説明

擬似脂質複合体及びこれを含む皮膚外用剤組成物

擬似セラミド及びステアリン酸を含む擬似脂質複合体、及びこれを含有する皮膚外用剤組成物が提供される。前記複合体は相安定度が非常に優れ、多量の水分及び有用活性物質を担持することができる皮膚角質層と類似した構造を有するため、これを含む組成物は、優れた皮膚保湿効果及び障壁機能の回復を有する皮膚外用剤組成物として利用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似脂質複合体及びこれを含むことにより、優れた皮膚保湿効果及び障壁機能回復を示す皮膚外用剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒト表皮の表面は、細胞増殖により基底層から生成された主な表皮成分である角質形成細胞から形成された扁平な形のケラチン蛋白質である角質細胞からなっている。これら角質細胞は、角質層に多量に存在するセラミドの二本鎖ラメラ構造に結合することにより、滑らかで弾力のある皮膚を維持するようにする。セラミドは、スフィンゴシン(sphingosine)及びスフィンゴシンやフィトスフィンゴシン(phytosphingosine)に連結された脂肪酸から構成されたスフィンゴ脂質である。角質細胞間脂質のうち約40%以上を占めるセラミドファミリーは、角質層の構造形成及び機能を調節するのにおいて必須的であるものと知られており、またその他の生理学的機能を有する。
【0003】
セラミドは、例えば損傷を受けた細胞を取り除くことにより内・外部のストレス(stress)から皮膚を保護し、老化が進行するとともに減少するようになる。その結果、水分の損失、紫外線や化学物質等の外部刺激への露出及び角質細胞の剥離現象が発生して皮膚表面は荒れるようになる。
【0004】
上記の症状は、外部からのセラミド供給により部分的に改善され得る。しかしながら、セラミド類が化粧品剤形に多量に使用された場合、剤形の不安定性及びゲル化(gelation)が発生する。
【0005】
本発明者たちは、擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸から構成された複合体が安定して水分担持能力に優れるだけでなく、これを含有する組成物が優れた皮膚保湿効果及び障壁機能の回復を示すことを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、相安定度が優れ、多量の水分及び有用活性物質を担持することが可能な皮膚角質層と類似した構造を示す擬似脂質複合体を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、優れた皮膚保湿効果及び障壁機能の回復を有する前記複合体を含む皮膚外用剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にしたがって、本発明は擬似セラミド及びステアリン酸を含む擬似脂質複合体を提供する。
【0009】
本発明の複合体において、前記擬似セラミド及びステアリン酸は複合体の総重量を基準としてそれぞれ10乃至90重量%で含まれ得る。
【0010】
本発明の複合体は、コレステロールをさらに含み得る。好ましくは、前記擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸の量は、複合体の総重量を基準としてそれぞれ10乃至80重量%、0.0001乃至30重量%、及び10乃至80重量%であり得る。
【0011】
前記他の目的にしたがって、本発明は前記したような擬似脂質複合体を含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の皮膚外用剤組成物において、前記複合体は組成物の総重量を基準として0.01乃至40重量%で含有され得る。
【0013】
前記皮膚外用剤組成物は、化粧料組成物又は薬学組成物であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の前記及び他の目的と特徴は添付の図面と共に下記本発明の説明から明確になるはずであり、各図面は次に示す。
【図1】示差走査熱量計(differential scanning calorimetry)による擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸から構成された複合体の相挙動(phase behavior)(PC104:擬似セラミド、SA:ステアリン酸、Chol:コレステロール)を示す図である。
【図2】擬似セラミド及びステアリン酸の複合体が皮膚角質と類似したラメラ構造を有することを示すX線回折分析(PC:擬似セラミド、SA:ステアリン酸)を示す図である。
【図3】擬似セラミド及びステアリン酸の複合体が4ヶ月以後にも皮膚角質と類似したラメラ構造を維持していることを示すX線回折分析(PC:擬似セラミド、SA:ステアリン酸)を示す図である。
【図4】擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸の複合体が皮膚角質と類似したラメラ構造を有することを示すX線回折分析(PC:擬似セラミド、SA:ステアリン酸、Chol:コレステロール)を示す図である。
【図5】擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸の複合体が4ヶ月以後にも皮膚角質と類似したラメラ構造を維持していることを示すX線回折分析(PC:擬似セラミド、SA:ステアリン酸、Chol:コレステロール)を示す図である。
【図6】本発明の皮膚外用剤組成物での処理時に、皮膚障壁機能が損傷したマウスにおける経表皮水分損失量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は擬似セラミド及びステアリン酸を含む擬似脂質複合体を提供する。
【0017】
本発明に使用された擬似セラミドは、例えば皮膚保護作用、水分保有能力のような特性の面において天然のセラミドと類似した合成物質である。
【0018】
このような擬似セラミドは化学式1乃至6で表される化合物のうちの一つであり得るが、これに限定される訳ではない。
【0019】
【化1】

【0020】
上記式において、RはC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式において、
nは1又は2であり、
R及びR’はそれぞれC9-C21の飽和又は不飽和脂肪族鎖である。
【0023】
【化3】

【0024】
上記式において、
m及びnはそれぞれ独立して1乃至3の整数であり、
k及びlはそれぞれ独立して1又は2であり、
jは0又は1であり、
R及びR’はそれぞれ独立して少なくとも一つのヒドロキシ基を有する、直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和C1-C31炭化水素基であり、
A1、A2及びA3はそれぞれ独立して水素又は下記構造の置換基のうちのいずれか一つであり、ただし、A1、A2及びA3が同時に水素ではない。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
上記式において、M、M1及びM2はそれぞれ独立してアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。
【0030】
【化8】

【0031】
上記式において、
R及びR’はそれぞれ独立して任意に少なくとも一つのヒドロキシ基を有する、直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和C10-C32炭化水素基であり、
R3及びR4はそれぞれ独立して水素、C1-C4アルキル基又はC1-C4ヒドロキシアルキル基であり、
R5は-A又は-CH2CH2OAであり、ここでAは下記構造の置換基のうちのいずれか一つである。
【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
上記式において、M、M1及びM2はそれぞれ独立してアルカリ金属、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、アンモニア、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及びステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれ、Lはアルカリ土類金属である。
【0039】
【化15】

【0040】
上記式において、
m及びnはそれぞれ独立して1乃至4の整数であり、
R及びR’はそれぞれ独立して任意に少なくとも一つのヒドロキシ基を有する、直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和C1-C31炭化水素基であり、
A1及びA2はそれぞれ独立して水素又は下記構造の置換基のうちのいずれか一つである。
【0041】
【化16】

【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
【化21】

【0047】
上記式において、M、M1及びM2はそれぞれ独立してアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。
【0048】
【化22】

【0049】
上記式において、
m及びnはそれぞれ独立して1乃至3の整数であり、
k及びlはそれぞれ独立して1又は2であり、
jは0又は1であり、
A1、A2及びA3はそれぞれ独立して水素又は下記構造の置換基のうちのいずれか一つである。
【0050】
【化23】

【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
上記式において、M、M1及びM2はそれぞれ独立してアルカリ金属又は窒素を含有する有機塩基であり、Lはアルカリ土類金属である。
Rは下記構造を有する置換基である。
【0055】
【化27】

【0056】
上記式において、Bはトコフェロールの5-、7-又は8-位置のメチル基であり、mは1乃至3の整数であり、Dは-CH2(CH3)-CH-又は-CH(CH3)=C-である。
【0057】
上述した化学式1乃至6の化合物は、皮膚保湿及び皮膚障壁機能の回復において優れた効果を有し、セラミドPC104、PC102、PC107等の商標名でアモレパシフィック社(韓国)を通じて利用可能である。
【0058】
本発明の複合体において前記擬似セラミドは、複合体の総重量を基準として例えば約10乃至90重量%、好ましくは40乃至70重量%で含有され得る。前記量で使用された場合、本発明の複合体は優れた相安定度及び水分担持能力を示す。したがって、本発明の複合体は皮膚保湿及び障壁機能の回復に効果的である。
【0059】
本発明で使用するステアリン酸は脂肪酸の一種であって、本発明の複合体の総重量を基準として例えば約10乃至90重量%、好ましくは40乃至70重量%で含有され得る。
【0060】
本発明の複合体は、コレステロールをさらに含み得る。
【0061】
コレステロールはセラミド、脂肪酸と共に細胞の膜系を構成する脂質成分のうちの一つであり、角質層の構造形成及び機能に重要な役割を果たす(Elias, P.M., Arch. Dermatol. Res., 270: 95-117 (1981))。
【0062】
本発明の複合体がコレステロールを含む場合、前記擬似セラミド及びステアリン酸は複合体の総重量を基準としてそれぞれ約10乃至80重量%、好ましくは約30乃至60重量%の量で使用され得、コレステロールは約0.0001乃至30重量%、好ましくは約10乃至30重量%の量で使用され得る。
【0063】
本発明の複合体において擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸の重量比は所望のセラミドの溶解度、安定性及び水分担持に応じて調整され得る。一般的に、擬似セラミド及びステアリン酸は1:1の重量比で使用され得、擬似セラミド及びコレステロールは1:0.5の重量比で使用され得る。このような混合比率は、図1に示されているように示差走査熱量計(differentialscanning calorimetry)を利用して複合体の相挙動(phase behavior)を観察することにより決定される。前記方式で結晶化や相分離を防止することができ、前記複合体は角質層と類似したラメラ構造を維持する。
【0064】
本発明の複合体は、X線回折分析の結果が示しているように、ラメラ構造を維持することができる(図2、3、4及び5を参照)。
【0065】
したがって、本発明の複合体は、二重層状のラメラ構造中に難溶性物質(例えば、セラミド3B等)を含有することができる。
【0066】
したがって、本発明の複合体は生体親和的であり、保湿に優れた効果があるだけでなく貯蔵安定性に優れている。
【0067】
本発明はまた前記複合体を含む、優れた皮膚保湿及び障壁機能の回復を示す皮膚外用剤組成物を提供し、前記複合体を組成物の総重量を基準として例えば約0.01乃至40重量%、好ましくは約0.01乃至15重量%で含有する。本発明の組成物は、優れた貯蔵安定性、皮膚保湿及び障壁機能の回復を示し、これは長期間の間維持される。
【0068】
本発明の皮膚外用剤組成物は、化粧品の製造に通常使用される基材、担体を含み得る。前記組成物は化粧料組成物、例えば柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ジェル又は他の皮膚粘着タイプの化粧料に剤形化され得るが、これに制限される訳ではない。好ましくは、前記組成物は相安定度に優れた水中油エマルジョン又は可溶化ジェルに剤形化され得る。
【0069】
前記皮膚外用剤組成物は、薬学的に許容可能な担体内に本発明の複合体が分散又は溶解した状態で存在する薬学組成物であり得、その例にはローション、溶液、ゲル、クリーム、エモリエントクリーム、軟膏、パッチ剤又は噴霧剤が挙げられる。前記薬学組成物は、例えばアトピー性皮膚炎、あせも、ただれ、凍傷、オムツによる皮膚病、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ビダール苔癬、貨幣状湿疹、主婦湿疹、日光皮膚炎、蟲刺症、皮膚焼盡症、痒疹、薬疹、中毒疹、乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、光沢苔癬、毛孔性紅粃糠疹、ジベルトバラ色粃糠疹、紅斑症、紅皮症、円板状紅斑性狼瘡、全身性紅斑性狼瘡、天疱瘡、類天疱瘡、ジューリング疱疹状皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、サルコイドーシス、皮膚アミロイドーシス、ケロイド、肥厚性瘢痕、瘡傷、褥瘡、皮膚潰瘍、脱毛、養毛又は育毛の治療及び予防に使用され得る。
【0070】
本発明の皮膚外用剤組成物はまた他の薬剤を伝達するための基材として作用し得、そのように使用された場合、薬剤に対する臨床的反応を向上させることができる。このような他の薬剤の例としては、抗炎症剤(例:コルチコステロイド、コルヒチン、スルファサラジン及びスルホン)、抗生物質(例:キノロン、マクロライド、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド及びテトラサイクリン)、抗ウイルス剤(例:アシクロビル、イドクスウリジン、ジドブジン、2’、3’-ジデオキシイノシン(ddI)、ビダラビン及びトリフルリジン)、抗疹菌剤(例:ケトコナゾール、エコナゾール、グリセオフルビン、シクロピロクス及びナフチジン)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、アステミゾール、ヒドロキシジン、ドキセピン、アミトリプチリン、シプロヘプタジン及びソジウムクロモリン)、抗そう痒剤(例:カンフル、メントール、フェノール、ベンゾカイン、ベンジルアルコール、サリチル酸、ジクロニン及びプラモキシン)、抗新生物剤(例:メトトレキセート、ピリトレキシム、シスプラチン、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、カルムスチン、ヒドロキシウレア、アザチオプリン及び窒素マスタード)、カルボン酸類似体(例:1-モノラウリン、アゼライン酸及びドデカンジオン酸)、天然又は合成ビタミン及びその類似体(例:ビタミンD、カルシポトリオール、1、25-ジヒドロキシコレカルシフェロール、レチノール、レチニルパルミテート、レチニルアスコルベート、イソトレチノイン、エトレチナート及びレチノン酸)、並びにアルテミシニン類似体(例:アルテスネイト、アルテエーテル、アルテメーテル、ジヒドロアルテミシニン及びアルテレニック酸)等がある。
【0071】
上記の薬剤以外にも、本発明の組成物はまた化粧料組成物又は薬学組成物に通常使用される他の成分を含み得る。前記他の成分の例としては、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機又は無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水等が挙げられる。
【0072】
本発明の擬似セラミドとステアリン酸、及び任意にコレステロールを含む擬似脂質複合体は相安定度が非常に優れ、多量の水分及び有用活性物質を担持することができる皮膚角質層と類似した構造を有する。これにより前記複合体を含む組成物は、皮膚への塗布時に優れた皮膚保湿効果及び障壁機能の回復を提供することによって皮膚外用剤組成物として利用され得る。特に、前記組成物は、難溶性セラミドを含有する水中油エマルジョン又は可溶化ジェルのような化粧料組成物の剤形で利用され得る。
【0073】
下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0074】
<実施例1、2及び比較例1、2>
下記表1の組成で実施例1及び比較例1の皮膚外用剤組成物を水中油エマルジョンの剤形に製造したのであり、表2の組成で実施例2及び比較例2の皮膚外用剤組成物をジェル剤形に製造した。実施例1及び2において、擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸は複合体の総重量を基準としてそれぞれ40重量%、20重量%及び40重量%(重量比:1:0.5:1)の量で使用された。
【0075】
【表1】

【0076】
<実施例1及び比較例1の製造方法>
(1)油相成分を70乃至75℃で加熱しながら均一に混合した。
(2)水相成分1を70乃至75℃で加熱しながら均一に溶解及び混合した。
(3)前記(2)の混合物に前記(1)の混合物を70乃至75℃の温度を維持した状態で撹拌して投入してエマルジョンを製造し、水相成分2を連続して投入した。得られた混合物を28乃至30℃まで冷却して水中油エマルジョンを得た。
【0077】
【表2】

【0078】
<実施例2及び比較例2の製造方法>
(1)水相成分1を30℃で均一に混合した。
(2)アルコール成分を30℃で均一に混合した。
(3)前記(1)の混合物に水相成分2を撹拌して徐々に投入した後、連続して混合物(2)を投入してジェル剤形を得た。
【0079】
<試験例1>ハツカネズミにおける皮膚障壁機能回復の評価
実施例1、2及び比較例1、2の組成物における皮膚障壁機能の回復能力を下記のように評価した。
【0080】
8乃至10週齢の若い無毛のハツカネズミ(オリエント社、韓国)の背(back)にアセトンを5日間、毎日2回ずつ周期的に塗布して皮膚障壁機能を損傷させた。
【0081】
以後、蒸発計(デルフィン社、フィンランド)で経表皮水分損失量(TransepidermalWater Loss; TEWL)を測定した。40g/m2/h以上の経皮水分損失を示すや否や、試験剤形を皮膚障壁が損傷した部位に局所的に塗布した。各試験剤形は、5cm2の面積を基準として200μlの容量で3日間、毎日2回ずつ連続塗布した。さらに、一定時間ごとにTEWLを測定し、結果を図6に示した。
【0082】
図6に示されているように、実施例1及び2の組成物で塗布した処理群が比較例1及び2を塗布した処理群に比してより早く障壁機能を回復させた。特に、実施例1及び2の組成物を塗布した場合、皮膚障壁機能の損傷12時間後に測定された経表皮水分損失量は約40%であり、これは本発明の組成物の卓越した皮膚障壁機能の回復を立証している。
【0083】
<試験例2>人体における保湿評価
前記実施例1、2及び比較例1、2で製造した水中油エマルジョン及び可溶化ジェル剤形の保湿効果を次のように試験した。
【0084】
(1)皮膚水分量
50〜60代の成人男女40名を4つの組に分け、実施例1、2及び比較例1、2の化粧料組成物を4週間、毎日2回ずつ顔面に塗布した。塗布開始前と塗布後1週間、2週間、4週間経過した時点、それと塗布を中止してから2週間が経過した時点(総6週間経過)で24℃、相対湿度40%の下で皮膚の水分量を測定するコルネオメーターを利用して皮膚の電気伝導度を測定した。表3の結果は組成物の塗布後の水分量増加を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
前記表3から分かるように、実施例1及び2の試験物質を塗布した群の水分量が、比較例1及び2を塗布した群に比してさらに高かった。また、4週間塗布を中止した後、2週間後(塗布後6週間)に測定した水分量は、1乃至2週間後に測定したものと類似した。前記結果は、本発明の組成物が塗布を中止した後にも持続的に水分を維持することができることを示す。
【0087】
(2)主観的効能評価
前記(1)の試験が終了して間もなく、本発明の組成物の効能を主観的な方式で評価した。その結果を下記表4に示した。
【0088】
【表4】

【0089】
前記表4から分かるように、実施例1及び2の組成物が皮膚乾燥症を改善した。
【0090】
本発明を前記の具体的な実施例と関連して記述したが、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の範囲内において、当分野の専門家が本発明を多様に変形及び変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似セラミド及びステアリン酸を含む擬似脂質複合体。
【請求項2】
前記擬似セラミド及びステアリン酸の含量が複合体の総重量を基準としてそれぞれ10乃至90重量%である請求項1の擬似脂質複合体。
【請求項3】
コレステロールをさらに含む請求項1の擬似脂質複合体。
【請求項4】
前記擬似セラミド、コレステロール及びステアリン酸の含量が複合体の総重量を基準としてそれぞれ10乃至80重量%、0.0001乃至30重量%、及び10乃至80重量%である請求項3の擬似脂質複合体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれかの複合体を含む皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
前記複合体が組成物の総重量を基準として0.01乃至40重量%の量で使用される請求項5の組成物。
【請求項7】
前記組成物が化粧料組成物又は薬学組成物である請求項5の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527674(P2011−527674A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517327(P2011−517327)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005144
【国際公開番号】WO2010/005144
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】