説明

擬似移動床式クロマトグラフ分離方法

本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)生成物を供給混合物から回収するためのクロマトグラフ分離方法であって、溶離剤として水性アルコールを含有する複数の連結クロマトグラフィーカラムを有する擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置に供給混合物を導入することを含み、前記装置は、少なくとも第1の帯域および第2の帯域を含む複数の帯域を有し、各帯域は、前記複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体をそこから収集することができる抽出液流および抽残液流を有し、(a)より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含有する抽残液流は、第1の帯域におけるカラムから収集され、第2の帯域における隣接しないカラムに導入され、かつ/または(b)より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含有する抽出液流は、第2の帯域におけるカラムから収集され、第1の帯域における隣接しないカラムに導入され、前記PUFA生成物は、各帯域において供給混合物の異なる成分から分離される、クロマトグラフ分離方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)およびそれらの誘導体を精製するための改善されたクロマトグラフ分別方法に関する。特に、本発明は、PUFAおよびそれらの誘導体を精製するための改善された擬似または実移動床式クロマトグラフ分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸、特にPUFA、およびそれらの誘導体は、血漿凝固、炎症および免疫応答などの生物学的機能の調節に重要な役割を果たす生物学的に重要な分子の前駆体である。したがって、PUFAおよびそれらの誘導体は、CNS状態を含む広範な病理的状態;糖尿病性神経障害を含む神経障害;心臓血管疾患;炎症性皮膚疾患を含む全身的免疫系および炎症性状態を治療する上で治療的に有用であり得る。
【0003】
PUFAは、植物油および魚油などの天然原料に見いだされる。しかし、そのようなPUFAは、そのような油の中で飽和脂肪酸および多くの他の不純物と混合して存在することが多い。したがって、PUFAは、望ましくは、栄養または医薬用途に使用する前に精製される。
【0004】
残念なことに、PUFAは、極めて脆弱である。したがって、それらは、酸素の存在下で加熱されると、異性化、過酸化およびオリゴマー化しやすい。したがって、純粋な脂肪酸を製造するためのPUFA生成物の分別および精製は、困難である。真空下での蒸留でも、許容し得ない生成物分解をもたらし得る。
【0005】
擬似および実移動床式クロマトグラフィーは、当業者に熟知された既知の技術である。動作の原理は、液体溶離剤相と固体吸着剤相の対向移動を含む。この動作は、溶媒の最小限の使用を可能にし、この方法を経済的に採算のとれるものとする。そのような分離技術は、炭化水素、工業用化学物質、油、糖およびAPIを含む多様な分野のいくつかの用途に使用されてきた。そのような分離技術は、また、PUFAおよびそれらの誘導体を精製するのに使用されてきた。
【0006】
良く知られているように、従来の固定床式クロマトグラフィーシステムでは、成分が分離される混合物が容器を浸透する。容器は、全体的に円筒形であり、典型的にはカラムと称する。カラムは、高い液体透過度を示す(一般に固定相と呼ばれる)多孔性材料の詰物を含有する。混合物の各成分の浸透速度は、成分がカラムから連続的かつ選択的に出るように成分の物理的特性に依存する。したがって、いくつかの成分は、固定相に強く固定する傾向があるため、ゆっくりと浸透するのに対して、他の成分は、弱く固定する傾向があり、より迅速にカラムから出る。多くの異なる固定床式クロマトグラフィーシステムが提案されており、分析および工業生産の両方の目的に使用されている。
【0007】
対照的に、擬似移動床システムは、互いに縦列接続された、吸着剤を含むいくつかの個別的なカラムからなる。溶離剤は、第1の方向でカラムに通される。原液および溶離剤の注入点、ならびにシステム内の分離成分収集点は、一連の弁によって周期的にシフトされる。全体的な効果は、固体吸着剤の移動床を含有する単一カラムの動作をシミュレートすることである。したがって、擬似移動床システムは、従来の固定床システムのように、溶離剤が通される固体吸着剤の固定床を含有するカラムからなるが、擬似移動床システムでは、動作は、連続向流移動床をシミュレートするように行われる。
【0008】
擬似移動床式クロマトグラフィーのための方法および装置は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第2,985,589号、同第3,696,107号、同第3,706,812号、同第3,761,533号、仏国特許出願公開第2103302(A)号、同第2651148(A)号および同第2651149(A)号を含むいくつかの特許に記載されている。この主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている「Preparative and Production Scale Chromatography」、GanetsosおよびBarker編、Marcel Dekker Inc, New York、1993年においても詳細に扱われている。
【0009】
実移動床システムは、動作が擬似移動床システムと類似している。しかし、供給混合物および溶離剤の注入点、ならびに弁のシステムによる分離成分収集点をシフトさせる代わりに、一連の吸着ユニット(すなわちカラム)を供給および抽出点に対して物理的に移動させる。ここでも、動作は、連続向流移動床をシミュレートするように行われる。
【0010】
実移動床式クロマトグラフィーのための方法および装置は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,979,402号、同第5,069,883号および同第4,764,276号を含めたいくつかの特許に記載されている。
【0011】
擬似および実移動床技術は、一般には、二成分混合物を分離することにのみ好適である。したがって、より極性の高い成分は、溶離剤とともに移動し、抽残液流として収集されることになり、より極性の低い成分は、吸着剤とともに移動し、抽出液流として収集されることになる。したがって、擬似または実移動床技術を用いて、極性および非極性不純物の両方を含有する粗混合物から所望の生成物を分離するのは困難である。これにより、例えば魚油からのPUFA生成物を精製する際のそのような技術の応用性が制限される。
【0012】
よって、従来、擬似または実移動床技術を用いて天然油からPUFAを分離するときは、一般に、擬似または実移動床技術を用いて得られた中間生成物を精製する前に、最初に天然油に予備分離工程(例えば固定カラムクロマトグラフィー)を施すことが必要である(例えば、欧州特許出願公開第0697034(A)号参照)。典型的には、最初の精製工程により極性または非極性成分が除去されて、基本的に二成分の混合物が生成され、次いでそれに移動床式クロマトグラフィーが施される。
【0013】
図1を参照すると、この二成分混合物の分離方法が示されている。擬似または実連続向流クロマトグラフ分離方法の概念は、複数の区分、より正確にはカラムの底部から頂部に至る4つの重ねられた小帯域I、II、IIIおよびIVに分割された固定相Sを含有する垂直のクロマトグラフ用カラムを考えることによって説明される。溶離剤は、ポンプPによってIEにて底部で導入される。分離すべき成分AとBとの混合物は、小帯域IIと小帯域IIIとの間のIA+Bにて導入される。主としてBを含有する抽出液は、小帯域Iと小帯域IIとの間のSBにて収集され、主としてAを含有する抽残液は、小帯域IIIと小帯域IVとの間のSAにて収集される。
【0014】
擬似移動床システムの場合は、固定相Sの擬似的な下方移動は、固体相に対する導入点および収集点の移動によって引き起こされる。実移動床システムの場合は、固定相Sの下方移動は、導入点および収集点に対する様々なクロマトグラフ用カラムの移動によって引き起こされる。図1において、溶離剤は、上方に流れ、混合物A+Bは、小帯域IIと小帯域IIIとの間に注入される。それらの成分は、固定相とのそれらのクロマトグラフ相互作用、例えば多孔性媒体への吸着に応じて移動する。固定相に対してより強い親和性を示す成分B(より緩慢に流動する成分)は、溶離剤によってより緩慢に連行され、遅れてその後に続くことになる。固定相に対してより弱い親和性を示す成分A(より迅速に流動する成分)は、溶離剤によってより容易に連行されることになる。適切なパラメータ群、特に各帯域における流速が正確に推定および制御されると、固定相に対してより弱い親和性を示す成分Aは、小帯域IIIと小帯域IVとの間で抽残液として収集され、固定相に対してより強い親和性を示す成分Bは、小帯域Iと小帯域IIとの間で抽出液として収集されることになる。
【0015】
したがって、図1に概略的に示される従来の移動床システムは、二成分の分別に限定されることが理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
よって、より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわちより極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)の両方からPUFAまたはそれらの誘導体を分離して、本質的に純粋なPUFAまたはそれらの誘導体を製造することができる単一の擬似または実移動床クロマトグラフ分離方法の必要性が存在する。さらに、該方法は、標準的な温度および圧力条件下で動作する安価な溶離剤を使用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
意外にも、水性アルコール溶離剤を使用して、PUFA生成物を単一の擬似または実移動床装置により効果的に精製できることが判明した。したがって、本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)生成物を供給混合物から回収するためのクロマトグラフ分離方法であって、溶離剤として水性アルコールを含有する複数の連結クロマトグラフィーカラムを有する擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置に供給混合物を導入することを含み、該装置が、少なくとも第1の帯域および第2の帯域を含む複数の帯域を有し、各帯域が、前記複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体を各帯域から収集することができる抽出液流および抽残液流を有し、(a)より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含有する抽残液流が、第1の帯域におけるカラムから収集され、第2の帯域における隣接しないカラムに導入され、かつ/または(b)より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含有する抽出液流が、第2の帯域におけるカラムから収集され、第1の帯域における隣接しないカラムに導入され、前記PUFA生成物が、各帯域において供給混合物の異なる成分から分離される、クロマトグラフ分離方法を提供する。
【0018】
本発明の方法によって得られるPUFA生成物も提供される。
【0019】
本発明の方法によって製造されるPUFA生成物は、高収率で製造され、高い純度を有する。さらに、典型的にはPUFAの蒸留により生じる特有の不純物の含有率が非常に低い。本明細書に使用されているように、「異性体不純物」という用語は、典型的にはPUFA含有天然油の蒸留を通じて生成される不純物を表すように使用される。これらは、PUFA異性体、過酸化生成物およびオリゴマー化生成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】二成分混合物を分離するための擬似または実移動床法の基本原理を示す図である。
【図2】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを分離するのに好適である本発明の第1の好適な実施形態を示す図である。
【図3】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からDHAを分離するのに好適である本発明の第2の好適な実施形態を示す図である。
【図4】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを分離するのに好適である本発明の第1の好適な実施形態をより詳細に示す図である。
【図5】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からDHAを分離するのに好適である本発明の第2の好適な実施形態をより詳細に示す図である。
【図6】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを分離するのに好適である本発明の第1の好適な実施形態の代替法をより詳細に示す図である。
【図7】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からDHAを分離するのに好適である本発明の第2の好適な実施形態の代替法をより詳細に示す図である。
【図8】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを精製するための本発明の特に好適な実施形態を示す図である。
【図9】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを精製するための本発明の特に好適な実施形態の代替法を示す図である。
【図10】より迅速に流動する成分およびより緩慢に流動する成分(すなわち、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物)からEPAを精製するための本発明の特に好適な実施形態を示す図である。
【図11】本発明により製造されたEPA生成物のGC分析を示す図である。
【図12】本発明により得られた第1の抽出液流および抽残液流のGC FAMESトレースを示す図である。
【図13】本発明により得られた第2の抽出液流および抽残液流のGC FAMESトレースを示す図である。
【図14】本発明により製造されたDHA生成物のGC FAMESトレースを示す図である。
【図15】蒸留により製造されたDHA生成物のGC FAMESトレースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「多価不飽和脂肪酸」(PUFA)という用語は、1つを超える二重結合を含有する脂肪酸を指す。そのようなPUFAは、当業者に周知である。本明細書に使用されているように、PUFA誘導体は、モノ、ジもしくはトリグリセリド、エステル、リン脂質、アミド、ラクトンまたは塩の形のPUFAである。トリグリセリドおよびエステルが好適である。エステルがより好適である。エステルは、典型的には、アルキルエステル、好ましくはC〜Cアルキルエステル、より好ましくはC〜Cアルキルエステルである。エステルの例としては、メチルエステルおよびエチルエステルが挙げられる。エチルエステルが最も好適である。
【0022】
本明細書に使用されているように、「PUFA生成物」という用語は、典型的には栄養または医薬上の有意性を有する、1つまたは複数の多価不飽和脂肪酸(PUFA)および/またはそれらの誘導体を含む生成物を指す。典型的には、PUFA生成物は、単一のPUFAまたはその誘導体である。あるいは、PUFA生成物は、2つ以上、例えば2つのPUFAまたはそれらの誘導体の混合物である。
【0023】
本明細書に使用されているように、「帯域(ゾーン、区域)」という用語は、複数の連結クロマトグラフィーカラムを指し、当該複数の連結クロマトグラフィーカラムは、溶離剤として水性アルコールを含有し、供給混合物流のための1つまたは複数の注入点、水および/またはアルコールのための1つまたは複数の注入点、複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体をそこから収集することができる抽残液分岐流、ならびに前記複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体をそこから収集することができる抽出液分岐流を有する。典型的には、各帯域は、供給混合物のための1つのみの注入点を有する。一実施形態において、各帯域は、水性アルコール溶離剤のための1つのみの注入点を有する。別の実施形態において、各帯域は、水および/またはアルコールのための2つ以上の注入点を有する。
【0024】
「抽残液」という用語は、当業者に周知である。実および擬似移動床式クロマトグラフィーの脈絡において、それは、固体吸着剤相よりも液体溶離剤相との方が迅速に移動する成分の流れを指す。したがって、抽残液流は、供給流と比較して、典型的には、より極性の高い成分が豊富であり、より極性の低い成分が欠如している。
【0025】
「抽出液」という用語は、当業者に周知である。実および擬似移動床式クロマトグラフィーの脈絡において、それは、液体溶離剤相よりも固体吸着剤相との方が迅速に移動する成分の流れを指す。したがって、抽出液流は、供給流と比較して、典型的には、より極性の低い成分が豊富であり、より極性の高い成分が欠如している。
【0026】
本明細書に使用されているように、同じ装置におけるカラムに適用される場合の「隣接しない」という用語は、1個以上のカラム、好ましくは3個以上のカラム、より好ましくは5個以上のカラム、最も好ましくは約5個のカラムによって隔てられたカラムを指す。
【0027】
したがって、(a)PUFA生成物をより極性の高い成分とともに含有する抽残液流が、第1の帯域におけるカラムから収集され、第2の帯域における隣接しないカラムに導入される場合は、第1の帯域から収集された抽残液流は、第2の帯域のための供給混合物である。(b)PUFA生成物をより極性の低い成分とともに含有する抽出液流が、第2の帯域におけるカラムから収集され、第1の帯域における隣接しないカラムに導入される場合は、第2の帯域から収集された抽出液流は、第1の帯域における供給混合物である。
【0028】
典型的には、PUFA生成物は、少なくとも1つのω−3またはω−6PUFA、好ましくは少なくとも1つのω−3PUFAを含む。ω−3PUFAの例としては、アルファ−リノレン酸(ALA)、ステアリドン酸(SDA)、エイコサトリエン酸(ETE)、エイコサテトラエン酸(ETA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)が挙げられる。SDA、EPA、DPAおよびDHAが好適である。EPAおよびDHAがより好適である。ω−6PUFAの例としては、リノール酸(LA)、ガンマ−リノレン酸(GLA)、エイコサジエン酸、ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA)、アラキドン酸(ARA)、ドコサジエン酸、アドレン酸およびドコサペンタエン(ω−6)酸が挙げられる。LA、ARA、GLAおよびDGLAが好適である。
【0029】
一実施形態において、PUFA生成物は、EPAおよび/またはEPAエチルエステル(EE)である。
【0030】
別の実施形態において、PUFA生成物は、DHAおよび/またはEPAエチルエステル(EE)である。
【0031】
なおさらなる実施形態において、PUFA生成物は、EPAとDHAおよび/またはEPA EEとDHA EEの混合物である。
【0032】
本発明の方法による分別のための好適な供給混合物を、植物および動物油脂を含めた天然源、ならびに遺伝子操作植物、動物、および酵母菌を含む微生物から得られる油を含めた合成源から得ることができる。例としては、魚油、藻類油および微細藻類油、および植物油、例えば、ルリチシャ油、エキウム油およびイヴニングプリムローズ油が挙げられる。一実施形態において、供給混合物は魚油である。別の実施形態において、供給混合物は藻類油である。藻類油は、所望のPUFA生成物がEPAおよび/またはDHAである場合に特に好適である。遺伝子操作サフラワー油は、所望のPUFA生成物がGLAである場合に特に好適である。遺伝子操作酵母菌は、所望のPUFA生成物がEPAである場合に特に好適である。
【0033】
供給混合物は、本発明の方法による分別の前に化学処理が施されてもよい。例えば、それは、グリセリドエステル交換またはグリセリド加水分解が行われ、場合によってはそれに続いて結晶化、分子蒸留、尿素分別、硝酸銀もしくは他の金属塩溶液による抽出、ヨードラクトン化または超臨界流体分別などの選択的処理が施されてもよい。
【0034】
供給混合物は、典型的には、PUFA生成物と、少なくとも1つのより極性の高い成分と、少なくとも1つのより極性の低い成分とを含有する。より極性の低い成分は、PUFA生成物より、本発明の方法に使用される吸着剤に対する接着性が強い。動作を通じて、そのようなより極性の低い成分は、典型的には、液体溶離剤相でなく、固体吸着剤相とともに移動する。より極性の高い成分は、PUFA生成物より、本発明の方法に使用される吸着剤に対する接着性が弱い。動作を通じて、そのようなより極性の高い成分は、典型的には、固体吸着相でなく、液体溶離剤相とともに移動する。概して、より極性の高い成分は、抽残液流に分離され、より極性の低い成分は、抽出液流に分離されることになる。
【0035】
より極性の高い成分およびより極性の低い成分の例としては、(1)天然油(例えば、魚油または植物油)に存在する他の化合物、(2)貯蔵工程、精製工程および前の濃縮工程中に形成された副産物、ならびに(3)前の濃縮工程または精製工程中に利用された溶媒または試薬からの汚染物質が挙げられる。
【0036】
(1)の例としては、他の望ましくないPUFA;飽和脂肪酸;ステロール、例えばコレステロール;ビタミン;ならびにポリクロロビフェニル(PCB)、ポリ芳香族炭化水素(PAH)殺虫剤、塩素化殺虫剤、ジオキシンおよび重金属などの環境汚染物質が挙げられる。PCB、PAH、ジオキシンおよび塩素化殺虫剤は、いずれも高度に非極性の成分である。
【0037】
(2)の例としては、異性体、およびPUFA生成物の酸化または分解生成物、例えば、脂肪酸またはそれらの誘導体の自己酸価ポリマー生成物が挙げられる。
【0038】
(3)の例としては、供給混合物の飽和または一不飽和脂肪酸を除去するために添加することができる尿素が挙げられる。
【0039】
好ましくは、供給混合物は、PUFA含有魚油、より好ましくは、EPAおよび/またはDHAを含む魚油である。
【0040】
本発明の方法によって高濃度EPAを調製するための典型的な供給混合物は、50〜75%のEPA、0から10%のDHA、ならびに他の必須ω−3およびω−6脂肪酸を含めた他の成分を含む。
【0041】
本発明の方法によって高濃度EPAを調製するための好適な供給混合物は、55%のEPA、5%のDHA、ならびに他の必須ω−3およびω−6脂肪酸を含めた他の成分を含む。DHAは、EPAより極性が低い。
【0042】
本発明の方法によって高濃度DHAを調製するための典型的な供給混合物は、50〜75%のDHA、0から10%のEPA、ならびに他の必須ω−3およびω−6脂肪酸を含めた他の成分を含む。
【0043】
本発明の方法によって高濃度DHAを調製するための好適な供給混合物は、75%のDHA、7%のEPA、ならびに他の必須ω−3およびω−6脂肪酸を含めた他の成分を含む。EPAは、DHAより極性が高い。
【0044】
本発明の方法によってEPAとDHAの高濃度混合物を調製するための典型的な供給混合物は、33%を超えるEPAおよび22%を超えるDHAを含む。
【0045】
本発明の方法は、前記クロマトグラフィー装置における複数の帯域を必要とする。典型的には、2個以上の帯域が使用される。帯域の数は特に限定されないが、概して2から5つの帯域が存在する。好ましくは、2または3つの帯域が存在し、より好ましくは2つの帯域が存在する。
【0046】
典型的には、本発明の方法に使用される装置の各帯域にて分離される成分は、異なる極性を有する。
【0047】
典型的には、a)各帯域に存在する水性アルコール溶離剤は、異なる水:アルコール比を有し;かつ/または(b)各帯域において抽出液流および抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度は、PUFA生成物を各帯域における供給混合物の異なる成分から分離できるように調整される。
【0048】
本発明の方法に使用される装置が2つの帯域を有するときは、本発明は、典型的には、多価不飽和脂肪酸(PUFA)生成物を供給混合物から回収するためのクロマトグラフ分離方法であって、供給混合物を、溶離剤として水性アルコールを含有する複数の連結クロマトグラフィーカラムを有する擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置に導入することを含み、該装置が、第1の帯域および第2の帯域を有し、各帯域が、前記複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体をそこから収集することができる抽出液流および抽残液流を有し、(a)より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含む抽残液流が、第1の帯域におけるカラムから収集され、第2の帯域における隣接しないカラムに導入され、かつ/または(b)より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含む抽出液流が、第2の帯域におけるカラムから収集され、第1の帯域における隣接しないカラムに導入され、第1の帯域において、前記PUFA生成物が、供給混合物のより極性の低い成分から分離され、第2の帯域において、前記PUFA生成物が、供給混合物のより極性の高い成分から分離される。
【0049】
典型的には、本発明の方法に使用される装置が2つの帯域を含有する場合は、第1の帯域における溶離剤は、第2の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第2の帯域は、システムにおける溶離剤の流れに関して、第1の帯域の下流である。したがって、システムにおける溶離剤は、典型的には、第1の帯域から第2の帯域に移動する。逆に、固体吸着剤相は、典型的には、第2の帯域から第1の帯域に移動する。典型的には、2つの帯域は重複しない。すなわち、両方の帯域にクロマトグラフ用カラムが存在しない。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、装置は、第1の帯域、第2の帯域および第3の帯域を有する。第1、第2の帯域および第3の帯域に存在する水性アルコール溶離剤の水:アルコール比は、典型的には異なる。当業者に明らかなように、これは、各帯域において、異なる極性を有する不純物を除去できるという結果を有する。
【0051】
好ましくは、装置が3つの帯域を有する場合は、第1の帯域における溶離剤は、第2の帯域および第3の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第1の帯域は、システムにおける溶離剤の流れに関して、第2の帯域および第3の帯域の上流である。典型的には、第2の帯域における溶離剤は、第3の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第2の帯域は、システムにおける溶離剤の流れに関して、第3の帯域の上流である。典型的には、第1の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性の低い供給混合物の成分から分離される。典型的には、第2の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性が低いが、第1の帯域で分離された成分より極性が高い供給混合物の成分から分離される。典型的には、第3の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性の高い供給混合物の成分から分離される。
【0052】
さらなる実施形態において、第1の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性の低い供給混合物の成分から分離され、第2の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性の高い供給混合物の成分から分離され、第3の帯域において、前記PUFA生成物は、PUFA生成物より極性が高く、第2の帯域で分離された成分より極性が高い供給混合物の成分から分離される。
【0053】
3つの帯域を有するそのような構成は、DHAおよびEPAより極性の低い不純物を含有するとともに、EPAより極性の高い不純物をも含有する混合物からEPAおよびDHAを分離するのに好適である。第1の帯域において、DHAおよびEPAより極性の低い成分は、抽出液流として除去され、DHA、EPA、およびEPAより極性の高い成分を含む抽残液流は、収集され、第2の帯域内に導入される。第2の帯域において、DHAは、抽出液流として除去され、EPA、およびEPAより極性の高い成分を含む抽残液流は、収集され、第3の帯域内に導入される。第3の帯域において、EPAより極性の高い成分は、抽残液流として除去され、精製EPAは、抽出液流として収集される。本実施形態において、精製EPAは精製PUFA生成物である。そのような構成は、二次的なPUFAを収集することもできるという長所を有する。この場合、二次的なPUFAは、第2の帯域から抽出液流として収集されたDHAである。
【0054】
本発明のクロマトグラフ分離方法では、典型的には、前記PUFA生成物に加えて、さらなる二次的なPUFA生成物が収集される。好ましくは、PUFA生成物はEPAであり、さらなる二次PUFA生成物はDHAである。
【0055】
本発明のさらなる実施形態において、装置は、EPAとDHAの高濃度混合物であるPUFA生成物を収集するように構成されている。したがって、EPA、DHA、EPAおよびDHAより極性の高い成分、ならびにEPAおよびDHAより極性の低い成分を含有する供給混合物が使用される。第1の帯域において、EPAおよびDHAより極性の低い材料が除去される。第2の帯域において、EPAおよびDHAより極性の高い材料が除去され、EPAとDHAの高濃度混合物が、PUFA生成物として収集される。
【0056】
本発明の方法を特徴づける複数、特に2つの帯域で構成されていれば、任意の既知の擬似または実移動床クロマトグラフィー装置を本発明の方法の目的に利用することができる。米国特許第2,985,589号、同第3,696,107号、同第3,706,812号、同第3,761,533号、仏国特許出願公開第2103302(A)号、同第2651148(A)号、同第2651149(A)号、米国特許第6,979,402号、同第5,069,883号および同第4,764,276号に記載されている装置が、本発明の方法に従って構成されれば、それらをすべて使用することができる。
【0057】
装置に使用されるカラムの数は、特に限定されない。当業者なら、使用するカラムの適切な数を容易に決定することができるであろう。カラムの数は、典型的には8個以上、好ましくは15個以上である。より好適な実施形態において、15または16個のカラムが使用される。別のより好適な実施形態において、19または20個のカラムが使用される。他のより好適な実施形態において、30個以上のカラムが使用される。典型的には、50個以下、好ましくは40個以下のカラムが存在する。
【0058】
各帯域は、典型的には、カラムの総数のほぼ頭割りで構成される。したがって、2つの帯域で構成された装置の場合は、各帯域は、システムにおけるクロマトグラフ用カラムの総数のほぼ半分で構成される。したがって、第1の帯域は、典型的には4個以上、好ましくは8個以上、より好ましくは約8個のカラムを含む。第2の帯域は、典型的には4個以上、好ましくは7個以上、より好ましくは7または8個のカラムを含む。
【0059】
装置に使用されるカラムの寸法は、特に限定されず、精製すべき供給原料の体積に依存することになる。当業者なら、使用すべき適切なサイズのカラムを容易に決定することができるであろう。各カラムの直径は、典型的には10から500mm、好ましくは25から250mm、より好ましくは50から100mmであり、最も好ましくは70から80mmである。各カラムの長さは、典型的には10から200cm、好ましくは25から150cm、より好ましくは70から110cm、最も好ましくは80から100cmである。
【0060】
各帯域におけるカラムは、典型的には同一の寸法を有するが、用途によっては異なる寸法を有してもよい。
【0061】
カラムへの流速は、一連のカラムの最大圧力によって限定され、カラム寸法および固体相の粒径に依存することになる。当業者なら、効率的に脱着させるために、各カラム寸法に応じた必要な流速を容易に確定することができるであろう。カラムの直径が大きくなると、概して、カラムの直線的な流れを維持するために流速を大きくする必要がある。
【0062】
以上に概略的に示した典型的なカラムサイズ、および2つの帯域を有する装置では、典型的には、第1の帯域への溶離剤の流速は、1から4.5L/分、好ましくは1.5から2.5L/分である。典型的には、第1の帯域からの溶離剤の流速は、0.1から2.5L/分、好ましくは0.5から2.25L/分である。第1の帯域から抽出剤の一部を第1の帯域内に再循環させる実施形態において、再循環の流速は、典型的には0.7から1.4L/分、好ましくは約1L/分である。典型的には、第1の帯域からの抽残液の流速は、0.2から2.5L/分、好ましくは0.3から2.0L/分である。第1の帯域からの抽残液の一部を第1の帯域内に再循環させる実施形態において、再循環の流速は、典型的には0.3から1.0L/分、好ましくは約0.5L/分である。典型的には、第1の帯域への供給混合物の導入の流速は、5から150mL/分、好ましくは10から100mL/分、より好ましくは20から60mL/分である。
【0063】
以上に概略的に示した典型的なカラムサイズ、および2つの帯域を有する装置では、典型的には、第2の帯域への溶離剤の流速は、1から4L/分、好ましくは1.5から3.5L/分である。典型的には、第2の帯域からの溶離剤の流速は、0.5から2L/分、好ましくは0.7から1.9L/分である。第2の帯域から溶離剤の一部を第2の帯域内に再循環させる実施形態において、再循環の流速は、典型的には0.6から1.4L/分、好ましくは0.7から1.1L/分、より好ましくは約0.9L/分である。典型的には、第2の帯域からの抽残液の流速は、0.5から2.5L/分、好ましくは0.7から1.8L/分、より好ましくは約1.4L/分である。
【0064】
当業者なら理解するように、液体が様々な抽出液流および抽残液流を介して収集または除去される流速の言及は、ある時間で除去される液体の体積、典型的にはL/分を指す。同様に、液体が同じ帯域、典型的には同じ帯域における隣接するカラムに再循環される速度の言及は、ある時間で再循環される液体の体積、典型的にはL/分を指す。
【0065】
典型的には、第1の帯域からの抽出液流、第1の帯域からの抽残液流、第2の帯域からの抽出液流および第2の帯域からの抽残液流の1つまたは複数の液流の一部が、同じ帯域、典型的には同じ帯域の隣接するカラムに再循環される。
【0066】
この再循環は、別の帯域における隣接しないカラムへの抽出液流または抽残液流の供給と異なる。むしろ、再循環は、抽出液流または抽残液流の一部をある帯域から同じ帯域、典型的には同じ帯域における隣接するカラムに供給することを含む。
【0067】
液体が第1または第2の帯域からの抽出液流または抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度は、その液流を介して収集された液体が同じ帯域、典型的には同じ帯域の隣接するカラムに戻される速度である。このことは、図9を参照することによって理解できる。第1の帯域における抽出液の再循環の速度は、カラム2の底部から収集された抽出液がカラム3の頂部に供給される速度、すなわちカラム3の頂部への液体の流速である。第2の帯域における抽出液の再循環の速度は、カラム10の底部で収集された抽出液がカラム11の頂部に供給される速度、すなわちカラム11の頂部への液体の流速である。
【0068】
抽出液流および/または抽残液流の再循環は、典型的には、その液流を介して収集された液体を容器に供給し、次いでその液体のある量を容器から同じ帯域にポンプで戻すことによって実施される。この場合、特定の抽出液流または抽残液流を介して収集された液体の、典型的には同じ帯域における隣接するカラムへの再循環の速度は、液体が容器から同じ帯域、典型的には隣接するカラムにポンプで戻される速度である。
【0069】
当業者なら理解するように、溶離剤流および原料流を介してある帯域内に導入される液体の量は、ある帯域から除去され、同じ帯域内に再循環される液体の量と釣り合わされる。したがって、図9を参照すると、抽出液流については、第1または第2の帯域への溶離剤(脱着剤)の流速(D)は、その帯域から抽出液流を介して収集される液体が容器内に蓄積する速度(E1/E2)を、抽出液が同じ帯域内に再循環される速度(D−E1/D−E2)に加えた速度に等しい。ある帯域における抽残液流については、抽出液がある帯域内に再循環される速度(D−E1/D−E2)を、原料がある帯域内に導入される速度(F/R1)に加えた速度は、その帯域から抽残液流を介して収集された液体が容器内に蓄積する速度(R1/R2)を、抽残液が同じ帯域内に再循環される速度(D+F−E1−R1/D+R1−E2−R2)に加えた速度に等しい。
【0070】
ある帯域からの特定の抽出液流または抽残液流から収集された液体が容器内に蓄積する速度は、その抽出液流または抽残液流がその帯域から除去される正味の速度であると考えることもできる。
【0071】
典型的には、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度と異なり、かつ/または第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度と異なる。
【0072】
各帯域において抽出液流および/または抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度を変化させることは、他の抽出液流および抽残液流に存在するより極性の高い成分およびより極性の低い成分の量を変化させる効果を有する。したがって、例えば、抽出液の再循環速度が低くなると、その帯域において抽残液流に運ばれるその帯域におけるより極性の低い成分が少なくなる。抽出液の再循環速度が高くなると、その帯域において抽残液流に運ばれるその帯域におけるより極性の低い成分が多くなる。このことは、例えば、図6に示される本発明の具体的な実施形態において理解できる。第1の帯域において抽出液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度(D−E1)は、成分Aが第1の帯域において抽残液流に運ばれる程度(R1)に影響を与える。
【0073】
典型的には、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域からの抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より速い。好ましくは、より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含む抽残液流は、第1の帯域におけるカラムから収集され、第2の帯域における隣接しないカラムに導入され、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より速い。
【0074】
あるいは、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より遅い。
【0075】
典型的には、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度は、第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度より速い。好ましくは、より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含有する抽出液流は、第2の帯域におけるカラムから収集され、第1の帯域における隣接しないカラムに導入され、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度は、第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度より速い。
【0076】
あるいは、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度は、第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度より遅い。
【0077】
ステップ時間、すなわち供給混合物および溶離剤の注入点と、回収されたフラクションの様々な分岐点とをシフトする時間は、特に限定されず、使用されるカラムの数および寸法、ならびに装置を通る流量に依存することになる。当業者なら、本発明の方法に用いられる適切なステップ時間を容易に決定することができるであろう。ステップ時間は、典型的には100から1000秒、好ましくは200から800秒、より好ましくは約250から約750秒である。いくつかの実施形態において、100から400秒、好ましくは200から300秒、より好ましくは約250秒のステップ時間が好適である。他の実施形態において、600から900秒、好ましくは700から800秒、より好ましくは約750秒のステップ時間が好適である。
【0078】
本発明の方法において、実移動床式クロマトグラフィーが好適である。
【0079】
実および擬似移動症システムについてそのような技術分野で既知の従来の吸着剤を本発明の方法に使用することができる。各クロマトグラフ用カラムは、同一の吸着剤または異なる吸着剤を含有してもよい。典型的には、各カラムは同一の吸着剤を含有する。そのような一般に使用される材料の例は、ポリマービーズ、好ましくはDVB(ジビニルベンゼン)と網状化したポリスチレン;およびシリカゲル、好ましくはC8またはC18アルカン、特にC18アルカンを含む逆相結合シリカゲルである。C18結合逆相シリカゲルが好適である。本発明の方法に使用される吸着剤は、好ましくは非極性である。
【0080】
吸着剤固定相材料の形は、例えば、球状または非球状ビーズ、好ましくは実質的に球状のビーズであってもよい。そのようなビーズは、典型的には40から500ミクロン、好ましくは100から500ミクロン、より好ましくは250から500ミクロン、さらにより好ましくは250から400ミクロン、最も好ましくは250から350ミクロンの直径を有する。これらの好適な粒径は、擬似および実移動床法において従来使用されてきたビーズの粒径より幾分大きい。より大きな粒子を使用することによって、システムで使用する溶離剤の圧力を低下させることができる。このことは、一方で、コスト節約、効率性および装置の寿命の点で利点を有する。意外にも、大きな粒径の吸着剤ビーズを、分解能の低下をもたらすことなく、(それらの付随する利点とともに)本発明の方法に使用できることが判明した。
【0081】
吸着剤は、典型的には10から50nm、好ましくは15から45nm、より好ましくは20から40nm、最も好ましくは25から35nmの孔径を有する。
【0082】
本発明の方法に使用される溶離剤は、水性アルコールである。水性アルコールは、典型的には水および1つまたは複数の短鎖アルコールを含有する。短鎖アルコールは、典型的には、1から6個の炭素原子を有する。好適なアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。メタノールおよびエタノールが好適である。メタノールがより好適である。
【0083】
典型的には、溶離剤は超臨界状態でない。典型的には、溶離剤は液体である。
【0084】
典型的には、装置全体における溶離剤の平均水:アルコール比は、0.1:99.9から9:91容量部、好ましくは0.25:99.75から7:93容量部、より好ましくは0.5:99.5から6:94容量部である。
【0085】
典型的には、帯域の各々における溶離剤の溶離力が異なる。好ましくは、第1の帯域における溶離剤の溶離力は、第2の帯域およびそれ以降の帯域における溶離剤の溶離力より大きい。実際、これは、各帯域における水およびアルコールの相対量を変化させることによって達成される。アルコールは、一般に、水より強力な脱着剤である。したがって、第1の帯域の溶離剤におけるアルコールの量は、典型的には、第2の帯域およびそれ以降の帯域の溶離剤におけるアルコールの量より多い。
【0086】
各帯域に存在する水性アルコールが異なる水・アルコール含有量を有する実施形態において、第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、典型的には0:100から5:95容量部、好ましくは0.1:99.9から2.5:97.5容量部、より好ましくは0.25:99.75から2:98容量部、最も好ましくは0.5:99.5から1.5:98.5容量部である。これらの実施形態において、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、典型的には3:97から7:93容量部、好ましくは4:96から6:94容量部、より好ましくは4.5:95.5から5.5:94.5容量部である。
【0087】
各帯域に存在する水性アルコールが異なる水・アルコール含有量を有する特に好適な実施形態において、第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、0.5:99.5から1.5:98.5容量部であり、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、4.5:95.5から5.5:94.5容量部である。
【0088】
各帯域における抽出液流および抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度が、PUFA生成物を各帯域において供給混合物の異なる成分から分離できるように調整される実施形態において、各帯域における溶離剤の水:アルコール比は同一であっても異なっていてもよい。典型的には、各帯域における溶離剤の水:アルコール比は、0.5:99.5から5.5:94.5容量部である。一実施形態において、第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比より小さい。別の実施形態において、第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比より大きい。さらなる実施形態において、第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比と同じである。
【0089】
以上に挙げた各帯域における水とアルコールとの比は、帯域の総計内の平均の比であることが理解されるであろう。
【0090】
典型的には、各帯域における溶離剤の水:アルコール比は、それらの帯域における1つまたは複数のカラム内に水および/またはアルコールを導入することによって制御される。したがって、例えば、第1の帯域において第2の帯域より小さい水:アルコール比を達成するために、水は、典型的には、第2の帯域内に導入されるよりも緩慢に第1の帯域内に導入される。いくつかの実施形態において、本質的に純粋なアルコールおよび本質的に純粋な水を各帯域における異なる点に導入することができる。これらの2つの液流の相対的流速は、帯域の全体的な溶媒プロファイルを決定づけることになる。他の実施形態において、異なるアルコール/水混合物を各帯域における異なる点に導入することができる。それは、各アルコール/水混合物が異なるアルコール:水比を有する2つ以上の異なるアルコール/水混合物を帯域内に導入することを含む。本実施形態におけるアルコール/水混合物の相対的流速および相対的濃度は、帯域の全体的な溶媒プロファイルを決定づけることになる。各帯域における溶離剤の水:アルコール比が同一である他の実施形態において、同一のアルコール/水混合物が各帯域に導入される。
【0091】
典型的には、本発明の方法は、15から55℃、好ましくは20から40℃、より好ましくは約30℃で実施される。したがって、該方法は、典型的には室温で実施されるが、高温で実施されてもよい。
【0092】
本発明の方法は、供給流を1つの帯域(例えば第1の帯域)内に導入し、PUFA生成物が豊富な第1の中間流を収集し、第1の中間流を別の帯域(例えば第2の帯域)内に導入することを含む。したがって、装置が2つの帯域を有する場合は、該方法は、(a)第1の中間流を第1の帯域から収集して、それを第2の帯域内に導入し、または(b)第1の中間流を第2の帯域から収集して、それを第1の帯域内に導入することを含む。このようにして、PUFA生成物を、単一の方法で、より極性の高い成分およびより極性の低い成分の両方から分離することができる。
【0093】
(a)より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含有する抽残液流を第1の帯域におけるカラムから収集して、第2の帯域における隣接しないカラムに導入し、または(b)より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含有する抽出液流を第2の帯域におけるカラムから収集して、第1の帯域における隣接しないカラムに導入する。
【0094】
特に好適な実施形態において、装置は、2つの帯域を有し、本発明の方法は、
(i)供給混合物を第1の帯域内に導入し、PUFA生成物が豊富な第1の抽残液流、およびPUFA生成物が欠如した第1の抽出液流を除去すること、および
(ii)第1の抽残液流を第2の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第2の抽残液流を除去し、第2の抽出液流を収集してPUFA生成物を得ること
を含む。
【0095】
この特に好適な実施形態は、供給混合物からEPAを精製するのに好適である。
【0096】
この特に好適な実施形態を図2に示す。PUFA生成物(B)、ならびにより極性の高い成分(C)およびより極性の低い成分(A)を含む供給混合物Fが第1の帯域内に導入される。第1の帯域において、より極性の低い成分(A)は、抽出液流E1として除去される。PUFA生成物(B)およびより極性の高い成分(C)は、抽残液流R1として除去される。次いで、抽残液流R1は、第2の帯域内に導入される。第2の帯域において、より極性の高い成分(C)は、抽残液流R2として除去される。PUFA生成物(B)は、抽出液流E2として収集される。
【0097】
本実施形態を図4により詳細に示す。図4は、各帯域内へのアルコール脱着剤(D)および水(W)の導入点が示されていることを除いては図2と同じである。アルコール脱着剤(D)および水(W)は、一緒になって溶離剤を構成する。(D)相は、典型的には本質的に純粋なアルコールであるが、一部の実施形態では、主としてアルコールを含むアルコール/水混合物であってもよい。(W)相は、典型的には本質的に純粋な水であるが、一部の実施形態では、主として水を含むアルコール/水混合物、例えば、98%の水と2%のメタノールとの混合物であってもよい。
【0098】
この特に好適な実施形態のさらなる実例を図6に示す。ここで、個別の水注入点が存在しないが、その代わりに水性アルコール脱着剤が(D)に注入される。
【0099】
各帯域内における溶離剤の脱着力を変化させることによって、抽残液流および抽出液流への分離を促進させることができる。これを、溶離剤のアルコール(またはアルコールリッチの)成分および水(または水リッチの)成分を各帯域における異なる点に導入することによって達成することができる。したがって、典型的には、システムにおける溶離剤の流れに対して、アルコールは、抽出液分岐点の上流に導入され、水は、抽出液分岐点と帯域への供給物の導入点との間に導入される。これを図4に示す。
【0100】
あるいは、2つの帯域から抽出液流および抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度を変更することによって、分離を促進させることができる。
【0101】
典型的には、この特に好適な実施形態において、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より速く、または第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、第2の帯域におけるそれより小さい。
【0102】
この特に好適な実施形態において、第1の帯域における第1の抽残液流は、典型的には、第1の帯域における溶離剤の流れに関して第1の帯域内への供給混合物の導入点の下流で除去される。
【0103】
この特に好適な実施形態において、第1の帯域における第1の抽出液流は、典型的には、第1の帯域における溶離剤の流れに関して第1の帯域内への供給混合物の導入点の上流で除去される。
【0104】
この特に好適な実施形態において、第2の帯域における第2の抽残液流は、典型的には、第2の帯域における溶離剤の流れに関して第2の帯域内への第1の抽残液流の導入点の下流で除去される。
【0105】
この特に好適な実施形態において、第2の帯域における第2の抽出液流は、典型的には、第2の帯域における溶離剤の流れに関して第2の帯域内への第1の抽残液流の導入点の上流で収集される。
【0106】
典型的には、この特に好適な実施形態において、アルコールまたは水性アルコールは、第1の帯域における溶離剤の流れに関して第1の抽出液流の除去点の上流で第1の帯域内に導入される。
【0107】
典型的には、この特に好適な実施形態において、水が第1の帯域内に導入される場合は、水は、第1の帯域における溶離剤の流れに関して、供給混合物の導入点の上流であるが、第1の抽出液流の除去点の下流で第1の帯域内に導入される。
【0108】
典型的には、この特に好適な実施形態において、アルコールまたは水性アルコールは、第2の帯域における溶離剤の流れに関して第2の抽出液流の除去点の上流で第2の帯域内に導入される。
【0109】
典型的には、この特に好適な実施形態において、水が第2の帯域内に導入される場合は、水は、第2の帯域における溶離剤の流れに関して、第1の抽残液流の導入点の上流であるが、第2の抽出液流の除去点の下流で第2の帯域内に導入される。
【0110】
別の特に好適な実施形態において、装置は、2つの帯域を有し、該方法は、
(i)供給混合物を第2の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第1の抽残液流、およびPUFA生成物が豊富な第1の抽出液流を除去すること、および
(ii)第1の抽出液流を第1の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第2の抽出液流を除去し、第2の抽残液流を収集してPUFA生成物を得ること
を含む。
【0111】
この特に好適な実施形態は、供給混合物からDHAを精製するのに好適である。
【0112】
本実施形態を図3に示す。PUFA生成物(B)、ならびにより極性の高い成分(C)およびより極性の低い成分(A)を含む供給混合物Fが、第2の帯域内に導入される。第2の帯域において、より極性の高い成分(C)が抽残液流R1として除去される。PUFA生成物(B)およびより極性の低い成分(A)が抽出液流E1として収集される。次いで、抽出液流E1が第1の帯域内に導入される。第1の帯域において、より極性の低い成分(A)が抽出液流E2として除去される。PUFA生成物(B)が抽残液流R2として収集される。
【0113】
本実施形態を図5により詳細に示す。図5は、各帯域内への短鎖アルコール脱着剤(D)および水(W)の導入点が示されていることを除いては、図3と同じである。上記のように、(D)相は、典型的には本質的に純粋なアルコールであるが、一部の実施形態においては、主としてアルコールを含むアルコール/水混合物であってもよい。(W)相は、典型的には本質的に純粋な水であるが、主として水を含むアルコール/水混合物、例えば、98%の水と2%のメタノールとの混合物であってもよい。
【0114】
この特に好適な実施形態のさらなる実例を図7に示す。ここで、個別の水注入点が存在しないが、その代わりに水性アルコール脱着剤が(D)に注入される。
【0115】
典型的には、本実施形態において、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再導入される速度は、第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再導入される速度より速く、または第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比は、第2の帯域におけるそれより低い。
【0116】
この第2の特に好適な実施形態において、第2の帯域における第1の抽残液流は、典型的には、第2の帯域における溶離剤の流れに関して、第2の帯域内への供給混合物の導入点の下流で除去される。
【0117】
この第2の特に好適な実施形態において、第2の帯域における第1の抽出液流は、典型的には、第2の帯域における溶離剤の流れに関して、第2の帯域内への供給混合物の導入点の上流で収集される。
【0118】
この第2の特に好適な実施形態において、第1の帯域における第2の抽残液流は、典型的には、第1の帯域における溶離剤の流れに関して、第1の帯域内への第1の抽出液流の導入点の下流で収集される。
【0119】
この第2の特に好適な実施形態において、第1の帯域における第2の抽出液流は、典型的には、第1の帯域における溶離剤の流れに関して、第1の帯域内への第1の抽出液流の導入点の上流で除去される。
【0120】
典型的には、この第2の特に好適な実施形態において、アルコールまたは水性アルコールは、第2の帯域における溶離剤の流れに関して、第1の抽出液流の除去点の上流で第2の帯域内に導入される。
【0121】
典型的には、この第2の特に好適な実施形態において、水が第2の帯域内に導入される場合は、水は、第2の帯域における溶離剤の流れに関して、供給混合物の導入点の上流であるが、第1の抽出液流の除去点の下流で第2の帯域内に導入される。
【0122】
典型的には、この第2の特に好適な実施形態において、アルコールまたは水性アルコールは、第1の帯域における溶離剤の流れに関して、第2の抽出液流の除去点の上流で第1の帯域内に導入される。
【0123】
典型的には、この第2の特に好適な実施形態において、水が第1の帯域内に導入される場合は、水は、第1の帯域における溶離剤の流れに関して、第1の抽残液流の導入点の上流であるが、第2の抽出液流の除去点の下流で第1の帯域内に導入される。
【0124】
本発明の好適な実施形態において、擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置は、15個のクロマトグラフ用カラムからなる。これらは、カラム1から15と称する。それら15個のカラムは、カラム1の底部がカラム2の頂部に連結され、カラム2の底部がカラム3の頂部に連結されるという具合に連結されるように直列に配列される。これは、場合により保持容器を介するものであり、再循環流を次のカラム内に流入させてもよい。システムを通じての溶離剤の流れは、カラム1からカラム2、カラム2からカラム3という具合に流れる。システムを通じての吸着剤の流れは、カラム15からカラム14、カラム14からカラム13という具合に流れる。
【0125】
最も好適な実施形態において、第1の帯域は、典型的には、以上に記載したように接続された8個の隣接するカラム、すなわちカラム1から8からなる。この最も好適な実施形態において、第2の帯域は、典型的には、以上に記載したように接続された7個のカラム、すなわちカラム9から15からなる。疑問を回避するために、第1の帯域におけるカラム8の底部が、第2の帯域におけるカラム9の頂部に連結される。
【0126】
最も好適な実施形態を図8に示す。PUFA生成物(B)、ならびにより極性の高い成分(C)およびより極性の低い成分(A)を含む供給混合物Fが、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。アルコール脱着剤が、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。水が、第1の帯域におけるカラム4の頂部に導入される。第1の帯域において、より極性の低い成分(A)が、カラム2の底部から抽出液流E1として除去される。PUFA生成物(B)およびより極性の高い成分(C)が、カラム7の底部から抽残液流R1として除去される。次いで、抽残液流R1が、第2の帯域のカラム13の頂部に導入される。アルコール脱着剤が、第2の帯域におけるカラム9の頂部に導入される。水が、第2の帯域におけるカラム12の頂部に導入される。第2の帯域において、より極性の高い成分(C)が、カラム15の底部で抽残液流R2として除去される。PUFA生成物(B)が、カラム10の底部で抽出液流E2として収集される。
【0127】
この最も好適な実施形態において、アルコールは、典型的には、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。
【0128】
この最も好適な実施形態において、水は、典型的には、第1の帯域におけるカラム4の頂部に導入される。
【0129】
この最も好適な実施形態において、アルコールは、典型的には、第2の帯域におけるカラム9の頂部に導入される。
【0130】
この最も好適な実施形態において、アルコールは、典型的には、第2の帯域におけるカラム12の頂部に導入される。
【0131】
この最も好適な実施形態において、供給流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。
【0132】
この最も好適な実施形態において、第1の抽残液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム7の底部から収集され、第2の帯域におけるカラム13の頂部に導入される。第1の抽残液流は、カラム13に導入される前に、場合により容器内に収集されてもよい。
【0133】
この最も好適な実施形態において、第1の抽出液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム2の底部から除去される。第1の抽出液流は、場合により、容器内に収集され、第1の帯域におけるカラム3の頂部に再導入されてもよい。
【0134】
この最も好適な実施形態において、第2の抽残液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム15の底部から除去される。
【0135】
この最も好適な実施形態において、第2の抽出液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム10の底部から収集される。この第2の抽出液流は、典型的には、精製PUFA生成物を含む。第2の抽出液流は、場合により、容器内に収集され、第2の帯域におけるカラム11の頂部に再導入されてもよい。
【0136】
典型的には、この最も好適な実施形態において、第1の帯域における水:アルコール比は、第2の帯域における水:アルコール比より小さい。
【0137】
さらなる最も好適な実施形態を図9に示す。PUFA生成物(B)、ならびにより極性の高い成分(C)およびより極性の低い成分(A)を含む供給混合物Fが、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。水性アルコール脱着剤が、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。第1の帯域において、より極性の低い成分(A)が、カラム2の底部から抽出液流E1として除去される。PUFA生成物(B)およびより極性の高い成分(C)が、カラム7の底部から抽残液流R1として除去される。次いで、抽残液流R1が第2の帯域のカラム12の頂部に導入される。水性アルコール脱着剤が、第2の帯域におけるカラム9の頂部に導入される。第2の帯域において、より極性の高い成分(C)が、カラム14の底部で抽残液流R2として除去される。PUFA生成物(B)が、カラム10の底部で抽出液流E2として収集される。
【0138】
この最も好適な実施形態において、水性アルコールは、典型的には、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。
【0139】
この最も好適な実施形態において、水性アルコールは、典型的には、第2の帯域におけるカラム9の頂部に導入される。
【0140】
この最も好適な実施形態において、供給流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。
【0141】
この最も好適な実施形態において、第1の抽残液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム7の底部から収集され、第2の帯域におけるカラム12の頂部に導入される。第1の抽残液流は、カラム12に導入される前に、場合により容器内に収集されてもよい。
【0142】
この最も好適な実施形態において、第1の抽出液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム2の底部から除去される。第1の抽出液流は、場合により、容器内に収集され、一部が第1の帯域におけるカラム3の頂部に再導入されてもよい。第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、液体がこの容器からカラム3の頂部にポンプで導入される速度である。
【0143】
この最も好適な実施形態において、第2の抽残液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム14の底部から除去される。
【0144】
この最も好適な実施形態において、第2の抽出液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム10の底部から収集される。この第2の抽出液流は、典型的には、精製PUFA生成物を含有する。第2の抽出液流は、場合により、容器内に収集され、一部が第2の帯域におけるカラム11の頂部に再導入されてもよい。第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度は、液体がこの容器からカラム11の頂部にポンプで導入される速度である。
【0145】
この最も好適な実施形態において、第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、典型的には、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より速い。
【0146】
この最も好適な実施形態において、水性アルコール溶離剤は、各帯域において実質的に同一である。
【0147】
本発明のさらなる好適な実施形態において、擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置は、19個のクロマトグラフ用カラムからなる。これらは、カラム1から19と称する。それら15個のカラムは、カラム1の底部がカラム2の頂部に連結され、カラム2の底部がカラム3の頂部に連結されるという具合に連結されるように直列に配列される。システムを通じての溶離剤の流れは、カラム1からカラム2、カラム2からカラム3という具合に流れる。システムを通じての吸着剤の流れは、カラム19からカラム18、カラム18からカラム17という具合に流れる。
【0148】
本実施形態において、第1の帯域は、典型的には、以上に記載したように接続された10個の隣接するカラム、すなわちカラム1から10からなる。第2の帯域は、典型的には、以上に記載したように接続された8個のカラム、すなわちカラム11から19からなる。
【0149】
このさらなる好適な実施形態を図10に示す。PUFA生成物(B)、ならびにより極性の高い成分(C)およびより極性の低い成分(AおよびA’)を含む供給混合物Fが、第1の帯域におけるカラム7の頂部に導入される。100%のアルコールを含む第1の脱着剤(D1)が、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。水/アルコール混合物(好ましくは2%のメタノールと98%の水)を含む第2の脱着剤(D2)が、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。第1の帯域において、より極性の低い成分(A’)および(A)が、それぞれカラム1および4の底部から抽出液流E1’およびE1として除去される。PUFA生成物(B)およびより極性の高い成分(C)が、カラム10の底部から抽残液流R1として除去される。次いで、抽残液流R1が第2の帯域のカラム17の頂部に導入される。水/アルコール混合物(好ましくは2%のメタノールと98%の水)を含む第2の脱着剤(D2)が、第2の帯域におけるカラム11の頂部に導入される。第2の帯域において、より極性の高い成分(C)が、カラム19の底部で抽残液流R2として除去される。PUFA生成物(B)が、カラム14の底部で抽出液流E2として収集される。
【0150】
この好適な実施形態において、アルコールは、典型的には、第1の帯域におけるカラム1の頂部に導入される。
【0151】
この好適な実施形態において、2%のMeOHと98%の水との混合物は、典型的には、第1の帯域におけるカラム5の頂部に導入される。
【0152】
この好適な実施形態において、2%のMeOHと98%の水との混合物は、典型的には、第2の帯域におけるカラム11の頂部に導入される。
【0153】
この好適な実施形態において、供給流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム7の頂部に導入される。
【0154】
この好適な実施形態において、第1の抽残液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム10の底部から収集され、第2の帯域におけるカラム17の頂部に導入される。第1の抽残液流は、カラム17に導入される前に、場合により容器内に収集されてもよい。
【0155】
この好適な実施形態において、抽出液流は、典型的には、第1の帯域におけるカラム1および4の底部から除去される。カラム4の底部から収集された抽出液流は、場合により、容器内に収集され、第1の帯域におけるカラム5の頂部に再導入されてもよい。
【0156】
この好適な実施形態において、第2の抽残液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム19の底部から除去される。
【0157】
この好適な実施形態において、第2の抽出液流は、典型的には、第2の帯域におけるカラム14の底部から収集される。この第2の抽出液流は、典型的には、精製PUFA生成物を含む。第2の抽出液流は、場合により、容器内に収集され、第2の帯域におけるカラム15の頂部に再導入されてもよい。
【0158】
典型的には、この最も好適な実施形態において、第1の帯域における水:アルコール比は、第2の帯域における水:アルコール比より小さい。
【0159】
本発明の方法は、従来のクロマトグラフ技術を用いた場合よりはるかに高純度のPUFA生成物を達成することを可能にする。本発明の方法によって製造されたPUFA生成物は、既知の技術によって調製された油に認められるものとは全く異なる特に有利な不純物プロファイルをも有する。したがって、本発明は、また、PUFA生成物、例えば、本発明の方法によって得られるPUFA生成物を含む組成物に関する。
【0160】
したがって、一実施形態において、本発明は、また、PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物がEPAであり、PUFA生成物が93重量%を超える量で存在し、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量が0.40重量%までである組成物を提供する。
【0161】
本明細書に使用されているように、成分の重量%は、組成物の全重量に対するものである。
【0162】
PUFA生成物およびω−6PUFAは、場合により、それらのアルキルエステル、典型的にはエチルエステルの形である。好ましくは、EPA PUFA生成物は、そのエチルエステルの形である。
【0163】
典型的には、本実施形態において、EPA PUFA生成物は、94重量%を超える量、好ましくは95重量%を超える量、より好ましくは96重量%を超える量、さらにより好ましくは97重量%を超える量、最も好ましくは98重量%を超える量で存在する。
【0164】
本実施形態におけるω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、0.40重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のω−6多価不飽和脂肪酸を含む。典型的には、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、0.35重量%まで、好ましくは0.3重量%まで、より好ましくは0.25重量%まで、最も好ましくは0.22重量%までである。典型的には、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0165】
典型的には、本実施形態において、アラキドン酸の含有量は、0.25重量%まで、好ましくは0.24重量%まで、より好ましくは0.23重量%まで、最も好ましくは0.22重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のアラキドン酸を含む。典型的には、アラキドン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0166】
典型的には、本実施形態において、ω−3多価不飽和脂肪酸の総含有量は、97重量%を超え、好ましくは97.5重量%を超え、より好ましくは97.9重量%を超える。一部の実施形態において、ω−3多価不和脂肪酸の総含有量は、99重量%を超える。
【0167】
典型的には、本実施形態において、DHAの総含有量は、1重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、より好ましくは0.3重量%まで、最も好ましくは0.2重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のDHAを含む。典型的には、DHAの総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0168】
典型的には、本実施形態において、DHAの総含有量は、0.2重量%まで、好ましくは0.175重量%まで、より好ましくは0.16重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のDHAを含む。典型的には、DHAの総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0169】
典型的には、本実施形態において、α−リノレン酸の総含有量は、1重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、より好ましくは0.3重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のα−リノレン酸を含む。典型的には、α−リノレン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0170】
典型的には、本実施形態において、α−リノレン酸の総含有量は、0.35重量%まで、好ましくは0.3重量%まで、より好ましくは0.29重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のα−リノレン酸を含む。典型的には、α−リノレン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0171】
典型的には、本実施形態において、ステアリドン酸の総含有量は、1重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、より好ましくは0.3重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のステアリドン酸を含む。典型的には、ステアリドン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0172】
典型的には、本実施形態において、ステアリドン酸の総含有量は、0.4重量%まで、好ましくは0.35重量%まで、より好ましくは0.34重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のステアリドン酸を含む。典型的には、ステアリドン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0173】
典型的には、本実施形態において、エイコサテトラエン酸の総含有量は、1重量%まで、好ましくは0.75重量%まで、より好ましくは0.5重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のエイコサテトラエン酸を含む。典型的には、エイコサテトラエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0174】
典型的には、本実施形態において、エイコサテトラエン酸の総含有量は、0.5重量%まで、好ましくは0.475重量%まで、より好ましくは0.46重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のエイコサテトラエン酸を含む。典型的には、エイコサテトラエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0175】
典型的には、本実施形態において、ドコサペンタエン酸の総含有量は、1重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、より好ましくは0.3重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のドコサペンタエン酸を含む。典型的には、ドコサペンタエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0176】
典型的には、本実施形態において、ドコサペンタエン酸の総含有量は、0.4重量%まで、好ましくは0.35重量%まで、より好ましくは0.33重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のドコサペンタエン酸を含む。典型的には、ドコサペンタエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0177】
本実施形態において、組成物は、好ましくは、96.5重量%を超えるEPA、1重量%までのDHA、1重量%までのα−リノレン酸、1重量%までのステアリドン酸、1重量%までのエイコサテトラエン酸、1重量%までのドコサペンタエン酸および0.25重量%までのアラキドン酸を含む。
【0178】
本実施形態において、組成物は、好ましくは、96.5重量%を超えるEPA、0.2重量%までのDHA、0.3重量%までのα−リノレン酸、0.4重量%までのステアリドン酸、0.5重量%までのエイコサテトラエン酸、0.35重量%までのドコサペンタエン酸および0.25重量%までのアラキドン酸を含む。
【0179】
本実施形態において、組成物は、より好ましくは、96.5から99重量%のEPA、0.6重量%までのDHA、0.6重量%までのα−リノレン酸、0.15から0.6重量%のステアリドン酸、0.1から0.75重量%のエイコサテトラエン酸、0.6重量%までのドコサペンタエン酸および0.6重量%までのアラキドン酸を含む。
【0180】
本実施形態において、組成物は、より好ましくは、96.5から99重量%のEPA、0.2重量%までのDHA、0.3重量%までのα−リノレン酸、0.15から0.4重量%のステアリドン酸、0.1から0.5重量%のエイコサテトラエン酸、0.35重量%までのドコサペンタエン酸および0.25重量%までのアラキドン酸を含む。
【0181】
本実施形態において、組成物は、最も好ましくは、98から99重量%のEPA、0.1から0.3重量%のDHA、0.3から0.35重量%のステアリドン酸、0.1から0.3重量%のエイコサテトラエン酸および0.3から0.35重量%のドコサペンタエン酸を含む。
【0182】
本実施形態において、組成物は、最も好ましくは、96.5から99重量%のEPA、0.1から0.5重量%のDHA、0.1から0.5重量%のステアリドン酸、0.1から0.5重量%のエイコサテトラエン酸、0.1から0.5重量%のドコサペンタエン酸および0.1から0.3重量%のアラキドン酸を含む。
【0183】
本実施形態において、組成物は、最も好ましくは、98から99重量%のEPA、0.1から0.2重量%のDHA、0.3から0.35重量%のステアリドン酸、0.1から0.2重量%のエイコサテトラエン酸および0.3から0.35重量%のドコサペンタエン酸を含む。
【0184】
本実施形態において、組成物は、最も好ましくは、96.5から97.5重量%のEPA、0.25から0.35重量%のα−リノレン酸、0.18から0.24重量%のステアリドン酸、0.4から0.46重量%のエイコサテトラエン酸および0.15から0.25重量%のアラキドン酸を含む。
【0185】
典型的には、本実施形態において、異性体不純物の含有量は1.5重量%までである。典型的には、異性体不純物の含有量は、1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.25重量%、さらにより好ましくは0.25重量%、最も好ましくは0.1重量%までである。
【0186】
さらなる実施形態において、本発明は、また、PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物が、EPAとDHAの混合物であり、(i)EPAとDHAの総含有量が80重量%以上であり、(ii)EPAの含有量が41から60重量%であり、DHAの含有量が16から48重量%であり、(iii)ω−3多価不飽和脂肪酸の総含有量が94重量%以上であり、かつ/またはω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量が4重量%までである組成物を提供する。
【0187】
PUFA生成物、ω−3およびω−6PUFAは、場合により、それらのアルキルエステル、典型的にはエチルエステルの形である。好ましくは、EPA/DHA PUFA生成物は、そのエチルエステルの形である。
【0188】
したがって、このさらなる実施形態において、組成物は、典型的には、PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物が、EPAとDHAの混合物であり、(i)EPAとDHAの総含有量が80重量%以上であり、(ii)EPAの含有量が41から60重量%であり、DHAの含有量が16から48重量%であり、(iii)ω−3多価不飽和脂肪酸の総含有量が94重量%以上である組成物である。
【0189】
あるいは、このさらなる実施形態において、組成物は、PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物が、EPAとDHAの混合物であり、(i)EPAとDHAの総含有量が80重量%以上であり、(ii)EPAの含有量が41から60重量%であり、DHAの含有量が16から48重量%であり、(iii)ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量が4重量%までである組成物である。
【0190】
典型的には、このさらなる実施形態において、EPAとDHAの総含有量は、82重量%以上、好ましくは83重量%以上、より好ましくは84重量%以上、さらにより好ましくは85重量%以上、最も好ましくは86重量%以上である。
【0191】
典型的には、このさらなる実施形態において、EPAの含有量は、41から60重量%、好ましくは45から60重量%、より好ましくは47から60重量%、さらにより好ましくは47から57重量%、最も好ましくは50から55重量%である。
【0192】
典型的には、このさらなる実施形態において、DHAの含有量は、16から48重量%、好ましくは20から45重量%、より好ましくは25から42重量%、さらにより好ましくは28から38重量%、最も好ましくは30から35重量%である。
【0193】
典型的には、このさらなる実施形態において、ω−3多価不飽和脂肪酸の総含有量は、94重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは96重量%以上、最も好ましくは97重量%以上である。
【0194】
典型的には、このさらなる実施形態において、α−リノレン酸の総含有量は、0.4重量%まで、好ましくは0.35重量%まで、より好ましくは0.31重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のα−リノレン酸を含む。典型的には、α−リノレン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.2から0.4重量%である。
【0195】
典型的には、このさらなる実施形態において、ステアリドン酸の総含有量は、1.9重量%まで、好ましくは1.5重量%まで、より好ましくは1.25重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のステアリドン酸を含む。典型的には、ステアリドン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0196】
典型的には、このさらなる実施形態において、エイコサテトラエン酸の総含有量は、2.0重量%まで、好ましくは1.9重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のエイコサテトラエン酸を含む。典型的には、エイコサテトラエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、さらにより好ましくは1.0から1.9重量%である。
【0197】
典型的には、このさらなる実施形態において、エイコサテトラエン酸の総含有量は、3.0重量%まで、好ましくは2.75重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のエイコサテトラエン酸を含む。典型的には、エイコサテトラエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらにより好ましくは2から2.75重量%である。
【0198】
典型的には、このさらなる実施形態において、ドコサペンタエン酸の総含有量は、6重量%まで、好ましくは5.5重量%まで、より好ましくは5.25重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のドコサペンタエン酸を含む。典型的には、ドコサペンタエン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは4重量%以上、さらにより好ましくは4から5.25重量%である。
【0199】
このさらなる実施形態におけるω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、典型的には4重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のω−6多価不飽和脂肪酸を含む。典型的には、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、3.75重量%まで、好ましくは3.5重量%まで、より好ましくは3.25重量%まで、さらにより好ましくは3重量%まで、最も好ましくは2.85重量%までである。典型的には、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0200】
典型的には、このさらなる実施形態において、リノール酸の総含有量は、0.5重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、より好ましくは0.25重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のリノール酸を含む。典型的には、リノール酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.15重量%以上、さらにより好ましくは0.15から0.25重量%である。
【0201】
典型的には、このさらなる実施形態において、ガンマ−リノレン酸の総含有量は、0.19重量%まで、好ましくは0.15重量%まで、より好ましくは0.1重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のガンマ−リノレン酸を含む。典型的には、ガンマ−リノレン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0202】
典型的には、このさらなる実施形態において、ジホモ−ガンマ−リノレン酸の総含有量は、0.1重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のジホモ−ガンマ−リノレン酸を含む。典型的には、ジホモ−ガンマ−リノレン酸の総含有量は、0.05重量%以上である。
【0203】
典型的には、このさらなる実施形態において、アラキドン酸の総含有量は、2.5重量%まで、好ましくは2.25重量%まで、より好ましくは2.1重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のアラキドン酸を含む。典型的には、アラキドン酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0204】
典型的には、このさらなる実施形態において、アドレン酸の総含有量は、0.1重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のアドレン酸を含む。典型的には、アドレン酸の総含有量は、0.05重量%以上である。
【0205】
典型的には、このさらなる実施形態において、ドコサペンタエン(ω−6)酸の総含有量は、0.9重量%まで、好ましくは0.75重量%まで、より好ましくは0.65重量%までである。したがって、典型的には、組成物は、これらの量までの量のドコサペンタエン(ω−6)酸を含む。典型的には、ドコサペンタエン(ω−6)酸の総含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0206】
このさらなる実施形態において、組成物は、好ましくは、50から55重量%のEPA、30から35重量%のDHA、0.4重量%までのα−リノレン酸、1.25重量%までのステアリドン酸、1.9重量%までのエイコサテトラエン酸、2.75重量%までのエイコサペンタエン酸、5.25重量%までのドコサペンタエン酸、0.25重量%までのリノール酸、0.1重量%までのガンマ−リノレン酸、0.1重量%までのジホモ−ガンマ−リノレン酸、2.1重量%までのアラキドン酸、0.1重量%までのアドレン酸および0.75重量%までのドコサペンタエン(ω−6)酸を含む。
【0207】
このさらなる実施形態において、組成物は、より好ましくは、50から55重量%のEPA、30から35重量%のDHA、0.2から0.4重量%のα−リノレン酸、1.25重量%までのステアリドン酸、1.0から1.9重量%のエイコサテトラエン酸、2から2.75重量%のエイコサペンタエン酸、4から5.25重量%のドコサペンタエン酸、0.15から0.25重量%のリノール酸、0.1重量%までのガンマ−リノレン酸、0.1重量%までのジホモ−ガンマ−リノレン酸、2.1重量%までのアラキドン酸、0.1重量%までのアドレン酸および0.75重量%までのドコサペンタエン(ω−6)酸を含む。
【0208】
典型的には、このさらなる実施形態において、異性体不純物の含有量は、1.5重量%までである。典型的には、異性体不純物の含有量は、1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.25重量%まで、さらにより好ましくは0.25重量%まで、最も好ましくは0.1重量%までである。
【0209】
本発明人らは、意外にも、既知の油と比較して、環境汚染物質が低減された油を製造できることをも見いだした。したがって、なおさらなる実施形態において、本発明は、また、本明細書に記載されているPUFA生成物を含む組成物であって、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量が0.89μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量が0.35pg/gまでであり、(c)ポリ塩素化ビフェニルの総量が0.0035mg/kgまでであり、かつ/または(d)ジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量が1pg/gまでである組成物を提供する。
【0210】
典型的には、本発明は、本明細書に記載されているPUFA生成物を含む組成物であって、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量が0.89μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量が0.35pg/gまでであり、かつ/または(d)ジオキシン、フランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量が1pg/gまでである組成物を提供する。
【0211】
なおさらなる実施形態において組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.89μg/kgまでである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のポリ芳香族炭化水素を含む。典型的には、組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.85μg/kgまで、好ましくは0.8μg/kgまで、より好ましくは0.7μg/kgまで、さらにより好ましくは0.6μg/kgまで、さらにより好ましくは0.5μg/kgまで、さらにより好ましくは0.4μg/kgまで、さらにより好ましくは0.3μg/kgまで、さらにより好ましくは0.2μg/kgまで、さらにより好ましくは0.1μg/kgまで、最も好ましくは0.05μg/kgまでである。
【0212】
典型的なポリ芳香族炭化水素は、当業者に周知であり、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、クリセン、ジベンズ(ah)アントラセン、フルオランテン、フルオリン、インデノ(1,2,3−cd)ピレン、フェナントレン、ピレン、コロネン、コラヌレン、テトラセン、ナフタレン、ペンタセン、トリフェニレンおよびオバレンを包含する。典型的には、以上に示した量は、ベンゾ[a]ピレンの含有量を指す。
【0213】
このなおさらなる実施形態におけるジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.35pg/gまでである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランを含む。典型的には、ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.325pg/gまで、好ましくは0.3pg/gまで、より好ましくは0.275pg/gまで、さらにより好ましくは0.25pg/gまで、さらにより好ましくは0.225pg/gまで、さらにより好ましくは0.2pg/gまで、最も好ましくは0.185pg/gまでである。これらの量は、WHO毒性等価係数(TEF)を使用する世界保健機構(WHO)毒性等価で表される。WHO毒性等価係数は、当業者に周知である。
【0214】
ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン(PCDD)およびポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDF)は、当業者に周知である。典型的には、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている共同体規則(EC)第1881/2006号および1883/2006号に定義されている。
【0215】
共同体規則(EC)第1881/2006号および1883/2006号に定義されているPCDD、PCDFおよびジオキシン様PCB、ならびにそれらのTEF値は以下の通りである。
【0216】
【表1】

【0217】
典型的には、PCDD、PCDFおよびジオキシン様PCBの量は、共同体規則(EC)第1881/2006号および1883/2006号に記載されている方法に従って測定される。
【0218】
なおさらなる実施形態におけるポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.0035mg/kgまでである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のポリ塩素化ビフェニルを含む。典型的には、ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.003mg/kgまで、好ましくは0.0025mg/kgまで、より好ましくは0.002mg/kgまで、さらにより好ましくは0.0015mg/kgまで、さらにより好ましくは0.001mg/kgまで、さらにより好ましくは0.00075mg/kgまで、最も好ましくは0.0007mg/kgまでである。
【0219】
ポリクロロビフェニル(PCB)は、当該技術分野で周知であり、ビフェニル、モノクロロビフェニル、ジクロロビフェニル、トリクロロビフェニル、テトラクロロビフェニル、ペンタクロロビフェニル、ヘキサクロロビフェニル、ヘプタクロロビフェニル、オクタクロロビフェニル、ノナクロロビフェニルおよびデカクロロビフェニルを含む。
【0220】
このなおさらなる実施形態におけるジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、1pg/gまでである。したがって、典型的には、組成物は、この量までの量のジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルを含む。典型的には、ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.75pg/gまで、好ましくは0.5pg/gまで、より好ましくは0.45pg/gまで、さらにより好ましくは0.4pg/gまで、さらにより好ましくは0.35pg/gまで、最も好ましくは0.3pg/gまでである。
【0221】
ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン(PCDD)、ポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDF)およびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルは、当業者に周知である。典型的には、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている共同体規則(EC)第1881/2006号および1883/2006号に定義されている通りである。
【0222】
共同体規則(EC)第1881/2006号および1883/2006号に定義されているPCDD、PCDFおよびジオキシン様PCB、ならびにそれらのTEF値は、以上に記載されている通りである。
【0223】
このなおさらなる実施形態において、好ましくは、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.05μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.2pg/gまでであり、(c)ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.0015mg/kgまでであり、かつ/または(d)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.3pg/gまでである。
【0224】
このなおさらなる実施形態において、好ましくは、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.05μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.2pg/gまでであり、かつ/または(d)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.3pg/gまでである。
【0225】
このなおさらなる実施形態において、より好ましくは、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.05μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.2pg/gまでであり、(c)ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.0015mg/kgまでであり、かつ(d)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.3pg/gまでである。
【0226】
このなおさらなる実施形態において、より好ましくは、(a)組成物におけるポリ芳香族炭化水素の総量は、0.05μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量は、0.2pg/gまでであり、かつ(d)ジオキシン、フラン、ジベンゼノ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量は、0.3pg/gまでである。
【0227】
典型的には、このなおさらなる実施形態において、異性体不純物の含有量は、1.5重量%までである。典型的には、異性体不純物の含有量は、1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.25重量%まで、さらにより好ましくは0.25重量%まで、最も好ましくは0.1重量%までである。
【0228】
本発明人らは、蒸留油に伴う異性化、過酸化およびオリゴマー化の問題を回避する高純度の油を製造できることをも見いだした。本発明のPUFA生成物に存在する異性体不純物の量は、供給混合物に存在する異性体不純物の量に依存することになる。しかし、重要なことは、蒸留と異なり、本発明の方法によって異性体不純物の量が増加しない。したがって、PUFA生成物における異性体の含有量の限度は、出発材料の異性体含有量である。出発材料に異性体が存在しなければ、得られるPUFA生成物にも異性体が実質的に存在しない。この利点は、蒸留には認められない。
【0229】
したがって、一実施形態において、本発明のクロマトグラフ分離方法は、供給混合物に存在する異性体不純物の量と比較して、PUFA生成物における異性体不純物の量を実質的に増加させない。「実質的に増加させる」とは、典型的には、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらにより好ましくは1重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下の増加を指すものと理解される。
【0230】
したがって、なおさらなる実施形態において、本発明は、また、PUFA生成物を含む組成物であって、異性体不純物の含有量が1.5重量%までである組成物を提供する。典型的には、組成物は、この量までの量の異性体不純物を含有する。典型的には、異性体不純物の含有量は、1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.25重量%まで、最も好ましくは0.1重量%までである。異性化は、蒸留による高純度DHAの調製では、分離のためにより高い温度が必要とされるため、特に問題になる。典型的には、PUFA生成物は、場合によりそのエチルエステルの形のDHAである。典型的には、組成物は、85重量%を超え、好ましくは90重量%を超え、より好ましくは92.5重量%を超え、最も好ましくは95重量%を超えるPUFA生成物を含む。好ましくは、組成物は、85重量%を超え、好ましくは90重量%を超え、より好ましくは92.5重量%を超え、最も好ましくは95重量%を超える場合によりそのエチルエステルの形のDHAを含む。本実施形態において、組成物は、典型的には、PUFA生成物としてDHAを95重量%を超える量で、場合によりそのエチルエステルの形で含み、異性体不純物の含有量は、1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.25重量%まで、最も好ましくは0.1重量%までである。
【0231】
本発明の改善された方法は、より極性の高い不純物およびより極性の低い不純物の両方を1回の処理で除去できるため、はるかに高純度のPUFA生成物を効率的に達成することを可能にする。
【0232】
本発明のPUFA生成物は、典型的には、80重量%を超え、好ましくは85重量%を超え、より好ましくは90重量%を超え、さらにより好ましくは95重量%を超え、さらにより好ましくは97重量%を超え、最も好ましくは99重量%を超える純度を有する。PUFA生成物が単一のPUFAまたはその誘導体である場合は、上記濃度は、そのPUFAまたは誘導体の濃度を指す。PUFA生成物が2つ以上、例えば2つのPUFAまたはそれらの誘導体の混合物である場合は、上記濃度は、それらのPUFAまたはそれらの誘導体の複合濃度を指す。
【0233】
本発明の方法は、また、蒸留油に伴う異性化、過酸化およびオリゴマー化の問題をも回避する。本発明のPUFA生成物は、典型的には、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の異性体不純物含有量を有する。以上に述べたように、異性体不純物は、PUFA異性体、過酸化生成物およびオリゴマー化生成物を含む。PUFA異性体は、位置異性体および/または幾何異性体を含む。EPAの位置異性体および/または幾何異性体の例としては、17E−EPA、5E−EPA、5E,8E−EPA、8E,11E−EPA、5E,14E−EPAおよび5E,8E,11E,17E−EPAが挙げられる。そのような異性体については、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWijesundera, R.C.ら、米国油脂化学協会誌、1989年、第66巻、第12号、1822〜1830頁により詳細に記載されている。
【0234】
実際、本発明の方法は、全般的に、コンピュータによって制御されることになる。したがって、本発明は、また、本明細書に記載されているクロマトグラフ装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、実行されると、装置に本発明の方法を実施するよう指示するコード手段を含有するコンピュータプログラムを提供する。
【0235】
以下の実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例1】
【0236】
図8に概略的に示されるシステムにより、固定相として結合C18シリカゲル(粒径300μm)を、溶離剤として水性メタノールを使用する実移動床式クロマトグラフィーシステムを使用して、魚油由来原料(55重量%のEPA EE、5重量%のDHA EE)を分別する。図8に示されるように、15個のカラム(直径:76.29mm、長さ:914.40mm)を縦列に接続する。
【0237】
動作パラメータおよび流速は、8つの異なる事例に対して以下の通りである。以下の条件では、EPA EEが高度な純度(GC FAMESにより85から98%)で生成される。帯域1の抽出液および抽残液、ならびに帯域2の抽出液および抽残液のGC FAMESトレースをそれぞれ図11および12に示す。
【0238】
(実施例1a)
ステップ時間:750秒
サイクル時間:200分
原料(F)供給速度:70ml/分
脱着剤(D)供給速度:850ml/分
抽出液速度:425ml/分
抽残液速度:495ml/分
【0239】
(実施例1b)
ステップ時間:250秒
サイクル時間:66.67分
原料(F)供給速度:210ml/分
脱着剤(D)供給速度:2550ml/分
抽出液速度:1275ml/分
抽残液速度:1485ml/分
【0240】
(実施例1c)
ステップ時間:500秒
サイクル時間:133.33分
原料(F)供給速度:25ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):2050ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):1125ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):925ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):950ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):1700ml/分
第2の帯域における抽出液容器蓄積速度(E2):900ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):800ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):800ml/分
【0241】
(実施例1d)
ステップ時間:250秒
サイクル時間:66.67分
原料(F)供給速度:50ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):4125ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):2250ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):1875ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):1925ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):3375ml/分
第2の帯域における抽出液容器蓄積速度(E2):1800ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):1575ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):1575ml/分
【0242】
(実施例1e)
ステップ時間:500秒
サイクル時間:133.33分
原料(F)供給速度:50ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):4000ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):2250ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):1750ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):1800ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):3200ml/分
第2の帯域における正味の抽出液蓄積速度(E2):1750ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):1450ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):1450ml/分
【0243】
(実施例1f)
ステップ時間:250秒
サイクル時間:66.67分
原料(F)供給速度:100ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):4050ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):2100ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):1950ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):2050ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):3300ml/分
第2の帯域における正味の抽出液蓄積速度(E2):1700ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):1600ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):1600ml/分
【0244】
(実施例1g)
ステップ時間:500秒
サイクル時間:133.33分
原料(F)供給速度:25ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):1275ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):750ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):550ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):575ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):1275ml/分
第2の帯域における正味の抽出液蓄積速度(E2):950ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):325ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):325ml/分
【0245】
(実施例1h)
ステップ時間:250秒
サイクル時間:66.67分
原料(F)供給速度:50ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):2550ml/分
第1の帯域における抽出液容器蓄積速度(E1):1500ml/分
第1の帯域における抽出液再循環速度(D1−E1):950ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):1000ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):2000ml/分
第2の帯域における正味の抽出液蓄積速度(E2):900ml/分
第2の帯域における抽出液再循環速度(D2−E2):600ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):600ml/分
【実施例2】
【0246】
エイコサテトラエン酸エチルエステル(ETA EE)、EPA EE、それらの異性体およびDHA EEを含む魚油由来原料を、図10に概略的に示されるシステムにより、固定相として結合C18シリカゲル(粒径40〜60μm)を、溶離剤として水性メタノールを使用する実移動床式クロマトグラフィーシステムを使用して分別した。図10に示されるように、19個のカラム(直径:10mm、長さ:250mm)を縦列に接続する。
【0247】
動作パラメータおよび流速は、以下の通りである。
【0248】
サイクル時間:600秒
原料(F)供給速度:0.5ml/分
第1の帯域への脱着剤(D1、100%のメタノール)の供給速度:6ml/分
第1の帯域への脱着剤(D2、99%のメタノール/1%の水)の供給速度:6ml/分
第1の帯域からの抽出液(E1’)速度:3ml/分
第1の帯域からの抽出液(E1)速度:1.9ml/分
第1の帯域からの抽残液(R1)速度:4.6ml/分
第2の帯域への脱着剤(D2、97%のメタノール/3%の水)の供給速度:6ml/分
第2の帯域からの抽出液(E2)速度:2.4ml/分
第2の帯域からの抽残液(R2)速度:4.6ml/分
【0249】
ここでも、EPA EEが高度な純度(90重量%を超える純度、95重量%を超える純度、98重量%を超える純度)で生成された。
【実施例3】
【0250】
図8に概略的に示されるシステムにより、固定相として結合C18シリカゲル(粒径300μm、粒子多孔度150オングストローム)を、溶離剤として水性メタノールを使用する実移動床式クロマトグラフィーシステムを使用して、魚油由来原料(55重量%のEPA EE、5重量%のDHA EE)を分別した。図8に示されるように、15個のカラム(直径:10mm、長さ:250mm)を縦列に接続する。
【0251】
動作パラメータおよび流速は、以下の通りである。
【0252】
サイクル時間:380秒
原料(F)供給速度:0.5ml/分
第1の帯域への脱着剤(D、98.5%のメタノール/1.5%の水)の供給速度:9ml/分
第1の帯域への水リッチ相(W、85%のメタノール/15%の水)の供給速度:3.1ml/分
第1の帯域からの抽出液(E1)速度:4ml/分
第1の帯域からの抽残液(R1)速度:8.6ml/分
第2の帯域への脱着剤(D、97%のメタノール/3%の水)の供給速度:10.8ml/分
第2の帯域への水リッチ相(W、85%のメタノール/15%の水)の供給速度:3.1ml/分
第2の帯域からの抽出液(E2)速度:4.1ml/分
第2の帯域からの抽残液(R2)速度:10.3ml/分
【0253】
EPA EEが高度な純度(>95%純度)で生成された。生成物のGCトレースを図13に示す。
【実施例4】
【0254】
図8に概略的に示されるシステムにより、固定相として結合C18シリカゲル(粒径300μm)を、溶離剤として水性メタノールを使用する実移動床式クロマトグラフィーシステムを使用して、魚油由来原料(70重量%のDHA EE、7重量%のEPA EE)を分別する。図8に示されるように、15個のカラム(直径:76.29mm、長さ:914.40mm)を縦列に接続する。
【0255】
動作パラメータおよび流速は、以下の通りである。
【0256】
ステップ時間:600秒
サイクル時間:160分
原料(F)供給速度:25ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):2062.5ml/分
第1の帯域における抽出液速度(E1):900ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):1187.5ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):1500ml/分
第2の帯域における抽出液速度(E2):450ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):1050ml/分
【0257】
DHA EEが高度な純度(GC FAMESにより>97%)で生成される。帯域2の抽出液のGC FAMESトレースを図14に示す。
【実施例5】
【0258】
図8に概略的に示されるシステムにより、固定相として結合C18シリカゲル(粒径300μm)を、溶離剤として水性メタノールを使用する実移動床式クロマトグラフィーシステムを使用して、魚油由来原料(33重量%のEPA EE、22重量%のDHA EE)を分別する。図8に示されるように、15個のカラム(直径:76.29mm、長さ:914.40mm)を縦列に接続する。
【0259】
動作パラメータおよび流速は、以下の通りである。
【0260】
ステップ時間:380秒
サイクル時間:101.33分
原料(F)供給速度:40ml/分
第1の帯域における脱着剤供給速度(D1):1950ml/分
第1の帯域における抽出液速度(E1):825ml/分
第1の帯域における抽残液速度(R1):1165ml/分
第2の帯域における脱着剤供給速度(D2):1425ml/分
第2の帯域における抽出液速度(E2):787.5ml/分
第2の帯域における抽残液速度(R2):637.5ml/分
【0261】
EPA EEとDHA EEとの混合物が高度な純度(EPA EEとDHA EEの合計が>80%)で生成される。
【実施例6】
【0262】
本発明による2つのPUFA生成物に存在する環境汚染物質の量と、蒸留によって調製された同様の油に存在する環境汚染物質との量を比較するための実験を実施した。それらの油の汚染物質プロファイルを以下の表1に示す。
【0263】
【表2】

【実施例7】
【0264】
本発明により調製された油に存在する異性体不純物の量を、蒸留によって調製された等量の油と比較して測定するための実験を実施した。
【0265】
本発明に従って調製されたDHAリッチの油のGCトレースを図14に示す。GCトレースには、異性体不純物の形跡が存在しない。
【0266】
蒸留によって調製された油のGCトレースを図15に示す。DHAピークより長い溶離時間の4つのピークがDHA異性体に対応する。そのGCトレースから、蒸留によって調製された油が約1.5重量%の異性体不純物を含有することが理解できる。
【実施例8】
【0267】
本発明の方法の2つのEPAリッチの生成物と、蒸留によって製造されたEPAリッチの油とを比較した。それらのPUFA成分の分析結果(重量%)を以下に示す。
【0268】
【表3】

【実施例9】
【0269】
本発明の方法のEPA/DHAリッチの生成物と、蒸留によって製造されたEPA/DHAリッチの油とを比較した。それらのPUFA成分の分析結果(重量%)を以下に示す。
【0270】
【表4】

【符号の説明】
【0271】
A より極性の低い成分
B PUFA生成物
C より極性の高い成分
D アルコール脱着剤
E1、E2 抽出液流
R1、R2 抽残液流
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和脂肪酸(PUFA)生成物を供給混合物から回収するためのクロマトグラフ分離方法であって、溶離剤として水性アルコールを含有する複数の連結クロマトグラフィーカラムを有する擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置に供給混合物を導入することを含み、前記装置は、少なくとも第1の帯域および第2の帯域を含む複数の帯域を有し、各帯域は、前記複数の連結クロマトグラフィーカラムからの液体を各帯域から収集することができる抽出液流および抽残液流を有し、(a)より極性の高い成分とともにPUFA生成物を含有する抽残液流は、第1の帯域におけるカラムから収集されて、第2の帯域における隣接しないカラムに導入され、かつ/または(b)より極性の低い成分とともにPUFA生成物を含有する抽出液流は、第2の帯域におけるカラムから収集されて、第1の帯域における隣接しないカラムに導入され、前記PUFA生成物は、各帯域において供給混合物の異なる成分から分離される、クロマトグラフ分離方法。
【請求項2】
第1の帯域からの抽出液流、第1の帯域からの抽残液流、第2の帯域からの抽出液流および第2の帯域からの抽残液流の1つまたは複数の一部が、同じ帯域内、典型的には同じ帯域の隣接するカラム内に再循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)各帯域に存在する水性アルコール溶離剤が、異なる水:アルコール比を有し、かつ/または(b)各帯域において抽出液流および抽残液流を介して収集された液体が同じ帯域内に再循環される速度が、PUFA生成物を各帯域における供給混合物の異なる成分から分離できるように調整される、請求項1または2に記載のクロマトグラフ分離方法。
【請求項4】
第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度と異なり、かつ/または第1の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽残液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度と異なる、請求項3に記載のクロマトグラフ分離方法。
【請求項5】
前記装置は、第1の帯域および第2の帯域を有し、第1の帯域において、前記PUFA生成物が、供給混合物のより極性の低い成分から分離され、第2の帯域において、前記PUFA生成物が、供給混合物のより極性の高い成分から分離される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
PUFA生成物が少なくとも1つのω−3 PUFAを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PUFA生成物がEPAおよび/またはDHAを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記PUFA生成物に加えて、さらなる二次的なPUFA生成物が前記クロマトグラフ分離方法で回収される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PUFA生成物はEPAであり、さらなる二次的なPUFA生成物はDHAである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
クロマトグラフィーカラムが、吸着剤として、実質的に球形のビーズを含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ビーズがC18結合シリカゲルから形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実質的に球形のビーズが250から500μmの直径を有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
溶離剤が水とC〜Cアルコールとの混合物である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
〜Cアルコールがメタノールまたはエタノールである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の帯域における溶離剤が、第2の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第2の帯域が、システムにおける溶離剤の流れに関して、第1の帯域の下流である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の帯域における溶離剤の水:アルコール比が、0.5:99.5から1.5:98.5容量部であり、第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比が、4.5:95:5から5.5:94.5容量部である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1の帯域および第2の帯域における溶離剤の水:アルコール比が、第1の帯域および第2の帯域における1つまたは複数のカラム内に水および/またはアルコールを導入することによって制御される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第1の帯域内に再循環される速度は、第2の帯域から抽出液流を介して収集された液体が第2の帯域内に再循環される速度より速い、請求項2から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(i)供給混合物を第1の帯域内に導入し、PUFA生成物が豊富な第1の抽残液流、およびPUFA生成物が欠如した第1の抽出液流を除去すること、および
(ii)第1の抽残液流を第2の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第2の抽残液流を除去し、第2の抽出液流を収集してPUFA生成物を得ること
を含む、請求項5から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)供給混合物を第2の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第1の抽残液流、およびPUFA生成物が豊富な第1の抽出液流を除去すること、および
(ii)第1の抽出液流を第1の帯域内に導入し、PUFA生成物が欠如した第2の抽出液流を除去し、第2の抽残液流を収集してPUFA生成物を得ること
を含む、請求項5から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
擬似または実移動床式クロマトグラフィー装置が15個のクロマトグラフ用カラム1から15を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
第1の帯域が8個の隣接するカラム1から8からなる、請求項5から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第2の帯域が7個の隣接するカラム9から15からなる、請求項5から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(a)アルコールがカラム1内に導入され、かつ/または(b)アルコールがカラム9内に導入され、かつ/または(c)水がカラム4内に導入され、かつ/または(d)水がカラム12内に導入される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
水性アルコールがカラム1および/またはカラム9内に導入される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第1の抽残液流がカラム7から収集され、カラム13内に導入される、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記装置が第1の帯域、第2の帯域および第3の帯域を有し、(a)第1の帯域における溶離剤は、第2の帯域および第3の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第1の帯域は、システムにおける溶離剤の流れに関して、第2の帯域および第3の帯域の上流であり、(b)第2の帯域における溶離剤は、第3の帯域における溶離剤より多くのアルコールを含有し、第2の帯域は、システムにおける溶離剤の流れに関して、第3の帯域の上流であり、第1の帯域において、前記PUFA生成物が、PUFA生成物より極性の低い供給混合物の成分から分離され、第2の帯域において、前記PUFA生成物が、PUFA生成物より極性が低いが、第1の帯域で分離された成分より極性が高い供給混合物の成分から分離され、第3の帯域において、前記PUFA生成物が、PUFA生成物より極性の高い供給混合物の成分から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物はEPAであり、PUFA生成物が、93重量%を超える量で存在し、ω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量が0.40重量%までである、組成物。
【請求項29】
96.5から99重量%のEPA、0.1から0.5重量%のDHA、0.1から0.5重量%のステアリドン酸、0.1から0.5重量%のエイコサテトラエン酸、0.1から0.5重量%のドコサペンタエン酸および0.1から0.3重量%のアラキドン酸を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
PUFA生成物を含む組成物であって、PUFA生成物がEPAとDHAの混合物であり、(i)EPAとDHAの総含有量が80重量%以上であり、(ii)EPAの含有量が41から60重量%であり、DHAの含有量が16から48重量%であり、(iii)ω−3多価不飽和脂肪酸の総含有量が94重量%以上であり、かつ/またはω−6多価不飽和脂肪酸の総含有量が4重量%までである、組成物。
【請求項31】
50から55重量%のEPA、30から35重量%のDHA、0.2から0.4重量%のα−リノレン酸、1.25重量%までのステアリドン酸、1.0から1.9重量%のエイコサテトラエン酸、2から2.75重量%のエイコサペンタエン酸、4から5.25重量%のドコサペンタエン酸、0.15から0.25重量%のリノール酸、0.1重量%までのガンマ−リノレン酸、0.1重量%までのジホモ−ガンマ−リノレン酸、2.1重量%までのアラキドン酸、0.1重量%までのアドレン酸および0.75重量%までのドコサペンタエン(ω−6)酸を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1、6、7および28から31のいずれか一項に記載のPUFA生成物を含む組成物であって、(a)組成物中のポリ芳香族炭化水素の総量が0.89μg/kgまでであり、(b)ジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシンおよびポリ塩素化ジベンゾフランの総量が0.35pg/gまでであり、(c)ポリ塩素化ビフェニルの総量が.0035mg/kgまでであり、かつ/または(d)ジオキシン、フラン、ジベンゾ−パラ−ジオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフランおよびジオキシン様ポリ塩素化ビフェニルの総量が1pg/gまでである組成物。
【請求項33】
PUFA生成物を含む組成物であって、異性体不純物の含有量が1.5重量%までである、組成物。
【請求項34】
請求項1から27のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、実行されると、前記装置に、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法を実施するよう指示するコード手段を含有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−516398(P2013−516398A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546499(P2012−546499)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002339
【国際公開番号】WO2011/080503
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171881)ビーエイエスエフ ファーマ(コーラニッシュ)リミテッド (2)
【Fターム(参考)】