説明

操作子装置

【課題】安定した回動と回動量の高い検出精度を実現すると共に、大型化を避ける。
【解決手段】子ユニット30は、第1の軸中心AX1の周りに親ユニット10に対して相対的に回動自在で、操作子56を有する孫ユニット50は、第1の軸中心AX1に直交する第2の軸中心AX2の周りに子ユニット30に対して相対的に回動自在である。孫ユニット50は、第2の軸中心AX2の延長方向における操作子56の両側の位置である両端部において、同心の第2の回動軸38及び軸部64を介して子ユニット30に両持ち構造で軸支される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行でない2軸方向に操作可能な操作子を有する操作子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平行でない2軸方向に操作可能な操作子を有するジョイスティック等の操作子装置が知られている(特許文献1)。この装置では、垂直に立設された操作子を2軸方向(2次元方向)に操作でき、それぞれの軸方向の操作を検出して入力装置として利用する。
【0003】
また、このような2軸方向の操作を可能にする構成として、3つのユニットを設け、第1の軸中心の周りに第1のユニットに対して第2のユニットが相対的に回動すると共に、第1の軸中心とは平行でない第2の軸中心の周りに第2のユニットに対して第3のユニットが相対的に回動するものが知られている(特許文献2)。
【0004】
このような3つのユニットを用いた機構において、特に、操作子を有するユニットの支持については、片持ち支持が一般的である。特に、第2の軸中心の周りの第2のユニットと第3のユニットとの相対的な回動量を検出するセンサを第2の軸中心周りに設ける場合は、軸部が大型化するため、大型化を避けるためにも両持ち構造は採用しにくい。
【0005】
図3は、3つのユニットを有する従来の一般的な操作子装置の構成を示す模式的な平面図である。この操作子装置は、装置に固定される固定体である親ユニット110と、それぞれ可動体である子ユニット130及び孫ユニット150の3つのユニットから構成される。子ユニット130は、親ユニット110に対して2つの軸部J1で軸支される。孫ユニット150は、子ユニット130に対して1つの軸部J2で軸支される。
【0006】
操作子156をX方向に操作すると、孫ユニット150が軸部J2を中心に子ユニット130に対してX方向に回動する。操作子156をY方向に操作すると、孫ユニット150と子ユニット130とが一体となって軸部J1を中心に親ユニット110に対してY方向に回動する。図3においてセンサの図示は省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−75037号公報
【特許文献2】特許第3381852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、3つのユニットを有する従来の操作子装置において、孫ユニット150は、子ユニット130に対して軸部J2で片持ち状態で支持されるので、軸支機構の強度や剛性が小さく、摩耗や故障も生じやすく、耐久性が低かった。あるいは、片持ち構造で高い強度を確保しようとすると部材が大型化し、スペースやコストが犠牲になるという不利が生じる。
【0009】
また、操作子156は、直接に操作される部材であるので、安定的で良好な操作感触や高い外観品質も求められ、軸支の強度や耐久性だけでなく軸に対する位置精度も重要である。
【0010】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、安定した回動と回動量の高い検出精度を実現すると共に、大型化を避けることができる操作子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の操作子装置は、第1のユニット(10)と、第1の軸中心(AX1)の周りに前記第1のユニットに対して相対的に回動自在な第2のユニット(30)と、操作子(56)を有してなり、前記第1の軸中心に平行でない第2の軸中心(AX2)の周りに前記第2のユニットに対して相対的に回動自在な第3のユニット(50)と、前記第2の軸中心の周りの前記第2のユニットと前記第3のユニットとの相対的な回動量を検出する検出手段(39)とを有し、前記第3のユニットは前記第2のユニットに対して、前記第2の軸中心の延長方向における前記操作子の両側の位置において前記第2の軸中心を回動中心とした両持ち構造によって軸支され、前記両持ち構造を構成する2つの回動軸(38、64)のうち少なくとも1つの回動軸は、前記検出手段の回転軸(38)を兼ねることを特徴とする。
【0012】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安定した回動と回動量の高い検出精度を実現すると共に、大型化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。
【図2】本操作子装置の模式的な平面図、側面図である。
【図3】3つのユニットを有する従来の一般的な操作子装置の構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る操作子装置の斜視図である。この操作子装置は、例えばジョイスティックとして構成され、用途としては電子楽器の楽音制御用の入力装置等が適している。制御対象としては、例えば音高、音色、音量のほか、ビブラート、リバーブ等の各種効果に関する楽音パラメータが考えられる。ただし、楽音制御に限定されるものではなく、楽器以外の電気機器(ゲーム装置等)にも適用可能である。
【0017】
この操作子装置は、大別して3つのユニットから構成される。すなわち、第1のユニットである親ユニット10、第2のユニットである子ユニット30、第3のユニットである孫ユニット50を有する。孫ユニット50は、子ユニット30に対してX方向に相対的に回動自在である。子ユニット30は、親ユニット10に対してY方向に相対的に回動自在である。電気機器に親ユニット10が固定されるとし、親ユニット10を固定体と考えれば、子ユニット30と孫ユニット50は可動体といえる。
【0018】
操作子56は、操作者により直接操作される構成要素であり、孫ユニット50及び/又は子ユニット30の可動により、X方向及びY方向、またはこれら双方の成分を含む方向に操作が可能である。例えば操作子56をX方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて孫ユニット50がX方向に回動する。操作子56をY方向の成分を含む方向に操作すると、それに応じて子ユニット30が孫ユニット50と一体となって親ユニット10に対してY方向に回動する。
【0019】
親ユニット10は、上ケース11(図1)を含んで一体に構成され、通常、親ユニット10が電子機器に固定される。子ユニット30は、いずれも樹脂製のホイール41及び下フレーム42を有する。孫ユニット50は、樹脂製のカバー体51と操作子56とを有する。棒状の操作子56は、ゴム、またはカバー体51より柔らかい樹脂で一体に形成される。操作子56は、非操作時において上ケース11から突出している。以降の説明上、操作子56の突出方向を上方とする。
【0020】
図2(a)、(b)は、本操作子装置の模式的な平面図、側面図である。この図では、本操作子装置を概念的に模式図として描いているが、図1に示すものと同じ構成要素には同じ符号が付されている。上ケース11の図示は省略されている。また、図1、図2では、各ユニットが、非操作状態である初期位置にある状態で示されている。
【0021】
図2(a)、(b)に示すように、子ユニット30には、平面視略L型の電気回路基板43が配設される。電気回路基板43には、第1のロータリボリューム32、第2のロータリボリューム39、及びコネクタ端子部44が実装される。そして、各ロータリボリューム32、39からの信号線がコネクタ端子部44において1つに束ねられて、信号束線45として装置外部へ導出される。
【0022】
第1のロータリボリューム32は、第1の軸中心AX1の周りの親ユニット10と子ユニット30とのY方向の相対的な回動量を検出する。第2のロータリボリューム39は、第2の軸中心AX2の周りの子ユニット30と孫ユニット50とのX方向の相対的な回動量を検出する。ロータリボリューム32、39は、各々の回動軸の回転によりユニット間の相対的な回動量を検出できる構成であればよく、センサの構成は特に限定されない。
【0023】
第1のロータリボリューム32のハウジング67、第2のロータリボリューム39のハウジング68がそれぞれ電気回路基板43に固定される。第1のロータリボリューム32において、第1の回動軸31がハウジング67に対して回動自在で、第2のロータリボリューム39において、第2の回動軸38がハウジング68に対して回動自在である。第1の回動軸31の第1の軸中心AX1がY方向に直交し、第2のロータリボリューム39の第2の回動軸38の第2の軸中心AX2がX方向に直交するように、各ロータリボリューム32、39のハウジング67、68が位置決めされて固定される。従って、軸中心AX1、AX2の位置はいずれも、子ユニット30に対して固定的になっている。
【0024】
子ユニット30において、第1の軸中心AX1に平行な方向における第1のロータリボリューム32の配設位置とは逆側の端部には、軸部61が突設されている。第1の軸中心AX1の方向(軸線方向)は子ユニット30の長手方向でもある。
【0025】
第1の回動軸31は、子ユニット30の挿通穴63を通って子ユニット30の外側に延びている。第1の回動軸31の先端部は、親ユニット10に対して固定されるか、または親ユニット10によって子ユニット30に対して相対的にY方向に(第1の軸中心AX1周りに)回転駆動され得るように親ユニット10に係合されている。
【0026】
一方、親ユニット10における第1の回動軸31と係合している側とは逆側の端部には受け部62が形成され、受け部62は、子ユニット30の軸部61を回動自在に軸支している。受け部62に軸支される軸部61の軸芯は、第1の軸中心AX1と一致するようになっている。
【0027】
従って、子ユニット30は、同心の第1の回動軸31及び軸部61を介して親ユニット10に両持ち構造で軸支された形となる。これにより、子ユニット30は、親ユニット10に対して、第1の軸中心AX1を回動中心として第1の軸中心AX1の周りに(Y方向に)安定的に回動自在となる。
【0028】
子ユニット30において、第2のロータリボリューム39の第2の回動軸38が、挿通穴66を通って子ユニット30の内側に延びている。第2の回動軸38の先端部は、孫ユニット50に対して固定されるか、または孫ユニット50によって子ユニット30に対して相対的にX方向に(第2の軸中心AX2周りに)回転駆動され得るように孫ユニット50に係合されている。
【0029】
第2の軸中心AX2に平行な孫ユニット50の厚み方向において、第2の回動軸38と係合している側とは逆側の端部には、軸部64が突設されている。子ユニット30には、短手方向において第2のロータリボリューム39が配置されている側とは逆側の端部に受け部65が形成されている。受け部65は、孫ユニット50の軸部64を回動自在に軸支している。受け部65に軸支される軸部64の軸芯は、第2の軸中心AX2と一致するようになっている。
【0030】
従って、孫ユニット50は、同心の第2の回動軸38及び軸部64を介して子ユニット30に両持ち構造で軸支された形となる。これにより、孫ユニット50は、子ユニット30に対して、第2の軸中心AX2を回動中心として第2の軸中心AX2の周りに(X方向に)回動自在となる。特に、孫ユニット50が軸支される位置は、第2の軸中心AX2の軸線方向における操作子56を挟んだ両側の位置である。第2の軸中心AX2の延長方向における両端部の外側であるので、軸支状態が安定的である。上記した親ユニット10に対する子ユニット30の軸支態様も同様に両持ち構造であり、安定的である。
【0031】
本実施の形態によれば、孫ユニット50は、子ユニット30に両端部において両持ち構造によって軸支されるので、孫ユニット50の安定した回動を実現すると共に、剛性及び耐久性を高めることができる。特に、片持ち構造に比べ軸支の精度が高く、回動動作が安定するので、摩耗や故障が減り、操作性やタッチも良くなり、外観品質も向上する。さらに、部材が大型化することなく、スペースやコストが犠牲になることも少ない。
【0032】
また、孫ユニット50の両持ち構造を構成する2つの回動軸(第2の回動軸38、軸部64)のうち第2の回動軸38は、第2のロータリボリューム39の回転軸を兼ねるので、孫ユニット50と子ユニット30との相対的な回動量の検出精度を高めると共に、部品点数の増加を抑制することができる。
【0033】
この観点では、孫ユニット50の両持ち構造を構成する2つの回動軸のうち少なくとも一方が回動量検出手段の回転軸を兼ねればよい。また、安定した回動を実現すると共に、剛性及び耐久性を高める観点に限れば、両持ち構造を構成する2つの回動軸は回動量検出手段の回転軸を兼ねることは必須でない。
【0034】
ところで、孫ユニット50の両持ち構造を構成する2つの回動軸として、軸部64及び第2の回動軸38は孫ユニット50に連動して回動する構成であったが、これに限るものではない。すなわち、取り付け関係を逆にし、これらの回動軸が子ユニット30と一体に回動し、孫ユニット50に対して相対的に回動する構成であってもよい。
【0035】
なお、軸中心AX1、AX2は互いに平行でなければよく、直交することは必須でない。
【符号の説明】
【0036】
10 親ユニット(第1のユニット)、 30 子ユニット(第2のユニット)、 39 第2のロータリボリューム(検出手段)、 50 孫ユニット(第3のユニット)、 56 操作子、 AX1 第1の軸中心、 AX2 第2の軸中心、 38 第2の回動軸(回動軸)、 64 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユニットと、
第1の軸中心の周りに前記第1のユニットに対して相対的に回動自在な第2のユニットと、
操作子を有してなり、前記第1の軸中心に平行でない第2の軸中心の周りに前記第2のユニットに対して相対的に回動自在な第3のユニットと、
前記第2の軸中心の周りの前記第2のユニットと前記第3のユニットとの相対的な回動量を検出する検出手段とを有し、
前記第3のユニットは前記第2のユニットに対して、前記第2の軸中心の延長方向における前記操作子の両側の位置において前記第2の軸中心を回動中心とした両持ち構造によって軸支され、
前記両持ち構造を構成する2つの回動軸のうち少なくとも1つの回動軸は、前記検出手段の回転軸を兼ねることを特徴とする操作子装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−37528(P2013−37528A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173044(P2011−173044)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】