説明

操作パネルユニット及び画像形成装置

【課題】パネル本体の破損を防止できる操作パネルユニットを提供する。
【解決手段】操作パネルユニット10では、利用者がパネル本体10aの下方部を前側上方に引き上げると、パネル本体10aの下方部が前側上方に変位することで、パネル本体10aの上部回動軸を中心にパネル本体10aが回動する。そして、パネル本体10aの下方部が前側上方に変位すると、これに連動して連結カバー部40の上部摺動軸がパネル本体10aの上部回動軸から離間するように変位することで、パネル本体10aの下部回動軸を中心に連結カバー部40が回動する。これにより、パネル本体10aが傾斜した状態において、ハウジング70の内部に支持されたパネル本体10aと連結カバー部40とが、ハウジング70の内部を底辺とする三角形をなすため、パネル本体10aの下部を持ち上げるような荷重が加わっても二方向に分散されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等の電気機器に設けられる操作パネルユニット、及びこの操作パネルユニットを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば画像形成装置に設けられる操作パネルユニットにおいては、画像形成装置の高機能化に伴い、表示面にカラー液晶ディスプレイを用いたり、操作面及び表示面にタッチパネルを搭載したりするようになっている。
【0003】
また、この種の操作パネルユニットは、画像形成装置の意匠性向上や小型化等の目的から、例えば装置筐体(ハウジング)の前面から飛び出さないように格納され、画像形成装置の使用時にユーザが操作しやすい角度にパネル本体を傾斜させることが可能な構造が採用され始めている。
【0004】
具体例を挙げると、上記構造の操作パネルユニットは、パネル面の幅方向に対して平行軸となる支持部材をパネル本体の上方部に有し、ユーザがパネル本体の下方部を手前側に引き上げることで、上記平行軸を中心にパネル本体が回動して所望の角度に保持されるように、支持部材がハウジングの軸受部に取り付けられる。
【0005】
ところで、画像形成装置においては、操作パネルユニットのパネル本体が傾斜した状態にあると、ユーザが、パネル本体を把持して装置を持ち運んだり、装置の位置をずらしたりする等、粗雑に扱われてしまうことが懸念されている。これに対し、画像形成装置においてパネル本体部の上方部に連結される軸受部をフック状に形成し、ハウジングに係合させることで、軸受部周りを補強する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−102020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の操作パネルユニットを備える画像形成装置では、パネル本体の下方部を把持して装置を持ち上げた場合に、軸受部周りが破損せずともパネル本体にて荷重が分散されず、その結果、例えばディスプレイやタッチパネル等が破損してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、パネル本体の破損を防止できる操作パネルユニット及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載の操作パネルユニットは、操作対象となる電気機器に設けられたハウジングに軸支され、そのハウジングの外側方向に予め設定された角度範囲において傾斜する構造を有するものである。
【0010】
具体的には、本発明の操作パネルユニットは、上記電気機器のユーザインタフェースが実装されたパネル本体と、そのパネル本体の上方部に設けられる第1連結部と、パネル本体の下方部に形成される回動軸を含む第2連結部とを備え、第1連結部が、第1支持軸を中心としてパネル本体を回動可能にハウジングに連結し、第2連結部が、回動軸を中心として第2支持軸を変位可能にハウジングに連結する。なお、第1支持軸および第2支持軸とは、互いに異なる軸であり、それぞれハウジングに支持される軸の概念をいう。
【0011】
そして特に、第2連結部は、第1支持軸に対して回動軸が平行となり、且つ、ハウジングの外側方向へパネル本体の下方部が変位すると、第2支持軸が第1支持軸から離間するように、ハウジングに連結されている。
【0012】
つまり、本発明の操作パネルユニットでは、ハウジングに支持される第1支持軸および第2支持軸のうち、ハウジングの外側方向へパネル本体の下方部が変位すると、回動軸を中心として第2支持軸が第1支持軸から離間するように変位する。
【0013】
従って、本発明の操作パネルユニットによれば、パネル本体が傾斜した状態において、パネル本体の下方部(回動軸)にユーザが持ち上げるような力(荷重)が加わると、ハウジングに支持される第1支持軸および第2支持軸の両方の軸に向かって荷重が分散されるため、ユーザインタフェースの破損の抑制に繋がり、パネル本体の可用性を向上させることができる。
【0014】
また具体的には、本発明の操作パネルユニットにおいて、請求項2に記載のように、第2連結部は、第2支持軸および回動軸を上辺および下辺とする連結面を含む連結面部を有することが望ましい。
【0015】
この場合、パネル本体が傾斜した状態において、パネル本体と連結面部との傾斜角の相違が生じるため、これによりユーザがパネル本体の下方部を把持しにくくなり、当該操作パネルユニットが持ち上げられる行為自体を抑制することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の操作パネルユニットにおいては、請求項3に記載のように、第1連結部は、パネル本体の上方部における両側端に突設されて第1支持軸となる第1支持部材であり、第2連結部は、連結面部の上辺部における両側端に突設されて第2支持軸となる第2支持部材、及び連結面部の下辺部における両側端に突設されて回動軸となる回動部材を有することが望ましい。
【0017】
この場合、上記連結面の面積が大きくなることによって、上記請求項2の効果をより好適に得ることができる。また、各部材(第1支持部材,第2支持部材,回動部材)が同一平面上(連結面に対する垂直面上)に配置されることによって、パネル本体の両側端における荷重をより好適に分散させることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の操作パネルユニットにおいては、請求項4に記載のように、第2連結部は、連結面部の両側端においてパネル本体に向かって立設されたリブを有し、第2支持部材および回動部材は、リブに形成された突部であることが望ましい。
【0019】
この場合、連結面部の両側端においてパネル本体に向かって立設されたリブにより、連結面部が補強されるとともに、パネル本体が傾斜した状態において、パネル本体と連結面部との間への異物の混入を抑制したり、パネル本体と連結面部との間に手を入れさせないようにし、例えばユーザが持ち上げる際にパネル本体を把持しにくくしたりすることができる。
【0020】
ところで、本発明の操作パネルユニットにおいて、請求項5に記載のように、ハウジングは、第2連結部において第2支持軸となる第2支持部材を案内する案内溝を有し、第2支持部材は、第1支持軸を中心とするパネル本体の回動に連動し、上記案内溝に沿って変位するように構成されてもよい。
【0021】
この構成によれば、ハウジングに設けられた案内溝によって第2支持部材の移動範囲が定まるため、第1支持軸を中心とするパネル本体の回動が第2支持部材によって阻害されずに済み、ひいてはユーザが当該操作パネルユニットの傾斜角度をより好適に調整できるようになる。
【0022】
また、本発明の操作パネルユニットにおいて、請求項6に記載のように、所定の角度範囲内の予め決められた複数の傾斜角度にパネル本体を保持可能にハウジングに連結する第3連結部を備え、この第3連結部は、上記所定の角度範囲を超えるパネル本体の回動を規制する回動規制手段を有することが望ましい。
【0023】
この場合、パネル本体が傾斜した状態において、パネル本体にユーザが手前方向に引っ張るような力が加わった場合であっても、第3連結部によって所定の角度でパネル本体が保持されるため、例えばハウジングの軸受部周りの破損を抑制することができる。また、パネル本体にユーザが持ち上げるような力が加わった場合であっても、ハウジングに支持される第1支持軸および第2支持軸に向かって荷重が分散されるだけでなく、第3連結部に沿った方向にも荷重が分散されるため、ユーザインタフェースの破損をより好適に防止することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の操作パネルユニットにおいては、請求項7に記載のように、第1連結部は、前述の第1支持部材であり、第2連結部は、前述の連結面部、第2支持部材、及び回動部材を有し、第3連結部は、ハウジングに固定留めされる固定部材、及びパネル本体の下方中央部から固定部材に向かって延設されてその固定部材に係合される係合部材を有することが望ましい。
【0025】
この場合、パネル本体が傾斜した状態において、パネル本体にユーザが持ち上げるような力(加重)が加わった場合であっても、パネル本体の中央部により多くの荷重が集中するため、各部材(第1支持部材,第2支持部材,回動部材)の破損の抑制に繋がり、これにより、例えばハウジングの軸受部周りの破損をより好適に防止することができる。
【0026】
なお、本発明の操作パネルユニットにおいて、請求項8に記載のように、パネル本体は、第1支持軸、第2支持軸、及び回動軸が同一平面上に位置する状態で第2連結部を収納する収納部を有することが望ましい。
【0027】
この場合、第2連結部がパネル本体から出っ張らないようにすることが可能となり、操作パネルユニットをコンパクトに折り畳むことができ、これにより、電気機器への搭載スペースを狭くすることに繋がり、ひいては電気機器の小型化に寄与することができる。
【0028】
また、本発明の操作パネルユニットにおいて、請求項9に記載のように、パネル本体は、ハウジング内に設けられて電気機器の動作を制御する制御基板と、前述のユーザインタフェースと、を電気的に接続する接続ケーブルを案内するケーブル案内部を備え、このケーブル案内部は、第1支持軸および第2支持軸に近接した位置に配置されていることが望ましい。
【0029】
この場合、ケーブル案内部がパネル本体の上方部においてユーザの手が届きにくいところに位置することになるため、パネル本体が傾斜した状態において、ユーザが、パネル本体を把持して電気機器の位置をずらそうとした場合であっても、接続ケーブルに触れずに済み、これにより、電気的接続の遮断を防止することに繋がり、ひいては電気機器の動作を安全に保つことができる。
【0030】
なお、本発明の操作パネルユニットは各種の電気機器に搭載され得る。例えば、このような電気機器としては、請求項9に記載のように、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置であってもよい。この場合、本発明の操作パネルユニットを備える画像形成装置において、上述した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】画像形成装置を備える複合機を示す斜視図である。
【図2】複合機において操作パネルユニットが傾斜した状態を示す斜視図である。
【図3】複合機において操作パネルユニットが傾斜した状態を示す正面図である。
【図4】複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】操作パネルユニットを後ろ側から見た第1の斜視図である。
【図6】操作パネルユニットを後ろ側から見た第2の斜視図である。
【図7】図3に示す複合機の正面図におけるA−A断面のうち、操作パネルユニット付近を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、図3に示す複合機の正面図におけるB−B断面及びC−C断面のうち、操作パネルユニット付近を示す断面図である。
【図9】図3に示す複合機の正面図におけるD−D断面のうち、操作パネルユニット付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施形態について、具体的な例を挙げて図面と共に説明する。
[複合機の構造]
図1、図2及び図3に示す複合機1は、画像形成装置としての機能(プリンタ機能)に加え、その他の機能(例えば、スキャン機能、コピー機能など)を兼ね備えたものである。なお、本明細書の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0033】
複合機1は、プリンタユニット2と、プリンタユニット2の上部に搭載されたスキャナユニット3を備えている。プリンタユニット2の前部上側には、利用者によって操作される操作パネルユニット10が設けられている。また、操作パネルユニット10の下方には、印刷後の被記録媒体を排出する排出口5が形成され、さらにその下方部には、印刷前の被記録媒体が収納される給紙カセット6などが装着され、当該下方部の左右両端には、ユーザが複合機1を持ち上げるための筐体把持部11が形成されている。
【0034】
また、プリンタユニット2には、給紙カセット6またはADF12(Automatic Document Feeder)から送られてくる被記録媒体に画像を形成し、画像が形成された被記録媒体を排出口5または排出トレイ(図示せず)に送り出す画像形成部7(図4参照)が内蔵されている。なお、本実施形態の画像形成部7としては、記録ヘッドのノズルからインク液滴を吐出して、被記録媒体に画像を形成する周知のインクジェットプリンタが採用されているが、例えばレーザープリンタ等であってもよい。
【0035】
スキャナユニット3は、フラットベッド型のカバー部8と、プリンタユニット2の上面およびカバー部8の下面に配設された画像読取部9(図4参照)を備えている。なお、本実施形態の画像読取部9としては、光源から読み取り対象となる原稿に光を照射して、その反射光を電気信号に変換するイメージセンサをモータによって左右方向へ往復走査させる周知のイメージスキャナが採用されているが、これに限るものではない。
【0036】
以上説明した複合機1の各部のうち、少なくとも操作パネルユニット10(詳しくは後述するタッチパネル25)からの入力を受け付けて、画像形成部7、画像読取部9、ADF12、およびディスプレイ20(後述する)の動作を制御するための制御基板15(図4参照)が、複合機1の筐体内部に設置されている。なお、制御基板15には、複合機1のプリンタ機能、スキャン機能、及びコピー機能などを実現するための各種処理を実行するマイコン15a(図4参照)が少なくとも実装されている。
【0037】
[操作パネルユニットの構造]
操作パネルユニット10の本体10a(以下「パネル本体10a」という)前面には、複合機1とその利用者の間で情報を伝達するためのユーザインタフェースとして、各種情報を表示するディスプレイ20と、ディスプレイ20を含むパネル本体10a前面の広域に渡って配設されて利用者の操作を受け付けるタッチパネル25が実装されている。
【0038】
なお、本実施形態のディスプレイ20としては、薄型のカラー液晶ディスプレイが採用されているが、例えば有機ELディスプレイであってもよい。また、本実施形態のタッチパネル25としては、静電容量方式のものが採用されているが、例えばマトリックススイッチ方式や、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式のいずれかのものであってもよい。
【0039】
また、操作パネルユニット10は、複合機1の筐体前面から飛び出さないように格納され(図1参照)、複合機1の使用時にユーザが操作しやすい角度にパネル本体10aを傾斜させることが可能(図2参照)な構造となっている。
【0040】
次に、具体的な操作パネルユニット10の構造を説明する。図5及び図6は、操作パネルユニット10を後ろ側から見た斜視図である。なお、図5及び図6中に併記した上下前後方向は、先の図1、図2及び図3中に併記した上下前後方向に対応し、左右方向は、操作パネルユニット10を後ろ側から見た方向を表すため、正反対に表している。
【0041】
まず、図5に示すように、パネル本体10aの後部上側の右方には、パネル本体10aの前部に位置するディスプレイ20およびタッチパネル25(図4等参照)に接続されたFFC65を、パネル本体10aの後方に案内する経路として形成されたケーブル案内部60(後述する)が設けられる。
【0042】
なお、FFC65は、フレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable)の略であり、平型の絶縁体によって被覆された複数の導体線を有し、ユーザインタフェースと複合機1の本体側のマイコン15aとの間で各種信号の授受を行うために、それぞれ導体線の一方端がディスプレイ20およびタッチパネル25の各部に接続され、他方端が制御基板15(図4参照)の各部に接続されるものである。
【0043】
そして、パネル本体10aの後部上側の左右両端には、それぞれ二つの凸状部材が上下方向に並設されており、このうち上側の凸状部材(以下「第1凸状部材30」という)がパネル本体10aと一体に形成され、下側の凸状部材(以下「第2凸状部材41」という)がパネル本体10aの側面の切り欠き部31に収容可能に設けられている。
【0044】
このうち、第2凸状部材41は、パネル本体10aの後ろ面に重なる板状部材45と一体に形成され、この板状部材45の上部の左右両端に一つずつ設けられている。また、板状部材45の下部の左右両端には、パネル本体10aの下部の左右両端にそれぞれ軸支される回動部材43が一つずつ突設されている。なお、本実施形態の板状部材45は、アクリル樹脂からなる薄型の部材が採用されており、可撓性を有するとともに表面が滑りやすく加工されている。
【0045】
さらに、パネル本体10aの後部下側の中央部付近には、パネル本体10aの後方に向かって延びる湾曲部材51が設けられている。湾曲部材51は、中央部よりも一方端側に支軸が設けられ、パネル本体10aの下部に回動可能に支持され、支軸よりもパネルに近い側には、ユーザによって把持される把持部54(図7参照)が形成されている。湾曲部材51の他方端は、上方に向かって湾曲する鉤爪状に形成されており、その鉤爪状の先端部52(図7参照)が後述する固定部材53に係止される。湾曲部材51は、不図示のバネによって、先端部52が固定部材53に係止される方向に付勢されている。
【0046】
次に、図6に示すように、操作パネルユニット10の各部のうち、第2凸状部材41、回動部材43、および板状部材45が一体に形成されてなる連結カバー部40は、回動部材43がパネル本体10aの下部に軸支されることで形成される軸(以下「下部回動軸」という)を中心に、パネル本体10aに対して前後方向に回動可能に構成されている。但し、パネル本体10aの下部には、回動部材43を回動自在に支持するための軸受部17(図8参照)が形成されている。
【0047】
また、連結カバー部40の左右両側端部には、パネル本体10aに向かってリブ47が一つずつ立設されている。リブ47は、板状部材45の左右両側端部を補強するとともに、少なくとも利用者に左右両側方向からFFC65およびケーブル案内部60を触れさせない役割を有することになる。
【0048】
一方、パネル本体10aの後部両端には、上下方向に沿ってリブ47を収納する収納溝33が設けられ、さらにパネル本体10aの中央部には、パネル本体10aの上部に対して前方向に窪んで形成された収納面35が設けられている。これら収納溝33および収納面35は、連結カバー部40がパネル本体10aに対して前方向に回動し、板状部材45が収納面35に当接すると(つまり、連結カバー部40が閉じると)、板状部材45がパネル本体10aの上部に対して後ろ方向に飛び出さないように、さらにリブ47が収納溝33に収容されるようになっている。
【0049】
なお、第2凸状部材41および回動部材43は、それぞれリブ47の左右外側面の上部および下部において外向きに突設されており、上記のように連結カバー部40が閉じると、第2凸状部材41が切り欠き部31に収容され、この状態において、第1凸状部材30、第2凸状部材41、および回動部材43の3つの部材が、上下方向に整列するように配置される(図5参照)。
【0050】
また、固定部材53には、湾曲部材51の後ろ上方向の変位に従って多段階に湾曲部材51の先端部が係止するように複数の係止溝55(後述する)が設けられている。
[ハウジング内の構造]
次に、操作パネルユニット10が複合機1の筐体であるハウジング70に装着された構造を説明する。図7、図8(a)、図8(b)、及び図9は、図3に示す複合機1の正面図におけるA−A断面、B−B断面、C−C断面、及びD−D断面のうち、操作パネルユニット10付近を示す断面図である。なお、これらの図中に併記した上下前後方向は、先の図5及び図6に併記した上下前後方向に対応している。
【0051】
まず、図8(a)及び図8(b)に示すように、ハウジング70の上部には、第1凸状部材30を軸支するための軸受部71が設けられている。これに対し、操作パネルユニット10は、第1凸状部材30が軸受部71に軸支されることで形成される軸(以下「上部回動軸」という)を中心に、ハウジング70に対して前後方向にパネル本体10aが回動可能に構成されている。
【0052】
また、軸受部71の直下には、上下方向に第2凸状部材41を摺動させ、且つ第2凸状部材41についての前後方向の変位を規制するように形成された案内溝73が設けられている。これに対し、操作パネルユニット10は、上部回動軸を中心とするパネル本体10aの回動に連動して、回動部材パネル本体10aの下部回動軸を中心として、第2凸状部材41が案内溝73に支持されることで形成される軸(以下「上部摺動軸」という)が上下方向に変位することで、板状部材45が回動するように構成されている。なお、案内溝73は、後述する最大傾斜角度にパネル本体10aが傾斜した状態において、第2凸状部材41の下方向への移動を規制する長さに形成されている。
【0053】
このとき、上部回動軸、下部回動軸、及び上部摺動軸は、左右方向に互いに平行であり、パネル本体10aの前側上方向への回動に伴って、下部回動軸が上部回動軸から離間するように下方向に変位し、パネル本体10aの後側下方向への回動に伴って、下部回動軸が上部回動軸に接近するように上方向に変位する関係にある。
【0054】
また、上部摺動軸および下部回動軸は、板状部材45の一部に含まれ、それぞれ板状部材45の板面において上辺および下辺を示す関係にある。つまり、板状部材45の上辺部における左右両側端の同位置に一つずつ突設された第2凸状部材41が上部摺動軸(第2支持軸に相当)となり、板状部材45の下辺部における左右両側端の同位置に一つずつ突設された回動部材43(図4a参照)が下部回動軸(回動軸に相当)となる。これに対し、パネル本体10aの上部における左右両側端の同位置に一つずつ突設された第1凸状部材30が上部回動軸(第1支持軸に相当)となる。
【0055】
次に、図7に示すように、固定部材53には、ハウジングにネジ留めによって固定される固定部57が設けられ、さらに固定部57の前側下方向には、複数の係止溝55が形成されている。
【0056】
複数の係止溝55は、湾曲部材51の先端部52が係合するギアの役割を有し、湾曲部材51の先端部52の後ろ方向への自律的な移動を遮る壁面55aをそれぞれ有している。これに対し、湾曲部材51の先端部52は、ユーザによって把持部54が操作されて回動すると、上記壁面55aを乗り越えて後ろ方向または前方向へ移動可能となる。つまり、パネル本体10aが前側上方または後側上方に変位することで、パネル本体10aの傾斜角度がユーザの所望の角度となった状態で、ユーザの手が把持部54から離れると、不図示のバネの付勢力によって、湾曲部材51の先端部52が固定部材53の係止溝55に係止される。このように、湾曲部材51および固定部材53は、予め決められた複数の傾斜角度にパネル本体10aを保持できるように構成されている。
【0057】
なお、ユーザによってパネル本体10aが前方向に引っ張られた場合には、係止溝55による係止が解除されて湾曲部材51が前方向に移動するように、係止溝55の形状及びバネの付勢力が設定されている。すなわち、本実施形態では、パネル本体10aは、前方向への移動は許容されているが、後ろ方向への移動は阻害される構成となっている。これは、タッチパネルやキー操作等によって、パネル本体10aが後方に押されることが想定されるため、後方への移動が容易になってしまうと、ユーザの操作性が悪くなってしまうためである。
【0058】
また、固定部材53の前側端には、湾曲部材51の先端部52の前方向の移動を規制する規制部59が設けられている。規制部59は、下方向に壁面55aの高さよりも大きい規制面を有し、湾曲部材51が回動して先端部52が下方向に変位した状態であっても、上記規制面を乗り越えて前方向へ移動させないよう構成されている。換言すると、パネル本体10aの傾斜角度が予め設定された最大傾斜角度となった状態で、ユーザによってパネル本体10aが前方向に引っ張られても、湾曲部材51の先端部52が規制部59の下端よりも上方に位置することで前方向に回動しないよう、規制部59が形成されている。つまり、湾曲部材51および固定部材53は、予め設定された最大傾斜角度を超えるパネル本体10aの前側上方向への回動を規制できるようになっている。
【0059】
最後に、図9に示すように、パネル本体10aの後部上側には、ケーブル案内部60が設けられている。ケーブル案内部60は、ハウジング70の後側内部に係合することで固定され、前述のようにFFC65の案内経路の役割を有する。なお、本実施形態のケーブル案内部60は、上記角度範囲内におけるパネル本体10aの回動を阻害しないように、パネル本体10aとは別体に配置されている。
【0060】
[作用]
このような操作パネルユニット10が装着された複合機1では、利用者がパネル本体10aの下方部を前側上方に引き上げると、まず、湾曲部材51の先端部52が、重力によって下方向に変位することにより、固定部材53の壁面55aを乗り越えて後ろ方向へ移動可能な状態となり、パネル本体10aの下方部が前側上方に変位することで、パネル本体10aの上部回動軸を中心にパネル本体10aが回動する。
【0061】
そして、パネル本体10aの下方部が前側上方に変位すると、これに連動して連結カバー部40の上部摺動軸がハウジング70の案内溝73に沿って下方に変位することで、パネル本体10aの下部回動軸を中心に連結カバー部40が回動する。
【0062】
次に、利用者がパネル本体10aを見やすい角度に傾けた状態で手を離すと、湾曲部材51の先端部が後ろ方向直近の係止溝55に係合されることで、予め段階的に設定された複数の傾斜角度のうち、利用者の所望の角度にパネル本体10aが保持される。
【0063】
このようにパネル本体10aが傾斜した状態において、利用者が複合機1を移動させようとする場合、本来であれば複合機1の筐体把持部11を掴んで持ち上げるとよいが、筐体把持部11の代わりにパネル本体10aの下部を掴んで持ち上げてしまうことが想定される。
【0064】
このように利用者がパネル本体10aの下部を持ち上げると、最大傾斜角度までパネル本体10aが回動する。その後、湾曲部材51の変位が規制部59によって規制されることで、パネル本体10aが最大傾斜角度に保持される。なお、このとき、連結カバー部40の上部摺動軸がハウジング70の案内溝73の最下端部に係止されることになる。
【0065】
[効果]
以上説明したように、操作パネルユニット10では、パネル本体10aが傾斜した状態において、ハウジング70の内部に支持されたパネル本体10aと連結カバー部40とが、ハウジング70の内部を底辺とする三角形をなすため、利用者がパネル本体10aの下部を持ち上げるような荷重が加わると、その荷重がパネル本体10aと連結カバー部40とに分散されることになる。
【0066】
これにより、利用者がパネル本体10aを把持して複合機1を持ち運んだり、複合機1の位置をずらしたりする等、粗雑に扱われてしまう場合であっても、パネル本体10a自体が破損してしまうことを抑制することができ、その結果、タッチパネル25やディスプレイ20等を保護し、破損を防止できる。特に、板状部材45は面部を備えており、パネル本体10aが把持された状態では、この面部が延ばされるよう荷重が板状部材45に作用する。これにより、板状部材45は、面が延びる方向には剛性があることから、より荷重が分散できる。
【0067】
また、操作パネルユニット10では、連結カバー部40において左右両端に突設されて、ハウジング70の案内溝73をそれぞれ摺動する二つの第2凸状部材41が、板状部材45に連結されているため、二つの第2凸状部材41が連動することになり、連結カバー部40の回動をスムーズにさせることができる。
【0068】
なお、連結カバー部40では、板状部材45の左右両端部にそれぞれリブ47が形成されているため、パネル本体10aが傾斜した状態において、パネル本体10aと連結カバー部40との隙間に、利用者が下方向からだけでなく、左右方向からも手が入らないようにすることができる。その結果、パネル本体10aのケーブル案内部60からハウジング70に案内されるFFC65に触れさせないようにすることができる。
【0069】
さらに、操作パネルユニット10では、パネル本体10aが傾斜した状態において、ハウジング70の内部に固定留めされた固定部材53と、パネル本体10aから固定部材53に向かって延設された湾曲部材51とが係合されてなる係合部50(図6参照)にも上記荷重が分散されることになる。これにより、操作パネルユニット10の可用性をより高めることができる。
【0070】
[発明との対応]
なお、本実施形態において、第1凸状部材30が第1支持部材および第1連結部、連結カバー部40が第2連結部、板状部材45が連結面部、第2凸状部材41が第2支持部材、係合部50が第3連結部、湾曲部材51が係合部材のそれぞれ一例に相当する。
【0071】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態の湾曲部材51は、パネル本体10aの後部下側の中央部から少しずれた位置に固定留めされているが、例えばパネル本体10aの後部下側の中央部に固定留めされていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態の操作パネルユニット10では、第1凸状部材30がハウジング70の軸受部71に軸支されることにより上部回動軸を形成しているが、これと反対に、凸状部材をハウジング70に、第1凸状部材30の代わりに軸受部を操作パネルユニット10にそれぞれ設け、凸状部材が軸受部に軸支されることにより上部回動軸を形成してもよい。同様の理由により、第2凸状部材41および回動部材43の代わりに軸受部を操作パネルユニット10にそれぞれ設けて、上部摺動軸および下部回動軸を形成してもよい。
【0074】
なお、第1凸状部材30は、必ずしもパネル本体10aの端部に限らず、パネル本体10aの形状に応じた位置に設けられればよい。また、第2凸状部材41および回動部材43も、板状部材45の端部に限らず、板状部材45の形状に応じた位置に設けられればよい。
【0075】
また、上記実施形態では、操作パネルユニット10が複合機1に適用された例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば洗濯機や冷蔵庫など各種の電気機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…複合機、2…プリンタユニット、3…スキャナユニット、5…排出口、6…給紙カセット、7…画像形成部、9…画像読取部、10…操作パネルユニット、10a…パネル本体、11…筐体把持部、15…制御基板、17…軸受部、30…第1凸状部材、31…切り欠き部、33…収納溝、35…収納面、40…連結カバー部、41…第2凸状部材、43…回動部材、45…板状部材、47…リブ、50…係合部、51…湾曲部材、53…固定部材、55…係止溝、57…固定部、59…規制部、60…ケーブル案内部、70…ハウジング、71…軸受部、73…案内溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象となる電気機器に設けられたハウジングに軸支され、該ハウジングの外側方向に予め設定された角度範囲において傾斜する操作パネルユニットであって、
前記電気機器のユーザインタフェースが実装されたパネル本体と、
前記パネル本体の上方部に設けられ、前記ハウジングに支持される第1支持軸を中心として、該パネル本体を回動可能に該ハウジングに連結する第1連結部と、
前記パネル本体の下方部に形成される回動軸を中心として、前記ハウジングに支持される第2支持軸を変位可能に該ハウジングに連結する第2連結部と、
を備え、
前記第2連結部は、前記第1支持軸に対して前記回動軸が平行となり、且つ、前記ハウジングの外側方向へ前記パネル本体の下方部が変位すると、前記第2支持軸が前記第1支持軸から離間するように、前記ハウジングに連結されていることを特徴とする操作パネルユニット。
【請求項2】
前記第2連結部は、前記第2支持軸および前記回動軸を上辺および下辺とする連結面を含む連結面部を有することを特徴とする請求項1に記載の操作パネルユニット。
【請求項3】
前記第1連結部は、前記パネル本体の上方部における両側端に突設されて前記第1支持軸となる第1支持部材であり、
前記第2連結部は、前記連結面部の上辺部における両側端に突設されて前記第2支持軸となる第2支持部材、及び前記連結面部の下辺部における両側端に突設されて前記回動軸となる回動部材を有することを特徴とする請求項2に記載の操作パネルユニット。
【請求項4】
前記第2連結部は、前記連結面部の両側端において前記パネル本体に向かって立設されたリブを有し、
前記第2支持部材および前記回動部材は、前記リブに形成された突部であることを特徴とする請求項3に記載の操作パネルユニット。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記第2連結部において前記第2支持軸となる第2支持部材を案内する案内溝を有し、
前記第2支持部材は、前記第1支持軸を中心とする前記パネル本体の回動に連動し、前記案内溝に沿って変位することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の操作パネルユニット。
【請求項6】
前記角度範囲内の予め決められた複数の傾斜角度に前記パネル本体を保持可能に前記ハウジングに連結する第3連結部を備え、
前記第3連結部は、前記角度範囲を超える前記パネル本体の回動を規制する回動規制手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の操作パネルユニット。
【請求項7】
前記第1連結部は、前記パネル本体の上方部における両側端に突設されて前記第1支持軸となる第1支持部材であり、
前記第2連結部は、前記第2支持軸および前記回動軸を上辺および下辺とする連結面を含む連結面部、前記連結面部の上辺部における両側端に突設されて前記第2支持軸となる第2支持部材、及び前記連結面部の下辺部における両側端に突設されて前記回動軸となる回動部材を有し、
前記第3連結部は、前記ハウジングに固定留めされる固定部材、及び前記パネル本体の下方中央部から前記固定部材に向かって延設されて該固定部材に係合される係合部材を有することを特徴とする請求項6に記載の操作パネルユニット。
【請求項8】
前記パネル本体は、前記第1支持軸、前記第2支持軸、及び前記回動軸が同一平面上に位置する状態で前記第2連結部を収納する収納部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の操作パネルユニット。
【請求項9】
前記パネル本体は、前記ハウジング内に設けられて前記電気機器の動作を制御する制御基板と、前記ユーザインタフェースとを電気的に接続する接続ケーブルを案内するケーブル案内部を備え、
前記ケーブル案内部は、前記第1支持軸および前記第2支持軸に近接した位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の操作パネルユニット。
【請求項10】
前記電気機器は、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の操作パネルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95038(P2013−95038A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239261(P2011−239261)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】