説明

操舵絶対角検出装置および車両用操舵装置

【課題】検出が容易な操舵絶対角検出装置を提供する。
【解決手段】操舵軸の回転角区間(例えば1回転360°毎)にそれぞれ応じたラック軸8の軸方向区間を設けた。軸方向区間毎に仕様の異なる複数の被検出面(平坦面341〜344)を、ラック軸8の表面8bに設けた。距離検出器33が、何れの被検出面(平坦面341〜344)を検出するかによって、ラック軸8の軸方向区間(操舵軸の回転角区間に相当)を特定する。特定された回転角区間に対応する回転角基準値に、トルクセンサの第1レゾルバにより検出された回転角値を加算して、操舵絶対角を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は操舵絶対角検出装置および車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用操舵装置には、操舵軸の回転角に基づいて操舵角を検出する回転角センサが設けられている。通例、回転角センサの測定範囲は1回転(360°)以内である。
これに対して、ステアリングホイールの操舵角範囲は、例えば左右2回転(720°ずつ)である。
特許文献1の図1〜図5では、車両の操舵部材の回転角を検出する回転角センサと、操舵部材に連動して回転するピニオンに噛み合うラック軸に生ずる径方向の撓み量を周期的な変動量として検出する変動検出センサとを備え、両センサの出力に基づいて、操舵絶対角を検出する技術が提案されている。
【0003】
具体的には、回転角センサおよび変動検出センサの検出信号の双方が、ともに増加傾向である場合、および前記双方がともに減少傾向である場合は、第1の演算式を用い、回転角センサおよび変動角センサの何れか一方の検出信号が増加傾向であって他方が減少傾向である場合は、第2の演算式を用いて、回転角センサの検出信号から得られた検出回転角が何周期目の角度区間になるかを特定するための段階値を求め、求められた段階値により特定された角度区間に対応する基準回転角と、回転角センサの検出信号から得られた検出回転角とに基づいて、操舵絶対角を検出する。
【0004】
また、特許文献1の図7〜図9には、前記の変動検出センサの変更例が示されている。すなわち、変動検出センサの被検出面として、ラック軸の軸方向の一方に関して直線状に傾斜する、同一仕様の複数の傾斜面を設けている。ラック軸の移動に伴って、固定側である変動検出センサの検出部と、可動側である被検出面との距離が周期的に変化する。これを絶対操舵角の検出に用いている。
【0005】
また、特許文献1の図10,11では、ラック軸を摺動可能に支持するブッシュに、変動検出センサを保持する技術が提案されている。
特許文献2では、操舵トルクを検出するトルクセンサの2つのレゾルバからの信号と、モータの回転角を検出するモータレゾルバからの信号とを用いて、操舵絶対角を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4003598号公報
【特許文献2】特許第3969220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ラック軸に設けられる複数の被検出部が同一仕様であるため、回転角センサと変動検出センサの検出進行の変化の傾向の組み合わせを判定し、その判定内容に応じた数式を用いる必要がある。このため、操舵絶対角を検出するための検出ロジックが複雑となり、制御負荷も大きくなる。特許文献2においても、3つのレゾルバの検出信号を扱うため、同様の問題がある。
【0008】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、検出が容易な操舵絶対角検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、ラックピニオン式の車両用操舵装置(1)の操舵絶対角(θabs )を検出する操舵絶対角検出装置(B)において、操舵軸(3)の回転角(θ1)を検出する回転角検出器(29;30)と、ラック軸(8)の表面(8b)に設けられた被検出部(34)および前記被検出部に対向する検出部(35)を含み、前記回転角の区間(K1〜K4)にそれぞれ応じたラック軸の軸方向区間(AK1〜AK4)を検出する軸方向区間検出器(33;33A)と、前記回転角検出器により検出された回転角および前記軸方向区間検出器により検出された前記軸方向区間に基づいて、操舵絶対角を検出する操舵絶対角検出部(36)と、を備え、前記被検出部は、前記軸方向区間毎に仕様の異なる複数の被検出面(341〜344)を含む、操舵絶対角検出装置を提供する。
【0010】
また、請求項2のように、前記操舵軸の前記回転角区間は、前記操舵軸の1回転分であってもよい。
また、請求項3のように、前記複数の被検出部は、それぞれラック軸の軸方向(X1)とは平行に延び、前記軸方向区間毎に高さの異なる複数の平坦面(341〜344)であってもよい。
【0011】
また、請求項4のように、前記軸方向区間検出器は、各前記平坦面と前記検出部との間の距離を検出する距離検出器(33)を含んでいてもよい。
また、請求項5の発明は、前記に記載の操舵絶対角検出装置を含む車両用操舵装置において、ハウジング(21)に形成された保持孔(25)内に前記保持孔の深さ方向に摺動可能に収容され且つラック軸を摺動可能に支持するラック軸支持部材(22A)と、前記保持孔の入口に固定された封止部材(23)と、前記封止部材によって受けられ前記ラック軸支持部材を前記ラック軸側に付勢する付勢部材(24)と、を備え、前記軸方向区間検出器は、前記ラック軸支持部材によって保持されている車両用操舵装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、操舵軸の回転角区間にそれぞれ応じたラック軸の軸方向区間を設定しており、その軸方向区間毎(回転角区間に相当)に仕様の異なる複数の被検出面をラック軸の表面に設けた。したがって、軸方向区間検出器が、何れの被検出面を検出するかによって、軸方向区間すなわち回転角区間を特定できるので、操舵絶対角を容易に求めることができる。
【0013】
また、請求項2のように、前記回転角区間が操舵軸の1回転分である場合には、操舵絶対角の演算が非常に容易になる。
また、請求項3のように、前記複数の被検出面が軸方向区間毎に高さの異なる複数の平坦面である場合には、例えばラック軸を鍛造形成するときに同時に被検出面としての複数の平坦面を容易に形成することができる。
【0014】
また、請求項4のように、距離検出器を用いた場合には、各平坦面と検出部との距離に基づいて、軸方向区間を容易に検出することができる。
請求項5の発明によれば、付勢部材によって付勢されたラック軸支持部材が、ラック軸の径方向の撓みに追従するので、ラック軸支持部材とラック軸との位置関係は不変である。そのラック軸支持部材に軸方向区間検出器を配置したので、ラック軸の撓みに拘らず、精度良く軸方向区間を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の操舵絶対角検出装置が適用された車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】ラック軸の軸方向区間を検出する軸方向区間検出器としての距離検出器の概略構成を示す電動パワーステアリング装置の要部の断面図である。
【図3】トルクセンサの第1レゾルバの出力波形および距離検出器の出力波形を示すグラフ図である。
【図4】操舵絶対角を検出するためのフローチャートである。
【図5】本発明の別の実施の形態の操舵絶対角検出装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の操舵絶対角検出装置が適用された車両用操舵装置の概略構成図である。図1を参照して、車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結された操舵軸3と、操舵軸3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを形成して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸8とを備えている。ピニオン軸7およびラック軸8により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構Aが構成されている。
【0017】
ラック軸8は、車体9に固定されたハウジング10内に、第1ブッシュ11および第2ブッシュ12を介して軸方向X1に移動可能に支持されている。ラック軸8の両端部はハウジング10の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド13が結合されている。各タイロッド13は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪14に連結されている。
【0018】
電動パワーステアリング装置1は、操舵補助機構15を備えている。操舵補助機構15は、操舵補助用の電動モータ16と、電動モータ16の出力トルクを転舵機構Aに伝達するための伝達機構としての減速機構17とを含む。減速機構17は、電動モータ16により回転駆動される駆動ギヤとしてのウォーム18と、このウォーム18に噛み合うと共に、操舵出力軸3bに一体回転可能に連結された被動ギヤとしてのウォームホイール19とを備えている。
【0019】
操舵部材2が操作されて操舵軸3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、ラック軸8の軸方向X1の直線運動に変換される。これにより、転舵輪14の転舵が達成される。また、後述するECU31によって操舵補助機構15が働いて操舵補助が実行される。
具体的には、ECU31によって駆動制御された電動モータ16が、ウォーム18を回転駆動すると、ウォーム18によってウォームホイール19が回転駆動され、ウォームホイール19および操舵軸3が一体回転する。そして、操舵軸3の回転は、中間軸5を介してピニオン軸7に伝達される。ピニオン軸7の回転は、ラック軸8の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪14に転舵力が付与されて、操舵が補助される。
【0020】
電動パワーステアリング装置1は、ピニオン7aとラック8aの間のバックラッシを除去するようにラック軸8を支持するラック軸支持装置20を備えている。ラック軸支持装置20は、ラック軸8を挟んでピニオン7aの反対側に配置されている。ラック軸支持装置20は、筒状のハウジング21と、ラック軸支持部材22と、封止部材23と、付勢部材24とを備えている。
【0021】
ハウジング21は、ラック軸8を挿通するハウジング10と一体に設けられている。ラック軸支持部材22は、ハウジング21に形成された保持孔25内に保持孔25の深さ方向に摺動可能に収容され、且つラック軸8を摺動可能に支持する。封止部材23は、保持孔25の入口に固定されている。付勢部材24は、封止部材23によって受けられラック軸支持部材22をラック軸8側に付勢する、例えば圧縮コイルばねからなる。
【0022】
操舵軸3は、車体9に固定された筒状のコラムハウジング26によって、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。操舵軸3は、操舵部材2と一体回転するアッパーシャフトである操舵入力軸3aと、ロアーシャフトである操舵出力軸3bと、トーションバー27と備えている。操舵入力軸3aおよび操舵出力軸3bは、トーションバー27を介して同一の軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0023】
トーションバー27を介する操舵入力軸3aおよび操舵出力軸3b間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ28が設けられている。
トルクセンサ28は、コラムハウジング26と操舵入力軸3aとの間に設けられた第1検出部としての第1レゾルバ29と、コラムハウジング26と操舵出力軸3bとの間に設けられた第2検出部としての第2レゾルバ30とを有して構成されている。
【0024】
第1レゾルバ29は、操舵入力軸3aの外周に一体回転可能に嵌合された第1レゾルバロータ29aと、第1レゾルバロータ29aと径方向に対向した状態でコラムハウジング26の内周に固定された第1レゾルバステータ29bとを備えている。
第1レゾルバロータ29a、第1レゾルバステータ29bには、それぞれ90°の位相差をもった2組の巻線が施されている。第1レゾルバステータ29bの各巻線に交流電圧を印加して励磁すると、第1レゾルバロータ29aの各巻線には交流電圧が誘起されるようになっている。そして、この誘起電圧は、第1レゾルバステータ29bに対する第1レゾルバロータ29aの回転角θ1に比例して変化する。すなわち、第1レゾルバ29は、コラムハウジング26に対する操舵入力軸3a(トーションバー27の一端)の回転角(絶対角)θ1を検出できる構成である。
【0025】
一方、第2レゾルバ30は、第1レゾルバロータ29a、第1レゾルバステータ29bと同様に構成された第2レゾルバロータ30a、第2レゾルバステータ30bを備えて構成されている。第2レゾルバロータ30aの巻線に誘起される誘起電圧は、第2レゾルバステータ30bに対する第2レゾルバロータ30aの回転角θ2に比例して変化する。すなわち、第2レゾルバ30は、コラムハウジング26に対する操舵出力軸3b(トーションバー27の他端)の回転角(絶対角)θ2を検出できる構成である。
【0026】
トルクセンサ28の両レゾルバ29,30の検出信号は、ECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)31に与えられる。ECU31は、両レゾルバ29,30からの信号を入力して、操舵トルクを算出するトルク検出部32を備えている。
トルク検出部32は、前記回転角θ1と回転角θ2との差分、すなわちトーションバー27の両端の相対角変位及びトーションバー27の捩り剛性に基づいて、該トーションバー37に作用するトルク(大きさ及び作用方向)を算出するようになっている。
【0027】
ECU31では、トルク検出部32によるトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路を介して操舵補助用の電動モータ16を駆動制御する。前述したように、電動モータ16の出力回転が減速機構17を介して減速されてピニオン軸7に伝達され、ラック軸8の直線運動に変換されて、操舵が補助される。
【0028】
本実施の形態の特徴とするところは、電動パワーステアリング装置1が、トルクセンサ28の第1レゾルバ29および第2レゾルバ30の何れか一方、例えば第1レゾルバ29からの信号と、軸方向区間検出器としての距離検出器33からの信号とを用いて、操舵絶対角θabs を検出する操舵絶対角検出装置Bを備えている点にある。
図2は軸方向区間検出器としての距離検出器33の概略構成を示す断面図である。また、図3はトルクセンサ28の第1レゾルバ29の出力波形および距離検出器33の出力波形を示すグラフ図である。
【0029】
図3に示すように、距離検出器33は、操舵軸3の回転角(操舵絶対角θabs )の区間としての第1回転角区間K1、第2回転角区間K2、第3回転角区間K3および第4回転角区間K4に、それぞれに対応するラック軸8の軸方向区間としての第1軸方向区間AK1、第2軸方向区間AK2、第3軸方向区間AK3および第4軸方向区間AK4を検出する。
【0030】
操舵軸3の回転角区間K1〜K4は、例えば操舵軸3の1回転(360°)毎の区間である。すなわち、操舵部材2(操舵軸3)が左右に2回転する場合、左方向を負、右方向を正として、第1回転角区間K1は、操舵絶対角θabs が、−720°≦θabs <−360°の範囲にある回転角区間に相当する。第2回転角区間K2は、操舵絶対角θabs が、−360°≦θabs <0°の範囲にある回転角区間に相当する。第3回転角区間K3は、操舵絶対角θabs が、0°≦θabs <360°の範囲にある回転角区間に相当する。第4回転角区間K4は、操舵絶対角θabs が360°≦θabs ≦720°の範囲にある回転角区間に相当する。
【0031】
図1に示すように、軸方向区間検出器としての距離検出器33は、ラック軸8の表面8bに設けられた被検出部34と、被検出部34に対向するようにハウジング10に保持された検出部35とを備えている。
図2に示すように、被検出部34は、軸方向区間AK1〜AK4毎に仕様の異なる複数の被検出面を含んでいる。具体的には、複数の被検出面は、第1軸方向区間AK1を検出するための第1平坦面341と、第2軸方向区間AK2を検出するための第2平坦面342と、第3軸方向区間AK3を検出するための第3平坦面343と、第4軸方向区間AK4を検出するための第4平坦面344とにより構成されている。
【0032】
これら被検出面としての平坦面341〜344は、それぞれラック軸8の軸方向X1とは平行に延びている。平坦面341〜344の高さは、互いに異なっている。例えば、図に示すように、第1平坦面341、第2平坦面342、第3平坦面343、第4平坦面344の順に高さが低くなっている。逆にいうと、深さが深くなっている。
被検出面としての各平坦面341〜344は、図示のように、ラック軸8の表面8bに設けられた凹部として構成されていてもよいし、また、図示していないが、ラック軸8の表面8bに設けられた凸部として構成されていてもよい。
【0033】
軸方向区間検出器としての距離検出器33は、被検出部34としての各平坦面341〜344と検出部35との距離Dを検出する。距離検出器33としては、公知の非接触式のギャップセンサを用いることができる。ギャップセンサとしては、渦電流式のギャップセンサ、静電容量式のギャップセンサ、レーザ光の反射を利用した光学式のギャップセンサなどを用いることができる。
【0034】
距離検出器33の検出部35からの信号は、第1レゾルバ29からの信号とともに、ECU31の操舵絶対角検出部36に入力される。操舵絶対角検出部36は、第1レゾルバ29による回転角値θ1Rおよび距離検出器33による距離DRに基づいて、操舵絶対角θabs を求める。
図4は操舵絶対角θabs を検出する制御の流れを示している。まず、ステップS1において、軸方向区間検出器としての距離検出器33からの信号(距離値DR)を読み込む。次いで、ステップS2において、距離値DRに基づいて、ラック軸8が、第1〜第4軸方向区間AK1〜AK4のうち、何れの軸方向区間にあるかを特定する。すなわち、何れの回転角区間K1〜K4にあるかを特定する。
【0035】
次いで、ステップS3では、ステップS2で特定された軸方向区間AK1〜AK4(回転角区間K1〜K4に相当)に応じた角度基準値θbaseを決定する。具体的には、第1回転角区間K1に対応する角度基準値θbaseは−720°である。第2回転角区間K2に対応する角度基準値θbaseは−360°である。第3回転角区間K3に対応する角度基準値θbaseは0°である。第4回転角区間K4に対応する角度基準値θbaseは360°である。
【0036】
次いで、ステップS4において、第1レゾルバ29からの信号(回転角値θ1R)を読み込む。回転角値θ1Rは0〜360°の範囲の値となる。
次いで、ステップS5では、ステップS3で決定された角度基準値θbaseに、ステップS4で求められた回転角値θ1Rを加算し、操舵絶対角θabs を求める。
すなわち、式θabs =θbase+θ1Rを用いて、操舵絶対角θabs を求める。
【0037】
本実施の形態によれば、操舵軸3の回転角区間K1〜K4にそれぞれ応じたラック軸8の軸方向区間AK1〜AK4を設定しており、その軸方向区間AK1〜AK4(回転角区間K1〜K4に相当)毎に仕様の異なる複数の被検出面(平坦面341〜344)をラック軸8の表面8bに設けた。したがって、軸方向区間検出器としての距離検出器33が、何れの被検出面(平坦面341〜344)を検出するかによって、ラック軸8の軸方向区間AK1〜AK4すなわち操舵軸3の回転角区間K1〜K4を特定できるので、操舵絶対角θbaseを容易に求めることができる。
【0038】
また、回転角区間K1〜K4が操舵軸3の1回転分であるので、操舵絶対角θbaseの演算が非常に容易になる。
また、軸方向検出器としての距離検出器33の複数の被検出面が、軸方向区間AK1〜AK4毎に高さの異なる複数の平坦面341〜344であるので、例えばラック軸8を鍛造形成するときに同時に被検出面としての複数の平坦面341〜344を容易に形成することができる。
【0039】
また、軸方向検出器として距離検出器33を用いているので、各平坦面341〜344と検出部35との距離Dに基づいて、軸方向区間AK1〜AK4を容易に検出することができる。
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、操舵絶対角検出装置Bの操舵絶対角検出部36が、トルクセンサ28の第1レゾルバ29の信号に代えて、トルクセンサ28の第2レゾルバ30の信号を入力するものであってもよい。
【0040】
軸方向区間検出器としての距離検出器33の検出部35は、第1のブッシュ11、第2のブッシュ12およびラック軸支持部材22に、なるべく近い位置に配置することが好ましい。これらの位置では、例えばピニオン7aとラック8aの噛み合い変動によるラック軸8の撓み量が少ないので、距離Dを精度良く検出することができるからである。
また、図5に示すように、距離検出器33Aの検出部35Aをラック軸支持装置20Aのラック軸支持部材22Aの前端に保持するようにしてもよい。この場合、付勢部材24によって付勢されたラック軸支持部材22Aが、ラック軸8の径方向の撓みに追従するので、ラック軸支持部材22Aとラック軸8との位置関係は不変である。このようなラック軸支持部材22Aに、軸方向区間検出器としての距離検出器33Aを配置したので、ラック軸8の撓みに拘らず、精度良く軸方向区間AK1〜AK4を検出することができる。
【0041】
その他、本発明は請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0042】
1…電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)、2…操舵部材、3…操舵軸、3a…操舵入力軸、3b…操舵出力軸、7…ピニオン軸、7a…ピニオン、8…ラック軸、8a…ラック、10…ハウジング、11…第1ブッシュ、12…第2ブッシュ、15…操舵補助機構、16…電動モータ、20;20A…ラック軸支持装置、21…ハウジング、22;22A…ラック軸支持部材、23…封止部材、24…付勢部材、25…保持孔、26…コラムハウジング、27…トーションバー、28…トルクセンサ、29…第1レゾルバ、30…第2レゾルバ、31…ECU、32…トルク検出部、33;33A…距離検出器(軸方向区間検出器)、34…被検出部、341…第1平坦面(被検出面)、342…第2平坦面(被検出面)、343…第3平坦面(被検出面)、344…第4平坦面(被検出面)、35;35A…検出部、36…操舵絶対角検出部、B…操舵絶対角検出装置、D…距離、DR…距離値、K1…第1回転角区間、K2…第2回転角区間、K3…第3回転角区間、K4…第4回転角区間、AK1…第1軸方向区間、AK2…第2軸方向区間、AK3…第3軸方向区間、AK4…第4軸方向区間、X1…軸方向、θ1,θ2…回転角、θ1R…回転角値、θabs …操舵絶対角、θbase…角度基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックピニオン式の車両用操舵装置の操舵絶対角を検出する操舵絶対角検出装置において、
操舵軸の回転角を検出する回転角検出器と、
ラック軸の表面に設けられた被検出部および前記被検出部に対向する検出部を含み、前記回転角の区間にそれぞれ応じたラック軸の軸方向区間を検出する軸方向区間検出器と、 前記回転角検出器により検出された回転角および前記軸方向区間検出器により検出された前記軸方向区間に基づいて、操舵絶対角を検出する操舵絶対角検出部と、を備え、
前記被検出部は、前記軸方向区間毎に仕様の異なる複数の被検出面を含む、操舵絶対角検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記操舵軸の前記回転角区間は、前記操舵軸の1回転分である操舵絶対角検出装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記複数の被検出面は、それぞれラック軸の軸方向とは平行に延び、前記軸方向区間毎に高さの異なる複数の平坦面である操舵絶対角検出装置。
【請求項4】
請求項3において、前記軸方向区間検出器は、各前記平坦面と前記検出部との間の距離を検出する距離検出器を含む操舵絶対角検出装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の操舵絶対角検出装置を含む車両用操舵装置において、ハウジングに形成された保持孔内に前記保持孔の深さ方向に摺動可能に収容され且つラック軸を摺動可能に支持するラック軸支持部材と、
前記保持孔の入口に固定された封止部材と、
前記封止部材によって受けられ前記ラック軸支持部材を前記ラック軸側に付勢する付勢部材と、を備え、
前記軸方向区間検出器は、前記ラック軸支持部材によって保持されている車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220214(P2012−220214A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83028(P2011−83028)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】