説明

攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法

【課題】攪拌対象の液量に対応した攪拌を可能とした攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法を提供すること。
【解決手段】容器に分注された液体を音波によって攪拌する攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法。攪拌装置20は、容器7に配置され、液体Lの液量を検知する音波を出射する第1の音波発生素子と、液体を攪拌する音波を出射する第2の音波発生素子と、第1及び第2の音波発生素子の駆動を制御する駆動制御部31と、第1の音波発生素子が出射する音波の周波数をモニタする周波数モニタ34と、周波数モニタがモニタした音波の周波数変化をもとに液体の液量を決定する液量決定部32とを備え、駆動制御部は、液量決定部が決定した液量をもとに第2の音波発生素子の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、検体と試薬とを反応させる際、これらを攪拌する攪拌手段として音波によって攪拌する攪拌装置を使用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−99049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分析装置は、攪拌装置が有するアレイ状に配列された複数の音源要素を音源駆動手段によって独立に駆動し、音波照射方向を変化させることで、反応容器内の被測定液を攪拌している。しかしながら、特許文献1の分析装置は、被測定液の液量については考慮していない。このため、特許文献1の分析装置は、被測定液の液量とは無関係に攪拌装置の各音源要素に投入するエネルギー量が一定である。従って、特許文献1の分析装置は、被測定液の液量によっては、エネルギー量の不足によって攪拌が不十分となる場合や、エネルギー量が多過ぎて攪拌が過剰になる場合があり、攪拌の程度にばらつきが生ずるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、攪拌対象の液量に対応した攪拌を可能とした攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の攪拌装置は、容器に分注された液体を音波によって攪拌する攪拌装置であって、前記容器に配置され、前記液体の液量を検知する音波を出射する第1の音波発生手段と、前記容器に配置され、前記液体を攪拌する音波を出射する第2の音波発生手段と、前記第1及び第2の音波発生手段の駆動を制御する駆動制御手段と、前記第1の音波発生手段が出射する音波の周波数をモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段がモニタした前記音波の周波数変化をもとに前記液体の液量を決定する液量決定手段と、を備え、前記駆動制御手段は、前記液量決定手段が決定した液量をもとに前記第2の音波発生手段の駆動を制御することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の攪拌装置は、上記の発明において、前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段は、前記液体の液量を検知する音波を出射する液量検知電極と前記液体を攪拌する音波を出射する攪拌電極が共通の圧電基板上に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の攪拌装置は、上記の発明において、前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段は、前記容器の外壁面に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の攪拌装置は、上記の発明において、前記駆動制御手段は、前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段を駆動する駆動信号の振幅及び周波数を変更自在なことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の攪拌装置は、上記の発明において、前記液量検知電極は、前記圧電基板と共に厚み縦振動子を形成し、前記攪拌電極は、前記圧電基板と共に表面弾性波素子を形成することを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬を含む複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、前記攪拌装置を備え、前記液量決定手段が決定した液量をもとに前記駆動制御手段によって駆動周波数を調整し、前記第2の音波発生手段が出射する音波によって前記液体を攪拌することを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の攪拌方法は、容器に分注された液体を音波によって攪拌する攪拌方法であって、前記容器内の前記液体の液量を音波によって検知する液量検知工程と、検知した液量をもとに前記液体を攪拌する攪拌工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器内の液体の液量を検知し、検知した液量をもとに液体を攪拌するので、攪拌対象の液量に対応した攪拌を可能とした攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の攪拌装置、自動分析装置及び攪拌方法にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、反応容器を断面にして示す本発明の攪拌装置の概略構成図である。図3は、図2に示す攪拌装置で使用する音波発生素子の平面図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10及び試薬テーブル11が設けられ、攪拌装置20を備えている。
【0016】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注機構5は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0018】
キュベットホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の凹部6aが等間隔で設けられている。キュベットホイール6は、各凹部6aの半径方向両側に測定光が通過する開口が形成されている。キュベットホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4個分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。また、キュベットホイール6は、反応容器7が移動する外縁部に測光装置8、洗浄装置9及び攪拌装置20が配置されている。
【0019】
反応容器7は、凹部6aに抜き差し自在に配置される容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、測光装置8の光源から出射された分析光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、図2に示すように、上部に開口7aを有する四角筒形状のキュベットであり、底面に水やジェル等の音響整合層(図示せず)を介して攪拌装置20の音波発生素子21が配置されている。反応容器7は、分注される試薬や検体液体を含む液体Lを保持している。
【0020】
測光装置8は、図1に示すように、キュベットホイール6外周の洗浄装置9と攪拌装置20との間に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置8は、前記光源と受光器がキュベットホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0021】
洗浄装置9は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置9は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置9は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0022】
試薬分注機構10は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル11の所定の試薬容器12から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0023】
試薬テーブル11は、検体テーブル3及びキュベットホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室11aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室11aは、試薬容器12が着脱自在に収納される。複数の試薬容器12は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示する情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0024】
ここで、試薬テーブル11の外周には、図1に示すように、試薬容器12に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の試薬情報を読み取り、制御部14へ出力する読取装置13が設置されている。
【0025】
制御部14は、検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10、試薬テーブル11、読取装置13、分析部15、入力部16、表示部17及び攪拌装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部14は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体の記録から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いは表示部17等を介してオペレータに警告を発する。
【0026】
分析部15は、制御部14を介して測光装置8に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部14に出力する。入力部16は、制御部14へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部17は、分析内容や警告等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0027】
攪拌装置20は、反応容器7内の液体の液量を決定すると共に、決定した液量をもとに反応容器7内の液体を攪拌する攪拌装置であり、図2に示すように、音波発生素子21と、攪拌制御部30と、信号発生器33と、周波数モニタ34とを備えている。ここで、反応容器7内の液体の液量は、分析に伴う試薬や検体の分注が進むのにつれて増加してゆく。
【0028】
音波発生素子21は、図2及び図3に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電基板22の中央に液量検知電極23が配置され、液量検知電極23の両側に攪拌電極24,25が形成されている。液量検知電極23は、圧電基板22中央の一方の面にグランド側の電極23aが、他方の面に信号線側の電極23bが、それぞれ設けられている。液量検知電極23は、各電極23a,23bに電力供給用の引出し電極23cが接続され、圧電基板22と共に厚み縦振動子を形成している。液量検知電極23は、印加する周波数・振幅によっては発生する音波によって反応容器7が保持した液体を攪拌することも可能であるが、発生する音波の周波数から液量を検知するために低パワーで短時間駆動されるだけである。攪拌電極24,25は、圧電基板22の一方の面に櫛歯状電極(IDT)からなる振動子24a,25aが形成され、振動子24a,25aには裏面へ伸びる電力供給用のバスバー24b,25bが接続されている。攪拌電極24,25は、圧電基板22と共に表面弾性波素子を形成している。
【0029】
ここで、音波発生素子21は、上記のように液量検知電極23を圧電基板22の中央に配置すると、反応容器7の荷重全体が作用し、偏荷重のない液量検知が可能になる。また、音波発生素子21は、攪拌電極24,25を圧電基板22の両側に配置すると、液量検知電極23との混載による音波の干渉に起因した音波強度の低下を防ぐことができる。この場合、液量検知電極23は、液量検知の精度を高めるうえで、面積が大きい方が好ましい。液量検知電極23と攪拌電極24,25との距離、例えば、液量検知電極23と攪拌電極24との図3に示す距離Lは、例えば、圧電基板22の素材として128°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(LiNbO3)を使用した場合、各電極が発生する音波(横波)による干渉がないように液量検知電極23が発生する音波の波長(λ23)の10倍以上(L>10・λ23)に設定する。
【0030】
攪拌制御部30は、図2に示すように、駆動制御部31と液量決定部32とを有している。
【0031】
駆動制御部31は、音波発生素子21の駆動を制御する駆動制御手段であり、ECU等の電子制御手段が使用され、信号発生器33の作動を制御する。駆動制御部31は、信号発生器33を介して、例えば、音波発生素子21の攪拌電極24,25が発生する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。特に、駆動制御部31は、液量決定部32が決定した反応容器7内の液体の液量をもとに、内蔵したタイマに従って信号発生器33が発振する発振信号の周波数や信号発生器33、従って攪拌電極24,25の駆動時間を変更する。この場合、駆動制御部31は、反応容器7内の液体の液量の増加に伴って駆動時間を長く設定する。また、液量検知電極23が出射した音波の周波数をモニタするだけであるので、駆動制御部31は、液量検知電極23を攪拌電極24,25に比べて短時間駆動する。
【0032】
液量決定部32は、周波数モニタ34がモニタした液量検知電極23が出射した音波の周波数信号から得られる音波の周波数変化をもとに反応容器7内の液体の液量を決定する。液量決定部32は、図2に示すように、液量変化量算出部32a、加算部32b及び記憶部32cを有している。液量変化量算出部32aは、分注後の液体の重量の変化量(ΔW)をもとに液量(μL)の変化量(ΔV)を算出する。加算部32bは、液量変化量算出部32aが算出した液量(μL)の変化量(ΔV)に記憶部32cから読み出した前回値を加算して液量を決定する。記憶部32cは、使用する試薬と検体との総ての組み合わせについて予め作成しておいた重量の変化量(ΔW)を液量(μL)の変化量(ΔV)に換算する換算表又は換算グラフの他、決定した液量等を記憶する。
【0033】
信号発生器33は、駆動制御部31による制御のもとに発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、図2に示すように、液量検知電極23の引出し電極23cとの間及び攪拌電極24,25のバスバー24b,25bとの間が配線33a〜33cによって接続されている。信号発生器33は、数KHz〜数十KHzの駆動信号を液量検知電極23へ出力し、数MHz〜数十MHzの駆動信号を攪拌電極24,25へ出力する。
【0034】
周波数モニタ34は、液量検知電極23が出射する音波の周波数をモニタする手段であり、例えば、周波数カウンタを使用することができる。周波数モニタ34は、図2に示すように、音波発生素子21の圧電基板22との間がモニタ線34aによって接続されている。周波数モニタ34は、モニタした液量検知電極23が出射した音波の周波数信号を液量決定部32へ出力する。
【0035】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構10が試薬容器12から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0036】
そして、検体が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって攪拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が攪拌装置20によって順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール6が再び回転したときに測光装置8を通過し、光源から出射された分析光が透過する。そして、反応液を透過した分析光は、受光部で測光され、制御部14において吸光度をもとに成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置9によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0037】
ここで、厚み縦振動子である液量検知電極23は、数KHz〜数十KHzの音波を発生するが、同一周波数の駆動信号が入力されても、反応容器7から電極23a,23bに作用する厚さ方向の応力によって出射する音波の周波数が変化する性質を有している。このとき、反応容器7が保持する液体の量が変化した場合、周波数モニタ34がモニタする音波の周波数の液量変化前後の変化量(Δf)と液体重量の変化量(ΔW)との間には、図4に示す直線関係がある。
【0038】
そして、図4に示すように、直線aに示す特性を有する液量検知電極23は、重量の変化量(ΔW)に対する周波数の変化量(Δfa)の比が、重量の変化量(ΔW)に対する周波数の変化量(Δfb)が大きい直線bに示す特性を有する液量検知電極23の場合の比に比べると小さい。このため、液量検知電極23は、図4に示す直線の傾きが小さいと、周波数(f)の分解能が低いことになり、液量検知電極23ごとに異なっている。従って、攪拌装置20は、音波発生素子21を設けた反応容器7ごとに重量の変化量(ΔW)と液量検知電極23が出射する音波の周波数(Δf)との関係を測定しておく。ここで、液量検知電極23の分解能は、用いる圧電基板22の素材と大きさ、電極23a,23bの厚みと直径によって設計可能である。
【0039】
一方、周波数モニタ34がモニタした音波の周波数を反応容器7が保持する液体の液量毎に高速フーリエ変換(FFT)すると、液量に応じてそれぞれ異なる周波数に強度ピークを有する図5に示す強度分布曲線が得られる。従って、液量の異なる2つの強度分布曲線の強度ピークの差(Δf)は、液量の差、即ち、重量の差によって生じている。従って、図5から求めた強度ピークの差(Δf)をもとに、図4を利用して分注後の検体や試薬の重量の変化量(ΔW)を求めることができる。
【0040】
但し、図4から得られるものは重量の変化量(ΔW)であるから、重量の変化量(ΔW)を液量(μL)の変化量(ΔV)に換算する必要がある。このため、自動分析装置1は、使用する試薬と検体との総ての組み合わせについて予め換算表又は換算グラフを作成し液量決定部32の記憶部32cに記憶しておく。そして、液量決定部32は、試薬と検体との組み合わせと分注後の液体の重量の変化量(ΔW)とをもとに液量変化量算出部32aが液量(μL)の変化量(ΔV)を決定すると共に、記憶部32cから読み出した前回値に加算して加算部32bが液量を決定し、駆動制御部31へ出力する。これが、本発明における液量決定の原理である。
【0041】
このようにして、液量(μL)が決定した後、駆動制御部31は、液量決定部32が決定した液量をもとに液体を攪拌する音波を出射する攪拌電極24,25を制御しながら、数MHz〜数十MHzの駆動信号で駆動する。これにより、反応容器7は、図6に示すように、保持した液体L中に攪拌電極24,25が発生した音波Waが漏れ出し、この音波Waによって音響流Faが発生する。この結果、反応容器7は、保持した液体Lが音響流Faによって攪拌される。この場合、駆動制御部31は、例えば、攪拌電極24,25に入力する駆動信号の入力時間や周波数、発生する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。
【0042】
以下、上述した液量決定をもとに実行される本発明の攪拌方法を図7に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、攪拌制御部30は、液量検知電極23を駆動する(ステップS100)。次に、攪拌制御部30は、液量変化量算出部32aに液量変化量を算出させる(ステップS102)。次に、攪拌制御部30は、記憶部32cから前回値を読み出す(ステップS104)。次いで、攪拌制御部30は、算出した液量変化量と前回値とを加算部32bに加算させて液量を決定する(ステップS106)。
【0043】
次いで、攪拌制御部30は、検知した液量をもとに攪拌電極24,25を駆動し液体を攪拌する(ステップS108)。その後、攪拌制御部30は、総ての反応容器7の攪拌が終了したか否かを判定する(ステップS110)。判定の結果、総ての反応容器7の攪拌が終了した場合(ステップS110,Yes)、攪拌制御部30は、本発明の攪拌方法を終了する。一方、総ての反応容器7の攪拌が終了していない場合(ステップS110,No)、攪拌制御部30は、ステップS100に戻り攪拌未了の反応容器7の液量検知電極23を駆動する。
【0044】
このように、本発明は、反応容器7毎に保持している液体の液量を液量決定部32によって決定し、液量決定部32が決定した液量をもとに駆動制御部31によって攪拌電極24,25を制御し、攪拌電極24,25が出射する音波によって反応容器7ごとに異なる液体を攪拌する。この結果、本発明の自動分析装置1、攪拌装置20及び攪拌方法は、攪拌対象の液量に対応してエネルギー量の過不足なく液体を攪拌することができる。
【0045】
(変形例1)
ここで、音波発生素子21は、図8に示すように、液量検知電極23の周囲に3つの攪拌電極24〜26を配置し、或いはそれ以上配置することで攪拌効率を向上させてもよい。また、この場合、音波発生素子21は、例えば、図9に示すように、攪拌電極24〜26を傾斜配置することで、攪拌電極24〜26の軸A1〜A3を圧電基板22の側面に対して傾斜させてもよい。このように配置すると、反応容器7は、保持した液体中に渦巻き状の音響流を発生させて攪拌効率を向上させることができる。
【0046】
(変形例2)
また、音波発生素子21は、図10に示すように、圧電基板22の中央に配置される攪拌電極24の両側にそれぞれ時分割で駆動される厚み縦振動子からなる液量検知電極23,27を配置してもよい。このように、二つの液量検知電極23,27を設けると、音波発生素子21は、反応容器7から液量検知電極23,27のそれぞれに作用する厚さ方向の応力、従って液量検知電極23,27の位置における液量を検知することができる。
【0047】
このため、音波発生素子21は、図11に示すように、反応容器7が保持する液体が微量な液滴Dであって、液滴Dが偏って存在するような場合であっても液量検知電極27によって分布位置と共に液量を検知することができる。ここで、液量検知電極27は、液量検知電極23と同様に、圧電基板22中央の一方の面にグランド側の電極27aが、他方の面に信号線側の電極27bが、それぞれ設けられ、電極27a,27bのそれぞれには電力供給用の引出し電極(図示せず)が接続されている。
【0048】
従って、音波発生素子21は、図12に示すように、圧電基板22の中央に配置される攪拌電極24の周囲にそれぞれ時分割で駆動される厚み縦振動子からなる液量検知電極23,27〜29を配置すると、偏って存在する液滴Dを分布位置及び液量と共により細かく検知することができる。
【0049】
(変形例3)
更に、液量検知電極23は、作用する応力によって出射する音波の周波数が変化すればよい。このため、音波発生素子21は、図13に示すように、反応容器7の側壁7bに配置してもよい。この場合、液量検知電極23は、液量検知に使用する音波として厚みねじり波や厚みすべり波を使用する。
【0050】
尚、自動分析装置1は、制御部14と攪拌制御部30とを別個の構成としたが、制御部14が攪拌制御部30の機能を果たすように構成してもよい。
【0051】
また、音波発生素子21は、液量検知電極と攪拌電極とを1つの圧電基板上に形成した場合について説明した。しかし、音波発生素子21は、液量検知電極と攪拌電極とがそれぞれ異なる圧電基板上に形成されている構成としてもよい。
【0052】
更に、音波発生素子21は、攪拌電極24,25,26を反応容器7の壁面に当接させて配置し、表面弾性波(SAW)によって液体Lを攪拌するようにした。しかし、音波発生素子21は、攪拌電極24,25,26を形成した圧電基板22の裏面を反応容器7の壁面に当接させて配置し、バルク波によって液体Lを攪拌するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】反応容器を断面にして示す本発明の攪拌装置の概略構成図である。
【図3】図2に示す攪拌装置で使用する音波発生素子の平面図である。
【図4】反応容器が保持する液体における、周波数モニタがモニタする音波の周波数の液量変化前後の変化量(Δf)と液体重量の変化量(ΔW)との関係を示す図である。
【図5】周波数モニタがモニタした音波の周波数を液体の液量毎に高速フーリエ変換して得られる強度分布曲線図である。
【図6】図2に示す攪拌装置における液量検知電極が出射した音波の周波数のモニタと、攪拌電極が出射した音波によって液体中に発生する音響流を示す図である。
【図7】本発明の攪拌方法を説明するフローチャートである。
【図8】音波発生素子の変形例1を示す模式図である。
【図9】変形例1の他の例を示す模式図である。
【図10】音波発生素子の変形例2を示す模式図である。
【図11】変形例2の音波発生素子の使用方法を示す模式図である。
【図12】変形例2の他の例を示す模式図である。
【図13】音波発生素子の変形例3を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 キュベットホイール
7 反応容器
8 測光装置
9 洗浄装置
10 試薬分注機構
11 試薬テーブル
12 試薬容器
13 読取装置
14 制御部
15 分析部
16 入力部
17 表示部
20 攪拌装置
21 音波発生素子
22 圧電基板
23 液量検知電極
24,25,26 攪拌電極
27,28,29 液量検知電極
30 攪拌制御部
31 駆動制御部
32 液量決定部
33 信号発生器
34 周波数モニタ
D 液滴
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に分注された液体を音波によって攪拌する攪拌装置であって、
前記容器に配置され、前記液体の液量を検知する音波を出射する第1の音波発生手段と、
前記容器に配置され、前記液体を攪拌する音波を出射する第2の音波発生手段と、
前記第1及び第2の音波発生手段の駆動を制御する駆動制御手段と、
前記第1の音波発生手段が出射する音波の周波数をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段がモニタした前記音波の周波数変化をもとに前記液体の液量を決定する液量決定手段と、
を備え、前記駆動制御手段は、前記液量決定手段が決定した液量をもとに前記第2の音波発生手段の駆動を制御することを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段は、前記液体の液量を検知する音波を出射する液量検知電極と前記液体を攪拌する音波を出射する攪拌電極が共通の圧電基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段は、前記容器の外壁面に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記第1の音波発生手段と前記第2の音波発生手段を駆動する駆動信号の振幅及び周波数を変更自在なことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記液量検知電極は、前記圧電基板と共に厚み縦振動子を形成し、前記攪拌電極は、前記圧電基板と共に表面弾性波素子を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の攪拌装置。
【請求項6】
検体と試薬を含む複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置であって、請求項1〜5のいずれか一つに記載の攪拌装置を備え、前記液量決定手段が決定した液量をもとに前記駆動制御手段によって駆動周波数を調整し、前記第2の音波発生手段が出射する音波によって前記液体を攪拌することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
容器に分注された液体を音波によって攪拌する攪拌方法であって、
前記容器内の前記液体の液量を音波によって検知する液量検知工程と、
検知した液量をもとに前記液体を攪拌する攪拌工程と、
を含むことを特徴とする攪拌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−217048(P2010−217048A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65225(P2009−65225)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】