説明

攪拌システム

本発明は、少なくとも1つの半径方向搬送攪拌要素と少なくとも1つの軸方向搬送攪拌要素との組合せからなる動物細胞の培養のための攪拌システムであって、少なくとも3つの攪拌要素を必ず含み、一番上の攪拌要素が軸方向搬送攪拌要素である攪拌システムに関する。攪拌要素は、攪拌シャフトに一定の間隔で上下に配置される。ある態様は、半径方向搬送攪拌要素としての2つの円盤型攪拌機と軸方向搬送攪拌要素としての1つの傾斜羽根攪拌機とからなる多重攪拌システムであって、該傾斜羽根攪拌機が攪拌シャフトに、円盤型攪拌機よりも上に配置された多重攪拌システムである。本発明による攪拌システムは、とりわけ、細胞培養における、剪断に弱い哺乳類細胞の培養において、より穏和でより良好な相互混合を達成する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、少なくとも1つの半径方向搬送要素と少なくとも1つの軸方向搬送要素との組合せからなる動物細胞の培養のための攪拌システムであって、少なくとも3つの搬送要素を必ず含み、一番上の要素が軸方向搬送要素である攪拌システムが記載される。搬送要素は、シャフトに一定の間隔で上下に配置される。ある態様において、攪拌システムは、半径方向搬送要素としての2つの円盤型攪拌機と軸方向搬送要素としての1つの傾斜羽根攪拌機とからなり、該傾斜羽根攪拌機は、シャフトに、円盤型攪拌機よりも上に配置される。本発明による攪拌機は、とりわけ、原核細胞および真核細胞の培養のための培地のより穏和でより良好な混合を達成する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
原核細胞および真核細胞を用いた組換えタンパク質、ワクチン、および抗体の製造は、現代の医薬製造において不可欠な役割を果たしている。翻訳後修飾複合タンパク質および抗体を製造するのに動物由来細胞が主として用いられる。しかしながら、動物由来細胞の使用は、例えば、培地、制限および阻害(例えば、乳酸塩、CO2、アンモニウム等による)に対する感受性、感受性の強い外膜(剪断応力)、比速度の低さ、および培養条件のばらつき(例えば、局所的不均質性、pHのばらつき、pO2のばらつき等による)に対する感受性といった、これらの細胞の特異的な特性により、発酵プロセスに対する要求が高度である。バイオリアクターの設計の際およびプロセス制御のためには、これらの特性を考慮に入れなければならない。
【0003】
近年、細胞を培養するための様々な種類の反応器が開発されている。種類に関わらず、反応器は、以下の基本的な技術的機能を満たさなければならない:懸濁および均質化が十分であること、物質輸送および熱輸送が十分であること、ならびに細胞にかかる剪断応力が最小であること。攪拌タンク反応器は産業用に特に適している。この反応器では、基本的な機能を果たすのに必要なエネルギーが機械的攪拌によって導入される。
【0004】
文献から、哺乳類細胞は微生物よりもはるかに剪断力に弱いことが知られている。これは通常は細胞壁の欠如に起因すると考えられている(例えば、Glacken, M.W., et al., Trends Biotechnol. 1 (1983) 102-108(非特許文献1); van der Pol, L.A. and Tramper, J. Enzyme Microb. Technol. 17 (1995) 401-407(非特許文献2); Nienow, A.W., Cytotechnol. 50 (2006) 9-33(非特許文献3); Cervantes, M.I., et al., Chem. Eng. Sci. 61 (2006) 8075-8084(非特許文献4); Frahm, B., et al., Chem. Ing. Tech. 79 (2007) 1052-1058(非特許文献5)参照)。剪断に弱いために懸濁培養バイオリアクターの技術的取扱いは極めて難しい。攪拌タンク反応器は、所要のプロセス条件に関してより柔軟に制御および使用できるので、バイオテクノロジーの製造プロセスにおいて細胞への栄養供給に通常用いられている。システムの幾何学的形状および攪拌される材料のレオロジーに加えて、上述の基本機能は、用いられる攪拌システムによって主に実現される。
【0005】
培養細胞にかかる剪断応力の主な原因は、とりわけ、攪拌システムによって発生する剪断力である。これらは、特に攪拌羽根の領域およびバッフルの領域において強い影響を及ぼす。Kolmogorovの理論によると、攪拌機によって発生するマクロな渦は、エネルギー散逸によって分解し、小さいミクロな渦を形成する。それらの渦のサイズが発酵させる細胞のサイズと同じになると、細胞は損傷し得る(Cherry, R.S. and Papoutsakis, E.T., Biotechnol. Bioeng. 32 (1988) 1001-1014(非特許文献6); "Advances in animal cell biology and technology for bioprocesses", Spier, R.E., et al. (Eds) Butterworth, Sevenoaks, Kent, UK (1989) 203-211におけるPapoutsakis, E.T. and Kunas, K.T.(非特許文献7); Kunas, K.T. and Papoutsakis, E.T., Biotech. Bioeng. 36 (1990) 476-483(非特許文献8); Zhang, Z.B. and Thomas, C.R., Gen. Eng. Biotechnol. 13 (1993) 19-29(非特許文献9); Nienow, A.W., Cytotechnol. 50 (2006) 9-33(非特許文献10))。
【0006】
懸濁動物細胞の培養における攪拌機の使用のために低剪断流の発生を重要な基準として強調する推奨がなされている(例えば、Feder, J. and Tolbert, W.R., Sci. Am. 248 (1983) 24-31(非特許文献11); Ekato、Chemineer、Bioengineering、Zeta等の攪拌機製造業者を参照)。したがって、損傷を低減させるために多数の低剪断力攪拌機が開発されている(例えば、「Elephant Ear Impeller」または「Max Flow Impeller」)。
【0007】
あるオンライン記事("Axial flow down-pumping agitators in biological processes", 2009年4月, http://www.postmixing.com/mixing%20forum/Micro/ Liq-Solid-Gas/down-pumpers.htm(非特許文献12))において、異なる攪拌機からなる攪拌機の組合せによって物質移動が改善することが示されている。動物細胞に関して、細胞培養において最良の結果を達成するために3つの軸方向移送装置の使用が推奨されている。Fujasova, M.ら (Chem. Eng. Sci. 62(2007)1650-1669(非特許文献13))は、多段式攪拌機について物質移動における相関を報告している。バイオリアクターにおける三段式攪拌システムを用いた気相・液相間の物質移動がPuthliら(Puthli, M.S., et al., Biochem. Eng. J. 23(2005)25-30(非特許文献14))によって報告されている。
【0008】
好ましくは2つまたは3つのラシュトン攪拌機が取り付けられた垂直な回転シャフトを備えた細菌細胞培養用発酵槽の使用が米国特許第5,633,165号に記載されている。Nienow, A.W.,(Cytotechnol. 50(2006)9-33)(非特許文献15)は、H/D比1〜1.3の動物細胞培養用反応器システムと、2つの下方搬送水中翼攪拌機(軸方向移送装置)をエアレータを一番下の攪拌機の下に装着して使用することとを推奨している。
【0009】
米国特許出願公開第2004/0234435号(特許文献1)には、芳香族カルボン酸を製造するための装置および方法が記載されている。連続重合反応器が米国特許第4,438,074号(特許文献2)に記載されている。米国特許出願公開第2004/0087814号(特許文献3)には、アルキルベンゼン酸化反応器用のかき混ぜシステムが記載されている。混合システムが米国特許第5,972,661号(特許文献4)に記載されている。米国特許第6,250,769号(特許文献5)には、静的な混合または旋回手段を備えたかき混ぜ装置が記載されている。かき混ぜ機が米国特許第5,198,156号(特許文献6)に記載されている。米国特許第4,779,990号(特許文献7)には羽根車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0234435号
【特許文献2】米国特許第4,438,074号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0087814号
【特許文献4】米国特許第5,972,661号
【特許文献5】米国特許第6,250,769号
【特許文献6】米国特許第5,198,156号
【特許文献7】米国特許第4,779,990号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Glacken, M.W., et al., Trends Biotechnol. 1 (1983) 102-108
【非特許文献2】van der Pol, L.A. and Tramper, J. Enzyme Microb. Technol. 17 (1995) 401-407
【非特許文献3】Nienow, A.W., Cytotechnol. 50 (2006) 9-33
【非特許文献4】Cervantes, M.I., et al., Chem. Eng. Sci. 61 (2006) 8075-8084
【非特許文献5】Frahm, B., et al., Chem. Ing. Tech. 79 (2007) 1052-1058
【非特許文献6】Cherry, R.S. and Papoutsakis, E.T., Biotechnol. Bioeng. 32 (1988) 1001-1014
【非特許文献7】"Advances in animal cell biology and technology for bioprocesses", Spier, R.E., et al. (Eds) Butterworth, Sevenoaks, Kent, UK (1989) 203-211におけるPapoutsakis, E.T. and Kunas, K.T.
【非特許文献8】Kunas, K.T. and Papoutsakis, E.T., Biotech. Bioeng. 36 (1990) 476-483
【非特許文献9】Zhang, Z.B. and Thomas, C.R., Gen. Eng. Biotechnol. 13 (1993) 19-29
【非特許文献10】Nienow, A.W., Cytotechnol. 50 (2006) 9-33
【非特許文献11】Feder, J. and Tolbert, W.R., Sci. Am. 248 (1983) 24-31
【非特許文献12】"Axial flow down-pumping agitators in biological processes", 2009年4月, http://www.postmixing.com/mixing%20forum/Micro/ Liq-Solid-Gas/down-pumpers.htm
【非特許文献13】Fujasova, M.ら (Chem. Eng. Sci. 62(2007)1650-1669
【非特許文献14】Puthli, M.S., et al., Biochem. Eng. J. 23(2005)25-30
【非特許文献15】Nienow, A.W.,(Cytotechnol. 50(2006)9-33)
【発明の概要】
【0012】
本明細書において、少なくとも1つの半径方向搬送要素と少なくとも1つの軸方向搬送要素とを含む攪拌システムであって、少なくとも3つの搬送要素を必ず含み、一番上の搬送要素が軸方向搬送要素である攪拌システムが記載される。剪断に弱い動物細胞を培養するために通常用いられている攪拌機と比較して、本明細書に記載の攪拌システムは、培地中の細胞を高い剪断応力にさらすことなく、より迅速な培地の混合(例えば、酸または塩基などの補正剤を液体表面を介して導入するために)を達成できる。
【0013】
一態様において、攪拌システムは、3〜5つの搬送要素からなる。別の態様において、攪拌システムは、3つまたは4つの搬送要素からなる。さらなる態様において、攪拌システムの上記搬送要素は、垂直なシャフトに一定の間隔で上下に配置される。さらに別の態様において、上記搬送要素は、シャフトに互いに等間隔で配置される。さらに別の態様において、上記搬送要素間の間隔は、1〜2つの搬送要素の直径dである。一態様において、攪拌システムの上記搬送要素は、垂直なシャフトに配置され、一番上の搬送要素は、一番下の搬送要素からある規定された距離にあり、かつ培地を充填した培養槽内で攪拌システムを動作させるとき、培地の液体表面から十分な距離にあり、それによって、攪拌システムは培地の混合を確実にする。一態様において、上記培地表面からの距離は、一番上の攪拌要素と上から二番目の攪拌要素との間の距離と同じである。一態様において、すべての搬送要素が同じ直径dを有する。
【0014】
一態様において、攪拌システムは、2つの半径方向搬送要素と1つの軸方向搬送要素とからなり、該軸方向搬送要素は、攪拌シャフトに該半径方向搬送要素よりも上に配置される。
【0015】
一態様において、上記半径方向搬送要素は、2〜8つの攪拌羽根を有し、かつ上記軸方向搬送要素は2〜10個の攪拌羽根を有する。別の態様において、上記半径方向搬送要素は、3〜6つの攪拌羽根を有し、さらなる態様においては6つの攪拌羽根を有する。一態様において、上記軸方向搬送要素は、2〜6つの攪拌羽根を有し、さらなる態様においては4つの攪拌羽根を有する。さらなる態様においては、すべての半径方向搬送要素とすべての軸方向搬送要素とが同数の攪拌羽根を有する。一態様において、すべての搬送要素が4つまたは6つの攪拌羽根を有する。一態様において、上記半径方向搬送要素は、対称な半径方向搬送要素である。「対称な半径方向搬送要素」とは、当該要素の縦軸に沿って対称な断面を有する、すなわち、回転軸に沿いかつ回転軸を含んだ断面が点対称かつ鏡対称である要素のことである。
【0016】
一態様において、攪拌システムが培養槽内に設置されたときの搬送要素の直径dの、培養槽の直径Dに対する比は、0.2〜0.8の範囲であり、別の態様においては0.3〜0.6の範囲であり、さらなる態様においては0.31〜0.39の範囲であり、また、一態様においては約0.34である。軸方向搬送要素の攪拌羽根の高さhBの、半径方向搬送要素の攪拌羽根の幅bに対する比は、0.2〜2.0の範囲であり、別の態様においては0.3〜1.4の範囲であり、さらなる態様においては0.4〜1.0の範囲である。さらなる態様において、軸方向搬送要素の攪拌羽根の傾斜度はシャフト軸に対して10°〜80°であり、別の態様においては24°〜60°であり、さらなる態様においては40°〜50°である。一態様においては、すべての搬送要素について、搬送要素の直径dの、培養槽の直径Dに対する比が、0.32〜0.35である。
【0017】
一態様において、攪拌システムは、レイノルズ数5*104〜5*105においてニュートン数5.5〜8.0である。別の態様において、攪拌システムの混合時間Θ0.95は、約0.05W/kgの動力入力において約20秒であり、約0.3W/kgの動力入力において約10秒である。
【0018】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書に記載の攪拌システムと培養槽とを含む装置である。一態様において、装置は、透析モジュールをさらに含む。別の態様において、装置は、動物細胞の培養用である。さらに別の態様において、装置は、
a)培地と培養する動物細胞とを入れるのに適した培養槽と、
b)培養槽の垂直軸に沿ったシャフトと、
c)上記シャフトに取り付けられた、本明細書に記載の攪拌システムと、
d)上記培養槽の底にある気体入口と、
e)補正溶液および/または栄養供給溶液を添加するための、液体表面よりも上方の培養槽の上部にある少なくとも1つの入口と、
を含む。
【0019】
また、本明細書において記載される一局面は、以下の工程を含む、ポリペプチドを製造するための方法である:
a)前記ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を、本明細書に記載の攪拌システムを含む培養槽または本明細書に記載の装置中で培養する工程;
b)上記培地または上記細胞から前記ポリペプチドを回収する工程;および
c)前記ポリペプチドを精製し、それによって前記ポリペプチドを製造する工程。
【0020】
一態様において、上記精製は、多段式クロマトグラフィープロセスである。別の態様において、上記精製は、アフィニティクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0021】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書に記載の攪拌システムを含む培養槽内で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞を培養するための方法である。
【0022】
一態様において、上記培養は半連続培養である。さらなる態様において、上記半連続培養は透析である。一態様において、上記ポリペプチドは、抗体または抗体誘導体である。
【0023】
本明細書において記載されるさらなる一局面は、培地の混合のための本明細書に記載の攪拌システムの使用である。上記の局面の一態様において、培地は、原核細胞および真核細胞の培養に適した水性培地である。別の態様において、培地は、ニュートン液体である。一態様においては、攪拌システムを、0.01W/kg〜1W/kgの動力入力で動作させる。さらなる態様においては、攪拌システムを、0.04W/kg〜0.5W/kgの動力入力で動作させる。さらに別の態様において、攪拌システムによって培地中に誘起される流れは乱流である。別の態様において、培地の粘度は3mPas*s以下である。別の態様において、上記粘度は2mPas*s以下である。
【0024】
本明細書において記載されるさらなる局面は、ポリペプチドまたは抗体の製造のための動物細胞またはハイブリドーマ細胞の培養のための攪拌システムの使用である。一態様において、該培養は液中通気式攪拌タンク反応器内で実施される。別の態様において、該動物細胞は哺乳類細胞である。なおさらなる態様において、該細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、COS細胞、PER.C6細胞、Sp2/0細胞、HEK 293細胞、またはハイブリドーマ細胞である。なおさらなる態様において、該抗体は、CD19、CD20、CD22、HLA-DR、CD33、CD52、EGFR、G250、GD3、HER2、PSMA、CD56、VEGF、VEGF2、CEA、Lewis Y抗原、IL-6受容体、またはIGF-1受容体に対する抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】a)は、反応器内の本明細書に記載の攪拌システムの図であり、D = 容器の内径、d = 攪拌システムの外径、dsp = 気体分散器(出口開口部)の直径、H = 容器の充填レベル、HB = 容器の高さ、hsp =気体分散器の設置高さ、h1m = 下側攪拌要素の設置高さ、h2m = 攪拌要素1と攪拌要素2との間の距離、h3m = 攪拌要素2と攪拌要素3との間の距離、bd = 容器壁からバッフルまでの距離, w = バッフルの羽根の幅であり;b)は、標準の円盤型攪拌機の図であり、d = 攪拌機の外径、b = 攪拌羽根の幅、h = 攪拌羽根の高さであり;c)は、傾斜羽根攪拌機の図であり、α = 攪拌羽根の傾斜度、l = 攪拌羽根の長さ、h = hSB = (攪拌羽根の投影高さ)である。
【図2】様々な攪拌システムの動力係数Neをレイノルズ数の関数として示す図であり、SSR = 標準の円盤型攪拌機、SBR = 傾斜羽根攪拌機である。
【図3】相互混合の程度95%を得るための混合時間を様々な攪拌システムについて動力入力の関数として示す図である。
【図4】様々な攪拌システムについてのレイノルズ数の関数としての混合係数CHの比較を示し、SSR = 標準の円盤型攪拌機、SBR = 傾斜羽根攪拌機である。
【図5】基準フレーク直径dVFの比容積動力入力および攪拌システムへの依存を示し、SSR = 標準の円盤型攪拌機、SBR = 傾斜羽根攪拌機である。
【図6】抗IGF-1R抗体産生細胞株を培養するために用いられる攪拌システムおよび発酵時間の関数としての、生細胞密度(a)および生存率(b)の標準化された経時変化を示す。
【図7】抗IGF-1R抗体産生細胞株を培養するために用いられる攪拌システムおよび発酵時間の関数としての産生物濃度の標準化された経時変化を示す。
【図8】抗CD20抗体産生細胞株を培養するために本明細書に記載の攪拌システムを用いた発酵時間の関数としての、生細胞密度(a)および生存率(b)の標準化された経時変化を示す。
【図9】抗CD20抗体産生細胞株を培養するために用いられる攪拌システムおよび発酵時間の関数としての産生物濃度の標準化された経時変化を示す。
【図10】抗HER2抗体産生細胞株を培養するために本明細書に記載の攪拌システムを用いた発酵時間の関数としての、生細胞密度(a)および生存率(b)の標準化された経時変化を示す。
【図11】抗HER2抗体産生細胞株を培養するために用いられる攪拌システムおよび発酵時間の関数としての産生物濃度の標準化された経時変化を示す。
【図12】特定の動力入力の関数としての、透析における物質移動係数を示す。
【図13】透析培養のための装置の概略図である。
【図14】透析モジュールの中空繊維における濃度勾配の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書において、少なくとも1つの半径方向搬送要素と少なくとも1つの軸方向搬送要素とからなる攪拌システムであって、少なくとも3つの搬送要素を必ず含み、一番上の要素が軸方向搬送要素である攪拌システムが記載される。剪断に弱い動物細胞を培養するために現在用いられている攪拌システムと比較して、本明細書に記載の攪拌システムは、より穏和でより迅速な培地の混合を可能にする。本明細書に記載の攪拌システムの一例を図1に示す。このように、本明細書に記載の攪拌システムは、培養槽内の流れを方向づけるための、バッフル、静的ミキサー、旋回手段、ドラフトチューブ等の手段のような複雑な追加の構成要素を必要とすることなく、混合時間を短縮し、培養細胞に与えられる応力を減少させる。
【0027】
互換的に用いることができる「要素」または「搬送要素」という用語は、距離および角度に関して互いに対して一定の空間構成にある攪拌羽根の(機能)単位を指す。半径方向搬送要素は、攪拌羽根がシャフト軸に対して傾斜を有さない要素を指す。軸方向搬送要素は、攪拌羽根がシャフト軸に対して傾斜を有する要素を指す。搬送要素の攪拌羽根は、他の幾何学的形態を用いてもよいが、一態様においては矩形板である。要素の搬送方向は、要素の回転軸に対して表される。搬送要素の攪拌羽根は、シャフト自体から延出していなくてもよく、シャフトのアームまたは同等の手段に装着され得る。搬送要素のそれぞれは、規定数の攪拌羽根からなる。各羽根は、回転シャフトに直接接続されるかまたはハブを介して回転シャフトに接続される。搬送要素から独立した各攪拌羽根は外縁と内縁とを有する。各攪拌羽根のシャフト軸までの距離が最大である部分を羽根の先端とする。各搬送要素は外径と内径とを有する。例えば、軸方向搬送要素の外径は、対向する攪拌羽根の先端間の最大距離であり、半径方向搬送要素の内径は、対向する攪拌羽根の内縁間の最小距離である。
【0028】
用語「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされた1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を表す。認められている免疫グロブリン遺伝子は、種々の定常領域遺伝子および無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体は、例えば、一価、二価、三価、四価、五価、および六価の形態としてのFv、Fab、およびF(ab)2ならびに一本鎖(scFv)またはダイアボディ(diabody)もしくはトリアボディ(triabody)、ならびに単一特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または四重特異性抗体を含む様々な型で存在し得る。
【0029】
「ポリペプチド」は、自然のものであれ、合成されたものであれ、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸からなるポリマーである。アミノ酸残基が約20未満のポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれることがあり、2つ以上のポリペプチドからなる分子またはアミノ酸残基が100を超える1つのポリペプチドを含む分子は「タンパク質」と呼ばれることがある。ポリペプチドは、炭水化物基、金属イオン、またはカルボン酸エステルなどの、非アミノ酸成分も含み得る。非アミノ酸成分は、ポリペプチドが産生される細胞によって付加され得、細胞の種類によって異なり得る。ポリペプチドは、本明細書においては、それらのアミノ酸骨格構造またはそれをコードする核酸によって定義される。炭水化物基などの付加物は一般に明記されないが、それでもなお存在していることがある。
【0030】
液中通気培養槽は、一般に、ポリペプチドまたは抗体の製造のための動物細胞の培養に用いられる。その内部では一段式または多段式のただ単に軸方向に搬送するかまたはただ単に半径方向に搬送する攪拌システムが用いられる。本明細書において、用語「軸方向に搬送する」とは、搬送要素が、当該要素から離れる方向への、当該要素のシャフトまたは回転軸に平行な流れを発生させることを表す。同様に、用語「半径方向に搬送する」とは、搬送要素が、当該攪拌要素から離れる方向への、当該要素のシャフトまたは回転軸に垂直な流れを発生させることを表す。この観察は、反応器の空間寸法が限られていて、そのために上記流れが反応器の壁で偏向されるか否かに係わらず、また、攪拌要素に至る流れは異なり得るということに係わらない。シャフトおよびシャフト軸は、搬送要素つまり攪拌システムが用いられている培養槽の縦軸を通って延びる。要素の回転速度nは特性速度として用いられ、要素の直径dは特性長さとして用いられる。
【0031】
本明細書に記載の改良された攪拌システムは、哺乳類細胞培養用の搬送要素の組合せを用いることによって提供され得る。本明細書に記載の攪拌システムを用いると、培養細胞の剪断応力を低減させながら、同等の生存率、細胞密度、および産生物力価を達成することができる。本明細書に記載の攪拌システムは、例えば3つの軸方向搬送要素(3つの傾斜羽根攪拌機等)からなる攪拌システムと比較して、培養槽内容物の混合を改善することができると同時に、達成可能な細胞密度を保持することができるということが分かった。本明細書に記載の攪拌システムは、例えば、酸、塩基、栄養培地、消泡剤等といった補正剤を導入するために培地表面においてもしくは培地表面から液体を混合し、またはさらに液体表面を介してCO2もしくはO2を混合すること、および動物細胞の培養の際に培地を迅速に全体混合することにも、特に適している。
【0032】
流体力学において、レイノルズ数(Re)は水力学系における慣性力と内部摩擦力との比を表す。そこから、動かされた培地の乱流の程度について説明することもできる。攪拌される液体に関して、攪拌機レイノルズ数は式1において以下のように定義される。

【0033】
ニュートン数(Ne、動力数ともいう)は抵抗力と流れの力との比を表し、それゆえに攪拌される材料における攪拌機の流れ抵抗の尺度であり、式2で表される。

【0034】
種々の攪拌システムについてのNe数を図2に示す。
【0035】
プロペラ攪拌機または傾斜羽根攪拌機のようなニュートン数の低い搬送要素は、ラシュトンタービンのようなニュートン数の高いものよりも効率的に動力入力を水力学的出力すなわち流体の運動に変換する。
【0036】
培養プロセスにおける攪拌プロセスを評価するための基準として、混合時間が挙げられる。不均質な液体同士の混合における「混合時間」とは、培地において規定の均質性を達成するのに必要な時間を指す。混合時間に影響を及ぼす要因は、混合の程度および観察部位である。混合の程度は、反応器の幾何学的形状、攪拌機の幾何学的形状、攪拌機の回転頻度、および攪拌される材料の物質に依存する。培養プロセスにとって重要なのは、可能な限り、すべての細胞に、必要な基質(栄養培地、O2等)が最適かつ均一に供給されることと、代謝物(オーバーフロー産生物、CO2等)が同時に排出されることである。つまり、細胞の損傷を回避するために、培養槽の内部で空間的および時間的に起こり得る貯蔵および沈積が回避されるか、または少なくとも最小化されなければならない。これは、例えば、槽の内容物を混合するための改良された攪拌システムを用いることによって、達成することができる。混合プロセスは、サブプロセスであるミクロ混合とマクロ混合とに分類できる。ミクロ混合は拡散またはミクロ乱流による分子濃度調節として定義され、これに対して、マクロ混合は攪拌機によって引き起こされる対流性の粗混合として定義される(例えば、Houcine, I., et al., Chem. Eng. Technol. 23 (2000) 605-613; Zlokarnik, M., "Ruhrtechnik Theorie und Praxis", Springer Publishers, Berlin Heidelberg, 1999参照)。混合の程度は、Henzler(Henzler, H.-J., "Homogenisieren: Referenz-Ruhrsysteme und Methoden zur Erfassung der Homogenisierungseigenschaften von Ruhrsystemen", GVC Fachausschus Mischvorgange, 1998)によると、以下のように式3で定義することができる。

【0037】
この式において、

は理論上完全な混合後のトレーサ物質の濃度に対応し、Δaは時間tにおけるトレーサ物質の局所的濃度の最大差に対応する。一般に、混合の程度X1 = 0.95が十分であるとみなされる(上記Henzler参照)。式4で表される混合係数CH 0.95は、この混合の程度に基づくものであり、混合時間Θ0.95と使用された攪拌機の回転速度nとの積である。このため、この混合係数は、相互混合の程度0.95を達成するためにある剤の添加後に必要とされる攪拌機回転数に対応する。

【0038】
表1に示しかつ図3および図4に抜粋した混合係数は、脱色法を用いた混合時間調査の結果として得られたものである。
【0039】
(表1)様々な攪拌機の混合係数

【0040】
各構成の比較において、本明細書に記載の攪拌システムは、例えば、平均混合指数がそれぞれ65.5および77である、3つの別個の傾斜羽根攪拌機からなる攪拌機(3SBR)または3つの別個の円盤型攪拌機からなる攪拌機(3SSR)と比較すると、一定のレイノルド数で平均混合指数はおよそ38である。ここで、本明細書に記載の装置の一態様において、培養槽の充填高さHの、培養槽の直径Dに対する比は約1.6である。用語「約」とは、その後に続く値が厳密な値ではなく、単にある範囲の中心値であることを表す。用語「約」は、一態様においては中心値から+/-25%の範囲、さらなる態様においては+/-15%の範囲、そしてさらに別の態様においては+/-10%の範囲を表す。
【0041】
動物細胞の培養のための別のプロセスパラメータは、培地中の細胞にかかる剪断応力である。動物細胞の培養は、とりわけ、細胞にかかる機械的および水力学的応力によって制限される。応力は、一方では攪拌機自体によって、他方では培地の気泡曝気によってもたらされる(例えば、Wollny, S., and Sperling, R., Chem. Ing. Tec. 79 (2007) 199-208参照)。攪拌タンク反応器内の大部分を占める乱流領域に関しては、水力学的応力は、式5によるレイノルズ応力のアプローチによって与えられる(Henzler, H.J. and Biedermann, A., Chem. Ing. Tec, 68 (1996) 1546-1561)。

【0042】
式5によると、主な応力を流体要素の乱流速度変動u'によるものと推論することができる。
【0043】
剪断応力の特性決定を、通気しない状態で攪拌システムについて実施した。基準フレーク直径dVFは、現状の応力の相対尺度を表し、図5および表2に示されている。基準フレーク直径が大きいほど、水力学的応力は小さい。この場合、曝気のスイッチが入っていないので、唯一の影響は攪拌システムによるものである。
【0044】
(表2)100W/m3の動力入力での様々な攪拌システムの基準フレーク直径の例

【0045】
例えば3つの傾斜羽根攪拌機のような軸方向搬送要素のみを備えた攪拌システムと比較すると、本明細書に記載の攪拌システムがもたらす応力は極めて小さい。すなわち、より大きい基準フレーク直径dVFのフレークとなる。
【0046】
図2は、非通気動力入力を測定することができるニュートン数の比較を示す。本明細書に記載の攪拌システムは、より穏和でより均一なエネルギー入力を与える極めて高いニュートン数になり得ることが分かる。
【0047】
様々な攪拌システムと直接比較すると、本明細書に記載の攪拌システムは、混合(図3および図4、表1)ならびに発生剪断応力(図5、表2)において多くの利点を示す。
【0048】
高い産生物力価と優れた産生物品質とを達成するためには、細胞株の発達、培地の組成、および培養槽の寸法決定に加えて、培養槽の動作モードが重要な役割を果たす。以下の動作モード、すなわち、バッチつまりバッチプロセス、フェドバッチつまり流加プロセス、細胞保持を伴うまたは伴わない連続プロセス(例えば灌流またはケモスタット)、および例えば内部透析または外部透析などの半連続プロセスの間には差異があり得る。
【0049】
例えば外部透析または内部透析などの半連続培養プロセスにおいては、膜を通して基質が培養容器に供給され、それと同時に、阻害成分/培養細胞の代謝産物が排出される。この物質交換は、拡散による。したがって、主な影響要因は、現状の濃度差、膜材料、膜表面、膜材料内部の各化合物の拡散係数、および膜にぶつかる流れによって決定される相界面の厚さである。透析が高細胞密度発酵において用いられる場合、透析は、反応器内に取り付けられた(中空繊維)透析モジュールが培地と新鮮な培養液との交換領域を提供する灌流様の半連続プロセスである。培養液は、貯蔵容器から汲み出されて透析モジュールを通り、その後、再び貯蔵容器へ戻される(図13の概略図参照)。透析モジュールは、反応器の外側に位置していてもよく(外部透析)、反応器内部に位置していてもよい(内部透析)。どちらの動作モードにも同じ物理法則が当てはまる。このため、本明細書においては、一局面として、本明細書に記載の攪拌システムおよび培養容器と、任意で透析モジュールとを備えた装置が記載される。
【0050】
培養槽は、上部と中間部と下部とを有し、槽の縦軸は上部の中間または中央から下部の中間または中央に延びている。円筒形の培養槽は、縦軸に垂直に見ると実質的に円形の断面を有する。培養槽の上部は、気体排出口手段、1つ以上の入口手段、ならびに/または保守および清掃用のマンホール手段をさらに備え得る。培養槽の下部は、1つ以上の液体培地入口手段、1つ以上の液体培地出口手段、および/または気体入口手段をさらに備え得る。培養槽の中間部は、培養槽の外壁に装着された熱交換ジャケットをさらに備え得る。攪拌システムの搬送要素はシャフトによって回転させられ、シャフトはその回転を誘起するための適切な機構に連結されている。シャフトは培養槽の縦軸に沿って延び、そのため、垂直に方向付けられた回転軸を有する。シャフトは、槽の底までは延びていないが、槽の底よりも十分に上かつ培養槽の底の任意の気体分散器よりも十分に上の地点まで延びている。シャフトは、適切な連結機構によって駆動シャフトに動作可能に連結されている。シャフトを駆動シャフトに連結するための手段に加えて、シャフトは、さらに、搬送要素を個別にシャフトに連結するためのさらなる手段すなわち少なくとも3つの手段を備えている。攪拌システムの搬送要素は、攪拌システムがいったん培地中に沈められると培養槽内の培地表面よりも下である/あろう位置でシャフトに連結される。該表面は、培地が静止している、すなわち循環させられていないときに決定される。培養槽はドラフトチューブを含んでいない。
【0051】
1つの任意の態様において、培養槽はバッフル付き槽である。別の態様において、培養槽は、2つまたは4つのバッフルを含む。「バッフル」とは、培養槽の内部にシャフト軸と同じ方向に設置され、かき混ぜ機に向かって培養槽内へ半径方向に延びている板を表す。バッフルは概ね矩形の形状である。一態様において、バッフルは、培養槽の内壁に対して距離bdをおいて設置される。別の態様において、バッフルは、培養槽内部の縁の周囲に等間隔で配置される。
【0052】
一態様において、上記装置は透析モジュールも備える。上記装置の各構成要素は、意図された機能を発揮できるような寸法、すなわち、培養容器が、培地を取り込むことができ、攪拌システムが、培地を混合して、添加された化合物を分散させることができ、透析モジュールが、新鮮な培地を提供して、培養細胞によって分泌される代謝化合物を排出することができるような寸法に合わせられている。このため、攪拌システムは、透析モジュールの有無に関わらず容器内で妨げられることなく回転することが可能な直径を有する。本明細書に記載の装置を用いれば、灌流培養としてまたは透析培養としての高細胞密度培養を有利に実施できる。培養は、一態様においては、培地へのレイノルズ数に依存しない一定の動力入力を達成可能な攪拌システムの回転速度で実施される。すなわち、培養中、培養容器内の培地の乱流が提供される。本明細書に記載の装置を用いると、他の攪拌システムと比較して攪拌システムの回転速度が低速であっても同じ動力入力で、剪断による影響を受けやすい哺乳類細胞を培養することが可能である。
【0053】
培養容器の形態は限定されない。一態様において、培養容器は円筒容器である。別の態様において、培養容器は攪拌タンク反応器である。培養容器は任意の寸法を有し得る。一態様において、培養容器は5 l〜25,000 lの作業容量を有する。
【0054】
新鮮な培養液由来の成分は透析モジュールの内部から半透過性中空繊維膜を通過して培養容器へと拡散し、それと同時に、培養細胞の代謝物は濃度差に応じて反対方向に培養容器から培養液へと拡散する。その目的は、培養容器内の阻害代謝物の絶対濃度を可能な限り低く保つ(希釈)と同時に必須栄養分の濃度を可能な限り長く培養に最適なレベルに維持することである。この結果、透析を行わないプロセスと比較して培養条件が改善され、それにより、より高い最大細胞密度または産生物力価を達成することが可能になる。
【0055】
透析モジュールでの輸送プロセスは、フィックの第1法則と関連して二重境膜説によって気泡での物質移動と同等に説明することができる。このため、中空繊維透析モジュールの交換領域AHに基づいた線形勾配を仮定すると、有効移動拡散流束Jeffは、下記式6に基づく。

【0056】
拡散の推進力は、有効拡散経路zeffに対する透析モジュールの内外の濃度差ΔCiである。この有効拡散経路は、透析モジュールの中空繊維膜の内側の内側層流境界層δBI、中空繊維膜自体δM、および反応器内の中空繊維膜の外側の外側層流境界層δHIをそれぞれ通過する個々の経路で構成される。それらは一般に拡散分子の大きさおよび形状、周囲の培地の性質、ならびに温度に依存する。
【0057】
上記の部分のそれぞれについて別個の物質移動係数を定義することができ、それらの逆数の合計から、式7により全物質移動抵抗1/kが求められる。

【0058】
中空繊維膜の内側および外側の層流境界層における輸送抵抗もまた、中空繊維膜にぶつかる流れに依存する。膜に向かう流れが良好なほど、すなわちより垂直になるほど、層流境界層は狭くなり、対応する輸送抵抗は低くなる。培養容器内の透析モジュールに関しては、外側層流境界層の輸送抵抗は、とりわけ以下の要因に直接依存する:
・攪拌システムの回転速度、
・攪拌システムの種類、
・膜にぶつかる流れ、
・攪拌システムによって生成される主な流れプロファイル。
【0059】
中空繊維膜の内側の層流境界層の抵抗は、内径が小さいこと、およびそれに伴って流速が速いことにより無視できる。本出願において、「中空繊維膜の内側」という用語は、中空繊維膜の貯蔵容器に面する側を指す。「中空繊維膜の外側」という用語は、中空繊維膜の培養容器に面する側を指す。これにより、全物質移動抵抗は、主に膜内部の抵抗と外側層流境界層の抵抗とが寄与する直列抵抗である(Rehm, et. al., Biotechnology - volume 3: Bioprocessing, VCH Weinheim, 1993)。全物質移動係数kは、全物質移動抵抗の逆数から導かれ、中空繊維透析モジュールの体積比表面aとの乗算により表面積と関係づけることができる(ka値)。以下の式8を用いて、差し引きした間隔である(balance space)反応器および貯蔵容器の濃度の時間経過を説明することができる。

【0060】
概して、液中通気式培養容器が細胞培養に用いられる。これらの場合、一段または二段の軸方向搬送攪拌システムが主に用いられる。このことにより、回転シャフトと本質的に平行な流れプロファイルが生じる。このため、図12に示す配置において、回転シャフトに平行な透析モジュールを用いると、透析モジュールにぶつかる直接の流れは得られない。このことは、透析モジュール内の物質輸送に悪影響を及ぼす(繊維表面上のより広い外側層流境界層)。
【0061】
透析膜にぶつかる直接の接線方向流れつまり半径方向流れは、例えば標準のアンカー翼によって達成可能な有利な効果を有する。この攪拌翼は、反応器内の1つまたは複数の透析モジュールに直接向けられ、ひいては透析モジュール表面上の層流境界層を低減する流れを発生させる。しかしながら、この単純な半径方向流れは、特に、反応器の混合および特に液中通気式反応器における物質移動に関して、その他の基本的な技術的プロセス機能に不利である。気体は、例えばパイプスパージャまたはリングスパージャを介して培養容器に導入され得る。
【0062】
本明細書に記載の攪拌システムは、他の攪拌システムと比較すると、例えば酸または塩基などの補正剤を液体表面を介して導入するために培地をより迅速に混合するため、泡沫形成を低減させるため、および透析法においては生物付着を低減させ、透析モジュールにぶつかる直接の直交流れによって物質移動速度を増加させるために、用いることができる。
【0063】
IGF-1RまたはCD20またはHER2に対する抗体を産生する動物細胞の培養における本発明による攪拌システムの使用は、例として示されていた(国際公開公報第2004/087756号参照;国際公開公報第2007/045465号、第2007/115814号、および第2005/044859号参照;国際公開公報第99/057134号および第92/022653号参照)。このことは、開示の限定を意味するものではなく、ただ本発明の説明に役立つだけである。図6〜図11から分かるように、本明細書に記載の攪拌システムの使用は、異なる攪拌システム(例えば3つの傾斜羽根攪拌機等)と比較すると、生細胞密度、生存率、および産生物形成について同様の経時変化を示す。
【0064】
本出願において用いられる略語は以下の意味を有する(図1aも参照)。
b:半径方向搬送要素の羽根の幅
d:かき混ぜ機の全外径
dw:シャフトの直径
h:半径方向搬送要素の攪拌羽根の高さ
hB:軸方向搬送要素の高さ
Δh:2つの搬送要素の高さの差
l:軸方向搬送要素の攪拌羽根の長さ
α:軸方向搬送要素の羽根の羽根傾斜度
z:攪拌機1つ当たりの攪拌羽根数
di:半径方向搬送要素の攪拌羽根間の内側距離
D:培養容器の内径
H:培養容器の充填高さ
【0065】
一態様において、2つの搬送要素の高さの差(Δh)の培養容器径(D)に対する比は少なくとも0.75である。本明細書において、一局面としてポリペプチドまたは抗体の製造のための細胞の培養のための本明細書に記載の攪拌システムの使用が記載される。一態様において、培養は透析である。さらなる態様において、培養は、液中通気式攪拌タンク培養容器内で実施される。別の態様において、細胞は真核細胞であり、別の態様においては哺乳類細胞である。なおさらなる態様において、細胞は、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、COS細胞、PER.C6細胞、Sp2/0細胞またはHEK293細胞である。一態様において、細胞は、アルスロバクター・プロトホルミエ(Arthrobacter protophormiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、枯草菌(Bacillus subtilis)、BHK細胞、カンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)、セルロモナス・セルランス(Cellulomonas cellulans)、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、CHO細胞、大腸菌(E.coli)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、H.ポリモルファ(H. polymorpha)、HEK細胞、HeLa細胞、ラクトバチルス・デルブリュッキ(Lactobacillus delbruekii)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、MDCK細胞、パエニバチルス・マセランス(Paenebacillus macerans)、P.パストリス(P. pastoris)、シュードモナス(Pseudomonas)属種、出芽酵母(S. cerevisiae)、ロドバクター(Rhodobacter)属種、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ストレプトマイセス(Streptomyces)属種、ストレプトマイセス・アヌラタス(Streptomyces anulatus)、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)、Sf-9細胞、およびキサントモナス・カンペストリス(Xantomonas campestris)から選択される。なおさらなる態様において、抗体は、CD19、CD20、CD22、HLA-DR、CD33、CD52、EGFR、G250、GD3、HER2、PSMA、CD56、VEGF、VEGF2、CEA、Lewis Y抗原、IL-6受容体、またはIGF-1受容体に対する抗体である。
【0066】
以下の実施例および図面は、本発明の主題を例示するために提供される。保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。開示された方法の主題を本発明の主題から逸脱することなく変更することができることは明らかである。
【実施例】
【0067】
実施例1
培養装置
すべての調査を300 lのPlexiglas(登録商標)モデル容器(以下DN 640という)または製造反応器自体において実施した。透析調査を100 lのPlexiglas(登録商標)モデル容器(以下DN 440という)において実施した。
【0068】
実施例2
動力入力
異なる攪拌機の動力入力を、回転シャフトのトルクを計測することによって測定した。データ処理システムモデルGMV2をトルクセンサモデルDRFL-II-5-A(どちらも"ETH Messtechnik" Company, Gschwend, Germanyから)と共に用いてトルクを記録した。攪拌システムごとに、まず無充填状態(Mempty)で様々な回転速度でトルクを記録し、次いで、充填状態(Mload)で式9により三重測定によってトルクを記録した。
M=Mload−Mempty(式9)
【0069】
その後、対応するニュートン数(Ne数)およびレイノルズ数(Re数)をポイントごとに算出した。攪拌システムのニュートン数は乱流領域内で一定になるため、算出したニュートン数を次いでこの領域内で平均した(UhI, V. W. and Gray, J.B., Mixing Theory and Practice, Academic Press, 1966)。この平均値は、各攪拌機の全ニュートン数を表す。
【0070】
実施例3
均質化
変色法および導電率法を用いて均質化を測定した。
【0071】
変色法は、ヨウ素ヨウ化カリウムで染色されたデンプン溶液をチオ硫酸ナトリウムの添加により脱色させることに基づくものである(I、KI、デンプン、Na2S2O3はCarl Roth GmbH & Co KG Company, Karlsruhe, Germanyより入手)。1モルのチオ硫酸ナトリウム溶液および1モルのヨウ素ヨウ化カリウム溶液(ルゴール溶液)ならびに10g/lの濃度のデンプン溶液を出発溶液として用いた。導電率実験に対応して、攪拌機1つ当たり少なくとも4段階の速度を試験し(速度1段階当たり四重測定)、容器充填量当たり最大で4つの実験を実施した。いずれの場合にも、容器を1回充填するたびにデンプン溶液を添加した。計測ごとに、対応する体積のヨウ素ヨウ化カリウム溶液をまず添加し、次いで、チオ硫酸ナトリウムを添加した。混合時間は、チオ硫酸ナトリウムの添加時点から手動で測定し、添加時間を考慮に入れるためにいずれの場合にも1秒を差し引いた。計測完了後、先に添加された過剰のチオ硫酸ナトリウムを相殺するために、容器充填体積をヨウ素ヨウ化カリウムで滴定(中和)した。
【0072】
導電率法においては、混合時間は、電解質溶液の添加から、最後に計測された導電率の変動が定常状態で達する導電率値を中心として±5%の許容差範囲を超えた時点までの時間として定義される。いくつかのプローブが用いられるのであれば、いずれの場合にも最長の検出混合時間がシステム全体の代表とみなされる。
【0073】
30%(w/v)NaCl溶液(NaCl結晶、Merck KGaA Company, Darmstadt, Germany)を電解質溶液として用いて、導電率法によって混合時間を測定した。この溶液を攪拌機の回転シャフトにおいて液体表面にパルスで添加し、添加1回当たりの体積は、定常状態で生じた導電率の急な変化が200mS/cmを超えないように選択した。
【0074】
攪拌機ごとに少なくとも4段階の速度を試験した。速度1段階につき少なくとも8回混合時間を測定し、これらの8つの値を平均した。各攪拌システムの混合係数は、速度1段階ごとに平均された混合係数の平均値として求められる。導電率は、いずれの場合にも、3つの4極導電率プローブ(TetraCon, WTW Company, Weilheim)によって容器内の様々な半径方向位置または軸方向位置で計測した。導電率信号は、使用した計測増幅器(Cond813, Knick "Elektronische Messgerate GmbH & Co, KG" Company, Berlin, Germany)を介してオンラインで読み出した。計測値は、サンプリングレート5秒でソフトウェアParaly SW 109(Knick "Elektronische Messgerate GmbH & Co, KG" Company, Berlin, Germany)によってすべてのプローブについてオンラインで同時に記憶した。一連の計測を完了した後、データをプローブごとに個別に評価した。
【0075】
実施例4
剪断応力
モデル粒子系として青色粘土ポリマーフレーク系を用いて剪断応力を測定した。これは、カチオンポリマー(Praestol BC 650)と容器内に配置された粘土鉱物(青色粘土)とからなるモデル粒子系である。規定の大きさのフレークを生成するPraestol BC 650を添加することによって凝集反応を開始させる。次いで、これらのフレークを攪拌システムの機械的および流体力学的応力によって破壊する。気泡通気式システムの場合は、気泡が形成され破裂する際のエネルギーの散逸によってさらに破壊される。モデル粒子系の平均粒径を計測変数として用いて剪断応力を特性決定した。この場合、Mettler Toledo CompanyのFocused Beam Reflectance Measurement Probe(以下FBRM(登録商標)と呼ぶ)によってインサイチューで粒度の変化を計測した。測定された粒度の変化率は、モデル系において優勢な剪断応力の尺度である。粒度の変化率の勾配は、実験中小さくなっていくが、平衡状態にはならない(青色粘土一次粒子の直径が15μmにほぼ等しくなるまでの粒子粉砕)。このことから、以下の基準(式10)により、青色粘土ポリマーフレーク系の最終フレーク直径dp50'を測定した。

【0076】
異なる動力入力でかつ異なる攪拌機間での最終フレーク直径の比較性を確保するために、基準フレーク直径を以下のように算出した(式11〜13)。

【0077】
(表3)粒子応力の測定に使用した物質(濃度は容器充填体積に基づく)

【0078】
まず、100 lのモデル容器を、対応する体積(H/D比)の完全に脱塩した水(VE水)で充填し、20℃の温度に維持した。次いで、CaCl2溶液での滴定によって導電率を1000μS/cmの値に調節した。4極導電率プローブ(プローブ:TetraCon, WTW Co. Weilheim、計測増幅器:Cond813, Knick "Elektronische Messgerate GmbH & Co, KG" Company, Berlin, Germany)によって導電率を計測した。その後、適切な量の青色粘土とNaClとを上記溶液に添加した。次いで、均質化フェーズが少なくとも20分間、最高速度で起こった。FBRM(登録商標)プローブ(FBRM(登録商標)Lasentec(登録商標)D600L, Mettler-Toledo GmbH Co., Giessen, Germany)を、容器内に上方から垂直に(浸漬深さ300mm)壁までの半径方向距離70mmにて装着した。次いで、Praestol 650 BSを規定速度で添加することによって凝集反応を開始させた。プログラムデータ取得制御インターフェースバージョン6.7.0(Mettler-Toledo GmbH, Giessen, Germany)によって計測値をオンラインで記録した。計測データから基準フレーク径を決定した。攪拌機ごとに少なくとも3つの動力入力を計測した。いずれの場合にも、1つの動力入力につき3回の計測を実施した。
【0079】
実施例5
透析(物質移動 液体-液体)
NaCl溶液(NaCl結晶、Merck KGaA Company, Darmstadt, Germany)をトレーサ物質として用いて、使用した攪拌システムおよび体積比動力入力に関連するモジュール(DIADYN-DP 070 Fl OL; MICRODYN-NADIR GmbH Company, Wiesbaden, Germany)の濃度半減期を測定した。各実験開始時に貯蔵容器内でトレーサ物質を1500μS/cmの基準値導電率に調節した。各実験毎に反応器を完全に脱塩した水で充填した。反応器の充填体積は100 l(H/D = 1.6)、貯蔵容器の充填体積は400 l(H/D = 2.0)であり、両容器を各実験開始時に20℃の温度に維持した。両容器内の導電率を4極導電率プローブ(プローブ:TetraCon, WTW Co. Weilheim, Germany、計測増幅器:Cond813, Knick "Elektronische Messgerate GmbH & Co, KG" Company, Berlin, Germany)によって計測した。使用した計測増幅器のサンプリングレートは5秒であり、計測値はソフトウェアParaly SW 109(Knick "Elektronische Messgerate GmbH & Co, KG" Company, Berlin, Germany)によってすべてのプローブについてオンラインで同時に記憶した。NaCl溶液は、供給容器と透析モジュールとの間のぜん動ポンプ(housing pump 520 U, Watson-Marlow GmbH, Company, Rommerskirchen, Germany)によって、2.1 l/分の一定流量で循環させた。評価のために、プローブ1を反応器用の基準プローブとして用い、プローブ3を貯蔵容器用の基準プローブとして用いた。これらの2つのプローブのデータを評価ルーチンによって評価した。いずれの場合にも、攪拌機1つにつき、反応器における少なくとも6つの異なる動力入力を調べた。
【0080】
NaCl溶液によって測定された物質移動特性を比較するために、グルコース溶液をトレーサ物質として追加の計測を実施した。このために実験の段取りを変えることはしなかった。3g/lの濃度の規定のグルコース濃度(グルコース固形物、Merck KGaA Company, Darmstadt, Germany)を貯蔵容器内に提供した。グルコース濃度を、血糖計測器(ACCU-CHEK(登録商標)Aviva, Roche Diagnostics GmbH Company, Mannheim, Germany)によって、10分間隔で貯蔵容器および反応器について手動で同時に測定した。
【0081】
実施例6
抗IGF-1R抗体
国際特許出願公開公報第2004/087756号、第2007/045465号、および第2007/115814号に公開されているデータに基づき、一般に知られている方法によって、抗IGF-1R抗体を分泌する細胞株を製造および培養した。
【0082】
実施例7
抗CD20抗体
国際特許出願公開公報第2005/0044859号に公開されているデータに基づき、一般に知られている方法によって、抗CD20抗体を分泌する細胞株を製造および培養した。
【0083】
実施例8
抗HER2抗体
国際特許出願公開公報第92/022653号および第99/057134号に公開されているデータに基づき、一般に知られている方法によって、抗HER2抗体を分泌する細胞株を製造および培養した。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直な攪拌シャフトに上下に配置された2つの半径方向搬送攪拌要素と1つの軸方向搬送攪拌要素とからなる攪拌システムであって、前記軸方向搬送攪拌要素が前記半径方向搬送攪拌要素よりも上に配置された、攪拌システム。
【請求項2】
培地を含む培養槽内で用いられるとき、レイノルズ数5*104〜5*105においてニュートン数5.5〜8.0であることを特徴とする、請求項1記載の攪拌システム。
【請求項3】
培地を含む培養槽内で用いられるとき、約0.05W/kgの動力入力において混合時間Θ0.95が約20秒であり、約0.3W/kgの動力入力において約10秒であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システム。
【請求項4】
半径方向搬送攪拌要素としての2つの円盤型攪拌機または2つのラシュトンタービンと軸方向搬送攪拌要素としての1つの傾斜羽根攪拌機とからなることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システム。
【請求項5】
前記半径方向搬送攪拌要素が2〜8つの攪拌羽根を有し、かつ前記軸方向搬送攪拌要素が2〜10個の攪拌羽根を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システム。
【請求項6】
すべての搬送要素が同じ直径dを有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システム。
【請求項7】
前記攪拌要素の直径dの前記培養槽の直径Dに対する比が0.32〜0.35の範囲であることを特徴とする、請求項7記載の攪拌システム。
【請求項8】
前記軸方向搬送攪拌要素の攪拌羽根の傾斜度が、前記攪拌シャフトに対して10°〜80°であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システム。
【請求項9】
前記請求項のいずれか一項記載の攪拌システムと培養槽とを含む装置。
【請求項10】
前記攪拌システムが、培地を含む前記培養槽内で用いられるとき、レイノルズ数5*104〜5*105においてニュートン数5.5〜8.0であることを特徴とする、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記攪拌システムが、培地を含む前記培養槽内で用いられるとき、約0.05W/kgの動力入力において混合時間Θ0.95が約20秒であり、約0.3W/kgの動力入力において約10秒であることを特徴とする、請求項9または10のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項記載の装置中で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞を培養するための方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、ポリペプチドを製造するための方法:
a)前記ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を請求項9〜11のいずれか一項記載の装置中で培養する工程;
b)前記培地または前記細胞から前記ポリペプチドを回収する工程;および
c)前記ポリペプチドを精製し、それによって前記ポリペプチドを製造する工程。
【請求項14】
動物細胞培地を混合するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の攪拌システムの使用。
【請求項15】
動物細胞を培養するための装置であって、
a)培養槽と、
b)前記培養槽の中央軸に沿った垂直なシャフトと、
c)請求項1〜8のいずれか一項記載の攪拌システムと、
d)前記培養槽の底にある気体給送部と、
e)補正溶液および/または栄養供給溶液を添加するための、液体表面よりも上の領域における少なくとも1つの入口と、
を含むことを特徴とする、装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−533419(P2012−533419A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520959(P2012−520959)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004520
【国際公開番号】WO2011/009625
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】