説明

操作装置

【課題】安全性と操作ハンドルの取外容易性とを両立可能な操作装置を提供する。
【解決手段】操作装置1は、操作ハンドル2とハンドル支持体3とを備え、ハンドル支持体3は、操作ハンドル2の取付穴23に挿通される支持軸33を有する。支持軸33には、切り欠き部が設けられ、切り欠き部には、幅広部36と幅広部36よりも幅の狭い幅狭部37とが設けられる。操作ハンドル2には、ピン部材4が埋設され、ピン部材4は、最大幅が幅狭部37の幅よりも大きい頭部41と、最小幅が幅狭部37の幅以下の首部42とを具備する。常には、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位に頭部41が係止される。一方で、幅広部36に首部42を配置した状態で、取付穴23からの支持軸33の抜け方向に沿って操作ハンドル2を移動させ、幅狭部37に首部42を通すことにより、ハンドル支持体3から操作ハンドル2を取外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体に設けられた栓蓋等を操作するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽など)やその近傍の構造物に設けられた操作装置を動作させることで、遠隔操作により栓蓋を上下動(すなわち排水口を開閉)させたり(例えば、特許文献1等参照)、吐水口からの吐水量等を調節したりするものが知られている。
【0003】
また、操作装置としては、槽体に対して相対変位可能な操作ハンドルと、操作ハンドルを支持するハンドル支持体とを備えるものが提案されている。ここで、操作機構を槽体等に設ける場合には、槽体等にハンドル支持体を取付けた上で、ハンドル支持体に操作ハンドルが取付けられる。尚、ハンドル支持体に操作ハンドルを取付けるにあたっては、操作ハンドルの背面に形成された取付穴に対してハンドル支持体に設けられた支持軸が挿通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4287128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、安全性の面を考慮すると、ハンドル支持体からの操作ハンドルの脱落(落下)を防止することが好ましい。そこで、支持軸の先端部に、径方向外側に突出し、取付穴に形成された段部に係止可能な鉤部を設けるとともに、鉤部のうち段部に係止される面と段部のうち鉤部が係止される面との双方を、取付穴に対する支持軸の挿通方向(取付穴からの支持軸の抜け方向)に直交させることで、操作ハンドルの脱落を効果的に防止することが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような構成においては、清掃時等、ハンドル支持体から操作ハンドルを取外すことが望まれるときに、通常の力をもって(大きな力を加えることなく)操作ハンドルを取外すことは極めて難しい。そのため、操作ハンドルを取外すためには、操作ハンドルに対して大きな力を加えたり、取外し用の工具を用いたりする必要がある。しかしながら、操作ハンドルに大きな力を加えれば、操作装置の破損等を招いてしまうおそれがあり、また、取外し用の工具を用いることは、利便性の面で好ましくない。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、通常時において操作ハンドルの脱落を効果的に防止できる一方で、清掃時等には、操作ハンドルを容易に取外すことができ、安全性と操作ハンドルの取外容易性とを両立させることが可能な操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.槽体に対して相対変位可能な操作ハンドルと、
前記操作ハンドルを支持するとともに、前記槽体又はその近傍の構造物に対して直接又は間接的に取付けられるハンドル支持体とを備える操作装置であって、
前記ハンドル支持体は、前記操作ハンドルの背面に設けられた取付穴に挿通される支持軸を有するとともに、
前記支持軸には、前記取付穴に対する挿通方向に沿って延び、前記支持軸の先端部に向けて開口する切り欠き部が設けられ、
前記切り欠き部には、幅広部と、前記幅広部よりも前記支持軸の先端側に形成され、前記幅広部よりも幅の狭い幅狭部とが設けられ、
前記操作ハンドルには、前記支持軸と交差する方向に沿って延び、前記操作ハンドルに対して相対移動可能なピン部材が埋設され、
前記ピン部材は、
一端側に設けられるとともに、自身の中心軸と直交する方向に沿った最大幅が前記幅狭部の幅よりも大きい頭部と、
前記頭部よりも他端側に設けられ、自身の中心軸と直交する方向に沿った最小幅が前記幅狭部の幅以下の首部とを具備し、
常には、前記支持軸のうち前記幅狭部を形成する部位に前記頭部が係止され、
前記ピン部材を前記支持軸側へと移動させ、前記幅広部に前記首部を配置した状態で、前記取付穴からの前記支持軸の抜け方向に沿って前記操作ハンドルを前記ハンドル支持体に対して相対移動させ、前記幅狭部に前記首部を通すことにより、前記ハンドル支持体から前記操作ハンドルを取外し可能としたことを特徴とする操作装置。
【0010】
尚、幅狭部を構成する部位が弾性変形可能な材料により形成されている場合等において、幅狭部の弾性変形に伴い首部が幅狭部を通過可能となるときには、首部の最小幅を厳密に幅狭部の幅以下とせず、首部の最小幅を幅狭部の幅よりも若干大きくしてもよい。すなわち、首部は、幅狭部を通過可能な幅とされていればよい。
【0011】
上記手段1によれば、常には、ピン部材の頭部が支持軸のうち幅狭部を形成する部位に係止されている。そのため、支持軸から操作ハンドルを引き抜く方向に向けて操作ハンドルに力が加わった場合であっても、ハンドル支持体からの操作ハンドルの脱落を効果的に防止することができる。
【0012】
一方で、ピン部材を操作ハンドルの内周側(支持軸側)へと押し、幅広部にピン部材の首部を配置した状態で、支持軸の抜け方向に沿って操作ハンドルを移動させ、幅狭部に首部を通過させることで、操作ハンドルを支持軸から容易に取外すことができる。すなわち、通常時には、操作ハンドルの脱落を効果的に防止できる一方で、清掃時等には、特段の困難なく操作ハンドルを取外すことができ、安全性と操作ハンドルの取外容易性とを両立させることができる。
【0013】
さらに、上記手段1によれば、首部の最小幅が幅狭部の幅以下とされているため、首部操作ハンドルを取外す際に、支持軸のうち幅狭部を形成する部位と、ピン部材の首部との間に発生する摩擦力を極めて小さくすることができる。そのため、支持軸のうち幅狭部を形成する部位(すなわち、ピン部材が係止される部位)の磨耗を効果的に抑制することができ、操作ハンドルの取付け、取外しを繰り返し行った場合であっても、支持軸に対する頭部の係止力が低下しにくくなる。その結果、操作ハンドルの脱落を長期間に亘って防止することができる。
【0014】
手段2.前記ピン部材に対して前記支持軸とは反対側に向けた力を付与する弾性部材を備え、
前記支持軸のうち少なくとも前記幅狭部を形成する部位の先端側面には、前記支持軸の基端側に向けて傾斜する傾斜部が設けられ、
前記取付穴に対する前記支持軸の挿通時には、前記支持軸を前記取付穴に対する挿通方向へと移動させ、前記頭部が前記傾斜部を摺動することで、前記ピン部材が前記支持軸側へと移動し、前記首部が前記幅狭部に配置され、前記支持軸を前記取付穴に対する挿通方向へとさらに移動させることで、前記首部が前記幅狭部を通過し、前記弾性部材から付与される力により前記ピン部材が戻り移動することで、前記支持軸のうち前記幅狭部を形成する部位に前記頭部が係止されることを特徴とする手段1に記載の操作装置。
【0015】
ハンドル支持体に対して操作ハンドルを取付ける際には、ピン部材を支持軸側へと移動させて、切り欠き部(幅狭部)上に首部を配置した上で、支持軸を取付穴に挿通する手法が考えられる。しかしながら、この場合にはピン部材の移動と支持軸の挿通との双方を行う必要があり、取付作業に手間や労力を要する。
【0016】
この点、上記手段2によれば、取付穴に対する支持軸の挿通に伴い、ピン部材の頭部が支持軸に設けられた傾斜部を摺動することで、ピン部材が支持軸側へと移動し、首部が幅狭部に配置される。そして、支持軸をさらに挿通方向へと移動させることで、首部が幅狭部を通過し、首部の通過後に弾性部材によりピン部材が戻り移動することで、支持軸のうち幅狭部を形成する部位に頭部が係止される(つまり、通常状態となる)。すなわち、上記手段2によれば、操作ハンドルの取付時にピン部材を移動させる必要がなく、操作ハンドルの取付をワンタッチで行うことができる。その結果、取付作業性を向上させることができる。
【0017】
手段3.前記頭部のうち前記首部との連接部には、前記ピン部材の一端側に向けて拡径するテーパ部が設けられ、
前記取付穴に対する前記支持軸の挿通時には、前記テーパ部が前記傾斜部を摺動することを特徴とする手段2に記載の操作装置。
【0018】
上記手段3によれば、取付穴に対する支持軸の挿通時に、ピン部材に設けられたテーパ部が支持軸の傾斜部を摺動する。従って、取付・取外作業を繰り返し行うことに伴う傾斜部(支持軸のうち幅狭部を形成する部位)の磨耗を一層効果的に抑制することができる。その結果、支持軸に対する頭部の係止力が一層低下しにくくなり、操作ハンドルの脱落をより長期間に亘って防止することができる。
【0019】
手段4.前記ピン部材の他端面は、前記操作ハンドルの外周面に露出し、常には前記操作ハンドルの外周面と面一又は前記外周面に対して没入状態とされることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の操作装置。
【0020】
上記手段4によれば、ピン部材の他端面が、常には操作ハンドルの外周面と面一又は前記外周面に対して没入状態とされている。従って、ピン部材を意図せず押してしまうという事態が生じにくくなり、操作ハンドルの意図しない脱落をより確実に防止することができる。
【0021】
また、操作ハンドルの外周面に、ピン部材に起因する突起が形成されなくなるため、外観品質の向上を図ることができる。
【0022】
手段5.前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの一方には、凹状の没入部が形成されるとともに、前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの他方には、前記没入部に挿通される突出部が設けられ、前記操作ハンドルの外周側に向けた前記ピン部材の移動が規制されることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の操作装置。
【0023】
上記手段5によれば、ピン部材及び操作ハンドルの一方に設けられた没入部に、ピン部材及び操作ハンドルの他方に設けられた突出部が挿通されている。従って、操作ハンドルの外周側に向けたピン部材の相対移動を規制することができる。その結果、操作ハンドルからのピン部材の抜けをより確実に防止することができる。
【0024】
手段6.前記ピン部材のうち前記首部よりも他端側には、自身の断面積が前記首部の断面積よりも大きい胴部が設けられ、
前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの一方には、凹状の没入部が形成されるとともに、前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの他方には、前記没入部に挿通される突出部が設けられ、前記支持軸が配置される位置よりも前記取付穴の中心軸側に向けた前記胴部の移動が規制されることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の操作装置。
【0025】
上記手段6によれば、ピン部材のうち首部よりも他端側に、首部よりも太い胴部が設けられているため、ピン部材の強度向上を図ることができる。
【0026】
さらに、上記手段6によれば、没入部に突出部が挿通されることで、支持軸が配置される位置よりも取付穴の中心軸側に向けた胴部の移動が規制されている。従って、取付穴に対する支持軸の挿通時に、切り欠き部上に胴部が位置することで、ピン部材が幅狭部を通過できず、操作ハンドルの取付に支障が生じてしまうという事態をより確実に防止することができる。その結果、操作ハンドルの取付を一層容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】操作装置等の構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】浴槽に設けられた操作ハンドルを示す斜視図である。
【図3】ハンドル支持体の構成を示す斜視図である。
【図4】操作ハンドルの内部構成を示す部分拡大断面図である。
【図5】操作ハンドルの取付・取外時におけるピン部材と支持軸との位置関係等を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、操作装置1は、図1に示すように、槽体としての浴槽100に取付けられている。
【0029】
まず、操作装置1の説明に先立って、浴槽100の構成について説明する。
【0030】
浴槽100は、成形品であり、図1に示すように、底壁部101と、当該底壁部101の外周に立設された側壁部102と、側壁部102の上端部から外周側に延びる鍔状のフランジ部103とを備えている。また、底壁部101には、浴槽100内の水を排出するための排水口104が設けられており、側壁部102の上部には、浴槽100からのオーバーフローを防止するためのオーバーフロー口105が設けられている。
【0031】
また、排水口104には、これを開閉するための栓蓋11が設けられており、操作装置1を操作することで、栓蓋11を上下動させ、排水口104を開閉できるようになっている。尚、レリースワイヤー等により構成された伝達部12を介して、栓蓋11を上下動させるための駆動力が、操作装置1から栓蓋11に対して伝達される。
【0032】
次いで、操作装置1の構成について説明する。
【0033】
操作装置1は、浴槽100に対して相対回動可能な操作ハンドル2と、操作ハンドル2を支持するハンドル支持体3とを具備している。
【0034】
操作ハンドル2は、所定の金属(例えば、SUS等)や樹脂により形成されるとともに、有底円筒状をなし、図2に示すように、その表面に、自身の径方向に沿って延びる突条をなすツマミ部21を備えている。加えて、操作ハンドル2の外周面には、排水の流路となる切り欠き状の通水部22が設けられている。尚、本実施形態では、伝達部12の一端部がハンドル支持体3に対して接触しており、伝達部12の他端部が、栓蓋11を支持するとともに、伝達部12の動作に伴い栓蓋11を上下動させる機構に接触している。そして、操作ハンドル2及びこれを支持するハンドル支持体3が浴槽100に対して相対回動することで伝達部12が自身の軸方向に沿って動作し、ひいては栓蓋11が上下動する(排水口104が開閉する)ように構成されている。
【0035】
ハンドル支持体3は、所定の樹脂(例えば、POM等)により形成されており、図3に示すように、自身の背面中心に、オーバーフロー口105に取付けられた筒状の取付用部材106(図1参照)に向けて突出する柱状部31を備えている。さらに、柱状部31の先端側には、周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、3本)の爪部32が設けられており、各爪部32の先端部は、径方向外側に向けて突出している。そして、柱状部31は、前記取付用部材106の中心に設けられた取付孔に対して挿通されるとともに、爪部32が、前記取付用部材106の背面に係止されている。これにより、ハンドル支持体3は、取付用部材106ひいてはオーバーフロー口105からの抜け防止が図られた状態で側壁部102に取付けられるとともに、側壁部102(浴槽100)に対して相対回動可能となっている。
【0036】
加えて、図4に示すように、操作ハンドル2の背面中心には、凹状の取付穴23が形成されている。そして、取付穴23に対して、前記ハンドル支持体3の表面中心に設けられた円筒状の支持軸33が挿通されることで、操作ハンドル2がハンドル支持体3に支持されている。
【0037】
また、操作ハンドル2の背面には、自身の中心軸を挟むようにして2つの被挿入穴24A,24Bが形成されている。そして、被挿入穴24A,24Bに対してハンドル支持体3の表面に形成された突状の挿入部34A,34Bが挿入されることで、ハンドル支持体3に対する操作ハンドル2の相対回転が規制されている。これにより、操作ハンドル2の回動動作(変位)により、操作ハンドル2とともにハンドル支持体3が回動動作するようになっている。
【0038】
尚、被挿入穴24A,24Bの内径はそれぞれ異なるものとされるとともに、挿入部34Aの外径は被挿入穴24Aの内径に対応する大きさとされ、挿入部34Bの外径は被挿入穴24Bの内径に対応する大きさとされている。これにより、ハンドル支持体3に対する操作ハンドル2の取付位置が周方向に沿って180度ずれてしまうといった事態が防止され、ハンドル支持体3に対する操作ハンドル2の取付位置が一義的に定まるようになっている。
【0039】
加えて、図3に示すように、支持軸33には、取付穴23に対する支持軸33の挿通方向に沿って延び、支持軸33の先端部に向けて開口する切り欠き部35が設けられている。切り欠き部35は、支持軸33の基端側に位置し、支持軸33の周方向に沿った幅が比較的大きな幅広部36と、当該幅広部36に隣接するとともに、幅広部36よりも幅狭に形成された幅狭部37とを備えている。本実施形態において、幅狭部37は、支持軸33の中心軸に沿って一定の幅を有するように構成されている一方で、幅広部36は、自身を形成する面が円形状に形成されており、支持軸33の中心軸に沿って幅が変化するように構成されている。尚、支持軸33の中心軸に沿って幅広部36や幅狭部37の幅が変化する場合において、「幅広部36の幅」とあるのは、支持軸33の中心軸方向に沿って最も幅広の部位における幅をいい、「幅狭部37の幅」とあるのは、支持軸33の中心軸方向に沿って最も幅の狭い部位における幅をいう。
【0040】
さらに、支持軸33のうち少なくとも幅狭部37を形成する部位の先端側面(本実施形態では、支持軸33の中心軸側に位置する面)には、支持軸33の基端側に向けて傾斜する傾斜部38が設けられている。
【0041】
加えて、図4に示すように、操作ハンドル2には、自身の外周面と前記取付穴23との間を連通する連通孔25が設けられており、当該連通孔25には、棒状をなす金属製のピン部材4が挿設されている。
【0042】
ピン部材4は、支持軸33と交差する方向に沿って延び、操作ハンドル2に対してその径方向に沿って相対移動可能に構成されている。また、ピン部材4は、自身の中心軸と直交する断面において円形状をなし、自身の他端面4Bが、操作ハンドル2の外周面に露出している。加えて、ピン部材4は、その一端側(支持軸33側)に設けられた比較的大径の頭部41と、頭部41よりも他端側に設けられた比較的小径の首部42とを備えている。
【0043】
頭部41は、自身の外径が前記幅狭部37の幅よりも大きなものとされている一方で、首部42は、自身の外径が前記幅狭部37の幅以下とされている。また、頭部41のうち首部42との連接部には、ピン部材4の一端側に向けて拡径するテーパ部43が設けられており、頭部41から首部42にかけて外径が緩やかに変化するように構成されている。
【0044】
加えて、本実施形態では、常には、前記幅広部36に頭部41が挿入され、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位に頭部41が係止されている。ここで、上述の通り、頭部41の外径は幅狭部37の幅よりも大きいため、取付穴23に対する支持軸33の抜け方向に沿って操作ハンドル2に力が加わった場合であっても、頭部41は幅狭部37を通過せず、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位に係止されたままとなる。そのため、ハンドル支持体3からの操作ハンドル2の抜け防止が図られることとなる。
【0045】
さらに、ピン部材4のうち首部42よりも他端側には、首部42よりも大径に形成され、ピン部材4の中心軸と直交する断面において、自身の断面積が首部42の断面積よりも大きい円柱状の胴部44が設けられている。さらに、首部42のうち胴部44との連接部には、ピン部材4の他端側に向けて外径が拡径する拡径部45が設けられており、首部42から胴部44にかけて外径が緩やかに変化するように構成されている。
【0046】
加えて、ピン部材4の外周面には、ピン部材4の長手方向に沿って延びる凹状の没入部46が形成されている。また、操作ハンドル2には、前記連通孔25に向けて突出する突出部26が設けられている。そして、没入部46に対して突出部26が挿通されることで、操作ハンドル2の内周側及び外周側に向けたピン部材4の移動が規制されている。
【0047】
本実施形態では、没入部46を形成する側壁面のうち操作ハンドル2の中心側に位置する面に前記突出部26が接触した状態において、ピン部材4の他端面4Bが、操作ハンドル2の外周面と面一となるように、突出部26及び没入部46の相対位置が設定されている。
【0048】
一方で、取付穴23に対して支持軸33が非挿通の状態であって、没入部46を形成する側壁面のうち操作ハンドル2の外周面側に位置する面に前記突出部26が接触したときに、ピン部材4の胴部44が、取付穴23内において支持軸33が配置される位置よりも取付穴23の中心軸側に位置しないように、突出部26及び没入部46の相対位置が設定されている。
【0049】
加えて、ピン部材4の他端部に形成された鍔状部位と操作ハンドル2との間には、弾性部材としてのバネ部材5が配置されており、ピン部材4は、バネ部材5により支持軸33とは反対側に向けた力を付与されている。バネ部材5から付与される力により、没入部46を形成する側壁面のうち操作ハンドル2の中心側に位置する面が前記突出部26に対して圧接されている。そのため、後述する操作ハンドル2の取外時にピン部材4を移動させる場合を除いて、ピン部材4の他端面4Bと操作ハンドル2の外周面とが面一な状態で維持されるようになっている。
【0050】
次に、ハンドル支持体3に対する操作ハンドル2の着脱手法について説明する。
【0051】
ハンドル支持体3から操作ハンドル2を取外す際には、ピン部材4の他端面4Bを押圧することにより、ピン部材4を支持軸33側へと移動させ、前記幅広部36にピン部材4の首部42のみを配置する。その上で、取付穴23に対する支持軸33の抜け方向に沿って操作ハンドル2に力を加えることで、首部42が幅狭部37を通過し、取付穴23から支持軸33が抜ける。その結果、ハンドル支持体3から操作ハンドル2が取外される。
【0052】
一方で、ハンドル支持体3に操作ハンドル2を取付ける際には、ピン部材4を特に操作することなく(バネ部材5により、ピン部材4の他端面4Bと操作ハンドル2の外周面とが面一となっている状態のままで)、支持軸33を取付穴23に対する挿通方向に移動させていく。このとき、支持軸33の挿通方向に沿って切り欠き部35上に頭部41が位置しているが、図5に示すように、支持軸33の移動に伴い、頭部41のテーパ部43が支持軸33の傾斜部38を摺動することで、ピン部材4が支持軸33側へと移動し、幅狭部37に首部42が配置される。そして、支持軸33を挿通方向へとさらに移動させることで、首部42が幅狭部37を通過し、首部42が幅狭部37を通過した直後に、バネ部材5から付与される力によりピン部材4が支持軸33から離間する側へと戻り移動する。その結果、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位に対して頭部41が係止される。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、常には、ピン部材4の頭部41が支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位に係止されている。そのため、支持軸33から操作ハンドル2を引き抜く方向に向けて操作ハンドル2に力が加わった場合であっても、ハンドル支持体3からの操作ハンドル2の脱落を効果的に防止することができる。
【0054】
一方で、ピン部材4を支持軸33側へと押し、幅広部36にピン部材4の首部42を配置した状態で、支持軸33の抜け方向に沿って操作ハンドル2を移動させ、幅狭部37に首部42を通過させることで、操作ハンドル2を支持軸33から容易に取外すことができる。すなわち、本実施形態によれば、通常時には、操作ハンドル2の脱落を効果的に防止できる一方で、清掃時等には、特段の困難なく操作ハンドル2を取外すことができ、安全性と操作ハンドル2の取外容易性とを両立させることができる。
【0055】
さらに、首部42の外径が幅狭部37の幅以下とされているため、操作ハンドル2を取外す際に、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位と、ピン部材4の首部42との間に発生する摩擦力を極めて小さくすることができる。そのため、支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位(すなわち、ピン部材4が係止される部位)の磨耗を効果的に抑制することができ、操作ハンドル2の取付け、取外しを繰り返し行った場合であっても、支持軸33に対する頭部41の係止力が低下しにくくなる。その結果、操作ハンドル2の脱落を長期間に亘って防止することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、操作ハンドル2の取付時にピン部材4を移動させる必要がなく、操作ハンドル2の取付をワンタッチで行うことができる。その結果、取付作業性を向上させることができる。
【0057】
加えて、取付穴23に対する支持軸33の挿通時に、ピン部材4のテーパ部43が支持軸33の傾斜部38を摺動するように構成されている。従って、取付・取外作業を繰り返し行うことに伴う傾斜部38(支持軸33のうち幅狭部37を形成する部位)の磨耗を一層効果的に抑制することができる。その結果、支持軸33に対する頭部41の係止力が一層低下しにくくなり、操作ハンドル2の脱落をより長期間に亘って防止できる。
【0058】
併せて、ピン部材4の他端面4Bが、常には操作ハンドル2の外周面と面一又は前記外周面に対して没入状態とされている。従って、ピン部材4を意図せず押してしまうという事態が生じにくくなり、操作ハンドル2の意図しない脱落をより確実に防止することができる。また、操作ハンドル2の外周面に、ピン部材4に起因する突起が形成されなくなるため、外観品質の向上を図ることができる。
【0059】
さらに、ピン部材4のうち、首部42よりも他端側には、首部42よりも太い胴部44が設けられているため、ピン部材の強度向上を図ることができる。
【0060】
加えて、ピン部材4に設けられた没入部46に、操作ハンドル2に設けられた突出部26が挿通されているため、操作ハンドル2の外周側に向けたピン部材4の相対移動を規制することができる。その結果、操作ハンドル2からのピン部材4の抜けをより確実に防止することができる。
【0061】
一方で、没入部46に対する突出部26の挿通により、支持軸33が配置される位置よりも取付穴23の中心軸側に向けたピン部材4の胴部44の移動が規制されている。従って、取付穴23に対する支持軸33の挿通時に、切り欠き部35上に胴部44が位置することで、ピン部材4が幅狭部37を通過できず、操作ハンドル2の取付に支障が生じてしまうという事態をより確実に防止することができる。その結果、操作ハンドル2の取付を一層容易に行うことができる。
【0062】
また、首部42のうち胴部44との連接部には拡径部45が設けられており、首部42から胴部44にかけて外径が緩やかに変化するように構成されている。従って、ピン部材4に応力が加わった場合に、ピン部材4の一部に局所的に応力が集中してしまうといった事態を抑制することができる。その結果、ピン部材4の曲がり変形や折損等をより確実に防止することができる。
【0063】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0064】
(a)上記実施形態において、頭部41及び首部42はそれぞれ円柱状とされているが、頭部41や首部42の形状は特に限定されるものではなく、例えば、断面多角形状や断面楕円形状に形成してもよい。この場合において、頭部41は、自身の中心軸と直交する方向に沿った最大幅が前記幅狭部37の幅よりも大きなものとされ、首部42は、自身の中心軸と直交する方向に沿った最小幅が前記幅狭部37の幅以下とされる。そして、通常時において、頭部41のうち少なくとも自身の中心軸と直交する方向に沿って幅が最大となる部位が支持軸33に係止され、操作ハンドル2を取外す際に、首部42のうち少なくとも自身の中心軸と直交する方向に沿って幅が最小となる部位が、幅狭部37を通過するように構成される。
【0065】
(b)上記実施形態において、操作ハンドル2は、自身の変位により栓蓋11を上下動させるものであり、栓蓋11を操作対象としているが、操作ハンドル2による操作対象は、栓蓋11に限定されるものではない。従って、例えば、吐水口からの吐水量等を調節するための部材を操作ハンドル2による操作対象とし、操作ハンドル2の変位により吐水量等を調節可能としてもよい。また、水温を調節するための部材を操作ハンドル2による操作対象としてもよい。
【0066】
(c)上記実施形態では、ピン部材4の他端面4Bが操作ハンドル2の外周面に露出しているが、ピン部材4の他端面4Bが操作ハンドル2の外周面に露出しないように構成してもよい。従って、例えば、操作ハンドル2の内部にピン部材4を埋設するとともに、操作ハンドル2の表面(ツマミ部21の位置する側の面)から、ピン部材4に固定された突部が露出するように構成し、当該突部を操作することで、ピン部材4を操作ハンドル2に対して相対移動させてもよい。
【0067】
(d)上記実施形態では、ピン部材4に没入部46が設けられ、操作ハンドル2に突出部26が設けられているが、ピン部材4に突出部を設け、操作ハンドル2に没入部を設けることとしてもよい。尚、ピン部材4に突出部を設けるにあたっては、例えば、ピン部材4の外周面に穴部を形成した上で、当該ピン部材4を操作ハンドル2に埋設し、操作ハンドル2に設けられた没入部(孔)を通して、前記ピン部材4の穴部に棒状部材の先端部(基端側が突出部となる)を嵌入してもよい。
【0068】
(e)上記実施形態では、操作ハンドル2として回動動作するものが用いられているが、操作ハンドル2は、浴槽100に対して相対変位可能であればよい。従って、例えば、操作ハンドル2として浴槽100の表面に沿ってスライド移動可能なものを用いることとしてもよい。
【0069】
(f)上記実施形態において、ハンドル支持体3は、浴槽100の側壁部102に対して取付けられているが、ハンドル支持体3の取付位置はこれに限定されるものではない。従って、例えば、ハンドル支持体3を、浴槽100のフランジ部103に取付けることとしてもよい。また、ハンドル支持体3を、浴槽100の近傍に設けられた構造物に取付けることとしてもよい。
【0070】
(g)上記実施形態では、槽体として浴槽100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面化粧台や流し台などに本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…操作装置、2…操作ハンドル、3…ハンドル支持体、4…ピン部材、4B…(ピン部材の)他端面、5…バネ部材(弾性部材)、23…取付穴、26…突出部、33…支持軸、35…切り欠き部、36…幅広部、37…幅狭部、38…傾斜部、41…頭部、42…首部、43…テーパ部、44…胴部、45…拡径部、46…没入部、100…浴槽(槽体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体に対して相対変位可能な操作ハンドルと、
前記操作ハンドルを支持するとともに、前記槽体又はその近傍の構造物に対して直接又は間接的に取付けられるハンドル支持体とを備える操作装置であって、
前記ハンドル支持体は、前記操作ハンドルの背面に設けられた取付穴に挿通される支持軸を有するとともに、
前記支持軸には、前記取付穴に対する挿通方向に沿って延び、前記支持軸の先端部に向けて開口する切り欠き部が設けられ、
前記切り欠き部には、幅広部と、前記幅広部よりも前記支持軸の先端側に形成され、前記幅広部よりも幅の狭い幅狭部とが設けられ、
前記操作ハンドルには、前記支持軸と交差する方向に沿って延び、前記操作ハンドルに対して相対移動可能なピン部材が埋設され、
前記ピン部材は、
一端側に設けられるとともに、自身の中心軸と直交する方向に沿った最大幅が前記幅狭部の幅よりも大きい頭部と、
前記頭部よりも他端側に設けられ、自身の中心軸と直交する方向に沿った最小幅が前記幅狭部の幅以下の首部とを具備し、
常には、前記支持軸のうち前記幅狭部を形成する部位に前記頭部が係止され、
前記ピン部材を前記支持軸側へと移動させ、前記幅広部に前記首部を配置した状態で、前記取付穴からの前記支持軸の抜け方向に沿って前記操作ハンドルを前記ハンドル支持体に対して相対移動させ、前記幅狭部に前記首部を通すことにより、前記ハンドル支持体から前記操作ハンドルを取外し可能としたことを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記ピン部材に対して前記支持軸とは反対側に向けた力を付与する弾性部材を備え、
前記支持軸のうち少なくとも前記幅狭部を形成する部位の先端側面には、前記支持軸の基端側に向けて傾斜する傾斜部が設けられ、
前記取付穴に対する前記支持軸の挿通時には、前記支持軸を前記取付穴に対する挿通方向へと移動させ、前記頭部が前記傾斜部を摺動することで、前記ピン部材が前記支持軸側へと移動し、前記首部が前記幅狭部に配置され、前記支持軸を前記取付穴に対する挿通方向へとさらに移動させることで、前記首部が前記幅狭部を通過し、前記弾性部材から付与される力により前記ピン部材が戻り移動することで、前記支持軸のうち前記幅狭部を形成する部位に前記頭部が係止されることを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記頭部のうち前記首部との連接部には、前記ピン部材の一端側に向けて拡径するテーパ部が設けられ、
前記取付穴に対する前記支持軸の挿通時には、前記テーパ部が前記傾斜部を摺動することを特徴とする請求項2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記ピン部材の他端面は、前記操作ハンドルの外周面に露出し、常には前記操作ハンドルの外周面と面一又は前記外周面に対して没入状態とされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項5】
前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの一方には、凹状の没入部が形成されるとともに、前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの他方には、前記没入部に挿通される突出部が設けられ、前記操作ハンドルの外周側に向けた前記ピン部材の移動が規制されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項6】
前記ピン部材のうち前記首部よりも他端側には、自身の断面積が前記首部の断面積よりも大きい胴部が設けられ、
前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの一方には、凹状の没入部が形成されるとともに、前記ピン部材及び前記操作ハンドルのうちの他方には、前記没入部に挿通される突出部が設けられ、前記支持軸が配置される位置よりも前記取付穴の中心軸側に向けた前記胴部の移動が規制されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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