説明

擬似接着シートの製造方法および擬似接着シート

【課題】
郵送中の取り扱いで剥離せず、再剥離時には基材破壊を起さない、経時的に安定的な剥離力を有する擬似接着シートの製造方法および擬似接着シートを提供するものである。
【解決手段】
基材表面の少なくとも一方の面に擬似接着層を有し、該擬似接着層面を対向させた状態で圧力により接着させた後、該接着層間での再剥離が可能である擬似接着シートの製造方法において、該擬似接着層が、紫外線照射硬化型樹脂を主成分とする塗工液を塗工する工程と、紫外線照射工程と同時または前後の少なくとも一箇所に、送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程が組み込まれて、塗工形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似接着シートの製造方法および擬似接着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、郵便コストの軽減や通知物発送の自動化等のため、封書の代わりに親展性を有する葉書システムが急速に普及してきている。このシステムには、擬似接着シートが使われており、例えば必要情報を記録したシートを二つ折、又は三つ折り等に折り畳み、親展性を持たせた葉書とするもので、定型事項をフォーム印刷機によりオフセット印刷した後、宛名や個人情報等の秘密にしたい情報をレーザープリンターで印字して、秘密情報が外部から見えないように、擬似接着層同士が対向するように折り畳み、ドライシーラーで加圧積層して親展葉書とするものである。擬似接着シートを利用した親展葉書は、受取人が該擬似接着層を元のように剥離することにより情報を見ることができ、該擬似接着層面は、一旦剥離すると常温、常圧では、接着性がないので剥離前の状態にはならない。
【0003】
この様な親展葉書としては、例えばラミネーション法によって作成されたものがあるが、ラミネーション法では表面に硬質フィルムをラミネートし、密着させる場合には硬質フィルム同士を向い合わせた状態で加熱軟化させて貼り付けているため、ラミネートする範囲を適宜に設定することができず、基材の全面にラミネートしなくてはならない。このため、再剥離時に剥し口から容易に剥すことが出来ず、生産コストも高く、生産性も悪いという問題がある。また、軟質フィルムはラミネート加工ができない問題もある。さらに、最大の問題として、接着剤がフィルム材料であるため、再生古紙としての利用が出来ない点がある。
【0004】
この問題を解決するために、紫外線照射により硬化する樹脂を含有する擬似接着層を基材表面に設けることで、作業効率に優れた、低廉な価格で再剥離性接着加工ができ、使用済み加工紙の古紙再生も容易な擬似接着シートが提案されている(特許文献1から3参照)。しかしながら、擬似接着層に紫外線照射による硬化する樹脂を使用した場合、接着層間で完全に密着して開封できない場合や、あるいは郵送中に意図せずに接着層間の剥離が発生することで、親展葉書としての適性が劣ることがあり、擬似接着シートとして、より性能の向上が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−349854号公報
【特許文献2】特開2000−136320号公報
【特許文献3】特開2005−220204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、郵送中の取り扱いで剥離せず、再剥離時には基材破壊を起さない、経時的に安定的な密着性および剥離性を有する擬似接着シートの製造方法およびその擬似接着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記の課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、紫外線照射により硬化される樹脂を主成分した擬似接着層を有し、その接着層を塗工形成する方法に際して、特定の工程を組み入れることによりその目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、基材表面の少なくとも一方の面に擬似接着層を有し、該擬似接着層面を対向させた状態で圧力により接着させた後、該接着層間での再剥離が可能である擬似接着シートの製造方法において、該擬似接着層が、紫外線硬化型樹脂を主成分とする塗工液を塗工する工程と、紫外線照射工程と同時または前後の少なくとも一箇所に、送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程が組み込まれて、塗工形成されることを特徴とする擬似接着シートの製造方法である。
前記擬似接着層に対する紫外線照射量が、積算で100mJ/cm以上であることが好ましい。
前記送風工程における送風条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、1m/s以上で送風することが好ましい。
前記送風工程における送風条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、35℃以上の温風を送風することが好ましい。
前記赤外線による加熱工程における加熱条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、0.5KW以上の赤外線ヒーターまたはランプにより加熱することが好ましい。
前記空気吸引工程における空気吸引条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離から、0.1m/min以上の条件で空気吸引することが好ましい。
前記擬似接着層を塗工形成する際の紫外線硬化型樹脂を主成分とする塗工液の温度が20℃以上であることが好ましい。
前記擬似接着層を塗工形成する際の基材表面の温度が20℃以上であることが好ましい。
前記擬似接着層面に対して送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程が、紫外線照射工程の前に組み込まれていることが好ましい。
そして、上記の製造方法によって製造された擬似接着シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られた擬似接着シートは、郵送中の取り扱いで剥離せず、再剥離時には基材破壊を起さない、経時的に安定的な密着性、剥離性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の詳細について述べる。
本発明に使用される紫外線硬化型樹脂としては、例えば(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化性モノマー及びオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線硬化性成分と、(メタ)アクリル系共重合体及び光重合開始剤からなり、前記紫外線硬化性成分、(メタ)アクリル系共重合体及び光重合開始剤が互いに相溶しているものが例示できる。
【0010】
(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化性モノマーとしては、例えばエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコールに(メタ)アクリル酸をエステル化させたもの、フタル酸、マレイン酸、イソシアヌル酸等にアリルアルコールをエステル化させたもの、若しくはグリシジル(メタ)アクリレートをエステル化させたもの等が挙げられる。
【0011】
また、(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化性オリゴマーとしては、例えば単官能、2官能、多官能のウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、シリコンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
【0012】
なお、(メタ)アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを含んでなるモノマー成分を共重合して得られるものである。
【0013】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル系のモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート及びグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で或いは組み合わせて用いることができる。
【0014】
また、(メタ)アクリル系共重合体は、上記(メタ)アクリル酸エステル系のモノマーの他、これと共重合可能なモノマー成分を共重合してあってもよい。
【0015】
具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸含有のエチレン性不飽和モノマー、及びアルキルアミノ(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びグリジジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の官能基を持つエチレン性不飽和モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン等を用いることができる。これらは単独で或いは組み合わせて用いることができる。
【0016】
(メタ)アクリル系共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知方法を適宜用いることができる。但し、本発明においては、紫外線硬化型樹脂を主成分とする擬似接着層組成物として、例えば有機溶剤を用いた溶液重合により(メタ)アクリル系共重合体を得た場合は、重合反応の直後から最終的に紫外線硬化型ニス組成物に調製する間の何れかの工程で、例えば加熱又は減圧留去等により溶剤成分を除去したものであることが好ましい。
【0017】
有機溶剤を用いた溶液重合の場合を例にとって、具体的に説明すると、前記(メタ)アクリル系共重合体の重合溶媒としては、各有機溶剤が使用可能であり、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類、セロソルブアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、i−ブチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテル類、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、芳香族系(石油留分)溶剤、フタル酸エステル系可塑剤、アルキルリン酸エステル等が挙げられ、(メタ)アクリル系共重合体(B)が溶解又は分散可能な溶剤であれば、上記に溶剤に制限されるものではない。なお、溶剤の除去の容易性を考慮すれば、揮発性の高いメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が好ましい。
【0018】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2−アリルベンゾイン、2−クロルベンゾイン等のベンゾイン系、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン(1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等)、α−アミノアセトフェノン等のアセトフェノン系、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン等のチオキサンソン系、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系、アントラキノン、2−クロルアントラキノン、フェナントレン等のキノン系や、各種光重合開始剤の組み合わせ等が使用される。また、前記光重合開始剤に、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート−N−メチルジエタノールアミン等の増感剤を加えることによって、紫外線の感受性を高めることができる。
【0019】
そして、上記の紫外線硬化型樹脂を主成分とする擬似接着層塗工液を基材上に塗工する方法に特に限定はないが、該塗工液の塗工量が均一であることが重要であることから、グラビア印刷、オフセット印刷方式を利用することが好ましく、中でもアニロックスロールを使用したオフセット印刷方式がより好ましい。
【0020】
基材上への紫外線硬化型樹脂の塗工量は、片面につき3〜15g/m、より好ましくは4〜10g/mである。因みに、3g/m未満の塗工量では、十分な圧着性が付与できず、また15g/mを超えると塗工層の割れや紙癖不良等が発生する虞がある。
【0021】
本発明において最も重要な点は、基材表面の少なくとも一方の面に設けられた上記の主成分である紫外線硬化型樹脂を含有する擬似接着層に対し、擬似接着層に対する紫外線照射と同時に、もしくは照射の前後のいずれか一箇所において送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程を取り入れることにより、剥離力の経時的な変化を防止でき、経時剥離力の安定な擬似接着シートを得ることが出来ることにある。
【0022】
本発明において、基材上に塗工された擬似接着層への積算紫外線照射量としては、100mJ/cm以上が好ましく、より好ましくは200mJ/cm以上、さらに好ましくは400mJ/cm以上とすることにより、剥離力の経時安定性が向上する。
【0023】
本発明において、剥離力の経時安定性向上のため、擬似接着層面に対する送風については、擬似接着層表面から1〜50cmの距離から、より好ましくは、3〜20cmの距離から、1m/s以上で送風することが好ましい。さらに、送風については、5m/s以上とすることがより好ましい。さらに、送風の温度が、35℃以上の温風であれば、剥離力の経時安定性が向上することからより好ましい。
【0024】
本発明において、擬似接着層面に対する赤外線による接着面の加熱も、剥離力の経時安定性向上には効果があり、擬似接着層の擬似接着層表面から1〜50cmの距離、より好ましくは、3〜20cmの距離から、0.5kW以上の赤外線ヒーターまたはランプにより加熱することが好ましい。
【0025】
本発明において、擬似接着層面に対する空気吸引も、剥離力の経時安定性向上には効果があり、擬似接着層表面から1〜50cmの距離から、より好ましくは3〜20cmの距離から、0.1m/min以上、より好ましくは、0.5m/min以上で空気吸引することで、経時的に安定な剥離力をもつ擬似接着シートが得られるため、好ましい実施態様である。
【0026】
本発明の擬似接着層を形成するために用いられる、擬似接着層を形成する塗工液の液温を20℃以上とすること、さらに擬似接着層を形成する基材表面の温度を20℃以上にすることにより、さらに、経時的に安定した擬似接着シートの作成が可能となる。
【0027】
本発明において、擬似接着層面に対して送風、赤外線による加熱、および空気吸引から選ばれる少なくとも一つの工程が、擬似接着層に対する紫外線照射の前であれば、上記送風、赤外線による加熱、および空気吸引の効果が最も得られやすくなるため、好ましい製造形態である。
【0028】
このように、本発明でよって製造される擬似接着シートが、経時的に安定した剥離力の得られる理由が定かではないが、紫外線硬化型樹脂の経時的な安定性が向上するためと考えられる。
【0029】
本発明においては、木材パルプを主成分とする原紙上に顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を有する基材を用いることが好ましいことから、以下、該基材について述べる。
【0030】
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、あるいは環境保全の観点からECFパルプやTCFパルプを挙げることができる。
【0031】
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ホワイトカーボン、二酸化チタン等の無機顔料や有機顔料等を、紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加される。なお、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、嵩高剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。
【0032】
本発明の擬似接着シートに使用する原紙の坪量は、一般的には50〜450g/m程度の範囲に適宜調整するが、80〜150g/mがより好ましい範囲である。また、原紙の抄造条件は特に限定はない。
【0033】
本発明の擬似接着シートに使用する基材は、顔料塗工層を有する紙ベースのものがより好ましい。この場合、顔料と接着剤を主成分として、例えば、顔料としては、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト等の無機顔料や有機顔料等、また、接着剤としては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、等の蛋白質類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体等のビニル系重合体ラテックス、酸化デンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等を、特に限定されず使用することができる。なお、顔料塗工層における接着剤の使用量は顔料100質量部に対し5〜50質量部程度でよい。
【0034】
なお、その顔料塗工層を設ける際に使用する塗工装置については、顔料塗工紙製造業界で一般的に使用されているブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工装置が適宜使用して、オンマシンでもよく、オフマシンであってもよい。また顔料塗工層も1層でもよく、2層以上でもよい。この時の塗工量としては、片面上に乾燥重量で片面あたり5〜25g/m、より好ましくは7〜20g/m程度になるように、塗工、乾燥して顔料塗工層を形成するものでよい。
【0035】
さらに、本発明の擬似接着シートに使用する基材に対しては、擬似接着シートの剥離力発現のためにハードニップカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の各種カレンダー装置で平滑化処理を行うことが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」、および「質量%」を示す。
【0037】
実施例1
LBKP(CSF550ml)100部のパルプスラリーに、紙力剤としてポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS194−7、荒川化学工業社製)0.2部、湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂(商品名:WS570、日本PMC社製)0.2部、サイズ剤(商品名:SPK−287、荒川化学工業社製)0.1部、硫酸バンド0.5部を添加し、これらの混合物を白水で希釈してpH5.3、固形分濃度1.1%の紙料を調製した。この紙料を、長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙に、固形分濃度6%の酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)サイズプレス液を、サイズプレス装置で塗布量が乾燥質量で2g/m2となるように塗布、乾燥して、さらにマシンカレンダを用いてPPS平滑度が1.50μmになるように平滑化処理を施して、坪量が103g/m2の基紙を製造した。
【0038】
エンジニアードカオリン(商品名:アストラプラス、イメリス社製)80部と重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)20部に、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンA−9、東亞合成社製)0.2部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3.0部及びスチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:S2524、JSR社製)10部を添加、攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗被液を調製した。
【0039】
得られた塗被液を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布質量が固形分として12.5g/m2となるように塗被、乾燥して、金属ロールと弾性ロールで構成された加圧ニップに通紙して、塗被層表面のJIS Z8741に基づく入射・受光角75度の光沢度が70%となるように表面処理し、坪量128g/m2の基材を得た。さらに、上記基材にプリンター並びにオフセット印刷機を用いて、固定情報及び可変情報を印画・印字した。
【0040】
上記基材表面の片面に、紫外線硬化型樹脂の擬似接着層用塗工液(商品名:UV001、デュプロ販売株式会社製)を、アニロックスロール方式で、固形分として7g/mになるように塗工し、紫外線照射前に25cmの距離から、送風機により、10m/sの風速で20℃の温風を当てた後、コンベア式紫外線照射機(高圧水銀ランプ80W/cm)で、照射量が積算で200mJ/cmとなるように紫外線照射を行ない、擬似接着シートを得た。
【0041】
実施例2
実施例1で使用した送風機の位置を10cmに変更した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0042】
実施例3
実施例1で使用した送風機の温風の温度を40℃に変更した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0043】
実施例4
実施例1で使用した送風機の代わりに、25cmの距離から1.0kWの赤外線ヒーターにより加熱した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0044】
実施例5
実施例1で使用した送風機の代わりに、空気吸引機を用い、1.0m/minの空気吸引力で、擬似接着層塗工面から25cmの距離から吸引した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0045】
実施例6
実施例1で、紫外線照射量を積算で400mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0046】
実施例7
実施例1で使用した紫外線硬化型樹脂の温度を40℃に加温して使用した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0047】
実施例8
実施例1で使用した基材表面の温度を30℃にした以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0048】
実施例9
実施例1で使用した送風機の位置を、紫外線照射前から後に変更した以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0049】
比較例1
実施例1において、送風を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0050】
比較例2
実施例1で使用した紫外線照射を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして擬似接着シートを得た。
【0051】
(再剥離面の接着力および剥離性の評価)
得られた擬似接着シートをドライシーラー(型式6860、トッパンフォームズ社製)で三つ折りにし、葉書大が三葉につながった大きさに断裁後、擬似接着層面同士が対向するようにZ折りして、ロール間隙が240μmに設定したプレスロールに通過させて圧着して親展葉書を作製した。得られた親展葉書を、加工直後および室温で1ヶ月保存後に、JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No19−1:2000に準じて、T字剥離(両側からT字に引き剥がす方法)による接着力を5点測定し、その平均を行った。
また、剥離性の評価方法としては、以下に従い評価を行なった。ここで密着性は、十分に接着しており、折り曲げても接着箇所のハガレが生じず、郵送中に密着面の剥離が発生しないか、また剥離性は、シートが破れなく擬似接着層間で剥がれるかを5点で評価した。実用的には3点以上が必要である。
5点:密着性・剥離性全く問題なし。
4点:密着性が若干弱いが、郵送中の剥離の問題は発生せず、剥離性も良好。
3点:密着性、剥離性が若干弱いが、郵送中の剥離の問題は発生せず、実用上問題ない。
2点:密着性、剥離性が弱く、郵送中の剥離の問題が発生。
1点:密着性は強いが、剥離時に基材が破壊。
【0052】
実施例および比較例において得た擬似接着シートの評価結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1から明らかなように、本願発明の紫外線硬化型樹脂を主成分とする塗工液を塗工する工程と、紫外線照射工程と同時または前後の少なくとも一箇所に、送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程を行った実施例は、経時的に安定した接着性、剥離性が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の少なくとも一方の面に擬似接着層を有し、該擬似接着層面を対向させた状態で圧力により接着させた後、該接着層間での再剥離が可能である擬似接着シートの製造方法において、該擬似接着層が、紫外線硬化型樹脂を主成分とする塗工液を塗工する工程と、紫外線照射工程と同時または前後の少なくとも一箇所に、送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程を組み入れて、塗工形成されることを特徴とする擬似接着シートの製造方法。
【請求項2】
前記紫外線照射工程における紫外線照射量が、積算で100mJ/cm以上である請求項1に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項3】
前記送風工程における送風条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、1m/s以上で送風する請求項1または2に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項4】
前記送風工程における送風条件として、35℃以上の温風を送風する請求項1から3のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項5】
前記赤外線による加熱工程における加熱条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、0.5kW以上の赤外線ヒーターまたはランプにより加熱する請求項1から4のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項6】
前記空気吸引工程における空気吸引条件として、擬似接着層面に対し、1〜50cmの距離で、0.1m/min以上の条件で空気吸引する請求項1から5のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項7】
前記擬似接着層を塗工形成する際の紫外線硬化型樹脂を主成分とする塗工液の温度が20℃以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項8】
前記擬似接着層を塗工形成する際の基材表面の温度が20℃以上である請求項1から7のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項9】
前記擬似接着層面に対して、送風工程、赤外線による加熱工程および空気吸引工程から選ばれる少なくとも一つの工程が、紫外線照射工程の前に組み込まれていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の擬似接着シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された擬似接着シート。

【公開番号】特開2009−197176(P2009−197176A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42665(P2008−42665)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】