説明

攪拌脱泡装置

【課題】構成が簡単で、コンパクトとなり、運転条件を大きく緩和することができ、構成各部の強度条件を緩和することができ、運転時の消費電力も低減することができ、コストも低廉となり、材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる攪拌脱泡装置を提供すること。
【解決手段】材料Mが収納された収納容器13が自転軸10を介して公転体5に自転自在に支持されていて、収納容器13を公転させながら自転させることによって材料Mを攪拌脱泡する攪拌脱泡装置1であって、自転軸10が公転体5の公転軸中心線L1と交差するようにして公転体5に支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌脱泡装置に係り、材料を攪拌脱泡するのに好適な攪拌脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料が収納された収納容器を公転させながら自転させることによって当該材料を攪拌脱泡する装置(自転公転方式の攪拌脱泡装置)が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
従来のこの種の攪拌脱泡装置おいては、前記各特許文献における回転駆動系を除いた主要構成部分が図4に示すように形成されている。具体的には、図示しない筐体内に水平に支持されている支持基板31の中心部に、公転体32が下部に取り付けられた公転軸33を公転用ベアリングユニット34を介して公転自在に軸支されている。この公転体32はテーブル状若しくはアーム状に形成されている。また、公転軸33は鉛直方向に支持されることが多い。そして、公転軸33の公転軸中心線L1から半径Rの支持位置に自転用ベアリングユニット35が装着されており、収納容器36を内部に収容した容器ホルダ37下部に設けられた自転軸38が当該自転用ベアリングユニット35に自転自在に軸支されている。収納容器36は容器ホルダ37に着脱自在に取り付けられる。この収納容器36は材料Mを出し入れするために開閉自在に形成されており、容器ホルダ37は収納容器36を内部に収納して固定保持できるように形成されている。また、自転軸38の自転軸中心線L2は鉛直方向に対して例えば45度の傾斜角をもって傾斜させられている。
【0004】
図4に示す攪拌脱泡装置においては、収納容器36を公転体32とともに公転させながら自転軸38回りに自転させることによって、収納容器36内の材料Mに作用する遠心力および内部回転力を利用して、材料Mを攪拌する(混練する、混合する、分散させる)とともに、材料Mに内在する気泡を放出させて脱泡させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−043568号公報
【特許文献2】特開2006−255565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の攪拌脱泡装置においては、収納容器36を公転体32に自転自在に支持している位置が、当該収納容器36の下部に設けられた自転軸38を回転自在に支持している自転用ベアリングユニット35の公転体32に対する支持位置である。この支持位置が公転軸33の公転軸中心線L1から半径Rの位置にあるために、従来の攪拌脱泡装置においては、次のような不都合があった。
【0007】
第1に、収納容器36の自転の支持位置が公転軸中心線L1より半径方向に距離Rという相当長い距離を離れているために、公転時には当該支持位置に大きな遠心力が作用し、更に、高速に自転することにより発熱も起こるという厳しい運転条件が発生されてしまう。具体的には、遠心力の高い環境下で、ベアリングを使用する場合、内部に充填されているグリースが全て飛散してしまい、その結果、油膜が形成できなくなって、潤滑不全となり発熱に至ってしまう。そのために、この厳しい運転条件下において、装置の構成各部の連結状態等を適正に保持するとともに、適正に作用できるように構成各部を形成する必要性がある。その必要性を解決するためには、装置の構成各部の剛性を高くする等の堅牢化を図る必要があり、発熱部分には冷却を施す必要があり、構成が複雑となる。
【0008】
第2に、収納容器36の自転の支持位置が公転軸中心線L1より半径方向に距離Rという相当長い距離を離れているために、装置全体が径方向に大型となり、占有スペースも大きくなってしまい、更に、構成各部の堅牢化、大重量化に伴い、運転時に必要とされる消費電力も大きくなってしまい、コストも高いものとなっていた。
【0009】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、構成が簡単で、コンパクトとなり、運転条件を大きく緩和することができ、構成各部の強度条件を緩和することができ、運転時の消費電力も低減することができ、コストも低廉となり、材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる 攪拌脱泡装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明に係る第1の態様の攪拌脱泡装置は、材料が収納された収納容器が自転軸を介して公転体に自転自在に支持されていて、前記収納容器を公転させながら自転させることによって前記材料を攪拌脱泡する攪拌脱泡装置であって、前記自転軸が前記公転体の公転軸中心線と交差するようにして前記公転体に支持されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、公転体に対して自転軸が公転軸中心線と交差するように自転自在に支持されるので、自転軸およびその自転支持位置は公転軸中心線の近傍に配置されることとなり、自転軸の自転支持位置に作用する遠心力が小さく抑えられ、装置全体の半径方向の大きさも小さく抑えることができる。これにより、本発明の攪拌脱泡装置は、構成が簡単で、コンパクトとなり、運転条件も大きく緩和され、構成各部の強度条件も緩和され、運転時の消費電力も低減することができ、コストも低廉となり、材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明の第2の態様の攪拌脱泡装置は、前記第1の態様において、前記公転体の公転軸中心線と交差する位置に設けられた自転軸ベアリングユニットによって前記自転軸が支持されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、前記公転体の公転軸中心線と交差する位置において自転軸ベアリングユニットをもって前記自転軸を支持することができ、自転軸を支持する自転軸ベアリングユニットに作用する遠心力を最少にすることができる。
【0014】
また、本発明の第3の態様の攪拌脱泡装置は、前記第1または第2の態様において、前記自転軸は前記公転軸中心線に対して傾斜して交差されており、前記収納容器は前記自転軸の下方側に装着自在に形成されており、前記自転軸の上方側に固定された自転用衛星歯車と、この自転用衛星歯車に噛合する前記公転軸中心線上に設けられた自転用太陽歯車とを有する自転力付与機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、公転軸から半径方向に離れた位置に収納容器を公転自在および自転自在に保持することができるので、収納容器内の材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる。また、自転用太陽歯車および自転用衛星歯車という簡単な構成の自転力付与機構によって、収納容器を自転させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の攪拌脱泡装置によれば、構成が簡単で、コンパクトとなり、運転条件を大きく緩和することができ、構成各部の強度条件を緩和することができ、運転時の消費電力も低減することができ、コストも低廉となり、材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る攪拌脱泡装置の一実施形態を示す概略構成断面図
【図2】図1の右側面図
【図3】図1の要部を示す左側面図
【図4】従来の攪拌脱泡装置示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る攪拌脱泡装置の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0019】
本実施形態の攪拌脱泡装置1は、図1および図2に示すように、筐体の底部を形成する基台2に支持箱体3が防振ばね4を介して水平に支持されている。支持箱体3の中心には、底板3aと天板3bとの間に矩形枠状の公転体5が公転軸中心線L1を鉛直に配置して公転自在に支持されている。公転体5の下部は、公転体5の下枠面5aから公転軸中心線L1に合わせて突設した公転軸6を底板3aの下面に固定した公転駆動機構を形成する公転駆動モータ7の出力軸に直結して支持している。公転体5の上部は、天板3bの下面から公転軸中心線L1に合わせて突設した自転用太陽歯車15の中心軸15aに公転体5の上枠面5bに設けた公転軸ベアリングユニット8を介して回転自在に支持している。公転体5の左右の側枠面5c、5cの間には公転軸中心線L1に対して45度傾斜した収納容器支持枠9が固定されている。収納容器支持枠9の公転軸中心線L1と交差する位置には自転軸10が自転軸ベアリングユニット11をもって回転自在に支持されている。これにより自転軸10および自転軸中心線L2は公転軸中心線L1に対して45度の傾斜角をもって交差して支持されることとなる。自転軸10の下方部分には、容器ホルダ12が固着されており、その容器ホルダ12内に収納容器13が着脱自在に取付られるように形成されている。容器ホルダ12は収納容器13を出し入れするために下向きに開閉自在に形成されている。収納容器13は材料Mを出し入れするために開閉自在に形成されており、容器ホルダ12は収納容器13を内部に収納して固定保持できるように形成されている。収納箱体3の容器ホルダ12に対面する部分は、収納容器13を容器ホルダ12に着脱するために開閉自在に形成されている。自転軸10の上方部分には、自転力付与機構を形成する自転用衛星歯車14が固定されており、この自転用衛星歯車14が自転用太陽歯車15に内歯形式で噛合している。これにより自転用衛星歯車14は公転体5と一緒に公転すると固定状態にある自転用太陽歯車15と噛合しているために自転することとなる。本実施形態においては、両歯車14、15が内歯形式で噛合しているので、自転用衛星歯車14は、鉛直下方向きに見て(以下同じ)時計方向に公転すると、反時計方向に自転することとなり、二枚の歯車14、15の噛合という簡単な構成によって、自転用衛星歯車14の公転方向と自転方向とを反対とした駆動を簡単に実現することができる。なお、自転用太陽歯車15の中心軸15aには、固定状態と無負荷回転自由状態とを切替可能な公知の電磁クラッチを設けたり、中心軸15aの回転速度および回転方向を調整自在な公知の変速機構を設置してもよい。公転体5の収納容器13に対向する側には、カウンターウエイト16が公知の機構により公転軸中心線L1に遠近自在に形成されている。収納箱体3のカウンターウエイト16に対面する部分は、ウエイト調整するために開閉自在に形成されている。
【0020】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0021】
<運転準備作業>
まず、攪拌脱法対象の材料Mの質量に応じてカウンターウエイト16の位置調整を行う。
【0022】
続いて、収納容器13を容器ホルダ12、支持箱体3および筐体から取出して材料Mを入れて密封する。次に、密封した収納容器13を容器ホルダ12内の所定位置に装着して固定し、容器ホルダ12、支持箱体3および筐体を閉じて準備作業を終了する。
【0023】
<攪拌脱泡運転>
公転力付与機構の公転駆動モータ7を回転させて公転体5を公転軸中心線L1を中心として時計方向に公転させると、自転力付与機構の固定状態にある自転用太陽歯車15と内歯形式で噛合している自転用衛星歯車14が時計方向に公転することにより反時計方向に自転する。これにより収納容器13は公転体5と一緒に時計方向に公転しながら容器ホルダ12と一緒に反時計方向に自転する。収納容器13内の材料Mは、公転による遠心力を受けて材料M内に含まれている気体成分が脱泡され、自転による自転力と公転力との相乗効果によって攪拌される。更に、本実施形態においては、収納容器13の公転方向と自転方向とが逆方向であるために、高い攪拌効率をもって攪拌される。
【0024】
また、自転用太陽歯車15の中心軸15aに電磁クラッチを設けて、中心軸15aおよび自転用太陽歯車15を固定状態と無負荷回転自由状態とに切替えると、収納容器13の回転状態を、中心軸15aが固定状態の場合の公転自転同時回転と、中心軸15aが無負荷回転自由状態の場合の公転回転とに切替えて運転することができる。
【0025】
また、変速機構によって中心軸15aおよび自転用太陽歯車15の回転速度および回転方向を変更すると、収納容器13の自転速度を変更したり、自転方向を変更することを、装置を停止させることなく連続して変更することができる。この場合には、収納容器13内の材料Mの攪拌脱泡の進行具合に対応して収納容器13の自転・公転の速度・方向を変更しながら適正に運転することができる。
【0026】
このようにして本実施例においては材料Mが適正に攪拌脱泡される。
【0027】
本実施形態の攪拌脱泡装置1によれば、公転体5に対して自転軸10が公転軸中心線L1と交差するように自転自在に支持されるので、自転軸10およびその自転支持位置となる自転軸ベアリングユニット11の装着位置は、公転軸中心線L1の近傍に配置されることとなり、自転軸10の自転支持位置に作用する遠心力が小さく抑えられ、装置全体の半径方向の大きさも小さく抑えることができる。この遠心力が小さいことにより装置の構成各部に対する剛性等の要求される運転条件や設計条件が大きく緩和される。
【0028】
また、公転体5の公転軸中心線L1と交差する位置において自転軸ベアリングユニット11をもって自転軸10を支持することができ、自転軸10を支持する当該自転軸ベアリングユニット11に作用する遠心力を最少にすることができ、前記条件の緩和を大きく図ることができる。また、本実施形態においては、自転軸10に対して自転軸ベアリングユニット11を挟んで両側に取付けられている収入容器13を内蔵した容器ホルダ12と自転用衛星歯車14とによる2種類の遠心力が、自転軸ベアリングユニット11の内輪に相乗で作用することとなるので、当該遠心力に耐えうるように、例えば、自転軸ベアリングユニット11自体を軸方向に2個並列させたり、自転軸10を自転用衛星歯車14より自転用太陽歯車15側に突出させて、当該突出部分において自転軸10を軸支する補助的なベアリングを付加するとよい。
【0029】
また、自転軸10を公転軸中心線L1に対して傾斜して交差させ、収納容器13を自転軸10の下方側に装着自在に形成しているので、公転軸中心線L1から半径方向に離れた位置に収納容器13を公転自在および自転自在に保持することができるので、収納容器13内の材料Mの攪拌脱泡を確実に行うことができる。
【0030】
また、自転力付与機構を自転軸10の上方側に固定された自転用衛星歯車14と、これに噛合する公転軸中心線L1上に設けられた自転用太陽歯車15とによって形成することができ、簡単な構成によって、収納容器14を自転させることができる。
【0031】
このように本実施形態の攪拌脱泡装置1は、構成が簡単で、コンパクトとなり、運転条件も大きく緩和され、構成各部の強度条件も緩和され、運転時の消費電力も低減することができ、コストも低廉となり、材料の攪拌脱泡を確実に行うことができる。
【0032】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができるものである。
【0033】
例えば、攪拌脱泡運転時における材料Mの公転軸中心線L1からの半径位置を既存の攪拌脱泡措置における半径位置と同一とするために、自転軸ベアリングユニット11からの自転軸10の突出長さや容器ホルダ12による収納容器13の保持位置を調整するとよい。これにより材料Mに対する既存の攪拌脱泡条件を利用して有効な攪拌脱泡を実行することができる。
【0034】
また、長尺なシリンジ状の収納容器を取付けるために、自転軸10や自転用衛星歯車14の中心部を中空状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 攪拌脱泡装置
5 公転体
6 公転軸
10 自転軸
11 自転軸ベアリングユニット
12 容器ホルダ
13 収納容器
14 自転用衛星歯車
15 自転用太陽歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料が収納された収納容器が自転軸を介して公転体に自転自在に支持されていて、前記収納容器を公転させながら自転させることによって前記材料を攪拌脱泡する攪拌脱泡装置であって、
前記自転軸が前記公転体の公転軸中心線と交差するようにして前記公転体に支持されていること
を特徴とする攪拌脱泡装置。
【請求項2】
前記公転体の公転軸中心線と交差する位置に設けられた自転軸ベアリングユニットによって前記自転軸が支持されている
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌脱泡装置。
【請求項3】
前記自転軸は前記公転軸中心線に対して傾斜して交差されており、
前記収納容器は前記自転軸の下方側に装着自在に形成されており、
前記自転軸の上方側に固定された自転用衛星歯車と、この自転用衛星歯車に噛合する前記公転軸中心線上に設けられた自転用太陽歯車とを有する自転力付与機構を備えている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−637(P2013−637A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132521(P2011−132521)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(511144745)
【Fターム(参考)】