説明

攪拌装置及びそれを用いた自動分析装置

【課題】試薬容器中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる攪拌装置及びそれを用いた自動分析装置を提供する。
【解決手段】
攪拌羽根1を備えた攪拌軸2を回転駆動させることにより、磁性粒子15を含んだ試薬に攪拌軸2の周方向の流れを発生させると同時に、攪拌軸2の軸内に貫通して設けた気体搬送路2bの下端から試薬中に気体を吐出することにより、試薬に攪拌軸2の軸方向の流れを発生させる。試薬中に攪拌軸2の周方向の流れと軸方向の流れの両方を発生させることにより試薬を攪拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料等を攪拌する攪拌装置及びそれを用いた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置や化学実験装置等では、種々の試薬を用いて分析や実験を行っている。例えば、臨床検査用免疫分析装置においては、一般的に、測定対象をそれ以外の物質と分離するための試薬のひとつとして磁性粒子が用いられている。この磁性粒子は緩衝液の中に均一に分散された状態で分析等に用いられるが、時間をおくと比重差のために試薬容器の底部に沈降してしまい、さらに、この状態で長時間放置すると磁性粒子が凝縮してしまう。このため、試薬として磁性粒子を使用する場合は、その直前に攪拌装置を用いて試薬を攪拌し、磁性粒子を緩衝液の中に均一に分散させている。
【0003】
このような場合に用いる攪拌装置としては、例えば、攪拌体を攪拌棒に突設し、その攪拌体を試薬容器中の試薬に浸漬させた状態で攪拌棒を回転させることにより攪拌体の周辺に乱流を発生させて試薬の攪拌を行うものが知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平05−302928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床検査用免疫分析装置などにおいては、できるだけ早く分析結果を知ることができるようにするため、分析に要する時間をより短縮することが望まれている。したがって、分析過程の一つである攪拌に要する時間の短縮も分析効率を向上させる上で重要である。また、試薬中で凝縮した磁性粒子をより確実に攪拌するための高い攪拌能力も求められている。
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、攪拌棒中心に攪拌体を回転させ、この攪拌体の周辺に発生する乱流により試薬の攪拌を行う構成であるので、攪拌体から離れた位置や攪拌棒の軸方向(試薬容器の底部方向)などには乱流が到達しにくいことが予想され、試薬全体の攪拌効率及び攪拌能力については依然改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、試薬容器中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる攪拌装置及びそれを用いた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、磁性粒子を含んだ試薬に一端を浸漬する回転軸と、前記回転軸を回転駆動させる回転駆動手段と、前記回転軸を軸方向に駆動させる軸方向駆動手段と、前記回転軸の浸漬部分に前記回転軸の径方向に突出して設けられ、前記試薬に前記回転軸の周方向の流れを発生させる攪拌羽根と、前記試薬に前記回転軸の軸方向の流れを発生させる縦旋回流発生手段とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、試薬容器中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
本発明の第1の実施の形態を図1を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る攪拌装置の全体構成をその攪拌対象である試薬と共に示す図である。
【0013】
本実施の形態における攪拌対象である試薬は、緩衝液14に磁性粒子15を加えたものであり、図1においては試薬(緩衝液14)中の磁性粒子15が試薬容器13の底部に沈降(凝縮)した様子を示している。
【0014】
図1において、本実施の形態の攪拌装置は、軸方向を上下方向に向けて配置された攪拌軸2と、攪拌軸2の下端に設けられた複数(例えば2つ)の攪拌羽根1と、攪拌軸2の上端に設けられ、この攪拌軸2を回転駆動する回転駆動装置3と、回転駆動装置3と駆動軸4を介して連結され、回転駆動装置3を上下方向(攪拌軸2の軸方向)に駆動する上下駆動装置5とを備えている。
【0015】
攪拌羽根1は、攪拌軸2の径方向に突出して設けられた方形の板状部材であり、攪拌軸2の外周部の例えば下端部、若しくはその近傍に周方向に等間隔に配置されている。攪拌軸2の下端(攪拌羽根1)が試薬中に浸漬され、攪拌軸2が回転駆動されると、試薬中で攪拌軸2周りに回転する攪拌羽根1の流体抵抗により、試薬中に攪拌軸2の周方向の流れ(乱流)が発生し、この乱流により試薬が攪拌される。以降、攪拌軸2の周方向の流れ(乱流)を横旋回流と称する。横旋回流は、攪拌軸2周りに攪拌軸2の回転方向に旋回する。
【0016】
回転駆動装置3は攪拌軸2の上端に攪拌軸2と同軸状に設けられたプーリ9と、図示しない制御装置により回転を制御されるモータ12と、モータ12の出力軸にこの出力軸と同軸状に設けられたプーリ10と、2つのプーリ9,10に巻装された伝達ベルト11とを備えている。モータ12からの回転をプーリ10及び伝達ベルト11を介してプーリ9に伝達することにより攪拌軸2を回転駆動する。
【0017】
上下駆動装置5は、攪拌軸2の軸方向(本例では鉛直方向)に延びる駆動軸4を備えている。駆動軸4の上端部には前述した回転駆動装置3が連結されている。上下駆動装置5は、駆動軸4をその軸方向に駆動することにより回転駆動装置3とともに攪拌軸2を軸方向に駆動する。
【0018】
また、本実施の形態の攪拌装置は、攪拌軸2の内部に軸方向に貫通して設けられた気体搬送路2aと、攪拌軸2の上端(又はプーリ9)に対し、攪拌軸2(又はプーリ9)の回転を許容するように接続されて気体搬送路2aに連通した気体輸送管7と、気体輸送管7に接続した気体ポンプ6と、気体輸送管7に設けられ、気体ポンプ6から気体搬送路2aに送られる気体(例えば空気)の量を調整するバルブ8とを備えている。
【0019】
気体ポンプ6から吐出された気体は、気体輸送管7及びバルブ8を介して攪拌軸2の気体搬送路2aに送られ、気体搬送路2a(攪拌軸2)の下端から軸方向下方に気泡となって吐出される。攪拌軸2の下端が試薬中に浸漬され、気体搬送路2aの下端から気体(気泡)が吐出されると、その気体の流体抵抗により、試薬中に攪拌軸2の軸方向下向きの流れ(乱流)が発生し、これにより試薬が攪拌される。また、気体搬送路2aから吐出された気体が試薬容器13の底部に衝突し、その後、試薬中を上昇(浮上)することにより、試薬中の軸方向上向きの流れ(乱流)が発生する。このように、試薬中に下方に向けて吐出され、さらに上昇する気体(気泡)の流体抵抗により、試薬中に攪拌軸2の軸方向の流れ(乱流)が発生し、これにより試薬が攪拌される。以降、攪拌軸2の軸方向の流れ(乱流)を縦旋回流と称する。縦旋回流は試薬容器13の内壁側(外周側)で上昇し、攪拌軸2の近傍(内周側)で下降する向きに旋回する。攪拌軸2を回転させつつ気体を吐出した場合には、横旋回流と縦旋回流の速度成分が合成され、より複雑な乱流が発生する。
【0020】
以上において、気体ポンプ6、気体輸送管7、及び気体搬送路2aは、試薬に攪拌軸2の軸方向の流れを発生させる縦旋回流発生手段を構成する。
【0021】
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作及び作用効果を順次説明する。
【0022】
オペレータは、攪拌対象である試薬が入れられた試薬容器13を、その開口部の中心が攪拌軸2の真下付近となるように配置する。次に、上下駆動装置5により攪拌軸2を下方向に移動させて攪拌羽根1を試薬中(試薬容器13の底面部付近)に浸漬する。この状態で、回転駆動装置3により攪拌軸2を回転駆動させ、試薬中に横旋回流を誘起すると同時に、気体ポンプ6により攪拌軸2の気体搬送路2aの下端から気体を試薬中に吐出させ、試薬中に縦旋回流を誘起する。
【0023】
したがって、本実施の形態によれば、試薬中の磁性粒子15が試薬容器13の底部に沈降していても、この磁性粒子15を、縦旋回流成分により試薬中に巻き上げて拡散し、さらに横旋回流成分により試薬全体に拡散することができる。また、気体搬送路2aからの気泡との接触による、一部の磁性粒子15が気泡に同伴して浮上することも期待できる。これにより、攪拌羽根1の動きにより発生する乱流(横旋回流)のみにより試薬の攪拌を行う場合と比較して、試薬容器13中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる。また、このように横旋回流成分に加えて縦旋回流成分を付与することにより、攪拌能力が大幅に向上し、試薬容器13の底部に磁性粒子15が凝固した試薬の攪拌も効果的に行うことができる。
【0024】
また、気体搬送路2aの下端から吐出した気体により試薬容器13の底部付近の試薬を攪拌するので、攪拌装置を構成する部材と試薬容器13との接触による試薬容器13、或いは攪拌装置の損傷を抑制することができる。
【0025】
なお、本実施の形態においては、攪拌軸2に設けた攪拌羽根1の数は2つである場合を例にとり説明したが、これに限られず、例えば攪拌羽根1を1つのみ設けた構成、又は3つ以上の攪拌羽根1を攪拌軸2の周方向に等間隔に設けた構成とすることもできる。また、攪拌羽根1の形状は方形に限られず、例えば、三角形など、攪拌軸2が回転駆動されたときに、攪拌羽根1の進行方向(攪拌軸2の周方向)に流体抵抗が生じ、試薬に乱流が発生するような形状であれば良い。
【0026】
本発明の第2の実施の形態を図2を用いて説明する。
【0027】
上記第1の実施の形態においては、試薬中に気体を吐出することにより縦旋回流を発生させたのに対し、本実施の形態においては、試薬の吸引・吐出により縦旋回流を発生させる。図中、図1に示した部材と同様のものには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0028】
図2は、本実施の形態に係る攪拌装置の全体構成をその攪拌対象である試薬と共に示す図である。
【0029】
図2において、本実施の形態の攪拌装置は、軸方向を上下方向に向けて配置された攪拌軸2と、攪拌軸2の下端に設けられた複数(例えば2つ)の攪拌羽根1と、攪拌軸2の上端に設けられ、この攪拌軸2を回転駆動する回転駆動装置3と、回転駆動装置3と駆動軸4を介して連結され、回転駆動装置3を上下方向(攪拌軸2の軸方向)に駆動する上下駆動装置5とに加え、攪拌軸2の内部に軸方向に貫通して設けられた吸引吐出路2bと、攪拌軸2の上端(又はプーリ9)に対し攪拌軸2(又はプーリ9)の回転を許容するように接続されて連通した吸引吐出管7bと、吸引吐出管7bに接続したシリンジ16と、シリンジ16の容積を調節するためのピストン17を駆動するピストン駆動手段18とを備えている。
【0030】
攪拌軸2の下端が試薬中に浸漬された状態で、ピストン駆動手段18によりシリンジ16のピストン部17をシリンジ16内の容積が増加する方向(吸引方向)に駆動すると、吸引吐出管7b内及び吸引吐出路2b内の空気がシリンジ16方向に引かれ、これに伴って、試薬容器13中の試薬が吸引吐出路2b内に吸引される。また、ピストン駆動手段18により、シリンジ16のピストン部17をシリンジ16内の容積が減少する方向(吐出方向)に駆動すると、シリンジ16内の空気が吸引吐出管7b内及び吸引吐出路2b内に送られ、これに伴って、吸引吐出路2b内の試薬が試薬容器13内に吐出される。このようにして、吸引吐出路2bの下端から攪拌軸2の軸方向下向きに試薬が吐出されることにより、試薬中に縦旋回流が発生し、これにより試薬が攪拌される。また、吸引吐出路2bから吐出された試薬が試薬容器13の底部に衝突し、その後、攪拌容器13の側面に沿って試薬中を上昇することにより、試薬中の磁性粒子15が巻き上げられる。
【0031】
以上において、シリンジ16、吸引吐出管7b、及び吸引吐出路2bは、試薬に攪拌軸2の軸方向の流れを発生させる縦旋回流発生手段を構成する。
【0032】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0033】
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作及び作用効果を順次説明する。
【0034】
オペレータは、攪拌対象である試薬が入れられた試薬容器13を、その開口部の中心が攪拌軸2の真下付近となるように配置する。次に、上下駆動装置5により攪拌軸2を下方向に移動させて攪拌羽根1を試薬中(試薬容器13の底面部付近)に浸漬する。この状態で、回転駆動装置3により攪拌軸2を回転駆動させ、試薬中に横旋回流を誘起すると同時に、シリンジ16により攪拌軸2の吸引吐出路2bに試薬を吸引し、吸引吐出路2bの下端から試薬を試薬容器13中に吐出させ、試薬中に縦旋回流を誘起する。
【0035】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、試薬中に浸漬した攪拌軸2の下端からの試薬の吸引および吐出により、試薬容器13中の試薬の撹拌を行うので、第1の実施の形態と比較して試薬の泡立ちを抑制することができる。
【0037】
本発明の第3の実施の形態を図3を用いて説明する。
【0038】
上記第1の実施の形態においては、試薬中に気体を吐出することにより縦旋回流を発生させたのに対し、本実施の形態においては、超音波により縦旋回流を発生させる。図中、図1に示した部材と同様のものには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0039】
図3は、本実施の形態に係る攪拌装置の全体構成をその攪拌対象である試薬と共に示す図である。
【0040】
図3において、本実施の形態の攪拌装置は、軸方向を上下方向に向けて配置された攪拌軸2と、攪拌軸2の下端に設けられた複数(例えば2つ)の攪拌羽根1と、攪拌軸2の上端に設けられ、この攪拌軸2を回転駆動する回転駆動装置3と、回転駆動装置3と駆動軸4を介して連結され、回転駆動装置3を上下方向(攪拌軸2の軸方向)に駆動する上下駆動装置5とに加え、攪拌軸2の下端に設けられた超音波振動子19を備えている。
【0041】
超音波振動子19は、攪拌軸2の軸方向に振動し、その軸方向に超音波を照射する。攪拌軸2の下端が試薬中に浸漬された状態で、超音波振動子19により超音波を照射すると、その超音波振動は試薬中を攪拌軸2の軸方向下向きに伝搬し、試薬中に攪拌軸2の軸方向下向きの流れ(縦旋回流)が発生し、これにより試薬が攪拌される。
【0042】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0043】
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作及び作用効果を順次説明する。
【0044】
オペレータは、攪拌対象である試薬が入れられた試薬容器13を、その開口部の中心が攪拌軸2の真下付近となるように配置する。次に、上下駆動装置5により攪拌軸2を下方向に移動させて攪拌羽根1を試薬中(試薬容器13の底面部付近)に浸漬する。この状態で、回転駆動装置3により攪拌軸2を回転駆動させ、試薬中に横旋回流を誘起すると同時に、超音波振動子19から超音波を照射し、試薬中に縦旋回流を誘起する。
【0045】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、試薬中の磁性粒子15が試薬容器13の底部に沈降して凝縮していても、超音波振動子19からの超音波により磁性粒子15同士の結合が弱めるので、試薬容器13中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる。
【0047】
本発明の第4の実施の形態を図4を用いて説明する。
【0048】
上記第1の実施の形態においては、試薬中に気体を吐出することにより縦旋回流を発生させたのに対し、本実施の形態においては、攪拌羽根1を攪拌軸2の軸方向に振動させることより縦旋回流を発生させる。図中、図1に示した部材と同様のものには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図4は、本実施の形態に係る攪拌装置の全体構成をその攪拌対象である試薬と共に示す図である。
【0050】
図4において、本実施の形態の攪拌装置は、軸方向を上下方向に向けて配置された攪拌軸2と、攪拌軸2の下端に設けられた複数(例えば2つ)の攪拌羽根1と、攪拌軸2の上端に設けられ、この攪拌軸2を回転駆動する回転駆動装置3と、回転駆動装置3と駆動軸4を介して連結され、回転駆動装置3を上下方向(攪拌軸2の軸方向)に駆動する上下駆動装置5とに加え、攪拌軸2の上端に設けられた振動装置20を備えている。
【0051】
振動装置20は、攪拌軸20を軸方向に振動させる。攪拌軸2の下端が試薬中に浸漬された状態で、振動装置20により攪拌軸2を軸方向に振動させると、これに伴って攪拌軸2の下端に設けられた攪拌羽根1が試薬中において軸方向に振動し、この攪拌羽根1の振動により試薬中に攪拌軸2の軸方向下向きの流れ(縦旋回流)が発生し、これにより試薬が攪拌される。
【0052】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0053】
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作及び作用効果を順次説明する。
【0054】
オペレータは、攪拌対象である試薬が入れられた試薬容器13を、その開口部の中心が攪拌軸2の真下付近となるように配置する。次に、上下駆動装置5により攪拌軸2を下方向に移動させて攪拌羽根1を試薬中(試薬容器13の底面部付近)に浸漬する。この状態で、回転駆動装置3により攪拌軸2を回転駆動させ、試薬中に横旋回流を誘起すると同時に、振動装置20により攪拌羽根1(攪拌軸)を振動させ、試薬中に縦旋回流を誘起する。
【0055】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、振動装置20を攪拌軸2の上端に設け、攪拌軸2を軸方向に振動させることにより攪拌羽根1を振動させるよう構成したので、振動装置20が試薬容器13の中に挿入可能な大きさである必要がなく、したがって、本実施の形態の攪拌装置に必要な大きさの振動装置20をより容易に得ることができる。
【0057】
本発明の第5の実施の形態を図5を用いて説明する。
【0058】
本実施の形態は、上記第4の実施の形態において、攪拌軸2に縦旋回流を発生させるための撹拌板をそなえたものである。図中、図1及び図4に示した部材と同様のものには同じ符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図5は、本実施の形態に係る攪拌装置の全体構成をその攪拌対象である試薬と共に示す図である。
【0060】
図5において、本実施の形態の攪拌装置は、軸方向を上下方向に向けて配置された攪拌軸2と、攪拌軸2の下端に設けられた複数(例えば2つ)の攪拌羽根1と、攪拌軸2の上端に設けられ、この攪拌軸2を回転駆動する回転駆動装置3と、回転駆動装置3と駆動軸4を介して連結され、回転駆動装置3を上下方向(攪拌軸2の軸方向)に駆動する上下駆動装置5と、攪拌軸2を軸方向に振動する振動装置20とに加え、攪拌軸2に設けられ、振動装置20による攪拌軸2の振動を試薬に伝達する攪拌板21を備えている。
【0061】
攪拌板21は略円盤状の部材であり、その中心部に攪拌軸2を通すように配置され、攪拌軸2に対して垂直に固定されている。攪拌板21は、攪拌軸2における攪拌羽根1の上側かつ試薬に浸漬される部分に配置されており、試薬の攪拌を行う場合には、攪拌羽根1と共に試薬中に浸漬される。この攪拌板21の直径は、試薬容器13の開口部を通過可能な大きさであり、例えば、試薬容器13の開口部の直径とほぼ同じ大きさである。
【0062】
攪拌軸2の下端、すなわち、振動羽根1及び攪拌板21が試薬中に浸漬された状態で、振動装置20により攪拌軸2を軸方向に振動させると、これに伴って攪拌軸2に設けられた攪拌羽根1及び攪拌板21が試薬中において軸方向に振動し、この攪拌羽根1及び攪拌板21の振動により試薬中に攪拌軸2の軸方向下向きの流れ(縦旋回流)が発生し、これにより試薬が攪拌される。
【0063】
その他の構成は、第4の実施の形態と同様である。
【0064】
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作及び作用効果を順次説明する。
【0065】
オペレータは、攪拌対象である試薬が入れられた試薬容器13を、その開口部の中心が攪拌軸2の真下付近となるように配置する。次に、上下駆動装置5により攪拌軸2を下方向に移動させて攪拌羽根1及び撹拌板21を試薬中(試薬容器13の底面部付近)に浸漬する。この状態で、回転駆動装置3により攪拌軸2を回転駆動させ、試薬中に横旋回流を誘起すると同時に、振動装置20により攪拌羽根1(攪拌軸)及び撹拌板21を振動させ、試薬中に縦旋回流を誘起する。
【0066】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、攪拌羽根1よりも攪拌軸2の軸方向に対する流体抵抗が大きな攪拌板21を設け、この攪拌板21を攪拌羽根1と同時に攪拌軸2の軸方向に振動するように構成したので、攪拌羽根1のみが軸方向に振動する場合と比較してより強い乱流(縦旋回流)が試薬中に発生し、試薬容器13中の試薬全体をより短時間でより確実に攪拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る攪拌装置の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る攪拌装置の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る攪拌装置の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 攪拌羽根
2 攪拌軸
3 回転駆動装置
4 駆動軸
5 駆動装置
6 気体ポンプ
7 気体搬送管
8 バルブ
9,10 プーリ
11 伝達ベルト
12 モータ
13 試薬容器
14 緩衝液
15 磁性粒子
16 シリンジ
17 ピストン部
18 駆動装置
19 超音波振動子
20 振動装置
21 攪拌板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含んだ試薬に一端を浸漬する回転軸と、
前記回転軸を回転駆動させる回転駆動手段と、
前記回転軸を軸方向に駆動させる軸方向駆動手段と、
前記回転軸の浸漬部分に前記回転軸の径方向に突出して設けられ、前記試薬に前記回転軸の周方向の流れを発生させる攪拌羽根と、
前記試薬に前記回転軸の軸方向の流れを発生させる縦旋回流発生手段と
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
請求項1記載の攪拌装置において、
前記縦旋回流発生手段は、前記回転軸の軸内に貫通して設けられた気体搬送路と、
前記気体搬送路に気体を供給する気体供給手段とを備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項3】
請求項1記載の攪拌装置において、
前記縦旋回流発生手段は、前記回転軸の回転軸内に軸方向に貫通して設けられた液体搬送路と、
前記液体搬送路における前記攪拌羽根と反対側の一端に接続され、前記試薬を前記液体搬送路に吸引し、液体搬送路から吐出する吸引吐出手段とを備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項4】
請求項1記載の攪拌装置において、
前記縦旋回流発生手段は、前記回転軸の前記攪拌羽根側の一端に設けられ、前記回転軸の軸方向に超音波を照射する超音波振動子であることを特徴とする攪拌装置。
【請求項5】
請求項1記載の攪拌装置において、
前記縦旋回流発生手段は、前記回転軸に設けられ、その回転軸を軸方向に振動させる振動手段であることを特徴とする攪拌装置。
【請求項6】
請求項5記載の攪拌装置において、
前記回転軸の浸漬部分に径方向に突出した攪拌板をさらに備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の攪拌装置を備えた自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−288031(P2009−288031A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140174(P2008−140174)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】