説明

支持構造に統合されるキャビンパーツを備える、商用車両の運転室

本発明は、商用車両の運転室であって、ジャケットチューブ(16)内に回転可能に支承されているステアリングスピンドル(12)を備えるステアリングコラム(10)と、少なくとも1つの走行用ペダル(26)が支承されている少なくとも1つのペダルキャリア(20)とが設けられている形式のものに関する。本発明は、少なくともステアリングコラム(10)のジャケットチューブ(16)とペダルキャリア(20)とが、運転室の支持構造(1,24)の部分を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の商用車両の運転室、すなわち、商用車両の運転室であって、ジャケットチューブ内に回転可能に支承されているステアリングスピンドルを備えるステアリングコラムと、少なくとも1つの走行用ペダルが支承されている少なくとも1つのペダルキャリアとが設けられている形式のものに関する。
【0002】
背景技術から公知の運転室では、ステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとが、運転室の支持構造に固定されている別々の構成ユニットをなしている。
【0003】
これに対して本発明の課題は、冒頭で述べた形式の運転室を、軽い重量と高い剛性とを兼ね備えるように改良することである。
【0004】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴部に記載の特徴、すなわち、少なくともステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとが、運転室の支持構造の部分を形成することにより解決される。
【0005】
発明の利点
本発明は、少なくともステアリングコラムのジャケットチューブおよびペダルキャリアが、背景技術のように支持構造に単に固定されているのではなく、運転室の支持構造の部分を形成するという思想に基づく。これらの構成部分が運転室の支持構造に取り込まれることにより、これらの構成部分は有利にはその剛性の向上に寄与する。これにより、例えば材料節減、すなわちフレーム部分、補強リブまたは補強ビード等が僅かであることにより、支持構造の僅かな重量ならびによりフレキシブルな構成が可能である。特に、少なくともステアリングスピンドルおよび走行用ペダルのためのキャリヤ構成部品としての機能と、構造部分としての機能の統一は、コスト節減に寄与する。
【0006】
従属請求項に記載した手段により、独立請求項に記載した本発明の有利な態様および改良が可能である。
【0007】
特に有利には、少なくともステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとが、運転室の支持構造の部分である1つの共通の構成ユニットにまとめられている。1つの構成ユニットへのこの統合は、例えばステアリングコラムのジャケットチューブおよびペダルキャリアの一体的な構成によって、または個々の構成部品または構成群のフランジ結合によって行われることができる。
【0008】
別の有利な態様では、支持構造と、ステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとからなる構成ユニットとが、右ハンドルの商用車両も左ハンドルの商用車両も実現可能であるように構成されていることができる。このことは、バリエーション数を減じ、コスト節減に寄与する。
【0009】
運転室の剛性をさらに高めるために、ワンピースまたはマルチピースのインストルメントパネルが、やはり支持構造の部分であることができる。これにより、既に上で述べた利点が生じる。この手段の別の有利な態様では、インストルメントパネルが、少なくとも部分的に運転室の変形域の構成部分であることができる。これにより、やはり重量を減じる二重機能が果たされる。特に、これにより、運転室の変形挙動に影響を及ぼすために、別の構造が存在している。
【0010】
特に有利には、少なくとも以下の構成部品または構成群が、支持構造の少なくとも一部、有利には運転室のフロント壁、ステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとからなる構成ユニットならびに場合によってはインストルメントパネルとともに、1つの別個の前製作可能なモジュールにまとめられている:
a)単数または複数の車両機能のための少なくとも1つの電子式の制御装置、
b)フロント壁に固定される少なくとも1つのラジエータグリル、
c)ステアリングホイール、
d)少なくとも1つの加速度センサを含めた少なくとも1つのエアバッグシステム、
e)アダプティブクルーズコントロール(ACC)の少なくとも1つのレーダセンサ、
f)フロント壁に保持される少なくとも1つの前照灯および/または少なくとも1つの信号灯、
g)フロント壁に支承されるエンジンフード、
h)走行用ペダル、例えばブレーキペダル、アクセルペダルまたはクラッチペダル、
i)ステアリングスピンドルおよび/または走行用ペダルの運動をピックアップするための少なくとも1つのセンサ。
【0011】
この手段により、運転室の製作が簡単化される。それというのも、別個のモジュールが、既に商用車両に取り付けられた運転室の場合に比べて簡単な、上記構成部品および構成群の取り付けを可能にするからである。このことは、やはり製造コストの減少に寄与する。
【0012】
ペダル運動もしくはステアリングスピンドル運動は、一般に電子式の回転角センサまたはストロークセンサにより検出され、センシングされた信号は、電子式の制御装置により調整構造の枠内で相応のアクチュエータのための作動信号に変換されるので、そのような制御装置の、モジュール内への統合は、より短い、手間をかけずに敷設でき、障害に対して強い配線の利点を提供する。さらに、商用車両の運転室は一般に、フレームに対して傾倒可能に構成されているので、運転室の外に配置された制御装置への接続ケーブル、例えばCANデータバスの形式の接続ケーブルは、特定の機械的な負荷に曝される。
【0013】
特に、車両機能に割り当てられた調整構造のエレメント、例えばセンサ装置、制御装置、配線、および場合によってはアクチュエータは、モジュール内に統合されることができる。それというのも、これにより、商用車両へのモジュールの組み立て前の構築および試験が可能であり、ひいては欠陥に関する安全性が向上されるからである。
【0014】
その際、モジュール内に、任意の車両機能を制御する制御装置、特に中央車両制御装置、エレクトロニックブレーキシステム(EBS)のブレーキ制御装置、エレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の制御装置またはエアバッグ制御装置を統合することができる。
【0015】
より詳しい点は、実施の形態の以下の説明に譲る。
【0016】
図面
以下に、本発明の一実施の形態を図面に示し、詳細に説明する。図中、
図1は、本発明を有利な実施の形態により実現する、商用車両の運転室のフロント壁を著しく概略化した背面図であり、
図2は、ステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとからなる構成ユニットの形態の、図1の一部抜粋図である。
【0017】
実施の形態の説明
図1には、商用車両の運転室のフロント壁1の背面が概略的に示されている。すなわち、視線方向は、運転室の内部からフロント壁1に向いている。センターの鉛直軸線4に関して実質的に対称的な半部6,8が見て取れる。この場合、標準構成のために、ステアリングホイール14のためのステアリングスピンドル12を支承するジャケットチューブ16を備えるステアリングコラム10と、走行用ペダル26、例えばアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルを備える、ペダルキャリア20に固定されるペダルモジュール18と、ペダル運動をピックアップするセンサ装置とが、左側の半部6内に配置されているが、図示上の理由から図1ではなく、図2に示されている。
【0018】
この場合、走行用ペダル26のための支承部はペダルモジュール18に形成されている。その結果、ペダルキャリア20はペダルモジュール18の支承板または受容部であるにすぎない。しかし、択一的には、走行ペダル26は直接ペダルキャリア20に受容されていてもよい。この場合、ペダルキャリア20は、ペダル支承部のほかにストロークセンサまたは角度センサも受容しなければならない。
【0019】
その際、少なくともステアリングコラム10のジャケットチューブ16およびペダルキャリア20は、運転室の、とりわけフロント壁1およびこれに結合されたフレーム部分24を有する支持構造の部分を形成する。さらに、運転室の支持構造とは、運転室の所望の強度および(曲げ、ねじり)剛性を達成するのに貢献し、自重または外力に起因する力伝達経路に含まれている、例えばフレーム、ガラス、フロント壁、側壁、背壁、天井、床等のすべての構造部分ならびにすべての補強と解されるべきである。
【0020】
その際、特に有利には、少なくともステアリングコラム10のジャケットチューブ16およびペダルキャリア20は、1つの共通の構成ユニット2にまとめられている。この構成ユニット2は、運転室の支持構造1,24の部分であり、これに素材結合(stoffschluessig:界面接着力、凝集力等による束縛)、摩擦結合(kraftschluessig:摩擦力による束縛)または形状結合(formschluessig:形状による束縛)式に結合されている。このように1つの構成ユニット2にまとめることは、例えば、図2に示すようにステアリングコラム10のジャケットチューブ16およびペダルキャリア20の一体的な構成によるか、または個別構成部品または構成群16,20のフランジ結合によることができる。
【0021】
運転室のフロント壁1およびジャケットチューブ16とペダルキャリア20とからなる構成ユニット2は、フロント壁1または構成ユニット2が変更される必要なく、右ハンドルまたは左ハンドルの商用車両が実現可能であるように構成されていることができる。この目的のために、例えばフロント壁1の左側の半部6および右側の半部8には、構成ユニット2のための同一の受容部、接続部または切欠きが設けられていることができる。受容部、接続部または切欠きには、構成ユニット2が受容され、素材結合式、形状結合式または摩擦結合式に結合され得る。その際、受容部、接続部または切欠きは、その領域に存在する力伝達経路の少なくとも一部が、構成ユニット2を通ってまたは構成ユニット2に沿って案内されるように形成されている。こうして、構成ユニット2は、運転室の支持構造、ここではフロント壁1およびそのフレーム部分24内に統合される。
【0022】
運転室2の剛性をさらに高めるために、フロント壁1に固定されるワンピースまたはマルチピースの、図面には示さないインストルメントパネルが、やはり支持構造1,24の部分であることができる。この手段の変化態様によれば、インストルメントパネルが運転室2の変形域の少なくとも部分的な構成部分であることができる。
【0023】
特に有利には、少なくとも以下の、図面には示さない構成部分または構成群が、少なくとも運転室のフロント壁1、ジャケットチューブ16とペダルキャリア20とからなる構成ユニット2ならびに場合によってはインストルメントパネルとともに、支持構造として1つの別個の前製作可能なモジュール22にまとめられていることができる:
a)単数または複数の車両機能のための少なくとも1つの電子式の制御装置、
b)フロント壁1に固定される少なくとも1つのラジエータグリル、
c)ステアリングホイール14、
d)少なくとも1つの加速度センサを含めた、ステアリングホイール14に保持される少なくとも1つのエアバッグシステム、
e)アダプティブクルーズコントロールもしくはアダプティブスピードコントロールの少なくとも1つのレーダセンサ、
f)フロント壁1に保持される少なくとも1つの前照灯および/または少なくとも1つの信号灯、
g)フロント壁1に支承されるエンジンフード、
h)ブレーキペダル、アクセルペダルまたはクラッチペダル等の走行用ペダル、
i)ステアリングスピンドル12および/または走行用ペダル26の運動をピックアップするための少なくとも1つのセンサ。
【0024】
別の変化態様によれば、運転室の支持構造の別の部分、例えば側壁、床、天井およびフレーム部分が、モジュール22ならびに車両機能に関する構成群に統合されていることができる。
【0025】
特に、モジュール22内に、任意の車両機能を制御する制御装置、特に中央車両制御装置、エレクトロニックブレーキシステム(EBS)のブレーキ制御装置、エレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の制御装置またはエアバッグ制御装置が統合されていることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を有利な実施の形態により実現する、商用車両の運転室のフロント壁を著しく概略化した背面図である。
【図2】ステアリングコラムのジャケットチューブとペダルキャリアとからなる構成ユニットの形態の、図1の一部抜粋図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フロント壁
2 構成ユニット
4 鉛直軸線
6 半部
8 半部
10 ステアリングコラム
12 ステアリングスピンドル
14 ステアリングホイール
16 ジャケットチューブ
18 ペダル装置
20 ペダルキャリア
22 モジュール
24 フレーム部分
26 走行用ペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車両の運転室であって、ジャケットチューブ(16)内に回転可能に支承されているステアリングスピンドル(12)を備えるステアリングコラム(10)と、少なくとも1つの走行用ペダル(26)が支承されている少なくとも1つのペダルキャリア(20)とが設けられている形式のものにおいて、少なくともステアリングコラム(10)のジャケットチューブ(16)とペダルキャリア(20)とが、運転室の支持構造(1,24)の部分を形成することを特徴とする、商用車両の運転室。
【請求項2】
少なくともステアリングコラム(10)のジャケットチューブ(16)とペダルキャリア(20)とが、1つの共通の構成ユニット(2)にまとめられており、該構成ユニット(2)が、運転室の支持構造(1,24)の一部を形成する、請求項1記載の運転室。
【請求項3】
少なくとも支持構造の一部(1,6,8,24)と構成ユニット(2)とが、右ハンドルの商用車両も左ハンドルの商用車両も実現可能であるように構成されている、請求項2記載の運転室。
【請求項4】
ワンピースまたはマルチピースのインストルメントパネルが、やはり運転室(2)の支持構造(1,24)の部分である、請求項1から3までのいずれか1項記載の運転室。
【請求項5】
ワンピースまたはマルチピースのインストルメントパネルが、少なくとも部分的に運転室(2)の変形域の構成部分である、請求項4記載の運転室。
【請求項6】
少なくとも以下の構成部品または構成群が支持構造の少なくとも一部(1,24)とともに1つの別個の前製作可能なモジュール(22)にまとめられている:
a)単数または複数の車両機能のための少なくとも1つの電子式の制御装置、
b)少なくとも1つのラジエータグリル、
c)ステアリングホイール(14)、
d)少なくとも1つの加速度センサを含めた少なくとも1つのエアバッグシステム、
e)アダプティブクルーズコントロール(ACC)の少なくとも1つのレーダセンサ、
f)少なくとも1つの前照灯および/または少なくとも1つの信号灯、
g)エンジンフード、
h)少なくとも1つの走行用ペダル(26)、
i)ステアリングスピンドル(12)および/または走行用ペダル(26)の運動をピックアップするための少なくとも1つのセンサ、
請求項1から5までのいずれか1項記載の運転室。
【請求項7】
電子式の制御装置が、以下の制御装置のグループのうちの少なくとも1つである:
a)中央車両制御装置、
b)エレクトロニックブレーキシステム(EBS)のブレーキ制御装置、
c)エアバッグ制御装置、
d)エレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の制御装置、
e)アダプティブクルーズコントロール(ACC)のための制御装置、
請求項6記載の運転室。
【請求項8】
モジュール(22)内に統合される支持構造の部分が、運転室の少なくとも1つのフロント壁(1,24)を含む、請求項6または7記載の運転室。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−532260(P2009−532260A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503483(P2009−503483)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003038
【国際公開番号】WO2007/115764
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】