説明

擬石庭園ユニットおよびその製造方法ならびに花瓶製造方法

【課題】適度な重量感および自然石に近い自然美を有して強度が高い中空擬石を有した擬石庭園ユニットおよびその製造方法ならびに花瓶製造方法を提供する。
【解決手段】造園時、庭園空間の衝立近傍において、衝立11との対向面に開口部22を向けて複数の役石18〜20を配置する。各役石18〜20は、自然石Sから模られ、かつ内部空洞21を有したモルタル製の中空擬石ある。そのため、適度な重量感および自然石Sに近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、低コスト化も図れる組み擬石15を有した擬石庭園ユニット10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬石庭園ユニットおよびその製造方法ならびに花瓶製造方法、詳しくは天然石の風合いを有する人工の石である擬石(擬岩)が組み込まれた擬石庭園ユニットおよびその製造方法ならびに花瓶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、自然保護の観点から、例えば山や河川から造園用の自然石(自然岩)を採集することは困難になっている。また、自然石を利用した和風山水造園では、自然石の組み合わせに専門的な知識が求められ、しかも重量が嵩張る自然石を取り扱うため、リフターなどを用いる造園技術も習得しなければならない。そのため、石組みの完成間近までは、造園中の和風山水庭園の全景を把握することはできなかった。
【0003】
そこで、これらの問題点を解消する従来技術として、例えば非特許文献1が知られている。これは、FRP(繊維強化プラスチック)製の中空体の人造庭石(擬石)を使用し、和風庭園を造園するものである。人造庭石は、内部空洞に連通した開口部が底面に形成されている。
【非特許文献1】グローベン株式会社のホームページ、庭石・つくばい・灯篭、[onlin] 、〔平成18年6月1日検索〕、インターネット〈URL:http://www.globen.co.jp/waex/ishifs.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1のようなFRP製の人造庭石では、主原料がFRPだけに重量感および自然美に欠けていた。しかも、庭園の鑑賞者が人造庭石に乗ったり、座ったりしたとき、強度不足により樹脂製品の人造庭石が割れたり、凹んだりするおそれがあった。
また、上述したように、人造庭石は内部空洞に連通した開口部が底面に形成されている。そのため、完成後の庭園の景観において、鑑賞者の視界に入らない人造庭石の奥行き部分が存在することになる。その結果、庭園の設計に際して、その奥行き部分だけ面積が大きい人造庭石の設置スペースや保管スペースを確保しなければならず、コスト高となっていた。
【0005】
さらに、ビルの屋上などに坪庭を造園するとき、数個の人造庭石同士を突き合わせて滝山水などの組み人造庭石(組み擬石)を組み込むときがある。この場合、個々の人造庭石が大きいため、予め工場などで作製しておいた組み人造庭石(プレ組み擬石)を、エレベータなどで屋上階の現場まで運び上げることは困難であった。
そこで、従来の組み人造庭石の施工方法では、組み人造庭石用の各人造庭石を個別に現場まで運搬し、次に庭園空間内で、隣接するもの同士間に若干の隙間をあけて各人造庭石を位置決めし、その後、作業者がコテを使ってコーキング材を人造庭石の隙間に塗布し、それからコーキング材を固めて隣接する人造庭石同士を連結し、組み人造庭石を作製していた。
しかしながら、従来の組み人造庭石ではこのような手順で施工されていたため、隣接する人造庭石間の継ぎ目が間延びしてした。しかも、人造庭石間の連結部分は、コーキング材を材料としたコテ仕上げであるため、人造庭石とは異質の景観が生じていた。その結果、組み人造庭石全体のデザイン性が低下し、商品価値が下がっていた。
【0006】
この発明は、適度な重量感および自然石に近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、さらにコスト低減も可能な中空擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットおよびその製造方法を提供することを目的としている。
また、この発明は、隣接する中空擬石間の継ぎ目がなだらかな組み擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットを得ることができる擬石庭園ユニット製造方法を提供することを目的としている。
さらに、この発明は、適度な重量感を有し、かつ自然石に近い自然美を有した花瓶を得ることができる花瓶製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、外部から庭園空間を仕切る衝立と、前記庭園空間の衝立の近傍に配置され、かつ対応する自然石から模られて、前記衝立との対向面に内部空洞と連通した開口部を有する複数のモルタル製の中空擬石とを備えた擬石庭園ユニットである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、造園時、庭園空間の衝立近傍において、衝立との対向面に開口部を向けて複数の中空擬石を配置する。各中空擬石は、自然石から模られ、かつ内部空洞を有したモルタル製の擬石ある。そのため、適度な重量感および自然石に近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、低コスト化も図れる中空擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットを提供することができる。
【0009】
ここでいう庭園とは屋内に配置されるものでもよいし、屋外に配置されるものでもよい。具体的には、ビルの屋上、公園、住宅の部屋などに造られる庭園をいう。
擬石庭園ユニットとしては、例えば坪庭、ロックガーデン、石庭などを採用することができる。
庭園空間の大きさや形状は任意である。
衝立としては、例えばFRP製の竹垣、天然竹材の竹垣、天然生垣などを採用することができる。
また、衝立の形状としては、例えば矩形状の他、任意の形状を採用することができる。衝立は1枚物でもよいし、複数枚の衝立を例えば平面視してL字形に連結したり、平面視してコの字形に連結した組み物の衝立でもよい。
衝立の大きさは任意である。庭園空間の大きさに合わせて変更される。
【0010】
ここでいう中空擬石とは、自然の石(岩)を模し、かつ内部空洞を有した人工の石(岩)、自然の石または岩を利用して造られた人工の造形物(池、灯篭、手洗い鉢、つくばい石、塔、彫像、記念碑、風呂、石造建築物、ジオラマなど)を模し、かつ内部空洞を有した造形物などをいう。
各中空擬石の表面のうち、造園時に衝立と対向する部分に、内部空洞と連通する開口部が形成されている。中空擬石の表面における開口部の形成位置は任意である。また、開口部の大きさおよび形状は任意である。そして、中空擬石が模られる自然石の種類、形状、大きさは任意である。さらに、中空擬石の使用数も任意である。
中空擬石は隣接するもの同士を連結して組み擬石としてもよい。組み擬石としては、例えば滝山水、枯山水、洋風のロックガーデン石垣、ウォーターガーデン用の噴水の石組みなどを採用することができる。
【0011】
モルタルとは、セメント、粒径5mm以下、好ましくは1.0mm以下の細骨材(川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂など)および水を所定の配合比で混練したペースト状のものである。細骨材中には、モルタルの流動性を高めたり、固化したモルタルの強度を高めるため、粒径2mm以下のものを含有させた方が好ましい。粒径とは、85%(重量)累積粒径、すなわち、粒径の小さいものから累積していった場合に、骨材全体の85重量%に到達した時の粒径をいう。
モルタルを原料とした中空擬石および組み擬石の製造方法は任意である。組み擬石は、構成する各中空擬石を一体的に連結したものでもよいし、それぞれを分離可能に連結したものでもよい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、外部から庭園空間を衝立により仕切る衝立仕切り工程と、対応する自然石から模られ、かつ内部空洞と連通する開口部が表面の一部に形成された複数の中空擬石を、互いに分離可能に突き合わせて組み擬石を作製する組み擬石作製工程と、前記衝立との対向側に前記開口部を向けて、前記組み擬石を前記庭園空間に配置するとともに、前記組み擬石用の各中空擬石を接合する配石工程とを備えた擬石庭園ユニット製造方法であって、前記組み擬石作製工程は、前記対応する自然石の表面の一部を除く部分にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、複数の擬石原盤用雌型を作製する擬石原盤用雌型作製工程と、隣り合う前記各中空擬石を得るための前記擬石原盤用雌型のうち、一方の該擬石原盤用雌型の内周面に擬石原盤原料を塗布し、これを固めて脱型することで一方の擬石原盤を作製する一方の擬石原盤作製工程と、該一方の擬石原盤の端部の脱型面に、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、前記隣り合う各中空擬石を得るための擬石原盤用雌型のうち、他方の擬石原盤用雌型の端部を、前記対応する自然石からの脱型面とは反対側の面より外方へ外折し、この外折り部分を、前記一方の擬石原盤のうち、前記離型剤の塗布部分またはその付近に突き合わせて固定する雌型突き合わせ工程と、前記他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分の外側に、変形自在な形状補正材を当てがい、対応する突き合わせ部分をなだらかにする形状補正工程と、突き合わされた前記他方の擬石原盤用雌型の内周面と、前記一方の擬石原盤の面のうち前記離型剤の塗布部分とに跨がり擬石原盤原料を塗布し、これを固めて脱型して他方の擬石原盤を作製する他方の擬石原盤作製工程と、前記一方の擬石原盤の脱型面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、一方の擬石用雌型を作製する一方の擬石用雌型作製工程と、前記他方の擬石原盤の脱型面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、他方の擬石用雌型を作製する他方の擬石用雌型作製工程と、前記一方の擬石用雌型の内周面にモルタルを塗布し、これを養生し固化して脱型することで、一方の前記中空擬石を作製する一方の中空擬石作製工程と、前記他方の擬石用雌型の内周面にモルタルを塗布し、これを養生し固化して脱型することで、他方の前記中空擬石を作製する他方の中空擬石作製工程とを有した擬石庭園ユニット製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、庭園空間の衝立近傍に組み擬石を配置する際、各中空擬石の開口部は衝立に対向して配置される。しかも、各中空擬石は自然石から模られ、内部空洞を有したモルタル製の擬石ある。そのため、適度な重量感および自然石に近い自然美を有し、かつ高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、かつ低コスト化も図れる中空擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットを得ることができる。
また、一方の擬石原盤に、他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分を突き合わせる場合には、突き合わせ部分の外側(自然石からの剥離面とは反対側)に形状補正材を当てがい、作業者が手などで外方から形状補正材に力を作用させ、突き合わせ部分がなだらかになるようにその形状を補正(変更)する。そのため、得られた組み擬石において、隣接する中空擬石間の継ぎ目に段差が発生し難い。
【0014】
組み擬石を構成する各中空擬石は、予め工場などで作製してもよいし、現場において作製してもよい。ただし、事前の作製後、現場へ持ち込んだ方がこの発明の効果が顕著となる。
組み擬石の庭園空間での配置方法としては、中空擬石の重量を運搬可能な重量に設定することが望ましいので、例えば作業者の手作業を採用することができる。
庭園空間に配置された組み擬石を構成する各中空擬石を接合する方法としては、例えばコーキング材(ポリサルフアイド系コーキング材、ブチルゴム系コーキング材など)による接合、モルタル用の接着剤(ポリ酢酸ビニル系接着剤、ホットメルト型ポリオレフィン系接着剤、ホットメルト型合成ゴム系接着剤など)による接着を採用することができる。これらは各中空擬石を分離不能に接合する方法であるが、その他、単なる突き合わせのみによる接合(分離可能な接合)を採用してもよい。
【0015】
擬石原盤用雌型の原料となるゴム弾性材料、および、擬石用雌型の原料となるゴム弾性材料としては、例えば、シリコンゴム、イソプレインゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどを採用することができる。
両ゴム弾性材料の塗布厚さは、例えば20〜30mmである。
自然石に対する擬石原盤用雌型用のゴム弾性材料の塗布方法、および、擬石原盤に対する擬石用雌型用のゴム弾性材料の塗布方法としては、例えば手作業によるヘラ塗りを採用することができる。
【0016】
隣接して使用される擬石原盤用雌型の個数は任意である。例えば2つでもよいし、3つ以上でもよい。また、3つの擬石原盤用雌型を直列で使用する場合、一方の擬石原盤用雌型として、3つの擬石原盤用雌型のうち、中間に配置された擬石原盤用雌型を採用し、他方の擬石原盤用雌型として、その両側の擬石原盤用雌型を採用してもよい。
擬石原盤用雌型の内周面とは、自然石から剥離された面(意匠面)をいう。
各擬石原盤用雌型はゴム弾性材料が原料であるため、擬石原盤用雌型から擬石原盤を作製する前に、目的とする各中空擬石の形状に基づき、各擬石原盤用雌型の形状を修正(変更)することができる。
【0017】
擬石原盤原料としては、モルタル、FRPなどを採用することができる。
擬石原盤原料の塗布厚は、例えば素材がモルタルの場合、10〜20mmである。
擬石原盤原料の塗布方法としては、刷毛塗り、リシンガンなどによるスプレー塗布、ヘラ塗りなどを採用することができる。
離型剤が塗布されるのは、一方の擬石原盤のうち、少なくともその端部の脱型面(擬石原盤用雌型からの剥がし面)である。
離型剤としては、例えば石鹸水、鉱物系の離型剤(例えばオイル)などを採用することができる。
【0018】
他方の擬石原盤用雌型の外折り部分が突き合わされるのは、一方の擬石原盤のうち、離型剤の塗布部分でもよいし、この塗布部分の近辺でもよい。
他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分の外側とは、他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分のうち、自然石から剥離された意匠面とは反対側をいう。
形状補正材としては、例えばモルタル、コンクリートなどの水硬性材料を含む流動体を採用することができる。その他、セラミックス粉などの粉体や砂などの粒体などからなる流動性を有する充填物を袋詰めしたものなどを採用することができる。
【0019】
形状補正材の使用量(使用数)は任意である。形状補正材が袋物の場合、その大きさや袋から充填剤を抜いた形状は任意である。
対応する突き合わせ部分をなだらかにするとは、突き合わせ部分と一方の擬石原盤との継ぎ目に段差が生じないようにすることをいう。すなわち、突き合わ部分が形状補正された他方の擬石原盤用雌型の内周面と、一方の擬石原盤の離型剤の塗布部分とに跨がった擬石原盤原料を作製するので、得られた一方の擬石原盤と他方に擬石原盤との継ぎ目に段差が発生し難い。
【0020】
モルタル(フレッシュモルタル/生モルタル)が塗布される擬石用雌型の内周面とは、擬石原盤用雌型の意匠面が転写された擬石原盤の外周面(1回目の転写意匠面)から剥ぎ取られた面(2回目の転写意匠面)をいう。
モルタルの構成原料の配合比は任意である。
モルタルの塗布厚は、例えば10〜20mmである。
モルタル用のセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメントを採用することができる。その他、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントでもよい。
【0021】
モルタルには、例えば有機質繊維といった繊維状物質を混入してもよい。このように、モルタルに繊維状物質を含ませることで、中空擬石の曲げ強度を高め、数百μm〜数mmのマイクロクラックの伝播を抑制し、構造的欠陥を未然に防ぐことができる。その結果、薄肉な中空擬石であっても、擬石としての使用に十分耐えられる強度が得られる。
【0022】
有機質繊維としては、例えば、ナイロン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維、炭素繊維などを採用することができる。有機質繊維の寸法は、例えば、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmである。直径が0.01mm未満では、繊維自体の強度が不足し、張力を受けた際に切れ易くなり、逆に、直径が1.0mmを超えると、同一配合量での本数が少なくなり、モルタルの曲げ強度が低下する。長さが2mm未満では、マトリックスに対する付着力が低下して曲げ強度が下がり、逆に、長さが30mmを超えると、混練の際にファイバーボールが生じ易くなる。有機質繊維の配合量は、凝結後のモルタル体積の10%未満が好ましい。
【0023】
モルタルは、配合が異なる複数のモルタルを、擬石用雌型の内周面へ順に塗布する複層式のものとしてもよい。例えば、2層式のモルタルの場合では、表層用のモルタルにナイロン(登録商標)系繊維を混入し、裏層用のモルタルにポリオレフィン系補強繊維を混入したものなどを採用することができる。
また、モルタルには、例えばポゾラン質微粉末(シリカフューム、フライアッシュなど)、分散剤(減水剤など)、微細針状物(ウォラストナイト、ボーキサイトなど)や微細薄片状物(マイカフレーク、タルクフレークなど)を添加してもよい。これにより、フレッシュモルタルは高流動性を有して作業性が優れ、中空擬石に対して複雑な形状や繊細な模様を現出させることができる。
【0024】
モルタルの水セメント比は、硬化前のモルタルの流動性や分離抵抗性、および硬化後の強度や耐久性などを考慮すれば、10〜30%が好ましい。
また、自然の岩石に似た風合いを現出するために、モルタル成分中に着色顔料を含めることができる。着色顔料としては、赤色用にベンガラ(Fe)、黄色用に黄酸化鉄(Fe・HO)、緑色用に酸化クロム(Cr)、青色用にコバルトブルー(CoO・nAl)、黒色用に四酸化三鉄(Fe)などを採用することができる。
【0025】
なお、この発明は、自然石から擬石原盤用雌型を作製し、擬石原盤用雌型から擬石原盤を作製し、擬石原盤から擬石用雌型を作製し、擬石用雌型から製品である中空擬石を作製するものであるが、擬石原盤を介在せず、自然石より剥ぎ取った擬石用雌型から、直接、中空擬石を作製するようにしてもよい。その際、擬石庭園ユニットの製造方法の構成は、以下の通りとなる。
【0026】
すなわち、外部から庭園空間を衝立により仕切る衝立仕切り工程と、対応する自然石から模られ、かつ内部空洞と連通する開口部が表面の一部に形成された複数の中空擬石を、互いに分離可能に突き合わせて組み擬石を作製する組み擬石作製工程と、前記衝立との対向側に前記開口部を向けて、前記組み擬石を前記庭園空間に配置するとともに、前記組み擬石用の各中空擬石を接合する配石工程とを備えた擬石庭園ユニット製造方法であって、前記組み擬石作製工程は、前記各自然石の表面の一部を除く部分にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、複数の擬石用雌型を作製する擬石用雌型作製工程と、隣り合う前記各中空擬石を得るための擬石用雌型のうち、一方の該擬石用雌型の内周面に擬石原料を塗布し、これを固めて脱型することで一方の中空擬石を作製する一方の擬石作製工程と、該一方の中空擬石の端部の面のうち前記自然石からの脱型面に、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、前記隣り合う各中空擬石を得るための擬石用雌型のうち、他方の擬石用雌型の端部を、前記対応する自然石からの脱型面とは反対側の面より外方へ外折し、この外折り部分を、前記一方の中空擬石のうち、前記離型剤の塗布部分またはその付近に突き合わせて固定する突き合わせ工程と、前記他方の擬石用雌型の突き合わせ部分の外側に、変形自在な形状補正材を当てがい、対応する突き合わせ部分をなだらかにする形状補正工程と、突き合わされた前記他方の擬石用雌型の内周面と、前記一方の擬石の面のうち前記離型剤の塗布部分とに跨がりモルタルを塗布し、これを養生し固化して脱型することで他方の中空擬石を作製する他方の擬石作製工程とを有した擬石庭園ユニット製造方法となる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、自然石の表面の一端部を除く部分にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで花瓶原盤用雌型を作製する原盤用雌型作製工程と、該花瓶原盤用雌型の内周面に花瓶原盤原料を塗布し、これを固めて脱型することで、開口部を有する花瓶原盤を作製する花瓶原盤作製工程と、該花瓶原盤のうち、前記開口部付近を除く部分に花挿入孔を形成する花挿入孔形成工程と、前記花瓶原盤の内周面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、開口部を有する花瓶用雌型を作製する花瓶用雌型作製工程と、前記開口部を上方に向け、前記花瓶用雌型の内周面に花瓶本体用のモルタルを塗布する花瓶本体用モルタル塗布工程と、該花瓶本体用のモルタルの塗布直後、前記花瓶本体の内部空間のうち、前記開口部側の端部を除く部分に中子用の粉粒体を充填する粉粒体充填工程と、該粉粒体の充填後、前記内部空間の残部に花瓶底板用のモルタルを塗布する底板用モルタル塗布工程と、前記花瓶本体用のモルタルと前記花瓶底板用のモルタルとをそれぞれ養生し固化させて脱型するとともに、前記花挿入孔を通して、前記内部空間から前記粉粒体を排出して前記花瓶を作製する花瓶脱型工程とを備えた花瓶製造方法である。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、花瓶は自然石から模られ、内部空間に連通する花挿入孔が形成されたモルタル製のものある。そのため、適度な重量感を有し、かつ自然石に近い自然美を有した花瓶を得ることができる。
【0029】
花瓶を模るための自然石の種類、大きさ、形状は任意である。
花瓶原盤用雌型用のゴム弾性材料、および、花瓶用雌型用のゴム弾性材料の素材としては、例えばシリコンゴム、イソプレインゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどを採用することができる。
花瓶原盤用雌型の原料となるゴム弾性材料、および、花瓶用雌型の原料となるゴム弾性材料の各塗布厚は、花瓶の大きさに応じて変更されるが、例えば3〜30mmである。
ゴム弾性材料の塗布方法としては、例えばヘラ塗りなどを採用することができる。
【0030】
自然石の表面のうち、ゴム弾性材料の塗布部分と塗布されない部分との境界が、花瓶原盤用雌型の開口部(花瓶の底板が形成される部分)となる。
花挿入孔の大きさ、形状、形成数および形成位置は任意である。例えば、一輪挿し用の花瓶を得るための小型の石でもよい。
【0031】
花瓶原盤の一部に花挿入孔を形成する方法としては、例えばドリルによる穿孔でもよいし、花瓶原盤用雌型の作製時に、自然石の表面に花挿入孔用の突起を設けてもよい。
花瓶本体用のモルタルおよび花瓶底板用のモルタルとしては、同じ素材のものを採用してもよいし、それぞれ異なる素材のものを採用してもよい。花瓶本体用のモルタルおよび花瓶底板用のモルタルの各塗布厚は、例えば3〜5mmである。3mm未満では花瓶にワレ、亀裂が発生するおそれがある。また、5mmを超えると重量が大きくなり、花瓶として使用し難い。
これらのモルタルは、それぞれ配合が異なる複数のモルタルを、擬石用雌型の内周面へ順次層状に塗布する複層式のものとしてもよい。
【0032】
中子用の粉粒体は粉体でもよいし、粒体でもよい。粉粒体は乾燥したものが好ましい。粒体としては、例えば粒径5mm以下の砂などを採用することができる。
花瓶本体用のモルタルと花瓶底板用のモルタルとを養生して固化する時期は、互いに異なってもよいし、同時でもよい。
花挿入孔からの粉粒体の排出方法としては、例えば作製された花瓶を逆さにし、下向きの花挿入孔から粉粒体を自然落下させてもよいし、花挿入孔に吸引ノズルのノズル口を連通させ、バキューム装置により粉粒体を吸引してもよい。
【発明の効果】
【0033】
請求項1に記載の発明によれば、庭園空間を仕切る衝立と、庭園空間の衝立の近傍に配置され、かつ対応する自然石から模られて、衝立との対向面に内部空洞と連通した開口部を有する複数のモルタル製の中空擬石とを備えた擬石庭園ユニットとしたので、適度な重量感および自然石に近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、低コスト化も図る中空擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットを提供することができる。
【0034】
また、請求項2に記載の発明によれば、外部から庭園空間への組み擬石の配置時に、各中空擬石の開口部を衝立に対向させて配置される各中空擬石をモルタルにより作製したので、適度な重量感および自然石に近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、低コスト化も図る中空擬石が組み込まれた擬石庭園ユニットを得ることができる。
また、一方の擬石原盤に、他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分を突き合わせる際、突き合わせ部分の裏側に形状補正材を配置するように構成したので、この突き合わせ部分がなだらかになり、組み擬石において中空擬石間の継ぎ目に段差が発生し難い。
【0035】
請求項3に記載の発明によれば、花瓶を自然石から模り、かつ内部空間に連通した花挿入孔を有するモルタル製のものとしたので、適度な重量感を有し、かつ自然石に近い自然美を有した花瓶を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、ビルの屋上に造園される坪庭用の擬石庭園ユニットを例にする。
【実施例1】
【0037】
図1において、10はこの発明の実施例1に係る屋上庭園用の滝山水式の擬石庭園ユニットで、この擬石庭園ユニット10は、庭園空間を仕切る衝立11と、滝山水を構成した複数のモルタル製の中空擬石からなる組み擬石12と、同じくモルタル製の中空擬石である花瓶13とを備えている。
庭園空間は、平面視して矩形枠状の外周枠体14と、外周枠体14の隣接する1対の辺部にそれぞれ立設され、平面視してL字形に連結された2枚の衝立11とにより区画されている。両衝立11は、矩形状の竹組みを模したFRP製である。花瓶13は、外周枠体14の一側方に配置されている。花瓶13の詳細については後述する。
【0038】
まず、組み擬石12を説明する(図2)。組み擬石12は、庭園空間のうち、両衝立11の屈曲部分の近傍に配置された滝山水本体15と、組み擬石12の両側方に配置された1対の根石16と、庭園空間の中央部一帯に配置された池泉石17とから構成されている。
【0039】
滝山水本体15は、滝水が流される滝石18と、図2中で滝石18の左側に接合される主石19と、図2中で滝石18の右側に接合される副石20とから構成される。滝石18、主石19および副石20は、幅50〜100cm、奥行き50〜100cm、高さ100〜200cm、重量30〜80kg程度の自然石Sから模られた擬石で(図3)、この順序で作製順位が1位、2位、3位となる役石でもある。各役石18,19,20には、庭園内への設置時(使用時/造園時)、人目に触れ難い背後部となる部分に、内部空洞21と連通する開口部22が配設されている。各開口部22は、造園時に衝立11と対向される。滝山水本体15は、池泉石17の周縁部のうち、衝立11側の部分に連結される。また、両根石16は、池泉石17の周縁部のうち、滝山水本体15の両側方の部分に連結される。庭園空間の適宜位置には、複数種類の草花23がそれぞれ植設されている。
【0040】
次に、組み擬石12の製造方法を具体的に説明する。
設計者が擬石庭園ユニット10の全体構成から組み擬石12を設計する。その設計に則り、滝石18、主石19および副石20を順次作製する。このとき、各役石18,19,20には、各役石18,19,20の省スペース化および軽量化を図るため、前述したように内部空洞21が形成される。しかも、これらには滝山水本体15の正面位置(L字配置された組み衝立11と正対する位置)から観えない部分(役石18,19,20の背後の部分)に開口部22が配設されている。各役石18,19,20の作製に際しては、滝山水本体15を構成する各役石間の継ぎ目(継ぎ目)から滝水が漏れないように、継ぎ目の接合作業が迅速かつ確実に行われるものとする。さらに、各役石18,19,20は、役石間の隙間をできるだけ狭くすることで、滝山水の景観に違和感が生じないように作製される。
【0041】
まず、各役石18,19,20の模り用として好適な形状および大きさの自然石Sを、役石18,19,20の個数分だけ用意する。次に、各自然石Sの表面の一部(背後の部分)を除く部分に石鹸水(離型剤)をそれぞれ刷毛塗りし、それから各塗布部分にシリコンゴム(ゴム弾性材料)を厚さ30mmでヘラ塗りによりそれぞれ塗布する(図3)。その後、各シリコンゴムを硬化させ、自然石Sから脱型し、各役石18,19,20の原盤を得るための擬石原盤用雌型24を作製する。このとき、各擬石原盤用雌型24の内周面が、対応する自然石Sの表面の凹凸(模様)を転写した意匠面となる。
【0042】
次に、滝石18の原形となる滝石原盤(擬石原盤)25を作製する滝石原盤用型枠26を用意する。滝石原盤用型枠26に収納された滝石型材(鋼製)27の上部に、滝石18用の擬石原盤用雌型24(一方の擬石原盤用雌型)をセットする(図4)。このとき、滝石型材27の上面(雌型載置面)の略全域には、断面円弧形状を有した凹部28が形成されている。凹部28の内周面の所定位置には、セットされる擬石原盤用雌型24の凹凸に合わせ、大きさが異なる多数の砂袋(形状補正材)29が載置される。砂袋29は作業者が手押しするとその外力で容易に変形する。よって、必要により、滝石原盤用型枠26の上で滝石用の擬石原盤用雌型24の形状を変更することができる。
【0043】
それから、滝石用の擬石原盤用雌型24の内周面(脱型面/意匠面)に、石鹸水(離型剤)を刷毛塗りし、これを乾燥させる。次いで、図示しないリシンガンにより滝石原盤用のモルタル(擬石原盤原料)を厚さ10〜20mmで塗布する。モルタルとしては、普通ポルトランドセメントと、粒径1.0mmの山砂と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを手作業により均一になるまで練ったものを使用する。
その後、モルタルを養生し固化させて脱型し、滝石原盤25を作製する。このとき、滝石原盤25の脱型面(外周面)には、自然石Sの表面の凹凸が転写され、この面が意匠面となる。続いて、滝石原盤25の脱型面全体に石鹸水を刷毛塗りし、乾燥させる。ただし、石鹸水が塗布されるのは、滝石原盤25の端部の脱型面のみでもよい。
【0044】
続いて、主石19の原形となる主石原盤30と、副石20の原形となる副石原盤31とを作製するため、主,副原盤用型枠32を用意する(図5)。これは滝石原盤用型枠26より大型のものである。主,副原盤用型枠32に収納された主,副型材(鋼製)33は、断面山形を有している。主,副型材33のうち、一段高い中央部の上面には、意匠面を下方に向けた滝石原盤25の中央部が載置される。また、2,3位原盤用型枠32の左側部には、主石用の擬石原盤用雌型24が載置される断面略J形状の凹部28Aが形成されている。2,3位原盤用型枠32の右側部には、副石用の擬石原盤用雌型24が載置される断面略逆J形状(Jの鏡像)の凹部28Bが形成されている。
【0045】
両凹部28A,28Bの内周面の全体には、セットされる擬石原盤用雌型24の凹凸に合わせ、多数の砂袋29がそれぞれ載置される。これらの砂袋29を使用し、主石用の擬石原盤用雌型24の形状と、副石用の擬石原盤用雌型24の形状とをそれぞれ変更することができる。
特に、主石用の擬石原盤用雌型24および副石用の擬石原盤用雌型24のうち、滝石原盤25との各突き合わせ部分にあっては、外方からこれらの突き合わせ部分を適宜押すことで、その裏側に配置された各砂袋29を変形させ、対応する突き合わせ部分をなだらにする。
【0046】
次に、対応する砂袋29を介して、主,副原盤用型枠32の左側の凹部28に主石用の擬石原盤用雌型24を載置する一方、右側の凹部28に副石用の擬石原盤用雌型24を載置する(図5)。その際、両擬石原盤用雌型24の下辺は、前記滝石原盤25の下端ラインa上に配置される(図6)。
また、主石用の擬石原盤用雌型24の滝石原盤側の端部、および、副石用の擬石原盤用雌型24の滝石原盤側の端部は、脱型面とは反対側の面より外方(主,副型材の方向)へそれぞれ外折されている。これらの外折り部分24aは、滝石原盤25の端部に突き合わせて固定される。
その後、主石用の擬石原盤用雌型24の内周面(意匠面)と、副石用の両擬石原盤用雌型24の内周面とに、石鹸水をそれぞれ刷毛塗りし、これらを乾燥させる。そして、各擬石原盤用雌型24の内周面に、厚さ10〜20mmでモルタルを塗布する。モルタルは、普通ポルトランドセメントと、粒径1.0mmの山砂と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを、手作業により均一になるまで練ったものである。
【0047】
次に、各役石原盤25,30,31の脱型面(意匠面)に石鹸水を刷毛塗りし、次いで、シリコンゴム(ゴム弾性材料)を厚さ5〜20mm程度でヘラ塗りによりそれぞれ塗布する(図8,図11,図14)。その後、各シリコンゴムを硬化させ、滝石用の擬石用雌型34、主石用の擬石用雌型35および副石用の擬石用雌型36をそれぞれ得る。
それから、各擬石用雌型34〜36の擬石原盤とは反対側の面に、補強用のFRPを厚さ3mmで塗布し、これらを硬化させ、擬石用雌型34〜36の曲げ強度などを高める補強板37を作製する。なお、各補強板37の表面には、図示しない補強リブを配設してもよい。
それから、各擬石用雌型34〜36を、対応する擬石原盤25,30,31から剥いで脱型する(図9,図12,図15)。
【0048】
次に、得られた3つの擬石用雌型34〜36の内周面(脱型面/意匠面)に、2回に分けてモルタルを厚さ5〜10mmずつ塗布する(図10,図13,図16)。
表層用となる1回目のモルタルとしては、普通ポルトランドセメント(25kg)と、亀裂防止用繊維(東レ社製 タフバインダー5〜10mm、50g)と、保水剤(信越化学社製 hiメトローズ、100g)と、混和剤(日本化成社製 nsハイフレックス HF−1000、5〜10倍液)と、無機着色顔料(バイエル社製、200〜500g)と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを手作業により均一になるまで練ったものを使用する。
【0049】
また、裏層用となる2回目のモルタルは、普通ポルトランドセメント(25kg)と、細骨材(砂1.0mm以下、25kg)と、補強繊維(萩原工業社製 バルチップ、1.0kg)と、保水剤(信越化学株式会社製 hiメトローズ、100g)と、混和剤(日本化成社製 nsハイフレックス HF−1000、5〜10倍液)と、無機着色顔料(バイエル社製、200〜500g)と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを手作業により均一になるまで練ったものである。
【0050】
裏層用のモルタルは、表層用のモルタルの養生、固化(完全固化)後、表層用のモルタルの内周面(裏面)に塗布してもよいが、ここでは半固化(半乾き)状態の表層用のモルタルに、裏層用のモルタルを塗布している。その後、裏層用のモルタルを養生し固化させ脱型することで、滝石18、主石19および副石20がそれぞれ作製される。これらを組み付けることで、滝山水本体15が作製される(図2および図17)。
3つの擬石用雌型34〜36は、何れもシリコンゴム製である。よって、これらから所定の役石18,19,20を作製する回数(使用回数)には限りがある。そこで、擬石用雌型34〜36が損傷した際には、再び剛体の擬石原盤25,30,31から、対応する擬石用雌型34〜36を作製すればよい。
また、前記両根石16と前記池泉石17との作製に際しては、形状や使用個数は異なるものの、上述した滝山水本体15の製造工程をそのまま利用することができる。そのため、具体的な記載は省略する。
【0051】
このように、庭園空間への組み擬石12の配置時、対応する開口部22を衝立11に対向させて配置される各役石18,19,20をモルタルにより作製するようにしたので、適度な重量感および自然石Sに近い自然美を有するとともに、高強度で、設置スペースおよび保管スペースの小型化が図れ、低コスト化も図る組み擬石12が組み込まれた擬石庭園ユニット10を得ることができる。現場へ運搬された各役石18,19,20は、そこで滝山水本体15の組み擬石12に組み立てられる。その際、隣接する役石18,19,20間に樹脂モルタルおよびコンクリートボンドを充填し、隣接するもの同士を互いに接合させる。
【0052】
また、滝石原盤25に、主石用の原盤用雌型24の突き合わせ部分、または、副石用の原盤用雌型24の突き合わせ部分を突き合わせる際、これらの突き合わせ部分の裏側に砂袋29を配置したので、この突き合わせ部分がなだらかになり、滝山水本体15において役石18,19,20間の継ぎ目に段差が発生し難い。
さらに、このように滝山水本体15を、滝石18、主石19、副石20という3つの役石からなる組み立て式のものとしたため、ビルの屋上で擬石庭園ユニット10を造園する際、エレベータなどを利用し、作業者が手作業で各役石18,19,20を搬入し易い。
【0053】
さらにまた、従来法では、隣接する役石同士に若干の隙間をあけて各役石を位置決めし、その隙間をコーキング材のコテ塗りで埋めていたため、隣接する役石間の継ぎ目が間延びし、その部分が役石とは異質の景観となり、滝山水のデザイン性が低下し、商品価値が下がっていた。これに対して、実施例1では、両役石18,19,20の継ぎ目を段差なく直接連結するようにしたので(図7)、このような欠点を解消することができる。
【0054】
次に、図18〜図24を参照し、花瓶13を説明する。
図18および図19に示すように、花瓶13は自然石S1を模ったモルタル製の中空容器である。以下、その製造方法を具体的に説明する。
予め花瓶13用として好適な自然石(最大値幅20cm、奥行き20cm、高さ20cm、重量10kg程度)S1と、平面視した面積が自然石S1より大きい矩形状を有した発泡ウレタン製のガード板40とを準備する(図19)。ガード板40の中央部には、自然石S1の下端部の所定位置を水平に輪切りしたときの断面形状および断面積が略同じ切欠部40aが形成されている。
そして、ガード板40の切欠部40aに自然石S1の下端部を挿入後、自然石S1のうち、ガード板40より上方の表面部分に、シリコンゴム(ゴム弾性材料)を厚さ3〜5mmで塗布し、これを硬化させて脱型し、花瓶原盤用雌型41を作製する。花瓶原盤用雌型41は、そのガード板側の端部が開口部52となっている。
【0055】
次に、花瓶13の原形となる花瓶原盤42を作製する花瓶原盤用型枠43を用意する。花瓶原盤用型枠43に収納された花瓶型材(鋼製)44の上部に、花瓶原盤用雌型41をセットする(図20)。このとき、花瓶型材44の上面(雌型載置面)の略全域には、断面円弧形状を有する深い凹部28が形成されている。凹部28の内周面の所定位置には、セットされる花瓶原盤用雌型41の凹凸に合わせ、大きさが異なる多数の砂袋29が載置される。よって、必要により、花瓶原盤用型枠43の上で花瓶原盤用雌型41の形状を変更することができる。
【0056】
それから、花瓶原盤用雌型41の開口部52を上方に向け、花瓶原盤用雌型41の内周面(脱型面/意匠面)に石鹸水(離型剤)を刷毛塗りし、これを乾燥させる。そして、リシンガンによりモルタル(花瓶原盤原料)を厚さ5mmで塗布する。モルタルとしては、普通ポルトランドセメントと、粒径1.0mmの山砂と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを、手作業により均一になるまで練ったものを用いる。
【0057】
その後、モルタルを養生し固化させて脱型し、花瓶原盤42を作製する(図21)。このとき、花瓶原盤42の脱型面(外周面)には、自然石S1の表面の凹凸が転写され、この面が意匠面となる。
次に、花瓶原盤42の開口部52を下方に向けた状態で、ドリルを用いて花瓶原盤42の上端部に、直径10mm程度の花挿入孔45を1つ形成する。
続いて、開口部52を上方(下方でもよい)に向け、花瓶原盤42の脱型面(外周面)全体に石鹸水を刷毛塗りし、乾燥させる。それから、花瓶原盤42の脱型面にシリコンゴム(ゴム弾性材料)を厚さ5mm程度で塗布し、これを硬化させる(図22)。これにより、花挿入孔45の形成位置に花挿入孔45と同じ形状の突起部46が形成された花瓶用雌型47が作製される。
引き続き、花瓶用雌型47の外周面に補強用のFRPを厚さ5mm程度で塗布する。その後、これを硬化させ、花瓶用雌型47の補強板48とする。なお、補強板48の表面に補強用のリブを形成してもよい。それから、花瓶用雌型47を脱型する。
【0058】
次いで、花瓶用雌型47の内周面(脱型面/意匠面)に、2回に分けて花瓶本体49用のモルタルを厚さ3〜5mm程度ずつ塗布する(図23)。
表層用となる1回目のモルタルとしては、普通ポルトランドセメント(25kg)と、亀裂防止用繊維(東レ社製 タフバインダー5〜10mm、50g)と、保水剤(信越化学社製 hiメトローズ、100g)と、混和剤(日本化成社製 nsハイフレックス HF−1000、5〜10倍液)と、無機着色顔料(バイエル社製、200〜500g)と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを手作業により均一になるまで練ったものを使用する。
【0059】
また、裏層用となる2回目のモルタルとしては、普通ポルトランドセメント(25kg)と、細骨材(砂1.0mm以下、25kg)と、補強繊維(萩原工業社製 バルチップ、1.0kg)と、保水剤(信越化学社製 hiメトローズ、100g)と、混和剤(日本化成社製 nsハイフレックス HF−1000、5〜10倍液)と、無機着色顔料(バイエル社製、200〜500g)と、水(スランプ値で2〜3cmとなる分量)とを手作業により均一になるまで練ったものを用いる。
裏層用のモルタルは、表層用のモルタルの養生、固化後、表層用のモルタルの内周面(裏面)に塗布してもよい。ただし、ここでは表層用のモルタルが半固化状態で裏層用のモルタルを塗布している。
【0060】
花瓶本体用のモルタルの塗布後、花瓶本体49の内部空間のうち、開口部52側の端部を除く部分に、中子用の粒径5mm以下の砂(粉粒体)50を充填する(図23)。そして、花瓶本体49の内部空間の残部に、花瓶本体用のモルタルと同じ花瓶底板用のモルタルを厚さ3〜5mmで塗布する(図24)。次いで、花瓶本体用のモルタルと花瓶底板用のモルタルとをそれぞれ養生し固化させて脱型する。これにより、花瓶本体49に花挿入孔45が開口され、花瓶本体49の底部が花瓶底板51により塞がれた花瓶13が作製される。その後、花瓶13を下向きにし、花挿入孔45を通して、花瓶本体49の内部空間から砂50を自重落下により排出する。
【0061】
このように、花瓶13は自然石S1から模られ、内部空間に連通する花挿入孔49が形成されたモルタル製のものある。そのため、適度な重量感を有し、かつ自然石S1に近い自然美を有した花瓶13を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの全体斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの一部を構成する滝山水の斜視図である。
【図3】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における擬石原盤用雌型作製工程を示す断面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における滝石用の擬石原盤作製工程を示す拡大断面図である。
【図5】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における主石および副石用の擬石原盤の作製前の状態を示す拡大断面図である。
【図6】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における中空擬石の基準ライン合わせを示す平面図である。
【図7】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における滝石、主石および副石用の擬石原盤の作製後の状態を示す拡大断面図である。
【図8】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における滝石用の擬石用雌型の作製工程を示す拡大断面図である。
【図9】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における作製後の滝石用の擬石用雌型を示す拡大断面図である。
【図10】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における滝石の脱型工程を示す拡大断面図である。
【図11】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における主石用の擬石用雌型の作製工程を示す拡大断面図である。
【図12】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における作製後の主石用の擬石用雌型を示す拡大断面図である。
【図13】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における主石の脱型工程を示す拡大断面図である。
【図14】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における副石用の擬石用雌型の作製工程を示す拡大断面図である。
【図15】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における作製後の副石用の擬石用雌型を示す拡大断面図である。
【図16】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における副石の脱型工程を示す拡大断面図である。
【図17】この発明の実施例1に係る擬石庭園ユニットの製造方法における滝山水本体の拡大横断面である。
【図18】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法により得られた花瓶の使用状態を示す縦断面図である。
【図19】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶原盤用雌型の作製中を示す縦拡大断面図である。
【図20】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶原盤の作製中を示す縦拡大断面図である。
【図21】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶原盤への花挿入孔の形成後の状態示す縦拡大断面図である。
【図22】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶本体の作製状態を示す縦拡大断面図である。
【図23】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶本体の内部空間への砂の充填状態を示す縦拡大断面図である。
【図24】この発明の実施例1に係る花瓶の製造方法における花瓶底板の作製状態を示す縦拡大断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 擬石庭園ユニット、
11 衝立、
12 組み擬石、
13 花瓶、
18 滝石(中空擬石)、
19 主石(中空擬石)、
20 副石(中空擬石)、
21 内部空洞、
22,52 開口部、
24 擬石原盤用雌型、
24a 外折り部分、
25 滝石原盤(一方の擬石原盤)、
29 砂袋(形状補正材)、
30 主石原盤(他方の擬石原盤)、
31 副石原盤(他方の擬石原盤)、
34 滝石用の擬石用雌型(一方の擬石用雌型)、
35 主石用の擬石用雌型(他方の擬石用雌型)、
36 副石用の擬石用雌型(他方の擬石用雌型)、
41 花瓶原盤用雌型、
42 花瓶原盤、
45 花挿入孔、
47 花瓶用雌型、
49 花瓶本体、
50 砂(粉粒体)、
51 花瓶底板、
S 自然石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から庭園空間を仕切る衝立と、
前記庭園空間の衝立の近傍に配置され、かつ対応する自然石から模られて、前記衝立との対向面に内部空洞と連通した開口部を有する複数のモルタル製の中空擬石とを備えた擬石庭園ユニット。
【請求項2】
外部から庭園空間を衝立により仕切る衝立仕切り工程と、
対応する自然石から模られ、かつ内部空洞と連通する開口部が表面の一部に形成された複数の中空擬石を、互いに分離可能に突き合わせて組み擬石を作製する組み擬石作製工程と、
前記衝立との対向側に前記開口部を向けて、前記組み擬石を前記庭園空間に配置するとともに、前記組み擬石用の各中空擬石を接合する配石工程とを備えた擬石庭園ユニット製造方法であって、
前記組み擬石作製工程は、
前記対応する自然石の表面の一部を除く部分にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、複数の擬石原盤用雌型を作製する擬石原盤用雌型作製工程と、
隣り合う前記各中空擬石を得るための前記擬石原盤用雌型のうち、一方の該擬石原盤用雌型の内周面に擬石原盤原料を塗布し、これを固めて脱型することで一方の擬石原盤を作製する一方の擬石原盤作製工程と、
該一方の擬石原盤の端部の脱型面に、離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
前記隣り合う各中空擬石を得るための擬石原盤用雌型のうち、他方の擬石原盤用雌型の端部を、前記対応する自然石からの脱型面とは反対側の面より外方へ外折し、この外折り部分を、前記一方の擬石原盤のうち、前記離型剤の塗布部分またはその付近に突き合わせて固定する雌型突き合わせ工程と、
前記他方の擬石原盤用雌型の突き合わせ部分の外側に、変形自在な形状補正材を当てがい、対応する突き合わせ部分をなだらかにする形状補正工程と、
突き合わされた前記他方の擬石原盤用雌型の内周面と、前記一方の擬石原盤の面のうち前記離型剤の塗布部分とに跨がり擬石原盤原料を塗布し、これを固めて脱型して他方の擬石原盤を作製する他方の擬石原盤作製工程と、
前記一方の擬石原盤の脱型面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、一方の擬石用雌型を作製する一方の擬石用雌型作製工程と、
前記他方の擬石原盤の脱型面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、他方の擬石用雌型を作製する他方の擬石用雌型作製工程と、
前記一方の擬石用雌型の内周面にモルタルを塗布し、これを養生し固化して脱型することで、一方の前記中空擬石を作製する一方の中空擬石作製工程と、
前記他方の擬石用雌型の内周面にモルタルを塗布し、これを養生し固化して脱型することで、他方の前記中空擬石を作製する他方の中空擬石作製工程とを有した擬石庭園ユニット製造方法。
【請求項3】
自然石の表面の一端部を除く部分にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで花瓶原盤用雌型を作製する原盤用雌型作製工程と、
該花瓶原盤用雌型の内周面に花瓶原盤原料を塗布し、これを固めて脱型することで、開口部を有する花瓶原盤を作製する花瓶原盤作製工程と、
該花瓶原盤のうち、前記開口部付近を除く部分に花挿入孔を形成する花挿入孔形成工程と、
前記花瓶原盤の内周面にゴム弾性材料を塗布し、これを硬化させて脱型することで、開口部を有する花瓶用雌型を作製する花瓶用雌型作製工程と、
前記開口部を上方に向け、前記花瓶用雌型の内周面に花瓶本体用のモルタルを塗布する花瓶本体用モルタル塗布工程と、
該花瓶本体用のモルタルの塗布直後、前記花瓶本体の内部空間のうち、前記開口部側の端部を除く部分に中子用の粉粒体を充填する粉粒体充填工程と、
該粉粒体の充填後、前記内部空間の残部に花瓶底板用のモルタルを塗布する底板用モルタル塗布工程と、
前記花瓶本体用のモルタルと前記花瓶底板用のモルタルとをそれぞれ養生し固化させて脱型するとともに、前記花挿入孔を通して、前記内部空間から前記粉粒体を排出して前記花瓶を作製する花瓶脱型工程とを備えた花瓶製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−331189(P2007−331189A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164624(P2006−164624)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(506204885)株式会社日本石創 (1)
【Fターム(参考)】