々な可能性のある順列の軽鎖および重鎖から構成される抗体のコンビナトリアルライブラリーを発現する一連の二倍体酵母細胞を産生することができる。次いで、抗体のコンビナトリアルライブラリーは、抗体のいずれかが、元の抗体の特性よりも優れた特性(たとえばIL−23Rに対するより高い親和性)を有するかどうか決定するためにスクリーニングすることができる。たとえば国際公開第2005/040395号を参照されたい。
【0137】
他の実施形態では、本発明の抗体は、抗体可変ドメインの部分が、分子量約13kDaのポリペプチド中で連結されているヒトドメイン抗体である。たとえば、米国特許公開第2004/0110941号を参照されたい。そのような単一ドメイン低分子量作用物質は、合成の容易性、安定性、および投与の経路の点から多数の利点を提供する。
VIII.使用
本発明は、たとえば中枢神経系、末梢神経系、および胃腸管の炎症性障害および炎症性状態ならびに自己免疫障害および増殖障害の処置ならびに診断のための、抗IL−23R抗体およびその断片を使用するための方法を提供する。
【0138】
方法は、たとえば再発寛解型MSおよび原発性進行性MSを含む多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(別名ALS;ルー ゲーリック病)、虚血性脳傷害、プリオン病、およびHIV関連認知症の処置のために提供される。神経障害性疼痛、外傷後ニューロパシー、ギラン−バレー症候群(GBS)、末梢多発性神経障害、および神経再生を処置するための方法もまた提供される。
【0139】
多発性硬化症または神経系の他の炎症性障害もしくは炎症性状態の1つまたは複数の以下の特徴、症状、側面、所見、または徴候を処置するまたは改善するための方法が提供される:脳病変、ミエリン病変、脱髄、脱髄斑、視覚障害、バランスまたは協調の喪失、痙縮、感覚障害、失禁、疼痛、脱力、疲労、麻痺、認知障害、精神緩徐、複視、視神経炎、感覚異常、歩行失調、疲労、ウートッフ症状(Uhtoff’s symptom)、神経痛、失語症、失行症、痙攣、視野損失、認知症、錐体外路系の徴候、うつ病、健康感または他の情緒的症状、慢性進行性ミエロパシー、およびガドリニウム増強病変を含む、磁気共鳴画像法(MRI)によって検出される症状、誘発電位記録によって検出される症状、または脳脊髄液の検査によって検出される症状。たとえばKenealyら(2003年)J.Neuroimmunol. 143:7〜12頁;Noseworthyら(2000年)NewEngl. J. Med. 343:
938〜952頁;Millerら(2003年)New Engl. J. Med. 348:15〜23頁;Changら(2002年)NewEngl. J.Med. 346:165〜173頁;BruckおよびStadelmann
(2003年)Neurol. Sci. 24 増刊5:S265〜S267頁を参照されたい。
【0140】
その上、本発明は、炎症性腸障害、たとえばクローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、および過敏性腸症候群を処置するおよび診断するための方法を提供する。炎症性腸障害の1つまたは複数の以下の症状、側面、所見、または徴候を処置するまたは改善するための方法が提供される:食物の吸収不良、腸運動性の変化、感染症、発熱、腹痛、下痢、直腸出血、体重減少、栄養失調の徴候、肛門周囲の疾患、腹部塊、および成長不全、ならびに狭窄、フィステル、中毒性巨大結腸症、穿孔、および癌などの腸管合併症ならびに脆弱性、アフタ性潰瘍、および線状潰瘍などの内視鏡的な知見、敷石状外観、偽ポリープ、ならびに直腸合併症、および加えて抗酵母抗体を含む。たとえばPodolsky、前掲;Hanauer
、前掲;HorwitzおよびFisher、前掲を参照されたい。
【0141】
乾癬、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、骨関節炎、および乾癬性関節炎を含む関節炎などの炎症性障害、全身性エリテマトーデスおよびI型糖尿病などの自己免疫障害、ならびに癌などの増殖障害の処置もまた企図される。たとえばPCT特許出願国際公開第04/081190号;国際公開第04/071517号;国際公開第00/53631号;および国際公開第01/18051号を参照されたい。
【0142】
本発明のIL−23R結合性化合物はまた、IL−23p19、IL−17A、IL−17F、TNF−α、IL−1β、IL−6、およびTGF−βを含むが、これらに限定されない他のサイトカインの1つまたは複数のアンタゴニスト(たとえば抗体)と組み合わせて使用することができる。たとえばVeldhoen(2006年)Immunity24:179〜
189頁;Dong(2006年)Nat. Rev. Immunol.6(4):329〜333頁を参照されたい。種々の実施形態では、本発明のIL−23R結合性化合物は、抗−IL−17A抗体などの1つまたは複数の他のアンタゴニストの投与の前に、それと同時に、またはその投与の後に投与される。一実施形態では、IL−17A結合性化合物は、有害な免疫応答(たとえばMS、クローン病)の急性初期の処置で、単独でまたは本発明のIL−23Rアンタゴニスト抗体と組み合わせて使用される。後者の場合では、IL−17A結合性化合物は、徐々に減少させてもよく、IL−23Rのアンタゴニストを単独で用いる処置は、有害な応答の抑制を維持するために継続される。あるいは、IL−23p19、IL−1β、IL−6、および/またはTGF−βに対するアンタゴニストは、本発明のIL−23R結合性化合物の前にまたはその後に同時に投与されてもよい。CuaおよびKastelein(2006年)Nat.Immunol.7:557〜559頁;TatoおよびO'Shea(2006年)Nature 441:166〜168頁;IwakuraおよびIshigame(2006年)J.Clin.Invest. 116:1218〜1222頁を参照されたい。
【0143】
広範囲の本発明は、以下の実施例に関して最も理解され、これらは、本発明を特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載の特定の実施形態は、ただ例の目的で提示され、本発明は、添付される特許請求の範囲が権利を与えられる全範囲の等価物と共に、添付される特許請求の範囲の用語によって限定されるものとする。
【実施例】
【0144】
(実施例1)
一般的な方法
分子生物学における標準的な方法を記載する。Maniatisら、(1982年)MolecularCloning、A Laboratory Manual、ColdSpring Harbor Laboratory Press、Cold SpringHarbor、NY;Sambrook and Russell(2001年)MolecularCloning、第3版、Cold SpringHarborLaboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993年)RecombinantDNA、第217巻、AcademicPress、San Diego、CA。標準的な方法はAusbelら、(2001年)Current Protocols inMolecular Biology、第1〜4巻、JohnWiley and Sons、Inc.New York、NY中にも載っており、これは細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(第2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(第3巻)、およびバイオインフォマティクス(第4巻)を記載している。
【0145】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含めたタンパク質精製のための方法を記載する。Coliganら、(2000年)CurrentProtocols in Protein Science、第1巻、John Wileyand Sons、Inc.、New York。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化を記載する。たとえば、Coliganら、(2000年)CurrentProtocolsin Protein Science、第2巻、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Ausbelら、(2001年)CurrentProtocolsin Molecular Biology、第3巻、John Wiley and Sons、Inc.、NY、NY、16.0.5〜16.22.1
7頁;Sigma-Aldrich、Co.(2001年)Productsfor Life Science Research、St.Louis、MO;45〜89頁;AmershamPharmacia Biotech(2001年)BioDirectory、Piscataway、N.J.384〜391頁を参照。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化を記載する。Coliganら、(2001年)CurrentProtocolsin Immunology、第1巻、John Wiley and Sons、Inc.、New York;Harlow and Lane(1999年)UsingAntibodies、ColdSpring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY; Harlowand Lane、上記。リガンド/受容体相互作用を特徴付けするための標準的な技法が利用可能である。たとえば、Coliganら、(2001年)CurrentProtocolsin Immunology、第4巻、John Wiley Inc.、New Yorkを参照。
【0146】
蛍光標識細胞分取(fluorescence activated cell sorting)検出システム(FACS(登録商標))を含めた、フローサイトメトリーのための方法が利用可能である。たとえば、Owensら、(1994年)FlowCytometry Principles for Clinical LaboratoryPractice、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ;Givan(2001年)FlowCytometry、第2版;Wiley-Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003年)PracticalFlow Cytometry、JohnWiley and Sons、Hoboken、NJ中を参照。たとえば診断用試薬として使用するための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチド、および抗体を含めた核酸を改変するのに適した蛍光試薬が利用可能である。MolecularProbes(2003年)Catalogue、MolecularProbes、Inc.、Eugene、OR;Sigma-Aldrich(2003年)Catalogue、St.Louis、MO。
【0147】
免疫系の組織学の標準的な方法を記載する。たとえば、Muller-Harmelink(ed.)(19
86年)HumanThymus:Histopathology and Pathology、Springer Verlag、New York、NY;Hiattら、(2000年)ColorAtlasof Histology、Lippincott、Williams、and Wilkins、Phila、PA;Louisら、(2002年)BasicHistology:Textand Atlas、McGraw-Hill、New York、NYを参照。
【0148】
たとえば抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能性ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するための、ソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である。たとえば、GenBank、VectorNTI(登録商標)Suite(Informax、Inc、Bethesda、MD);GCGWisconsin Package(Accelrys、Inc.、SanDiego、CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogicCrop.、CrystalBay、Nevada);Menneら、(2000年)Bioinformatics16:741〜742頁;Menneら、(2000年)BioinformaticsApplications Note 16:741〜742頁;Wrenら、(2002年)Comput.MethodsPrograms Biomed. 68:177〜181頁;vonHeijne(1983年)Eur.J.Biochem. 133:17〜21頁;vonHeijne(1986年)Nucleic Acids Res. 14:4683〜4690頁を参照。
【0149】
(実施例2)
抗ヒトIL−23R抗体の作製およびヒト化
抗ヒトIL−23R抗体は、C末端ヒスチジンタグと共にまたはIg(ヒトIgG1 Fc)融合タンパク質として、ヒトIL−23Rの細胞外ドメイン(配列番号41の残基24〜353)を用いてラットまたはマウスを免疫することによって生成される。次いで、モノクローナル抗体は、標準的な方法によって調製される。
【0150】
抗体のヒト化は、たとえばPCT特許出願国際公開第2005/047324号および国際公開第2005/047326号に一般に記載されている。例示的なヒト化重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列は、それぞれ図1および2にならびに配列表に提供される。
【0151】
手短かに言えば、非ヒトVHドメインのアミノ酸配列(たとえば配列番号1〜5)は、5つのヒトVH生殖細胞系列アミノ酸配列の群;亜群(subgroup)IGHV1およびIGHV4からの1つの代表的配列ならびに亜群IGHV3からの3つの代表的配列と比較される。VH亜群は、M.-P.Lefranc(2001年)「Nomenclature of the Human Immunoglobulin Heavy(IGH) Genes」、Experimentaland Clinical Immunogenetics 18:
100〜116頁にリストされる。最も密接にマッチしているヒト生殖細胞系列配列のフレームワーク配列は、ヒト化VHドメインを構築するために使用される。
【0152】
本明細書に開示されるげっ歯類抗huIL−23R抗体は、VLのカッパサブクラスのすべてである。非ヒトVLドメインのアミノ酸配列(たとえば配列番号6〜10)は、4つのヒトVLカッパ生殖細胞系列アミノ酸配列の群と比較される。4つの群は、V.Barbie
and M.-P.Lefranc(1998年)「The Human Immunoglobulin KappaVariable(IGKV)Genes andJoining(IGKJ)Segments」、Experimental and ClinicalImmunogenetics 15:171〜183頁およびM.-P.Lefranc(2001年)「Nomenclatureof the HumanImmunoglobulin Kappa(IGK)Genes」、Experimental and ClinicalImmunogenetics 18:161〜174頁中に記載された4つの確立したヒトVL亜群の各々由来の代表的な1つからなる。4つの亜群は、Kabatら(1991年、第5版)「SequencesofProteins of Immunological Interest」、米国保健社会福祉省、NIH Pub.91−3242、103〜130頁中に記載された4つの亜群にも対応する。最も密接にマッチしているヒト生殖細胞系列配列のフレームワーク配列は、ヒト化VLドメインを構築するために使用される。
【0153】
前述の分析に基づいて、マウス抗体クローン20D7のヒト化形態は、亜群I(生殖細胞系列配列DP−14)からのヒト重鎖配列を使用して構築される。結果として生じるヒト化重鎖可変ドメイン(hu20D7−a)の配列は、配列番号45に提供される。hu20D7−aの改変体、hu20D7−b(配列番号46)は、T72L置換を除いて同一である。第2の改変体hu20D7−c(配列番号47)は、M70F置換を除いてhu20D7−bと同一である。これらの配列改変の両方は、CDRH2およびCDRH3の間のフレームワーク領域中にあり、図1に太字体の書体の残基として示される。hu20D7−c可変ドメインおよびヒトIgG1定常ドメインを含む完全長ヒト化重鎖は、配列番号50に提供される。
【0154】
軽鎖可変ドメイン配列もまたマウス抗体クローン20D7から構築される。ある軽鎖可変ドメイン配列、hu20D7−IV(配列番号48)は、親マウス抗体のCDR配列および軽鎖亜群IV(生殖細胞系列配列Z−B3)からのヒト軽鎖フレームワーク配列を含む。他の軽鎖可変ドメイン配列、hu20D7−II−a(配列番号49)は、親マウス抗体のCDR配列および軽鎖亜群II(生殖細胞系列配列Z−A19)からのヒト軽鎖フレームワーク配列を含む。さらなる軽鎖可変ドメイン配列改変体(hu20D7−II−b)は、配列番号53に提供され、位置32のセリン残基は、トレオニンと交換される(S32T)。セリンは、前のアスパラギン残基の脱アミド化の可能性を低下させるために交換される。BischoffおよびKolbe(1994年)J.Chromatog. 662:261頁を参照されたい。3つの軽鎖可変ドメイン配列はすべて図2に提示される。ヒトカッパ軽鎖の構成でhu20D7−II−a可変ドメインおよびhu20D7−II−b可変ドメインを含む完全長ヒト化軽鎖は、配列番号51および54にそれぞれ提供される。
【0155】
本実施例に記載されるヒト化重鎖およびヒト化軽鎖の任意の対での組合せ(たとえばhu20D7−II−b軽鎖およびhu20D7−c重鎖)は、機能的な抗ヒトIL−23R抗体を作り出すために使用することができる。完全長重鎖および完全長軽鎖は、それぞれ、配列番号47および49からの配列番号50および51の構成との類似性によって、本明細書に開示される可変ドメインのいずれかから構築することができる。あるいは、他の重鎖定常ドメイン(たとえばIgG)または他の軽鎖(たとえばラムダ)は、知られているヒト免疫グロブリン配列を使用して構築されてもよい。
【0156】
可変重鎖および軽鎖の標的アミノ酸配列を決定した後、完全長ヒト化抗体をコードするプラスミドを作製することができる。プラスミド配列はKunkel変異誘発(たとえばKunkelTA.(1985年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A82:488〜492頁を参照されたい)を使用して改変して、DNA配列を標的ヒト化抗体配列に変えることができる。同時に、コドン最適化を実施して可能で最適な発現をもたらすことができる。配列最適化はまた、GENEART,Inc.、Toronto、ON、Canadaなどの民間のベンダーによって行われてもよい。
【0157】
20D7抗体のヒト化の場合には、げっ歯類可変ドメインへの最もマッチしたヒト生殖細胞系列フレームワークの単純な置換は、親(げっ歯類)形態と比較した場合にIL−23Rに対する結合親和性が実質的に低下した抗体(たとえば配列番号48または49と対になる配列番号45)を産生した。親和性の低下の原因を決定するために、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖がキメラ重鎖およびキメラ軽鎖とそれぞれ対になったヘミキメラ(hemichimeric)構築物を作り出した。キメラ鎖は、げっ歯類可変ドメインおよびヒト定常ドメインを含む。20D7抗体のキメラ形態がげっ歯類親抗体と同じ親和性を本質的に保持していることは以前により先に決定されている。ヒト化重鎖を有するヘミキメラ抗体は、結合性が低下していたのに対して、ヒト化軽鎖を有するヘミキメラ抗体は、親抗体の親和性を保持していたことが観察され、問題は、ヒト化重鎖であったことを示した。次いで、ヒト化重鎖は、詳細に調べて、ヒト化フレームワーク配列が親(げっ歯類)フレームワーク配列と異なる位置を見つけた。これらの位置は、親和性の低下の原因となる可能性が高いと考えられた。配列改変は、いくつかの位置で生じ、T72LおよびM70Fの置換を有する重鎖は、実質的に、結合親和性を改善することが分かった。以下実施例4を参照されたい。たとえばTramontanoら(1990年)J.Mol. Biol. 215:175頁を
参照されたい。(他に示されない限り、本特許出願の配列番号付けは、配列表の番号付けに関するものであり、Kabatの系などの他の番号付け体系に関するものではないことに注意されたい。)
ラット抗体クローン8B10のヒト化形態は、亜群III(生殖細胞系列配列DP−46)からのヒト重鎖配列を使用して類似の方法で構築される。結果として生じるヒト化重鎖可変ドメイン(hu8B10)の配列は、配列番号57に提供される。hu8B10重鎖可変ドメインの改変体は、結合親和性を改善するためにまたは他の場合には、結果として生じる抗体の特性を改善するために作り出されてもよい。たとえば、配列番号57の位置30のアスパラギン残基(CDRH1中)は、結合親和性を改善するためにトレオニン(N30T)に変更されてもよい。フレームワーク残基、残基A24、E46、W47、N76、N79、L81、またはR100などもまた変化されてもよい。例示的なフレームワーク変化はE46DおよびW47Lを含む。
【0158】
軽鎖可変ドメイン配列もまた、ラット抗体クローン8B10から構築される。親ラット抗体のCDR配列および軽鎖亜群カッパ−1(生殖細胞系列配列Z−012)からのヒト軽鎖フレームワーク配列を含むhu8B10軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号58に提供される。
【0159】
(実施例3)
KinExA技術を使用した抗ヒトIL−23R抗体に関する平衡解離定数(K)の決定
抗ヒトIL−23R抗体に関する平衡解離定数(K)を、KinEx3000機器を使用して決定する。Sapidyne Instrument Inc.、Boise Idaho、USA.KinExAは、抗体、抗原および抗体−抗原複合体の混合物中で複合体を形成していない抗体の濃度の測定に基づいた結合平衡除外(kinetic exclusion)アッセイ法の原理を使用する。遊離抗体の濃度は、非常に短い時間の間、固相固定化抗原に混合物を曝すことによって測定する。実際、溶液相の抗原−抗体混合物をフローセル中に流し抗原コート粒子(antigen−coated particle)を通して捕捉することによってこれを実施する。この機器によって作製したデータは、カスタムソフトウェアを使用して分析する。平衡定数は、以下の仮定に基づく数学的理論を使用して計算する:
1.結合は、平衡に関する可逆的結合の等式に従う:
on[Ab][Ag]=koff[AbAg]
2.抗体と抗原は1:1で結合し、かつ全抗体は抗原−抗体複合体および遊離抗体に等しい。
【0160】
3.機器シグナルは、遊離抗体の濃度と直線的関係がある。
【0161】
PMMA粒子(Sapidyne、カタログ番号440198)は、Sapidyne「Protocolfor coating PMMA particleswith biotinylated ligands having short ornonexistent linker arms」に従って、ビオチン化IL−23R(または細胞外ドメインなどのその
断片)を用いてコートする。EZ−link TFP PEO−biotin(Pierce、カタログ番号21219)を使用して、製造業者の推奨(Pierce会報0874)に従って、ビオチン化IL−23Rを作製する。
【0162】
KinExA分析によって決定されるように、ヒトIL−23Rへの結合について、抗体r8B10は、4.2×10−11MのKを示し、抗体m20D7は、9×10−12MのKを示した。
【0163】
(実施例4)
BIAcore(登録商標) Label−Free Interaction Analysis System Technologyを使用する、ヒト化抗ヒトIL−23R抗体の平衡解離定数(K)の決定
BIAcore(登録商標) label−free interaction analysis systemによる決定は、米国特許出願公開第2007/0048315号の実施例4に記載されるように本質的に行った。手短かに言えば、リガンド(抗IL−23R mAb)は、標準的なアミンカップリング法を使用して、BIAcore(登録商標) label−free interaction analysis system CM5センサーチップ上に固定する。様々な相互作用についての反応速度定数(kinetic constant)は、BIAevaluationソフトウェア3.1を使用して決定する。Kは、計算した解離速度定数および結合速度定数を使用して決定する。
【0164】
ヒトIL−23Rに対するマウス20D7抗体のKについてのBIAcore(登録商標) label−free interaction analysis systemによる決定は、マウスフレームワーク配列のヒトフレームワーク配列(hu20D7−a、配列番号45)との交換により約50倍、約85pMから4300pMに結合親和性が低下したことを示した。重鎖へのT72L変異の導入(hu20D7−b、配列番号46)は、約360pMまでKを改善し、M70F変異に加えたT72Lの導入(hu20D7−c、配列番号47)は、約230pMまでKをさらに改善した。したがって、hu20D7−c重鎖に導入された変異は、続く最適化なしの単純なヒト化と比較して約20倍の結合親和性の改善を表わす。
【0165】
比較として、親ラット8B10抗体は、同じアッセイを使用して評価された場合、ヒトIL−23Rに対して約300pMのKを呈した。
【0166】
(実施例5)
抗IL−23R抗体の中和を評価するための増殖バイオアッセイ
IL−23/IL−23Rを生物学的に中和するモノクローナル抗体の能力を、組換えIL−23受容体を発現する細胞を使用する短期の増殖バイオアッセイの適用によって評価する。トランスフェクタントBa/F3−2.2lo細胞は、ヒトIL−23に応答して増殖し、応答は、中和抗IL−23R抗体によって阻害することができる。アッセイに選ばれるIL−23の濃度は、用量応答曲線の直線領域内、ほぼ平坦域、およびEC50超となるように選択される。増殖、またはその欠如は、アラマーブルー(alamar blue)、代謝活性の検出に基づく増殖指標色素を使用する、比色分析手段によって測定する。IL−23/IL−23Rを中和する抗体の能力は、そのIC50値、またはIL−23増殖の半最大阻害を誘導する抗体の濃度によって評価する。
【0167】
アッセイは本質的に以下のように行う。Ba/F3トランスフェクタントは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μMの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、50μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン、および10ng/mLのマウスIL−3中に維持する。増殖バイオアッセイは、RPMI−1640培地、10%ウシ胎児血清、50μMの2−メルカプトエタノール、2mMのL−グルタミン、および50μg/mLのペニシリン−ストレプトマイシン中で実施する。
【0168】
アッセイは、ウェル当たり150μL中、96ウェル平底プレート(Falcon 3072または類似のもの)中で行う。IL−23および抗IL−23R抗体の両方は、一連の濃度、たとえば1:3段階希釈度で添加する。興味のある抗IL−23R抗体の滴定は、任意選択で、IL−23の添加に先立って細胞とプレインキュベートする。バイオアッセイプレートは、40〜48時間、加湿した組織培養チャンバー(37C、5%CO)中でインキュベートする。培養時間の終了時に、アラマーブルー(Biosource
カタログ番号DAL1100)を16.5μL/ウェルで添加し、5〜12時間、発色させる。次いで、吸光度は、570nmおよび600nmで読み取り(VERSAmax
Microplate Reader、Molecular Probes、Eugene、Oregon、USA)、OD570−600を得る。各サンプルについて2回実行する。吸光度は、GraphPad Prism(登録商標)3.0ソフトウェア(Graphpad Software Inc.、San Diego、California、USA)を使用してサイトカイン濃度または抗体濃度に対してプロットし、IC50値は、S字状(sigmoidal)用量応答曲線の非線形回帰(カーブフィット)を使用して決定する。
【0169】
(実施例6)
IL−17産生に基づくIL−23に関するマウス脾細胞アッセイ
本発明の抗IL−23R抗体の生物学的活性を、本質的にAggarwalら、(2003年)J.Biol.Chem.278:1910頁およびStumhoferら、(2006年)NatureImmunol.7
:937頁中に記載されたように、マウス脾細胞アッセイを使用して評価してもよい。このマウス脾細胞アッセイは、マウス脾細胞によるIL−17産生のレベルとしてサンプル中のIL−23の活性を測定する。次いで抗IL−23R抗体の阻害活性を、所与のサンプル中のIL−23/IL−23Rの活性を50%低下させるのに必要な抗体の濃度(IC50)を決定することによって評価する。このアッセイによって測定したようにIC50は平衡解離結合定数(K)以上である、すなわち、KはIC50以下であり得る。通常通り、より低いIC50およびK値はより高い活性および親和性を反映する。
【0170】
簡単に言うと、8〜12週齢の雌性C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maine、USA)から脾臓を得る。脾臓を砕き、2回ペレット状にし、かつ細胞濾過器(70μmナイロン製)を通して濾過する。回収した細胞は、ヒトIL−23(10ng/ml、約170pM)およびマウス抗CD3e抗体(1μg/ml)(BD Pharmingen、Franklin Lakes、New Jersey、USA)の存在下で、アッセイする抗IL−23R抗体有りまたはなしで、96ウェルプレート中において培養する(4×10個細胞/ウェル)。抗IL−23R抗体は、一連の3倍希釈で加える。細胞は72時間培養し、ペレット状にし、かつ上清はサンドウィッチELISAによりIL−17のレベルに関してアッセイする。
【0171】
IL−17のELISAは以下のように実施する。プレートは捕捉抗IL−17抗体(100ng/ウェル)で4℃において一晩コートし、洗浄およびブロッキングする。サンプルおよび標準物を加え、振とうしながら室温で2時間インキュベートする。プレートを洗浄し、ビオチン化抗IL−17検出抗体(100ng/ウェル)を加え、振とうしながら室温で1時間インキュベートする。捕捉抗体と検出抗体は、いずれもマウスIL−17と結合するが交差遮断しない異なる抗体である。プレートを洗浄し、かつ結合した検出抗体は、ストレプトアビジン−HRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)およびTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を使用して検出する。次いでプレートを450−650nmで読み取り、かつサンプル中のIL−17の濃度は、標準物との比較によって計算する。
【0172】
(実施例7)
抗IL−23R抗体Hum20D7の特徴付け
ヒト化抗IL−23R抗体は、重鎖配列hu20D7−cおよび軽鎖配列hu20D7−II−bを使用して生成し、これらの配列は、配列番号50および54にそれぞれ提供される。結果として生じる抗体は、本実施例でhum20D7と呼ばれる。同じポリペプチド配列をコードする他のDNA配列が使用されてもよいが、抗体は、それぞれ配列番号55(hu20D7−c)および56(hu20D7−II−b)に提供されるような重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を有するベクターを使用して哺乳類細胞から調製する。
【0173】
本質的に実施例4(上掲)に記載したようにBIAcore分析によりアッセイしたとき、hum20D7はヒトIL−23Rに関して131pMのKを有する。
【0174】
hum20D7の生物学的活性は、本質的に実施例6(上掲)に記載したようにヒト脾細胞アッセイを使用しても評価する、ただし脾細胞はマウスではなくヒト脾臓から得て、抗CD3e抗体は使用せず、かつIL−17ではなくIFN−γが読み出しある。このアッセイは、ヒト初代脾細胞によるIFN−γ産生のレベルを決定することによってサンプル中のIL−23の活性を測定する。ヒト脾細胞は、様々な濃度の抗IL−23R抗体hum20D7の存在下、または抗体の不在下で、ヒトIL−23(170pM)に曝す。IFN−γはサンドウィッチELISAによって検出する。hum20D7は、ヒト脾細胞アッセイにおいて34pMのIC50を示す。
【0175】
hum20D7の生物学的活性は、本質的にParhamら、(2002年)J.Immunol.168
:5699頁中に記載されたように、KIT225STAT−3リン酸化アッセイを使用してさらに評価する。ヒトKIT225細胞、白血病性のT細胞系列は、様々な濃度の抗IL−23R抗体hum20D7の存在下、または抗体の不在下で、138pMのヒトIL−23で刺激する。IL−23活性はSTAT3リン酸化のレベルを検出することによって測定する。hum20D7は、KIT225アッセイにおいて34pMのIC50を示す。
【0176】
表4は、配列表中の配列の簡単な記載を与える。
【0177】
【表4−1】

【0178】
【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−59351(P2013−59351A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−285068(P2012−285068)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2009−551703(P2009−551703)の分割
【原出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】126 East Lincoln Avenue,Rahway,New Jersey 07065−0907 U.S.A.
【Fターム(参考)】