説明

支持具及び支持具つき切断具

【課題】一対の鋏片からなる切断具を長期間に亘って使用した場合であっても、当該切断具による切断作業の効率低下を抑制する。
【解決手段】一対の鋏片1a、1bが回動中心軸4を中心として開閉動自在に支持された切断具において、前記一対の鋏片1a、1bの先端にはそれぞれ刃部3a、3bが形成されるとともに、前記一対の鋏片1a、1bの基端にはそれぞれ柄部2a、2bが形成され、第1の柄部2aには、第2の柄部2bに当接して、該第2の柄部2bを前記第1の柄部2aから離間させる方向に押圧するバネ5が取着され、前記バネ5には、前記第1の柄部2aに当接する支持具6が取着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の鋏片からなる切断具に介在させる支持具に関するものである。また、当該支持具を介在させた切断具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対の鋏片からなる切断具として、鋏、ニッパー等がある。例えば、従来のニッパー式爪切りでは、特許文献1又は特許文献2に開示されるような構成のものが提案されている。特許文献1に記載されるニッパー式爪切りは、図6に示すように、一対の鋏片11が回動中心軸14を中心として回動可能に積層されている。一対の鋏片11の先端側にはそれぞれ刃部13が形成されているとともに、一対の鋏片11の基端側にはそれぞれ柄部12が形成されている。そして、一方の柄部12にはバネ15が取着されて、他方の柄部12との間で弾性変形可能に支持されている。バネ15は、その一端が一方の柄部12の長手方向中央部分に取着されるとともに、その他端が他方の柄部12に当接している。
【0003】
このようなニッパー式爪切りでは、未使用状態において、バネ15の弾性力により、一対の柄部12及び一対の刃部13が開いた開状態に保持されている。これに対して、使用状態では、使用者が一対の柄部12を握って両柄部同士を近づけるように回動中心軸14を中心として回動させると、一対の柄部12はバネ15の弾性力に抗して閉じられ、それとともに一対の刃部13も閉じられて閉状態となり、所望の物体を切断することが可能となる。そして、使用者が一対の柄部12を握る力を解除することにより、一対の柄部12はバネ15の弾性力により離間して、それとともに一対の刃部13も開いて開状態に移行することになる。
【0004】
また、引用文献2に記載されるニッパー式爪切りも同様に、一対の柄部のうちの一方には板ばねがピンによって取着され、板ばねの弾性力を利用して開状態と閉状態とを採り得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−288134号公報
【特許文献2】特開2002−340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来のニッパー式爪切りでは、長期間に亘る使用によってバネ15の弾性力が低下してしまうという事態が生じていた。例えば、引用文献1に記載のニッパー式爪切りでは、長期間に亘って一対の柄部12を介したバネ15への押圧が繰り返されることによってバネ15に弾性力を付与する曲面16に変形が生じて、結果として、バネ15の弾性力が低下することになる。そして、弾性力が低下したバネ15では、一対の鋏片11を離間させる力が弱まるため、使用者が鋏片11の閉状態から開状態への移行をサポートしなければならなくなり、その分、切断具の操作性が劣り、切断作業がしにくくなるといった問題が生じていた。また、引用文献2に記載のニッパー式爪切りでも同様に、長期間に亘って板バネの弾性力に抗して板バネの変形を繰り返すことにより、板バネの弾性力が低下してしまって、切断作業の効率が低下するという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものである。つまり、一対の鋏片からなる切断具を長期間に亘って使用した場合であっても、当該切断具による切断作業の効率低下を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、一対の鋏片が回動中心軸を中心として開閉動自在に支持された切断具において、前記一対の鋏片の先端にはそれぞれ刃部が形成されるとともに、前記一対の鋏片の基端にはそれぞれ柄部が形成され、第1の柄部には、第2の柄部に当接して、該第2の柄部を前記第1の柄部から離間させる方向に押圧するバネが取着され、前記バネには、前記第1の柄部に当接する支持具が取着されていることを要旨としている。
【0009】
一対の柄部を握って両柄部同士を近づけるようにして回動させたとき、第1の柄部に取着されたバネは、第2の柄部に当接した状態でその弾性力に抗して第1の柄部側に押圧される。これにより、開状態にあった切断具は閉状態へと移行するとともに、押圧によって変形されたバネの弾性力によって、切断具は再び開状態へと移行する。つまり、切断具の開閉が繰り返されることにより、切断具に取着されたバネは、押圧されていない非押圧状態から、押圧された押圧状態に移行することで弾性力が付与されることになる。支持具が取着されていない従来の切断具において、長期間に亘って非押圧状態と押圧状態との間でその形状変化が繰り返されると、バネは、非押圧状態における形状から押圧状態における形状に近づくべく変形していくことになる。これにより、非押圧状態における形状と押圧状態における形状との変形幅が小さくなって、押圧状態に移行したときに付与されるバネの弾性力が低下し、バネのへたりの原因となっていた。
【0010】
しかし、上記構成によれば、当該バネと第1の柄部との間に支持具が介在していることにより、バネは支持具によって支えられることになる。そして、切断具を閉状態に移行するべく押圧状態にされたバネは、支持具が支点となって変形されることになる。これにより、第1の柄部に取着された位置から、支持具に取着された位置までは、長期間に亘る使用によりバネへの押圧を繰り返したとしても、バネが変形されることなく、その形状が保持される。つまり、支持具は、バネと第1の柄部との間の間隔を保持しつつ、バネが変形するときの支点となることができるため、押圧力が付与されて押圧状態となったバネにおいて、変形されることなくその形状を保持する部分を創出することができる。その結果、切断具を長期間に亘って多数回使用した場合であっても、バネのへたりを抑制することが可能であり、当該切断具による切断作業の効率低下を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の切断具において、前記支持具は、バネに沿って移動可能に取着されて、前記第1の柄部に当接していることを要旨としている。
上記構成によれば、第1の柄部の形状と、バネの形状と、バネに作用する押圧力との相互関係から、支持具は、バネに沿って第1の柄部上での最適な位置に容易に移動することができる。これにより、押圧力に基づくバネの無理な変形を抑制することができる。
【0012】
また、第1の柄部における支持具との当接面の形状が、個々の切断具によって微妙に相違している場合であっても、支持具が移動可能に取着されているため、押圧力を逃すべく好適な位置に適宜移動することが可能である。個々の切断具において、それぞれ好適な支点に容易に移動することができるため、切断具に対する支持具の汎用性を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の切断具において、前記バネは、該バネの先端が前記第2の柄部に当接している状態で、前記第2の柄部側に突出するように湾曲して延びる曲線部を備え、前記支持具は、前記バネの曲線部に係合していることを要旨としている。
【0014】
従来の切断具のように、バネに支持具が取着されていない場合、第2の柄部側に突出するように湾曲している曲線部は第2の柄部に押圧されて押圧状態となると、湾曲部分の曲率を小さくする方向に変形することになる。曲線部がこのような態様で変形する従来の切断具では、長期間に亘る使用により、曲線部の曲率が徐々に小さくなって、バネのへたりの原因となっていた。
【0015】
しかし、曲線部に支持具が係合している上記構成によれば、バネが第2の柄部によって押圧されたとき、バネが第1の柄部に取着されている位置から支持具に取着された位置までは、バネが変形することなくその形状が保持されるとともに、バネの先端から支持具に取着された位置までは、曲線部の曲率を大きくする方向に変形することになる。これにより、切断具を長期間に亘って多数回使用した場合であっても、バネのへたりを抑制することが可能であり、当該切断具による切断作業の効率低下を抑制することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、刃部と柄部からなる一対の鋏片が回動中心軸を中心として開閉動自在に支持されるとともに、第1の柄部には第2の柄部に当接するバネが取着され、該バネが前記第2の柄部を前記第1の柄部から離間させる方向に押圧するように構成された切断具に用いられる支持具であって、前記バネに取着され、前記第1の柄部に当接する当接部と、前記バネを係合する係合部とを備えることを要旨としている。
【0017】
上記構成によれば、バネと第1の柄部との間に支持具が介在していることにより、バネは支持具によって支えられることになる。そして、切断具を閉状態に移行するべく押圧されたバネは、支持具が支点となって変形されることになる。これにより、第1の柄部に取着された位置から、支持具に取着された位置までは、長期間に亘る使用によりバネへの押圧を繰り返したとしても、バネが変形されることなく、その形状が保持される。つまり、支持具は、バネと第1の柄部との間の間隔を保持しつつ、バネが変形するときの支点となることができるため、押圧力が付与されたバネにおいて、変形されることなくその形状を保持する部分を創出することができる。その結果、切断具を長期間に亘って多数回使用した場合であっても、バネのへたりを抑制することが可能であり、切断作業の効率低下することが可能な切断具を提供することができる。
【0018】
また、支持具は、第1の柄部に当接する当接部と、バネを係合する係合部といった簡素化された形状で構成されている。簡単な構成ながら支持具とバネとの強固な係合状態を実現することが可能である。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の支持具において、前記当接部と前記第1の柄部とは線接触で当接していることを要旨としている。
上記構成によれば、当接部が第1の柄部に対して線接触していることから、支持具と第1の柄部との間に生じる摩擦力を低減することができる。これにより、切断具を開状態から閉状態に移行するとき、支持具が第1の柄部上をバネに沿ってスムーズに移動することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の支持具において、前記当接部は、前記第1の柄部の長手方向と直交する方向に、前記第1の柄部と線接触で当接していることを要旨としている。
【0021】
通常、一対の鋏片を握って押圧する切断具では、握り易さの観点から、柄部が一定形状に湾曲して形成されている場合が多い。上記構成によれば、当接部が第1の柄部の長手方向と直交する方向、すなわち、第1の柄部の幅方向に線接触で当接しているため、湾曲した面に対して当接部の接触状態を良好に保持することができ、第1の柄部上での支持具の移動を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
一対の鋏片からなる切断具を長期間に亘って使用した場合であっても、当該切断具による切断作業の効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ニッパー爪切りの斜視図。
【図2】ニッパー爪切りの正面図。(a)は、ニッパー爪切りの開状態の図。(b)は、ニッパー爪切りの閉状態の図。
【図3】(a)は、支持具つき線バネの斜視図。(b)は、支持具つき線バネの側面図。(c)は、支持具つき線バネの正面図。
【図4】(a)は、支持具の斜視図。(b)は、支持具の側面図。(c)は、支持具の正面図。
【図5】支持具の変更例。
【図6】従来のニッパー式爪切りの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(ニッパー爪切りの構造について)
以下、ニッパー爪切りについて、図1〜図5に基づき説明する。
図1に示すように、本実施形態のニッパー爪切りは、ステンレス製の一対の鋏片、すなわち、第1の鋏片1a及び第2の鋏片1bと、第1の鋏片1aに取着される線バネ5と、線バネ5に取着される支持具6と、第1の鋏片1aと第2の鋏片1bとを回動可能に支持する回動中心軸4とから構成されている。
【0025】
なお、以下の説明において、ニッパー爪切りの先端から基端に至る方向をニッパー爪切りの長手方向と規定する。
第1の鋏片1aの回動中心軸4より先端側には、第1の刃部3aが設けられているのに対して、基端側には、第1の柄部2aが設けられている。同様に第2の鋏片1bの回動中心軸4より先端側には、第2の刃部3bが設けられているのに対して、基端側には、第2の柄部2bが設けられている。
【0026】
図1に示すように、第1の柄部2a及び第2の柄部2bは、長手方向に向けて内側に湾曲した曲線形状に形成されているとともに、第1の柄部2a及び第2の柄部2bの外側面は、幅方向に向けて丸みを帯びた形状に形成されている。また、第1の柄部2a及び第2の柄部2bの内側面、すなわち、それぞれの対向面は、滑らかな平滑面として形成されている。
【0027】
第1の柄部2aの長手方向中央部分であって、第2の柄部2bの対向面21には、線バネ5を取着するための取着部22が形成されている。取着部22は、平滑面として形成された対向面21の幅方向の両端部からそれぞれ第2の柄部2b方向に突出するように2箇所設けられている。取着部22は、それぞれ断面半円形状に形成されている。また、各取着部22の略中央部分には、線バネ5の端部を係止するための孔23が貫通形成されている。
【0028】
線バネ5は、図3に示すように、ステンレス製の線状の一本の部材を、折り曲げ加工することにより形成されている。線バネ5は、その両端部が取着部22の孔23に係止されて孔23を回動中心として回動可能に取着されている。ここで、線バネ5について、取着部22の孔23に係止される端部を基端とするとともに、係止されない自由端を先端とする。
【0029】
線バネ5は、図3(b)、(c)に示すように、側面から見て曲率を持って形成される曲線部51と、曲線部51の先端に形成されて、曲線部51の湾曲方向と相反する方向に屈曲する屈曲部52と、曲線部51の基端に形成されて、曲線部51の湾曲方向に直交する方向に屈曲する一対の係止部53とから構成されている。また、屈曲部52の先端には、線バネ5を構成する線状の部材の径より僅かに大径のステンレス製のコイルバネ54が取着されている。図3(c)に示すように、曲線部51を形成する相対向する部分は、互いに略平行となるように延設されるとともに、係止部53側が僅かに縮径するように形成されている。
【0030】
線バネ5の係止部53は、第1の柄部2aの取着部22の孔23内に、相対向する取着部22の内方から挿入して係止されている。孔23に係止部53が係止された線バネ5は、孔23を回動中心として回動可能に第1の柄部2aに取着されている。
【0031】
線バネ5の曲線部51には、合成樹脂製の支持具6が取着されている。ここで、以下の説明では、図4(a)に示す方向で、支持具6の幅、高さ、長さを規定する。
支持具6は、側面61aが半円形状で、且つ、全体が半円柱状(カマボコ形状)の当接部61と、略直方体状の係合部62とから構成されている。当接部61の高さ方向の下面と係合部62の高さ方向の上面とはともに長方形状であって、当接部61と係合部62とは一体に形成されている。
【0032】
図4(c)に示すように、係合部62の幅方向両側の外側面には、係合部62の長さ方向に亘って凹部62aが凹設されており、係合部62の幅方向の側面は、断面H字形状となっている。凹部62aの高さは、線バネ5を構成する線状の部材の径より僅かに大きくなるように形成されている。そして、両側の凹部62aの間における係合部62の幅は、線バネ5の曲線部51を構成する線状の部材の相対向する内側面の幅より僅かに小さく形成されている。また、支持具6の幅は、第1の柄部2aの対向面21の幅と同一か或いは僅かに小さくなるように形成されているとともに、線バネ5の曲線部51を構成する線状の部材の外側面の幅より僅かに大きくなるように形成されている。図4(c)に示すように、凹部62aの内奥の両側面は、円弧状に形成されている。これらのことから、支持具6は、線バネ5を凹部62a内に保持した状態で、線バネ5の曲線部51に沿って移動可能に、且つ、線バネ5から脱落することなく係合されていることになる。
【0033】
図2に示すように、支持具6は、カマボコ形状に形成された当接部61の半円形状の側面61aが、線バネ5の長手方向に沿うように取着されている。これにより、線バネ5を第1の柄部2aの取着部22の孔23に取着して支持具6が第1の柄部2aに当接しているとき、支持具6と第1の柄部2aとは線接触で当接していることになる。またこのとき、支持具6は、第1の柄部2aの長手方向と直交する方向に、当接部61と第1の柄部2aとが線接触で当接していることになる。
(ニッパー爪切りの使用方法について)
次に、ニッパー爪切りの使用方法について説明する。
【0034】
図2(a)に2点鎖線で示すように、ニッパー爪切りの非使用状態では、線バネ5を回動させて第1の柄部2aの基端側に位置させておく。この非使用状態では、線バネ5の屈曲部52が第2の柄部2bに当接せず、第2の柄部2bに線バネ5からの押圧力が作用することがない。したがって、非使用状態のニッパー爪切りは、第1の柄部2aと第2の柄部2b、及び、第1の刃部3aと第2の刃部3bがそれぞれ閉じた状態の閉状態となっている。当該非使用状態から、図2(a)に実線で示すように、第1の柄部2aの取着部22の孔23を中心として線バネ5を回動させて、第1の柄部2aの先端側に位置させることにより、ニッパー爪切りを使用可能状態とする。当該使用可能状態では、線バネ5の屈曲部52が第2の柄部2bに当接して、第2の柄部2bを押圧している。したがって、使用可能状態でのニッパー爪切りは、第1の柄部2aと第2の柄部2b、及び、第1の刃部3aと第2の刃部3bがそれぞれ離間した状態の開状態となっている。
【0035】
使用可能状態のニッパー爪切りを、使用者が第1の柄部2a及び第2の柄部2bの外側から握りこんで第1の柄部2a及び第2の柄部2bを内側に押圧すると、第1の鋏片1aと第2の鋏片1bが回動中心軸4を中心として回動して閉状態へと移行する。閉状態への移行により、第1の刃部3aと第2の刃部3bとが接近して両刃部3a、3b同士が当接して、爪を切ることができる。
【0036】
このとき、線バネ5は、屈曲部52が第2の柄部2bに押圧されて第1の柄部2a側に移動するとともに、支持具6が線バネ5に沿って移動して、第1の柄部2aの対向面21上の好適な位置に位置決めされる。そして、線バネ5は、位置決めされた支持具6より基端側がその形状を保持するとともに、位置決めされた支持具6より先端側が弾性変形する。さらに、図2(b)に示すように、屈曲部52の先端における第2の柄部2bとの当接箇所が、第2の柄部2bの先端側へ移動する。
【0037】
使用者が第1の柄部2a及び第2の柄部2bに対する押圧を解除すると、線バネ5の弾性力により、線バネ5の屈曲部52の先端が第2の柄部2bを押圧し、ニッパー爪切りは、再び開状態に移行して使用可能状態となる。
(ニッパー爪切りの作用について)
本実施形態のニッパー爪切りの作用について説明する。
【0038】
支持具6は、線バネ5の曲線部51に沿って移動可能に係合している。したがって、ニッパー爪切りを閉状態にしたとき、支持具6は、変形する線バネ5からの押圧力を逃がすべく、線バネ5の曲線部51に沿って、且つ、第1の柄部2aの対向面21上を長手方向に摺動する。その結果、図2(b)に示すように、所定の当接位置24に落ち着くように作用する。
【0039】
また、支持具6の当接部61は、ニッパー爪切りが開状態にあるときも、閉状態にあるときも、常に対向面21に当接している。したがって、線バネ5は、前記当接位置24において、支持具6に係合されている部分の先端51aから、孔23に取着されている係止部53にかけての部分は、弾性変形することなくその形状が保持される。支持具6は、当該先端51aから係止部53にかけての部分の変形を抑制するように作用する。
【0040】
これに対して、線バネ5のうち、支持具6に係合されている部分の先端51aから、線バネ5の曲線部51と屈曲部52との境界部51bとの間は、ニッパー爪切りの閉状態への移行に伴って弾性変形する。このとき、常に対向面21に当接している支持具6は、先端51aから境界部51bにかけての部分における曲線部51の曲率を大きくするように作用する。
【0041】
また、支持具6の当接部61はカマボコ形状に形成され、対向面21との当接箇所では、当接部61と対向面21は線接触している。これにより、支持具6と対向面21との間の摩擦抵抗を低減するように作用する。
【0042】
使用者が第1の柄部2a及び第2の柄部2bを握って閉状態としたとき、屈曲部52の先端が第1の柄部2a側に移動する。このとき、屈曲部52の先端に取着されたコイルバネ54が第2の柄部2bに沿って回転することで、当該コイルバネ54は、線バネ5と第2の柄部2bの内側面との間の摩擦抵抗を低減するように作用する。
(ニッパー爪切りの効果について)
本実施形態のニッパー爪切りによれば、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
(1)本実施形態では、支持具6が線バネ5の曲線部51に沿って移動可能に取着されているため、ニッパー爪切りが閉状態へ移行するとき、当該移行に伴って変形する線バネ5からの押圧力を逃がすべく、曲線部51の所定の当接位置24に容易に、且つ、迅速に移動することができる。
【0044】
(2)ニッパー爪切りを閉状態に移行して第2の柄部2bが線バネ5を押圧する場合、支持具6が存在しないと、線バネ5と第1の柄部2aとの距離を変化させないように支持することができない。また、線バネ5の屈曲部52の先端は、第2の柄部2bの先端寄りに移動しやすくなるため、線バネ5の曲線部51は、その曲率を小さくするように弾性変形することになる。これにより、支持具6がない場合には、長期間の使用により線バネ5にへたりが生じ、弾性力が低下してしまうことになる。
【0045】
これに対して、本実施形態では、ニッパー爪切りが開状態にあるときも、閉状態にあるときも、常に支持具6が第1の柄部2aの対向面21に当接していることから、支持具6が対向面21に対して線バネ5を下支えすることとなる。これにより、支持具6が線バネ5と第1の柄部2aとの間の距離を保持するように作用するため、支持具6に係合されている部分の先端51aから係止部53にかけての部分は弾性変形自体が生じない。また、支持具6に係合されている部分の先端51aから、線バネ5の曲線部51と屈曲部52との境界部51bとの間は、曲線部51の曲率を大きくするように変形するため、長期間の使用により線バネ5にへたりが生じることが抑制され、線バネ5の弾性力の低下を回避することができる。
【0046】
(3)支持具6は、当接部61と係合部62とで構成され、係合部62には、線バネ5を係合する凹部62aが形成されている。したがって、支持具6の形状を簡素化することができるとともに、凹部62aに線バネ5の線状の部材を脱落することなく容易に係合することができる。簡単な構造ながら、線バネ5への係合を容易に且つ強固に行うことができる。
【0047】
(4)支持具6の当接部61はカマボコ形状に形成されて、当接部61と第1の柄部2aの対向面21との間で線接触することにより摩擦抵抗を低減することができる。したがって、曲線部51に係合された支持具6が所定の当接位置24に円滑に移動することができる。
【0048】
(5)支持具6の当接部61は、第1の柄部2aの長手方向と直交する方向に、第1の柄部2aと線接触している。したがって、第1の柄部2aが曲率をもって形成されていたとしても、対向面21に沿って当接部61を円滑に移動させることができる。
【0049】
(6)支持具6の幅は、第1の柄部2aの対向面21の幅と同一か或いは僅かに小さくなるように形成されている。したがって、支持具6が対向面21の幅内に収まって第1の柄部2aから幅方向外方に露出することがなく、外観形状に優れるとともに、使用者が握ったときの使用感を好適に維持できる。
【0050】
(7)線バネ5と支持具6とは別体で構成されている。したがって、線バネ5に対して異なる形状の支持具6を係合させることで、種々の切断具に適用することが可能となる。また、ステンレス製の線バネ5に対して、合成樹脂製の支持具6の耐久性が劣っていたとしても、支持具6のみを交換することができるため、汎用性が向上する。
【0051】
(8)線バネ5の屈曲部52の先端にコイルバネ54が取着されているため、第2の柄部2bとの間の摩擦抵抗を低減することができ、線バネ5の移動を円滑に行うことができる。したがって、ニッパー爪切りの開閉作業を円滑に行うことができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。また、以下の変更例を適宜組み合わせて構成することも可能である。
・ 本実施形態では、支持具6の当接部61をカマボコ形状に形成したが、その形状はカマボコ形状に限定されない。図5(a)に示すように、おにぎり形状であってもよく、また、図5(b)に示すように、三角柱形状であってもよい。或いは、図5(c)に示すように、三角錐形状であってもよく、図5(d)に示すように、半球状であってもよい。
【0053】
・ 本実施形態では、支持具6の当接部61が、第1の柄部2aの対向面21と線接触するように構成したが、このような接触態様に限定されない。当接部61が例えば直方体状、円柱状等に形成されて対向面21と面接触するように構成してもよい。或いは、図5(a)、(c)、(d)に示すような形状とした場合のように、点接触するように構成してもよい。
【0054】
・ 本実施形態では、支持具6は、第1の柄部2aの長手方向と直交する方向に、当接部61と第1の柄部2aとが線接触するようにしたが、このような場合に限定されない。第1の柄部2aの長手方向と交差するいずれかの方向に線接触していてもよく、或いは、第1の柄部2aの長手方向に沿う方向に線接触していてもよい。
【0055】
・ 本実施形態では、支持具6を合成樹脂製としたが、その材質は特に限定されない。鋏片1a、1bと同じ材質のステンレス製であってもよく、或いは、種々の金属により成形されていてもよい。また、合成樹脂製の部材に金属等をめっき加工することにより成形されていてもよい。
【0056】
・ 本実施形態では、支持具6の外周に凹部62aを形成する構成としたが、図5(e)に示すように、支持具6の内部に凹部62aを形成してもよい。この場合、線バネ5の曲線部51の両外側から係合部62で挟み込むような態様で取着すればよい。或いは、図5(f)に示すように、支持具6の外周に凹部62aを形成する構成に代えて、支持具6に線バネ5を挿入する挿入孔62bを長さ方向に形成してもよい。
【0057】
・ 線バネ5に代えて、板バネを使用してもよい。この場合、支持具6を図5(e)に示すような形状とすれば、板バネの両側から容易に取着することができる。
・ 線バネ5の屈曲部52の先端に取着されるコイルバネ54を省略してもよい。
【0058】
・ 線バネ5の係止部53は曲線部51の湾曲方向に対して外側に向けて直交する方向に屈曲させて形成したが、内側に向けて屈曲させてもよい。この場合、第1の柄部2aの取着部22の孔23に対して、外方から挿入して取着すればよい。
【0059】
・ 線バネ5の屈曲部52を、曲線部51の湾曲方向と相反する方向に屈曲するように形成したが、曲線部51の湾曲方向と同じ方向に屈曲するように形成してもよい。或いは、屈曲部52を省略してもよい。
【0060】
・ 線バネ5には、曲線部51及び屈曲部52を形成したが、これらを形成することなく、直線状にしてもよい。つまり、線バネ5の先端から基端に至るまで直線状に形成してもよい。この場合、直線状の線バネ5を押圧することにより、曲線状に変形させて弾性力を付与することができる。
【0061】
・ 本実施形態では、ニッパー爪切りに支持具6を取着したが、一対の柄部と刃部からなる一対の鋏片が開閉動自在に支持された切断具であれば、適宜適用することができる。例えば、理美容用鋏にバネを取着して支持具6を係合してもよく、電線等を切断するニッパーにバネを取着して支持具6を係合してもよい。
【0062】
・ 本実施形態のニッパー爪切りでは、第1の柄部2aに取着部22が形成されて、線バネ5を取着部22の孔23に係止して取着したが、取着部22が形成されていない各種切断具に線バネ5を取着して支持具6を係合することもできる。この場合、例えば、線バネ5付きのキャップ等を第1の柄部2aの基端から差し込んで、所定位置で線バネ5が固定し得るようにすればよい。
【0063】
・ 本実施形態では、線バネ5に一つの支持具6を係合したが、複数の支持具6を係合するようにしてもよい。その場合、曲線部51の長手方向に複数の支持具6を係合してもよく、或いは、曲線部51における相対する線状の部材にそれぞれ支持具6を係合してもよい。
【0064】
さらに、前記実施形態より把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記係合部の外周面には凹部が形成され、該凹部に前記バネが係合している支持具。
【符号の説明】
【0065】
1a、1b…鋏片、2a、2b…柄部。3a、3b…刃部、4…回動中心軸、5…バネ、6…支持具、51…曲線部、52…屈曲部、61…当接部、62…係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏片が回動中心軸を中心として開閉動自在に支持された切断具において、
前記一対の鋏片の先端にはそれぞれ刃部が形成されるとともに、前記一対の鋏片の基端にはそれぞれ柄部が形成され、
第1の柄部には、第2の柄部に当接して、該第2の柄部を前記第1の柄部から離間させる方向に押圧するバネが取着され、
前記バネには、前記第1の柄部に当接する支持具が取着されている切断具。
【請求項2】
請求項1に記載の切断具であって、
前記支持具は、バネに沿って移動可能に取着されて、前記第1の柄部に当接している切断具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の切断具であって、
前記バネは、該バネの先端が前記第2の柄部に当接している状態で、前記第2の柄部側に突出するように湾曲して延びる曲線部を備え、
前記支持具は、前記バネの曲線部に係合している切断具。
【請求項4】
刃部と柄部からなる一対の鋏片が回動中心軸を中心として開閉動自在に支持されるとともに、第1の柄部には第2の柄部に当接するバネが取着され、該バネが前記第2の柄部を前記第1の柄部から離間させる方向に押圧するように構成された切断具に用いられる支持具であって、
前記バネに取着され、
前記第1の柄部に当接する当接部と、前記バネを係合する係合部とを備える支持具。
【請求項5】
請求項4に記載の支持具であって、
前記当接部と前記第1の柄部とは線接触で当接している支持具。
【請求項6】
請求項5に記載の支持具であって、
前記当接部は、前記第1の柄部の長手方向と直交する方向に、前記第1の柄部と線接触で当接している支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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