説明

操作用成形品部材

【課題】大掛かりな遮光手段を用いることなく動作用の支持部からの光漏れを確実に防止する。
【解決手段】シーソースイッチ4は、内周面側の第1樹脂11と外周面側の第2樹脂12とから形成され、第1樹脂11は光遮蔽性樹脂からなり、第2樹脂12は光透過性樹脂からなっている。シーソースイッチ4の表面側の一部は第1樹脂11が開口されて第2樹脂12だけの開口部位13が形成され、外周面側の第2樹脂12の周囲には白色の塗装が施され、白色の塗装の上に黒色の塗装が施されている。表示記号がレーザー等により除去されて白色の塗装の表示記号が外面に露出した状態であり、内側から光を当てると表示記号の部位だけが光が白色に透過する。支持孔9の外面側を黒色に塗装された第2樹脂12で塞ぐことで光を遮蔽し、支持孔9からの光の漏れをなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用機器の各種入力用の操作スイッチ部品等の操作用成形品部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用オーディオ機器や車載用ナビゲーション機器等の車載用機器の各種入力用の操作スイッチ部品(操作用成形品部材)として、押し込み動作、他方向への傾動動作等の操作を行うことでスイッチ操作が行われる操作スイッチ部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
操作スイッチ部品として、着色された樹脂や光透過性樹脂で文字や図形の部位が成形され、文字や図形の部位と異なる色の樹脂あるいは光遮蔽性樹脂でそれ以外の部分が成形されているものが知られている。このような操作スイッチ部品は、明るい車室内での見栄えを低下させることなく、暗い車室内でも操作機能を容易に目視することができる。
【0004】
近年、車載用機器の商品価値の向上の要求により、暗い車室内での操作スイッチ部品の間からの光漏れ等を確実になくすことが求められているのが現状である。押し込み操作や他方向への傾動操作を行う操作スイッチ部品には、本体との間で動作部が支持されるスリット孔や回動支持孔等の動作用の支持部が存在している。
【0005】
このため、操作スイッチ部品の表面の遮光処理や透過処理を精度良く行っても、動作用の支持部からの光漏れが生じる虞があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−256864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、大掛かりな遮光手段を用いることなく動作用の支持部からの光漏れを確実に防止することができる操作用成形品部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の操作用成形品部材は、樹脂製の凹状の成形部品の内周に動作用の支持部が有底状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、成形部品の内周に動作用の支持部が有底状に形成されているので、成形部品の外側に支持部が貫通することがなく、動作用の支持部から光が漏れる虞がない。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の操作用成形品部材は、請求項1に記載の操作用成形品部材において、前記支持部は、前記成形部品が支持される本体の支持軸に回動自在に支持される支持孔であり、前記成形部品は前記支持軸を中心に回動するシーソースイッチであることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、支持部である支持孔が有底状に形成され、シーソースイッチの支持孔からの光漏れを防止することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の操作用成形品部材は、請求項1もしくは請求項2に記載の操作用成形品部材において、前記成形部品は、内周面側の第1樹脂と外周面側の第2樹脂とから形成され、前記支持部は、前記第1樹脂を貫通していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、内周面側の第1樹脂に支持部を貫通させて設けることで、支持部が第2樹脂により有底状に形成された二色成形品とすることができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の操作用成形品部材は、請求項3に記載の操作用成形品部材において、前記成形部品には、表面側に表示部が形成され、前記表示部は、光透過性状態とされ、前記成形部品の内側から光を当てることで前記表示部に光を透過させることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、表示部に光を透過させるキートップ部品の動作用の支持部からの光の漏れを防止することができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の操作用成形品部材は、請求項3もしくは請求項4に記載の操作用成形品部材において、前記第2樹脂の開口側の縁が前記第1樹脂の開口側の縁部により覆われていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、第2樹脂の開口側の縁が内周面側の第1樹脂の開口側の縁部により覆われるので、開口側の縁の処理が容易になり見栄えを向上させることができる。
【0018】
また、請求項6に係る本発明の操作用成形品部材は、請求項5に記載の操作用成形品部材において、前記第2樹脂の表面に光遮蔽被膜が形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、第2樹脂の表面に光遮蔽被膜を形成する場合、例えば、第2樹脂の表面に第1樹脂と同系色の塗装を施す場合、第2樹脂の開口側の縁部に対しての塗装が不要になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の操作用成形品部材は、大掛かりな遮光手段を用いることなく動作用の支持部からの光漏れを確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車載用ナビゲーション機器を備えた車両の室内の外観図である。
【図2】車載用ナビゲーション機器の要部分解図である。
【図3】シーソースイッチの平面図である。
【図4】図3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図3中のV−V線断面図である。
【図6】塗装の工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例の操作用成形品部材は、車載用オーディオ機器や車載用ナビゲーション機器等の車載用機器の各種入力用の操作スイッチ部品(操作用成形品部材)として、押し込み動作、他方向への傾動動作等の操作を行うことでスイッチ操作が行われる操作スイッチ部品に適用される。操作用成形品部材としては、電子関連機器の各種入力用のキートップ部品や家電製品の操作スイッチ部品等、様々な操作用成形品部材に適用することができる。また、車両のロック部材の操作スイッチ部品、車両のパワーウインドウの操作スイッチ部品等、動作用の支持部を有する車両の操作用成形品部材に適用することができる。
【0023】
以下、本発明の操作用成形品部材の一実施例として、車載用ナビゲーション機器等において他方向への傾動動作等の操作を行うことでスイッチ操作が行われるシーソースイッチを例に挙げて説明する。
【0024】
図1には本発明の一実施例に係るシーソースイッチを有する車載用ナビゲーション機器を備えた車両の室内状況、図2にはシーソースイッチの支持部を説明する車載用ナビゲーション機器の要部分解状況、図3にはシーソースイッチを平面状態で表した状況、図4、図5にはシーソースイッチの内側を断面状態で現した状況、図6には塗装工程の状況を示してある。
【0025】
図1に示すように、車室内のダッシュパネル1には車載用ナビゲーション機器のディスプレイ装置2が備えられ、ディスプレイ装置2の本体枠3には操作用のシーソースイッチ4(操作用成形品部材)が備えられている。シーソースイッチ4は凹状の成形部品で形成され、他方向への傾動動作をさせることで2種類のスイッチ操作を行うスイッチとなっている。シーソースイッチ4の表面には、操作方向を表す白色の△印5及び操作方向を仕切る白色の仕切線6が表面に形成されている。本体枠3の裏側から光を当てることで、△印5及び仕切線6に部位を光が透過して白色に浮き上がり、暗い車室内であっても操作方向を認識することができる。
【0026】
図2に示すように、本体枠3のシーソースイッチ4が支持される部位には、シーソースイッチ4の表面以外の部位への光を遮る遮光壁7が設けられ、遮光壁7の間にはシーソースイッチ4の傾動中心となる一対の支持軸8が設けられている。シーソースイッチ4の内側の面には、支持軸8に回動自在に嵌合する支持部としての支持孔9が対向して形成されている。本体枠3の遮光壁7にシーソースイッチ4を被せて支持孔9に支持軸8を嵌合させることで、支持軸8を中心にシーソースイッチ4が傾動自在に本体枠3に支持される。
【0027】
図3から図5に基づいてシーソースイッチ4を具体的に説明する。図4は支持孔9を正面にした断面(図3のIV−IV線断面)、図5は支持孔9の部分の断面(図3のV−V線断面)である。
【0028】
シーソースイッチ4は、内周面側の第1樹脂11と外周面側の第2樹脂12とから形成され、第1樹脂11は光遮蔽性樹脂(黒色)からなり、第2樹脂12は光透過性樹脂からなっている。シーソースイッチ4の表面側の一部は第1樹脂11が開口されて第2樹脂12だけの開口部位13が形成され、開口部位13に△印5及び仕切線6が形成されている。
【0029】
外周面側の第2樹脂12の周囲には白色の塗装が施され、白色の塗装の上に黒色の塗装が施されている。そして、△印5及び仕切線6の形がレーザー等により除去されて白色の塗装の△印5及び仕切線6が外面に露出した状態になっている。このため、内側から光を当てると△印5及び仕切線6の部位だけが光が白色に透過する。
【0030】
シーソースイッチ4の第1樹脂11には支持孔9が貫通して設けられ、支持孔9の外面側は第2樹脂12で塞がれた状態になっている。つまり、支持孔9は第1樹脂11を貫通して第2樹脂12により有底状態に形成され、有底状態の支持孔9を備えた二色成形品とされている。支持孔9の底部は、即ち、第2樹脂12の面は、黒色に塗装されて光が遮蔽されているので、内側から光が当てられても外部に光が漏れることがない。
【0031】
このため、他のスイッチやシーソースイッチ4が並べられていた場合、スイッチ同士の隙間からの光は遮光壁7で遮光されて外部に漏れることがない。そして、シーソースイッチ4を傾動支持するための支持孔9からの光は、支持孔9が有底状態に形成されているので、遮光されて外部に漏れることがない。従って、大掛かりな遮光手段を用いることなく傾動用の支持孔9からの光漏れを確実に防止することが可能になり、スイッチ同士の隙間からの光の漏れを確実に防止することができる。
【0032】
また、シーソースイッチ4の開口縁は、第2樹脂12の開口側の縁12aが第1樹脂11の開口側の縁部11aにより覆われている。つまり、シーソースイッチ4の開口縁の端面は黒色の光遮蔽性樹脂で覆われた状態になっている。このため、第2樹脂12の面を黒色に塗装する際に、シーソースイッチ4の開口縁の端面の塗装を行う必要がなく、端面の塗装むらや塗装残りを考慮した黒色の塗装が不要で、開口側の縁の処理が容易になり見栄えを向上させることができる。
【0033】
上述したシーソースイッチ4は、二色成形金型を用いて成形される。即ち、ファーストショットにおいて共通雄型と第1雌型により第1樹脂11の部位を射出成形し、セカンドショットにおいて共通雄型と第2雌型により第2樹脂12の部位を射出成形する。二色成形品は、内側の第1樹脂11が黒色の樹脂で、外側の第2樹脂12が透明の樹脂となっている。二色成形品に対して塗装を施すと共に、△印5及び仕切線6の形を加工し、シーソースイッチ4が形成される。
【0034】
尚、二色成形品として、内側の樹脂を光透過性樹脂(白色や透明)で形成し、外側の樹脂を光遮蔽性樹脂(黒色等)で形成することも可能である。この場合、キートップの文字や記号等は、成形型により内側の樹脂と外側の樹脂に凹凸を形成して表面に形状を作製することで対応する。
【0035】
図6に基づいて二色成形品に塗装を施してシーソースイッチ4を形成する工程を説明する。
【0036】
図6(a)に示すように、外側の第2樹脂12の開口側の縁が内側の第1樹脂11の開口側の縁部により覆われている二色成形品15の表面に白色の塗装を施して白色膜16を形成する。次に、図6(b)に示すように、白色膜16の表面に黒色の塗装を施して黒色膜17を形成する。二色成形品15の開口縁の端面は黒色の光遮蔽性樹脂(第1樹脂11の開口側の縁部11a)で覆われているので、黒色膜17を二色成形品15の開口縁の端面に施す必要はない。
【0037】
図6(c)に示すように、表面に黒色膜17が形成された二色成形品15の上面部に△印5及び仕切線6の形を作製する。△印5及び仕切線6に対応する部位にレーザーを照射し、△印5及び仕切線6に対応する黒色膜17を除去して白色膜16を外表に露出させる。これにより、キートップの△印5及び仕切線6が白色とされたシーソースイッチ4とされる。
【0038】
上述したように塗装が施されて△印5及び仕切線6が形成されたシーソースイッチ4の内側から光を当てることで、△印5及び仕切線6だけに白色の光が透過して白色に浮き上がり、暗い車室内であっても操作表示を認識することができる。また、支持孔9の底部の面は黒色に塗装されているので、支持孔9の部位からの光漏れが生じない。
【0039】
尚、上記実施例は二色成形品15によるシーソースイッチ4を例に挙げて説明したが、単色の成形品でシーソースイッチを構成した場合にも支持孔を有底状に形成することで本発明を適用することができる。また、他方向に傾動するシーソースイッチ4を例に挙げて説明したが、押し込みスイッチ等、支持部が溝状に形成されたスイッチ等の操作用成形品部材に本願発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、操作用成形品部材の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ダッシュパネル
2 ディスプレイ装置
3 本体枠
4 シーソースイッチ
5 △印
6 仕切線
7 遮光壁
8 支持軸
9 支持孔
11 第1樹脂
12 第2樹脂
15 二色成形品
16 白色膜
17 黒色膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の凹状の成形部品の内周に動作用の支持部が有底状に形成されていることを特徴とする操作用成形品部材。
【請求項2】
請求項1に記載の操作用成形品部材において、
前記支持部は、前記成形部品が支持される本体の支持軸に回動自在に支持される支持孔であり、前記成形部品は前記支持軸を中心に回動するシーソースイッチである
ことを特徴とする操作用成形品部材。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の操作用成形品部材において、
前記成形部品は、内周面側の第1樹脂と外周面側の第2樹脂とから形成され、
前記支持部は、前記第1樹脂を貫通している
ことを特徴とする操作用成形品部材。
【請求項4】
請求項3に記載の操作用成形品部材において、
前記成形部品には、表面側に表示部が形成され、
前記表示部は、光透過性状態とされ、前記成形部品の内側から光を当てることで前記表示部に光を透過させる
ことを特徴とする操作用成形品部材。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4に記載の操作用成形品部材において、
前記第2樹脂の開口側の縁が前記第1樹脂の開口側の縁部により覆われている
ことを特徴とする操作用成形品部材。
【請求項6】
請求項5に記載の操作用成形品部材において、
前記第2樹脂の表面に光遮蔽被膜が形成される
ことを特徴とする操作用成形品部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−225530(P2010−225530A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73946(P2009−73946)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(592190866)株式会社江東彫刻 (8)
【Fターム(参考)】