説明

操作スイッチ

【課題】表面操作部に光を導光することができ、しかも、表面操作部からより強い光を放射させ易い操作スイッチを提供する。
【解決手段】押圧操作が行われる操作面11aを有する表面操作部11と、表面操作部11と離間して対向する基体部12とを備えると共に、表面操作部11と基体部12との間には、光源13からの光が導かれて表面操作部11を照光可能な照光シート14を備え、基体部12は、表面操作部11側から押圧されて変形可能な押圧変形部20を備え、照光シート14は、シート状のコア層21及びコア層21の表面を覆うクラッド層22、23とを備えて光がクラッド層22、23により反射されながらコア層21内で導かれるように構成され、クラッド層22、23を密着させて基体部12に装着されていると共に、押圧変形部20に対向する位置に、表面操作部11が押圧されることにより押圧変形部20を押圧可能な押圧作動部31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押圧操作が行われる表面操作部から光が放射される操作スイッチ、特に、光源からの光が照光シートにより導かれて表面操作部を照射するように構成された操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光をシート状の内部を通して導き、表面の所定の放射面領域で放射させるように構成された照光シートを使用して、スイッチ操作が行われる表面操作部から光を放射させるように構成された操作スイッチが提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、表面操作部としてのキーボタンを設けたキーパッドの下部に、光源からの光を導くための導光部材が配置され、この導光部材に光をキーボタン側に向けて反射させる反射パターンが設けられたものが提案されている。ここでは、導光部材として、光を透過可能な材料を成形して形成された照光シートを使用することが可能とされている。
【0004】
このような操作スイッチでは、より少ない光源から光を放射させて、複数のキーボタンに光を照光することが可能である。
【特許文献1】特開2006−124241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、照光シートを用いて表面操作部から光を放射させる従来の操作スイッチでは、表面操作部であるキーボタンはキーパッドに支持された状態で装着され、また、照光シートはキーパッドと基板との間に装着されている。そのため、表面操作部を支持するための構造と光を導光するための構造とが別々に設けられており、構造が複雑になり易かった。
【0006】
また、光を透過可能な材料からなる照光シートが、基板やその表面に配置される各種の部材上に密着して配置されているため、照光シート内で導かれる光が基板や各種の部材の表面性状により乱反射されたり、吸収され易かった。更に、この照光シートは表面に傷や
塵埃等が付着し易く、その傷や塵埃等により乱反射され易かった。その結果、照光シート内で導かれる光が減衰され易く、表面操作部から放射される光が弱くなり易かった。
【0007】
そこで、この発明では、簡単な構成で表面操作部を装着できると同時に表面操作部に光を導光することができ、しかも、表面操作部からより強い光を放射させ易い操作スイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、押圧操作が行われる操作面を有する表面操作部と、前記表面操作部と離間して対向する基体部とを備えると共に、前記表面操作部と前記基体部との間には、光源からの光がシート状の内部を通して導かれて前記表面操作部を照光可能な照光シートを備え、前記表面操作部は、前記照光シートに押圧操作可能に支持され、前記基体部は、前記表面操作部の前記操作面に対応する位置に、前記表面操作部側から押圧されて変形可能な押圧変形部を備え、前記照光シートは、シート状のコア層及び該コア層の表面を覆うクラッド層を備えて前記光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、前記クラッド層を密着させて前記基体部に装着されていると共に、前記押圧変形部に対向する位置に、前記表面操作部が押圧されることにより前記押圧変形部を押圧可能な押圧作動部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記押圧作動部は、前記コア層に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記押圧変形部は、弾性変形可能な弾性ドームを備え、前記弾性ドームが前記基体部側の前記クラッド層により固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記基体部側の前記クラッド層は、前記弾性ドームの前記押圧作動部により押圧される部位に貫通孔を有し、該貫通孔を通して前記押圧作動部が前記弾性ドームを直接押圧可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記コア層は、前記光源の配置位置から前記表面操作部の配置位置まで基板に沿って水平に連続していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記押圧作動部は、前記基体部側の前記クラッド層に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の構成に加え、前記照光シートの前記表面操作部に対応する位置には、前記表面操作部側の前記クラッド層に開口部が設けられ、該開口部から露出される前記コア層の表面が粗面化されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の構成に加え、照光シートの前記表面操作部に対応する位置には、前記表面操作部側の前記クラッド層に開口部が設けられ、該開口部において、前記表面操作部と前記コア層とが前記クラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか一つに記載の構成に加え、前記光源は、前記コア層に設けられた光源配置孔に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、基体部に装着された照光シートに表面操作部が押圧操作可能に支持され、照光シートに基体部の押圧変形部を押圧可能な押圧作動部が設けられているので、表面操作部を支持して押圧操作するための構造と光源からの光を表面操作部に導くための構造とを別々に設ける必要がなく、操作スイッチの構成を簡単にできる。
【0018】
同時に、照光シートがコア層とコア層の両面を覆うクラッド層とを備え、光がクラッド層により反射されながらコア層内で導かれるように構成されているので、照光シートが他の部材に接触する部位に配置されたり、傷や塵埃などが付着するような部位に配置されていても、コア層内で導かれる光が他の部材、傷、塵埃等の影響で乱反射したり、吸収されるなどにより減衰されることを防止できる。
【0019】
そのため、簡単な構成で表面操作部を装着できると同時に表面操作部に光を導光することができ、しかも、表面操作部からより強い光を放射させ易い操作スイッチを提供することが可能である。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、押圧作動部がコア層に設けられているので、コア層内で導かれる光を押圧作動部を利用して乱反射させることができ、コア層内で導かれる光を放射させるため手段を簡単に構成し易い。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、押圧変形部が弾性変形可能な弾性ドームを備え、この弾性ドームが基体部側のクラッド層により固定されているので、弾性ドームを固定するための部材を省略でき、部品点数を少なくして構成をより簡単にし易い。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、基体部側のクラッド層が弾性ドームの押圧作動部により押圧される部位に貫通孔を有し、この貫通孔を通して押圧作動部が弾性ドームを直接押圧可能に構成されているので、押圧操作時に弾性ドーム部が変形することで生じる押圧操作感が表面操作部に伝わり易く、押圧操作時の操作感を向上させ易い。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、コア層が光源の配置位置から表面操作部の配置位置まで基体部に沿って水平に連続しているので、コア層内で導かれる光が過剰に乱反射されて外部に放射されることを防止することができ、照光シートの導光性能を向上し易い。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、押圧作動部が基体部側のクラッド層に設けられているので、コア層の表面形状を平坦に形成し易く、コア層内で導かれる光が過剰に乱反射されて外部に放射されることを防止することができ、照光シートの導光性能を向上し易い。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、照光シートの表面操作部に対応する位置には、表面操作部側のクラッド層に開口部が設けられ、この開口部から露出されるコア層の表面が粗面化されているので、開口部の位置で光を乱反射させて放射させることができ、表面操作部から開口部の輪郭に応じた形状の光を強く放射させることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、照光シートの表面操作部に対応する位置には、表面操作部側のクラッド層に開口部が設けられ、この開口部において表面操作部とコア層とがクラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されているので、易放射部ではクラッド層を介して光を放射させる場合に比べて強い光を放射させることができ、表面操作部から開口部の輪郭に応じた形状の光を強く放射させることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、光源がコア層に設けられた光源配置孔に収容されているので、光源からの光をコア層に入射させ易く、より強い光を表面操作部から放射させ易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
[実施の形態1]
【0029】
図1及び図2は、操作スイッチとしての携帯電話機の例である。
【0030】
この携帯電話機は、縦横に配列して設けられた複数の開口部10aを有する中空の筐体10と、筐体10の開口部10aにそれぞれ配置され、押圧操作が行われる操作面11aを有する表面操作部としての多数の押釦11と、押釦11と離間して対向するように筐体10内に固定された基体部12と、基体部12に装着されて複数の押釦11を支持すると共に、LED等の光源13からの光がシート状の内部を通して押釦11に導かれるように構成された照光シート14とを備えている。
【0031】
詳しくは、その基体部12には、基板16が設けられ、この基板16の所定位置には図示しない回路と接続されて互いに離間して配置された接点端子17が設けられており、これら各接点端子17間を離接すると共に押圧操作時の操作感を付与するための弾性ドームとしてのメタルドーム19が配設されている。このメタルドーム19は、基板16と共に弾性変形可能な弾性ドーム固定シートとしてのメタルドーム固定シート18で覆われることにより基板16に固定され、スイッチ操作時に弾性変形される押圧変形部20を形成している。
【0032】
その基板16は、硬質のプリント基板やフレキシブルプリント基板等からなり、筐体10に固定して装着されている。この基板16には、図示しない多数の回路が設けられている。
【0033】
また、メタルドーム19は、弾性変形可能な中空立体形状を有する弾性ドーム形状を呈し、各押釦11の操作面11aに対応する基板16上の位置に、押釦11側に向けて凸となるように配置されており、押釦11側から押圧されることで変形されるようになっている。なお、メタルドーム19の頂部はメタルドーム固定シート18に設けられた貫通孔18aから露出している。
【0034】
このメタルドーム19は、周縁で接点端子17の一方に常時接触し、中央部で他方の接点端子17と離間した状態で配置され、後述するプランジャ部34で押圧されることにより、メタルドーム19により接点端子17間が接続されるように構成されている。
【0035】
次に、照光シート14は、基板16に装着されて押釦11を支持し、また、光源13からの光を押釦11に対応する位置に設けられた放射面領域15に導くように構成されている。
【0036】
この照光シート14は、光が内部で導光されるためのシート状のコア層21と、このコア層21の基体部12側の表面を覆うクラッド層22と、コア層21の押釦11側の表面を覆うクラッド層23とを備え、これらが密着して一体に接合されている。
【0037】
照光シート14の基体部12の押圧変形部20に対向する位置には、押釦11が押圧されることにより、基体部12の押圧変形部20を押圧可能な押圧作動部31が設けられている。この押圧作動部31はコア層21が立体的に成形されることで形成されており、押圧作動部31にはクラッド層22は設けられていない。
【0038】
押圧作動部31には、平面視において押釦11の外形形状より大きい範囲で薄肉に成形された易変形部32と、この易変形部32から押圧変形部20側に向けて突設されたプランジャ部34とが設けられている。ここでは、易変形部32がコア層21の押釦11側に平坦に設けられることで、コア層21が光源13の配置位置から放射面領域15まで基板に沿って水平に連続するように構成されている。
【0039】
また、易変形部32の基体部12側には基板16との間に中空部33が形成されている。この中空部33に基体部12の押圧変形部20が収容されており、この押圧変形部20のメタルドーム19の頂部に、プランジャ部34がメタルドーム固定シート18の貫通孔18aを通して当接している。
【0040】
このような照光シート14のコア層21は、透明性を有しており、可視光領域の光の全光線透過率は80%以上であることが好ましい。透過率が高い程、導光される光の減衰を抑えることができるからである。
【0041】
また、コア層21の屈折率は、高い程好ましく、例えば1.3以上とするのが好適である。後述するクラッド層22、23として使用可能な材料の選択の幅を広げられるからである。
【0042】
更に、このコア層21は、可撓性を有することが好ましい。易変形部32を変形し易くでき、また、照光シート14を変形させて配置し易くできるなど、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0043】
このようなコア層21を構成する材料としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマーなどを使用することができる。
【0044】
コア層21の厚さは、押圧変形部20を収容可能な中空部33及び押圧作動部31を形成した際にコア層21の押釦11側の表面が平坦に形成できると共に、放射面領域15における所望の輝度が確保できる導光性能が確保できる範囲で出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。但し、光源13と対向して光源13からの光が入射される入射面の面積は、光源13の対向する側の光の放射面の面積の少なくとも50%以上とする必要がある。
【0045】
このコア層21のクラッド層22、23が密着する表面は、鏡面であることが好ましい。鏡面であれば、導光される光がコア層21とクラッド層22、23との界面で乱反射して放射面領域15以外の部位でコア層21から光が放射することを抑制でき、導光性能を向上させることができるからである。
【0046】
この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。鏡面は、例えば成形型を用いてコア層21を成形する場合には、型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmの範囲となるものが好適である。
【0047】
なお、コア層21の押釦11側の表面では、後述するクラッド層23の開口部25から露出される部位が粗面化されている。粗面とすることで、コア層21内を導光された光が乱反射してコア層21の表面から放射し易くなるからである。
【0048】
この粗面は、各種の方法で形成することができ、例えば、コア層21の鏡面を成形型により成形する場合には、型面の所定位置の表面粗さを粗くして形成してもよい。その場合、型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置等により測定される算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上であれば好適である。クラッド層23の開口部の位置と粗面化する位置とのズレを防止するために、クラッド層23を形成後に、クラッド層23の表面と共に各種の方法により粗面を形成することも可能である。
【0049】
一方、照光シート14のクラッド層22、23は、コア層21内を進む光が界面で反射されながら導光されるように、コア層21の表面に積層一体化された層である。
【0050】
この実施の形態1では、コア層21の基体部12側に設けられたクラッド層22は、照光シート14の押圧作動部31を除く全面に設けられており、照光シート14が基体部12の表面に装着された状態で、コア層21が基体部12の表面と直接接触することを防止している。一方、コア層21の押釦11側に設けられたクラッド層23は、放射面領域15を除く全面に設けられており、放射面領域15にはクラッド層23を貫通する開口部25が設けられて、コア層21の表面を露出させている。
【0051】
このクラッド層22、23は、少なくともコア層21の屈折率より小さいことが必要であり、コア層21の屈折率に対して0.1%以上小さくなることが好ましく、特に、1%以上小さくすることが好適である。クラッド層22、23の屈折率が大きい程、コア層21内を導光される光の全反射の条件が狭くなり、導光性能が低下するからである。
【0052】
このクラッド層22、23は、コア層21より透明度が低いものであってもよい。コア層21内で導かれる光はクラッド層22、23との間の界面で反射されるため、導光される光の反射条件に対する影響が小さいからである。
【0053】
なお、押釦11側のクラッド層23が透明性を有する場合、コア層21内から漏れた光がクラッド層23の一部或いは全体から微弱な光として放射されることがある。その場合、漏れた光を意図的に筐体10から放射させて意匠性を付与してもよい。また、クラッド層23の外側表面の放射面領域15を除く一部或いは全部に、漏れた光を反射させるための金属等の反射被膜や遮光被膜を設けて遮蔽してもよい。反射被膜を設けると、コア層21から漏れた光を再度コア層21に供給することができる。
【0054】
更に、クラッド層22、23は、可撓性を有することが好ましい。照光シート14を変形させ易くできるなど、配置や用途の自由度が向上するからである。
【0055】
このようなクラッド層22、23を構成する材料としては、接着剤等の他の材料を介在させることなくコア層21と積層一体化できる材料であることが好ましい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂や他の樹脂、エラストマーなどを使用することができる。シリカ等のように多孔質空間内に空気を保持することで見かけの屈折率を小さくできる材料であってもよい。
【0056】
クラッド層22、23の厚さは、コア層21の表面に外部から傷等の損傷を防止できる保護機能を確保できる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されることが好ましい。クラッド層22、23はコア層21との界面においてコア層21内で導光される光を反射させるために使用される層であるため、厚さの影響が少ないからである。
【0057】
次に、光源13は、LED等からなり、図1及び図2に示すように、放射面領域15とは異なる基体部12上の配置位置に固定して設けられている。この光源13は、照光シート14のクラッド層22及びコア層21に形成された光源配置孔29に収容されている。ここでは、光源配置孔29内に配置された光源13の少なくとも一部が、押圧作動部31に設けられたコア層21の易変形部32の基板16からの距離となるように配置されることが好ましい。光源13から放射される光が易変形部32に導光され易くなるからである。
【0058】
また、この光源13の配置位置周辺では、クラッド層23の表面に光源13からの光を遮光するための遮光層27が設けられている。
【0059】
この遮光層27は、図2に示すように、光源13からの光がクラッド層23を透過して直接外部に放射されることを防止する層であり、光源13の直上及びその周囲に配置されている。遮光層27の配置される範囲は、光源13からコア層21に供給された光がコア層21とクラッド層23との界面に達した際、略全反射可能となるような入射角となるまでの範囲を覆うように配置されることが好ましい。
【0060】
この遮光層27は光を確実に遮光できる不透明な層からなり、クラッド層23と共に変形可能なものが好適である。また、遮光層27は不透明であると共に反射効果を備えたものであってもよい。この遮光層27はクラッド層23に印刷等により直接接合されていてもよいが、接着剤や両面粘着テープ等の他の層を介して接合されていてもよい。コア層21に直接接触しないため、コア層21内で導光される光に対する影響がないからである。
【0061】
このような遮光層27としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂やエラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属などを使用することができる。この遮光層27の厚さは、十分な遮光性が得られる範囲で、出来るだけ薄肉に形成されるのが好ましい。
【0062】
次に、各押釦11は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能な硬質の樹脂により成形された成形品からなる。各押釦11は、照光シート14側にフランジ部11bを備え、このフランジ部11bから突出して筐体10の開口部10aから露出される面に操作面11aを備えている。
【0063】
この押釦11は、照光シート14の放射面領域15に、開口部25全体を塞ぐように配置されており、フランジ部11bが接着剤や両面テープ等の接着手段を用いてクラッド層23に接合されることで、照光シート14に支持されている。
【0064】
また、各押釦11のフランジ部11bの表面には、光が透過可能な透光表示部45が形成されており、透光表示部45を透過した光が押釦11の操作面11a側から視認されるようになっている。ここでは、有色の透光性加飾層が設けられており、透光する光が着色されるようになっている。この透光表示部45は、例えば、光を透過しない遮光層を設けると共に、文字、線図等の各種の形状で遮光層を抜くことで、即ち、遮光層を存在させないことで、所定形状の光が透過可能に構成されていてもよい。
【0065】
各押釦11は、携帯電話機に装着された状態で、押釦11のフランジ部11bが筐体10の開口部10aの基板16側に設けられた拡径部10c内に収容され、操作面11aが筐体10の開口部10aから露出して配置されている。なお、照光シート14の押釦11が配置されていない表面は筐体10により覆われている。
【0066】
このような携帯電話機では、基板16に固定された光源13を発光させると、コア層21の光源配置孔29内で点光源から四方に放射され、照光シート14に入射される。コア層21の面方向に対して大きく交差する方向で入射した光は、コア層21及びクラッド層22、23を透過し、基板16や遮光層27に達して遮光される。コア層21の面方向に沿って反射可能な条件で入射された光は、クラッド層22、23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。
【0067】
そして、コア層21内の押釦11側を進む光は易変形部32に入射され、クラッド層23及び中空部33内の空気層とにより反射されつつ易変形部32内で導かれ、放射面領域15に達して一部の光がクラッド層23の開口部25内の粗面化された表面で乱反射し、押釦11側に放射される。また、コア層21内の基体部12側を進む光は、押圧作動部31に達して一部の光が中空部33の内壁面やプランジャ部34において乱反射し、押釦11側に放射される。これらの光が押釦11に照射され、透光表示部45及び押釦11を透過して表面側に放射される。残部の光は、更にコア層21内で導光され、他の押釦11の位置で同様にして放射される。
【0068】
また、押圧操作を行うには、押釦11の操作面11aを押圧すると、照光シート14の押圧作動部31において易変形部が弾性変形し、押釦11と共にプランジャ部34が下降する。これにより、押圧作動部31のプランジャ部34により押圧変形部20が押圧される。そして、照光シート14と共にメタルドーム19が弾性変形され、クリック動作感が得られた状態で、メタルドーム19により接点端子17間が導通され、各種の処理が実行される。
【0069】
以上のような携帯電話機によれば、基体部12に装着された照光シート14に押釦11が押圧操作可能に支持され、この照光シート14に基体部12の押圧変形部20を押圧可能な押圧作動部31が設けられているので、押釦11を支持して押圧操作するための構造と光源13からの光を押釦11に導くための構造とを別々に設ける必要がなく、携帯電話機の構成を簡単にできる。
【0070】
同時に、照光シート14がコア層21とコア層21の両面を覆うクラッド層22、23とを備え、光がクラッド層22、23により反射されながらコア層21内で導かれるように構成されているので、照光シート14が基体部12に密着して装着されても、コア層21が基体部12の表面に直接接触しない。そのため、基体部12上の表面に、粗面や凹凸等の光が乱反射され易い部位や光が吸収され易い部位が存在していても、コア層21内を進む光が乱反射されたり、吸収されることを防止でき、コア層21内で導光される光の減衰を防止できる。
【0071】
また、照光シート14が筐体10に接触したり、筐体10の開口部10aと押釦11との間隙から塵埃等が侵入しても、光が導光されるコア層21の表面に傷や塵埃等が付着するようなことがなく、コア層21内を進む光が乱反射されたり、吸収されることを防止でき、コア層21内で導光される光の減衰を防止できる。
【0072】
その結果、簡単な構成で押釦11を装着できると同時に押釦11に光を導光することができ、しかも、押釦11からより強い光を放射させることが可能である。
【0073】
また、この携帯電話機では、押圧作動部31がコア層21に設けられているので、コア層21内で導かれる光を押圧作動部31を利用して乱反射させることができ、コア層21内で導かれる光を放射させるため手段を簡単に構成し易い。
【0074】
しかも、照光シート14の押釦11に対応する位置には、押釦11側のクラッド層23に開口部25が設けられ、この開口部25から露出されるコア層21の表面が粗面化されているので、開口部25の位置で光を乱反射させて放射させることができ、押釦11から開口部25の輪郭に応じた形状の光を強く放射させることができる。
【0075】
更に、この携帯電話機では、光源13がコア層21に設けられた光源配置孔29に収容されているので、光源13からの光をコア層21に入射させ易く、より強い光で押釦11から光を放射させ易い。
【0076】
加えて、コア層21が光源13の配置位置から易変形部31の押釦11の配置位置まで基板16に沿って水平に連続しているので、コア層21内で導かれる光が過剰に乱反射されて外部に放射されることを防止することができ、照光シート14の導光性能を向上し易い。
【0077】
また、この携帯電話機では、基体部12側のクラッド層22がメタルドーム19の押圧作動部31により押圧される部位に貫通孔18aを有し、この貫通孔18aを通してプランジャ部34によりメタルドーム19を直接押圧可能となっているので、押圧操作時にメタルドーム19が変形することで生じる押圧操作感が押釦11に伝わり易く、押圧操作時の操作感を向上し易い。
【0078】
なお、上記実施の形態1では、照光シート14の放射面領域15に、クラッド層23の開口部25から露出されるコア層21の表面が粗面化されている例について説明したが、クラッド層23に開口部25を設けたり、コア層21の表面を粗面化することなく、コア層21内で導かれる光を押圧作動部31だけで乱反射させて放射させるようにすることも可能である。
[実施の形態2]
【0079】
図3は、実施の形態2の携帯電話機を示す。
【0080】
この実施の形態2では、メタルドーム固定シート18の代わりに、照光シート14のクラッド層22によりメタルドーム19が基板16に固定されている。
【0081】
ここでは、コア層21の基体部12側の表面を覆うクラッド層22はコア層21と別部材として形成されており、押釦11側のクラッド層23が積層一体化されたコア層21をクラッド層22に密着させて固定することで照光シート14が構成されている。このクラッド層22は、実施の形態1のメタルドーム固定シート18と同様の形状を有しており、コア層21に形成された押圧作動部31にも設けられている。そして、押圧作動部31の中空部33は易変形部31とクラッド層22との間に形成されている。なお、クラッド層22とコア層21とが密着した密着面にはできるだけ気泡等が存在しないことが好ましい。気泡が存在することで、密着面における反射条件が局部的に異なることになり、放射される光が不均一になりやすいからである。
【0082】
その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0083】
このような携帯電話機であっても、実施の形態1と同様の作用効果が得られ、簡単な構成で押釦11を装着できると同時に押釦11に光を導光することができ、しかも、押釦11からより強い光を放射させることが可能である。
【0084】
更に、基体部12側のクラッド層22によりメタルドーム19が基板16に固定されているので、実施の形態1のようにメタルドーム19を基板16に固定するためのメタルドーム固定シート18を省略することができ、部品点数を少なくして構成をより簡単にすることができる。
[実施の形態3]
【0085】
図4及び図5は、この実施の形態3の携帯電話機を示す。
【0086】
この携帯電話機では、筐体40の一方の面に大きく開口して設けられた開口部40aに操作パネル41が設けられている。この操作パネル41には、表面側に複数の操作面41aを有するキーシート42が配置され、このキーシート42が照光シート14に支持されている。
【0087】
このキーシート42は、ポリカーボネート、PET等の光を透過可能であると共に弾性変形可能な樹脂により平板状に形成された硬質樹脂シート等からなり、押圧して弾性変形可能な程度の強度を有している。このキーシート42には、多数の操作面41aがそれぞれ略U字状に3方に形成された貫通スリット44により区画されて形成されている。ここではクラッド層23がエラストマー或いは軟質の樹脂により形成されており、クラッド層23の一部がキーシート42の貫通スリット44内を封止している。
【0088】
そして、この携帯電話の照光シート14では、放射面領域15においてクラッド層23に開口部25が設けられており、開口部25内に易放射部24が配設されている。易放射部24は開口部25の内側の全体に設けられている。この易放射部24は、コア層21内で導かれる光が外部に放射され易くするためのものである。
【0089】
このような易放射部24は、コア層21と同様に可視光領域の光の全光線透過率が高い材料から形成されており、クラッド層23より大きい屈折率を有している。コア層21内の表面側へ向かう光の全反射の条件をクラッド層23より緩和して、コア層21内で導かれる光をコア層21の表面から放射し易くするためである。
【0090】
この易放射部24の屈折率は、クラッド層23より大きい屈折率の範囲で適宜選択することが可能である。この易放射部24の屈折率をコア層21の屈折率以上とすると、コア層21内から易放射部24側へ向かう光を全て易放射部24へ入射させることができて好ましい。
【0091】
このような易放射部24を構成する材料は、適宜選択することが可能であり、コア層21と同一材料によりコア層21と一体に形成されいてもよく、キーシート42と同一材料によりキーシート42と一体に形成されていてもよい。更に、コア層21及びキーシート42とは別の材料により形成されていてもよい。
【0092】
このような易放射部24は少なくともコア層21やキーシート42と、接着剤や両面テープ等の接着手段を介在させることなく、直接密着して接続されている。照光シート14の易放射部24から放射されてキーシート42に入射される光の減衰を抑制するためである。
【0093】
更に、この携帯電話の照光シート14では、押圧作動部31が基体部12側のクラッド層22に設けられている。ここでは、クラッド層22に、中空部33及びプランジャ部34が形成されており、易変形部32はクラッド層22が薄肉にされることで形成されている。一方、コア層21には、実施の形態1のように押圧作動部31を構成する形状は設けられておらず、コア層21の全体において略一定の厚さの層状に形成されている。
【0094】
その他の構成は、実施の形態1、2と同様である。
【0095】
このような携帯電話機では、操作面41aから光を放射させる際には、基板16に固定された光源13からコア層21に光が入射され、面方向に沿って反射可能な条件で入射された光がクラッド層22、23により反射されながらシート状のコア層21の内部を通して導かれる。
【0096】
そして、クラッド層22、23により反射されながら導かれた光が易放射部24に達すると、クラッド層23より屈折率の大きい易放射部24に入射する。この易放射部24には、クラッド層23との界面では反射される光であっても入射可能である。
【0097】
この光が、更に易放射部24からキーシート42に放射され、透光表示部45を透過して押釦11の表面側から視認される。コア層21により導光される光のうち、易放射部24に入射されない光は、更にコア層21内で導光され、他の易放射部24に達して同様にして押釦11から放射される。
【0098】
以上のような操作パネル41を有する携帯電話であっても、実施の形態1と同様の作用効果が得られ、簡単な構成でキーシート42を装着できると同時にキーシート42の操作面41aに光を導光することができ、しかも、操作面41aからより強い光を放射させることが可能である。
【0099】
しかも、この携帯電話では、各操作面41aが貫通スリット44により区画されており、この貫通スリット44内が軟質のクラッド層23により封止されているので、各操作面41aが押圧操作時に弾性変形し易いと共に、一部の操作面41aを押圧した際に隣接する操作面41aに変形等の影響を与え難い。そのため、押圧操作時の操作性を向上でき、また、明確な操作感を得やすい。同時に、貫通スリット44がクラッド層23により封止されているので、貫通スリット44から塵埃や水分が内部に侵入することも防止できる。
【0100】
また、この携帯電話機では、照光シート14の放射面領域15に開口部25が設けられ、この開口部25においてキーシート42とコア層21とがクラッド層23より大きい屈折率を有する易放射部24を介して接続されているので、易放射部24ではクラッド層23を介して光を放射させる場合に比べて強い光を放射させることができ、押釦11から開口部25の輪郭に応じた形状の光を強く放射させることができる。
【0101】
更に、この携帯電話機では、押圧作動部31が基体部12側のクラッド層22に設けられているので、コア層21の表面形状を平坦に形成し易く、コア層21内で導かれる光が過剰に乱反射されて外部に放射されることを防止することができ、照光シート14の導光性能を向上し易い。
【0102】
なお、上記では、キーシート42として、硬質樹脂シートからなる例について説明したが、例えば、ステンレス鋼等の金属からなる平板状の薄肉シートに、透光表示部45として貫通孔を設け、この貫通孔に透光性樹脂を封入したような複合材料製のシートなど、他の材料からなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明の実施の形態1の携帯電話機の部分平面図である。
【図2】同実施の形態1の図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2の図1のA−A断面相当図である。
【図4】この発明の実施の形態3の携帯電話機の部分平面図である。
【図5】同実施の形態3の図1のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10 筐体
11 押し釦
12 基体部
13 光源
14 照光シート
15 放射面領域
16 基板
17 接点端子
18 メタルドーム固定シート
20 押圧変形部
21 コア層
22、23 クラッド層
24 易放射部
25 開口部
31 押圧作動部
32 易変形部
33 中空部
34 プランジャ部
45 透光表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作が行われる操作面を有する表面操作部と、前記表面操作部と離間して対向する基体部とを備えると共に、前記表面操作部と前記基体部との間には、光源からの光がシート状の内部を通して導かれて前記表面操作部を照光可能な照光シートを備え、
前記表面操作部は、前記照光シートに押圧操作可能に支持され、
前記基体部は、前記表面操作部の前記操作面に対応する位置に、前記表面操作部側から押圧されて変形可能な押圧変形部を備え、
前記照光シートは、シート状のコア層及び該コア層の表面を覆うクラッド層を備えて前記光が前記クラッド層により反射されながら前記コア層内で導かれるように構成され、前記クラッド層を密着させて前記基体部に装着されていると共に、前記押圧変形部に対向する位置に、前記表面操作部が押圧されることにより前記押圧変形部を押圧可能な押圧作動部が設けられていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
前記押圧作動部は、前記コア層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項3】
前記押圧変形部は、弾性変形可能な弾性ドームを備え、前記弾性ドームが前記基体部側の前記クラッド層により固定されていることを特徴とする請求項2に記載の操作スイッチ。
【請求項4】
前記基体部側の前記クラッド層は、前記弾性ドームの前記押圧作動部により押圧される部位に貫通孔を有し、該貫通孔を通して前記押圧作動部が前記弾性ドームを直接押圧可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の操作スイッチ。
【請求項5】
前記コア層は、前記光源の配置位置から前記表面操作部の配置位置まで基板に沿って水平に連続していることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の操作スイッチ。
【請求項6】
前記押圧作動部は、前記基体部側の前記クラッド層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項7】
前記照光シートの前記表面操作部に対応する位置には、前記表面操作部側の前記クラッド層に開口部が設けられ、該開口部から露出される前記コア層の表面が粗面化されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の操作スイッチ。
【請求項8】
照光シートの前記表面操作部に対応する位置には、前記表面操作部側の前記クラッド層に開口部が設けられ、該開口部において、前記表面操作部と前記コア層とが前記クラッド層より大きい屈折率を有する易放射部を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の操作スイッチ。
【請求項9】
前記光源は、前記コア層に設けられた光源配置孔に収容されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一つに記載の操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−251368(P2008−251368A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91818(P2007−91818)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】