説明

攪拌装置

【課題】高粘度液体の攪拌が可能であって、しかもメンテナンスが容易である攪拌装置を提供する。
【解決手段】攪拌装置10は、撹拌槽11、中心攪拌軸12、上部主攪拌翼131、下部主攪拌翼132、偏心攪拌軸17、副攪拌翼18、及び外周翼14を備える。上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132は、側面視において、上下方向におけるそれらの回転軌跡間に中心攪拌軸12側に入り込んだ主翼非通過領域15が構成されるように形成されている。副攪拌翼18は、側面視において、上下方向における主翼非通過領域15位置に位置付けられていると共に、その回転軌跡が上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132の回転軌跡と重複部分を有さないように形成されている。外周翼14は、攪拌槽11の中心軸位置を中心に回転可能に設けられ、攪拌槽11の内壁に沿って上方に立ち上がるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤、シャンプー、練り歯磨き、化粧料、食品等の液体製品やゲル状製品の製造では、複数の材料を混合する場合に一般的に攪拌装置が用いられる。また、これらの液体製品やゲル状製品の製造において、材料の種類や濃度によって混合材料の粘度が相違することとなるため、その混合材料の粘度での攪拌に適した攪拌装置の選択が行われる。
【0003】
例えば、かかる攪拌装置の一種として、特許文献1には、いわゆるアジホモミキサーが開示されている。
【0004】
特許文献2には、攪拌槽内中心部に設けられた攪拌軸に攪拌翼が装着され、その攪拌翼の上部が格子状に形成され且つ下部が平板状に形成された攪拌装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、撹拌槽の底面部の隙間を有して垂設されたボットム羽根部、ボットム羽根部の端部に立設された立ち上り羽根部、及び立ち上り羽根部の上に連設された吸い込み羽根部からなる撹拌翼を備えた攪拌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−49241号公報
【特許文献2】特開平4−215829号公報
【特許文献3】特開2004−321967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、いわゆるアジホモミキサーは、高粘度液体の攪拌による混合或いは分散が可能であるものの、構造が複雑であるためにメンテナンス性が劣る。
【0008】
また、攪拌槽内中心部に設けられた攪拌軸に攪拌翼が装着されたタイプの攪拌装置は、メンテナンスが容易であるものの、攪拌可能な液体の粘度の上限がアジホモミキサー程には高くなく、高速軸撹拌機の設置が困難であることから分散効果も望めない。
【0009】
本発明の課題は、高粘度液体の攪拌による混合或いは分散が可能であって、しかもメンテナンスが容易である攪拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、円筒状の撹拌槽と、前記攪拌槽内の中心軸位置に回転可能に設けられた中心攪拌軸と、前記中心攪拌軸の上部に、前記中心攪拌軸から外向きに延びるように装着された板状の上部主攪拌翼と、前記中心攪拌軸の下部に、前記中心攪拌軸から外向きに延びるように装着された板状の下部主攪拌翼と、前記攪拌槽内の中心軸位置から偏心した位置に回転可能に設けられた偏心攪拌軸と、前記偏心攪拌軸に装着された副攪拌翼と、前記攪拌槽の中心軸位置を中心に回転可能に設けられ前記攪拌槽の内壁に沿って上方に立ち上がるように形成された外周翼と、を備えた攪拌装置であって、前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼は、側面視において、上下方向におけるそれらの回転軌跡間に前記中心攪拌軸側に入り込んだ主翼非通過領域が構成されるように形成され、前記副攪拌翼は、側面視において、上下方向における前記主翼非通過領域位置に位置付けられていると共に、その回転軌跡が前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼の回転軌跡と重複部分を有さないように形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中心攪拌軸に装着された上部主攪拌翼及び下部主攪拌翼が、側面視において、上下方向におけるそれらの回転軌跡間に中心攪拌軸側に入り込んだ主翼非通過領域が構成されるように形成され、また、偏心攪拌軸に装着された副攪拌翼が、側面視において、上下方向における主翼非通過領域位置に位置付けられていると共に、その回転軌跡が上部主攪拌翼及び下部主攪拌翼の回転軌跡と重複部分を有さないように形成されているので、上部主攪拌翼及び下部主攪拌翼と副攪拌翼との組合せにより高粘度液体の攪拌による混合或いは分散を行うことができ、さらに外周翼が装着されているので、高粘度液体の壁面付近の流動性及びかき取り作用向上により伝熱操作を促進することができ、しかも複雑な構造を有さず、また、中心攪拌軸に装着された上部主攪拌翼及び下部主攪拌翼、並びに偏心攪拌軸に装着された副攪拌翼を独立して手入れすることができるので、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1に係る攪拌装置の主攪拌翼を正面とした縦断面図である。
【図2】実施形態1に係る攪拌装置の外周翼を正面とした縦断面図である。
【図3】実施形態1に係る攪拌装置の平面図である。
【図4】主攪拌翼により攪拌される混合材料の流動を示す説明図である。
【図5】主攪拌翼の回転軌跡を示す説明図である。
【図6】主攪拌翼及び副攪拌翼の回転軌跡の重複関係を示す説明図である。
【図7】実施形態2に係る攪拌装置の主攪拌翼を正面とした縦断面図である。
【図8】変形例の攪拌装置の平面図である。
【図9】(a)及び(b)は別の変形例の攪拌装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1〜3は実施形態1に係る攪拌装置10を示す。実施形態1に係る攪拌装置10は、洗剤、シャンプー、練り歯磨き、化粧料、食品等の液体製品やゲル状製品の製造において、混合材料を攪拌混合する際に用いられるものである。
【0015】
実施形態1に係る攪拌装置10は円筒状の攪拌槽11を備えている。攪拌槽11は、槽本体11aに蓋部材11bが開閉可能に設けられており、槽本体11aは、例えば、槽内径Dが250〜5000mm(槽半径Rが125〜2500mm)、槽深さLが300〜8000mm、及び容量が0.1〜30m3である。
【0016】
攪拌槽11の上方には第1駆動モータM1が設けられており、そして、その第1駆動モータM1から攪拌槽11内の中心軸位置を底部内壁近傍まで垂下するように中心攪拌軸12が回転可能に設けられている。中心攪拌軸12の外径φ12は例えば槽内径Dの5〜15%である。
【0017】
中心攪拌軸12には、各々、中心攪拌軸12から外向きに延びるように形成された一対の平板状の主攪拌翼13が中心攪拌軸12を挟んで対称に、つまり、中心攪拌軸12の回転方向に180°の角度を有し且つ板面が中心攪拌軸12の回転方向を向くように固定又は脱着可能に装着されている。主攪拌翼13の厚さt13は例えば5〜25mmである。主攪拌翼13の下方の攪拌槽11の底部内壁の最深部までの間隙δ13は例えば槽深さLの1〜6%である。
【0018】
各主攪拌翼13は、中心攪拌軸12の上部に装着された上部主攪拌翼131、中心攪拌軸12の下部に装着された下部主攪拌翼132、及びそれらを連結する上下翼連結部133で構成されている。
【0019】
上部主攪拌翼131は、その下端部の翼装着部131aで中心攪拌軸12に結合し、それに続いて中心攪拌軸12に沿って上方に延びるように形成され、且つ中心攪拌軸12から間隔をおいて、つまり、中心攪拌軸12との間に縦長の間隙部131bを形成するように設けられている。上部主攪拌翼131は、その下端部の翼装着部131aから中間部までの部分が上方に行くに従って翼幅(混合材料対面幅)が広くなるように形成され、また、その中間部から上端部までの部分が上方に行くに従って翼幅が狭くなるように形成されている。このように上部主攪拌翼131に翼幅の広狭が存在することにより、上部主攪拌翼131が回転して通過した際には、図4に示すように、翼幅の広い中間部から狭い上端部側に混合材料の上向流が生じると共に下端部側への下向流が生じることとなる。また、上記のように上部主攪拌翼131と中心攪拌軸12との間に間隙部131bが形成されていることにより、それらの流動性が高められることとなる。スムーズな流動性を得る観点からは、上部主攪拌翼131は翼幅が不連続に変化した構成であるよりも連続して変化した構成であることが好ましい。
【0020】
上部主攪拌翼131の上下方向の寸法l131は例えば槽深さLの20〜60%である。中心攪拌軸12と上部主攪拌翼131との間の間隙部131bの幅δ131bは例えば槽半径Rの5〜15%である。上部主攪拌翼131の最大翼幅w131は例えば槽半径Rの20〜40%である。中心攪拌軸12の中心から上部主攪拌翼131の最外位置、つまり、翼幅が最大である中間部までの回転半径r131は例えば槽半径Rの40〜60%である。
【0021】
下部主攪拌翼132は、内側側辺部の上下方向の全体が中心攪拌軸12に結合し、また、底辺部が攪拌槽11の底部内壁に沿うように形成され、そして、その底辺部の外側端から上方に行くに従って翼幅が狭くなるように形成されている。このように下部132に翼幅の広狭が存在することにより、下部主攪拌翼132が回転して通過した際には、図4に示すように、翼幅の広い底辺部から狭い上端部側に混合材料の上向流が生じることとなる。スムーズな流動性を得る観点からは、下部主攪拌翼132は翼幅が不連続に変化した構成であるよりも連続して変化した構成であることが好ましい。
【0022】
下部主攪拌翼132の上下方向の寸法l132は、例えば槽深さLの15〜40%であり、また、上部主攪拌翼131の上下方向の寸法l131よりも小さいことが好ましく、例えばその50〜70%である。下部主攪拌翼132の最大翼幅w132は、例えば槽半径Rの55〜75%であり、また、上部主攪拌翼131の最大翼幅w131よりも大きいことが好ましく、例えばその1.5〜3.0倍である。中心攪拌軸12の中心から下部主攪拌翼132の最外位置、つまり、翼幅が最大である底辺の外側端までの回転半径r132は、例えば槽半径Rの65〜85%であり、また、中心攪拌軸12の中心から上部主攪拌翼131の最外位置までの回転半径r131よりも大きいことが好ましく、例えばその1.1〜2.5倍である。
【0023】
上下翼連結部133は、上部主攪拌翼131と下部主攪拌翼132とを連結する矩形部分に構成されている。上下翼連結部133の上下方向の寸法l133は例えば槽深さLの0〜10%である。上下翼連結部133の翼幅w133は例えば槽半径Rの20〜40%である。
【0024】
以上の主攪拌翼13の構成により、図5に示すように、側面視において、上下方向における上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132の回転軌跡A1,A2間、つまり、上下翼連結部133の位置には中心攪拌軸12側に入り込んだ主翼非通過領域15が構成される。すなわち、上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132は、側面視において、上下方向におけるそれらの回転軌跡A1,A2間に主翼非通過領域15が構成されるように形成されている。そして、この主翼非通過領域15には、上部主攪拌翼131による混合材料の下向流及び下部主攪拌翼132による混合材料の上向流が合流することとなる。
【0025】
なお、主攪拌翼13は、中心攪拌軸12に1枚だけが装着されていてもよく、また、3枚以上の複数枚(例えば3〜8枚)が装着されていてもよい。複数枚の主攪拌翼13は、例えば3枚の場合120°或いは4枚の場合90°のように、中心攪拌軸12の回転方向に等角度を有して装着されていることが好ましい。
【0026】
中心攪拌軸12には、平面視において、主攪拌翼13の装着位置から異なる位相(例えば、中心攪拌軸12の回転方向に90°の角度)を有するように、各々、中心攪拌軸12から攪拌槽11の底部内壁の隅部に延びた後に側部内壁に沿って上方に立ち上がるように形成された一対の細長板状の外周翼14が中心攪拌軸12を挟んで対称に、つまり、中心攪拌軸12の回転方向に180°の角度を有し且つ板面が中心攪拌軸12の回転方向を向くように固定又は脱着可能に装着されている。外周翼14の上端部は上部主攪拌翼131の上端部と高さが同じ或いは高さが高いことが好ましい。これらの外周翼14は、いわゆるアンカーパドルであってもよく、また、アンカーパドルの様に積極的な攪拌作用を促進するものではなく、特に難流動性流体を扱う際の壁面付近流動及びかき取り作用を促進するものであってもよく、その場合、攪拌槽11の内壁近傍の混合材料が滞留することなく混合されることで、撹拌槽11壁部からの伝熱作用を向上させることができる。外周翼14の厚さt14は例えば5〜25mmである。外周翼14の翼幅w14は例えば槽半径Rの1〜15%である。
【0027】
なお、外周翼14は、中心攪拌軸12に1枚だけが装着されていてもよく、また、3枚以上の複数枚(例えば3〜8枚)が装着されていてもよい。複数枚の外周翼14は、例えば3枚の場合120°或いは4枚の場合90°のように、中心攪拌軸12の回転方向に等角度を有して装着されていることが好ましい。
【0028】
下部主攪拌翼132の底辺部には、攪拌槽11の底部内壁に当接するようにスクレーパー16が設けられている。また、外周翼14の外側部にも、攪拌槽11の底部内壁の隅部及び側部内壁に当接するように複数のスクレーパー16が間隔をおいて設けられている。スクレーパー16は例えばテトラフルオロエチレン樹脂等の弾性シート材で構成されている。これらのスクレーパー16により、下部主攪拌翼132及び外周翼14が回転して通過した際には、攪拌槽11の底部内壁及び側部内壁に付着した混合材料が掻き取られて攪拌に供されることとなる。
【0029】
攪拌槽11の上方には第1駆動モータM1とは別の第2駆動モータM2が設けられており、そして、その第2駆動モータM2から攪拌槽11内の中心軸位置から半径方向に偏心した位置に、上下方向の主攪拌翼13の上下翼連結部133の位置、つまり、主翼非通過領域15まで、主攪拌翼13及び外周翼14の回転軌跡A1,A2,Bと干渉することなく延びるように、偏心攪拌軸17が回転可能に設けられている。偏心攪拌軸17は、中心攪拌軸12と平行に垂直に設けられていてもよく、また、中心攪拌軸12に対して傾斜して設けられていてもよい。偏心攪拌軸17の外径φ17は、例えば槽内径Dの1〜5%であり、また、中心攪拌軸12よりも細いことが好ましく、例えばその55〜75%である。
【0030】
偏心攪拌軸17の先端には副攪拌翼18が固定又は脱着可能に装着されている。副攪拌翼18は、側面視において、上下方向における主翼非通過領域15位置に位置付けられている。副攪拌翼18としては、側面視において、その回転軌跡Cが上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132を含む主攪拌翼13並びに外周翼14の回転軌跡A1,A2,Bと重複部分を有さないように形成されていればよく、例えば、混合材料に高速剪断を与えるプロペラ型、パドル型、タービン型、コーン型等のインペラが挙げられる。副攪拌翼18の回転半径r18は例えば槽半径Rの30〜60%である。この副攪拌翼18により、上部主攪拌翼131による下向流及び下部主攪拌翼132による上向流により合流した混合材料に高速剪断が与えられ、その結果、高効率での攪拌が行われることとなる。
【0031】
副攪拌翼18は、より高効率で攪拌を行う観点から、図6に示すように、平面視においては、その回転軌跡Cが上部主攪拌翼131の回転軌跡A1とも重複部分を有し、また、下部主攪拌翼132の回転軌跡A2とも重複部分を有するように設けられている、つまり、その回転軌跡Cが主翼非通過領域15と重複部分を有するように設けられていることが好ましい。但し、副攪拌翼18は、平面視において、その回転軌跡Cが外周翼14の回転軌跡Bとは重複部分を有さない。
【0032】
なお、第2駆動モータM2、偏心攪拌軸17、及び副攪拌翼18の副攪拌ユニットは複数設けられていてもよい。
【0033】
そして、この実施形態1に係る攪拌装置10を用いて製品を製造する場合、攪拌槽11に混合材料を投入し、第1駆動モータM1を稼働させて主攪拌翼13及び外周翼14を回転させると共に、第2駆動モータM2を稼働させて副攪拌翼18を回転させればよい。
【0034】
ここで、攪拌槽11への混合材料の投入は、最初に一括で行ってもよく、また、攪拌しながら順次行ってもよい。主攪拌翼13及び外周翼14の回転数は例えば15〜120rpm、副攪拌翼18の回転数は主攪拌翼13及び外周翼14よりも高速で例えば500〜4000rpmである。主攪拌翼13及び外周翼14の回転方向は、副攪拌翼18の回転方向と同一であってもよく、また、異なっていてもよいが、装置負担の軽減の観点からは同一であることが好ましい。なお、高効率で攪拌を行う観点からは、攪拌中は、上部主攪拌翼131の上端部が液面から突出させておくことが好ましい。
【0035】
このとき、上部主攪拌翼131によって、翼幅の広い中間部から狭い上端部側に混合材料の上向流が生じると共に下端部側への下向流が生じ、また、上部主攪拌翼131と中心攪拌軸12との間に間隙部131bによって、それらの流動性が高められる。それと共に、下部主攪拌翼132によって、翼幅の広い底辺部から狭い上端部側に混合材料の上向流が生じる。加えて、外周翼14によって、攪拌槽11の内壁近傍の混合材料が滞留することなく流動し、伝熱作用が向上する。さらに、スクレーパー16によって、攪拌槽11の底部内壁及び側部内壁に付着した混合材料が掻き取られ、より壁面からの伝熱作用が向上する。そして、副攪拌翼18によって、上部主攪拌翼131による下向流及び下部主攪拌翼132による上向流により合流した混合材料に高速剪断が与えられ、その結果、高効率で攪拌混合が行われる。
【0036】
以上の通り、実施形態1に係る攪拌装置10では、中心攪拌軸12に装着された上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132を含む主攪拌翼13が、側面視において、上下方向における上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132の回転軌跡A1,A2間に中心攪拌軸12側に入り込んだ主翼非通過領域15が構成されるように形成されている。また、偏心攪拌軸17に装着された副攪拌翼18が、側面視において、上下方向における主翼非通過領域15位置に位置付けられていると共に、その回転軌跡Cが上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132を含む主攪拌翼13並びに外周翼14の回転軌跡Bと重複部分を有さないように形成されている。このような実施形態1に係る攪拌装置10の構成によれば、上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132を含む主攪拌翼13と副攪拌翼18との組合せにより、1,000,000mPa・s(JIS Z8803に基づいて30℃においてT型粘度計で測定)程度の高粘度液体でも攪拌による混合或いは分散を行うことができ、また特に、乳化/分散処理に好適に対応することができ、さらに外周翼14が装着されているので、高粘度液体の壁面付近の流動性及びかき取り作用向上により伝熱操作を促進することができ、もちろん、主攪拌翼13及び外周翼14だけを用いて、或いは、それらと副攪拌翼18とを組み合わせて低粘度液体の攪拌を行うこともできる。従って、広い粘度範囲で液体の攪拌を行うことができる。しかも複雑な構造を有さず、また、中心攪拌軸12に脱着可能に装着された主攪拌翼13及び外周翼14、並びに偏心攪拌軸17に脱着可能に装着された副攪拌翼18を独立して手入れすることができるので、メンテナンスが容易である。
【0037】
(実施形態2)
図7は実施形態2に係る攪拌装置10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分については実施形態1と同一符号を用いて示す。この実施形態2に係る攪拌装置10も実施形態1と同様に液体製品やゲル状製品の製造用途で用いられるものである。
【0038】
実施形態2に係る攪拌装置10は、攪拌槽11の槽本体11aの内壁上部に取付部19aを介して取り付けられた静止翼19を備えている。
【0039】
静止翼19は、偏心攪拌軸17に干渉しないように、また、上部主攪拌翼131の回転軌跡A1の外側で且つ外周翼14の回転軌跡Bの内側に垂下するように設けられている。静止翼19は、半径方向において、上部主攪拌翼131に近い側に設けられていてもよく、また、外周翼14に近い側に設けられていてもよく、さらに、それらの中央に設けられていてもよい。静止翼19の先端部は、上下方向において、上部主攪拌翼131における翼幅の最も広い中間部までの位置に位置付けられていてもよく、また、それより深い主翼非通過領域15位置に位置付けられていてもよく、さらに、それより深い下部主攪拌翼132の位置に位置付けられていてもよい。
【0040】
静止翼19は、長尺板状に形成されていてもよく、また、棒状に形成されていてもよい。静止翼19の翼幅w19は例えば槽半径Rの10〜30%であり、接線方向の厚みは例えば5〜25mmである。
【0041】
静止翼19は、単数が設けられていてもよく、また、複数(例えば2〜8本)が設けられていてもよい。静止翼19が複数設けられている場合、それらの複数の静止翼19は、同一長さのもので構成されていてもよいが、攪拌性を高める観点から、異なる長さものを混在させて構成されていることが好ましい。また、複数の静止翼19は、回転方向に等角度を有して設けられていてもよく、また、回転方向にランダムに設けられていてもよい。
【0042】
以上の構成の実施形態2に係る攪拌装置10によれば、上部主攪拌翼131の回転軌跡A1の外側で且つ外周翼14の回転軌跡Bの内側に静止翼19が設けられているので、それらの間で混合材料の流動が乱れ、従って、より高効率で攪拌を行うことができる。
【0043】
その他の作用効果は実施形態1と同一である。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、中心攪拌軸12及び偏心攪拌軸17が上方から攪拌槽11内に垂下した構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、攪拌槽11の底部から中心攪拌軸12及び/又は偏心攪拌軸17がシールされて挿通された構成であってもよい。
【0045】
上記実施形態1及び2では、主攪拌翼13の上部に上部主攪拌翼131及び下部に下部主攪拌翼132がそれぞれ構成され、従って、上部主攪拌翼131及び下部主攪拌翼132が中心攪拌軸12の回転方向の同一位置に上下に連設された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、図8に示すように、平面視において、上部主攪拌翼131の装着位置から中心攪拌軸12の回転方向に例えば90°の角度を有するように下部主攪拌翼132が装着された構成であってもよい。なお、図8では、外周翼14及び副攪拌翼18等の図示を省略している。
【0046】
上記実施形態1及び2では、主攪拌翼13が平板状に形成された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、図9(a)に示すように、主攪拌翼13が半径方向に対して湾曲した形状に形成された構成であってもよく、また、図9(b)に示すように、主攪拌翼13が半径方向に対して屈曲部を有する形状に形成された構成であってもよい。なお、図9(a)及び(b)でも、外周翼14及び副攪拌翼18等の図示を省略している。
【0047】
上記実施形態1及び2では、主攪拌翼13及び外周翼14が共通の中心攪拌軸12に装着された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、外周翼14が中心攪拌軸12と同軸で且つ独立して回転可能に設けられた別の攪拌軸に装着され、主攪拌翼13及び外周翼14が独立して回転する構成であってもよい。かかる構成によれば、外周翼14を主攪拌翼13及び副攪拌翼18から独立して手入れすることができるので、メンテナンスが容易である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は攪拌装置について有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 攪拌装置
11 攪拌槽
11a 槽本体
11b 蓋部材
12 中心攪拌軸
13 主攪拌翼
131 上部主攪拌翼
131a 翼装着部
131b 間隙部
132 下部主攪拌翼
133 上下翼連結部
14 外周翼
15 主翼非通過領域
16 スクレーパー
17 偏心攪拌軸
18 副攪拌翼
19 静止翼
19a 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の撹拌槽と、
前記攪拌槽内の中心軸位置に回転可能に設けられた中心攪拌軸と、
前記中心攪拌軸の上部に、前記中心攪拌軸から外向きに延びるように装着された板状の上部主攪拌翼と、
前記中心攪拌軸の下部に、前記中心攪拌軸から外向きに延びるように装着された板状の下部主攪拌翼と、
前記攪拌槽内の中心軸位置から偏心した位置に回転可能に設けられた偏心攪拌軸と、
前記偏心攪拌軸に装着された副攪拌翼と、
前記攪拌槽の中心軸位置を中心に回転可能に設けられ前記攪拌槽の内壁に沿って上方に立ち上がるように形成された外周翼と、
を備えた攪拌装置であって、
前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼は、側面視において、上下方向におけるそれらの回転軌跡間に前記中心攪拌軸側に入り込んだ主翼非通過領域が構成されるように形成され、
前記副攪拌翼は、側面視において、上下方向における前記主翼非通過領域位置に位置付けられていると共に、その回転軌跡が前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼の回転軌跡と重複部分を有さないように形成されている、攪拌装置。
【請求項2】
前記副攪拌翼は、平面視において、その回転軌跡が前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼のいずれの回転軌跡とも重複部分を有するように設けられている、請求項1に記載された攪拌装置。
【請求項3】
前記外周翼は、平面視において、前記下部主攪拌翼の装着位置から前記中心攪拌軸の回転方向に90°の角度を有するように設けられている、請求項1又は2に記載された攪拌装置。
【請求項4】
前記外周翼には、前記攪拌槽の内壁に摺接するスクレーパーが設けられている、請求項1乃至3のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項5】
前記下部主攪拌翼には、前記攪拌槽の内壁に摺接するスクレーパーが設けられている、請求項1乃至4のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項6】
前記上部主攪拌翼は、上方に行くに従って翼幅が狭くなるように形成された部分を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項7】
前記下部主攪拌翼は、上方に向かうに従って翼幅が狭くなるように形成された部分を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項8】
前記上部主攪拌翼は、前記中心攪拌軸に翼装着部を介して装着され、前記中心攪拌軸から間隔をおいて設けられている、請求項1乃至7のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項9】
前記上部主攪拌翼及び前記下部主攪拌翼は、前記中心攪拌軸の回転方向の同一位置に上下に連設されている、請求項1乃至8のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項10】
前記上部主攪拌翼の回転軌跡の外側に設けられた静止翼をさらに備えた、請求項1乃至9のいずれかに記載された攪拌装置。
【請求項11】
前記静止翼が複数設けられている、請求項10に記載された攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200623(P2012−200623A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64632(P2011−64632)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】