説明

擬似移動床システム及び方法

【課題】擬似移動床システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、溶液を二つ又はそれより多くのフラクションに分画するシステム及び方法に関するものである。本発明のシステムは、少なくとも約1mの直径を有し且つ約50μmないし約250μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂の均一充填物を含む少なくとも二つの区画を含む。本発明のシステムにおける流体フロントの混合容積は、区画容積の5%を越えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さいビーズ径を持つ樹脂を使用して、溶液を、有利には異なる成分に富まされた二つ又はそれより多くのフラクションに分画する、システム及び方法に関するものである。特に、本発明は、小さいビーズ径を持つ樹脂を使用するクロマトグラフ的擬似移動床(SMB)プロセスにより、溶液を分画するシステム及び方法に関するものである。本発明のシステムは、例えば、糖蜜溶液、砂糖黍エタノール蒸留廃液及びスルフィット蒸解液のような溶液を分画するために適用され得る。SMBシステムは、連続的又は逐次的であり得るか、或いは、連続的プロセス及び逐次的プロセスの組み合わせを含み得る。本発明のシステム及び方法は、とりわけ、工業的規模のカラムにおける分画に対して適用される。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフカラムの効率は、理論段数として表わされ得る。ファン・ディームター式(van Deemter eqation)は、ビーズ径、拡散速度及び線流速に依存する理論段相当高さ(HETP)を与えます。
【0003】
比較的速い流体速度が用いられる工業規模のクロマトグラフィーの場合、ファン・ディームター式の簡略化されたバージョン:
HETP=Adp +Bdp 2
[式中、
p =ビーズ径
u=隙間の線速度
A=2Am /(udp
B=2ε/(1−ε)(K'i /(1+K'i ))2/(15Di i
m =軸混合係数
i =成分iの分配係数
K'i =成分iの能力係数
ε=床の多孔度
i =固相中の成分の拡散係数]
が使用され得る。
【0004】
圧力降下は、ブレーク−コゼニー式(Blake−Kozeny eqation):
ΔP/L=(((1−ε)2 )/ε3 )(150μ/dp 2 )u
[式中、
ΔP=圧力降下
ε=床の多孔度
μ=流体の粘度
L=床の長さ
u=隙間の線速度]
を使用することにより評価され得る。
【0005】
同じ線速度、同じ床の多孔度、同じ分散度及び同じ理論段数において、図1に与えられたグラフが計算され得、これは、能力及び圧力降下対ビーズ径の関係を説明している。
【0006】
図1のグラフは、より小さいビーズ径を用いて非常に高い効率が達成され得ることを明確に示している。より短い樹脂床がより小さいビーズ径と共に使用され得、同じ理論段数を与え得る。圧力降下はビーズ径の減少と共に増加するが、しかし、この増加は、システ
ムにおいて同じ理論段数に対して要求される床の長さを同時に減少することにより制限される。この研究は、分析規模のカラムの性能を改良する際に使用された。ジアコベロ(Giacobello)等は、ジャーナル オブ クロマトグラフィーA(Journal of Chromatography A)、872(2000)23〜35、において同様のグラフを示した。
【0007】
工業的規模のカラムにおいても、この研究が試みられたが、しかし、殆ど成功しなかった。
下記の問題が注目された:
−カラム充填材床中の圧力降下が増加し過ぎて、流速を抑える、
−クロマトグラフのピークが非常に後を引き、過大な稀釈及び重複するピークを生じさせる、
−HETPが予想したほど増加せず、そして、クロマトグラフ床を予想したよりも長くしなければならない、
−減少した流量の結果として達成された能力が予想されたよりも小さい、
−工業的規模のクロマトグラフィーにおいて使用される濃い供給溶液及び高い供給量を用いる場合、上記問題は極端に大きかった。
【0008】
甘味料分野のクロマトグラフシステムにおいて、300〜360μmの範囲内の平均ビーズ径が使用されてきた。この範囲は、現行の機械設備設計と性能との間の最上の妥協点を提供し、そして工業的規模のクロマトグラフィーの殆ど全ての供給者が、14〜24mの範囲内の全樹脂床長と共に、前記樹脂径を使用している。ただ一社のみが220〜240μmの範囲内の樹脂を使用すると知られており、実際、たった8mの樹脂床を用いて同様の解決策に到達している。しかしながら、樹脂床中の高い圧力降下が前記システム中の線流速を抑え、そして、予想された非常に高い能力は達成されなかった。
【0009】
米国特許第4673507号明細書[ブラウン(Brown)]は、イオン交換用の装置及び方法を記載している。床の断面積を横切る実質的に均一な流体流分布が、小さい粒径の樹脂を用い、そしてこれを過充填条件で維持することにより達成されている。高いD/L比を持つ浅い床が、この特許刊行物において示されている。
【0010】
米国特許第4537217号明細書[アレン(Allen)]は、クロマトグラフィー用途のために採用された流体分離装置及び流体分配方法を記載している。前記流体分離装置は分配板を含み、該分配板は、一方の側に循環チャネルを、そして他方の側に均等分布した孔を有している。しかしながら、この具現化に関しては、複数の不都合が存在する。実施態様の一つは断面が矩形であるカラムにおいてのみそのまま適用可能である。環状のカラム用には、前記分離装置は分配開口部を含み、該開口部は、同心円の境界線によって規定された領域内に配置されている。しかしながら、環状の断面積を持つカラムに対する適用は、実質的に0.3mよりも大きい直径を持つカラムにおいて使用されるよう規模を拡大することが非常に困難である。
【0011】
国際特許出願公開第01/54790号明細書[合併再生会社(Amalgamated Res.Inc.)]は、大きい活性表面積の流体移送フラクタルの間の材料の浅い床を含む流体処理システム用カラム装置を記載している。前記装置において、前記材料の浅い床は、高さよりもより大きい直径を有するカラムとして提供された。本発明の利点は、装置を通る均一な流れ分布を得るために過充填床が必要とされないことである。
【0012】
ビレシ ジー.(Bressi G.)等は、[ジャーナル オブ クロマトグラフィーA(Journal of Chromatography A)、876(2000)3〜15]は、最適カラム長は、使用された樹脂の粒径に依存することを示している。粒径が
小さいほど、最適カラム長は短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4673507号明細書
【特許文献2】米国特許第4537217号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第01/54790号明細書
【非特許文献】
【0014】

【非特許文献1】ジアコベロ(Giacobello)等、ジャーナル オブ クロマトグラフィーA(Journal of Chromatography A)、872(2000)23〜35
【非特許文献2】ビレシ ジー.(Bressi G.)等、[ジャーナル オブ クロマトグラフィーA(Journal of Chromatography A)、876(2000)3〜15]
【発明の概要】
【0015】
本発明において、区画は、カラム充填材料床を保持し、そして流体を前記充填材料床を含む中央部に配布するための前部及び該中央部からの流体を捕集するための後部を含むクロマトグラフ装置のセクションを示す。
【0016】
供給区画は、供給流体を受け取るクロマトグラフ装置のセクションを示す。逐次SMBにおいて、典型的には一つの区画が供給流体を受け取る。供給物が一つよりも多くの区画に入る逐次SMBを構成することも可能である。連続SMBにおいて、全ての区画が典型的には、各サイクルの間に一旦供給流体を受け取り、それ故、全ての区画は供給区画でもあり得る。
カラムは、一つ又は複数の区画から構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、能力及び圧力降下対ビーズ径の関係を示す図である。
【図2】図2は、実施例4におけるカラムの吐出口での伝導度曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の分離システムは、現在使用されている工業規模のシステムにおけるよりも非常に小さい樹脂ビーズ径を使用する1/10までより小さいHETPを達成することを目的とする。ビーズ径の50%減少は、理論上、HETPを75%減少させる。このようなシステムにおいて同じ流速が維持され得るとき、能力は公知システムよりも4倍高まる。技術的な制約のため、実用上、このような増加は可能でないが、しかし、現在の能力の2倍又は3倍さえも可能である。しかしながら、上記問題のため、工業規模のシステムにおいて、これは成功しなかった。
【0019】
本発明の一つの観点において、本発明は、溶液を二つ又はそれより多くのフラクションに分画する擬似移動床(SMB)システムであって、該システムは、少なくとも約1mの直径を有し、且つ約50μmないし約250μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂の均一充填物を含む少なくとも二つの区画を含み、そして該システムは、隣接する二つの区画の間に、区画容積の5%を越えない流体フロントの混合容積を提供する、システムに関するものである。
【0020】
本発明により、小さいビーズ径を使用する公知の工業規模のシステムに関する問題は、
下記パラメーターを用いて解決された。
1.ビーズ径が小さいほど、より短い区画が使用され得る。
HETPが75%減少すると、区画の高さもまた、ほぼ同量減少し得る(=50〜75%)。これは、より小さいビーズ径により生じる圧力降下の増加を極小化し、そして、妥当な定格圧力を用いてより小さい線流速が維持されることを可能にする。
2.区画内の樹脂の移動は極小化される。これは、通常作動中、区画が満杯且つ均一で留まるように、区画を樹脂で満杯に充填することにより、実用上、具現化され得る。
3.区画は、充填材を用いて均一且つ満杯に充填される。これは、樹脂が均一で且つ狭い粒径分布を有し、そして、充填システムが均一充填の達成を可能にすることを意味する。4.区画が短い場合、該区画内の分配及び捕集装置並びに該区画の間の中間配管により生じる混合容積を極小化することは重要である。
【0021】
本発明のシステム内で使用される区画は、約50μmないし約250μm、好ましくは約100μmないし約200μm、より好ましくは約125μmないし約160μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂を用いて充填される。本発明の好ましい態様において、区画は、約125μmないし約130μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂を用いて充填される。樹脂は均一の粒径分布を有さねばならない。樹脂ビーズの好ましくは75%、そしてより好ましくは80%が平均ビーズ径の±20%の範囲内にある。
【0022】
カラム充填材は、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂から選択され得る。前記樹脂は、分画する原料混合物及び/又は回収する生成物に応じて選択される。前記樹脂及びそれらの性質は、当業者に周知である。
【0023】
樹脂のポリマーベースは、スチレン又はアクリル骨格に属している。前記アクリル骨格は好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート又はアクリロニトリル又はアクリル酸又はそれらの混合物から誘導される。前記スチレン及びアクリル骨格は、架橋剤、例えばジビニルベンゼン(DVB)を用いて架橋され得る。適する架橋度は、約1%ないし約20%、好ましくは約3%ないし約8%である。
【0024】
カチオン交換樹脂は、強酸カチオン交換樹脂又は弱酸カチオン交換樹脂であり得る。前記カチオン交換樹脂は、一価及び/又は二価金属の形態、例えばNa+ 及び/又はK+ 形態、或いはCa2+、Ba2+、Mg2+及び/又はSr2+形態にあり得る。H+ 及びNH4 + 形態にある樹脂も有用であり得る。しかしながら、他のイオン形態もまた、使用され得る。
【0025】
アニオン交換樹脂は、好ましくはアクリル骨格を有する、強塩基又は弱塩基アニオン交換樹脂であり得る。前記アニオン交換樹脂はOH- 、Cl- 又はSO4 - −形態であり得る。しかしながら、他のイオン形態もまた、使用され得る。
【0026】
本発明のシステムにおける好ましいカラム充填材の一つは、主にNa+ 及び/又はK+ 形態である、一価金属形態の強酸カチオン交換樹脂である。本発明のシステムにおける他の好ましいカラム充填材の一つは、主にNa+ 及び/又はK+ 形態である、一価金属形態の弱酸カチオン交換樹脂である。
【0027】
前記樹脂は、マクロ多孔性型又はゲル型樹脂であり得る。好ましくは、前記樹脂はゲル型樹脂である。
前記樹脂の製造者は、例えば、フィネックス(Finex)社、ダウ(Dow)社、バイエル(Bayer)及び社、ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas)社である

ゼオライト、炭素質焦性ポリマー及びポリマーに結合した活性炭もまた、カラム充填材として有用である。
【0028】
本発明のシステムの区画は、典型的には、短い/浅い。前記区画高さは、好ましくは、約0.2ないし2.0mである。より好ましくは、前記区画高さは、約0.5ないし1.5mである。前記区画の最適高さは、下記の好ましい態様が示すように、ビーズ径に関連している。
【0029】
本発明の好ましい態様の一つにおいて、樹脂のビーズ径は約100μmないし約160μmである。区画の最適高さは0.5mと1.0mの間にあり、そして、直径対区画高さの比率は、約6ないし約12の範囲内にある。全樹脂床高さは、典型的には、2mないし6mである。
【0030】
本発明の別の好ましい態様において、樹脂のビーズ径は約170μmないし約250μmである。最適区画高さは、1.0mと2.0mの間にあり、そして、直径対区画高さの比率は、約6ないし約12の範囲内にある。全樹脂床高さは、典型的には、6mないし15mである。
【0031】
区画高さは、好ましくは、前記区画における樹脂床高さに対応する。区画容積は、好ましくは、前記区画における充填された樹脂床容積に対応する。
【0032】
区画内における樹脂の移動は、極小化されるべきである。これは、通常作動中、区画が満杯で留まるように、区画を樹脂で満杯に充填することにより、実用上、行われる。本発明により、区画が均一充填されている。均一充填は、区画内の樹脂床の全断面積における同じ/均一流れ抵抗の達成を可能にするように、均一粒径分布を有する樹脂を用いて区画が満杯に充填されることを意味する。実用上、区画容積は、好ましくは、区画内の樹脂床容積に対応する。好ましくは、均一充填は、通常作動中、基本的に変化なく維持される。区画は、好ましくは、樹脂により生じる機械的圧力に耐えられるように設計される。
【0033】
SMBシステムは、全クロマトグラフ床を形成する複数の区画及び/又は直列カラムを用いて、通常、具現化される。典型的な工業規模のSMBシステムは、2〜20の区画及び/又はカラムを含み得る。最適な性能/コスト比は、3〜8の区画及び/又はカラムを含むシステムを用いて、通常、達成され得る。前記区画及び/又はカラムは、実際のクロマトグラフ分離を行う充填材を用いて充填される。個々の区画及び/又はカラムの間で、システム内を移動する流体は、カラム上流内の充填材床から、配管内に、捕集装置を用いて捕集される。前記配管は、オンライン機器、例えば、密度計、伝導度計、偏光計、屈折計、圧力計等を含み得る。前記配管は、通常、区画及び/又はカラムの間の昇圧器として機能するポンプに通じている。ポンプ吐出物は、下流側の次の区画及び/又はカラムに、配管を通って向かう。この配管もまた、オンライン機器、例えば、流量計、圧力計等を含み得る。分配装置は流れを、下流側の次の区画及び/又はカラム内の樹脂床の上端に分配する。
【0034】
各樹脂床は、供給物中の成分と前記床の長さとの間の分離係数に基づく所定量の分離を行う。前記分離係数が1のとき、成分は全く分離されない。充分に長いクロマトグラフ床が利用可能であれば、前記分離係数が1と異なるとき、成分は分離される。前記分離係数が2より大きいか又は0.5より小さいが、しかし、1と異なるとき、比較的短いクロマトグラフ床が良好な分離を提供する。殆どの糖への適用において、前記分離係数は、通常、0.5ないし0.9、又は1.1ないし2であり、これは、個々のカラムのそれぞれにおいて、ピークが比較的少量でのみ分離されることを意味している。
【0035】
捕集装置、分配装置、配管、オンライン機器、ポンプ等により生じる区画及び/又はカラムの間の混合は、それぞれの樹脂床により行われる分離よりも常に一桁分小規模であるべきである。そうでないと、区画及び/又はカラムの間の混合が、樹脂床が達成する分離を破壊又は非常に低減する。それぞれの床が床容積の20%で望ましい成分を分離し得、そして床の間の実際の混合容積が床容積の10%であるとき、これは、必然的に、分離効率をほぼ50%に低下させる。
【0036】
前記混合容積は、配管、ポンプ、分配及び捕集装置等の実際の物理的容積と直接関係ないことに注意すべきである。この混合容積は、分配及び捕集装置がどれほど良好に作動するかに依存している。それは、適する試験方法によってのみ、測定可能である。試験は、明確な濃度勾配(非常に少ない容積、例えば1リットル中で、濃度が、例えば、1g/100mLから45g/100mLまで増加する)をシステム内に注入し、そして、典型的には区画及び/又はカラムの間の、配管、ポンプ、分配及び捕集装置等の中で生じる混合により、前記勾配がどの程度明確でなくなるかを測定することにより、行うことができる。樹脂床内の混合は、試験システムにおいて極小化されるべきである。測定されるシステムの吐出口において、濃度が1g/100mLから45g/100mLまで増加するためにどれほどのリットルが必要とされるかを測定することにより、吐出勾配の測定容積から元の勾配容積を差し引くことによって、混合容積が決定され得る。
【0037】
特に、区画及び/又はカラムが短い/浅い(0.2〜2.0m)場合、区画内の分配及び捕集装置により生じる混合容積を極小化することが重要である。同様に、隣接する区画の間の中間配管内の混合容積を極小化することが重要である。
【0038】
前記混合容積は、分配及び捕集装置内の及び隣接する区画の間の中間配管内の、流体フロントの混合容積に関するものである。システム内の混合容積は、区画容積の5%を越えるべきでない。好ましくは、それは2%を越えるべきでない。高さ1mの区画において、混合容積は5cmを越えるべきでなく、そして好ましくは、区画において2cm未満であるべきである。
【0039】
本発明のシステムは、1m又はそれより大きい直径を有する区画の使用を可能にする。
好ましくは、分配装置は、極小の時間遅延、極小の時間遅延分布及び極小の流体フロントの混合で、流体を区画内に均一に分配する。
好ましくは、捕集装置は、極小の時間遅延、極小の時間遅延分布及び極小の流体フロントの混合で、区画からの流体を均一に捕集する。
【0040】
流体はまた、区画の断面全体にわたり極小の撹乱で、分配及び/又は捕集される。分離操作の際の流体の分配及び/又は捕集における時間遅延の欠如並びに極小の時間遅延分布は、所望フラクションの分離を向上させる。好ましくは、分配及び/又は捕集装置が区画及び/又はカラム、例えばクロマトグラフカラムにおいて使用される場合、流体フロントの混合容積は極小である。流体フロントの小さい混合容積は、カラム充填材のより良い利用を可能にする。これは、より少量のカラム充填材を用いて所望生成物の良好な分離が達成され得ることを意味する。
【0041】
流体フロントは、移動相における異なる成分の間の濃度勾配、例えば、供給物と溶出物との間の濃度勾配を意味する。分配及び/又は捕集装置における時間遅延は、装置の容量を流体の流速で割ったものである。時間遅延分布は、分配/捕集時間の広がりである。極小時間遅延分布は、区画及び/又はカラムに導入された流体が、基本的に同時に、分配装置内のそれぞれのポイントから分配されることを、或いは、区画及び/又はカラムから出た流体流が、基本的に同時に、捕集装置内のそれぞれのポイントから捕集されることを意
味する。
【0042】
好ましい分配及び/又は捕集装置は、本明細書中に参照として取り込まれている本出願人による特許出願PCT/FI03/00989の明細書に記載されている。
【0043】
本発明の実施態様において、システムの供給区画は、該システムの一つ又はそれより多くの他の区画よりも短い。供給区画は、システムの全ての他の区画よりも短くてよい。本発明の一実施態様において、供給区画は、システムの次の区画よりも短い。
【0044】
所望により、本発明のシステムは、クロマトグラフカラムの全高に比較して短い/浅い供給区画を含む。供給区画の高さは、好ましくは、装置の区画の全高の1/6に等しいか又はそれ未満である。より好ましくは、供給区画の高さは、装置の区画の全高の1/8に等しいか又はそれ未満である。
【0045】
供給区画短い/浅い本発明の上記実施態様において、流体フロントの一緒にされた混合容積は、隣接する区画のより短い方の容積の5%を越えず、好ましくは、2%を越えない。
【0046】
浅い供給区画の使用は基本的に、SMB装置及び分離プロセスの性能数値を更に改善する。いわゆる粘稠フィンガリング現象(viscous fingering phenomenon)が実質的に極小化され、それ故、クロマトグラムのテーリング効果(tailing effect)が相対的に減少する。クロマトグラムのテーリング効果は、線形流及び乾燥物質の量が大きい工業規模のクロマトグラフの適用に伴う現実の問題である。加えて、浅い供給区画設計は、樹脂移動を極小化する。カラム中の樹脂移動はランダムであり、そして不規則且つ撹乱しているので、境界を混合し、そしてSMBプロセスの分離結果を低下させる。
【0047】
供給区画における樹脂床の高さは、好ましくは、前記区画の高さに対応する。供給区画における樹脂床の容積は、好ましくは、前記区画の容積に対応する。
【0048】
本発明の別の観点において、本発明は、SMBシステムを用いて溶液を二つ又はそれより多くのフラクションに分画する方法であって、該システムは、少なくとも約1mの直径を有し、且つ約50μmないし約250μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂の均一充填物を含む少なくとも二つの区画を含み、そして分画における流体フロントの混合容積は、区画容積の5%を越えない、方法に関するものである。
【0049】
本発明の方法の好ましい態様は、本発明のシステムに対して上記したものと同じである。
本発明のシステム及び方法は、SMB法を使用して、例えば、糖蜜溶液、砂糖黍エタノール蒸留廃液及びスルフィット蒸解液のような溶液を分画するために適用され得る。SMB法は連続的又は逐次的であり得、或いは、連続的プロセス及び逐次的プロセスの組み合わせを含む。
【0050】
好ましくは、SMB法は逐次的SMB法である。
好ましくは、用いられるSMB法は、2−プロフィール法(two−profile method)又は繰り返しルーピング法(repeated looping method)である。これらの方法は、米国特許第6224776号明細書、米国特許出願第20010009236号明細書及び米国特許出願第20030006191号明細書に、それぞれ、詳細に記載されている。前記米国特許明細書及び米国特許出願明細書は、参考文献として、本明細書中に取り込まれている。
【0051】
本発明のシステム及び方法は、高い表面速度(容積流量/カラム断面積)、典型的には、1m/時間より大きい速度、を用いて良く機能する。
本発明のシステム及び方法は、とりわけ、1サイクルにつき、10kg乾燥物質/m3 カラム容積、を越える供給量を有する濃い供給溶液に対して有用である。
【0052】
本発明のシステム及び方法は、物質混合物から分離することが困難な該物質を分離するために特に良く適している。このような供給混合物は、典型的には、下記のものを含む:スルフィット蒸解液、糖蜜、とりわけB−糖蜜及び/又はC−糖蜜、砂糖黍エタノール蒸留廃液(vinasse)、果糖及び/又はブドウ糖シロップ、甜菜由来の汁、転化糖混合物、澱粉加水分解物、木材加水分解物、乳清溶液及び他の乳糖含有溶液、ラクツロース含有溶液、麦芽糖含有溶液、マルチトール含有溶液又はアミノ酸含有溶液;種々の有機酸、例えば、コハク酸、グルコン酸を含む発酵培養液;バガス(bagasse)加水分解物;ラムノース、アラビノース、マンノース、ラフィノース、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、グルタミン酸、グリセロール、タガトース、イソマルツロース、トレハロース、リボース、6−O−α−D−グルコピラノシド−D−ソルビトール(1,6−GPC)及び1−O−α−D−グルコピラノシド−D−マンニトール(1,1−GPM)等を含む溶液。好ましくは、分画される溶液は、糖蜜溶液、砂糖黍エタノール蒸留廃液又はスルフィット蒸解液である。糖蜜溶液は好ましくは、甜菜及び/又は砂糖黍糖蜜を含む。本明細書中で使用されるとき、用語"スルフィット蒸解液"は、スルフィットセルロースを蒸解する際に用いられるリカー又はその一部、蒸解から確保されるリカー又はその一部、スルフィット蒸解において使用されるリカー又はその一部、或いは、スルフィット蒸解の間に該蒸解から除去されるリカー又はその一部を意味する。
【0053】
本発明のシステムを使用して回収される生成物は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、ベタイン、ラムノース、アラビノース、マンノース、ラフィノース、乳糖、ラクツロース、麦芽糖、マルチトール、イノシトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール、キシロース、ソルビトール、エリトリトール、リボース、6−O−α−D−グルコピラノシド−D−ソルビトール(1,6−GPC)及び1−O−α−D−グルコピラノシド−D−マンニトール(1,1−GPM)、有機酸及び/又はとりわけアミノ酸、例えばグルタミン酸を包含する。
【0054】
クロマトグラフ分離の選択性は、分離係数α(α=k1 /k2 ;式中、k1 は化合物1に対する保持係数を表わし、k2 は化合物2に対する保持係数を表わす)により説明される。本発明のシステムは、約0.5ないし約2の分離係数を有する物質を分離するために特に良く適している。
【0055】
上記本発明の方法において使用される溶出液は、好ましくは水であるが、しかし、塩類と水との溶液であっても有用である。更に、アルコール、例えばエタノール、並びに、水とアルコールとの混合物、例えば水とエタノールとの混合物も有用な溶出液である。
【0056】
クロマトグラフ分画の温度は、例えば、選択された樹脂に依存する。クロマトグラフ分画の温度は、典型的には、50℃ないし100℃、好ましくは55℃ないし90℃の範囲内である。より高い分離温度は粘度を減少させ、そして分離性能を改善することが知られている。
クロマトグラフに加えて、本発明の方法は、イオン交換システム又は吸着システムに適用することもできる。
【実施例】
【0057】
下記実施例により本発明が更に明確にされ、下記実施例は、行われた試験を記載しているが、しかし、本発明の適用性を制限すると考えるべきではない。実施例1、2及び3は、1.0m未満の直径を持つカラムを使用するパイロット規模のシステムを記載している。実施例4は、1.0mの直径を持つ非常に短い樹脂床中の混合容積の測定を説明している。実施例4は、本発明の混合容積制限が、1m又はそれを越える大きい直径を有するカラムを用いて満たされ得ることを示している。
【0058】
実施例1.
350μmビーズ径カチオン交換樹脂を用いるSMBクロマトグラフー試験
試験装置は、直列に接続された6本のカラム、供給ポンプ、循環ポンプ、溶出水ポンプ、並びに入口及び種々のプロセス流に対する生成物バルブを含んでいた。前記装置は、供給流、溶出流及び循環段階流を制御するための流量制御ユニットを含んでいた。伝導度計は、吐出流の伝導度を測定するためにそれぞれのカラムで使用され、そして密度計は、吐出流の密度を測定するために最後のカラムで使用された。それぞれのカラムの高さは4mであり、そしてそれぞれのカラムは0.111mの直径を有していた。前記カラムは、Na+ 形態にあるビーズ径350μmの強酸ゲル型カチオン交換樹脂[ダウ(DOW)99K/350]で充填された。前記樹脂ビーズの98%が、平均粒径から±20%の範囲内にあると測定された。
【0059】
区画/カラムは、樹脂床が全区画を有効に満たすように、充填操作の間、樹脂を収縮させるため8%塩溶液を使用して、樹脂を用いて満杯且つ均一に充填された。塩濃度は、通常操作の間、システム中のどのような区画においても、塩濃度が前記区画の充填中の塩濃度を越えないように選択された。これは、区画が操作中完全に充填された状態で留まり、そして区画内の樹脂移動が有効に極小化されることを確実にする。
【0060】
供給物質は甜菜糖蜜であった。甜菜糖蜜を60重量%に稀釈し、そして炭酸ナトリウムを用いて炭酸塩化した(乾燥物質に基づいて1.5%、温度60℃、反応時間3時間)。その後、炭酸塩化された溶液を、濾過助剤としてケナイト(Kenite)300(プレコート1kg/m2 、乾燥物質に基づいてボディ供給0.5%)を使用したザイツ(Seitz)圧力フィルターを用いて濾過した。供給濃度は69.6g/100mLに調節した。供給物の組成を以下の表に示すが、ここで、%は乾燥物質重量に基づいて与えられた。
【表1】

【0061】
以下に示された2−プロフィールSMB法(この方法は、米国特許第6224776号明細書に詳細に記載されている)の9段階手順により、分画を行った。供給物及び溶出物は85℃で使用され、そして水が溶出物として使用された。
段階1:供給溶液2.0Lを流量45L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、リサイクルフラクションをカラム6から捕集した。
段階2:供給溶液9.8Lを流量42L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションを同じカラムから捕集した。同時に、水10.1Lを流量43L/時間でカラム2にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム4から捕集した。更に同時に、水を流量72L/時間でカラム5にポンプ移送し、そして、最初にリサイクルフラクション4.4Lを、次いで蔗糖含有フラクション12.2Lをカラム6から捕集した。
段階3:供給溶液1.8Lを流量45L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、蔗糖含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階4:7.5Lを流量48L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた(分離プロフィール循環を継続した)。
段階5:水1.0Lを流量50L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階6:水10.2Lを流量62L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム2から捕集した。同時に、水10.2Lを流量63L/時間でカラム3にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム5から捕集した。更に同時に、水3.7Lを流量23L/時間でカラム6にポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションを同じカラムから捕集した。
段階7:水10.3Lを流量53L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階8:水10.1Lを流量59L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム3から捕集した。同時に、水を流量58L/時間でカラム4にポンプ移送し、そして、最初にベタイン含有フラクション3.0Lを、次いで残渣フラクション6.8Lをカラム6から捕集した。
段階9:8.2Lを流量50L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた。
【0062】
SMBクロマトグラフー試験の間に、段階1、2、3、4、5、6、7、8及び9を、少なくとも9回繰り返した。システムが平衡に達した後、下記のフラクションを前記システムから抜き出した:全カラムからの残渣フラクション、カラム6からの蔗糖含有フラクション、カラム6からのリサイクルフラクション及びカラム6からのベタイン含有フラクション。一緒にしたフラクションに対するHPLC分析を含む結果を以下の表2に示す。
【表2】

生成物フラクションから計算した全収率は、蔗糖について92.3%、そしてベタインについて98.0%であった。分離サイクル全体の長さは72分であり、そして、生成物フラクションに基づく分離能力は29.7kg乾燥物質/時間/m3 樹脂であった。
混合容積は、樹脂床容積の1.7%であると評価された。
【0063】
実施例2.
220μmビーズ径カチオン交換樹脂を用いるSMBクロマトグラフー試験
試験装置は、直列に接続された6本のカラム、供給ポンプ、循環ポンプ、溶出水ポンプ、並びに入口及び種々のプロセス流に対する生成物バルブを含んでいた。前記装置は、供給流、溶出流及び循環段階流を制御するための流量制御ユニットを含んでいた。伝導度計は、吐出流の伝導度を測定するためにそれぞれのカラムで使用され、そして密度計は、吐出流の密度を測定するために最後のカラムで使用された。カラム1、3、4及び6の高さは1.5mであり、そしてカラム2及び5の高さは1.8mであった。それぞれのカラムは0.111mの直径を有していた。前記カラムは、Na+ 形態にあるビーズ径220μmの強酸ゲル型カチオン交換樹脂(三菱UBK530)で充填された。前記樹脂ビーズの95%が、平均粒径から±20%の範囲内にあると測定された。
【0064】
区画/カラムは、樹脂床が全区画を有効に満たすように、充填操作の間樹脂を収縮させるため8%塩溶液を使用して、樹脂を用いて満杯且つ均一に充填された。塩濃度は、通常操作の間、システム中のどのような区画においても、塩濃度が前記区画の充填中の塩濃度を越えないように選択された。これは、区画が操作中完全に充填された状態で留まり、そして区画内の樹脂移動が有効に極小化されることを確実にする。
【0065】
供給物質は甜菜糖蜜であった。甜菜糖蜜を60重量%に稀釈し、そして炭酸ナトリウムを用いて炭酸塩化した(乾燥物質に基づいて1.5%、温度60℃、反応時間3時間)。その後、炭酸塩化された溶液を、濾過助剤としてケナイト(Kenite)300(プレコート1kg/m2 、乾燥物質に基づいてボディ供給0.5%)を使用したザイツ(Seitz)圧力フィルターを用いて濾過した。供給濃度は69.6g/100mLに調節した。供給物の組成を以下の表3に示すが、ここで、%は乾燥物質重量に基づいて与えられた。
【表3】

【0066】
以下に示された2−プロフィールSMB法(この方法は、米国特許第6224776号明細書に詳細に記載されている)の8段階手順により、分画を行った。供給物及び溶出物は85℃で使用され、そして水が溶出物として使用された。
段階1:供給溶液1.2Lを流量40L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、リサイクルフラクションをカラム6から捕集した。
段階2:供給溶液3.1Lを流量34L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションを同じカラムから捕集した。同時に、水3.4Lを流量37L/時間でカラム2にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム4から捕集した。更に同時に、水を流量76L/時間でカラム5にポンプ移送し、そして、最初にリサイクルフラクション1.4Lを、次いで蔗糖含有フラクション5.6Lをカラム6から捕集した。
段階3:供給溶液0.4Lを流量40L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、蔗糖含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階4:4.3Lを流量40L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた(分離プロフィール循環を継続した)。
段階5:水4.0Lを流量55L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム2から捕集した。同時に、水4.0Lを流量55L/時間でカラム3にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム5から捕集した。更に同時に、水2.5Lを流量32L/時間でカラム6にポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションを同じカラムから捕集した。
段階6:水3.9Lを流量50L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階7:水3.4Lを流量55L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム3から捕集した。同時に、水を流量62L/時間でカラム4にポンプ移送し、そして、最初にベタイン含有フラクション1.0Lを、次いで残渣フラクション2.7Lをカラム6から捕集した。
段階8:2.8Lを流量50L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた。
【0067】
SMBクロマトグラフー試験の間に、段階1、2、3、4、5、6、7及び8及を、少なくとも9回繰り返した。システムが平衡に達した後、下記のフラクションを前記システ
ムから抜き出した:全カラムからの残渣フラクション、カラム6からの蔗糖含有フラクション、カラム6からのリサイクルフラクション及びカラム6からのベタイン含有フラクション。一緒にしたフラクションに対するHPLC分析を含む結果を以下の表4に示す。
【表4】

生成物フラクションから計算した全収率は、蔗糖について94.4%、そしてベタインについて90.7%であった。分離サイクル全体の長さは33分であり、そして、生成物フラクションに基づく分離能力は57.8kg乾燥物質/時間/m3 樹脂であった。
混合容積は、樹脂床容積の2.2%であると評価された。
【0068】
実施例3.
127μmビーズ径カチオン交換樹脂を用いるSMBクロマトグラフー試験
試験装置は、直列に接続された6本のカラム、供給ポンプ、循環ポンプ、溶出水ポンプ、並びに入口及び種々のプロセス流に対する生成物バルブを含んでいた。前記装置は、供給流、溶出流及び循環段階流を制御するための流量制御ユニットを含んでいた。伝導度計は、吐出流の伝導度を測定するためにそれぞれのカラムで使用され、そして密度計は、吐出流の密度を測定するために最後のカラムで使用された。それぞれのカラムの高さは0.5mであり、そしてそれぞれのカラムは0.111mの直径を有していた。前記カラムは、Na+ 形態にあるビーズ径127μmの強酸ゲル型カチオン交換樹脂[フィネックス(Finex)CS13GC]で充填された。前記樹脂ビーズの80%が、平均粒径から±20%の範囲内にあると測定された。
【0069】
区画/カラムは、樹脂床が全区画を有効に満たすように、充填操作の間樹脂を収縮させるため数回の20%塩溶液パルスを使用して、樹脂を用いて満杯且つ均一に充填された。塩濃度は、通常操作の間、システム中のどのような区画においても、塩濃度が前記区画の充填中の塩濃度を越えないように選択された。これは、区画が操作中完全に充填された状態で留まり、そして区画内の樹脂移動が有効に極小化されることを確実にする。
【0070】
供給物質は甜菜糖蜜であった。甜菜糖蜜を60重量%に稀釈し、そして炭酸ナトリウムを用いて炭酸塩化した(乾燥物質に基づいて1.5%、温度60℃、反応時間3時間)。その後、炭酸塩化された溶液を、濾過助剤としてケナイト(Kenite)300(プレコート1kg/m2 、乾燥物質に基づいてボディ供給0.5%)を使用したザイツ(Seitz)圧力フィルターを用いて濾過した。供給濃度は55.3g/100mLに調節した。供給物の組成を以下の表5に示すが、ここで、%は乾燥物質重量に基づいて与えられた。
【表5】

【0071】
以下に示された2−プロフィールSMB法(この方法は、米国特許第6224776号明細書に詳細に記載されている)の9段階手順により、分画を行った。供給物及び溶出物は85℃で使用され、そして水が溶出物として使用された。
段階1:供給溶液0.5Lを流量45L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、リサイクルフラクションをカラム6から捕集した。
段階2:供給溶液0.7Lを流量30L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションを同じカラムから捕集した。同時に、水1.0Lを流量60L/時間でカラム2にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム4から捕集した。更に同時に、水を流量80L/時間でカラム5にポンプ移送し、そして、最初にリサイクルフラクション0.5Lを、次いで蔗糖含有フラクション0.9Lをカラム6から捕集した。
段階3:供給溶液0.4Lを流量40L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、蔗糖含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階4:1.1Lを流量40L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた(分離プロフィール循環を継続した)。
段階5:水0.3Lを流量65L/時間でカラム6にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム2から捕集した。
段階6:水0.6Lを流量55L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム2から捕集した。同時に、水0.9Lを流量52L/時間でカラム3にポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム5から捕集した。更に同時に、水0.7Lを流量70L/時間でカラム6にポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションを同じカラムから捕集した。
段階7:水1.5Lを流量55L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、ベタイン含有フラクションをカラム6から捕集した。
段階8:水1.0Lを流量57L/時間で第一カラムにポンプ移送し、そして、残渣フラクションをカラム3から捕集した。同時に、水を流量71L/時間でカラム4にポンプ移送し、そして、最初にベタイン含有フラクション0.5Lを、次いで残渣フラクション0.7Lをカラム6から捕集した。
段階9:1.2Lを流量45L/時間で、全カラムを用いて形成したカラムセットループ中で循環させた。
【0072】
SMBクロマトグラフー試験の間に、段階1、2、3、4、5、6、7、8及び9を、少なくとも9回繰り返した。システムが平衡に達した後、下記のフラクションを前記システムから抜き出した:全カラムからの残渣フラクション、カラム6からの蔗糖含有フラクション、カラム6からのリサイクルフラクション及びカラム6からのベタイン含有フラクション。一緒にしたフラクションに対するHPLC分析を含む結果を以下の表6に示す。
【表6】

生成物フラクションから計算した全収率は、蔗糖について91.7%、そしてベタインについて94.9%であった。分離サイクル全体の長さは11.5分であり、そして、生成物フラクションに基づく分離能力は127.2kg乾燥物質/時間/m3 樹脂であった。
混合容積は、樹脂床容積の4.0%であると評価された。
【0073】
実施例4.
非常に短い樹脂床及び大きい直径を持つ区画における混合容積の測定
前記実施例は、現在の工業的実施におけるよりも充分に小さいビーズ径を持つ充填材料を使用することにより、分離能力における非常な改善が達成され得ることを示している。これらのSMB試験は、パイロット規模のカラムを用いて行われた。大きい直径を持つ工業的規模のカラムを用いて同種の改善が達成され得ることを示すため、大きい直径のカラムにおける混合容積を測定するために下記の試験ユニットを構築した。この試験装置は、カラム、供給槽及び溶出槽、供給溶液ポンプ及び溶出水ポンプ、並びに、両方の供給流用の入口バルブを含む。装置は、吐出流の流量及び密度を測定するための質量流量計[ミクロ・モーション(Micro Motion)社製]、吐出流の伝導度を測定するための伝導度計、並びに、カラムへの供給流及び溶出流を制御するための流制御ユニットをも含む。
【0074】
分配装置及び捕集装置は、本出願人による特許出願PCT/FI03/00989の明細書に記載されている。
樹脂床の高さは、カラム区画の高さに対応して2cmであった。カラムの直径は1mであった。樹脂床により生じる混合を極小化し、そして、前記樹脂床に結合された供給ポンプ、配管、分配装置、捕集装置及びオンライン機器との組み合わせがどの程度の混合を起こし得るかを明確に示すために、前記の非常に短い樹脂床を選択した。Na+ 形態にあるビーズ径350μmの強酸ゲル型カチオン交換樹脂[ダウ(DOW)99K/350]を用いて、カラムを満杯に充填した。区画が前記樹脂で満杯に充填されることを確実にするために、前記樹脂を塩溶液中でカラムに充填した。
【0075】
供給物として、45質量%の蔗糖−塩溶液を使用した(乾燥物質質量に基づいて、蔗糖80%及びNaCl20%)。供給物及び溶出水を温度85℃で使用し、試験の前に、カラム及び樹脂を、所定の溶出流と共に加熱した。第一段階として、供給溶液40リットルを流量40L/時間で、カラム内にポンプ移送した。第二段階として、溶出水100リッ
トルを流量40L/時間で、カラム内にポンプ移送し、そして、供給溶液を、カラムから溶出した。
【0076】
図2は、カラムの吐出口での伝導度プロフィールを示す。このプロフィールから、我々は、吐出パルス幅(A)が約80リットルであることを見出すことができる。流入パルスは40リットル幅であったので、従って、吐出は40リットル広くなった。配管、分配装置、2cm樹脂床、捕集装置、配管及びオンライン機器における混合は、前記パルスの幅拡張を起こす。前記パルスは、一体化されている二つの濃度フロント:上行性フロント(B)及び下行性フロント(C)を有している。従って、混合容積は、上行性フロント及び下行性フロントの両方に対して決定され得る。上行性フロントの混合容積は約10〜12リットルであり、そして下行性フロントに対する約22リットルは、図2における伝導度プロフィールから決定された。これらの容積は、樹脂床(高さ2cm=16リットルの樹脂容積)により引き起こされた混合及びクロマトグラフ分離を含む。配管、機器、分配装置及び捕集装置により生じる実際の混合容積を得るために、この混合容積が上記数量から差し引かれるべきである。しかしながら、この混合容積を確実に測定する方法がないので、我々は、測定された混合容積を信頼しなければならず、そして、真の混合容積は測定されたものよりもより小さいものでなければならないことに注意すべきである。上行性フロントは10〜12リットル未満の混合容積を有しており、これは、直径1mのカラムにおいて、1.2〜1.5cm未満の空のカラム高さを意味している。下行性フロントは22リットル未満の混合容積を有しており、これは、直径1mのカラムにおいて、2.8cm未満の空のカラム高さを意味している。混合容積が5%に制限されるとき、これは、極小高さ区画が、2.8cm/0.05=56cmであることを意味する。これは、前記種類の分配装置及び捕集装置を使用して、本発明が、大きい直径のカラムにおいて具体化され得ることを明らかに示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を二つ又はそれより多くのフラクションに分画する擬似移動床(SMB)システムであって、
該システムは、少なくとも約1mの直径を有し且つ約50μmないし約250μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂の均一充填物を含む少なくとも二つの区画を含み、そして
該システムは、区画容積の5%を越えない流体フロントの混合容積を提供する、システム。
【請求項2】
前記樹脂のビーズ径が約100μmないし約200μmである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記樹脂のビーズ径が約125μmないし約160μmである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記ビーズの75%が平均ビーズ径の±20%の範囲内にある、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
充填された樹脂床の容積が前記区画容積に対応する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記樹脂が、前記区画内の樹脂移動が有効に極小化されるように、前記区画に均一に充填されている、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記樹脂が、強カチオン交換樹脂である、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記樹脂が一価金属の形態にある、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記一価金属がNa+ である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記一価金属がK+ である、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記一価金属がNa+ とK+ との混合物である、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
前記樹脂が、二価金属の形態にある、請求項7記載のシステム。
【請求項13】
前記二価金属がCa++である、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記二価金属がMg++である、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
前記樹脂が、弱カチオン交換樹脂である、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記樹脂が、強アニオン交換樹脂である、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
前記樹脂が、弱アニオン交換樹脂である、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
前記樹脂がゲルの形態にある、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記区画の高さが約0.2mないし約2mである、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
前記区画の高さが約0.5mないし約1.5mである、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記樹脂のビーズ径が約100μmないし約160μmであり、そして前記区画の高さが約0.5mないし約1.0mである、請求項1記載のシステム。
【請求項22】
前記区画の直径対高さの比率が約6ないし12の範囲内にある、請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記区画の全高が約2ないし6mの範囲内にある、請求項20記載のシステム。
【請求項24】
前記樹脂のビーズ径が約170ないし250μmであり、そして前記区画の高さが約1.0mないし2.0mである、請求項1記載のシステム。
【請求項25】
前記区画の直径対高さの比率が約2ないし6の範囲内にある、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
前記区画の全高が約6ないし15mの範囲内にある、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
前記流体フロントの混合容積が前記区画容積の2%を越えない、請求項1記載のシステム。
【請求項28】
供給区画が、前記システムの一つ又はそれより多くの他の区画よりもより短い、請求項1記載のシステム。
【請求項29】
前記供給区画が、前記システムの次の区画よりもより短い、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
前記供給区画が、前記システムの他の区画よりもより短い、請求項28記載のシステム。
【請求項31】
前記供給区画の高さが、前記システムの区画の全高の1/6に等しいか、又は1/6未満である、請求項28記載のシステム。
【請求項32】
前記供給区画の高さが、前記システムの区画の全高の1/8に等しいか、又は1/8未満である、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
前記流体フロントの混合容積が、隣接する区画のより短いものの容積の5%を越えない、請求項28記載のシステム。
【請求項34】
前記流体フロントの混合容積が、隣接する区画のより短いものの容積の2%を越えない、請求項33記載のシステム。
【請求項35】
分離係数が0.5〜2.0であるが、しかし1と異なる、請求項1記載のシステム。
【請求項36】
前記SMBシステムが、逐次SMBシステムである、請求項1記載のシステム。
【請求項37】
分画される溶液が、スルフィット蒸解液、糖蜜、とりわけB−糖蜜及び/又はC−糖蜜、砂糖黍エタノール蒸留廃液(vinasse)、果糖及び/又はブドウ糖シロップ、甜菜由来の汁、転化糖混合物、澱粉加水分解物、木材加水分解物、乳清溶液及び他の乳糖含有溶液、ラクツロース含有溶液、麦芽糖含有溶液、マルチトール含有溶液又はアミノ酸含有溶液から選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項38】
分画される前記溶液が、糖蜜溶液、砂糖黍エタノール蒸留廃液及びスルフィット蒸解液から選択される、請求項37記載のシステム。
【請求項39】
回収される生成物が、ブドウ糖、果糖、蔗糖、ベタイン、ラムノース、アラビノース、マンノース、ラフィノース、乳糖、ラクツロース、麦芽糖、マルチトール、イノシトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール、キシロース、ソルビトール、エリトリトール、リボース、6−O−α−D−グルコピラノシド−D−ソルビトール(1,6−GPC)及び1−O−α−D−グルコピラノシド−D−マンニトール(1,1−GPM)、有機酸又はアミノ酸、例えばグルタミン酸、のうちの1種又はそれより多くである、請求項1記載のシステム。
【請求項40】
擬似移動床(SMB)システムを用いて溶液を二つ又はそれより多くのフラクションに分画する方法であって、
該システムは、少なくとも約1mの直径を有し且つ約50μmないし約250μmの範囲内のビーズ径を持つポリマーベースのイオン交換樹脂の均一充填物を含む少なくとも二つの区画を含み、そして
分画における流体フロントの混合容積は、区画容積の5%を越えない、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232302(P2012−232302A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152562(P2012−152562)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2006−502074(P2006−502074)の分割
【原出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【出願人】(503250632)
【Fターム(参考)】