説明

操作スイッチ用カバー部材及びその製造方法

【課題】長期間透光表示部以外での光の放射を防止しつつ、表面操作部から強い光を放射させ易い操作スイッチ用カバー部材を提供する。
【解決手段】光源13からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定の放射面領域15から放射される照光シート10と、照光シート10の放射面領域15上に接触して配置され、表面側からスイッチ操作が行われる表面操作部41とを備え、表面操作部41は、放射面領域15からの光が透過して表面側から視認可能に構成された透光表示部45を有する操作スイッチ用カバー部材であり、照光シート10は光が導かれるシート状のコア層21を備え、放射面領域15以外の領域では、コア層21の表面がクラッド層23により覆われて、光がクラッド層23により反射されながらコア層21内で導かれるように構成され、放射面領域15では、表面操作部41とコア層21とがクラッド層23より大きい屈折率を有する易放射部22を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光がシート状の内部を通して導かれ、所定位置から放射される照光シートを用いた操作スイッチ用カバー部材と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光がシート状の内部を通して導かれ、所定の領域で放射されるように構成された照光シートが種々の分野で提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、液晶パネルのバックライト等に利用される導光板であって、光源からの光を側面で受けて、表面全体を均一に発光させるものが提案されている。ここでは、導光板が可撓性部材で形成されており、導光板の複数の位置に光散乱部が設けられ、この光散乱部によって導光板に沿って導光された光を表面から放射させるようにしている。このような導光板では、光散乱部を導光板全体ではなく、特定の一部の位置だけに設ければ、その部位だけ光を強くすることも可能である。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2には、このような照光シートを用いた操作スイッチ用カバー部材が提案されており、導光板内に広がる光の一部をキーボタン側に反射させるための反射パターンが少なくとも一つ設けられることでキーパッドが構成されている。ここでは、導光板内に広がる光が反射パターンにより局部的に放射されることで、キーボタンから光が放射されるようになっている。反射パターンが設けられていない領域では、空気層との境界で光を全反射させることにより、導光板内に広がる光が外部へ放射されないようになっている。
【特許文献1】特開2004−200093号公報
【特許文献2】特開2006−323843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの導光板等の照光シートを用いた操作スイッチ用カバー部材では、照光シートの表面に傷等の損傷が生じたり、照光シートの表面に塵埃等が付着すると、その部分で導光される光が乱反射し易くなり、光が放射される所定の放射面領域以外で光の放射量が増加し易かった。その一方、損傷や塵埃等の付着を防止するために照光シートの表面を保護層などで覆うとすれば、放射面領域から放射される光が減少する。
【0006】
そこで、この発明では、長期間透光表示部以外での光の放射を防止しつつ、表面操作部から強い光を放射させ易い操作スイッチ用カバー部材を提供することを課題とし、また、そのような操作スイッチ用カバー部材を容易に製造することが可能な製造方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材は、光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートの前記放射面領域上に接触して配置され、表面側からスイッチ操作が行われる表面操作部とを備え、前記表面操作部は、前記放射面領域からの光が透過して表面側から視認可能に構成された透光表示部を有する操作スイッチ用カバー部材において、前記照光シートは、前記光が導かれるシート状のコア層を備え、前記放射面領域以外の領域では、前記コア層の表面がクラッド層により覆われて、前記光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、前記放射面領域には、該放射面領域に対応した形状の開口部が形成され、該開口部において、前記表面操作部と前記コア層とが前記クラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の操作スイッチ用カバー部材は、請求項1に記載の構成に加え、前記易放射部は、前記コア層と一体に同一材料で形成された突起部からなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の操作スイッチ用カバー部材は、請求項1に記載の構成に加え、前記易放射部は、前記表面操作部と一体に同一材料で形成された突起部からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法であり、前記クラッド層を形成するためのクラッド層形成用シートの前記放射面領域に対応する位置に開口部を設け、前記クラッド層形成用シートの一方の面に、固定化することで前記コア層又は前記表面操作部を形成可能な流動性材料を付着させると共に前記開口部内に充填し、前記流動性材料を固定化することにより、前記クラッド層形成用シートに密着した前記コア層又は前記表面操作部を形成すると共に、前記開口部内に前記コア層又は前記表面操作部と一体の前記易放射部を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法は、請求項4に記載の構成に加え、前記クラッド層形成用シートの前記開口部を前記表面操作部又は前記コア層の一方により閉塞した状態で、他方を形成可能な前記流動性樹脂を充填して固定化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、放射面領域以外の領域では、光が導かれるシート状のコア層の表面がクラッド層により覆われているので、コア層表面に傷等が生じたり、塵埃等の異物が付着することで、光の乱反射や吸収などが生じることを防止し易い。そのため、コア層内で導かれる光が放射されて減衰されることを長期間防止することができる。
【0013】
一方、放射面領域では、表面操作部とコア層とがクラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されているので、クラッド層を介して光を放射させる場合に比べて、コア層内で導かれる光が易放射部を介して表面操作部に入射し易く、表面操作部からより強い光を放射させ易い。
【0014】
従って、長期間透光表示部以外での光の放射を防止しつつ、表面操作部から強い光を放射させることが可能な操作スイッチ用カバー部材を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、易放射部がコア層と一体に同一材料で形成された突起部からなるので、コア層内で導かれて易放射部に向かう光を全て易放射部に入射させることが可能である。そのため、表面操作部により強い光を供給して放射させることができる。
【0016】
請求項3に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、易放射部が表面操作部と一体に同一材料で形成された突起部からなるので、コア層内で導かれて易放射部に向かう光を直接表面操作部に供給することが可能である。そのため、表面操作部により強い光を供給して放射させることができる。
【0017】
請求項4に記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法によれば、前記クラッド層形成用シートに開口部を形成した後、クラッド層形成用シートの一方の面に流動性材料を付着すると共に開口部内に充填して固定化し、コア層又は表面操作部と易放射部とを形成するので、コア層又は表面操作部と易放射部とを同時に形成できて製造が容易であると共に、コア層又は表面操作部と易放射部との間に界面が形成されることを確実に防止でき、得られる操作スイッチ用カバー部材の表面操作部から放出される光を強くし易い。
【0018】
請求項5に記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法によれば、クラッド層形成用シートの開口部を表面操作部又はコア層の一方により閉塞した状態で、他方を形成可能な流動性樹脂を充填して固定化するので、易放射部と表面操作部又はコア層との間を密着させ易く、易放射部と表面操作部のとの間に空気層等が形成されることを防止できて、得られる操作スイッチ用カバー部材の表面操作部から放出される光をより強くし易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態1]
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0021】
図1乃至図3は、操作スイッチ用カバー部材を携帯電話機に使用した例である。
【0022】
この携帯電話機は、開口部30aを有する筐体30と、筐体30の開口部30aに配置された操作スイッチ用カバー部材としての操作パネル31と、筐体30の内部に操作パネル31と離間して対向配設された基体部32と、基体部32に固定されて操作パネル31に光を供給するLED等の光源13とを備えている。
【0023】
詳しくは、その基体部32には、基板33が設けられ、この基板33の所定位置には図示しない回路と接続されて互いに離間して配置された接点端子37が設けられており、これら各接点端子37間を離接すると共に押圧操作時の操作感を付与するためのメタルドーム47が配設され、このメタルドーム47と基板33とが弾性変形可能なシート48で覆われることにより、スイッチ操作時に弾性変形される押圧変形部39が形成されている。
【0024】
その基板33は、硬質のプリント基板やフレキシブルプリント基板等からなり、筐体30に固定して装着されている。この基板33には、図示しない多数の回路が設けられており、接点端子37が押圧操作部35に対応する位置に設けられている。
【0025】
また、メタルドーム47は、各スイッチ位置の対応する位置に配置され、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドーム形状を呈し、このメタルドーム47は基板33上に操作パネル31側に向けて凸となるように配置されている。
【0026】
このメタルドーム47は、周縁で接点端子37の一方に常時接触し、中央部で他方の接点端子37と離間した状態で配置され、後述するプランジャ部43aで押圧されることにより、メタルドーム47により接点端子37間が接続されるように構成されている。
【0027】
一方、操作パネル31は、表面側からスイッチ操作としての押圧操作が行われる押圧操作部35が縦横に複数配列して設けられている。この操作パネル31は、押圧操作部35の操作面31aを有する表面操作部としてのキーシート41と、キーシート41を背面側から照射可能な実施の形態1の照光シート10と、押圧操作部35への押圧操作で押圧変形部39を押圧可能なプランジャシート43とが、上方から順に積層されて接合されている。
【0028】
その照光シート10は、光源13からの光を面方向に供給することで、操作パネル31の各押圧操作部35に対応する複数の位置に設けられた放射面領域15から光を放射させるものである。この照光シート10は、光が内部で導光されるためのシート状のコア層21と、このコア層21の一方の表面を覆うクラッド層23とを備え、コア層21とクラッド層23とが密着して一体に接合されている。
【0029】
その放射面領域15には、クラッド層23に開口部25が設けられており、開口部25内に光が放出され易い易放射部22が配設されている。この易放射部22は開口部25の内側の全体に設けられている。
【0030】
この照光シート10のコア層21は、透明性を有し、光を面方向に透過させて導光する層である。このコア層21としては、可視光領域の光の全光線透過率が80%以上であることが好ましい。透過率が高い程、導光される光の減衰を抑えることができるからである。
【0031】
コア層21の屈折率は、高い程好ましく、例えば1.3以上とするのが好適である。後述するクラッド層23として使用可能な材料の選択の幅を広げられるからである。
【0032】
このコア層21は、可撓性を有することが好ましい。照光シートを変形させて配置し易くできるなど、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0033】
このようなコア層21を構成する材料としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマーなどを使用することができる。
【0034】
コア層21の厚さは、コア層21の用途等に応じて適宜選択することができるが、放射面領域15において所望の輝度が確保できる範囲で出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。但し、光源13と対向して光源13からの光が入射される入射面の面積は、光源13の対向する側の光の放射面の面積の少なくとも50%以上とする必要がある。
【0035】
このコア層21のクラッド層23側の表面は、鏡面であることが好ましい。鏡面であれば、導光される光がコア層21とクラッド層23との界面で乱反射して放射面領域15以外の部位でコア層21から光が放射することを抑制でき、導光性能を向上させることができるからである。
【0036】
この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。鏡面は、例えば成形型を用いてコア層21を成形する場合には、型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmの範囲となるものが好適である。
【0037】
コア層21の基板33側の表面も、クラッド層23側の表面と同様に鏡面であることが好ましい。導光性能を向上させ易いからである。
【0038】
この照光シート10のクラッド層23は、コア層21の少なくとも一方の面に積層一体化された層で、コア層21内の光が、コア層21との間の界面で反射されながらコア層21内を導光されるようにする層である。
【0039】
このクラッド層23は、少なくともコア層21の屈折率より小さいことが必要であり、コア層21の屈折率に対して0.1%以上小さくなることが好ましく、特に、1%以上小さくすることが好適である。クラッド層23の屈折率が大きい程、コア層21内を導光される光の全反射の条件が狭くなり、導光性能が低下するからである。
【0040】
このクラッド層23は、コア層21より透明度が低いものであってもよい。コア層21の表面が鏡面であるため、コア層21内で導かれる光はクラッド層23との間の界面で十分に反射でき、導光される光の反射条件に対する影響が小さいからである。
【0041】
透明性を有するクラッド層23の場合、コア層21内から漏れた光がクラッド層23の一部或いは全体から微弱な光として放射されることがある。その場合、漏れた光を意図的に放射させて意匠性を付与してもよく、また、クラッド層23の外側表面の放射面領域15を除く一部或いは全部に、漏れた光を反射させるための金属等の反射被膜や遮光被膜を設けて遮蔽してもよい。反射被膜を設けると、コア層21から漏れた光を再度コア層21に供給することができる。
【0042】
更に、クラッド層23は、可撓性を有することが好ましい。照光シートを変形させて配置し易くできるなど、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0043】
このクラッド層23を構成する材料としては、接着剤等の他の材料を介在させることなくコア層21と積層一体化できる材料であることが要求される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や他の樹脂、エラストマーなどを使用することができる。シリカ等のように多孔質空間内に空気を保持することで見かけの屈折率を小さくできる材料であってもよい。
【0044】
クラッド層23の厚さは、コア層21の鏡面に外部から傷等の損傷を防止できる保護機能を確保できる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。クラッド層23はコア層21との界面においてコア層21内で導光される光を反射させるために使用される層であるため、厚さの影響が少ないからである。
【0045】
照光シート10の易放射部22は、コア層21内で導かれる光が外部に放射され易くするためのものであり、クラッド層23の開口部からなる開口部25内の全体に配設されている。
【0046】
この易放射部22は、コア層21と同様に可視光領域の光の全光線透過率が高い材料から形成されており、クラッド層23より大きい屈折率を有する必要がある。コア層21内の表面側へ向かう光の全反射の条件をクラッド層23より緩和して、コア層21内で導かれる光をコア層21の表面から放射し易くするためである。
【0047】
この易放射部22の屈折率は、クラッド層23より大きい屈折率の範囲で適宜選択することが可能である。この易放射部22の屈折率をコア層21の屈折率以上とすると、コア層21内から易放射部22側へ向かう光を全て易放射部22へ入射させることができて好ましい。
【0048】
このような易放射部22を構成する材料は、適宜選択することが可能であるが、この実施の形態1では、コア層21と同一材料により一体に形成されており、コア層21の一部が突出した突起部として形成されている。このようにすればコア層21と易放射部22との間に界面が形成されないため、特に好適である。
【0049】
次に、操作パネル31のキーシート41は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能であると共に弾性変形可能な樹脂により平板状に形成された硬質樹脂シートなどからなる。この実施形態では、キーシート41は、操作パネル31の形状を保持できると共に押圧操作が可能な程度の強度を有している。
【0050】
このキーシート41には、筐体30の開口部30aから露出される面に操作面31aが設けられており、この操作面31aとは反対側の面に、光を遮断可能な印刷層からなる遮光層41aが設けられている。押圧操作部35等の所定位置には、文字、線図等の各種の形状で遮光層41aを抜くことで、即ち、遮光層41aを存在させないことで、光が透過可能な透光表示部45が形成されており、透光表示部45を透過した光が操作パネル31の表面側から視認されるようになっている。ここでは、透光表示部45に有色の透光性加飾印刷層が設けられており、透光する光が着色されるようになっている。
【0051】
このキーシート41は、照光シート10の放射面領域15に設けられた易放射部22と、接着剤や両面テープ等の接着手段を介在させることなく、直接密着して接続されているのが好ましい。照光シート10の易放射部22から放射されてキーシート41に入射される光の減衰を抑制するためである。一方、照光シート10のクラッド層23の表面とは接着手段を用いてキーシート41と接合されていてもよい。
【0052】
また、このキーシート41の屈折率は大きいことが好ましく、コア層21と易放射部22とが同一材料から構成されている場合、少なくともクラッド層23より大きい屈折率とすることが好ましい。キーシート41がクラッド層23以下の屈折率の場合、易放射部22とキーシート41との間の界面において光を放射し難くなるからである。特に、キーシート41の屈折率をコア層21以上とすれば、易放射部22とキーシート41との間の界面において、易放射部22側からの光の反射を防止できる。
【0053】
次に、操作パネル31のプランジャシート43は、キーシート41の複数位置の押圧操作部35を含む大きさの平坦なシート形状部43bと、このシート形状部43bの押圧変形部39と対向する面の押圧操作部35に対応する位置にそれぞれ突設された複数のプランジャ部43aとを備えている。
【0054】
このプランジャシート43は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルの単体若しくはそれらの複合物、シリコーンゴム等から成形されている。このプランジャシート43は、この実施の形態1のようにコア層21の表面に接着剤や両面テープ等の接着手段を介在させることなく、直接密着して接合されていてもよい。この場合、プランジャシート43としてコア層21の屈折率より小さいものを使用すれば、クラッド層23と同様の導光機能を得ることが可能である。
【0055】
プランジャシート43のシート形状部43bは、操作パネル31を薄肉に形成するために、できるだけ薄肉に形成されており、また、キーシート41の弾性変形を阻害し難くするために、キーシート41より大幅に軟質に形成されている。プランジャシート43に切れ込み(スリット)を設けることで、弾性変形を容易にしてもよい。
【0056】
一方、前記光源13は、図1及び図2に示すように、放射面領域15とは異なる配置位置に設けられ、光源配置孔29がプランジャシート43及びコア層21に設けられており、このLED等の光源13が内部に収容されるようになっている。この光源13の配置位置周辺では、クラッド層23の表面に光源13からの光を遮光する遮光層27が設けられている。
【0057】
この遮光層27は、図2に示すように、光源13からの光がクラッド層23を透過して直接外部に放射されることを防止する層であり、光源13の直上及びその周囲に配置され、放射面領域15には存在させないことが要求される。遮光層27の配置される範囲は、光源13からコア層21に供給された光がコア層21とクラッド層23との界面に達した際、略全反射可能となるような入射角となるまでの範囲を覆うように配置されることが好ましい。
【0058】
この遮光層27は光を確実に遮光できる不透明な層からなり、クラッド層23と共に変形可能なものが好適である。また、遮光層27は不透明であると共に反射効果を備えたものであってもよい。この遮光層27はクラッド層23に印刷等により直接接合されていてもよいが、接着剤や両面粘着テープ等の他の層を介して接合されていてもよい。コア層21に直接接触しないため、コア層21内で導光される光に対する影響がないからである。
【0059】
このような遮光層27としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属などを使用することができる。この遮光層27の厚さは、十分な遮光性が得られる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されるのが好ましい。
【0060】
このような携帯電話機では、基板33に固定された光源13を発光させると、コア層21の光源配置孔29内で点光源から四方に放射され、照光シート10に入射される。コア層21の面方向に対して大きく交差する方向で入射した光は、コア層21及びクラッド層23を透過し、遮光層27に達して遮光される。コア層21の面方向に沿って反射可能な条件で入射された光は、クラッド層23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。
【0061】
コア層21により導光される光が易放射部22に達すると、クラッド層23より屈折率の大きい易放射部22に入射する。この易放射部22には、クラッド層23との界面では反射される光であっても入射可能である。この光が、更に易放射部22とキーシート41との界面からキーシート41側に放射され、透光表示部45を透過してキーシート41の表面側から視認される。コア層21により導光される光のうち、易放射部22に入射されない光は、更にコア層21内で導光され、他の易放射部22に達して同様にしてキーシート41から放射される。
【0062】
また、押圧操作を行うには、操作パネル31の複数の押圧操作部35の一部をキーシート41の操作面31a側から押圧する。すると、操作パネル31がキーシート41の弾性により弾性変形し、プランジャシート43のプランジャ部43aが下降し、プランジャ部43aにより押圧変形部39が押圧される。そして、照光シート10と共にメタルドーム47が弾性変形され、クリック動作感が得られた状態で、メタルドーム47により接点端子37間が導通され、各種の処理が実行される。
【0063】
以上のような携帯電話機の操作パネル31によれば、光が導光されるシート状のコア層21の表面がクラッド層23により覆われているので、コア層21表面に傷等が生じたり、塵埃や接着剤等の各種の異物が付着することで、光の乱反射や吸収が生じることを防止できる。そのため、コア層21内で導かれる光が、放射面領域15以外の領域で放射されて減衰されることを長期間防止することができる。
【0064】
一方、放射面領域15では、キーシート41とコア層21とが、クラッド層23より大きい屈折率を有する易放射部22を介して接続されているので、クラッド層23を介して光を放射させる場合に比べて、コア層21内で導かれる光を易放射部22を介してキーシート41に入射させ易い。即ち、コア層21内で導かれる光は、コア層21の屈折率よりコア層21に隣接する層の屈折率が低い程反射され易いため、易放射部22がクラッド層23より大きい屈折率を有していると、クラッド層23より反射を少なく抑えて光を放射させ易くできる。そのため、易放射部22を介してキーシート41に入射させて、キーシート41の透光表示部45からより強い光を放射させることが可能である。
【0065】
特に、この実施の形態1では、易放射部22がコア層21と一体に同一材料で形成された突起部からなるので、コア層21内で導かれて易放射部22に向かう光を全て易放射部22に入射させることが可能である。そのため、キーシート41により強い光を供給して放射させることができる。
【0066】
従って、このような操作パネル31では、長期間放射面領域15以外の領域での光の放射を防止しつつ、キーシート41の透光表示部45から強い光を放射させることが可能である。
【0067】
次に、この実施の形態1の携帯電話機の操作パネル31の製造方法の一例について説明する。
【0068】
まず、予めクラッド層23を形成するためのクラッド層形成用シートを、表面が鏡面となるようにして作製する。このクラッド層形成用シートには、放射面領域15に対応する位置に開口部25を形成しておく。
【0069】
そして、予め作製されたキーシート41をクラッド層形成用シートの一方の面に接合して、開口部25をキーシート41により閉塞する。
【0070】
この状態で、クラッド層形成用シートの他方の面に、コア層21を形成するための流動性材料を塗布等により付着させると共に、開口部25の内部に流動性材料を充填する。この流動性材料とは、液体又は粘性体等の変形自在な形態を有し、硬化或いは固化等の固定化により、前述のようなコア層21及び易放射部22を構成できる材料で、例えば溶融状態の熱可塑性樹脂や未硬化の硬化性樹脂等である。
【0071】
流動性材料を付着させる際には、クラッド層形成用シートとは反対側の流動性材料の表面も、出来るだけ均一に、例えば、成形型を用いて鏡面に形成するのが好ましい。
【0072】
その後、流動性材料を固定化することで、クラッド層形成用シートに密着した状態のコア層21を形成すると共に、コア層21と一体の易放射部22を開口部25内全体に形成する。
【0073】
更に、コア層21のクラッド層形成用シートとは反対の面に予め成形されたプランジャシート43を接合する。なお、流動性樹脂をクラッド層形成用シートに付着させた後、予め成形されたプランジャシート43を流動性樹脂の表面に積層してから固定化することで、プランジャシート43を接合した状態でコア層21を形成することも可能である。これにより操作パネル31を製造することができる。
【0074】
以上のようにして操作パネル31を製造すれば、クラッド層形成用シートに開口部25を形成した後、クラッド層形成用シートの一方の面に流動性材料を付着すると共に開口部25内に充填して固定化することで、コア層21と易放射部22とを形成したので、コア層21と易放射部22とを同時に形成できて製造が容易である上、コア層21と易放射部22との間に界面が形成されることが確実に防止されており、放出される光を強くし易い。
【0075】
また、クラッド層形成用シートの開口部25をキーシート41により閉塞した状態で、流動性樹脂を開口部25に充填して固定化するので、易放射部22の表面をキーシート41に容易に密着させることができ、易放射部22とキーシート41との間に空気層等が形成されることを防止することが可能であり、得られる操作パネル31から放出される光をより強くすることができる。
【0076】
なお、上記実施の形態1は、この発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態1では、コア層21の一方の面にクラッド層23を備えた例について説明したが、コア層21の両面にクラッド層23を備えていてもよい。その場合、プランジャシート43は直接コア層21に接触しないため、接着手段を用いて接合することが可能となる。
【0077】
また、上記実施の形態1では、操作パネル31に押圧操作可能な押圧操作部35を設けた例について説明したが、押圧することなく接触操作を行うものであってもよい。
【0078】
更に、上記では、易放射部22をコア層21と同一材料により一体に形成したが、易放射部22をコア層21と異なる材料により形成したものであってもよい。
【0079】
また、上記では、キーシート41として、硬質樹脂シートからなる例について説明したが、例えば、ステンレス鋼等の金属からなる平板状の薄肉シートに、透光表示部45として貫通孔を設け、この貫通孔に透光性樹脂を封入したような複合材料製のシートなど、他の材料からなるものであってもよい。
【0080】
更に、上記では、プランジャシート43をコア層21と別体に形成したが、プランジャ部43aをコア層21に一体に成形することも可能である。
【0081】
また、上記では、操作パネル31を製造する際、予め形成されたクラッド層形成用シート及びキーシート41を用いて流動性材料によりコア層21を形成したが、特に限定されるものではなく、流動性材料によりキーシートを形成するようにしてもよい。
[実施の形態2]
【0082】
図4及び図5は実施の形態2を示す。
【0083】
この実施の形態2の携帯電話機では、実施の形態1とは異なり、操作パネル31は設けられておらず、代わりに表面操作部としての多数の押し釦49を備えた操作スイッチ用カバー部材としての押し釦シート51が設けられている。この押し釦シート51は上面側から硬質の筐体30により覆われており、各押し釦49は筐体30に多数設けられた釦用開口部30bから露出してそれぞれ押圧可能に配置されている。一方、基体部32では、基板33とメタルドーム47との上面がメタルドーム固定シート48により被覆されている。
【0084】
この携帯電話機の押し釦シート51は、照光シート10を備え、照光シート10の一方の面の多数の放射面領域15にそれぞれ押し釦49が接合され、他方の面にプランジャシート43が接合されている。
【0085】
各押し釦49には、照光シート10側にフランジ部49aが設けられ、このフランジ部49aから照光シート10側に突出して突起部としての易放射部52が一体に設けられている。各押し釦49は、この易放射部52が照光シート10の開口部25に配置されると共に、フランジ部49aがクラッド層23の表面に接した状態で、照光シート10に固定されている。ここでは、易放射部52の端面がコア層21と密着して接合されている。また、易放射部52の端面の全面が透光表示部となっている。
【0086】
この押し釦シート51では、押し釦49のフランジ部49aが筐体30の釦用開口部30bの基板33側に設けられた拡径部30c内に収容された状態で、押し釦シート51が上面側から筐体30で支持されている。なお、照光シート10の押し釦49が配置されていない上表面は筐体30により覆われている。
【0087】
照光シート10の基板33側には、実施の形態1と同様のプランジャシート43が、接着手段を介在させることなく接合されている。
【0088】
その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0089】
このような携帯電話機であっても、実施の形態1と同様に、長期間、放射面領域15以外の領域での光の放射を防止しつつ、押し釦シート51の透光表示部45から強い光を放射させることが可能である。
【0090】
ここでは、易放射部52が押し釦49と一体に同一材料で形成された突起部からなるので、コア層21内で導かれて易放射部52に向かう光を直接押し釦49に供給することが可能である。そのため、押し釦49により強い光を供給して放射させることができる。
【0091】
また、照光シート10や押し釦49が筐体30内に配置されて支持されているため、照光シート10やプランジャシート43のシート形状部43bを十分に薄肉に柔軟に形成することが可能であり、押し釦49の押圧操作時の操作性を向上できると共に、メタルドーム47による明確なクリック操作感を得易くできる。
[実施の形態3]
【0092】
図6及び図7は実施の形態3を示す。
【0093】
この携帯電話機では、筐体30の開口部30aに実施の形態1とは異なる操作パネル55が設けられている。この操作パネル55は、表面側に複数の操作面55aを有するキーシート56が配置され、このキーシート56の基板33側に照光シート10及びプランジャシート43が接着手段を介することなく接合されている。
【0094】
この操作パネル55のキーシート56は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能であると共に弾性変形可能な樹脂により平板状に形成された硬質樹脂シートからなり、操作パネル55の形状を十分に保持できると共に押圧して弾性変形可能な程度の強度を有している。このキーシート56では、多数の操作面55aが、図6に示すように、それぞれ略U字状に3方に形成された貫通スリット57により区画されている。
【0095】
また、この操作パネル55の照光シート10は、実施の形態1と同様に構成されているが、クラッド層23がエラストマー或いは軟質の樹脂により形成されており、クラッド層23の一部がキーシート56の貫通スリット57内を封止している。
【0096】
更に、この操作パネル55では、照光シート10のコア層21及びクラッド層23並びにプランジャシート43はキーシート56に比べて十分に軟質に形成されており、照光シート10及びプランジャシート43はキーシート56に支持されている。
【0097】
その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0098】
このような操作パネル55を有する携帯電話機であっても、実施の形態1と同様に、長期間放射面領域15以外の領域での光の放射を防止しつつ、キーシート56の透光表示部45から強い光を放射させることが可能である。
【0099】
しかも、この携帯電話機では、各操作面55aが貫通スリット57により区画されており、この貫通スリット57内が軟質のクラッド層23により封止されているので、各操作面55aが押圧操作時に弾性変形し易いと共に、一部の操作面55aを押圧した際に隣接する操作面55aに変形等の影響を与え難い。そのため、押圧操作時の操作性を向上でき、また、明確なクリック操作感を得やすい。同時に、貫通スリット57をクラッド層23により封止しているため、貫通スリット57から塵埃や水分が内部に侵入することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の実施の形態1の操作スイッチ用カバー部材を備えた携帯電話機の部分平面図である。
【図2】同実施の形態1の図4のA−A断面図である。
【図3】同実施の形態1の図1のB−B断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2の操作スイッチ用カバー部材を備えた携帯電話機の部分平面図である。
【図5】同実施の形態2の携帯電話機の図4のC−C断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の操作スイッチ用カバー部材を備えた携帯電話機の部分平面図である。
【図7】同実施の形態3の携帯電話機の図6のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0101】
10 照光シート
13 光源
15 放射面領域
21 コア層
22 易放射部
23 クラッド層
25 開口部
30 筐体
31 操作パネル
33 基板
35 押圧操作部
39 押圧変形部
41 キーシート
43 プランジャシート
45 透光表示部
47 メタルドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光がシート状の内部を通して導かれて、所定の放射面領域から放射される照光シートと、該照光シートの前記放射面領域上に接触して配置され、表面側からスイッチ操作が行われる表面操作部とを備え、前記表面操作部は、前記放射面領域からの光が透過して表面側から視認可能に構成された透光表示部を有する操作スイッチ用カバー部材において、
前記照光シートは、前記光が導かれるシート状のコア層を備え、
前記放射面領域以外の領域では、前記コア層の表面がクラッド層により覆われて、前記光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、
前記放射面領域には、該放射面領域に対応した形状の開口部が形成され、該開口部において、前記表面操作部と前記コア層とが前記クラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されていることを特徴とする操作スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記易放射部は、前記コア層と一体に同一材料で形成された突起部からなることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記易放射部は、前記表面操作部と一体に同一材料で形成された突起部からなることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ用カバー部材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法であり、
前記クラッド層を形成するためのクラッド層形成用シートの前記放射面領域に対応する位置に開口部を設け、
前記クラッド層形成用シートの一方の面に、固定化することで前記コア層又は前記表面操作部を形成可能な流動性材料を付着させると共に前記開口部内に充填し、
前記流動性材料を固定化することにより、前記クラッド層形成用シートに密着した前記コア層又は前記表面操作部を形成すると共に、前記開口部内に前記コア層又は前記表面操作部と一体の前記易放射部を形成することを特徴とする操作スイッチ用カバー部材の製造方法。
【請求項5】
前記クラッド層形成用シートの前記開口部を前記表面操作部又は前記コア層の一方により閉塞した状態で、他方を形成可能な前記流動性樹脂を充填して固定化することを特徴とする請求項4に記載の操作スイッチ用カバー部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−251364(P2008−251364A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91736(P2007−91736)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】