説明

支承構造

【課題】可動型ゴム支承装置として機能するように支承装置を構造物に容易に取り付ける。
【解決手段】上部構造物2側に位置された上沓20と、下部構造物3側に配設された下沓21と、上沓20と下沓21との間に配設された弾性体22とを有する支承装置10と、上部構造物2と上沓20との間に配設され、上部構造物2に対して支承装置10を摺滑し得、相対変位を可能とする摺滑部材11と、上部構造物2に設けられ、支承装置10と係合し、支承装置10が摺滑する際にガイドするガイド部材12とを備えている。これにより、支承装置10が、ガイド部材12によって、可動型弾性支承装置として機能するように支承装置10を上部構造物2、下部構造物3に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型弾性支承装置として用いることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や橋梁等の各種構造物を支承する支承構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や橋梁等の構造物の支承装置には、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらが加硫接着によって相互に接着されて構成されたゴム支承がある(特許文献1参照)。ゴム支承では、ゴムの変位を拘束することで、鉛直バネ剛性を高める工夫や回転追従性能を向上させる工夫がなされている。例えば、ゴム支承では、ゴム板と鉄板とを交互に積層し、これらを加硫接着することによって、ゴムの流動性を低減し、鉛直バネ剛性を高めるようにしている。
【0003】
また、密閉ゴム支承では、ゴム板が下沓となる金属製ポット内に配置され、ゴム板の上にピストン状の上沓が載置され、ゴム板が非圧縮性の流体的に振る舞うように拘束されることで、回転追従性能が得られるように構成されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、所謂コンパクト支承では、大きな鉛直荷重を支持するため、上沓と下沓の相対する面にそれぞれ凹部を設け、それぞれの凹部内にゴム層が配設され、鉛直荷重が加わった際にゴムが撓み変形によって半径方向外方に膨出しないようにして、鉛直バネ剛性の向上を図るようにしている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−1820号公報
【特許文献2】特開2000−178921号公報
【特許文献3】特開2009−13773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような支承装置は、一般的に固定型ゴム支承装置として用いられているが、例えば、上部構造物との間に摺滑部材を介在させて摺滑可能に設けることで、可動型ゴム支承装置として用いる考えがある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、可動型弾性支承装置となるように支承装置を構造物に容易に取り付けることが出来る新規な支承構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る支承構造は、第一構造物側に位置された第一剛性体と、第二構造物側に位置された第二剛性体と、第一剛性体と第二剛性体との間に配設された弾性体とを有する支承装置と、第一構造物と第一剛性体との間及び/又は第二構造物と第二剛性体との間に配設され、第一構造物及び/又は第二構造物に対して支承装置を摺滑し得、これら二体間の相対変位を可能とする摺滑手段と、第一剛性体及び/又は第二剛性体との間に摺滑手段が配設された側の第一構造物及び/又は第二構造体に設けられ、支承装置と相対変位可能に係合し、支承装置が摺滑する際にガイドするガイド手段とを備えている。
【0009】
更に、ガイド手段は、先端部に係合部が形成されるようにしても良い。そして、係合部は、ガイド手段が設けられた構造物との間に摺滑手段が配設された剛性体と係合するようにしても良い。この際、係合部は、剛性体の外周面に形成された係合凹部と係合するようにしても良い。更に、係合部は、剛性体の摺滑手段が配設された面とは反対側の面と係合するようにしても良い。更に、係合部は、ガイド手段とは別体に設けられているようにしても良い。更に、ガイド手段は、相対する一対の係合片を有し、一方の係合片は、剛性体との間に摺滑手段が配設された構造物と係合し、他方の係合片は、剛性体の外周面に形成された係合凹部又は剛性体の摺滑手段が配設された面とは反対側の面と係合するようにしても良い。
【0010】
更に、支承装置は、所謂固定型支承装置とすることが可能である。また、支承装置には、弾性体を囲繞する拘束体を備えているようにしても良い。
【0011】
更に、ガイド手段は、先端部に係合部が形成されるようにしても良い。この際、係合部は、拘束体と係合するようにしても良い。更に、係合部は、拘束体の外周面に形成された係合凹部と係合するようにしても良い。更に、係合部は、ガイド手段とは別体に設けられているようにしても良い。更に、ガイド手段は、相対する一対の係合片を有し、一方の係合片は、剛性体との間に摺滑手段が配設された構造物と係合し、他方の係合片は、拘束体の外周面に形成された係合凹部と係合するようにしても良い。
【0012】
更に、好ましい支承装置としては、拘束体は、弾性体の弾性変形を拘束する機能及び/又は弾性体の略密閉状態を保持する機能及び/又は第一剛性体と第二剛性体の相対変位を拘束する機能を有するようにしても良い。更に、第一剛性体、第二剛性体の何れか一方には、芯材が設けられ、芯材は、上揚防止部と水平変位防止部とを有するようにしても良い。更に、拘束体と弾性体との間には、無入力の状態で、間隙部が設けられているようにしても良い。
【0013】
更に、弾性体の側面及び/又は拘束体の拘束面には、凸部及び/又は凹部が形成されているようにしても良い。更に、所定以上入力されると、弾性体が凸部と凹部とによって作出される隙間の容積を縮小するように弾性変形し、且つ、変形した弾性体が拘束体に当接及び/又は圧接して弾性体の変形が拘束されるように構成されるようにしても良い。
【0014】
更に、弾性体は、第一剛性体と第二剛性体と拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化するようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の支承構造は、構造物と支承装置の剛性体との間に配設された摺滑手段が支承装置を摺滑し、この構造物に設けられたガイド手段が支承装置と係合し、剛性体を、構造物に対して摺滑可能に支持すると共に、剛性体が構造物に対して摺滑した際にガイドするので、支承装置を可動型弾性支承装置として用いることが出来る。従って、本発明の支承装置は、支承装置に対して摺滑手段の摺滑面とこれに対する摺動面との間の最大静止摩擦力以上の水平力が生じると、摺滑手段の摺滑面が摺動面を摺滑し、支承装置に対するそれ以上の水平力が入力されることを防止出来、支承装置を構成する第一剛性体と第二剛性体との間の大きな相対変位を吸収することが出来る。更に、本発明の支承構造は、支承対象である構造物と支承装置を構成する剛性体との間に、これらを相対変位可能とする摺動可能な摺滑手段が配設され、更にこの構造物に対して後付け可能なガイド手段が配設されているので、固定側の弾性支承装置を、可動型の弾性支承装置として機能するように構造物に対して容易に取り付けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した支承構造を示した断面斜視図である。
【図2】側面の周回り方向に凸部と凹部を設けた弾性体を示した斜視図である。
【図3】側面の高さ方向に凸部と凹部を設けた弾性体を示した斜視図である。
【図4】側面に凸部と凹部を設けていない弾性体を示した斜視図である。
【図5】鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示した特性グラフである。
【図6】本発明を適用した支承構造を示した平面図である。
【図7】図1に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材の係合部を上沓の下面と係合するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図8】図1に示したガイド部材の変形例であり、係合部をガイド部材とは別体に設けた支承構造を示した断面図である。
【図9】図1に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材の鋸歯状の係合凸条部を、この係合凸条部に対応するように上沓の外周部に形成された鋸歯状の係合凹条部と係合するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図10】図1に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材を断面略コ字状に設けた支承構造を示した断面図である。
【図11】支承構造の変形例であり、芯材を上沓と弾性体を貫通するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図12】支承構造の変形例であり、拘束体を上沓に水平方向からボルトで固定した芯材のない支承構造を示した断面図である。
【図13】支承構造の変形例であり、拘束体を上沓に水平方向からボルトで固定した支承構造を示した断面図である。
【図14】支承構造の変形例であり、ガイド部材の係合部を下沓の外周部の係合凹部に係合するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図15】図14に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材の係合部を下沓の上面と係合するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図16】図14に示したガイド部材の変形例であり、係合部をガイド部材とは別体に設けた支承構造を示した断面図である。
【図17】図14に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材の鋸歯状の係合凸条部を、この係合凸条部に対応するように下沓の外周部に形成された鋸歯状の係合凹条部と係合するように設けた支承構造を示した断面図である。
【図18】図14に示したガイド部材の変形例であり、ガイド部材を断面略コ字状に設けた支承構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した支承構造について図面を参照して、下記の順に沿って説明する。
【0018】
1.支承構造の説明
2.支承装置の説明
3.弾性体及び拘束体の説明
4.支承装置の動作説明
5.摺滑部材の説明
6.ガイド部材の説明
7.作用効果
8.支承構造の変形例1の説明
9.支承構造の変形例2の説明
10.支承構造の変形例3の説明
11.支承構造の変形例4の説明
12.支承構造の変形例5の説明
13.支承構造の変形例6の説明
14.その他の変形例
【0019】
[1.支承構造の説明]
図1に示すように、本発明を適用した支承構造1は、橋桁等の上部構造物2と橋脚や橋台といった下部構造物3との間に配設された支承装置10と、この支承装置10と上部構造物2との間に介在され、支承装置10を摺滑させる摺滑部材11と、支承装置10を摺滑可能に支持すると共に摺滑の際にガイドするガイド部材12とを備えている。
【0020】
[2.支承装置の説明]
図1に示すように、支承装置10は、橋桁等の上部構造物2と橋脚や橋台といった下部構造物3との間に装着して水平荷重や鉛直荷重、回転荷重等の各種の荷重を支えると共に、地震や風、動的又は静的交通荷重等による揺動や振動、応力を吸収、分散しつつ、支承する橋梁用支承装置である。勿論、本発明の支承装置は、橋梁に対する適用に止まらず、建築物や建造物、文化財等々適宜の構造体の支承装置として適用することが出来る。この支承装置10は、第一剛性体としての上沓20と第二剛性体としての下沓21との間に支承体となる弾性体22が介在されている。また、弾性体22は、上沓20又は下沓21(ここでは上沓20)に固定された拘束体23によって囲繞されている。
【0021】
上沓20は、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によっても構成することが出来る。各種素材から構成される上沓20は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすること、望ましくは方形とすることが力学上、製造上、或いは施工上、交換上有利である。なお、上沓20は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成しても良い。このような上沓20は、摺滑部材11を介在させて、ガイド部材12によって上部構造物2に摺滑可能に支持されている。
【0022】
下沓21は、上沓20同様、金属やセラミックス、或いは硬質樹脂やFRPの如くの強化樹脂等の剛性素材によって構成することが好ましいが、必ずしも剛性素材に限定されるものではなく、弾性素材や剛性素材と弾性素材とを組み合せた材料によって構成することも出来る。各種素材から構成される下沓21は、平面形状が略多角形、略円形、略長円径、略楕円形等の適宜の形状に設定することが出来るが、方形又は円形とすること、望ましくは方形とすることが力学上、製造上、又は施工上、交換上で有利である。下沓21の平面形状等は、必ずしも上沓20と一致させる必要はないが、各部のサイズと、凸部や凹部の形状や位置等は下沓21の設定と上沓20の設定を互いに整合させる必要がある。なお、下沓21は、外表面を全体的に弾性体等の被覆層で覆って、耐候性、防錆効果を得るように構成することも出来る。
【0023】
更に、下沓21は、例えばアンカボルト、ナット等の固定部材4によって下部構造物3に固定されている。この際、下沓21を下部構造物3に対して直接的に固定しても良いが、ここでは、下沓21よりも広面積の板状をなす下部プレート24を用いて下沓21を下部構造物3に対して間接的に固定している。下沓21の下部構造物3への固定方法は、これらの例に限定されるものではない。なお、下沓21の直接的又は間接的な固定は、着脱可能な方法とするのが好ましく、アンカボルト、ナット等による締結はその一例である。
【0024】
[3.弾性体及び拘束体の説明]
ここで用いられる弾性体22は、例えば、弾性層22aと補強板22bとが積層された積層構造の弾性体である。弾性体22は、内部に補強板22bが設けられ、弾性層22aが複数設けられ、補強板22bと弾性層22aとが加硫接着によって相互に接着されている。また、弾性体22は、上面と下面も上板22cと下板22dとが加硫接着され補強されている。
【0025】
ここで、弾性層22aとしては、天然ゴムや合成ゴム、熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマを用いることができ、これらの中でも天然ゴムを主成分として使用することが好ましい。具体的なエラストマ成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(臭素化、塩素化等)、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ化ゴム、多硫化ゴム、ハイパロン、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、エポキシ化天然ゴム、trans−ポリイソプレン、ノルボルネン開環重合体(ポリノルボルネン)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレン樹脂、イソプレンゴム等のゴムを一種単独、或いは二種以上を併用することが出来る。そして、補強板22bや上板22cや下板22dは、鉄板といった剛性の鋼材が用いられている。以上のような積層型の弾性体22は、荷重が加わったとき、自由側面となっている補強板22bの間の弾性層22aの側面が荷重の大きさに応じて側方に僅かに膨出する特性を有する。
【0026】
そして、弾性体22の周囲には、周回り方向に、凸部25と凹部26とが設けられている。凸部25と凹部26は、図1の例では、互いに平行に、周回り方向に連続して設けられている。勿論、凸部25と凹部26は、周回り方向に断続的に設けられていてもよい。特に、弾性体22では、自由側面となっている弾性層22aの側面に凸部25が設けられ、補強板22bの位置に凹部26が設けられている。勿論、これとは逆に、弾性層22aの位置に凹部26を設け、補強板22bの位置に凸部25を設けるようにしてもよい。
【0027】
以上のような弾性体22は、下沓21に固定された芯材27の大径部28に配設され、支持される。弾性体22は、上沓20と下沓21との間を接着して高支圧化しても良いが、接着しないことにより、良好な回転追従性を実現することも出来る。
【0028】
なお、以上の例では、弾性体22が積層型である場合を説明したが、本発明での弾性体22は、図2に示すように、凸部25や凹部26を設けながらも、内部に鉄板といった剛性の補強板が設けられていない弾性層が一つ(単層)のものであってもよい。また、図3に示すように、弾性体22としては、高さ(厚さ)方向に、凸部25や凹部26を設けたものであってもよい。図3の例では、弾性層が単層でもよいが、図1の例のように、補強板を有する積層型であってもよい。更に、図4に示すように、側面に凸部25や凹部26を有しない弾性体であってもよい。この場合も、弾性体は、弾性層が単層でもよいが、補強板を有する積層型であってもよい。また、図1−図4の弾性体22の大きさは、拘束体23内に挿入するとき、拘束体23に嵌合する大きさでもよいが、組立性を考慮して、一回り小さくして、拘束面23aと弾性体22の側面との間に間隙を設けるようにしてもよい。なお、以下の説明では、図1に示した凸部25や凹部26を有する積層型の弾性体を例に説明する。
【0029】
以上のように構成される弾性体22は、図1に示すように、拘束体23によって囲繞されている。拘束体23は、弾性体22の外径よりやや大きい内径を有する円筒体であり、上沓20又は下沓21の何れか、図1では上沓20に固定されている。例えば、拘束体23は、ネジ等の固定部材29によって、上沓20に固定されている。なお、拘束体23は、その他に、溶接や従来公知の固定方法等によって、上沓20又は下沓21の何れかに固定されるようにしても良い。
【0030】
更に、下沓21には、芯材27が固定され、上揚防止部と水平変位防止部となっている。具体的に、芯材27は、ベースプレートとなる下沓21に下端部が固定される。芯材27は、大径部28となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部28が拘束体23内に配設され、弾性体22をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンのように機能する。この芯材27は、下沓21のネジ穴30に螺合されることによって固定される。なお、芯材27の下沓21への固定構造も、これに限定されるものではなく、例えば芯材27のネジ穴に、下沓21の下面から挿通させた固定ボルトを螺合して固定するようにしてもよい。なお、大径部28も、例えば芯材27の先端部に設けたネジ部を別部材の大径部のネジ穴に螺合して固定するようにしても良い。
【0031】
芯材27と一体の大径部28は、ネジ等の固定部材31によって拘束体23の下面に固定された上揚防止片32と係合する。下沓21と一体の芯材27の大径部28は、上揚防止部ともなって、上沓20に上揚力が加わったとき、上沓20側の上揚防止片32が係止されることで、上沓20と下沓21とが乖離することを防止する。すなわち、芯材27の大径部28は、拘束体23内に配設されることで、弾性体22の鉛直方向の変位を許容し、また、水平変位防止部となって、芯材27で水平方向の変位を規制する。これにより、過剰に上沓20と下沓21とが水平方向において相対変位することを防止することが出来る。更に、上揚防止片32と下沓21との間は、間隙が設けられており、鉛直下向きに変位して、上沓20が下沓21側に移動した際にも、上揚防止片32が下沓21に突き当たらないようにしている。なお、上揚防止片32は、固定部材31を用いる他に、溶接や従来公知の固定方法等によって、拘束体23に固定されるようにしても良い。
【0032】
すなわち、支承装置10は、上沓20側の拘束体23と、下沓21側に設けられ弾性体22を支持する大径部28を有する芯材27とが配設されることで、弾性体22の剪断変形を抑制する機能や、弾性体22をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現し、下沓21に支持された弾性体22は、上面が上沓20、側面が拘束体23によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになる。支承装置10は、半密閉のゴム支承となり、鉛直面内における回転に必要とされる鉛直撓みを可能としながらも小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0033】
この支承装置10の組立方法について説明すると、拘束体23に芯材27を挿入し、芯材27を下沓21のネジ穴30に固定する。これにより、拘束体23内には、大径部28によって、弾性体22を収納するポット部が形成される。この後、ポット部には、弾性体22が芯材27の上に配置される。この後、拘束体23には、上沓20が固定部材29によって結合される。勿論、支承装置10の組立方法は、上記の例に限定されるものではない。
【0034】
なお、弾性体22と拘束体23との間は、潤滑剤を充填するようにし、低摩擦にして、弾性体22が拘束体23内で円滑に鉛直変位出来るようにしても良い。また、拘束体23の拘束面23aを鏡面加工し、低摩擦にして、弾性体22が拘束体23内で円滑に鉛直変位出来るようにしても良い。
【0035】
ここで、弾性体22と拘束体23との大きさの関係について説明すると、図1の例では、支承装置10が上部構造物2と下部構造物3との間に設置され、支承装置10に対する上部構造物2の荷重によって弾性体22が変形している状態(例えば死荷重が加わった状態)において、弾性体22の側面の凸部25が拘束体23の内周面の拘束面23aに当接した状態となるように構成されている。つまり、上部構造物2と下部構造物3との間に設置される前は、弾性体22の側面の凸部25が拘束体23の内周面の拘束面23aとの間において非接触の状態で、隙間が設けられた状態となっており、上部構造物2と下部構造物3との間に設置されると、上部構造物2の死荷重によって、弾性体22の側面の凸部25が拘束体23の内周面の拘束面23aに当接した状態となる。なお、死荷重の載荷時には、弾性体22の側面の凸部25が拘束体23の内周面の拘束面23aと非接触で、通常の使用範囲を超える高い荷重(例えば例えば大型車両等の交通荷重による活荷重)があった際に、弾性体22の側面の凸部25が拘束体23の内周面の拘束面23aと当接し、更なる高荷重の入力によって拘束面23aに凸部25、並びに、凹部26の膨出変形した部分が圧接されるようにしてもよい。なお、弾性体22の側面に高さ方向の凸部25と凹部26がある場合、弾性体22を、拘束体23内のポット部に容易に収納することが出来る。
【0036】
[4.支承装置の動作説明]
以上のような支承装置10では、上部構造物2と下部構造物3との間に設置されると、図1に示すように、弾性体22が、通常の使用範囲の荷重(例えば死荷重や死荷重+車両通行時の活荷重)によって、圧縮され、弾性体22の凸部25は、弾性体22を囲繞した拘束体23の拘束面23aに近接又は当接した位置となる。支承装置10は、弾性体22が鉛直荷重の大きさに応じた弾性変形をし、この弾性変形によって側面の凸部25が凹部26により構成された隙間を埋めるように変形しながら、拘束体23の拘束面23aに圧接される。すなわち、弾性体22の変位量は、拘束体23によって制限される。
【0037】
更に、弾性体22の凸部25及び凹部26と拘束体23の拘束面23aとの関係を説明すると、積層型の弾性体22は、自由側面の弾性層22aの位置に凸部25を設け、補強板22bの位置に凹部26を設けるようにしている。この場合、凸部25は、荷重が加わった際、弾性層22aの自由側面が膨出することで、凹部26より先に拘束体23の拘束面23aに強く圧接される。積層型の弾性体22は、従来最も膨出量が多い補強板間の位置の弾性層22aに凸部25を設けた上、拘束体23の拘束面23aによってこの凸部25周辺の膨出量が拘束されているので、高荷重が入力されている際でも内部の補強板22bの周囲における弾性層22aに対する局部応力が緩和される。また、内部の補強板22bが高荷重によっても潰れにくくなり、補強板22bを薄くすることが出来、支承装置10の全体の薄型化を実現出来る。なお、補強板22bの位置を凸部25とし、弾性層22aの位置を凹部26としてもよい。この場合、凹部となっている弾性層22aの自由側面が僅かに膨出することで、凸部25と凹部26の部分が同じように拘束体23の拘束面23aと当接され均等に圧接されるようにすることが出来る。
【0038】
そして、支承装置10は、上沓20側の拘束体23と、下沓21側に設けられ弾性体22を支持する大径部28を有する芯材27とが配設されることで、大径部28が上沓20と下沓21の間に配設される弾性体22の剪断変形を抑制する機能や、弾性体22をほぼ密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現し、下沓21に支持された弾性体22は、上面が上沓20、側面が拘束体23によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになり、半密閉のゴム支承となり、鉛直面内における回転に必要とされる鉛直撓みを可能としながらも小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0039】
また、低荷重から高荷重の入力に亘って鉛直面内における回転力の作用時には、弾性体22が拘束体23によって部分的に支持されながらも凸部25又は凹部26による隙間により弾性体22が変形し、弾性体への極端な負荷なく、良好な回転追従性を実現出来る。
【0040】
ここで、図5に、鉛直方向の変位量と鉛直荷重との関係を示す。
線A・・・一般的な積層ゴム支承
なお、ここで言うゴム支承は、弾性体が積層ゴムであり、内部に複数枚の鋼板が設けられた地震時水平力分散型ゴム支承や免震支承であり、密閉ゴム支承ではなく、荷重が加わった際の変位が拘束されていない支承である。
線B・・・拘束体23の内径(ポット部の内径)に対して弾性体22の外形を小さくし、凸部25と凹部26を大きく形成して、拘束面23aと弾性体22の側面との間の隙間を大きくしたときの特性を示す。(隙間大)
線C・・・拘束面23aと弾性体22の側面との間の隙間を線Bの場合より小さくしたときの特性を示す。(隙間中)
線D・・・拘束面23aと弾性体22の側面との間の隙間を最も小さくしたときの特性を示す。(隙間小)
線E・・・拘束面23aと弾性体22の側面との間の隙間を設けない密閉ゴム支承。回転追従性能を有するが、鉛直方向の弾性変位はほとんど無く、金属支承の扱いとなる。
【0041】
なお、本発明では、線A−Eの何れの支承装置も適用可能である。
【0042】
図5の線Aで示すゴム支承では、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量もほぼ比例的に大きくなり、グラフの傾き(拘束度又はバネ定数)はほぼ一定である。弾性体22の側面に凸部25と凹部26を設けた線B−Dの例によれば、鉛直荷重が大きくなるに連れて鉛直変位量も大きくなるが、その特性は非線形となる。すなわち、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾き(拘束度又はバネ定数)は、鉛直変位又が大きくなるほど大きくなる。このように、弾性体22の側面に凸部25と凹部26を設けたときには、大きな荷重が入力されたときほど、より高度な密閉状態に変化して鉛直変位量の増加量が小さくなるような特性で、すなわち拘束度を可変として、上部構造物2を支承することが出来る。すなわち、この支承装置10では、適度な鉛直可撓性を有しながら高荷重を支持することが出来る。また、線B−Dの例を見ると、隙間が小さい程、鉛直変位に対する鉛直荷重反力の大きさを表すグラフの傾きの緩やかな範囲(一次勾配)を狭く設定することが出来る。すなわち、鉛直変位が小さくなる。更に、線Eの密閉ゴム支承では、鉛直方向の弾性変位はほとんど見られない。
【0043】
特に、弾性体22の側面に凸部25と凹部26を設けた線B−Dの例によれば、高荷重が加わると、鉛直可撓変位が小さくなり、密閉ゴム支承のように挙動する。したがって、線B−Dの例では、支承する上部構造物2の種類、用途等に応じて、線B−Dの使用範囲を設定していくことになる。例えば、死荷重に活荷重が加わった状態が、グラフの急勾配(二次勾配)の領域に含まれるようにすることで、活荷重の大小による鉛直撓み幅を狭くすることが出来るようになり、車両通過時の振動や騒音を低減することが出来るようになる。なお、低荷重域(1次勾配)では、鉛直撓みがあるため、線B−Dの支承装置は、弾性支承装置に属する扱いとし得る。
【0044】
[5.摺滑部材の説明]
摺滑部材11は、図1に示すように、上部構造物2と上沓20との間に配設されている。摺滑部材11としては、例えば、フッ化炭素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の如くの低摩擦係数の表面を有するプレート等であり、上沓20の上面20a又は上部構造物2の下面2aに固定されている。これにより、支承装置10は、上部構造物2と摺滑部材11との間の最大静止摩擦力以上の水平力が生じると、上部構造物2に対して摺滑部材11で摺滑し、それ以上水平力が入力されることを防止出来る。従って、支承装置10は、上部構造物2と下部構造物3との間の大きな相対変位を吸収することが出来る。なお、この際、上部構造物2は、下部構造物3に設けられたダンパー又はストッパによって所定の抵抗をもって水平力を分散させるようにしても良い。即ち、支承装置10は、摺滑部材11によって、可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。なお、上部構造物2と摺滑部材11との間には、ステンレス板等の上部構造物2よりも低摩擦係数の表面を有する上部プレート33を介在させても良い。
【0045】
[6.ガイド部材の説明]
ガイド部材12は、図1に示すように、下端部12aに、内側に張り出した凸条の係合部34が形成された断面略L字状の長尺部材である。ガイド部材12は、例えば、上沓20の橋軸方向に沿って橋軸直角方向に一対、互いの係合部34が向かい合うように配設され、係合部34が上沓20の外周部20bに形成された係合凹部20cと係合するように、上端部12bがネジ等の固定部材35によって上部構造物2に固定されている。なお、ガイド部材12は、その他に、溶接や従来公知の固定方法等によって、上部構造物2に固定されるようにしても良い。
【0046】
このようなガイド部材12は、係合部34が上沓20の係合凹部20cと係合することで、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20が摺滑部材11によって橋軸方向に摺滑した際にガイドする。即ち、支承装置10は、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置となるように上部構造物2に容易に取り付けることが出来る。
【0047】
なお、上沓20は、図6に示すように、上部構造物2の下面2aに支承装置10を中心に橋軸方向に所定の距離離間して設けられ、ネジ等の固定部材36によって上部構造物2の下面2aに固定された一対のストッパ部材37,37に当接して橋軸方向の移動が規制されるようにしても良い。
【0048】
また、ガイド部材12は、上部構造物2、上部プレート33及びガイド部材12に軸線を一致させた貫通孔を形成して、固定ボルトを上部構造物2及びガイド部材12の何れか一方から挿入して他方で固定ナットに締め付けて、上部構造物2に固定するようにしても良い。
【0049】
また、図7に示すように、ガイド部材12は、係合部34を上沓20の摺滑部材11が配設された上面20aとは反対側の下面20dと係合するように設けても良い。この場合、上沓20の外周部20bに係合凹部20cを形成する必要がなくなり、係合部34が係合凹部20cと係合するよりも、上沓20の機械的強度が低下することが防止出来、更に、安価に製造することが出来る。
【0050】
更に、図8に示すように、ガイド部材12は、係合部34をガイド部材12とは別体に設けるようにしても良い。この場合、ガイド部材12及び係合部34は、上部構造物2、上部プレート33、ガイド部材12及び係合部34に軸線を一致させた貫通孔を形成して、固定ボルト及び固定ナット等の固定部材35によって、上部構造物2に固定するようにすることが好ましい。
【0051】
更にまた、図9に示すように、ガイド部材12は、係合部34の代わりに、上沓20と対向する一側面部に、摺滑方向に延設された鋸歯状の凹凸から成る係合凸条部12cが形成され、係合凸条部12cに対応するように上沓20の外周部20bに形成された鋸歯状の凹凸から成る係合凹条部20eと係合するように設けても良い。この場合においても、ガイド部材12は、係合凸条部12cが上沓20の係合凹条部20eと係合することで、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20が摺滑部材11によって橋軸方向に摺滑した際にガイドすることが出来る。更に、ガイド部材12は、図1、図7及び図8に示すガイド部材12よりも厚さ方向における機械的な上沓20との固定強度を高めることが出来る。換言すると、上沓20及びガイド部材12の厚さを、例えば半分にしてもほぼ同じ固定強度を得ることが出来、安価に製造することが出来る。なお、係合凸条部12c及び係合凹条部20eは、図9に示すように、凹凸の断面が三角形状でも良いが、矩形状であっても良い。
【0052】
[7.作用効果]
以上のように、本発明を適用した支承構造1は、上部構造物2と支承装置10の上沓20との間に配設された摺滑部材11が支承装置10を摺滑し、この上部構造物2に設けられたガイド部材12が支承装置10と係合し、上沓20を、上部構造物2に対して摺滑可能に支持すると共に、上沓20が上部構造物2に対して摺滑した際にガイドするので、支承装置10を可動型弾性支承装置として用いることが出来る。従って、本発明を適用した支承構造1は、支承装置10と摺滑部材11との間の最大静止摩擦力以下の水平力が作用している間は弾性体22にせん断変形が生じ、支承装置10と摺滑部材11との間の最大静止摩擦力以上の水平力が生じると、支承装置10が摺滑部材11を摺滑し、それ以上水平力が作用することを防止出来、また支承装置10の上沓20及び下沓21の大きな相対変位を吸収することが出来る。更に、本発明を適用した支承構造1は、ガイド部材12が上沓20との間に摺滑部材11が配設された上部構造物2に設けられているので、固定側の支承装置である支承装置10を、可動型ゴム支承装置として機能するように上部構造物2と下部構造物3との間に容易に取り付けることが出来る。
【0053】
[8.支承構造の変形例1の説明]
変形例1の支承構造100では、図10に示すように、断面略コ字状に形成されて相対する一対の係合片12a,12bを有するガイド部材12によって、支承装置10の上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持している。この場合、ガイド部材12は、橋軸直角方向側から、一方の係合片12bが上部構造物2の上面2bと係合され、他方の係合片12a(係合部34)が、上沓20の摺滑部材11が配設された上面20aと反対側の下面20dと係合される。かくして、ガイド部材12は、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20が摺滑部材11で摺滑する際にガイドする。これにより、このような支承構造100にあっても、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置となるように支承装置10を上部構造物2に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。
【0054】
なお、ガイド部材12は、一方の係合片12bを、上部構造物2にネジ等の固定部材や溶接等によって固定するようにしても良い。更に、ガイド部材12は、他方の係合片12aを、上沓20にネジ等の固定部材や溶接等によって固定するようにしても良い。また、ガイド部材12の他方の係合片12bを、上沓20の外周部20bの係合凹部20cに係合するようにしても良い。
【0055】
[9.支承構造の変形例2の説明]
変形例2の支承構造110は、図11に示すような構成を有する。この支承構造110の支承装置10は、上沓20に表裏面に貫通した貫通孔121が穿設されている。貫通孔121には、上沓20の上面側から芯材122が挿入され、芯材122の先端部が上沓20の上面から突出することなく、上沓20が鉛直下向きに変位する分を考慮して、先端部が一段低くなるように収容されている。この貫通孔121の開口端には、上揚防止片121aがフランジ状に形成されている。また、拘束体23は、上沓20の外周部に、上述の例と同様、固定部材29で固定されている。拘束体23の下沓21側の先端部は、下沓21の外周部の外側に位置し、固定されていない。これにより、上沓20は、鉛直荷重の入力があったとき、弾性体22を圧縮しながら鉛直下向きに変位することが出来る。すなわち、拘束体23の下沓21側の先端部は、下沓21の外周部の外側に位置することで、上沓20と下沓21の間に配設される弾性体22の剪断変形を抑制する機能や、弾性体22を略密閉状態に拘束して高支圧化させるシリンダの役割を実現する。かくして、下沓21に支持された弾性体22は、上面が上沓20、側面が拘束体23によって包囲され、略密閉された空間に配設される。従って、支承構造110の支承装置10は、略密閉ゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0056】
貫通孔121に挿通される芯材122は、大径部123となる頭部を有する金属性のボルト状部材からなり、先端部である大径部123が上沓20の貫通孔121の内部に収容可能な大きさに設定されている。この芯材122は、上沓20の貫通孔121より弾性体22の略中央部に形成された挿通孔124に挿通され、更に、下沓21の弾性体22の支持面側に形成されたネジ穴125に螺合されることによって固定される。芯材122は、貫通孔121より挿入され、ネジ穴125に固定されたとき、大径部123が貫通孔121内に先端部が一段低くなるように収容される。この芯材122は、下沓21に固定されることで、上沓20と下沓21とが水平方向に相対変位しようとした際に、芯材122が上揚防止片121aの先端面又は貫通孔121の側面に突き当たり、下沓21に固定された芯材122によって上沓20の変位が制限される。すなわち、芯材122は、水平変位防止部として機能して、過剰に上沓20と下沓21とが水平方向において相対変位することを防止する。更に、芯材122の大径部123は、貫通孔121の上揚防止片121aの開口径より大きく、上揚防止片121aと係合する。芯材122は、上沓20に上揚力が加わったとき、下沓21に固定された芯材122の大径部123に上揚防止片121aが係止されることによって、上沓20と下沓21とが乖離することを防止する。すなわち、大径部123は、上揚防止部としても機能することになる。
【0057】
更に、支承構造110の支承装置10は、図1、図7−図10に示す支承構造1,100の支承装置10と同様に、ガイド部材12によって、上沓20が上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持されると共に、上沓20が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドされる。これにより、このような支承構造110の支承装置10にあっても、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置となるように支承装置10を上部構造物2に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。
【0058】
[10.支承構造の変形例3の説明]
以上の例では、拘束体23を上沓20に鉛直変位方向から固定部材29で固定した例を説明したが、図12に示すように、拘束体23は、水平方向から固定部材29で上沓20に固定するようにしても良い。すなわち、変形例3の支承構造120の支承装置10は、弾性体22を囲繞する筒状の拘束体23が、筒状の上沓20の外周部20bに固定ボルト等の固定部材29によって固定されている。
【0059】
なお、この支承構造120の支承装置10では、下沓21上に弾性体22が配置され、この弾性体22上に、拘束体23に囲繞された上沓20が配設されている。また、拘束体23の下沓21側の先端部23dは、下沓21の外周部の外側に位置し、固定されていない。これにより、上沓20は、鉛直荷重の入力があったとき、弾性体22を圧縮しながら鉛直下向きに移動することが出来る。すなわち、支承構造120の支承装置10は、拘束体23の下沓21側の先端部23dが下沓21の外周部の外側に位置することで、下沓21が上沓20と下沓21の間に配設される弾性体22の剪断変形を抑制する機能や、弾性体22を略密閉状態に拘束して高支圧化させるピストンの役割を実現する。かくして、下沓21に支持された弾性体22は、上面が上沓20、側面が拘束体23によって包囲され、半密閉の空間に配設されることになる。支承構造120の支承装置10は、半密閉のゴム支承となり、小さな支承面積にして高荷重を支承することが可能となる。
【0060】
更に、支承構造120の支承装置10は、ガイド部材12によって、上沓20が上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持されると共に、上沓20が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドされる。ガイド部材12については、図1に示す支承構造1のガイド部材12とほぼ同じ構成を有しているので、詳細な説明は省略し、ここでは、異なる構成のみを説明する。ガイド部材12は、図1に示す支承構造1において係合部34が上沓20の外周部20bに形成された係合凹部20cに係合しているのに対して、図12に示す支承構造120においては、拘束体23の外周部23bに形成された係合凹部23cに係合している。即ち、ガイド部材12は、係合部34が拘束体23の係合凹部23cと係合することで、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドする。これにより、このような支承構造120の支承装置10にあっても、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置となるように支承装置10を上部構造物2に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。
【0061】
なお、支承構造120のガイド部材12は、係合部34を拘束体23の先端部23dと係合するように設けても良い(図7参照)。更に、支承構造120のガイド部材12は、係合部34を別体で設けても良い(図8参照)。更に、支承構造120のガイド部材12は、係合部34の代わりに、鋸歯状の係合凸条部12cが形成されて、係合凸条部12cに対応するように拘束体23の外周部23bに形成された鋸歯状の係合凹条部と係合するように設けても良い(図9参照)。更に、支承構造120のガイド部材12は、相対する一対の係合片12a,12bを有するように設けられ、一方の係合片12bが上部構造物2の上面2bと係合され、他方の係合片12aが拘束体23の係合凹部23c又は拘束体23の先端部23dと係合されるように設けても良い(図10参照)。
【0062】
[11.支承構造の変形例4の説明]
図13に示す変形例4の支承構造130は、図1の支承構造1と同様に、芯材27を有する支承装置10であって、図12に示す支承構造120と同様に、拘束体23を、水平方向から固定部材29で上沓20に固定するようにしたものである。
【0063】
この場合、支承構造130のガイド部材12は、図12に示す支承構造120の支承装置10と同様に、係合部34が拘束体23の係合凹部23cと係合することで、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドする。これにより、このような支承構造130の支承装置10にあっても、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置として機能するように支承装置10を上部構造物2に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。
【0064】
なお、支承構造130のガイド部材12は、係合部34を拘束体23の先端部23dと係合するように設けても良い(図7参照)。更に、支承構造130のガイド部材12は、係合部34を別体で設けても良い(図8参照)。更に、支承構造130のガイド部材12は、係合部34の代わりに、鋸歯状の係合凸条部12cが形成されて、係合凸条部12cに対応するように拘束体23の外周部23bに形成された鋸歯状の係合凹条部と係合するように設けても良い(図9参照)。更に、支承構造130のガイド部材12は、相対する一対の係合片12a,12bを有するように設けられて、一方の係合片12bが上部構造物2の上面2bと係合され、他方の係合片12aが拘束体23の係合凹部23c又は拘束体23の先端部23dと係合されるように設けても良い(図10参照)。
【0065】
[12.支承構造の変形例5の説明]
以上の例では、上沓20と上部構造物2との間に摺滑部材11を配設して、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持する例を説明したが、これに限定されるものではなく、図14に示すように、下沓21と下部構造物3との間に摺滑部材11を配設して、下沓21を、下部構造物3に対して橋軸方向に摺滑可能に支持するようにしても良い。なお、上沓20は、例えば、ボルト、ナット等の固定部材5によって上部構造物2に直接的に又は上部プレート33を用いて間接的に固定されている。
【0066】
このような変形例5の支承構造140のガイド部材12は、下沓21の橋軸直角方向に一対、ガイド部材12と一体の係合部34が向かい合うように配設され、係合部34が下沓21の外周部21aに形成された係合凹部21bと係合するように、例えばアンカボルト、ナット等の固定部材38によって下部構造物3に固定されている。
【0067】
このような変形例5の支承構造140のガイド部材12は、係合部34が下沓21の係合凹部21b又は下沓21の上面21cと係合することで、下沓21を、下部構造物3に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、下沓21が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドする。これにより、このような支承構造140の支承装置10にあっても、ガイド部材12によって、可動型ゴム支承装置として機能するように支承装置10を下部構造物3に容易に取り付けることが出来、摺滑部材11及びガイド部材12によって、支承装置10を可動型ゴム支承装置として用いることが出来る。
【0068】
なお、支承構造140の下沓21は、下部構造物3の上面に支承装置10を中心に橋軸方向に所定の距離離間して設けられ、ネジ等の固定部材によって下部構造物3の上面に固定された一対のストッパ部材に当接して橋軸方向の移動が規制されるようにしても良い(図6参照)。
【0069】
更に、支承構造140のガイド部材12は、図15に示すように、係合部34を下沓21の摺滑部材11が配設された下面21dとは反対側の上面21cと係合するように設けても良い。更に、支承構造140のガイド部材12は、図16に示すように、係合部34を別体で設けても良い。更に、支承構造140のガイド部材12は、図17に示すように、係合部34の代わりに、鋸歯状の係合凸条部12cが形成されて、係合凸条部12cに対応するように下沓21の外周部21aに形成された鋸歯状の係合凹条部21eと係合するように設けても良い。更に、支承構造140のガイド部材12は、図18に示すように、断面略コ字状に形成されて相対する一対の係合片12a,12bを有し、一方の係合片12bが下部構造物3の下面3aと係合され、他方の係合片12aが下沓21の係合凹部21b又は下沓21の上面21cと係合されるように設けても良い。
【0070】
[13.支承構造の変形例6の説明]
以上の例では、ガイド部材12を上沓20又は下沓21の橋軸直角方向に一対配設し、支承装置10を橋軸方向に摺滑可能に支持すると共に、上沓20又は下沓21が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドする例を説明したが、これに限定されるものではなく、ガイド部材12は、上沓20又は下沓21の橋軸方向に一対配設され、支承装置10を橋軸直角方向に摺動可能に支持する共に、上沓20又は下沓21が摺滑部材11によって摺滑した際にガイドするようにしても良い。
【0071】
[14.その他の変形例]
上述の説明では、本発明の支承装置として橋梁用支承装置について説明したが、本発明は橋梁用支承装置に限定されることはなく、各種の構造物の制震、免震用の支承装置として採用することが出来る。
【0072】
更に、上述の説明では、本発明の支承構造について、上部構造物2と上沓20との間又は下部構造物3と下沓21との間に摺滑部材11を配設し、上部構造物2又は下部構造物3に取り付けられたガイド部材12によって、上沓20又は下沓21を、上部構造物2又は下部構造物3に対して橋軸方向に摺滑可能に支持すると共にガイドする例を説明したが、これに限定されるものではない。本発明の支承構造は、上部構造物2と上沓20との間及び下部構造物3と下沓21との間にそれぞれ摺滑部材11を配設し、上部構造物2に取り付けられたガイド部材12によって、上沓20を、上部構造物2に対して橋軸方向に摺滑可能に支持してガイドすると共に、下部構造物3に取り付けられたガイド部材12によって、下沓21を、下部構造物3に対して橋軸方向に摺滑可能に支持してガイドするようにしても良い。更に、本発明の支承構造は、上沓20及び下沓21の何れか一方を、橋軸方向に摺滑可能に支持してガイドし、他方を橋軸直角方向に摺滑可能に支持してガイドするようにしても良い。更に、本発明の支承構造は、上沓20及び下沓21を、橋軸方向又は橋軸直角方向に摺滑可能に支持してガイドすることに限定されるものではなく、橋軸方向又は橋軸直角方向から所定の角度を有する方向に摺滑可能に支持してガイドするようにしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 支承構造、2 上部構造物、2a 下面、2b 上面、3 下部構造物、3a 下面、4 固定部材、5 固定部材、10 支承装置、11 摺滑部材、12 ガイド部材、12a 下端部(係合片)、12b 上端部(係合片)、12c 係合凸条部、20 上沓、20a 上面、20b 外周部、20c 係合凹部、20d 下面、20e 係合凹条部、21 下沓、21a 外周部、21b 係合凹部、21c 上面、21d 下面、21e 係合凹条部、22 弾性体、22a 弾性層、22b 補強板、22c 上板、22d 下板、23 拘束体、23a 拘束面、23b 外周部、23c 係合凹部、23d 先端部、24 下部プレート、25 凸部、26 凹部、27 芯材、28 大径部、29 固定部材、30 ネジ穴、31 固定部材、32 上揚防止片、33 上部プレート、34 係合部、35 固定部材、36 固定部材、37 ストッパ部材、38 固定部材、100 支承構造、110 支承構造、120 支承構造、121 貫通孔、121a 上揚防止片、122 芯材、123 大径部、124 挿通孔、125 ネジ穴、130 支承構造、140 支承構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支承体として互いに対向配置される第一構造物と第二構造物との間に介在されて一方の荷重と支承しつつ他方に伝達する、弾性体を介して対向配置される第一剛性体と第二剛性体とを有する、上記第一剛性体が上記第一構造物側に、上記第二剛性体が上記第二構造物側に、それぞれ位置される支承装置と、
上記第一構造物と上記第一剛性体との間及び/又は上記第二構造物と上記第二剛性体との間に配設され、該第一構造物及び/又は該第二構造物に対して上記支承装置を摺滑し得、これら二体間の相対変位を可能とする摺滑手段と、
上記剛性体との間に摺滑手段が配設された側の構造物に対して配設され、上記支承装置と相対変位可能に係合し、該支承装置が摺滑する際にガイドするガイド手段と、
を備えていることを特徴とする支承構造。
【請求項2】
前記ガイド手段は、先端部に係合部が形成されており、
上記係合部は、前記ガイド手段が設けられた前記構造物との間に前記摺滑手段が配設された前記剛性体と係合することを特徴とする請求項1に記載の支承構造。
【請求項3】
前記ガイド手段は、橋軸方向に沿った長尺状の部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の支承構造。
【請求項4】
前記係合部は、前記剛性体の外周面に形成された係合凹部と係合することを特徴とする請求項2に記載の支承構造。
【請求項5】
前記係合部は、前記剛性体の前記摺滑手段が配設された面とは反対側の面と係合することを特徴とする請求項2に記載の支承構造。
【請求項6】
前記係合部は、前記ガイド手段とは別体に設けられていることを特徴とする請求項2−4の何れかに記載の支承構造。
【請求項7】
前記係合部は、摺滑方向に延設された条状を成す凸条部を有することを特徴とする請求項2−5の何れかに記載の支承構造。
【請求項8】
前記係合凹部は、摺滑方向に延設された条状を成す凹条部を有することを特徴とする請求項2−7の何れかに記載の支承構造。
【請求項9】
前記ガイド手段は、相対する一対の係合片を有し、一方の係合片は、前記剛性体との間に前記摺滑手段が配設された構造物と係合し、他方の係合片は、該剛性体の外周面に形成された係合凹部又は該剛性体の前記摺滑手段が配設された面とは反対側の面と係合することを特徴とする請求項1に記載の支承構造。
【請求項10】
前記支承装置は、固定型の支承装置であることを特徴とする請求項1−9の何れかに記載の支承構造。
【請求項11】
前記支承装置は、前記弾性体を囲繞する拘束体を備えていることを特徴とする請求項1−10の何れかに記載の支承構造。
【請求項12】
前記ガイド手段は、先端部に係合部が形成されており、
前記係合部は、前記拘束体と係合することを特徴とする請求項11に記載の支承構造。
【請求項13】
前記係合部は、前記拘束体の外周面に形成された係合凹部と係合することを特徴とする請求項12に記載の支承構造。
【請求項14】
前記拘束体は、前記弾性体の弾性変形を拘束する機能及び/又は前記弾性体の略密閉状態を保持する機能及び/又は前記第一剛性体と前記第二剛性体の相対変位を拘束する機能を有することを特徴とする請求項11−13の何れかに記載の支承構造。
【請求項15】
前記第一剛性体、前記第二剛性体の何れか一方には、芯材が設けられ、
上記芯材は、上揚防止部と水平変位防止部とを有することを特徴とする請求項1−14の何れかに記載の支承構造。
【請求項16】
前記拘束体と前記弾性体との間には、無入力の状態で、間隙部が設けられていることを特徴とする請求項11−15の何れかに記載の支承構造。
【請求項17】
前記弾性体の側面及び/又は前記拘束体の拘束面には、凸部及び/又は凹部が形成されている請求項11−16の何れかに記載の支承構造。
【請求項18】
所定以上入力されると、前記弾性体が前記凸部及び/又は前記凹部とによって作出される隙間の容積を縮小するように弾性変形し、且つ、変形した前記弾性体が前記拘束体に当接及び/又は圧接して前記弾性体の変形が拘束されるように構成されることを特徴とする請求項17に記載の支承構造。
【請求項19】
前記弾性体は、前記第一剛性体と前記第二剛性体と前記拘束体とによって囲繞されて半密閉状態とされ、
前記弾性体への荷重の増大に伴って、より高度な密閉状態へと変化することを特徴とする請求項11−18の何れかに記載の支承構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−76298(P2013−76298A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217840(P2011−217840)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】