説明

攪拌乾燥装置

【課題】 本発明は、構造が単純で製造が容易であり、しかも乾燥効率の良い攪拌乾燥装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明による攪拌乾燥装置は、ほぼ水平に配置され両端に被乾燥物と乾燥気体の供給口及び取出口を備えた攪拌室と、該攪拌室内に回転自在に配置されたパドル軸と、該パドル軸に取り付けられた複数のパドルからなり、前記乾燥気体により被乾燥物を乾燥する攪拌乾燥装置において、前記複数のパドルのうちの一部がパドル軸に対して異なった傾斜角度に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を効率的に乾燥することのできる攪拌乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこ廃培地、生ゴミ、粉砕した石膏ボードなどのバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物は水分比率が高いため、そのままで燃焼、成型等の処理をすることが困難であった。従って、これらのバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を乾燥させるための技術が多く提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、一端にごみ受入れ口が形成されるとともに他端にごみ排出口が形成された内筒が、横向きに配置されるとともに、その軸芯を中心に回転自在に設けられる一方、内筒の外周部には当該内筒を覆うように外筒が設けられ、内筒内には水平軸支された攪拌軸に複数の攪拌パドルが延設されてなる攪拌部材が設けられ、内筒内に投入したバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を、攪拌部材により攪拌させながらこの内筒に導入する熱風により直接的に乾燥するとともに、外筒に導入する昇温空気により間接的に乾燥するように構成されたバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物乾燥機において、前記内筒の軸芯と攪拌部材の攪拌軸とは、ごみ排出口側にかけて下方に所定の傾斜角度で傾斜して配置され、攪拌軸の傾斜角度が内筒の軸芯の傾斜角度よりも小さくなされたことを特徴とするバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物乾燥機が提案されている。
【0004】
上記技術においては、筒状の攪拌室内にパドルを用いた攪拌部材が配置されているが、先端パドルは基端パドルに対して直交して配置されているため、図3を参照すると先端パドルは攪拌軸に対して傾斜していないと考えられる。従って、供給されたバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物は内筒の傾斜角に従って排出口側に移動すると考えられる。また、排出口近くに堰部材を設ける構成も提案されているが、これはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の滞留時間を長くするには効果を発揮するものの、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を排出する点から見ると障害となる。
【0005】
さらに、内筒の軸芯と攪拌部材の攪拌軸とが、ごみ排出口側にかけて下方に所定の傾斜角度で傾斜して配置され、さらに攪拌軸の傾斜角度が内筒の軸芯の傾斜角度よりも小さくなされているため、傾斜角度を調整する工数が掛かり、また内筒と外筒とから構成されるため構造が複雑で製造コストが高くなるという問題点がある。
【0006】
一方特許文献2には、回転自在に設けられた2本のパドル軸をその内部に有して該パドル軸の一端側と他端側にそれぞれ原料の供給口と取出口を形成するとともに該原料の取出口側の上方にガス排出口を形成した攪拌室と、該攪拌室の下方に配されて攪拌室に熱ガスを供給する送風室と、を備えて、該攪拌室に供給した原料を攪拌しながら乾燥する原料の攪拌乾燥装置において、該2本のパドル軸にそれぞれ複数個のパドルを配するとともに、該パドル軸に取り付けたパドルの取り付け角度を2本のパドル軸で異ならせることによって、該パドルの回転による原料の送り速度を、2本のパドル軸で異ならせること特徴とする攪拌乾燥装置が開示されている。
【0007】
この技術では、水平に設置された攪拌室内に2本のパドル軸が備えられ、各々のパドル軸に取り付けられたパドルの取り付け角度を相互に異ならせることにより、流動する原料の移動速度を異ならせて乾燥効率を向上させることが記述されている。各パドル軸に取り付けられたパドル相互の取り付け角度は同一であると解釈される。
【0008】
上記技術においては、原料は攪拌室上部より供給してパドルの回転により水平方向に移動するが、乾燥のためのガスは攪拌室下部より供給される構成となっている。このため、攪拌室内の原料の一部がガス拡散板を通して下方の送風室に落下する可能性があり、送風室の清掃が問題となる。また、ガスが下部から供給されるため、乾燥した原料を下方へ排出することができないという問題点もある。
【0009】
【特許文献1】特開2002−168564号公報
【特許文献2】特開2007−255807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、構造が単純で製造が容易であり、しかも乾燥効率の良いバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置は、ほぼ水平に配置され両端にバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と乾燥気体の供給口及び取出口を備えた攪拌室と、該攪拌室内に回転自在に配置されたパドル軸と、該パドル軸に取り付けられた複数のパドルからなり、前記乾燥気体によりバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を乾燥する攪拌乾燥装置において、前記複数のパドルのうちの一部がパドル軸に対して異なった傾斜角度に配置されていることを特徴とする。
【0013】
前記パドルのうちバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口付近及び/またはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物取出口付近のパドルはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物送り込み方向(パドル軸に対して正角度)に傾斜され、その他のパドルはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物戻し方向(パドル軸に対して負角度)に傾斜されていることが好適である。
【0014】
前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と前記乾燥気体の供給口、及び前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と前記乾燥気体の取出口がそれぞれ前記攪拌室の同じ側に配置されていることが好ましい。
【0014】
前記乾燥機において、前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物が、前記乾燥気体により、供給口より取出口に移動されることも特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置では、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口付近のパドルはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物送り込み方向(パドル軸に対して正角度)に傾斜されているため、供給口より供給されたバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物はパドルの回転とともに攪拌室奥部へと誘導される。途中のパドルからは供給口付近のパドルとは逆にバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物戻し方向(パドル軸に対して負角度)に傾斜されているため、パドルの回転により供給口側に戻される力を受ける。しかし、乾燥用の高温気体が供給口側からバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物排出口側に流れているため、乾燥されて重量の軽くなったものほど気体の力で排出口側に早く送られ、攪拌室内での滞留時間が短くなる。一方、未乾燥で重量の重いものほど遅く送られ、結果として攪拌室内での滞留時間が長くなり、より効率的に乾燥を行うことができる。このため、従来の乾燥機と比べ、乾燥機の長さを従来よりも短くすることができ、排出口から排出されるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の含水率のバラツキが小さくなる。また、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物取出口付近のパドルを正角度に傾斜させることにより、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の排出を促進することもできる。さらに、本発明ではパドル軸が1本だけの単純な構成であるため、製造コストを抑えることができて攪拌乾燥装置を安価にしかも容易に製造することが可能となるばかりか、構成が単純なために保守も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。図3に本発明による攪拌乾燥装置の概略図を示す。(a)が平面図、(b)が側面図である。半円筒形攪拌室11がほぼ水平に置かれ、攪拌室11内にこの攪拌室11の長さ方向に対して平行にパドル軸2が設けられている。パドル軸2には攪拌のための複数のパドル1が取り付けられている。パドル1はパドル軸2から両側に突出するように配置され、隣り合うパドル1とは直交する配置となっている。図3(a)においては、右側が供給側、左側が排出側となる。図3(b)において、パドル軸2は時計回りに回転する。
【0017】
パドル1の形状については一例を図4に示した。パドル軸2よりアーム3が延伸されており、このアーム3の先端にパドル1が取り付けられている。
【0018】
図1には、図3に示したパドルの拡大模式図を示した。簡略化のため、側面が現れるパドルのみを選択的に示してある。この図では、右側2列のパドル1Aは右側が上がるように傾斜しており、逆に左側2列のパドル1Bは左側が上がるように傾斜している。この状態の説明図を図2に示した。パドル1Aでは、パドル軸2に対する角度θ1が正となる(右側が上がる)ように配置されており、パドル1Bではθ2が負となる(右側が下がる)ように配置されている。従って、パドル軸2が図1の右側から見て時計方向に回転すると、パドル1Aにより攪拌されるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物は右から左へと、すなわち攪拌室11の奥部へと誘導される。ところが、パドル1Bの部分では傾斜が逆方向のため、パドル1Bにより攪拌されるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物は左から右へと、供給口方向に戻される力を受ける。
【0019】
上記実施例の正面からの断面模式図を図5に示した。図3には示してないが、攪拌室11右端上部にはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口12及び乾燥気体供給口13が備えられ、攪拌室11の左端下部にはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物排出口14、上部には乾燥気体排出口15が備えられている。(排出口15を設けない場合もある。)この構成により、乾燥気体は攪拌室11内で右から左に移動する(図の21)。先に述べたように、パドル1Bにより攪拌されるバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物は供給口12方向に戻される力を受けるが、乾燥気体が供給口12から排出口14方向に流れているため、乾燥して軽くなったバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物ほど早く乾燥気体により排出口14方向に運ばれることになる。従って、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口12付近の数列のパドルを1Aの傾きとし、残りのパドルを1Bの傾きとすることにより、排出口14からは乾燥して軽くなったバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物ほど早く排出される。尚、乾燥気体排出口15を設けない場合は、排出口14からバイオマスおよび乾燥気体を排出する。
【0020】
上記乾燥気体としては、該ボイラーの排気を直接使用することができるが、一旦熱交換した気体を使用することもできる。また、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の種類や必要な乾燥度合いにより、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物排出口14付近のパドルを1Aの傾きとして、排出を促進することも可能である。
【0021】
次に、実際のシステムの構成例を説明する。ボイラーとしては、40万kcal/hの熱交換容量のものを使用した。フィルターとしては、処理ガス量4551Nm/hのものを使用した。乾燥機としては、全長5m、攪拌室直径1mで16対(32本)のパドルと2.2kWインバータモータを備えたものを使用した。パドルの傾斜角は、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口側から1〜2対目及び15〜16対目を正とし、残りの12対は負とした。
【0022】
尚、攪拌室11内でのバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の滞留時間を調整するには、パドルの傾斜角度や回転数、及び乾燥気体の供給量や温度を変更すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による攪拌乾燥装置では、バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の効率的な乾燥が可能であり、パドル軸が1本だけの単純な構成であるため、製造コストを抑えることができて攪拌乾燥装置を安価にしかも容易に製造することが可能となるばかりか、構成が単純なために保守も容易となる。従って、きのこ廃培地や生ゴミなどのバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の乾燥に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による攪拌乾燥装置のパドル構成を示す説明図である。
【図2】図1に示したパドル構成の拡大図である。
【図3】本発明による攪拌乾燥装置の概略図である。
【図4】図3に示した攪拌乾燥装置に使用したパドルの正面図である。
【図5】図3に示した攪拌乾燥装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1、1A、1B パドル
2 パドル軸
3 アーム
4 補助アーム
11 攪拌室
12 バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口
13 乾燥気体供給口
14 バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物排出口
15 乾燥気体排出口
21 バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物の流れ
22 乾燥気体の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ水平に配置され両端にバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と乾燥気体の供給口及び取出口を備えた攪拌室と、該攪拌室内に回転自在に配置されたパドル軸と、該パドル軸に取り付けられた複数のパドルからなり、前記乾燥気体によりバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物を乾燥する攪拌乾燥装置において、前記複数のパドルのうちの一部がパドル軸に対して異なった傾斜角度に配置されていることを特徴とするバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置。
【請求項2】
前記パドルのうちバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口付近のパドルはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物送り込み方向(パドル軸に対して正角度)に傾斜され、その他のパドルのうち一部はバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物戻し方向(パドル軸に対して負角度)に傾斜されていることを特徴とする請求項1記載のバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置。
【請求項3】
前記パドルのうちバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物供給口付近及びバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物取出し口付近のパドルはバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物送り込み方向(パドル軸に対して正角度)に傾斜され、その他のパドルのうち一部はバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物戻し方向(パドル軸に対して負角度)に傾斜されていることを特徴とする請求項1記載のバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置。
【請求項4】
前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と前記乾燥気体の供給口、及び前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物と前記乾燥気体の取出口がそれぞれ前記攪拌室の同じ側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置。
【請求項5】
前記バイオマス、有機・無機化合物または廃棄物が、前記乾燥気体により、供給口より取出口に移動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオマス、有機・無機化合物または廃棄物攪拌乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47592(P2013−47592A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201129(P2011−201129)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(592135649)ヒルデブランド株式会社 (3)
【Fターム(参考)】