説明

支持体表面の処理用架橋重合体組成物

【課題】安定な塗膜を有する医用材料表面の提供。
【解決手段】反復単位の側鎖に大気圧低温プラズマ照射により架橋する官能基を有する重合体を形成するモノマー由来の単独重合体または共重合体であって、かつ塗膜形成性重合体を大気圧低温プラズマ照射処理により得られる架橋組成物およびその使用。モノマーが、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、3−ブタジエン、アリールアルコールアルキルエーテル(CH2=CHCH2Oalkであって、alkはC1−C6アルキルである)、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルまたはアクリロニトリル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、好ましくは共重合体の架橋組成物に関し、より具体的には、医用材料の表面に固定された、ハロゲン化メチルスチレンと1種以上のエチレン性不飽和重合性コモノマーの共重合体の架橋組成物、ならびに該共重合体を支持体表面に塗布した後、該共重合体を大気圧低温プラズマ照射することによる表面処理の施された支持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、心筋梗塞の治療に対し、外科的バイパス手術に代わってバルーンカテーテルを利用する閉塞血管拡張手術が主流となってきている。しかしながら拡張血管の再閉塞が問題となり、新たにステント等の最新技術が広がってきている。ステントは血管の収縮を抑え、再狭窄に対する効果はあるものの、炎症による血栓形成やパヌス化による問題が避けられないのが現状である。このためステント表面処理やそこからの薬物除法が広く検討されている。しかしながらこれらの処理では十分ではなく、表面への生体成分の吸着、炎症惹起から再閉塞を引き起こすため、実際の現場ではステントからの強い副作用を示す抗ガン剤、ドクソルビシン等の徐放等が行われている。この処理は強い毒性のため、表面への細胞や生体成分の接着を妨げるいわゆる死んだ表面をつくることによるものであり、再狭窄は避けられるものの、薬物による副作用が新たに起こるなど、根本的解決になっていない。
【0003】
またカテーテルの表面は動脈を通して心臓や脳の狭窄部や動脈瘤処理を行うに際して、その表面の潤滑性が重要であるものの、手元は滑ってはならないなど、操作性に細かい要求が多いのに対して、これらが必ずしも完全に満足されているものではない。
【0004】
上述では、カテーテルを例に取り説明を行ったが、生体組織に直接的に接触する、あるいは体液等にふれるようなバイオ材料または医用材料ではその表面を、例えば、生体適合性を有しかつ安定性を備えるように構築するのが極めて重要であり、一つ一つの材料に対する精緻な対応が求められているのが現実である。例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫ラテックス凝集法に使われるシャーレやラテックス、上述したカテーテルのみならず、内視鏡、ステント、透析用中空糸、人工血管や人工臓器、細かいものではピペット先端チップやバイアルなど有りとあらゆる材料表面処理が検討されてきている。
【0005】
このような材料表面の処理の一方法として、表面への生体適合性付与の方法として、生体親和性を有するポリマーや親水性ポリマーをコーティングする方法やプラズマ表面処理法など種々の方法が検討されている。コーティング法は、どのような支持体(または基板)にも簡単に適応できる最も一般的な方法であるが、支持体に強固に接着または固定させることが必ずしも容易ではなく、塗膜(coating film)としての安定性に問題がある場合が多い。
【0006】
また、プラズマ処理などによる支持体表面の親水化、表面での化学反応などにより生体親和性を付与する試みもなされている。このような処理は、反応が短時間で完了し、安定性にも優れる利点があるものの、減圧下または高温下での特殊な装置内で行われる上、必ずしも適正な表面が構築されるとは限らないのが現状である。他に、表面処理法としては薬品処理(エッチング効果)、カップリング剤の使用、モノマーやポリマーのコーティング、表面グラフト化、紫外線照射法、イオンビーム法、真空蒸着法、プラズマ処理法などが挙げられるが、基板へのポリマー処理の方法としては、ポリマーコーティングと表面グラフト化、プラズマ処理によるポリマーの導入などが主である。一部繰り返しになるが、
これらの従来技術の問題点を下記にまとめる。
【0007】
ポリマーコーティングは、簡便で基板を完全に被覆できる方法だが、剥離するなど膜としての安定性に問題がある。
【0008】
表面グラフト化は、表面にポリマー鎖を直接導入できる方法であるが、部分的欠落が多く完全に被覆することが困難である。処理方法としても多段の反応を必要とする。
【0009】
従来のプラズマ表面処理は、様々な基板表面を処理できるが、減圧下で行われ、特殊装置内で行うことが多いので材料形状にも制限がある。また、発熱する場合があり、温度や減圧条件による影響も考慮しなくてはいけない。減圧下のプラズマを用いたプラズマ化学反応では、運動量の大きなイオンの衝撃により高分子構造へダメージを与えることが多く、薄膜形成の精密な制御は困難である。加えてこれらの表面処理は薬剤リリースなどの高次の機能を付与することに必ずしも適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、以上に述べた従来技術に随伴する短所を軽減ないしは解消した多様な基材表面に瞬時にかつ安定に固定される生体適合性表面を作製できる組成物および該表面の作製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
医用材料の表面処理に利用できるポリマー組成物および表面処理操作等について検討して来たところ、従来の減圧下等でのプラズマ処理とは異なり、低周波大気圧マイクロプラズマジェットに代表される大気圧低温プラズマを一定の反応性基または部分を側鎖に有する反復単位を含んで成る重合体組成物に照射したところ、一定の溶媒に溶解性であった重合体が不溶性になり、架橋されたものとみなせる重合体を提供できることを見出した。大気圧低温プラズマの使用については、該プラズマを液中溶解物質に対して照射することによる液中プロセシングの研究が進められており、液中の金属イオン(例えば、塩化金酸溶液)のプラズマ還元が知られている(H.Furusho et al.,J.Photopoly Sci.and Tech.20,p.229(2007))。また、大気圧低温プラズマを液体モノマーに照射するプラズマ重合も行われている(K.Kitano et al.,Proceedings of International Conference on Phenomena in Ionized Gases XXVIII,(Prague,July 2007),p.1131(2007))。しかしながら、意外にも、一定の反応性基または部分を側鎖に有する反復単位が含まれている重合体に大気圧低温プラズマを照射することにより、重合体を溶媒不溶性にする改変、例えば、架橋が生じることは、新規かつ、従来技術からは全く想起できることではない。例えば、重合体中にハロゲン化メチルスチレン由来の反復単位が存在する共重合体(例えば、コモノマーとしてポリ(アクリル酸2−メトキシエチル)(PMEA)が用いられた場合)は、大気圧低温プラズマを照射することにより、照射処理前には溶媒溶解性であったものが溶媒不溶性にするなどの改変がもたらされる。そしてこのような重合体が塗膜組成物として支持体上に塗布されている場合、該組成物に大気圧低温プラズマを照射すると、組成物は溶媒不溶性となることのみならず、溶媒または溶剤等による洗浄、等の処理では容易に剥離しない塗膜として支持体表面に固定されることも確認された。さらにまた、このような大気圧低温プラズマ処理後の重合体組成物(または架橋重合体組成物ともいう)は、重合体の側鎖にホロゲン化ベンジル(またはハロゲン化メチルフェニル)を有する場合、未反応のハロゲンとアミノ化合物との反応によりさらなる改質を行うこともできる。
【0012】
理論により拘束されるものでないが、大気圧低温プラズマを重合体に照射すると、重合体中に存在する側鎖の反応性基または部分を担持する反復単位は、その反応性基または部分における一定の原子または基の脱離、および/または転移(または再配列)により改変され、架橋等をもたらすものと考えられる。
【0013】
一般的に、大気圧プラズマでは中性ガスとの頻繁な衝突によりイオン温度が低く押さえられるために、各種高分子材料へイオン衝撃によるダメージを与えることが少なく、高分子材料へ対するプラズマ処理は大気圧下で行うことが好適であると言える。しかしながら、大気圧下でのプラズマ生成は、電子と中性ガス成分との間での頻繁な衝突により中性ガスの上昇をもたらし、極端な場合はアークプラズマに代表されるように非常に高温な状態になりがちである。ここで、低周波大気圧マイクロプラズマジェットなどのように、プラズマ発生用電極間に誘電体バリアを挿入してプラズマ電流を抑制するなどの方法を用いることで、プラズマの温度上昇を抑えることが可能であり、本発明で使用するのに適した大気圧低温プラズマが得られる。指で触れてもやけどしない程度のプラズマ生成も可能である。この点でも、本発明に従う大気圧低温プラズマを用いる重合体の処理は利点を有する。
【0014】
したがって、本発明によれば、かような大気圧低温プラズマ照射により側鎖基に反応性または部分を有する反復単位を含んでなる重合体であって、その反応性基または部分における一定の改変をもたらす重合体が広く本発明での使用または処理対象となる。こうして、本発明によれば、反復単位の側鎖に大気圧低温プラズマ照射により改変または架橋する官能基を有する重合体を形成するモノマー由来の単独重合体または共重合体であって、かつ塗膜形成性重合体に大気圧低温プラズマを照射することにより得ることのできる(または得れれる)架橋された重合体を含んでなる架橋重合体組成物、が提供される。
【0015】
また、より具体的な態様では、(1)ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレンンと、
(2)下記(式I)で示されるコモノマーの共重合により製造された塗膜形成性共重合体に大気圧低温プラズマを照射することにより得ることのできる架橋された共重合体を含んでなる架橋重合体組成物が提供される。
【0016】
式(I):
CH=C(R)−X−A−B (I)
式中
(a)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレンを表し、そして
Bはヒドロキシル、C−Cアルキルオキシ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルオキシカルボニル、ホスホリルコリンを表すか、
(b)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bはフッ素原子1個以上でフッ素化されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖のC−C20アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレン−C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレンフェニルまたはフェニルを表すか、
(c)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bは式−(CHCHO)、−(CHCH(CH)O)または−(CHCHCHCHO)を表し、ここでR、RおよびRは独立してC−Cアルキルを表し、そしてp、qおよびrは独立して2−200の整数を表す
か、
(d)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)N(R)−を表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−CアルキレンまたはC−Cシクロアルキルを表し、そして
Bは水素原子またはアミノ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、カルボキシを表すか、
(e)Rは式−CHC(O)Rを表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、
A−Bは水素原子またはC−Cアルキルを表すか、
(f)Rは水素原子を表し、
Xは−O−C(O)−を表し、そして
A−BはC−Cアルキルを表すか、
(g)Rは水素原子を表し、または
X−A−Bは、水素原子、メチル、C−Cアルキルにより置換されていてもよいフェニル、2−ピロリドン−1イルを表す、
で示される1種以上のエチレン性不飽和重合性コモノマー。
【0017】
また、上記の架橋重合体組成物が支持体,例えば医用材料表面に固定された塗膜(coating film)も提供される。
【0018】
また、本発明によれば、支持体の表面に対して前記塗膜形成性重合体を塗布する工程、およびこうして形成する塗膜へ大気圧低温プラズマを照射することにより塗膜の重合体成分の少なくとも一部を架橋(または改変)せしめる工程、を含んでなる表面処理の施された支持体の製造方法も提供される。
【0019】
さらにまた、本発明によれば、前記架橋重合体組成物を、アミノ基含有有機化合物と溶媒中で接触させることにより、該組成物中の架橋された重合体に残存するハロゲン化メチル基とアミノ基含有化合物を反応させ、こうしてアミノ化合物を架橋重合体組成物中に導入することを含んでなる該組成物の改質方法も提供される。
【0020】
本発明で提供される前記重合体を含んでなる架橋重合体組成物は、それ自体、例えば、外科用移植片等として利用できるが、好ましくは、医用材料の表面に固定して使用される。しかも、大気圧低温プラズマはその成分の大半を占める中性ガスが低温であるために、例えば共重合体の場合に、コモノマーに由来する骨格、例えば、PMEA骨格の分解や反応を抑え、ハロゲン化ベンジル基のプラズマ反応による架橋と官能基の導入を同時に可能とする。さらに表面のバクテリア等を同時に滅菌することにより、生体材料としての利用を可能とすることができる。この表面処理では基材表面とも効果的に反応するため、強く安定な固定化が可能であるとともに、塗膜または塗膜の下層に薬剤を混入することにより生成した架橋ゲルからの薬物リリースが可能である。一般的に、ハロゲン化ベンジル基はアミノ基、水酸基やカルボキシル基と反応することが知られており、本発明の組成物中のハロゲン化ベンジル基もリガンドや生体物質の固定化、表面の改質等に効率的に利用できる。
【0021】
さらに本発明によれば、従来必ずしも十分でなかった生体材料表面の高度な処理(生体適合性や潤滑性の付与等)を可能にするだけでなく、例えば生体内に埋入するステントや人工血管、再生用スキャッフォールドの足場など、「薄い擬内膜の形成」を要求されるものの、「強い炎症」と「擬内膜の成長」を効率的に抑え、生体組織と同化させる表面構築
の材料設計が可能になる。
【0022】
<発明の詳細な記述>
本発明にいう、大気圧低温プラズマは本発明の目的に沿うものである限り如何なる装置から放射されるものであってもよいが、代表的なものとしては、北野勝久・浜口智志“低周波大気圧マイクロプラズマジェット”応用物理 77巻、383−389頁(2008)に記載の「2.3単電極方式のプラズマジェット」生成装置等により発生されるものを意味する(また、WO2008/072390 A1も参照されたい。これらの文献の内容は、引用することにより本明細書の内容となる。)。要約すれば、低周波大気圧マイクロプラズマジェットは、大気圧下、室温において、細長い形状を有する媒質ガス塊にその長手方向の双方に向って部分放電が発生するように電場を形成することにより、簡易な構成により、エネルギー効率良く、かつ幅広いパラメーターに対して安定して発生されるプラズマのことを示している。媒質ガス塊はHeやArなどの放電開始電圧が低いガス種が好適である。
【0023】
本発明に従い、大気圧低温プラズマ処理される重合体としては、限定されるものでないが、上記のような大気圧低温プラズマ照射により重合体中のいずれかの反復単位の側鎖反応性基または部分が独立してまたは相互に反応して、転移(または再配列)を介して改変、典型的には、溶媒不溶化等の架橋をもたらすものであればいずれの重合体も使用できる。かような重合体は、本発明の特定の目的上、塗膜形成性である。したがって、かような重合体としては、例えば、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、3−ブタジエン、アリールアルコールアルキルエーテル(CH=CHCHOalkであって、alkはC−Cアルキルである)、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルからなる群より選ばれるモノマー由来の反復単位を少なくとも一部に含んでなる重合体が挙げられる。限定されるものでないが、塗膜形成性等を考慮し、本発明で用いることのできる重合体の具体的なものとしては、ハロゲン化メチルスチレン、特に好ましくは、4−クロロメチルスチレンに由来する反復単位を含む共重合体であって、塗膜形成性共重合体を製造でき、大気圧低温プラズマの照射により本質的に悪影響を受けない別の反復単位を誘導することのできるコモノマーであれば制限することなく使用できるが、具体的には、前記式(I)で示されたコモノマーとの共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0024】
塗膜形成性とは、当該技術分野で常用されている普通の意味を有するように使用されている。例えば、適当な溶媒に溶解し、適当な支持体にはけ塗りまたはナイフ塗装、溶液への浸漬、スピンコーティング等の何れかの塗装方法により、一般に厚さ0.2mm以下のポリマーフィルムを形成できる性質を意味する。
【0025】
以下、発明の説明を簡潔にする目的で、主として、上記共重合体につて説明するが、本発明はこれらの説明に限定されるものでない。
【0026】
式(I)における各基または部分を定義するのに用いた各用語については、以下の説明を参照すれば理解が容易になるであろう。
【0027】
式(I)におけるXまたはA−Bの定義において、方向性が問題になるときは、記載されている方向性で式(I)における他の部分に結合していると理解される。例えば、Xが−C(O)O−の場合、Xのカルボニル基が式(I)のビニル基に結合しており、−O−がAに結合していることを意味する。
【0028】
−Cアルキルは、それが基であるか他の基の部分であるときも、メチル、エチル、プロピルおよびブチルを意味し、好ましくはメチルおよびエチルある。直鎖もしくは分
岐鎖C−Cアルキレンとしては、限定されるものでないが、メチレン、エチレン、1もしくは2−メチルエチレン(またはプロピレン)、トリメチレン、2−エチルトリメチレン、テトラメチレンおよびヘキサメチレン等を挙げることができる。フッ素原子1個以上でフッ素化されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖C−C20アルキルは、限定されるものでないが、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、ドデシル、オクタデシル、等であり、このようなアルキル基は、それらの水素原子1個もしくは2個以上がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0029】
−Cシクロアルキルは、シクロペンタン、シクロブタン、シクロヘキサン、等を意味する。
【0030】
本発明で好ましく用いることのできるコモノマーは、式(I)の定義において、(a)および(b)で定義されるものである。
【0031】
また、具体的なコモノマーとしては、限定されるものでないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキルヒドロキシル基を有する重合性モノマーを挙げることができ、一般に、これらが好ましく用いられ、中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0032】
また、スチレン、メチルスチレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質類似構造を有するリン酸基含有メタクリレートなども本発明で用いることのコモノマーとして挙げることができる。その中で、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが適度な疎水性を有することや、重合しやすいことから好ましく用いられる。さらに、生体に対する安全性が高い点でメチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0033】
アミド基を有するコモノマーの具体例としては、メタクリルアミドもしくはアクリルアミドを有する任意のビニルモノマーであってよい。N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げら
れる。
【0034】
ポリアルキレンオキシド鎖を有する重合性モノマーとしては、例えば、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールビニルエーテル、エトキシジエチレングリコールビニルエーテル、メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル、エトキシトリエチレングリコールビニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。その中で、ポリエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0035】
本発明で使用できる、その他の親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、ビニルアルコール、メタクリル酸、アクリル酸、N−ビニルカプロラクタムなどやジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミンなどのアミノ基含有モノマー等を挙げることができる。
【0036】
コモノマーの中では、生体適合性向上の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0037】
4−クロロメチルスチレンとコモノマーの使用割合は、モル比で、5:95〜95:〜5、好ましくは、20:80〜80:〜20、より好ましくは、30:70〜70:〜30であることができる。
【0038】
本発明に従う、架橋組成物は、典型的には、支持体表面上に固定された塗膜(coating film)の形態にあるかまたは塗膜として存在する。このような支持体は、織布、不織布、金属、セラミック、プラスチックからなる群より選ばれる材料から作製された医療用材料であることができる。支持体の材料が、いずれであっても前記架橋組成物はそれらの表面に強固に固定できるが、例えば、材料がポリプロピレン等のプラスチックである場合には、構造もしくは機序は不明であるものの、上記大気圧低温プラズマ処理によりそれらの表面と架橋組成物間に何らかの結合強化手段がもたらされ、支持体表面へ極めて安定に固定された架橋組成物塗膜を提供できる。
【0039】
支持体は、生きた生体組織と直接的に接触するか、または摘出もしくは分離された生体組織、体液等と直接的に接触する医用材料または医療用デバイスそれ自他またはそれらの部分であることができ、限定されるものでないが、かような医用材料としては、注射器、血液バッグ、輸液セット、人工器官、カテーテル、骨接合材、内視鏡、ステント、透析用中空糸、包埋用薬物放出デバイス、縫合糸、検査用培養皿、止血材等を挙げることができる。
【0040】
本発明で使用する大気圧マイクロプラズマジェット装置は、プラズマジェットを多様な形態で発生させることができるので、内径の極めて小さいチューブ内表面の処理も容易に行うことができる。外部から電場を印加することでプラズマを生成する静電結合方式によるプラズマ生成法であるために、チューブ近傍で可動電極を配置しておくことで、つまり
電極の近傍でチューブを送り出すことにより、チューブ内面のプラズマ処理を連続的に行うことも可能である。
【0041】
本発明によれば、上記のとおり、表面処理の施された支持体の製造方法も提供される。この提供にあたり、前記塗膜形成性共重合体を塗布する工程は、都合よくは、共重合体を適当は有機溶媒、または水と水混和性有機溶媒の混合物に溶解ないし懸濁せしめ、これらを溶液への浸漬法またはスピンコーティング法を用いて所望の支持体表面に塗布する。こうして形成する塗膜は、溶媒の共存下または溶媒を蒸散せしめた後、大気圧低温プラズマを所定領域に照射することにより塗膜(coating film)の少なくとも一部を架橋(または不溶化)せしめることができる。照射時間は、使用する共重合体の種類、またはプラズマ発生出力の強度、さらには目的とする架橋もしくは変性の程度等により最適値が変動するので限定できないが、40L/分〜100L/分のHeガス流の電極に低周波高電圧(10KHz、60V)を印加する条件下で大気圧低温プラズマを照射する場合には、5分間から60分間程度であることができる。密閉式構造の反応装置を構築することで、プラズマ生成に必要なガス流を低減することが可能である。コーティングする際の有機溶媒としては、限定されるものではないが、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフランを用いることができる。
【0042】
また、前記架橋組成物の改質方法は、架橋された共重合体の残存クロロベンジル(またはクロロメチルフェニル)基中のクロロメチル基を介して共有結合しうるアミノ基含有有機化合物を該組成物と接触させることにより実施される。接触は、限定されるものでないが、アミノ基含有有機化合物が溶解した有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド中に該組成物を適当な時間浸漬することにより行うことができる。このようなアミノ基含有有機化合物としては、該化合物を前記クロロメチル基と塩化水素脱離反応を伴って共有結合させるのに悪影響を及ぼさないものであれば目的の応じて多種多様な化合物が使用できる。限定されるものでないが、アンモニア、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミンを挙げることができ、これらのうち好ましいものとしては、アンモニア、トリエチレンテトラミンを挙げることができる。このようなアミノ基含有有機化合物で該架橋組成物を改質すれば、生体適合性を有しながら特定の生体分子の固定化や細胞接着性が向上され、精密に機能制御された医用材料表面にとって都合のよい組成物を提供できるであろう。
【0043】
以下、具体例を参照しながるさら本発明を具体的に説明するが、本発明をこれらの態様に限定することを意図するものではない。
【0044】
(1)使用装置または機器、それらの使用条件
1−1.低周波誘電体バリア放電プラズマジェット(LFプラズマジェット)
プラズマジェット生成装置の略図を図1に示す。ガラス管を使用してHeガスを流した。高電圧電極として、電導性接着テープを備えたCuフィルムをガラス管の外側に設置した。本発明で使用されるプラズマは、40L/分〜100L/分のHeガス流近傍に配置した電極に低周波高電圧(10KHz、10kV)を印加することにより発生させた。
1−2.サイズ排除クロマトグラフィー
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定は、TSKゲルカラム(Super HZ4000およびSuper HZ3000)と内部屈折率(RI)と紫外線(UV)検出器を備えたTOSOHHLC−8120を用いて実施した。溶離液として流速0.35mL/分の5%(v/v)トリエチルアミン含有テトラヒドロフラン(THF)を40℃で用いた。
1−3.H NMR
H NMRスペクトルは270MHzのJEOLEX270スペクロメーターによりCDClを用いて得た。
1−4.ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC;Seiko Instruments Inc.EXSTRAR6000 DSC/TG/DTA)により測定した。
1−5.接触角
調製した表面の水の接触角は接触角分析器(CA−X、KyowaInterface
ScienceCo.、Ltd.、Asaka、Japan)を用いて以下のように測定した。液滴をゆっくりと表面上に置き、設置後θ/2法により10秒接触角を測定した。表面の正味表面電荷はゼータ(ζ)電位分析器(He−Neレーザ、Zetasizer Nano ZZS、Malvem、UK)を25℃で用いて測定した。
【0045】
(2)製造例: 4−メチルスチレン(CMS)とコモノマーとして2−メトキシエチルアクリレーと(MEA)の重合
【0046】
【化1】

【0047】
窒素雰囲気下、三方ストップコックを装備した100mL丸底フラスコのジオキサン(50mL)へ所定割合のCMSとMEA(合計100mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(1mmol)を加えた。この混合物を65℃で反応させた。反応後、反応溶液をイソプロパノール(2L)に注入し、生成物を沈殿させ、沈殿物をジオキサンに再溶解、次いで沈殿させる精製工程を3回繰返した。沈殿は、5000rpm、30分間の遠心を使用した。得られたポリマーをベンゼン凍結乾燥して白色粉末を得た。精製後ベンゼン凍結乾燥を行いゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、および溶媒にCDClを用いてHNMR測定を行った。重合条件と収率を下記表1にまとめる。
【0048】
【表1】

【0049】
<その他の結果>
上記のCMSとMEAの重合反応はスムーズに進行し、ゲルの生成は認められなかった。
【0050】
ポリマー中CMS45%の重量画分を示すランダム共重合体(PCM(45))のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の測定結果を図2に示す。ランダム共重合体であることはHNMR測定により確認された。上記で得られた共重合体の重量平均分子量と分布は、それぞれ1.8−3.0×10と1.5−2.1であった。
【0051】
共重合体中のCMS含量の増加に比例して、Tgが上昇した(図3参照)。
【0052】
以上の結果は、上記反応スキームに示されるPCMランダム共重合体が得られたことを示す。
【0053】
(3)プラズマ反応活性を有するポリマーの基板(または支持体)へのコーティング
上記で製造したポリマー(製造番号5)のトルエン溶液(5wt%)を調製した。2cm×3cmのポリプロピレン(PP)基板に200μL滴下し、500rpm、5秒間スピンコートし、2000rpmで25秒間スピンコートした。常温常圧で一晩乾燥させた。これらの基板を、接触角測定およびゼータ電位測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線光電子分光分析装置(XPS)などにより評価した。
【0054】
(4)ポリマーコーティングした基板のプラズマ表面処理。
様々な条件下(照射条件:Heガス流量40L/分、電圧10kV、周波数:10kHz、照射距離:12.5mm、照射時間:5分、15分、30分、60分、照射温度:室温)でプラズマ照射を行った。照射後は、接触角測定およびゼータ電位測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線光電子分光分析装置(XPS)などにより評価した。
【0055】
<結果>
PMCをコーティングした後、プラズマ処理を施し、その前後での接触角を測定した。図4に示されるようにプラズマ照射前のPMCコーティング表面ではトルエン洗浄によって接触角がコーティング前に戻り、洗い流されているものの、プラズマ後はトルエン洗浄によっても接触角が変わること無く安定に固定化されたことが分かる。また、PMC中のCMS重量分率を変化させて接触角を測定すると、図5に示されるようにCMS含量の小さいところではプラズマ照射前後での接触角に変化はなく、殆ど反応していないのに対し、CMS含有量をますとプラズマ処理表面は未処理に比べて接触角が低下し、反応が起こっていることが確認される。
【0056】
この様に、大気圧低温プラズマ照射処理によると、PMEA部は反応せず、CMS部が選択的に反応していることが明らかである。
【0057】
(5)プラズマ処理表面への官能基の導入
表面機能化のためのアミノ化方法の検討は、コーティング基板、プラズマ照射基板を水:ジメチルスルホキシド(DMSO)=1:1の混合溶媒20mLの10mMトリエチレンテトラミン(N4)溶液に24時間浸漬後、残存クロロベンジル基への塩化水素の脱離を伴うトリエチレンテトラミンの導入を行った。蒸留水で十分に洗浄した後、接触角測定およびゼータ電位測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線光電子分光分析装置(XPS)などにより評価した。
【0058】
<結果>
図6に示されるようにプラズマ処理前の表面をN4と反応させると反応前後でゼータ電位が−10mV程度で変わらなかった。これは基材表面に固定されていないとともに、架橋していないので、クロロベンジル基とN4が反応することにより可溶化して剥がれたものと考えられる。これに対してプラズマ処理表面に対してN4を反応させるとアミノ化によって大きくゼータ電位が上昇し、効率的なN4導入が達成された。この表面は生体適合性で高度に細胞接着性の高い表面として期待される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、支持体表面に簡易的に機能性(生体親和性、生体適合性、親水性制御、官能基導入など)を付与でき、安定な材料表面を提供できる。したがって、本発明は、医用材料または医療器具の表面処理、工業用材料表面処理等に関与する産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】プラズマジェット生成装置の概略図
【図2】ランダム共重合体(PMC(45))のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の測定結果を示す図
【図3】PMC中のCMS含有量の変化に伴うポリマーのガラス転移温度の変化を示すグラフ
【図4】PMCコーティングし、プラズマ照射したポリプロピレン(PP)基板表面のトルエン洗浄前後の接触角測定結果を示すグラク
【図5】PCMポリマーをコーティングしたPP基板表面のプラズマ処理(処理時間5分間)の有無による接触角の変化を示すグラフ
【図6】PMCポリマーをコーティングしたPP基板表面のアミノ化処理前後のゼータ電位の変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0061】
1 ガス供給ガラス管
2 ガス供給用誘導体パイプ管
3 電極
4 電圧印加装置
5 非平衡プラズマジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復単位の側鎖に大気圧低温プラズマ照射により架橋する官能基を有する重合体を形成するモノマー由来の単独重合体または共重合体であって、かつ塗膜形成性重合体に大気圧低温プラズマを照射することにより得ることのできる架橋された重合体を含んでなる架橋重合体組成物。
【請求項2】
請求項1記載の架橋重合体組成物であって、該大気圧低温プラズマ照射により架橋する官能基を有する単独重合体または共重合体を形成するモノマーが、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、3−ブタジエン、アリールアルコールアルキルエーテル(CH=CHCHOalkであって、alkはC−Cアルキルである)、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルまたはアクリロニトリルである、上記組成物。
【請求項3】
(1)ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレンと、
(2)式
CH=C(R)−X−A−B (I)
式中
(a)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレンを表し、そして
Bはヒドロキシル、C−Cアルキルオキシ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルオキシカルボニル、ホスホリルコリンを表すか、
(b)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bはフッ素原子1個以上でフッ素化されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖のC−C20アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレン−C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレンフェニルまたはフェニルを表すか、
(c)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bは式−(CHCHO)、−(CHCH(CH)O)または−(CHCHCHCHO)を表し、ここでR、RおよびRは独立してC−Cアルキルを表し、そしてp、qおよびrは独立して2−200の整数を表すか、
(d)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)N(R)−を表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−CアルキレンまたはC−Cシクロアルキルを表し、そして
Bは水素原子またはアミノ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、カルボキシを表すか、
(e)Rは式−CHC(O)Rを表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、
A−Bは水素原子またはC−Cアルキルを表すか、
(f)Rは水素原子を表し、
Xは−O−C(O)−を表し、そして
A−BはC−Cアルキルを表すか、
(g)Rは水素原子を表し、または
X−A−Bは、水素原子、メチル、C−Cアルキルにより置換されていてもよいフェニル、2−ピロリドン−1イルを表す、
で示される1種以上のエチレン性不飽和重合性コモノマーの
共重合により製造された塗膜形成性共重合体に大気圧低温プラズマを照射することにより得ることのできる架橋された共重合体を含んでなる架橋重合体組成物。
【請求項4】
請求項3記載の架橋重合体組成物であって、該ハロゲン化メチルスチレンが4−クロロメチルスチレンである、上記組成物。
【請求項5】
請求項3記載の架橋重合体組成物であって、該エチレン性不飽和共重合性コモノマーが、式(I)におけるRが水素原子またはメチルを表し、Xが−C(O)O−を表し、そして
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレンを表し、そして
BはヒドロキシルまたはC−Cアルキルオキシを表すか、あるいは
A−Bがフッ素原子1個以上でフッ素化されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖のC−C20アルキルを表す、上記組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の架橋重合体組成物が支持体表面上に固定された塗膜。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の架橋重合体組成物が支持体表面上に固定された塗膜。
【請求項8】
支持体が、織布、不織布、金属、セラミック、プラスチックからなる群より選ばれる材料から作製された医用材料である、請求項6または7記載の塗膜。
【請求項9】
医用材料が、人工器官、カテーテル、注射器、血液バッグ、検査用培養皿、縫合糸、止血剤および体内固定器具からなる群より選ばれる、請求項8記載の塗膜。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の架橋重合体組成物に由来する塗膜を表面の少なくとも1部に有する医用材料。
【請求項11】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の架橋重合体組成物に由来する塗膜を表面の少なくとも1部に有する医用材料。
【請求項12】
支持体の表面に対して、反復単位の側鎖に大気圧低温プラズマ照射により架橋する官能基を有する単独重合体または共重合体を形成するモノマー由来の重合体であって、かつ塗膜形成性重合体を塗布する工程、および
こうして形成する塗膜へ大気圧低温プラズマを照射することにより塗膜の重合体成分の少なくとも一部を架橋せしめる工程
を含んでなる表面処理の施された支持体の製造方法。
【請求項13】
請求項10記載の製造方法において、該大気圧低温プラズマ照射により架橋する官能基を有する単独重合体または共重合体を形成するモノマーが、ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、3−ブタジエン、アリールアルコールアルキルエーテル(CH=CHCHOalkであって、alkはC−Cアルキルである)、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルまたはアクリロニトリルである、上記製造方法。
【請求項14】
(1)ハロゲンが塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素からなる群より選ばれるハロゲン化メチルスチレンンと、
(2)式
CH=C(R)−X−A−B (I)
式中
(a)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−Cアルキレンを表し、そして
Bはヒドロキシル、C−Cアルキルオキシ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、C−Cアルキルオキシカルボニル、ホスホリルコリンを表すか、
(b)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bはフッ素原子1個以上でフッ素化されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖のC−C20アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレン−C−Cシクロアルキル、C−Cアルキレンフェニルまたはフェニルを表すか、
(c)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、そして
A−Bは式−(CHCHO)、−(CHCH(CH)O)または−(CHCHCHCHO)を表し、ここでR、RおよびRは独立してC−Cアルキルを表し、そしてp、qおよびrは独立して2−200の整数を表すか、
(d)Rは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)N(R)−を表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Aは直鎖もしくは分岐鎖のC−CアルキレンまたはC−Cシクロアルキルを表し、そして
Bは水素原子またはアミノ、モノ−C−Cアルキルアミノ、ジ−C−Cアルキルアミノ、カルボキシを表すか、
(e)Rは式−CHC(O)Rを表し、ここでRは水素原子またはC−Cアルキルを表し、
Xは−C(O)O−を表し、
A−Bは水素原子またはC−Cアルキルを表すか、
(f)Rは水素原子を表し、
Xは−O−C(O)−を表し、そして
A−BはC−Cアルキルを表すか、
(g)Rは水素原子を表し、または
X−A−Bは、水素原子、メチル、C−Cアルキルにより置換されていてもよいフェニル、2−ピロリドン−1イルを表す、
で示される1種以上のエチレン性不飽和重合性コモノマーの
共重合により製造された塗膜形成性共重合体を塗布する工程、および
こうして形成する塗膜へ大気圧低温プラズマを照射することにより塗膜の重合体成分の少なくとも一部を架橋せしめる工程
を含んでなる表面処理の施された支持体の製造方法。
【請求項15】
支持体が医用材料である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項3〜5記載の架橋重合体組成物または請求項7〜8のいずれかに記載の塗膜を形成する架橋重合体組成物を、アミノ基含有有機化合物と溶媒中で接触させることにより、該組成物中の架橋された共重合体に残存するハロゲン化メチル基とアミノ基含有化合物を
反応させ、こうしてアミノ化合物を該組成物中に導入することを含んでなる該架橋重合体組成物の改質方法。
【請求項17】
アミノ基含有化合物が有機ジアミン化合物である、請求項16記載の改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−70615(P2010−70615A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238133(P2008−238133)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月27日 社団法人応用物理学会発行の「第55回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月28日 社団法人応用物理学会主催の「第55回応用物理学関係連合講演会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月24日 The Conference of Photopolymer Science and Technology発行の「Journal of Photopolymer Science and Technology Volume 21,Number 2(2008)」発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月26日 The Conference of Photopolymer Science and Technology、フォトポリマー懇話会、千葉大学主催の「第25回フォトポリマーコンファレンス」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月13日 インターネットアドレス「http://www.jstage.jst.go.jp/browse/photopolymer/−char/ja/」に発表
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】