説明

操作スイッチ

【課題】 デザインの制約を受けず、また押圧操作性を良好に維持し、分離独立したキー間に水滴が侵入した場合の静電容量の検出精度低下による接触操作性の悪化を防止できる操作スイッチを提供する。
【解決手段】
分離独立した複数のキー2を少なくとも備えた操作パネル1と、操作パネル1の背面側に順に、防水層7と、静電容量検出部8と、ライトガイド101と、メタルドーム111と、基板12と、を備え、防水層7の静電容量検出部8に接する面の、複数のキー2のそれぞれの外周に対向する位置に、溝15を形成し、操作パネル1と防水層7と静電容量検出部8とは一体に接合した操作スイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の操作スイッチに関する。より具体的には、携帯電話等の電子機器に用いる、接触操作性に優れた操作スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
表面操作部と静電容量検出部とが一体に接合されたスイッチ用シート部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。操作部を押圧することなく、指を接触させたり、摺動させる接触操作により、その操作が静電容量検出部に入力されて各種の処理が実行される。このようなスイッチ用シート部材を用いた操作スイッチでは、接触操作が行われる同一の操作部を押圧することにより、その押圧操作で内部に設けられた接点の導通を行い、接触操作とは別の処理が実行されるように構成されている。
【0003】
表面操作部は、背面側からの光が透過して表面側で視認されるように構成された透光表示部を備えると共に、静電容量検出部の上記透光表示部に対応する位置が光を透過可能に構成されている。このようなスイッチ用シート部材を用いると、確実な接触操作が可能であると共に薄型化し易く、しかも背面側から透過させる光が減衰され難くて透光表示部から十分な光を放射させ易くなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−140766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の表面操作部は複数のキーを備えており、これら複数のキーは中央キー、方向キーの他にも狭ピッチで多数個配列されているNUMERICキーやQWERTYキー等からなり、互いの押圧操作を阻害しないように独立分離した形で配置させることも多い。またデザイン上、キー間に加飾パネルを配置させ独立分離させることもある。そのような多数個配列されるNUMERICキーやQWERTYキーの比較的広い操作領域下にも接触操作可能にシート状の静電容量検出部が設けられ、接触操作性を快適なものにしている。
【0006】
しかしながら、雨滴などの水滴がキー間若しくはキーと加飾パネル間に侵入した場合、シート状の静電容量検出部に直接付着してしまい、狭いキー間に付着した水滴は完全に除去しづらく残留しやすいので、静電容量の検出精度が低下して接触操作性が悪化するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、デザインの制約を受けず、また押圧操作性を良好に維持し、分離独立したキー間に水滴が侵入した場合の静電容量の検出精度低下による接触操作性の悪化を防止できる操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の操作スイッチの第1の特徴は、分離独立した複数のキーを少なくとも備えた操作パネルと、その操作パネルの背面側に順に、防水層と、静電容量検出部と、ライトガイドと、スイッチと、基板と、を備え、操作パネルと防水層と静電容量検出部とは一体に接合されていることを要旨とする。
【0009】
互いに分離独立した複数のキーは接触押圧操作可能であり、キー間には接触操作可能な加飾パネルを配置することができる。キー又は加飾パネルを接触操作すると静電容量検出部により静電容量の変化が検知される。キーを押圧操作すると、スイッチとしてのメタルドームが弾性変形し、基板上の回路接点と接触しスイッチがオン/オフされる。
【0010】
防水層で静電容量検出部を被覆することにより、キー間又はキーと加飾パネルの間から水滴が侵入しても静電容量検出部に直接付着することがない。このため、静電容量検出部による静電容量の変化の誤検知が少なくなる。
【0011】
本発明の操作スイッチの第2の特徴は、上記防水層は熱可塑性ポリウレタンとシリコーンゴムの一体成形シートからなることを要旨とする。
【0012】
シリコ−ンゴムに熱可塑性ポリウレタンを一体成形すると、シリコーンゴム又は熱可塑性ポリウレタンに比べて強度が高まるので、防水層用としては、熱可塑性ポリウレタンとシリコーンゴムの一体成形シートが好ましい。防水層の強度を高めることによって、繰り返しの押圧操作による耐久性が一段と高まる。また、防水層はキーの押圧操作時に弾性変形するが、防水層は弾性変形可能な熱可塑性ポリウレタンとシリコ−ンゴムの一体成形品で構成されるため押圧操作を阻害することなく、常に良好で安定的なクリック感触を得ることが可能となる。
【0013】
本発明の操作スイッチの第3の特徴は、上記防水層の静電容量検出部に接する面の、複数のキーのそれぞれの外周に対向する位置に、溝を設けたことを要旨とする。
【0014】
防水層には上記溝によって空間(空気層)が形成されているので、キー間又はキーと加飾パネルの間に侵入した水滴による静電容量変化の誤検知が少なくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デザインの制約を受けず、また押圧操作性を良好に維持し、分離独立したキー間に水滴が侵入した場合の静電容量の検出精度低下による接触操作性の悪化を防止できる操作スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る操作スイッチの外観図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る操作スイッチの外観図である。以下、図2〜5を用いて本発明の実施形態に係る操作スイッチについて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。操作パネル1は接触押圧操作可能な複数のキー2と接触操作可能な加飾パネル3で構成されている。キー2は互いに分離独立し、キーが配列される外周及びキー間には加飾パネルが配置される。キー2と加飾パネル3の高さは同一平面上もしくはキー2が加飾パネルより突出した配置となっている。操作パネル1の内部には熱可塑性ポリウレタン5とシリコ−ンゴム6が一体成形された弾性変形可能な防水層7を備え,次いでシート状の静電容量検出部8が配置される。防水層7は熱可塑性ポリウレタンのみ、またはシリコ−ンゴムのみで構成しても良い。キー2及び加飾パネル3はそれぞれ接着層4によって防水層7と一体化されている。防水層7の下面(シート状の静電容量検出部8側)にはキー2の外周付近と対向した位置に溝15が設けられており空間(空気層)を形成している。図2の紙面に垂直な水平面において、溝15は、少なくともキー2と加飾パネル3の間の隙間に対向するように形成する。さらに、溝15は、接着層4のないキー2及び加飾パネル3の外周部、すなわち操作パネル1と防水層7の非固着部に対向するように形成することが好ましい。キー2のさらにシート状の静電容量検出部8の裏面側には硬質補強板91が構成される。これらはそれぞれ接着層4によって一体化されている。一方基板12には回路(図示せず)が形成され、その上部にはプランジャ付きのメタルドーム111及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂からなるライトガイド101が配置される。補強板91にはメタルドーム111に対向したそれぞれの箇所に開口部141が設けられ、接触押圧可能なキー2を押圧操作したときにメタルドーム111が弾性変形して基板12上の回路接点と接触しスイッチが入る構成となっている。またキー2に照光可能な発光部が設けられている場合、防水層7(熱可塑性ポリウレタン)にはライトガイド101から拡散された光を選択的に遮光するための遮光印刷13が設けてある。さらにはシート状の静電容量検出部8には透光可能な透明検出部(図示せず)を備えている。
【0020】
本発明の第1実施形態に係る操作スイッチ100によれば、防水層7で静電容量検出部を被覆することにより操作パネル1を構成するキー2と加飾パネル3の間、もしくはキー間から水滴が侵入しても静電容量検出部に直接付着することがない。
【0021】
本当に接触操作したい範囲(キー2の上面と加飾パネル3の上面)がシート状の静電容量検出部と密着されていれば良いので、防水層7には溝15によって空間(空気層)が形成されている。このため、キー2と加飾パネル3の間、もしくはキー間に侵入した水滴があっても、静電容量変化の誤検知が少なくなる。
【0022】
防水層7はキー2の押圧操作時に弾性変形するが、防水層7は弾性変形可能な熱可塑性ポリウレタンとシリコ−ンゴムの一体成形品で構成されるため押圧操作を阻害することなく、常に良好で安定的なクリック感触を得ることが可能となる。
【0023】
防水層7はシリコ−ンゴムに熱可塑性ポリウレタンを一体形成させることによって強度が高まるため、繰り返しの押圧操作に対する耐久性が一段と高まる。
【0024】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。操作パネル1は接触押圧操作可能な複数のキー2と接触操作可能な加飾パネル3で構成されている。キー2は互いに分離独立し、キーが配列される外周及びキー間には加飾パネルが配置される。キー2と加飾パネル3の高さは同一平面上もしくはキー2が加飾パネルより突出した配置となっている。操作パネル1の内部には熱可塑性ポリウレタン5とシリコ−ンゴム6が一体成形された弾性変形可能な防水層7を備え,次いでシート状の静電容量検出部8が配置される。防水層7は熱可塑性ポリウレタンのみ、またはシリコ−ンゴムのみで構成しても良い。キー2及び加飾パネル3はそれぞれ接着層4によって防水層7と一体化されている。防水層7の下面(シート状の静電容量検出部8側)にはキー2の外周付近と対向した位置に溝15が設けられており空間(空気層)を形成している。図3の紙面に垂直な水平面において、溝15は、少なくともキー2と加飾パネル3の間の隙間に対向するように形成する。さらに、溝15は、接着層4のないキー2及び加飾パネル3の外周部、すなわち操作パネル1と防水層7の非固着部に対向するように形成することが好ましい。シート状の静電容量検出部8の裏面側に押し子シート92が設置され、各々の押し子はプランジャ−付でないメタルドーム112と個々に対向している。押し子シート92は熱可塑性樹脂(PETシートなど)と金型に流し込んだ紫外線硬化型樹脂を密着させ、紫外線硬化させ押し子部とシートを一体成形させることによって製作される。また押し子シート92は押し子の周辺3辺にスリット142が設けられ、そのスリット142の位置は接触押圧可能な複数のキー2の外周近辺とほぼ対応している。さらに押し子シート92と静電容量検出部8は接着層4で一体化されるが、スリット142より内側、つまり押し子がある側は接着層はなくフリ−となっている。
【0025】
本発明の第2実施形態に係る操作スイッチ100によれば、プランジャ付きメタルドームを使用する代りに、操作パネル1に押し子シート92を新たに設けたので、実施形態1と同様に良好なクリック感が得られる。押し子シート92にスリット142を設けたことにより、キー2を押圧操作したとキーの押し子シート92のテンションのかかり具合を低減させることが可能となり、クリック荷重が重くなるといったクリック感触の不良を防止することができる。実施形態1と同様に防水層7に空気層を設けることにより水滴侵入による静電容量変化の誤検知が少なくなる。
【0026】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。操作パネル1は接触押圧操作可能な複数のキー2と接触操作可能な加飾パネル3で構成されている。キー2は互いに分離独立し、キーが配列される外周及びキー間には加飾パネルが配置される。キー2と加飾パネル3の高さは同一平面上もしくはキー2が加飾パネルより突出した配置となっている。操作パネル1の内部には熱可塑性ポリウレタン5とシリコ−ンゴム6が一体成形された弾性変形可能な防水層7を備え,次いでシート状の静電容量検出部8が配置される。防水層7は熱可塑性ポリウレタンのみ、またはシリコ−ンゴムのみで構成しても良い。キー2及び加飾パネル3はそれぞれ接着層4によって防水層7と一体化されている。防水層7の下面(シート状の静電容量検出部8側)にはキー2の外周付近と対向した位置に溝15が設けられており空間(空気層)を形成している。図4の紙面に垂直な水平面において、溝15は、少なくともキー2と加飾パネル3の間の隙間に対向するように形成する。さらに、溝15は、接着層4のないキー2及び加飾パネル3の外周部、すなわち操作パネル1と防水層7の非固着部に対向するように形成することが好ましい。裏面側には硬質樹脂で形成されかつ補強板を兼ねた硬質樹脂製ライトガイド102aとシリコ−ンゴム102bの一体成形されたキーシート16が配置される。キーシート16のシリコ−ンゴム102bは各々の接触押圧操作可能な複数のキー2に対応して台座17が形成され、かつその反対面にはメタルドーム112を弾性変形させるのに必要な押し子がメタルドーム112と対向して形成されている。台座17とシート状の静電容量検出部8は接着層4で一体化されている。メタルドーム112には実施形態1、2のようなライトガイドは設けられていない場合の実施形態である。
【0027】
本発明の第3実施形態に係る操作スイッチ100によれば、キーシート16は補強板を兼ねた硬質樹脂性ライトガイド102aとシリコ−ンゴム102bとの一体成形品であり、またメタルドーム112もライトガイドやプランジャを付加する必要がないため安価な構成とすることが出来る。実施形態1、2と同様に防水層7に空気層を設けることにより水滴侵入による静電容量変化の誤検知が少なくなる。
【0028】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る操作スイッチの、図1のA−A矢視断面図である。操作パネル1は接触押圧操作可能な複数のキー2が互いに分離独立し狭ピッチに配列されている。操作パネル1の内部には熱可塑性ポリウレタン5の弾性変形可能な防水層7を備え、次いでシート状の静電容量検出部8が配置される。シート状の静電容量検出部8にはキー2外周部及びキー2間に該当する付近に沿って溝18が設けられ、空間(空気層)が形成されている。図5の紙面に垂直な水平面において、溝18は、少なくともキー2と加飾パネル3の間の隙間に対向するように形成する。さらに、溝18は、接着層4のないキー2及び加飾パネル3の外周部、すなわち操作パネル1と防水層7の非固着部に対向するように形成することが好ましい。その他の構成は実施例3と同様である。
【0029】
本発明の第4実施形態に係る操作スイッチ100によれば、操作パネル1は防水層7が熱可塑性ポリウレタン(TPU)のみで構成され、またキーシート16が補強板を兼ねた硬質樹脂製ライトガイド102aとシリコーンゴム102bとの一体成形品であるため、部材点数がより少なく出来、安価に構成可能となっている。メタルドーム112もライトガイドやプランジャを付加する必要がないためより安価に出来る。防水層7は熱可塑性ポリウレタンのみの構成でもキーシート16の台座17がシリコーンゴム製なのでクリック感触も悪化することがなく良好なクリック感触を維持することが出来る。シート状の静電容量検出部8に溝18(空気層)を設けることにより水滴侵入による静電容量変化の誤検知が少なくなる。
【0030】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが、当業者には明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0031】
100 操作スイッチ
1 操作パネル
2 キー
3 加飾パネル
4 接着層
5 熱可塑性ポリウレタン
6 シリコーンゴム
7 防水層
8 静電容量検出部
91 補強板
92 押し子シート
101 ライトガイド
102a 硬質樹脂製ライトガイド
102b シリコーンゴム
111 メタルドーム
112 メタルドーム
12 基板
13 遮光印刷
141 開口部
142 スリット
15 溝
16 キーシート
17 台座
18 溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離独立した複数のキーを少なくとも備えた操作パネルと、
当該操作パネルの背面側に順に、防水層と、静電容量検出部と、ライトガイドと、スイッチと、基板と、
を備え、
前記操作パネルと前記防水層と前記静電容量検出部とは一体に接合されていることを特徴とする操作スイッチ。
【請求項2】
前記防水層は、熱可塑性ポリウレタンとシリコーンゴムの一体成形体からなることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ。
【請求項3】
前記防水層の前記静電容量検出部に接する面の、前記複数のキーのそれぞれの外周に対向する位置に、溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操作スイッチ。
【請求項4】
前記溝の形成位置は、前記操作パネルと前記防水層の非固着部に対向することを特徴とする請求項3に記載の操作スイッチ。
【請求項5】
前記静電容量検出部の前記防水層に接する面の、前記複数のキーのそれぞれの外周に対向する位置に、溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の操作スイッチ。
【請求項6】
前記溝の形成位置は、前記操作パネルと前記防水層の非固着部に対向することを特徴とする請求項5に記載の操作スイッチ。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−58415(P2013−58415A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196560(P2011−196560)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】