説明

支持部材及び支持構造

【課題】開削予定部位を支持可能で、かつ、開削部位における土砂の落下を防止することが可能な支持部材及びこの支持部材を用いた支持構造を提供する。
【解決手段】支持部材6は、台形状の断面を有し、両側面6c、6dはテーパー状で上底側6aの幅よりも下底側6bの幅が広くなっている。この支持部材6は、上底側6aよりも幅の広い下底側6bが開削予定部位10を向くように開削予定部位10の上方及び下方の地山10中にそれぞれ設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並設された2つのシールドトンネル同士を連通するために、それらシールドトンネル間の地山を開削する際に予め開削予定部位の上方及び下方の地山中に設置される支持部材及びこれを用いた支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄の駅構内や地下道の分岐・合流部の構築等に際して、並設された2つのシールドトンネルの間の地山を開削する工法が用いられている。ここで、シールドトンネル間の地山を開削する際にシールドトンネル間に地山を支持するために支持部材を一方のシールドトンネルから他方のシールドトンネルへ掛け渡す方法が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方のシールドトンネル内から他方のシールドトンネルへ直径80mm程度の鋼管を開削予定部位の上方及び下方に円弧状に掛け渡す方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−169474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼管をトンネルの長手方向に所定の間隔で設置するので、開削予定部位を開削する際に鋼管間の土砂が落下する可能性があるという問題点があった。また、この鋼管間の土砂の落下を防止するために、鋼管間に位置する土砂を凍結や地盤改良にて固結させる方法が考えられるが、手間及び時間がかかり作業工程が長くなるので採用できなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、開削予定部位を支持可能で、かつ、開削部位における土砂の落下を防止することが可能な支持部材及びこの支持部材を用いた支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の地山の支持構造は、並設された2つのシールドトンネルの間の地山を開削する際に予め開削予定部位の上方及び下方の地山中に支持部材を掛け渡すように設置して地山を支持する支持構造であって、前記支持部材は、その断面形状にテーパー部を有し、前記開削予定部位側に近いほど前記テーパー部の幅が広くなるように前記2つのシールドトンネル間に設置されることを特徴とする(第1の発明)。
【0007】
本発明による地山の支持構造によれば、断面形状にテーパー部を有する支持部材を開削予定部位の上方及び下方に、シールドトンネルの長手方向に所定の間隔で、開削予定部位に近いほど前記テーパー部の幅が広くなるように設置するので、支持部材間には開削予定部位に近くなるにしたがって狭くなる壁構造が形成される。この状態で開削予定部位を開削して該開削予定部位を空洞にすると、支持部材間に存在する土砂は、地山の荷重によって支持部材間に生じるアーチ作用により土砂が開削予定部位に向かって移動できなくなる。つまり、アーチ作用により、支持部材間を閉塞した場合と同様の効果が得られて地山中の土砂が支持部材間を通過しないので開削予定部位への土砂の侵入を防止できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記支持部材は、断面形状が台形であることを特徴とする。
本発明による地山の支持構造によれば、支持部材間に開削予定部位に近くなるにしたがって狭くなる壁構造を容易に構築することができる。
【0009】
第3の発明の地山の支持部材は、並設された2つのシールドトンネルの間の地山を開削する際に予め開削予定部位の上方及び下方の地山中に掛け渡すように設置される地山の支持部材であって、断面形状がテーパー部を有することを特徴とする。
本発明による地山の支持部材によれば、断面形状がテーパー部を有するので、支持部材を開削予定部位の上方及び下方に、シールドトンネルの長手方向に所定の間隔で、開削予定部位に近いほど前記テーパー部の幅が広くなるように設置すると、支持部材間には開削予定部位に近くなるにしたがって狭くなる壁構造が形成される。この状態で開削予定部位を開削して該開削予定部位を空洞にすると、支持部材間に存在する土砂は、地山の荷重によって支持部材間に生じるアーチ作用により土砂が開削予定部位に向かって移動できなくなる。つまり、アーチ作用により、支持部材間を閉塞した場合と同様の効果が得られて地山中の土砂が支持部材間を通過しないので開削予定部位への土砂の侵入を防止できる。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記支持部材は、円弧状に湾曲した筒体であることを特徴とする。
本発明による地山の支持部材によれば、開削予定部位の上方及び下方に向かってそれぞれ凸となる円弧状に設置されるので、曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられ、地山の荷重を効率的に支持することが可能となる。
【0011】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記支持部材は、断面形状が台形であることを特徴とする。
本発明による地山の支持部材によれば、支持部材間に開削予定部位に近くなるにしたがって狭くなる壁構造を容易に構築することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の支持部材及び支持構造を用いることにより、開削して空洞になった開削予定部位への土砂の侵入を防止しつつ、地山を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される並設されたシールドトンネルを示す図である。図1に示すように、第1シールドトンネル2と、この第1シールドトンネル2よりも小さい円形断面の第2シールドトンネル4とが隣接して並設されている。このように隣接して並設された2つの円形断面のシールドトンネル2、4間の開削予定部位10を開削して両シールドトンネル2、4を連結する。なお、各シールドトンネル2、4の断面形状は図示する真円状のものに限定されるものではなく、楕円状のものであってもよい。
【0014】
各シールドトンネル2、4の内周面には、その全周に亘って同一規格の鋼製セグメント12が環状に組み立てられて覆工体が形成されている。
【0015】
第1シールドトンネル2から第2シールドトンネル4へ円弧状に湾曲している支持部材6が地山8中に、開削予定部位10の上方及び下方に向かってそれぞれ凸となるように掛け渡して設置され、支持部材6の両端はそれぞれ各シールドトンネル2、4のセグメント12に固定されている。支持部材6は、地山8を断面台形状に掘削可能な孔曲がり削孔装置で推進工法により順次地山8中に押し込んで設置される。
【0016】
図2は、図1のA矢視図である。図2に示すように、支持部材6は、台形状の断面を有し、両側面6c、6dはテーパー状で上底側6aの幅よりも下底側6bの幅が広くなっている。
この支持部材6は、上底側6aよりも幅の広い下底側6bが開削予定部位10を向くように開削予定部位10の上方及び下方の地山10中にそれぞれ設置される。
【0017】
また、支持部材6は各シールドトンネル2、4の長手方向に所定の間隔で設置されており、具体的には、セグメント12の主桁20間に設置される。本実施形態において、セグメント12は、例えば、幅1.2mの鋼製であり40cm間隔で主桁20が立設されており、この主桁20間に支持部材6は約40cm間隔で設けられている。
【0018】
図3は、図1のB−B’断面を拡大した図である。図3に示すように、支持部材6の両側面6c、6dはテーパー状なので、支持部材6間は開削予定部位10側に行くにしたがって狭くなる壁構造となっている。この状態で開削予定部位10を開削して該開削予定部位10を空洞にすると、地山8の支持部材6間に存在する土砂は、地山8の荷重によって支持部材6間に生じるアーチ作用(図中の矢印)によりアーチ部D(図中斜線部分)が形成され、このアーチ部Dが支持部材6間を円弧状Cに閉塞する効果を有するので、開削予定部位10の上方及び下方の土砂が空洞の開削予定部位10に向かって移動できなくなる。つまり、アーチ作用により、支持部材6間を閉塞した場合と同様の効果が得られるので、地山8中の土砂が支持部材6間を通過して空洞になった開削予定部位10に上方から落下したり、下方から盤膨れにより侵入することを防止できる。ただし、図中に斑点で示した開削予定部位10の上方の半円部分Fに存在する土砂はアーチ作用が働かないので、土の粘着力が小さい場合は落下する。
【0019】
なお、本実施形態においては、各シールドトンネル2、4の長手方向に支持部材6を設置する間隔は、主桁20の間隔と同じ40cmとしたが、これに限定されるものではなく、設計等により決定された間隔で設置される。
【0020】
また、本実施形態においては、支持部材6が台形状の断面を有する場合について説明したが、この断面形状に限定されるものではなく、断面形状にテーパー部を有する形状であればよく、例えば、三角形状の断面でもよい。
【0021】
なお、地表面の沈下が数cmたりとも許されない道路や線路等の下方を開削する場合には、例えば、図4に示すように、支持部材6の周囲に薬液16を注入して地盤を改良したり、図5に示すように、支持部材6間を土留め板14で閉止して、土砂の落下を防止してもよい。
【0022】
以上説明したように、本発明による支持構造によれば、アーチ作用により、支持部材6間を閉塞した場合と同様の効果が得られるので、地山8中の土砂が支持部材6間を通過して空洞になった開削予定部位10に上方から落下したり、下方から盤膨れにより侵入することを防止できる。したがって、地山8を確実に支持することが可能となる。
【0023】
また、支持部材6は、開削予定部位10の上方及び下方に向かってそれぞれ凸状になるように設置されるので、曲げモーメント及びせん断力の発生が抑えられ、地山8の荷重を効率的に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用される並設されたシールドトンネルを示す図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のB−B’断面を拡大した図である。
【図4】本発明による支持部材の周囲に薬液を注入した状態を示す図である。
【図5】本発明による支持部材間を土留め板で閉止した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
2 第1シールドトンネル
4 第2シールドトンネル
6 支持部材
6a 上底側
6b 下底側
6c、6d 側面
8 地山
10 開削予定部位
12 セグメント
14 土留め板
16 薬液
20 主桁
D アーチ部
F 半円部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された2つのシールドトンネルの間の地山を開削する際に予め開削予定部位の上方及び下方の地山中に支持部材を掛け渡すように設置して地山を支持する支持構造であって、
前記支持部材は、その断面形状にテーパー部を有し、前記開削予定部位側に近いほど前記テーパー部の幅が広くなるように前記2つのシールドトンネル間に設置されることを特徴とする地山の支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、断面形状が台形であることを特徴とする請求項1に記載の地山の支持構造。
【請求項3】
並設された2つのシールドトンネルの間の地山を開削する際に予め開削予定部位の上方及び下方の地山中に掛け渡すように設置される地山の支持部材であって、
断面形状がテーパー部を有することを特徴とする地山の支持部材。
【請求項4】
前記支持部材は、円弧状に湾曲した筒体であることを特徴とする請求項3に記載の支持部材。
【請求項5】
前記支持部材は、断面形状が台形であることを特徴とする請求項3又は4に記載の支持部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−248536(P2008−248536A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89522(P2007−89522)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】