説明

擬似太陽光照射装置

【課題】スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することのできる擬似太陽光照射装置を提供する。
【解決手段】擬似太陽光照射装置100は、導光板10の照射面上であって、擬似太陽光が入射する導光板10の入射面の近傍に、透過率調整部材13a,13bを備えている。透過率調整部材13a,13bは、導光板10の照射面から出射される擬似太陽光の一部の波長域の光の透過率を調整し、擬似太陽光のスペクトル合致度を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンなエネルギー源としての重要性が認められ、その需要が高まりつつある。太陽電池の利用分野は、大型機器類のパワーエネルギー源から、精密な電子機器類の小型電源まで、多岐に渡っている。太陽電池が様々な分野で広く利用されるには、太陽電池の特性、とりわけ出力特性が正確に測定されなければならない。出力特性が正確に測定されなければ、太陽電池を使用する側においても様々な不都合が予測される。従って、太陽電池の検査、測定、および実験に利用可能な、高精度の擬似太陽光を大面積に照射できる技術が特に求められている。
【0003】
そこで、近年では、擬似太陽光を照射できる装置として、擬似太陽光照射装置が開発されている。擬似太陽光照射装置は、一般的に、パネル状の太陽電池の受光面に均一な照度の人工光(擬似太陽光)を照射して、太陽電池の出力特性等を測定するために使用される。
【0004】
擬似太陽光に求められる主要な要素は、擬似太陽光の発光スペクトルを基準太陽光(日本工業規格により制定:JIS C8941)に近づけることである。言い換えれば、擬似太陽光照射装置は、擬似太陽光のスペクトルの基準太陽光への近接度を示すスペクトル合致度が高いことが、特に要求される。しかしながら、擬似太陽光照射装置に設置される光源ランプは、点または線とみなされる形態(点状光源または線状光源)である。このため、太陽電池における面状の受光面全面(または全域)に対して均一照度で、擬似太陽光を照射することが極めて困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、擬似太陽光照射装置の照度ムラを調整する技術が、特許文献1および2に開示されている。
【0006】
特許文献1には、隣接する個々の室に、ハロゲンランプとキセノンランプとを設置した擬似太陽光照射装置(ソーラーシュミレータ)が開示されている。具体的には、この擬似太陽光照射装置は、各ランプの上方開放部に専用の光学フィルタを備えている。これにより、太陽電池の受光面に対して、下方からランプの点灯による擬似太陽光が照射される。さらに、この擬似太陽光照射装置は、各ランプが設置された室内部に、反射板が設けられている。これにより、ランプの照度ムラを調整することができる。
【0007】
一方、特許文献2には、太陽電池の受光面を仮想分割した各区画に対して、光量調整部材が配置された擬似太陽光照射装置(ソーラーシュミレータ)が開示されている。具体的には、この擬似太陽光照射装置は、遮光率が異なる3種類の光量調整部材を備えている。この光量調整部材の遮光率は、太陽電池の受光面における最も暗い区画の照度を基準にして、他の区画の照度が最も暗い区画の基準照度に揃うように設定されている。これにより、光源による照度を受光面の区画ごとにほぼ均一化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−048704号公報(公開日:2002年2月15日)
【特許文献2】特開2006−216619号公報(公開日:2006年8月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の擬似太陽光照射装置は、スペクトル合致度が低いという問題がある。
【0010】
具体的には、特許文献1の擬似太陽光照射装置は、キセノン光を発するランプとハロゲン光を発するランプとが異なる場所に配置された構成である。このため、例えば、各ランプから光の進行方向によって、キセノン光とハロゲン光との混合の度合いが少しずつ異なってしまう。その結果、照射部位によって、擬似太陽光の照射スペクトルが異なるという現象が生じる。従って、照射面全体で、スペクトルの合致度を一様にするのが困難である。それゆえ、スペクトル合致度が高い擬似太陽光照射装置を構成することができない。
【0011】
また、特許文献2には、仮想分割された受光面の各区画に対して、光量調整部材を単純に設けることが開示されているにすぎない。しかし、透過率の異なる光量調整部材を設けた場合に生じるスペクトル分布への影響については、一切触れられていない。つまり、実際には、特許文献2の擬似太陽光照射装置は、各区画において、種々の波長域ごとの透過率が変化してしまう。このため、スペクトル合致後の高い擬似太陽光を照射することができない。このように、特許文献2の擬似太陽光照射装置は、波長域ごとに透過率を管理して透過率を調整する必要のあるスペクトル合致度を高めることには対応できていない。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することのできる擬似太陽光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記の課題を解決するために、第1の光を照射する第1の光源と、
第1の光とは異なる分光分布を有する第2の光を照射する第2の光源と、
第1の光の透過率を制御する第1の光学フィルタと、
第2の光の透過率を制御する第2の光学フィルタと、
第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタによって透過率が制御された第1の光および第2の光が入射され、入射した第1の光および第2の光から選択された光を混合することにより擬似太陽光を出射する光選択部と、
上記光選択部から出射された擬似太陽光が入射する導光板と、
上記導光板に入射した擬似太陽光を、上記導光板の照射面に取り出す光取り出し部とを備えた擬似太陽光照射装置であって、
上記光取り出し部よりも上記導光板の照射面側に配置され、上記照射面から出射される擬似太陽光における一部の波長域の光の透過率を調整する透過率調整部材を備えることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【0014】
上記の発明によれば、第1の光源から出射された第1の光が、第1の光学フィルタに入射すると、第1の光学フィルタによって第1の光の透過率が制御される。同様に、第2の光源から出射された第2の光が、第2の光学フィルタに入射すると、第1の光学フィルタによって第1の光の透過率が制御される。そして、第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタによって透過率が制御された光が、光選択部に入射する。これにより、第1の光学フィルタ、第2の光学フィルタ、および光選択部によって、第1の光および第2の光の発光スペクトルが調整される。その結果、基準太陽光の発光スペクトルに近似した擬似太陽光が、光選択部から出射される。従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光が、導光板に入射する。
【0015】
さらに、上記の発明によれば、導光板の照射面側に配置された透過率調整部材が、導光板の照射面から出射される擬似太陽光の一部の波長域の光の透過率を調整する。これにより、擬似太陽光のスペクトル合致度が、透過率調整部材によって改善される。従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することのできる擬似太陽光照射装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記透過率調整部材は、上記光選択部で選択される境界波長を含む波長域、および、波長950nmを含む波長域の少なくとも一方の透過率を調整することが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、透過率調整部材が、スペクトル合致度がずれやすい波長域の光透過率を調整する。これにより、特に低下しやすい波長領域のスペクトル合致度を改善することができる。
【0018】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記透過率調整部材は、上記擬似太陽光が入射する導光板の入射面の近傍に設けられていることが好ましい。
【0019】
上記の発明によれば、透過率調整部材が、透過率が変化しやすく、スペクトル合致度が低下しやすい導光板の入射面の近傍に配置されている。これにより、導光板の入射面(導入端)におけるスペクトル合致度の低下を防ぐことができる。
【0020】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、第1の光および第2の光の少なくとも一方が所定の角度で光選択部に入射するように、第1の光および第2の光の少なくとも一方の光の指向性を制御する指向性制御部を備えることが好ましい。
【0021】
上記の発明によれば、指向性制御部が、第1の光および第2の光の少なくとも一方の指向性を制御する。これにより、指向性が制御された光が、所定の角度で光選択部に入射する。このため、第1の光または第2の光が、光選択部に到達するまでに、損失することがない。さらに、指向性制御部によって光の指向性が揃うため、基準太陽光のスペクトル分布に近い擬似太陽光を生成することが可能となる。従って、基準太陽光により近い照度(光量)および発光スペクトルの擬似太陽光を、被照射体に照射することができる。
【0022】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記指向性制御部は、第1の光および第2の光の少なくとも一方を光選択部に入射させ、入射面から出射面に向かって断面積が徐々に増加するテーパ状導光部材と、第1の光および第2の光の少なくとも一方を上記テーパ状導光部材に入射させる集光素子とからなることが好ましい。
【0023】
上記の発明によれば、集光部材が、第1の光および第2の光の少なくとも一方の光をテーパ状導光部材に入射させる。さらに、第1の光および第2の光の少なくとも一方の光が、テーパ状導光部材に入射すると、テーパ状導光部材の側面で複数回反射するうちに、指向性(放射角)が改善される。これにより、指向性が揃った(放射角が制御された)光が、テーパ状導光部材の出射面から出射される。従って、光の指向性をより向上することができる。
【0024】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記導光板の照射面との対向面側に、上記対向面から出射された擬似太陽光を上記照射面へ反射する反射体を備え、
上記反射体は、上記透過率調整部材によって調整される波長域の反射率変化が5%以下となっていることが好ましい。
【0025】
上記の発明によれば、反射体が、導光板の照射面との対向面から出射された擬似太陽光を照射面へ反射する。このため、擬似太陽光が損失せずに、照射面から出射される。しかも、反射体の波長依存性は低くなっている。従って、反射体を設けた場合であっても、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することができる。
【0026】
なお、例えば、反射体に波長依存性の低いSiO等をコートすれば、上記反射率変化を5%以下とすることができる。
【0027】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記透過率調整部材は、異なる波長域の光の透過率を調整する複数の領域を有することが好ましい。
【0028】
上記の発明によれば、透過率調整部材に、調整波長範囲の異なる複数の領域が形成されている。これにより、より適切に透過率を調整することができる。従って、スペクトル合致度がより一層高めることができる。
【0029】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記透過率調整部材は、シリコーンシート上に設けられていることが好ましい。
【0030】
上記の発明によれば、透過率調整部材が、透過特性の波長依存性の低いシリコーンシート上に配置されている。また、シリコーンシートの表面は粘着性を有している。従って、透過率調整部材の透過特性(透過率調整)を損なうことなく、透過率調整部材を簡便に設置することができる。
【0031】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記導光板の照射面に、上記透過率調整部材と、透過特性が一様な透明部材とが設けられていることが好ましい。
【0032】
上記の発明によれば、透過率調整部材が、導光板の照射面上に設けられており、透過率調整部材が設けられていない照射面上に透明部材が設けられている。これにより、透過率調整部材による擬似太陽光の照度の低下を抑制することができる。従って、擬似太陽光の照度ムラを低減することができる。
【0033】
本発明に係る擬似太陽光照射装置では、上記導光板は、複数の導光体に分割されており、上記透過率調整部材は、各導光体に設けられていることが好ましい。
【0034】
上記の発明によれば、導光板が複数の導光体に分割され、各導光体に透過率調整部材が設けられている。これにより、各導光体からスペクトル合致度の高い擬似太陽光が照射される。従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を、大面積に照射することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記光取り出し部よりも上記導光板の照射面側に配置され、上記照射面から出射される擬似太陽光における一部の波長域の光の透過率を調整する透過率調整部材を備える構成である。それゆえ、従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することのできる擬似太陽光照射装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の要部構成を示す側面図である。
【図2】図1の擬似太陽光照射装置における光導入部の一部を示す図である。
【図3】図1の擬似太陽光照射装置における光学フィルタの構成例を示す図である。
【図4】基準太陽光のスペクトルを示すグラフである。
【図5】図1の擬似太陽光照射装置におけるプリズムシートおよび透過率調整部材の配置状態を示す図である。
【図6】図1の擬似太陽光照射装置における透過率調整部材の具体例を示す上面図である。
【図7】(a)および(b)は、図6の透過率調整部材の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の別の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の要部構成を示す図である。
【図9】図8の擬似太陽光照射装置に設けられた透明部材の配置状態を示す図である。
【図10】本発明のさらに別の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(擬似太陽光照射装置100の構成)
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る擬似太陽光照射装置100の概略構成を示す図である。
【0038】
擬似太陽光照射装置100は、導光板10と、光導入部20,20aと、光取り出し部11と、プリズムシート12と、透過率調整部材13a・13bと、保護板14とを備えている。擬似太陽光照射装置100は、導光板10の照射面(上面)から擬似太陽光(図中矢印)を、太陽電池等の被照射体に出射する。以下、擬似太陽光照射装置100について詳細に説明する。なお、以下の説明では、導光板10の照射面側を上方、照射面と逆側(裏側)を下方とする。
【0039】
導光板10は、互いに対向して配置された光導入部20,20aの間に設けられている。導光板10は、光導入部20,20aから導光板10の両側面に照射される擬似太陽光を、導光板10の照射面(上面)から照射する。
【0040】
光取り出し部11は、導光板10の下面(裏面)に形成されている。光取り出し部11は、光導入部20,20aから出射された擬似太陽光を、導光板10の照射面に取り出す。具体的には、光導入部20,20aから導光板10に入射した光(擬似太陽光)は、導光板10内部を伝搬する。このとき、光取り出し部11に当たった光は、導光板10の照射面へ出射される。これにより、より広い面積の照射面から、均一に擬似太陽光を照射することが可能となる。なお、光取り出し部11は、例えば、散乱体から形成することができ、導光板10内部の擬似太陽光を散乱させて、照射面へ導くことができる。また、散乱体のパターンを変更すれば、擬似太陽光の照度ムラを調整することもできる。これにより、照度ムラが低減された均一な擬似太陽光を照射することができる。
【0041】
プリズムシート12、透過率調整部材13a・13b、保護板14は、導光板10の照射面側に、この順で配置されている。プリズムシート12は、光の屈折効果により、導光板10の照射面に対して垂直な照射光の成分を多く作り出す。すなわち、プリズムシート12は、光取り出し部11によって導光板10から取り出された光を、導光板10の照射面に対して垂直な方向に屈折させるための部材である。透過率調整部材13a・13bは、導光板10の照射面から照射される擬似太陽光における一部の波長域の光透過率を変化させる。透過率調整部材13a・13bの詳細については、後述する。保護板14は、導光板10の照射面を覆い、導光板10を保護する。
【0042】
光導入部20,20aは、導光板10の両側面に配置されている。擬似太陽光照射装置100では、光導入部20,20aが、導光板10の両端に擬似太陽光を出射する。このため、より多くの光量(照度)の擬似太陽光を、照射面から出射することが可能となる。ただし、光導入部20,20aは、導光板10の両端に設ける必要はなく、導光板10の一方の端部にのみ設けられていてもよい。つまり、擬似太陽光照射装置100は、光導入部20aを備えていなくてもよい。なお、光導入部20aの光学部品構成は、光導入部20の構成と同一である。
【0043】
具体的には、光導入部20は、キセノン光源(キセノンランプ)1(第1の光源)、楕円ミラー2(第1の集光素子;指向性制御部)、テーパカプラ3(テーパ状導光部材;指向性制御部)、ハロゲン光源(ハロゲンランプ)4(第2の光源)、楕円ミラー5(第2の集光素子)、テーパカプラ6(テーパ状導光部材;指向性制御部)、波長混合フィルタ7(光選択部)、光学フィルタ8,9、反射板15a,15b,16a,16b(指向性制御部)から構成されている。
【0044】
光導入部20は、キセノン光源1およびハロゲン光源4からそれぞれ出射された光を波長混合フィルタ7で混合することにより擬似太陽光を生成し、擬似太陽光を導光板10の端面(入射面)に照射する。
【0045】
具体的には、キセノン光源1およびハロゲン光源4は、擬似太陽光照射装置100に設けられた、光源である。キセノン光源1およびハロゲン光源4は、擬似太陽光を生成するために必要な分光分布(スペクトル分布)を有する光を照射する。キセノン光源1およびハロゲン光源4から照射される光は、互いに異なる分光分布を有している。キセノン光源1は、擬似太陽光に必要な短波長成分の光を多く照射する。一方、ハロゲン光源4は、擬似太陽光に必要な長波長成分の光を多く照射する。
【0046】
キセノン光源1およびハロゲン光源4は、テーパカプラ3,6への出射方向以外が、楕円ミラー(反射部材)2,5に包囲されている。これにより、キセノン光源1およびハロゲン光源4から出射されるテーパカプラ3,6に向かわない光が、楕円ミラー2,5で反射し、テーパカプラ3,6に向かって出射する。つまり、楕円ミラー2,5は、各光源から出力された光を集めて出射させる。その結果、キセノン光源1およびハロゲン光源4から直接出射される光、および、楕円ミラー2,5により反射された光が、テーパカプラ3,6に向かって出射される。従って、キセノン光源1およびハロゲン光源4からの出力光が有効に利用される。
【0047】
テーパカプラ3,6は、光導入部20に設けられた光学素子である。テーパカプラ3は、キセノン光源1と波長混合フィルタ7との間に設けられている。テーパカプラ6は、ハロゲン光源4と波長混合フィルタ7との間に設けられている。テーパカプラ3,6の一方の端部は、キセノン光源1またはハロゲン光源4と近接して配置され、他方の端部は波長混合フィルタ7に近接して配置されている。テーパカプラ3,6は、テーパカプラ3から出射される光(キセノン光源1からの光)の出射方向と、テーパカプラ6から出射される光(ハロゲン光源4からの光)の出射方向との成す角が、90°になるように配置されている。
【0048】
光導入部20は、擬似太陽光の発光スペクトルを基準太陽光の発光スペクトルに近似させるために、光学フィルタ8,9を備えている。光学フィルタ8,9は、キセノン光源1およびハロゲン光源4(テーパカプラ3,6)から出射された光のスペクトルを調整(透過率を制御)する光学素子である。光学フィルタ8,9は、通常エアマスフィルタ(スペクトル調整フィルタ)と称される。
【0049】
具体的には、光学フィルタ8は、キセノン光源1に対応するテーパカプラ3の出射面に近接して設けられている。光学フィルタ8は、テーパカプラ3から出射されるキセノン光のスペクトル分布を調整する。同様に、光学フィルタ9は、ハロゲン光源4に対応するテーパカプラ6の出射面に近接して設けられている。光学フィルタ9は、テーパカプラ6から出射されるハロゲン光のスペクトル分布を調整する。これにより、光学フィルタ8,9によりスペクトル調整された光が、波長混合フィルタ7に入射する。
【0050】
波長混合フィルタ7は、波長選択の機能を有する。つまり、波長混合フィルタ7は、キセノン光源1およびハロゲン光源4から放射される光から擬似太陽光に必要な光を選択(抽出)すると共に、選択された光を混合して擬似太陽光を合成する。具体的には、波長混合フィルタ7は、所定波長未満(所定波長よりも短波長側)の光を反射する一方、所定波長以上(所定波長よりも長波長側)の光を透過する。言い換えれば、波長混合フィルタ7は、擬似太陽光に必要な長波長側の光を透過する一方、短波長側の光を反射する機能を有する。そして、長波長側の光と短波長側の光とを混合して擬似太陽光を合成する。
【0051】
具体的には、波長混合フィルタ7には、キセノン光源1からの出力光(第1の光)およびハロゲン光源4からの出力光(第2の光)が入射する。そして、入射した各出力光から必要な成分(スペクトル)の光を選択し、その選択した光を混合することにより、擬似太陽光を合成する。
【0052】
より詳細には、キセノン光源1からの出力光は、擬似太陽光に必要な短波長側の成分を多く含む。一方、ハロゲン光源4からの出力光は、擬似太陽光に必要な長波長側の成分を多く含む。波長混合フィルタ7は、600〜800nmの範囲で境界波長が設定されており、この境界波長未満の光を反射する一方、境界波長以上の光を透過する。つまり、キセノン光源1からの出力光のうち、境界波長未満の光(短波長側の成分の光)のみが、波長混合フィルタ7により反射する。一方、ハロゲン光源4からの出力光のうち、境界波長以上の光(長波長側の成分の光)のみが、波長混合フィルタ7により透過する。
【0053】
例えば、キセノン光源1の光を波長700nm未満で使用し、700nm以上の波長の光をハロゲン光源4の光で使用するとする。この場合、波長混合フィルタ7の反射と透過の境界波長は波長700nmである。つまり、波長混合フィルタ7は、波長700nmより短波長の光を反射させ、700nm以上の長波長の光を透過する特性を持っている。これにより、擬似太陽光に必要な波長の光のみが、波長混合フィルタ7により選択される。そして、選択された光が合成され、擬似太陽光として出射される。なお、波長混合フィルタ7が反射または透過させる光の境界波長は、任意に設定すればよい。さらに、波長混合フィルタ7は、波長依存性のある鏡やフィルタを用いることができる。例えば、コールドミラー、ホットミラーなどを用いることができる。
【0054】
このように、波長混合フィルタ7は、キセノン光源1の出力光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な短波長成分の光と、ハロゲン光源4の出力光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な長波長成分の光とを抽出して、擬似太陽光を生成する。この際に、スペクトル制御されていないキセノン光源1の長波長成分の光が除かれ、同様に、スペクトル制御されていないハロゲン光源2の短波長成分の光が除かれることになる。
【0055】
従って、擬似太陽光の発光スペクトルを基準太陽光の発光スペクトルにより近似させることが可能となる。
【0056】
反射板16a,16bは、楕円ミラー2に装着されている。反射板15a,15bは、楕円ミラー2に装着されている。反射板16a,16bは、テーパカプラ3の入射面を包囲している。同様に、反射板15a,15bは、テーパカプラ6の入射面を包囲している。これにより、キセノン光源1およびハロゲン光源4からテーパカプラ3,6に向かって出射され入射面に入射されなかった光が、反射板15a,15b,16a,16bで反射する。反射した光は、楕円ミラー2,5で反射し、再度テーパカプラ3,6に向かって出射する。つまり、反射板15a,15b,16a,16bは、各光源から出力された光を集めて出射させる。その結果、キセノン光源1およびハロゲン光源4から直接出射される光、および、反射板15a,15b,16a,16bおよび楕円ミラー2,5により反射された光が、テーパカプラ3,6に向かって出射される。従って、キセノン光源1およびハロゲン光源4からの出力光が有効に利用される。
【0057】
(擬似太陽光照射装置100の指向性)
キセノン光源1およびハロゲン光源4は無指向性の光源であるため、各光源の出力光は、拡がりを持った拡散光となる。このため、各光源の出力光が、所定の角度で波長混合フィルタ7に入射するように、各光源の出力光の指向性を制御することが好ましい。
【0058】
擬似太陽光照射装置100において、キセノン光源1から出射された光は、楕円ミラー2によって、放射指向性が制御される。さらに、キセノン光源1から出射された光は、テーパカプラ3によっても、放射指向性が制御される。指向性が制御された光は、発光スペクトルを調整する光学フィルタ8を透過した後、波長混合フィルタ7に入射する。波長混合フィルタ7に入射した光のうち、境界波長未満(所定波長よりも短波長側)の光は、波長混合フィルタ7で反射する。
【0059】
一方、ハロゲン光源4から出射された光は、楕円ミラー5によって、放射指向性が制御される。さらに、ハロゲン光源4から出射された光は、テーパカプラ6によっても放射指向性が制御される。指向性が制御された光は、発光スペクトルを調整する光学フィルタ8を透過した後、波長混合フィルタ7に入射する。波長混合フィルタ7に入射した光のうち、境界波長以上(所定波長よりも長波長側)の光は、波長混合フィルタ7を透過する。
【0060】
波長混合フィルタ7は、キセノン光源1から出射され指向性を制御された光と、ハロゲン光源から出射され指向性を制御された光とを混合する。擬似太陽光照射装置100では、キセノン光源1とハロゲン光源4とを用いている。キセノン光源1の短波長側の放射照度は、基準太陽光(JIS規格により制定)の放射照度特性に比較的近く、ハロゲン光源4の赤外光領域(主に700nm〜1100nm)での放射照度は、ほぼ一定に近い。このため、キセノン光源1とハロゲン光源4とを用いることにより、スペクトル合致度を高める(JIS規格のMS級まで)することが可能となる。しかも、波長混合フィルタ7を透過または反射し導光板に10に向かう光は、光学フィルタ8、9によってスペクトル合致度が高められている。つまり、スペクトル分布が基準太陽光に近く、その基準太陽光とのずれを示すスペクトル合致度が±5%近くになるまでの一致を達成している。従って、導光板10には、スペクトル合致度の高い擬似太陽光が入射する。これにより、導光板10からスペクトル合致度が良い光を照射することができる。
【0061】
なお、擬似太陽光照射装置100では、擬似太陽光を得るための光源として、キセノン光源1およびハロゲン光源4を用いた。しかし、光源の種類および光源の組み合わせはこれらに限定されるものではなく、基準太陽光の発光スペクトルと近似または同一となるように、任意に選択することができる。例えば、キセノン光源1およびハロゲン光源4の代わりに、棒状光源等を用いてもよい。
【0062】
また、擬似太陽光照射装置100では、楕円ミラー2,5には、反射板15a,15b,16a,16bが装着されている。このため、テーパカプラ3,6に入射しなかった光が、反射板15a,15b,16a,16bによって反射された後、楕円ミラー2,5で再度反射され、テーパカプラ3,6に入射する。これにより、キセノン光源1およびハロゲン光源4からの出力光が有効に利用される。従って、指向性の高い光を選択的に取り出すことができる。
【0063】
ここで、図2は、擬似太陽光照射装置100における光導入部20の一部を示す図である。つまり、図2は、光導入部20を図1のZ方向からみた上面図である。
【0064】
図2のように、擬似太陽光照射装置100におけるテーパカプラ6は、対向する1対の面が、テーパ形状(台形形状)になっている。テーパカプラ3も同一形状である。すなわち、テーパカプラ3,6の入射面から出射面に向かって、テーパカプラ3,6の幅(断面積)が徐々に増加する。このような構造によって、キセノン光源1およびハロゲン光源4から出力された光は、テーパカプラ3,6の側面で複数回反射するうちに、指向性(放射角)が改善される。これにより、指向性が揃った(放射角が制御された)光が、テーパカプラ3,6の出射面から出射される。なお、テーパカプラ3,6から出射される光の放射角は、テーパカプラ3,6の側面の傾斜角と、テーパカプラ3,6における光の進行方向の長さとによって制御される。
【0065】
また、テーパカプラ3,6を用いれば、キセノン光源1およびハロゲン光源4から出力された光はすべて、テーパカプラ3,6を伝搬する。また、キセノン光源1およびハロゲン光源4から出力された光の進行方向(指向性)を揃えると共に、揃えた光を低損失で波長混合フィルタ7に入射させることができる。テーパカプラ3,6は、例えば、石英などから構成することができる。
【0066】
テーパカプラ3,6によって、光の指向性を揃える利点は、光学フィルタ8、9の構造と関係する。具体的には、光学フィルタ8,9は、複数の薄膜が積層された構造になっている。このため、光学フィルタ8,9への入射角が光学フィルタへの垂直入射よりずれ方が大きいほど、透過率特性も変化してしまう。つまり、光学フィルタ8、9に指向性の悪い光が入射すると、基準太陽光のスペクトル分布と乖離したスペクトル分布を有する擬似太陽光を生成してしまう。しかし、テーパカプラ3,6によって、光の指向性を揃えれば、基準太陽光のスペクトル分布に近い擬似太陽光を生成することが可能となる。
【0067】
同様に、波長混合フィルタ7も、複数の薄膜が積層された構造になっている。このため、波長混合フィルタ7への入射角の違いにより、透過率特性または反射率特性も変化してしまう。つまり、波長混合フィルタ7に指向性の悪い光が入射すると、基準太陽光のスペクトル分布と乖離したスペクトル分布を有する擬似太陽光を生成してしまう。しかし、テーパカプラ3,6によって、光の指向性を揃えることで、波長混合フィルタ7での、透過特性、反射特性の変化が抑制され、基準太陽光のスペクトル分布に近い擬似太陽光を生成することが可能となる。
【0068】
このように、擬似太陽光照射装置100は、テーパカプラ3,6を備えるため、キセノン光およびハロゲン光が所定の角度で光学フィルタ8,9や波長混合フィルタ7に入射するように、光の指向性が制御される。このため、キセノン光およびハロゲン光の光量が、波長混合フィルタ7に到達するまでに、損失が抑制される。さらに、テーパカプラ3,6によって光の指向性が揃うため、基準太陽光のスペクトル分布に近い擬似太陽光を生成することが可能となる。従って、基準太陽光により近い照度(光量)および発光スペクトルの擬似太陽光を、被照射体に照射することができる。なお、テーパカプラ3,6の一方のみでも、キセノン光またはハロゲン光の指向性を制御し、所定の角度で波長混合フィルタ7に入射できる。
【0069】
テーパカプラ3,6による指向性の制御は、テーパカプラ3,6の内部に光を伝搬させることによって、最大の放射角が30°以下にとなるように光制御することが好ましい。これにより、テーパカプラ3,6の内部の光は、入射端から出射端に向かう中で、指向性が0°(つまりテーパカプラ3,6の出射面に対して垂直)で出射される成分の割合が増える。同様に、楕円ミラー2,5も、キセノン光源1およびハロゲン光源4の光を集光する際に、光の伝搬方向をテーパカプラ3,6への入射端への垂直入射(0°入射)に対して放射角が30°以下になるように集光されるように設定することが好ましい。
【0070】
(擬似太陽光照射装置100の特徴点)
擬似太陽光照射装置100では、波長混合フィルタ7から出射される擬似太陽光を導光板10に導入する際には、一つの問題がある。具体的には、導光板10に入射される擬似太陽光のうち、指向性が悪い光(放射角が30°に近い光)は、導光板10に光が入った後、導光板10内部を伝搬するための導光板10内部の伝搬角がずれた際に、導光板10内を光が伝搬するための全反射条件を満たさなくなる成分が多くなる。その結果、導光板10から光が出て行きやすくなる。また、波長混合フィルタ7は、放射角が30°に近い光ほど、波長700nmで光を反射、透過する際の透過率が設計値より変化しやすい傾向にある。このため、波長混合フィルタ7における波長650nm〜750nmの光の実際の透過率が、設計した透過率よりも高くなったり、低くなったりする。このような透過率のずれは、波長混合フィルタ7の膜構造の作製誤差が影響する。
その結果、導光板10の入射面近傍において導光板10の照射面から照射される擬似太陽光(導光板10外へ出て行く光)は、透過率制御が設計よりもずれた光の割合が多くなる。擬似太陽光照射装置100では、特に波長650nm〜750nmの光の透過率が、設計値よりずれやすい。このため、スペクトルの基準太陽光への近接度を示すスペクトル合致度が、導光板10の中央で良好な値を示していても、導光板10の入射面(入射端)近傍では、悪化することになる。
【0071】
そこで、この問題点を解消するため、擬似太陽光照射装置100は、透過率調整部材13a,13bを備えている。透過率調整部材13a,13bは、光取り出し部11よりも導光板10の照射面側に配置されている。さらに、透過率調整部材13a,13bは、この照射面から出射される擬似太陽光における一部の波長域の光の透過率を調整する。これにより、擬似太陽光のスペクトル合致度が、透過率調整部材によって改善される。従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することができる。
【0072】
透過率調整部材13a,13bは、光取り出し部11よりも導光板10の照射面側に配置されていればよい。しかし、透過率調整部材13a,13bは、透過率(透過率特性)が変化しやすく、スペクトル合致度が低下しやすい導光板10の入射面の近傍に配置されていることが好ましい。例えば、透過率調整部材13a,13bは、導光板10の照射面(出射面)上に設けられていることが好ましい。さらに、透過率調整部材13a,13bは、設計値よりもずれやすい波長650nm〜750nmの波長域の光の透過率を調整するように設定されていることが好ましい。例えば、透過率調整部材13a,13bは、その波長域の光量を3〜5%(3%以上5%以下)低減する特性を有する光学多層膜から形成することができる。これにより、透過率調整部材13a,13bの透過率調整によって、スペクトル合致度が改善される。
【0073】
ところで、図1の擬似太陽光照射装置100は、各光源に対して1枚のフィルタで構成された光学フィルタ8,9を備えている。しかし、光学フィルタ8,9は、複数枚のフィルタで構成されていてもよい。例えば、図3は、擬似太陽光照射装置100における光学フィルタ9の構成例を示す図である。図3のように、光学フィルタ9が複数枚(図3では3枚の光学フィルタ9a,9b,9c)であれば、より細かな波長帯でのスペクトル調整が可能となる。従って、より基準太陽光に類似したスペクトル分布有する擬似太陽光を生成することが可能となる。
【0074】
【表1】

【0075】
また、表1は、光学フィルタ9a,9b,9cの透過特性(透過率調整波長域)を示している。ここでは、光学フィルタ9aの透過率調整波長域が750nm〜850nmであり、波長混合フィルタ7の境界波長700nmと近い。このため、光学フィルタ9aの光学特性のずれが影響して、スペクトルのずれが起こる波長域がハロゲン光源4の用いられる波長域で広がる場合がある。この場合、波長650nm〜850nmの範囲で透過率が変化し、スペクトル合致度が低下する可能性がある。その結果、透過率調整部材13a,13bの透過率調整波長域は、650nm〜750nmより広くなり、この650nm〜850nmの範囲の透過率調整によるスペクトル合致度の改善が必要になる。
【0076】
一方、図4は、基準太陽光のスペクトルを示すグラフである。図4のように、基準太陽光は、950nm付近の放射照度が大きく変化(減少)している。このため、光学フィルタ9a,9b,9cのうち、光学フィルタ9b(透過率調整波長域:900nm〜1000nm)については、導光板10の入射面近傍で、入射角度による透過特性が大きく変化する。このため、950nm近傍の波長域もスペクトル合致度が大きく変化する傾向にある。
【0077】
従って、透過率調整部材13a,13bは、波長混合フィルタ7における境界波長(ここでは700nm)を含む波長域、および、基準太陽光の放射照度が大きく減少する950nm付近を含む波長域の少なくとも一方の透過率を調整することが好ましい。これにより、特に低下しやすい波長領域のスペクトル合致度を改善することができる。
【0078】
このように、擬似太陽光照射装置100は、透過率調整部材13a,13bによって、導光板10から出射後の光の透過率が制御される。ただし、導光板10から出射後にのみ透過率制御する場合、導光板10から出射される光の指向性を完全に制御できるわけではない。このため、出射後の光のスペクトルを制御することは難しい。
【0079】
そこで、擬似太陽光照射装置100は、導光板10に入射する前に、導光板10への入射光の指向性を制御することが好ましい。すなわち、擬似太陽光照射装置100では、キセノン光源1およびハロゲン光源4と、導光板10との間に、テーパカプラ3,6および光学フィルタ8,9が配置されている。このため、導光板10から取り出される光の指向性が変化しやすい導光板10の入射端においても、導光板10への入射時の指向性の変化は小さくなる。これにより、透過率調整部材13a,13bを配置することで、透過率制御が可能となる。従って、出射後の光のスペクトルを容易に制御することができる。
【0080】
具体的には、上述のように、波長混合フィルタ7の境界波長での周辺波長域650nm〜750nmの波長域の光は、スペクトルが設計目標からずれやすい。このため、650nm〜750nmの波長域の光の透過率のずれを調整(補正)する透過率調整部材13a,13bを、導光板10の入射端付近の導光板10上に設置する。これにより、光の透過率が容易に調整できる。その結果、導光板10の入射端でもスペクトルを制御することができる。従って、スペクトル合致度が高い領域を、導光板10の入射端近傍まで広げることができる。
【0081】
また、擬似太陽光照射装置100は、透過率調整部材13a,13bへの入射角が0°(垂直入射)〜30°として設計されていることが好ましい。これにより、導光板10から出射される光の指向性が制御される。従って、出射後の光のスペクトルを容易に制御することができる。
【0082】
なお、擬似太陽光照射装置100では、透過率調整部材13a,13bが、プリズムシート12上に配置されている。しかし、透過率調整部材13a,13bは、導光板10より照射面側の上方であれば、この場所以外にどこに配置してもよい。例えば、透過率調整部材13a,13bは、導光板10を保護する部材である保護板14の裏面に貼り付けてもよい。
【0083】
また、プリズムシート12は、光の屈折効果で、導光板10の照射面に垂直な照射光の成分を多く作り出すため、光学フィルタ8,9によりスペクトル分布の高精度の調整が可能となる。
さらに、図5は、図1の擬似太陽光照射装置100におけるプリズムシート12および透過率調整部材13a,13bの配置状態を示す図である。図5のように、プリズムシート12形状は、頂角が60度となるように設定することが好ましい。これにより、プリズムシート12から照射される光は、導光板10の照射面に対し垂直な方向に向けられる光が増える。その結果、透過率調整部材13a,13bへの入射光も垂直入射が増えることになる。従って、透過率調整部材13a,13bによる透過率制御性も高くなる。
【0084】
一方、導光板10へ入射する光の入射角特性が、30°前後の成分が多い分布になった場合、上述の光学フィルタ9b(表1,図3)の透過率変化が急激になる。このため、透過率調整部材13a,13bによる透過率の角度依存性も大きくなる。その結果、30°入射における透過率のずれが大きくなる。この場合、透過率調整部材13a,13bは、波長混合フィルタ7の境界波長での周辺波長域(650nm〜750nmの波長域)の透過率調整を行うことに加えて、波長950nm付近での透過率調整も行うことができるようになっていることが好ましい。図6および図7は、そのような透過率調整部材13a,13bの構成を示す図である。すなわち、図6は、図1の擬似太陽光照射装置100における透過率調整部材23a,23bの具体例を示す上面図である。図7の(a)および(b)は、図6の透過率調整部材23aの構成を示す断面図である。
【0085】
具体的には、図6のように、透過率調整部材23aは、導光板10近傍のほぼ同一の位置に、異なる波長域の光の透過率を調整する領域(波長域の異なる透過特性領域)21a,21bを有している。一方、透過率調整部材23bは、1種類の透過特性領域21cが異なる波長域の光の透過率を調整するようになっている。透過率調整部材23aは、透過率調整波長範囲の異なる領域21a,21bを、配置用部材であるシリコーンシート22上に千鳥状に配置されて形成されている。さらに、図6および図7(a)のように、透過率調整部材23a,23bは、シリコーンシート22上に設けられていることが好ましい。シリコーンシート22は、透過特性の波長依存性が低く、シリコーンシート22の表面は粘着性を有している。従って、透過率調整部材23a,23bの透過特性(透過率調整)を損なうことなく、透過率調整部材を簡便に設置することができる。それゆえ、透過率調整部材23a,23bを配置する際の利便性も大きく改善することができる。
【0086】
また、図7(b)のように、透過率調整部材23aは、1対のシリコーンシート22間に挟持された構成であってもよい。このように、シリコーンシート22が透過率調整部材23aを被覆した構造とすることで、透過率調整部材23aを保護するとともに、透過率調整機能(光量の調整機能)を付与することができる。
【0087】
以上のように、擬似太陽光照射装置100は、透過率調整部材13a,13b,23a,23bが、導光板10の照射面から出射される擬似太陽光の一部の波長域の光の透過率を調整する。これにより、擬似太陽光のスペクトル合致度が、透過率調整部材13a,13b,23a,23bによって改善される。従って、スペクトル合致度の高い擬似太陽光を照射することのできる擬似太陽光照射装置100を提供することができる。また、擬似太陽光照射装置100は、均一な擬似太陽光を太陽電池パネル等の大面積の被照射に照射することができる。
【0088】
(擬似太陽光照射装置100の別の形態)
以下、図8〜図10に基づいて、擬似太陽光照射装置100の別の形態について説明する。なお、以下では、擬似太陽光照射装置100との相違点を中心に説明し、同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0089】
図8は、擬似太陽光照射装置101の要部構成を示す図である。図9は、図8の擬似太陽光照射装置101に設けられた透明部材24の配置状態を示す図である。擬似太陽光照射装置101は、擬似太陽光照射装置100の構成に加えて、導光板10の下面側に反射板(反射体)17を備えている。これにより、導光板10から照射される擬似太陽光の光量(照度)をさらに高めることができる。
【0090】
具体的には、擬似太陽光照射装置101では、導光板10の照射面とは反対側に、反射板17が設けられている。この反射板17があることで、反射板17に入射した光は、導光板10の照射面に反射される。つまり、導光板10から光照射側と反対側に出る光が、反射板17で反射され、光取り出し部11により、照射面のほうに戻すことができる。従って、擬似太陽光照射装置101の光量を高めることができる。
【0091】
ただし、導光板10の光入射端部においては、導光板10から入射し反射板17で反射された光と、直接導光板10から出てくる光(光取り出し部11で反射された光)との割合が、他の部分と異なる。これは、反射板17がAlなどの金属単純鏡面から形成されている場合、その金属自体が波長依存性のある反射率を示すことに起因する。波長依存性のある反射光が混じると、導光板10の中央付近で反射板17の反射光が照射面に戻る割合と、導光板10への入射端付近で反射板17の反射光が照射面に戻る割合とが異なる。その結果、導光板10の入射端でスペクトル合致度の低下が発生する場合がある。
【0092】
具体的には、アルミニウム製の反射板17を用いた場合、Al反射特性が波長750nm前後で変化する。すなわち、アルミニウムは短波長(波長300〜700(nm)まで)の反射率は安定して高いためスペクトルのずれは発生しにくいものの、長波長(700nm〜850nm)でスペクトルのずれが発生する。つまり、透過率調整部材13a,13bによる透過率調整すべき波長域が、650nm〜850nmになりやすいということになる。また、アルミニウムは、反射率が劣化しやすい。
【0093】
そこで、反射板17の表面は保護膜で覆われていることが好ましい。例えば、反射板17の表面をSiO等でコートし、波長依存性を少なくすることが好ましい。例えば、反射板17は、透過率調整部材13a,13bによって調整される波長域の反射率変化が5%以下となっていることが好ましい。これにより、アルミニウムによる反射率の変化の影響(スペクトルのずれ)を低減することができる。このため、透過率調整部材13a,13bが透過率調整すべき波長範囲を縮小することができる。つまり、透過率調整部材13a,13bによる透過率制御についてもさらに微小な調整で対応可能となる。これにより、擬似太陽光のスペクトル分布が変化することなく、基準太陽光の発光スペクトルに近い擬似太陽光を生成することが可能となる。
【0094】
具体的には、例えば、導光板10の照射面からの照射光量のうち反射板17が寄与する割合が約30%で、その約30%のうち、反射板17の反射率に5%の変動分があるとする。約30%としたのは、照射面の反対側(照射面との対向面側)に、導光板10に入射した光の50%が出て反射板17に到達した光のうち、約10%が反射板17での吸収損失で減衰、反射板17で反射され導光板10を再度通過する際に約10%が反射損失で減衰、さらに約15%が照射面外に蹴られると仮定したためである。この場合、導光板10から照射される擬似太陽光のスペクトル変化への影響は、1.5%程度になる。このため、擬似太陽光のスペクトル合致度が最高性能レベル(例えばJIS規格におけるMS級)±5%に近づいても、反射板17の影響はスペクトル誤差として許容できる。従って、反射板17は、透過率調整部材13a,13bによって調整される波長域の反射率変化が5%以下となっていることが好ましい。
【0095】
このように、反射板17の表面がSiO等の保護膜で覆われている場合、透過率調整部材13a,13bは、金属膜をそのまま使用する場合(保護膜で覆われていない場合)よりも、透過率調整率を小さくすることができる。このため、スペクトル合致度の低下が発生する部分(導光板10の入射端付近)にだけ、透過率調整部材13a,13bを形成しスペクトル合致度を改善するようにすればよい。
【0096】
なお、擬似太陽光照射装置100,101では、透過率調整部材13a,13b,23a,23bを設けることによって、その設置部分で擬似太陽光の照度が大きく低下する場合がある。そこで、図9のように、透過率調整部材13a,13b,23a,23bが設置された部分以外に、照度調整用の透過特性が波長変化に対してほぼ一様な透明部材24が配置されていることが好ましい。つまり、導光板10の照射面上には、透過率調整部材13a,13b(23a,23b)と、透過特性が一様な透明部材24とが設けられている。これにより、透過率調整部材による擬似太陽光の照度の低下を抑制することができる。従って、擬似太陽光の照度ムラを低減することができる。
【0097】
図10は、擬似太陽光照射装置102の要部構成を示す図である。擬似太陽光照射装置102は、擬似太陽光照射装置100,101における導光板10が、複数(図10では8枚)の導光体40a…40hに分割されている。さらに、各導光体40a…40hの両端に、透過率調整部材35a…35h,36a…35hが設けられている。なお、図10においては、各導光体40a…40hに対し、図1,図8における光導入部20,20aに対応する、複数(図10では4セット)の光導入部31a〜34a,…31h〜34hが設けられている。
【0098】
大面積に擬似太陽光を照射する場合、各光学素子の個体差の影響でスペクトル合致度もばらつく傾向が出る。そこで、擬似太陽光照射装置102では、この傾向を抑制するために、導光体40a,40b…40hと、光導入部31a〜34a,…31h〜34hとを複数セット配置して、それぞれを同一の構成としている。さらに、それでも導光体40a,40b…40hの入射端近傍では、照射スペクトルがばらつく場合がある。このため、各導光体40a,40b…40hに配置されるべき透過率調整部材35a…35h,36a…35hの透過特性をそれぞれ独立に設定することが好ましい。もちろん、一部の透過特性が同一であってもよい。これにより、各導光体40a,40b…40hの入射端でのスペクトル合致度を高めている。従って、大面積に擬似太陽光を照射した場合でもスペクトル合致度を高めることができる。このように、擬似太陽光照射装置102は、大面積に、精度良く擬似太陽光を照射するのに有効な構成である。
【0099】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、太陽電池の検査、測定、および実験に利用できる。また、化粧品、塗料、接着剤、各種材料の退色および耐光試験にも利用できる。さらに、光触媒の検査および実験、ならびに自然光を必要とするその他の各種実験にも利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 キセノン光源(第1の光源)
2 楕円ミラー(指向性制御部,集光素子)
3 テーパカプラ(指向性制御部)
4 ハロゲン光源(第2の光源)
5 楕円ミラー(指向性制御部,集光素子)
6 テーパカプラ(指向性制御部)
7 波長混合フィルタ(光選択部)
8 光学フィルタ(第1の光学フィルタ)
9 光学フィルタ(第2の光学フィルタ)
9a,9b,9c 光学フィルタ(第2の光学フィルタ)
10 導光板
11 光取り出し部
12 プリズムシート
13a,13b 透過率調整部材
15a,15b 反射板(指向性制御部)
16a,16b 反射板(指向性制御部)
17 反射板(反射体)
21a,21b 領域(光の透過率を調整する領域)
21c 透過特性領域(光の透過率を調整する領域)
22 シリコーンシート
23a,23b 透過率調整部材
24 透明部材
31a〜34a,…31h〜34h 光導入部
35a〜35h 透過率調整部材
36a…35h 透過率調整部材
40a〜40h 導光体
100 擬似太陽光照射装置
101 擬似太陽光照射装置
102 擬似太陽光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を照射する第1の光源と、
第1の光とは異なる分光分布を有する第2の光を照射する第2の光源と、
第1の光の透過率を制御する第1の光学フィルタと、
第2の光の透過率を制御する第2の光学フィルタと、
第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタによって透過率が制御された第1の光および第2の光が入射され、入射した第1の光および第2の光から選択された光を混合することにより擬似太陽光を出射する光選択部と、
上記光選択部から出射された擬似太陽光が入射する導光板と、
上記導光板に入射した擬似太陽光を、上記導光板の照射面に取り出す光取り出し部とを備えた擬似太陽光照射装置であって、
上記光取り出し部よりも上記導光板の照射面側に配置され、上記照射面から出射される擬似太陽光における一部の波長域の光の透過率を調整する透過率調整部材を備えることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
上記透過率調整部材は、上記光選択部で選択される境界波長を含む波長域、および、波長950nmを含む波長域の少なくとも一方の透過率を調整することを特徴とする請求項1に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項3】
上記透過率調整部材は、上記擬似太陽光が入射する導光板の入射面の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項4】
第1の光および第2の光の少なくとも一方が所定の角度で光選択部に入射するように、第1の光および第2の光の少なくとも一方の光の指向性を制御する指向性制御部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項5】
上記指向性制御部は、
第1の光および第2の光の少なくとも一方を光選択部に入射させ、入射面から出射面に向かって断面積が徐々に増加するテーパ状導光部材と、
第1の光および第2の光の少なくとも一方を上記テーパ状導光部材に入射させる集光素子とからなることを特徴とする請求項4に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項6】
上記導光板の照射面との対向面側に、上記対向面から出射された擬似太陽光を上記照射面へ反射する反射体を備え、
上記反射体は、上記透過率調整部材によって調整される波長域の反射率変化が5%以下となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項7】
上記透過率調整部材は、異なる波長域の光の透過率を調整する複数の領域を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項8】
上記透過率調整部材は、シリコーンシート上に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項9】
上記導光板の照射面に、上記透過率調整部材と、透過特性が一様な透明部材とが設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。
【請求項10】
上記導光板は、複数の導光体に分割されており、
上記透過率調整部材は、各導光体に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の擬似太陽光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202976(P2012−202976A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71135(P2011−71135)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】