説明

攪拌脱泡装置

【課題】どのような被処理物であっても、十分に攪拌脱包処理を行うことができる攪拌脱泡装置を提供する。
【解決手段】被処理物を収容する容器を備え、該容器は、公転及び自転の両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、容器の公転及び自転の少なくとも一方を開始して所定速度まで加速する加速制御手段17と、容器の公転及び自転の少なくとも一方を減速して停止させる停止制御手段18とを備え、前記加速制御手段17による加速制御の後、前記停止制御手段18による停止制御が開始する前に、前記公転及び自転の少なくとも一方の速度を変更する速度変更制御手段19を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容した被処理物を攪拌脱泡することができる攪拌脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の攪拌脱泡装置としては、被処理物を収容する容器を回転テーブル上に備え、該容器は、回転テーブルの回転によって公転するだけでなく、回転テーブル上で容器自体が回転することによって自転もするように構成されたものが公知である。このような攪拌脱泡装置にあっては、容器を公転させることによって容器内の被処理物に遠心力が働き、この遠心力で被処理物が容器の内側の壁面に押し付けられて該壁面に沿って競り上がり、それによって被処理物に含まれている泡を被処理物から分離して脱泡することができ、さらに、容器を公転及び自転させることによって、被処理物を、公転による遠心力で容器の壁面に競り上げた状態で自転によって渦状に流動させて(攪拌力を作用させて)攪拌することができる。
【0003】
ところで、このような攪拌脱泡装置として、容器の公転と自転とを同時に開始して加速し(加速制御を行い)、その後、公転速度及び自転速度が所定速度に達すると、それらの所定速度を一定時間維持する定速度制御を行い、所定時間が経過すると、容器の公転と自転とを減速して停止する(停止制御を行う)ように構成されたものが既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−36805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の攪拌脱泡装置にあっては、定速度制御を行っている際には、公転速度も自転速度も一定の速度であるため、被処理物を容器の壁面に押し付ける遠心力も渦状に流動させる攪拌力も一定となり、それ故、定速度制御中の容器内での被処理物の挙動は、一定の競り上がりで一定の流動となる。よって、被処理物が、粘度の高い材料と低い材料とからなる、例えばオフセット印刷機で使用するインキなどの場合、容器の壁面に沿って競り上がったインキの一部が壁面に付着したまま渦状の流動に入り込めず、十分(均一)な攪拌を行うことができない不都合があった。特に、比較的高粘度の色材料(例えばメジウムや白)と低粘度の色材料(例えば金赤、紅)とを攪拌脱泡処理する場合、前記定速度制御を行っている際には、低粘度の色材料は、遠心力により容器の壁面の高い位置まで競り上がるが、高粘度の色材料は、容器の壁面の低い位置に留まる。このため、低粘度の色材料と高粘度の色材料とを混ざり合うように流動させることができず、攪拌不足を招くことになる。尚、メジウムは、インキの特性値を変えずに濃度を落とすための希釈剤として使用される溶剤である。
【0006】
そこで、本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その解決しようとするところは、どのような被処理物であっても、十分に攪拌脱包処理を行うことができる攪拌脱泡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の攪拌脱泡装置は、前述の課題解決のために、被処理物を収容する容器を備え、該容器は、公転及び自転の両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、容器の公転及び自転の少なくとも一方を開始して所定速度まで加速する加速制御手段と、容器の公転及び自転の少なくとも一方を減速して停止させる停止制御手段とを備え、前記加速制御手段による加速制御の後、前記停止制御手段による停止制御が開始する前に、前記公転及び自転の少なくとも一方の速度を変更する速度変更制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、加速制御から停止制御までの間の期間に、速度変更制御手段によって公転及び自転の少なくとも一方の速度を変更するので、速度変更制御中の被処理物に作用する遠心力又は攪拌力を変化させることができ、被処理物の容器の壁面に沿った競り上がりの高さ、或いは、被処理物の流動の態様を変化させることができる。よって、被処理物が例えば粘度の異なる複数の色材料で構成されるような場合であっても、十分に攪拌脱泡処理することができる。尚、公転の速度を変化することによって、遠心力を強弱させることができ、自転の速度を変更することによって、渦状の流動の強さを強弱させることができる。
【0009】
また、前記速度変更制御手段は、前記公転及び前記自転の少なくとも一方の速度を、所定の速度範囲内で時間経過に伴って変化させる手段であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明における攪拌脱泡装置にあっては、加速制御から停止制御までの間の期間に、公転及び自転の少なくとも一方を速度変更制御手段で変更するので、被処理物の容器の壁面に沿った競り上がりの高さ、或いは、被処理物の流動の態様を変化させることができる結果、どのような被処理物であっても、十分に攪拌脱泡処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る攪拌脱泡装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同攪拌脱泡装置の一部を省略した縦断面図である。
【図3】本発明に係る攪拌脱泡装置の制御ブロック図である。
【図4】(a),(b)は公転と自転の駆動及び停止の2つのパターンを示すタイムチャートである。
【図5】(a),(b)は公転と自転の駆動及び停止の他の2つのパターンを示すタイムチャートである。
【図6】公転と自転の他の駆動パターンを示すタイムチャートである。
【図7】本発明に係る攪拌脱泡装置の他の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る攪拌脱泡装置の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1に、本実施形態における攪拌脱泡装置1を示している。この攪拌脱泡装置1は、複数の材料からなる被処理物を攪拌脱泡処理することができる装置である。尚、被処理物としては、例えば医療用材料や電子部品材料、液晶材料などの気泡を嫌う被攪拌材料の他、オフセット印刷機で使用するオフセットインキなどがある。
【0014】
図1に示す攪拌脱泡装置1は、上端に開口2Kが形成された上方開放型のケーシング2と、そのケーシング2内に収容された本体部3とを備えている。尚、本体部3の上部に、後述する容器5の上部及び錘9を移動操作する回転ハンドルHを露出させるための2つの開口K1,K2が形成された板状のカバー部材Kを設けている。
【0015】
本体部3は、図2に示すように、公転軸芯X1回りに回転可能に構成されたテーブル4と、被処理物を収容可能に構成され、テーブル4に設置されて自転軸芯X2回りに自転可能になるとともにテーブル4の公転軸芯X1回りの回転によって公転可能になる容器5と、容器5をテーブル4上で自転させる自転用駆動機構6と、テーブル4を回転させることにより容器5を公転させる公転用回転駆動機構7とを備えている。尚、テーブル4上には、容器5の公転又は公転と自転の両方が行われることにより発生する遠心力によって自ずと移動して容器5の重心位置とのバランスを取ることができるバランス調整装置Bを備えている。このバランス調整装置Bは、特開2011−36805号公報に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0016】
テーブル4は、公転軸芯X1が設定される支軸8に連結された中央部4Aと、この中央部4Aの外側に位置し、中央部4Aよりも低くなった水平部4Bと、この水平部4Bの回転径方向外側に連続して形成され、回転径方向外側ほど上方に位置する傾斜面4cが形成された傾斜部4Cとを備えている。また、テーブル4は、前記傾斜部4Cの傾斜面4cに容器5を自転軸芯X2回りに回転自在に取り付けることができるように構成されている。具体的には、傾斜部4Cの傾斜面4cには、容器5が着脱自在に内装可能に構成され、下部に円周状の溝5Mが形成された回転部材5Aが設けられている。また、テーブル4は、公転軸芯X1を基準にして容器5と回転径方向でほぼ対称の配置となるように、バランス調整装置Bを構成する錘9が水平部4Bに設けられている。尚、錘9は、その上端に設けられた回転ハンドルHを操作することにより、テーブル4の回転径方向に沿って移動可能に構成されている。また、容器5の回転軸である自転軸芯X2は、その上端側ほどテーブル4の公転軸芯X1側に接近するように傾斜している。
【0017】
公転用回転駆動機構7は、公転用の電動モータ7と、該電動モータ7の駆動回転軸(図示せず)に外嵌されて一体回転するように構成され、公転軸芯X1が設定される支軸8とを備える。そして、この支軸8の上端に、テーブル4の中央部4Aが連結されている。
【0018】
容器5は、一端が開口された有底円筒状の本体部51aと、この本体部51aの開口を密閉することができる蓋部51bとを備えている。
【0019】
自転用駆動機構6は、公転用の電動モータ7を駆動することにより支軸8と連れ回りするプーリ11と、プーリ11の回転力を前記回転部材5Aに伝動すべく、プーリ11と回転部材5Aの溝5Mとに渡って巻回された伝動ベルト12とを備えている。尚、前記プーリ11は、上下に溝11A,11Bが形成されており、上側の溝11Aに伝動ベルト12を介して前記回転部材5Aが連結され、下側の溝11Bに伝動機構13を介してパウダーブレーキ14が連結されている。
【0020】
伝動機構13は、パウダーブレーキ14から水平方向へ突出する出力軸14Aに一体回転自在に取り付けられた負荷用プーリ15と、負荷用プーリ15及び前記プーリ11の下側の溝11Bを連動連結する伝動ベルト16とを備えている。前記パウダーブレーキ14に印加する電圧を増減させることによって、プーリ11に加えられる回転負荷を可変することでプーリ11の回転数を変化させることができるようになっている。ここでは、伝動機構13として、伝動ベルト16を用いたベルト式の伝動機構としているが、歯車(ギヤ)を用いた歯車(ギヤ)式の伝動機構であってもよい。
【0021】
前記のように構成された攪拌脱泡装置には、制御装置U(図3参照)が備えられ、その制御装置Uによって制御されて動作するようになっている。具体的には、図3に示すように、容器5の公転及び自転を同時又はいずれか一方を先に開始して設定されている所定速度v1まで加速する加速制御手段17と、容器5の公転及び自転を同時に減速する、又はいずれか一方を先に減速して停止させる停止制御手段18と、前記加速制御手段17による加速制御の後、前記停止制御手段18による停止制御が開始する前に、前記公転及び自転の少なくとも一方の速度を変更する速度変更制御手段19とを制御装置Uに備えている。ここでは、容器5の公転の所定速度v1と自転の所定速度v1とを同一にしているが、異なってもよい。
【0022】
加速制御手段17は、容器5の自転の加速制御を行う自転用加速制御手段17Aと、容器5の公転の加速制御を行う公転用加速制御手段17Bとを備えている。
【0023】
自転用加速制御手段17Aは、容器5の自転が開始される時点に関する自転開始時点データ及び自転が開始されて所定速度v1まで加速する加速度データを記憶する加速制御データ記憶手段171を備え、公転用加速制御手段17Bは、容器5の公転が開始される時点に関する公転開始時点データ及び公転が開始されて所定速度v1まで加速する加速度データを記憶するための加速制御データ記憶手段172を備えている。
【0024】
ここで、自転用の加速制御データ記憶手段171及び公転用の加速制御データ記憶手段172に記憶される加速制御データは、図4(a),(b)に示すように、容器5の公転が開始される時点と自転が開始される時点とが同一となるデータであり、しかも容器5の公転及び自転の両方が同一の加速度で加速するデータである。
【0025】
停止制御手段18は、容器5が公転及び自転をしている運転状態から、容器5の公転及び自転をそれぞれ減速させて停止させる手段であり、容器5の自転の停止制御を行う自転用停止制御手段18Aと、容器5の公転の停止制御を行う公転用停止制御手段18Bとを備えている。
【0026】
また、自転用停止制御手段18Aは、容器5の自転の減速が開始される時点に関する自転減速開始時点データと自転が停止される時点に関する自転停止時点データとからなる停止制御データを記憶するための停止制御データ記憶手段181を備え、また、公転用停止制御手段18Bは、容器5の公転の減速が開始される時点に関する公転減速開始時点データと公転が停止される時点に関する公転停止時点データとからなる停止制御データを記憶するための停止制御データ記憶手段182を備えている。
【0027】
ここで、自転用の停止制御データ記憶手段181に記憶されている自転減速開始時点データは、容器5が公転の運転中に減速を開始する時点と同一となるデータであり、自転停止時点データは、運転中の容器5の公転が停止する時点と同一となるデータである。また、公転用の停止制御データ記憶手段182に記憶されている公転減速開始時点データは、容器5が所定の自転速度から減速を開始する時点と同一となるデータであり、公転停止時点データは、容器5の自転が停止する時点と同一となるデータである。
【0028】
速度変更制御手段19は、容器5の自転速度を変更制御する自転用速度変更制御手段19Aと、容器5の公転速度を変更制御する公転用速度変更制御手段19Bとを備えている。
【0029】
自転用速度変更制御手段19Aは、自転の速度制御データを記憶する速度制御データ記憶手段191を備え、公転用速度変更制御手段19Bは、2つの公転の速度制御データを記憶する速度制御データ記憶手段193と、この速度制御データ記憶手段193に記憶されている2つの速度制御データのうちの1つを選択するための速度制御データ選択手段194とを備えている。
【0030】
自転用の速度制御データ記憶手段191に記憶されている速度制御データは、図4(a),(b)に示すデータである。つまり、自転速度が所定の自転速度に達すると、所定の速度範囲v1〜v2内で時間経過に伴って自転速度を変化させる自転速度データである。また、公転用の速度制御データ記憶手段193に記憶されている速度制御データは、図4(a)に示すように、公転速度が所定の公転速度v1に達すると、その所定の公転速度v1を所定時間維持する公転速度データと、図4(b)に示すように、公転速度が所定の公転速度に達すると、所定の速度範囲v1〜v2内で時間経過に伴って公転速度を変化させる公転速度データの2つのデータである。
【0031】
速度変更制御における図4(a)に示す自転速度データ、図4(b)に示す公転速度データ、図4(b)に示す自転速度データは、どれも同じように速度変化する速度データであり、図4(a),(b)では、縦軸に公転又は自転の回転数(速度)を取り、横軸に時間を取って作成したグラフを示している。このグラフでは、速度が、時間が経過するにつれて所定の速度範囲(上限速度v1と下限速度v2との間の範囲)で上下方向に周期的に波打つ(正弦波状に波打つ)ように変化している。図4(a)では、自転速度のみが波打つように変化し、図4(b)では、公転速度と自転速度の両方が波打つように変化している。尚、図3に示すように、制御装置Uが速度可変手段17により公転速度及び自転速度を変化させている間は、テーブル4の回転速度(公転速度)を検出する公転速度検出手段20及び容器5の回転速度(自転速度)を検出する自転速度検出手段21からの速度検出信号に基づいて、電動モータ7及びパウダーブレーキ14の作動制御を行うことによって、公転速度及び自転速度の速度制御を精度良く行なっている。
【0032】
次に、容器5内に収容された被処理物を攪拌脱泡する攪拌脱泡装置1の一連の動作について説明する。まず、作業者が攪拌脱泡装置1の操作パネルなどに備えている操作手段(例えば、操作ボタンや操作スイッチなど)を操作して、例えば図4(a)に示す速度変更制御における公転の速度制御データと自転の速度制御データとを選択する場合について説明する。かかる選択をすると、制御装置Uは、加速制御手段17による加速制御に入る。加速制御に入ると、パウダーブレーキ14へ電圧を供給した状態で公転用の電動モータ7の駆動を開始させる信号を、パウダーブレーキ14の電圧供給部及び伝動モータ7へそれぞれ出力する。これにより、容器5の公転が開始すると同時に自転も開始する。被処理物は、公転による遠心力で容器5の内側の壁面に押し付けられた状態で自転によって流動させられ、含まれている気泡を脱泡することができるとともに満遍なく攪拌することができる。尚、容器5は、テーブル4の回転方向とは逆方向に自転するとともにその最大自転速度がテーブル4の回転速度と同一速度になるように設定されているが、ギヤ比の設定変更や専用に設けられた自転モータを駆動制御することにより、公転速度と自転速度との比を1:1以外の比(例えば1:1.5など)にすることもできる。
【0033】
加速制御から所定時間経過すると、公転速度が所定速度v1に達し、その速度v1になったことを制御装置Uが公転速度検出手段20からの検出信号により判断すると、制御装置Uは、公転速度を所定速度v1に維持する制御を行う。これと同時に、自転速度が所定速度v1になると、パウダーブレーキ14への供給電圧を調整する制御に入る。具体的には、図4(a)の自転のグラフに示されるように、容器5の自転速度が、第1の所定速度v1からこの所定速度v1よりも低速となる第2の所定速度v2の間を行ったり来たりするように、自転用速度変更制御手段19Aによりパウダーブレーキ14への供給電圧を調整する制御を行う。その結果、図4(a)のグラフのように自転速度の波形が、時間経過とともに上下方向に波打つような形状になる。
【0034】
所定時間経過後は、制御装置Uは、公転用停止制御手段18Bにより回転テーブル4を減速して停止させるとともに、自転用停止制御手段18Aにより容器5の自転の停止時点が回転テーブル4の停止時点と同じ時点になるようにパウダーブレーキ14への供給電圧を調整して停止させる。
【0035】
次に、攪拌脱泡作業時において、作業者が前記操作手段(例えば、操作ボタンや操作スイッチなど)を操作して、図4(b)に示す速度変更制御における公転の速度制御データと自転の速度制御データとを選択する場合について説明する。かかる選択をすると、制御装置Uは、加速制御手段17により加速制御に入る。加速制御に入ると、パウダーブレーキ14へ電圧を供給した状態で公転用の電動モータ7の駆動を開始させる信号を、パウダーブレーキ14の電圧供給部及び電動モータ7へそれぞれ出力する。これにより、容器5の公転が開始すると同時に自転も開始する。被処理物は、公転による遠心力で容器5の内側の壁面に押し付けられた状態で自転によって流動させられ、含まれている気泡を脱泡することができるとともに満遍なく攪拌することができる。尚、容器5は、テーブル4の回転方向とは逆方向に自転するとともにその最大自転速度がテーブル4の回転速度と同一速度になる。
【0036】
加速制御から所定時間経過すると、公転速度が所定速度v1に達し、その速度v1になったことを制御装置Uが公転速度検出手段20からの検出信号により判断すると、制御装置Uは、テーブル4の回転数を制御するべく、電動モータ7の駆動制御に入る。具体的には、図4(b)の公転のグラフに示されるように、容器5の公転速度が、第1の所定速度v1からこの所定速度v1よりも低速となる第2の所定速度v2の間を行ったり来たりするように、公転用速度変更制御手段19Bにより電動モータ7の駆動制御を行う。これと同時に、自転速度も同様に、第1の所定速度v1からこの所定速度v1よりも低速となる第2の所定速度v2の間を行ったり来たりするように、自転用速度変更制御手段19Aによりパウダーブレーキ14への電圧が制御される。その結果、公転速度及び自転速度の波形が、図4(b)のグラフのように、時間経過とともに上下方向に波打つような形状になる。
【0037】
所定時間経過後は、制御装置Uは、停止制御手段18により回転テーブル4を減速して停止させるとともに、容器5の自転が回転テーブル4の停止時点と同じ時点になるようにパウダーブレーキ14への供給電圧を調整して停止させる。
【0038】
前記のように、加速制御手段17による加速制御の後、停止制御手段18による停止制御が開始する前に、速度変更制御手段19により、図4(a)では、容器5の自転速度のみを変更している。また、図4(b)では、容器5の公転速度及び自転速度の両方を変更することによって、容器5の壁面に競り上がる高さ、或いは、被処理物の流動の態様を大きく変化させることができる。これによって、被処理物が例えば粘度の異なる複数の色材料(例えば、オフセットインキ)で構成されるような場合であっても、十分に攪拌脱泡処理することができる。また、速度変更制御手段19を用いて、容器5の公転の速度を変化することによって、遠心力を強弱させることができ、容器5の自転の速度を変更することによって、渦状の流動の強さを強弱させることができる。その結果、攪拌脱泡時間を短縮することができる利点がある。
【0039】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
前記実施形態では、公転用の速度制御データ記憶手段193に2つの異なる速度制御データ(図4(a)と図4(b)に記載)を記憶し、それら記憶された2つの速度制御データのうちの1つのデータを速度制御データ選択手段194により選択する構成としたが、図4(a)の速度制御データのみ又は図4(b)の速度制御データのみを記憶させた専用の攪拌脱泡装置を構成してもよいし、3つ以上の異なる速度制御データを備えさせて、それらの中から1つの速度制御データを速度制御データ選択手段194により選択する構成としてもよい。尚、2つ以上の異なる速度制御データを備えている場合に、速度制御データ選択手段が必要になる。
【0041】
また、前記実施形態では、速度変更制御手段19における公転の速度制御が図4(a)と図4(b)とで異なるだけで、加速制御及び停止制御は、図4(a)と図4(b)とで同一に構成されているが、図5(a),(b)に示す構成であってもよい。つまり、図4(a)の加速制御では、容器5の公転と自転とが同時に開始される場合を示したが、図5(a)では、容器5の自転が遅れて開始される場合を示している。具体的には、図5(a)では、公転が開始されてから所定速度v1のほぼ半分に達した時点で自転を開始する場合を示し、さらに自転の加速度が公転の加速度よりも大きな値に設定されている。尚、自転の開始時点は、公転が開始されてから所定速度v1になった後の任意の時点に設定されてもよい。また、停止制御では、自転の停止時点が、図5(a)では、公転が減速されて停止するまでの時間のほぼ半分の時点に設定され、さらに自転の減速度が公転の減速度よりも大きく設定されている。また、図5(b)の加速制御では、図4(b)と同様に公転及び自転の開始時点及び停止時点が共に同一ではあるが、自転の加速度が公転の加速度よりも大きく設定している。また、速度制御では、図5(a),(b)ともに、公転速度及び自転速度の両方が所定範囲v1〜v2内において時間経過とともに変化する点において同一であるが、自転速度が変化する時点が、公転速度が変化する時点よりも早くなっている。具体的には、図5(b)では、公転速度がv1に達したときに、自転速度がv2となるように速度の波形がほぼ半周期ずれた状態になっているが、このずれは、図面以外のずれた状態であってもよい。
【0042】
また、図5(a),(b)では、加速制御、停止制御、速度制御が、それぞれ複数の異なる制御データを有していることから、これらデータを記憶する手段は勿論のこと、記憶された複数のデータの中から1つのデータを選択する選択手段を備えさせて実施することになり、図7に具体的な構成を示している。図3と相違している部分のみ説明すれば、図7において、加速制御手段17における自転用加速制御手段17Aが、加速制御データ記憶手段171に記憶されている複数の加速制御データのうちの1つのデータを選択する加速制御データ選択手段173を備え、加速制御手段17における公転用加速制御手段17Bが、加速制御データ記憶手段172に記憶されている複数の加速制御データのうちの1つのデータを選択する加速制御データ選択手段174を備えている。また、停止制御手段18における自転用停止制御手段18Aが、停止制御データ記憶手段181に記憶されている複数の停止制御データのうちの1つのデータを選択する停止制御データ選択手段183を備え、停止制御手段18における公転用停止制御手段18Bが、停止制御データ記憶手段182に記憶されている複数の停止制御データのうちの1つのデータを選択する停止制御データ選択手段184を備えている。また、速度変更制御手段19における自転用速度変更制御手段19Aに記憶されている複数の速度制御データのうちの1つのデータを選択する速度制御データ選択手段192を備えている。
【0043】
従って、複数の加速制御データ、複数の停止制御データ、複数の速度制御データのそれぞれを1つずつ選択してもよいし、これら3種類のデータ(1つの加速制御データ、1つの停止制御データ、1つの速度制御データ)が一連に組み合わされたデータを1つの制御データとし、それら複数の制御データの中から1つの制御データを選択できるようにしてもよい。尚、図7では、図5(a),(b)に示すように公転速度よりも自転速度が大きくなる領域があるため、パウダーブレーキ14に代えて、自転用の電動モータ22を用いている。
【0044】
また、図4(a),(b)及び図5(a),(b)では、速度の波形が緩やかに湾曲した形状になっているが、図6に示すように、直線状の線で結ばれた波形であってもよい。つまり、自転が開始して所定速度v1になると、その速度v1を所定時間維持したのち、直線的に減速し、速度が前記速度v1よりも低い速度v2になると、その速度v2を所定時間維持し、そののちに前記所定速度v1になるまで加速するといった速度制御を繰り返す構成であってもよい。尚、図6で示しているように、所定速度v1になると、その速度v1を所定時間維持する制御及び速度v1よりも低い速度v2になると、その速度v2を所定時間維持する制御を省略して実施することもできる。
【0045】
また、前記実施形態では、自転及び公転の少なくとも一方の速度を、所定の速度範囲内で時間経過に伴って変化させたが、時間経過とともに徐々に増大減少するあるいは増大と減少を繰り返すように変化する場合であってもよい。また、自転及び公転のいずれか一方が正転と逆転とを繰り返す構成であってもよい。特に、公転の回転方向に対して自転が正転方向又は逆転方向に回転する構成が好ましい。この場合の正転と逆転との時間の比率は、どのように設定することも可能である。
【0046】
尚、上記のように公転又は自転を正転及び逆転させるためには、図7に示すように、公転用の電動モータ7の他に、自転用の電動モータ22を備えさせて、それら2つの電動モータ7,22を駆動制御することになる。
【0047】
また、前記実施形態では、公転用の電動モータ7とパウダーブレーキ14とで容器5の自転を行わせるとともにパウダーブレーキ14への電圧の供給タイミングを変更することによって、少なくとも公転の開始時点に対する容器5の自転の開始時点を制御するようにしたが、図7に示すように、公転用の電動モータ7の他に、自転用の電動モータ22を備えさせて、それら2つの電動モータ7,22を駆動制御することによって、公転の開始時点に対する容器5の自転の開始時点を制御する構成であってもよい。要するに、容器5の公転と自転とを別々に制御できる構成であれば、公転に対する自転の開始時点を制御することができる。但し、電動モータ7とパウダーブレーキ14とを用いることによって、装置の構成を簡略化して小型化を図ることができ、一方、2つの電動モータ7,22を用いることによって、公転速度よりも自転速度を速くすることができるだけでなく、容器5の公転方向と自転方向とを自由に変更することができる利点がある。
【0048】
また、前記実施形態では、1つの容器5をテーブル4上に設けた構成にしたが、複数の容器5をテーブル4上に設けた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…攪拌脱泡装置、2…ケーシング、2K…開口、3…本体部、4…テーブル、4A…中央部、4B…水平部、4C…傾斜部、4c…傾斜面、5…容器、5A…回転部材、5M…溝、6…自転用駆動機構、7…公転用回転駆動機構(公転用の電動モータ)、8…支軸、9…錘、11…プーリ、11A,11B…溝、12…伝動ベルト、13…伝動機構、14…パウダーブレーキ、14A…出力軸、15…負荷用プーリ、16…伝動ベルト、17…加速制御手段、17A…自転用加速制御手段、17B…公転用加速制御手段、18…停止制御手段、18A…自転用停止制御手段、18B…公転用停止制御手段、19…速度変更制御手段、19A…自転用速度変更制御手段、19B…公転用速度変更制御手段、20…公転速度検出手段、21…自転速度検出手段、22…自転用の電動モータ、51a…本体部、51b…蓋部、171,172…加速制御データ記憶手段、173,174…加速制御データ選択手段、181,182…停止制御データ記憶手段、183,184…停止制御データ選択手段、191,193…速度制御データ記憶手段、192,194…速度制御データ選択手段、B…バランス調整装置、H…回転ハンドル、K…カバー部材、K1,K2…開口、U…制御装置、X1…公転軸芯、X2…自転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する容器を備え、該容器は、公転及び自転の両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、
容器の公転及び自転の少なくとも一方を開始して所定速度まで加速する加速制御手段と、容器の公転及び自転の少なくとも一方を減速して停止させる停止制御手段とを備え、
前記加速制御手段による加速制御の後、前記停止制御手段による停止制御が開始する前に、前記公転及び自転の少なくとも一方の速度を変更する速度変更制御手段を備えたことを特徴とする攪拌脱泡装置。
【請求項2】
前記速度変更制御手段は、前記公転及び前記自転の少なくとも一方の速度を、所定の速度範囲内で時間経過に伴って変化させる手段であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192353(P2012−192353A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58755(P2011−58755)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000145286)株式会社写真化学 (7)
【Fターム(参考)】