説明

支柱を省略した天井屋根構造

【課題】 各種イベント、年中行事等を行なう際、雨天炎天の気候に心配すること無く、快適にこれら行事を行なうことができる何かが必要とされていた。
【解決手段】 多数の支柱を桁材で連結したものを二組設け、この間に多数の固定ロープを張り、その上方に軽気体を充填できる構造の屋根体を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広範囲の平面上を支柱を用いることなく利用できるようにした天井屋根の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種イベント、年中行事等を行なう際、雨天においては中止、順延になったり、炎天においては組み立てテントを用意したり、ビニールシート等で日陰を作ったりして開催していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、雨天炎天等の気候に心配すること無く、快適に各種行事が行なえる天井屋根を提供しようとするものである。従来においては、このような創案も画餅であり願望でしかなかったが、昨今の繊維製品の著しい技術革新により、軽くて非常に強い繊維が色々な方面に利用されている現状を知り、これらを利用して過去に果たせなかった発明を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
多数の支柱を桁材で連結したものを二組設け、この間に多数のロープを張り、その上方に、ヘリウム等の軽気体を充填する中空布の天井屋根を設けて、その下面を有効に利用できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0005】
例えば、支柱の高さ10メートル。桁材の一組の長さが50メートル。両支柱の間を50メートルとすると、2500平方メートルの空間に、一本の支柱も用いることの無い広範囲の空間が実現可能となる。さらに可能性を追求すれば100メートル四方、あるいは、それ以上の空間を無支柱にすることも可能ではないかと思われる(この場合、支柱を高く強固にする必要がある)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を図面について説明すると、図1は本発明の全体を表わす斜視図である。設置平面の両側に多数の支柱1を設け、これらを桁材2で連結する。支柱1は鋼製パイプ、重量鉄骨等を利用する。支柱1を強固にするため、適所に補強材3が設けてある。両支柱1の上面には屋根体4が設置してある。屋根体4は中空となっており、この中にヘリウム等の軽気体を充填するのであるが、詳細は後述する。
【0007】
図2は、屋根体4を取り除いた状態を示したもので、両支柱1の間に多数の固定ロープ5を設ける。間隔は10メートル位が適当ではないかと思われる。固定ロープ5は、強いナイロン等のロープ、ワイヤーロープ等を利用する。固定ロープ5と、屋根体4の下面接触部分の適当個所を色々な方法(面ファスナーの付いた布材や金具等)で固定する。目的としては、風が強い時等の屋根体4の動揺、浮き上がり等を防止するためである。又、屋根体4の周囲四辺も桁材2に設けた細い鉄棒等、及び両外端の固定ロープ5に固縛、連結する等の処置を施す(従来技術なので詳細を略す)。
【0008】
図3及び図4は、屋根体4の縦横断面図(若干拡大断面図)であるが、多数の山状になっている屋根体4の各中央部の溝部分を高くして、両端に向け漸次低くした構造となっている。これは、雨天時の雨水の流れを良くするもので、屋根体4の景観(見映え)をも考慮したものである。屋根体4は各仕切り布6で多数に仕切られ、各空室7を形成する。空室7には、ヘリウム等の軽気体を充填する。多数に仕切った目的は、何らかの原因で屋根体4の一部が破れて、軽気体が漏れ出た場合に、破れた空室7部分だけの抜気に留めるためである。そして、空室7の中には、チューブ構造材を設け、気密性を高める等の工夫が必要と思われる。
【0009】
図5は、屋根体4の各空室7へ軽気体を充填したり、抜き取ったりする場合の配管と装置の概略を示したものである(図1及び図2にも略式に記載しているが、本項に詳細を記すので説明は省略している)。軽気体を充填する場合、屋根体4の適部に設けたバルブ8及び、軽気体貯蔵タンク9付近のバルブ8aを開ける。同パイプラインには減圧弁10を設けてあるので、各空室7に一定圧が充填された後バルブ8、8aを閉じる。軽気体を抜き取る場合は、各バルブ8及び、バルブ8bを開け、コンプレッサー11を始動し、軽気体貯蔵タンク9に納める。
【実施例】
【0010】
次に本発明の他の実施例を示す。図1の構造においては、台風その他の状況によって屋根体4を格納しようとする場合、周囲の紐や金具の取り外し、及び屋根体4の下面の固定個所を取り外した後、クレーン等を利用して屋根体4を吊り上げ、その後、地上に下ろす方法等が考えられる。この手間、労力は非常に多大なもので、実用的ではないように思われる。
【0011】
この欠点を改善したものが図6に示したもので、屋根体4aを折り畳んで格納できるようにしたものである(図7は格納した状態を示す)。格納する方法は、色々な従来技術を利用する。例えば、長いドラム状の筒に屋根体を巻き取る方法。ローラーと滑車、ロープ等を利用して地上付近へ下ろして格納する方法等が考えられる。
【0012】
本発明も従来の一方法を利用したもので、その詳細を説明すると図8に示すように、屋根体4aの一辺に移動パイプ材12を設け、各移動パイプ材12の両端は、各固定ロープ5aに設けたガイド金具13に固着する。各ガイド金具13の下方に止金具14を設け、展張用ワイヤーロープ15と格納用ワイヤーロープ16の端部を接続する。展張用ワイヤーロープ15は、桁材2a付近に取付けた滑車17を通って格納方向へ伸びている。両ワイヤーロープ15、16は屋根体4aの両外辺を固定している固定リング18の下部に連結した二連リング19を通るようにしている(展張時の両ロープ15、16の垂れ下がり防止のため。又、格納時には両ワイヤーロープ15、16が垂れ下がるが、防止する方法は従来技術を利用すれば簡単に解決できる)。
【0013】
滑車17を取付けた反対側の桁材2a付近に、両ロープl5、16の展張、格納を制御する駆動機20を設ける。駆動機20は各固定ロープ5aごとに設けるようにしているが、多数の滑車等を利用して各ワイヤーロープを一個所に集め、駆動機を地面付近に設けて制御することも可能である。展張、格納時の適宜位置保持のため、警報ブサー、リミットスイッチ等を設置するのが適当と思われる。
【0014】
格納した屋根体4aを展張するには駆動機20を始動し、展張用ワイヤーロープ15を巻き取る。それに応じて格納用ワイヤーロープ16を送出する(すなわち、一本のワイヤーロープを駆動機20で移動させれば良い)。展張しながら屋根体4aの先端部の空室7aより、順次各空室7aに軽気体を充填していけば(一個所で全バルブの操作が可能な配管及び制御状態とする)、作業に無駄が無く、屋根体4aの下面と固定ロープ5aとの摩擦(接触)を減少させることができる。屋根体4aを格納する場合は、先程の諸作業を逆の順番にやっていけば完了する(軽気体を圧縮して軽気体貯蔵タンク9aに納めるので、展張時より少し時間がかかると思われる)。
【0015】
以上が本発明の構造及び実施例であるが、雨天炎天時が強風の場合でも、それに耐えられる位の各部各個所の強度が無ければ実用的ではないと思われる。目安としては風速20メートル前後の強風にも耐えられる位の構造にする必要がある。又、使用する布は耐水、防水加工されたものを利用する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のその他の利用例としては、陸上競技場、野球場、サッカー場等の天井屋根に利用する方法が考えられる。野球場においては既にドーム型の球場が多数建設され利用されている(多額の費用がかかるのが難点である)。これら各競技場の観客席部分に、頑丈な屋根を設け、競技上中央部(フィールド部)に固定ロープを張り、軽気体の充填できる屋根体を展張、格納するような構造とすれば、雨天炎天に拘らず、中で行なわれる競技を快適に観戦することができる。しかも、費用は従来とは比べものにならない位安価に設置できるのではないかと思われる。前記と重複するが、軽くて非常に強い、頑丈な布が開発された現在であるから、このような技術創作も可能になったように思う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明の斜視図である。
【図2】 本発明の屋根体を取り除いた斜視図である。
【図3】 屋根体だけを若干拡大した縦断面図である。
【図4】 屋根体だけを若干拡大した横断面図である。
【図5】 屋根体への軽気体充填抜き取り配管及び装置図である。
【図6】 本発明の他の実施例を示す側面図(屋根体展張時)である。
【図7】 本発明の他の実施例を示す側面図(屋根体格納時)である。
【図8】 他の実施例の屋根体の部分的拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 支柱
2、2a 桁材
3 補強材
4、4a 屋根体
5、5a 固定ロープ
6 仕切り布
7、7a 空室
8、8a、8b バルブ
9、9a 軽気体貯蔵タンク
10 減圧弁
11 コンプレッサー
12 移動パイプ材
13 ガイド金具
14 止金具
15 展張用ワイヤーロープ
16 格納用ワイヤーロープ
17 滑車
18 固定リング
19 二連リング
20 駆動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱(1)と桁材(2)で連結した二組の間に、多数の固定ロープ(5)を設け、その上方に、中央部分を高くした多数の空室(7)を有する屋根体(4)の周囲及び下面を固定し、各空室(7)に軽気体を充填、抜き取り可能な装置を設けた支柱を省略した天井屋根構造。
【請求項2】
屋根体(4a)を展張、格納できる装置を設けた請求項1記載の支柱を省略した天井屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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