改修作業保証装置および改修作業保証方法
【課題】不具合部品の改修により新たに不具合が生じても効率的に検査できる改修作業保証装置を提供する。
【解決手段】改修作業保証装置30は、製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とを対応付けて記憶した関連部品データベース32と、関連部品ごとに製品として保証されるべき保証項目を記憶した保証項目データベース33と、製品の不具合部位に関連する関連部品を関連部品データベース32から抽出する制御部35と、保証項目データベース33に記憶された保証項目に基づいて、制御部35により抽出された関連部品と該関連部品の保証項目とを表示するディスプレイ34と、を有する。
【解決手段】改修作業保証装置30は、製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とを対応付けて記憶した関連部品データベース32と、関連部品ごとに製品として保証されるべき保証項目を記憶した保証項目データベース33と、製品の不具合部位に関連する関連部品を関連部品データベース32から抽出する制御部35と、保証項目データベース33に記憶された保証項目に基づいて、制御部35により抽出された関連部品と該関連部品の保証項目とを表示するディスプレイ34と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の改修時の作業を保証する改修作業保証装置および改修作業保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製品の一例として車両を例示すると、車両は組立ラインにおいて多くの部品が組み付けられる。その後検査工程において、それらの部品が正常に機能するものであるか否か、各部品の組み付けが正常に行なわれているか否かなどが検査される。
【0003】
例えば、部品として車両に搭載されたECU(電子制御ユニット)の機能の是非を検査する場合、ECUは自己診断機能を有しているので、ECUの自己診断結果が故障診断装置に送信され、検査結果が検査箇所と共に表示部に表示される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
検査工程の作業者はこの検査結果を見てECUの機能の是非を判断する。また、各部品の組み付けの是非は、例えば、ボルトが所定数取り付けられているか、部品同士の組み付け隙間は規定値内かなどを見て検査する。
【0005】
これらの検査結果が良好であれば車両はそのまま出荷される。一方、検査結果が不良であれば車両は改修ラインに運び込まれ、所望の改修作業が行なわれて不具合部品や不具合箇所が改修される。
【0006】
改修の際には、不具合部品や不具合箇所を交換または修理するために、様々な部品が取り外され、取り外された部品は交換または修理後に再組立される。改修された車両は、再度、検査工程において正規の車両検査と同様に検査される。
【特許文献1】特開平5−172705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、検査工程では、改修された車両に対して、ボルトの締め付けトルク管理、コネクタの勘合状態の管理など、通常の組み立てラインで保証している項目についての検査は行なわれない場合がある。
【0008】
例えば、改修ラインにおいて、不具合部品を交換するためにその周辺の部品を取り外すことがあるが、再組立をする場合に、それらの部品の組み立ての一切の管理は改修ラインの作業者に任せられている。そのため、部品を取り付けるボルトの締め付けトルクの管理やコネクタの勘合状態の管理を作業者が怠ると、検査工程でそれらの不具合が発見されないことがある。
【0009】
これでは、改修工程および検査工程を経た後でも、不具合が残ってしまう可能性があり、後に、この不具合の原因調査のために余計な工数が必要になってしまうことがある。
【0010】
このような可能性をなくすためには、作業者に保証が任されている全ての保証項目をも、検査工程における検査項目に追加して、検査することが考えられる。
【0011】
しかし、安全性や快適性のために、車両に装備される部品数が増大している今日の状況において、全ての保証項目まで検査項目に含めて検査するのでは、工数が膨大になってしまい、検査効率が著しく低下してしまう。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不具合部品の改修により新たに不具合が生じたとしても効率的に検査できる改修作業保証装置および改修作業保証方法を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の改修作業保証装置は、製品を組み立てる組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位を改修する改修工程および前記不具合部位を改修した場合に行われる再組立作業を保証する再組立作業保証工程が備えられた生産ラインの当該再組立作業保証工程で使用される改修作業保証装置であって、前記製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とが対応付けられたデータを記憶する関連部品記憶部と、前記関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられたデータを記憶する保証項目記憶部と、前記検査工程で不具合部位があると判断された場合に、不具合部位があると判断された製品の当該不具合部位に関連する関連部品を前記関連部品記憶部から抽出し、抽出した前記関連部品の保証項目を前記保証項目記憶部から抽出する制御部と、当該制御部により抽出された前記関連部品と前記関連部品の保証項目とを作業者に報知する報知部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の改修作業保証方法は、製品を組み立てる製品組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位の改修を行う不具合部位改修工程および前記不具合部位が改修された後に前記不具合部位の再組立作業を行う再組立作業工程とが備えられた生産ラインにおいて使用される改修作業保証方法であって、前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合が生じている製品に関するデータを作成する不具合データベース作成段階と、前記検査工程で不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品を、製品ごとに当該製品の関連部品が対応付けられて記憶されている関連部品データベースから抽出する関連部品抽出段階と、前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品の保証項目を、関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられて記憶されている保証項目データベースから抽出する保証項目抽出段階と、前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品と当該関連部品の保証項目を作業者に知らせる段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改修作業保証装置によれば、不具合部位に関連する関連部品と該関連部品の保証項目とが作業者に報知されるようになっているので、改修工程後に、保証項目に従って作業者が不具合部位の関連部品を検査することによって、不具合部位の改修により新たな不具合が生じてしまっていても、効率的に検査することができ、関連部品の不具合を確実に解消できる。
【0016】
本発明の改修作業保証方法によれば、不具合部位に関連する関連部品と該関連部品の保証項目とが作業者に知らされるようになっているので、改修工程後に、保証項目に従って作業者が不具合部位の関連部品を検査することができ、不具合部位の改修により新たな不具合が生じてしまっていても、効率的に検査し、関連部品の不具合を確実に解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下では、製造される製品が車両である場合を例に説明する。しかし、本発明を適用させることができる製品は車両に限定されるものではない。本発明は、生産ラインにおいて組み立てられるあらゆる製品に適用することができる。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態の改修作業保証装置について説明する。
【0018】
最初に、改修作業保証装置が配置される組立ラインについて、簡単に説明する。
【0019】
組立ラインは、組立工程、検査工程、改修工程および改修作業保証工程が、この順に直列に並べられて形成されている。
【0020】
組立工程は、車両を実際に組み立てる工程である。検査工程は、組み立てられた車両を検査する工程である。改修工程は、検査工程において不具合が発見された車両が運搬され、不具合部位の改修、たとえば、不具合のある部品の交換や修理が行なわれる工程である。改修作業保証工程は、改修された車両に不具合がないかを再検査して、改修作業を保証する工程である。改修作業保証工程が完了した車両は、再度検査工程に運搬され、検査される。検査結果が良好であれば、車両は出荷される。
【0021】
本発明に係る改修作業保証装置は、改修作業保証工程に配置されている。
【0022】
図1は改修作業保証装置およびその装置に接続される車両を示す図である。
【0023】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、図1に示すように、ケーブル20を介して、改修作業保証装置30に接続される。改修作業保証装置30は、改修工程において改修された車両10の不具合部位に関連する関連部品を保証する。保証のために、改修作業保証装置30は、ケーブル20を介して、車両10に搭載されている複数のECU(電子制御ユニット)と通信する。
【0024】
ここで、ECUとは、車両10の各部をそれぞれ制御する装置であり、自己診断機能を備えている。自己診断機能とは、各ECUが制御する車両10の各部が正常か否かを、ECU自身が各部と通信を行って判定する機能である。ECUは、検査工程において、自己診断を行う。したがって、検査工程では、ECUの自己診断結果に基づいて、車両10に不具合部位があるか否かが判断されている。不具合部位がある車両10は、改修工程に運搬され、改修されている。
【0025】
改修が終わった後でも、ECUは自己診断結果を保持しており、改修作業保証工程において、ECUから改修作業保証装置30に検査工程時の自己診断結果が送信される。
【0026】
次に、改修作業保証装置30について、詳細に説明する。
【0027】
図2は改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図、図3は不具合部品データベースの記憶内容を示す概念図、図4は関連部品データベースの記憶内容を示す概念図、図5は関連部品の接続関係を示す概念図、図6は保証項目データベースの記憶内容を示す概念図、図7はディスプレイの表示例を示す図である。
【0028】
改修作業保証装置30は、図2に示すように、不具合部品データベース(不具合部位記憶部)31、関連部品データベース(関連部品記憶部)32、保証項目データベース(保証項目記憶部)33、ディスプレイ(報知部)34および制御部35を有する。不具合部品データベース31、関連部品データベース32および保証項目データベース33は、制御部35に接続されている。また、ディスプレイ34も、制御部35に接続されている。
【0029】
不具合部品データベース31は、図3に示すように、ECUの種類(製品の種類)、不具合部品(不具合部位)、部品番号(不具合部位の番号)、不具合モードおよび自己診断結果の対応関係を記憶している。したがって、改修作業保証工程において、ECUからケーブル20を介して送信されてきた自己診断結果に基づいて、どのECUからの信号か、不具合部品の名前と番号は何か、不具合の原因は何かがわかる。
【0030】
関連部品データベース32は、図4に示すように、不具合部品と、該不具合部品に関連する関連部品とを対応付けて記憶している。関連部品とは、不具合部品の交換や修理に伴って、取り外し等の影響を受ける部品である。たとえば、図5に示すように、ハーネスと部品が接続されている場合、部品Aを交換するためには、ハーネスH1とH2を取り外す必要がある。したがって、部品Aの関連部品は、ハーネスH1、H2である。また、部品Bが不具合部品の場合、ハーネスH1、H3が関連部品となる。同様に、部品Cが不具合部品の場合、ハーネスH1、H2、H4が関連部品となる。このように部品とその関連部品とが記憶されているので、関連部品データベース32を参照することによって、不具合部品の改修に関連して取り外し等がされた関連部品がわかる。
【0031】
保証項目データベース33は、図6に示すように、部品番号と、該部品番号の部品に対して保証されるべき保証項目が対応付けて記録されている。たとえば、部品H1については、コネクタの嵌合が完了していることが保証項目である。部品によっては、たとえば、部品H8がネジ部品である場合、所定のトルクまで締結されていることが保証項目となる。このように、部品と、該部品の保証項目が対応付けて記憶されているので、保証項目データベース33を参照すれば、各部品に対して、その保証項目がわかる。
【0032】
ディスプレイ34は、改修作業保証工程において、保証されるべき部品およびその保証項目を表示する。ディスプレイ34は、たとえば、図7に示すように、検査対象部品と、該部品の保証項目を表示し、作業者に知らせる。
【0033】
制御部35は、上記不具合部品データベース31、関連部品データベース32および保証項目データベース33から必要なデータを検索および抽出する。そして、制御部35は、改修作業保証工程において保証されるべき検査対象部品およびその保証項目を、順にディスプレイ34に表示させる。
【0034】
次に、改修作業保証装置30の作用について、詳細に説明する。
【0035】
図8は、改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。改修作業保証装置30の動作は、制御部35によって実行される。
【0036】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、ケーブル20を介して、改修作業保証装置30に接続される。
【0037】
改修作業保証装置30の制御部35は、ケーブル20を介して、車両10の全ECUから自己診断結果を取得する(ステップS1)。制御部35は、故障モード影響解析データベースにより、自己診断結果を照会する(ステップS2)。
【0038】
制御部35は、照会により、故障の自己診断結果が出ているECU、不具合部品、部品番号および故障モードを特定し、前の改修工程において改修された不具合部品の部品番号を抽出する(ステップS3)。制御部35は、関連部品データベース32を参照して、ステップS3において抽出した不具合部品に関連する関連部品を抽出する(ステップS4)。さらに、制御部35は、保証項目データベース33を参照して、ステップS4において抽出した関連部品の保証項目を抽出する(ステップS5)。
【0039】
制御部35は、図7に示すように、関連部品を検査対象部品として、該関連部品の保証項目と共に、ディスプレイ34に表示する(ステップS6)。複数の関連部品がある場合には、その内一つの関連部品について、ディスプレイ34に表示される。
【0040】
制御部35は、検査完了が入力されたか否かを判断する(ステップS7)。たとえば、
図7に示す「OK」ボタンが、作業者により押されたか否かにより検査完了か否かを判断する。
【0041】
検査完了でない場合、すなわち、「OK」ボタンが押されていない場合(ステップS7:NO)、検査完了が入力されるまで、制御部35は待機する。
【0042】
一方、検査完了の場合、すなわち、「OK」ボタンが押された場合(ステップS7:YES)、制御部35は、全検査対象部品について、保証項目の表示が終わったか否かを判断する(ステップS8)。
【0043】
全ての検査対象部品(関連部品)について、保証項目の表示が終わっていない場合(ステップS8:NO)、ステップS6以降の処理が繰り返される。
【0044】
全検査対象部品について、保証項目の表示が終わった場合(ステップS8:YES)、改修作業保証工程が終了される。
【0045】
以上のように、本実施形態の改修作業保証装置30および該改修作業保証装置30により実行される改修作業保証方法によれば、改修工程において改修された不具合部品に関連する関連部品および該関連部品の保証項目をディスプレイ34に表示する。したがって、作業者は、ディスプレイ34の保証項目に従って、関連部品を検査していくだけで、改修時に発生しうる関連部品の不具合を確実に解消できる。
【0046】
特に、不具合部品に関連する関連部品についてのみ保証項目をディスプレイ34に表示し、保証のための検査を促すので、全部品を再検査するよりも格段に工数を低減して作業効率を向上でき、かつ確実に不具合の発生を解消できる。
【0047】
また、改修作業保証装置30および改修作業保証方法によれば、ECUの自己診断結果に基づいて、改修工程において改修された不具合部品を特定している。したがって、既存のECUの機能により、容易に不具合部品を特定できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の改修作業保証装置について説明する。図9は改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図、図10は過去不具合事例データベースの記憶内容を示す概念図である。
【0048】
第2の実施形態の改修作業保証装置130は、制御部35に過去不具合事例データベース(過去不具合事例記憶部)36が接続されている点が第1の実施形態の改修作業保証装置30と異なる。すなわち、改修作業保証装置130は、図9に示すように、不具合部品データベース(不具合部位記憶部)31、関連部品データベース(関連部品記憶部)32、保証項目データベース(保証項目記憶部)33、過去不具合事例データベース(過去不具合事例記憶部)36、ディスプレイ(報知部)34および制御部35を有する。不具合部品データベース31、関連部品データベース32、保証項目データベース33および過去不具合事例データベース36は、制御部35に接続されている。また、ディスプレイ34も、制御部35に接続されている。
【0049】
過去不具合事例データベース36は、図10に示すように、現象、原因、対策、頻度、最新発生日および根本原因対策日の対応関係を記憶している。したがって、過去にどのような不具合現象が生じ、その不具合現象の原因が何か、どのような対策が施され、その不具合現象の発生頻度はどのくらいで、その不具合現象の最新発生日、根本原因の対策が施されているか否かおよび対策を施した日がわかる。図10において、Iは同一現象(同一診断コード)において不具合原因が複数ある場合、IIは診断コードが取得できない不具合である場合、IIIは同一の不具合に対して複数の診断コードが発生する場合を示している。
【0050】
次に、改修作業保証装置130の作用について、詳細に説明する。
【0051】
図11および図12は、改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。図13は、同一の不具合現象が複数ある場合の優先順位の決定方法を示すフローチャートである。改修作業保証装置130の動作は、制御部35によって実行される。
【0052】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、ケーブル20を介して、改修作業保証装置130に接続される。
【0053】
改修作業保証装置130の制御部35は、ケーブル20を介して、車両10の全ECUから自己診断結果(診断コード)を取得する(ステップS101)。制御部35は、故障モード影響解析データベースにより、自己診断結果を照会する(ステップS102)。
【0054】
制御部35は、照会により、故障の自己診断結果が出ているECU、不具合部品、部品番号および故障モードを特定し、前の改修工程において改修された不具合部品の部品番号を抽出する(ステップS103)。
【0055】
そして、自己診断結果により故障部位が特定できたか否かを判断する(ステップS104)。故障部位が特定できた場合(ステップS104:YES)、制御部35は、関連部品データベース32を参照して、ステップS103において抽出した不具合部品に関連する関連部品を抽出する(ステップS105)。
【0056】
一方、故障部位が特定できない場合(ステップS104:NO)、図12のステップS111に移行する。この故障部位が特定できない場合には、1つの診断コード(不具合現象)に対する原因が複数存する場合(図10のI参照)、診断コードが抽出できない場合(図10のII参照)、複数の診断コードが発生する場合(図10のIII参照)がある。
【0057】
ステップS111では、ディスプレイ34に不具合現象(異音、イグニション(IGN)がONしない等)の入力画面を表示する。作業者がその入力画面に基づいて現象を入力すると、過去不具合事例データベース36の不具合現象から該当する項目を検索する(ステップS112)。
【0058】
そして、該当する項目が複数あるか否かを判断する(ステップS113)。該当する項目が複数ある場合、すなわち、同一の不具合現象(同一の診断コード)が複数ある場合(ステップS113:YES)、過去不具合事例データベース36から該当する不具合現象の頻度を抽出して優先順位を決定する(ステップS114)。
【0059】
一方、該当する項目が複数ない場合(ステップS113:NO)には、後述するステップS116に移行する。
【0060】
ステップS114における優先順位の決定は、図13に示すように、まず、過去不具合事例データベース36から根本原因対策が未の項目を抽出する(ステップS121)。次に、抽出した対策が未の項目より不具合発生日が古い順にポイントを付与する(ステップS122)。たとえば、対策が未の項目がA、B、C、Dの4項目あった場合には、これらの4項目に対して不具合発生日が古い順に1から4のポイントを付与する。そして、上記で与えたポイントと不具合の生じた頻度を加算し(ステップS123)、合計のポイントを比較してポイントが高い項目から優先順位を決定する(ステップS124)。なお、根本原因対策済みの項目についても、同様にして優先順位を決定することができる。
【0061】
次に、決定した優先順位に基づいて不具合項目を決定する(ステップS115)。そして、過去不具合事例データベース36の原因から故障部位を特定する(ステップS116)。このようにして故障部位が特定されると、図11のステップS105に戻る。
【0062】
ステップS105にて関連部品を抽出した後、制御部35は、保証項目データベース33を参照して、ステップS105において抽出した関連部品の保証項目を抽出する(ステップS106)。
【0063】
制御部35は、図7に示すように、関連部品を検査対象部品(作業部位)として、該関連部品の保証項目と共に、ディスプレイ34に表示する(ステップS107)。複数の関連部品がある場合には、その内一つの関連部品について、ディスプレイ34に表示される。
【0064】
この表示に基づいて作業者は改修作業を実施し、改修保証検査を実施する。そして、制御部35は、不具合が解決したか否かを判断する(ステップS108)。不具合が解決していない場合(ステップS108:NO)、図13のステップS115に移行し、決定した優先順位に基づいて不具合項目を決定し、過去不具合事例データベース36の原因から故障部位を再び特定して(ステップS116)、ステップS105に戻る。
【0065】
一方、不具合が解決している場合(ステップS108:YES)、作業員が検査完了を入力する。
【0066】
制御部35は、検査完了が入力されると、過去不具合事例データベース36の該当する項目に頻度を加点する(ステップS109)。制御部35は、たとえば、図7に示す「OK」ボタンが、作業者により押されたことにより検査完了を判断する。
【0067】
検査完了でない場合、すなわち、「OK」ボタンが押されていない場合、検査完了が入力されるまで、制御部35は待機する。
【0068】
検査完了の場合、すなわち、「OK」ボタンが押された場合には、制御部35は、全検査対象部品について保証項目の表示が終わったか否か、すなわち、他に作業部位があるか否かを判断する(ステップS110)。
【0069】
全ての検査対象部品(関連部品)について、保証項目の表示が終わっていない場合、すなわち、他に作業部位がある場合(ステップS110:YES)、ステップS107以降の処理が繰り返される。
【0070】
一方、全検査対象部品について、保証項目の表示が終わった場合、すなわち、他に作業部位がない場合(ステップS110:NO)、改修作業保証工程が終了される。
【0071】
以上のように、本実施形態の改修作業保証装置130および該改修作業保証装置130により実行される改修作業保証方法によれば、第1の実施形態と基本的には同様の作用効果を奏する。しかしながら、特に第2の実施形態によれば、自己診断によって不具合部位を特定できない場合にも、過去不具合事例データベース36に照らして不具合部位を推定することができ、この推定した不具合部品に関連する関連部品および該関連部品の保証項目をディスプレイ34に表示する。したがって、作業者は、ディスプレイ34の保証項目に従って、関連部品を検査していくだけで、改修時に発生しうる関連部品の不具合を確実に解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】改修作業保証装置および車両を示す図である。
【図2】改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】不具合部品データベース31の記憶内容を示す概念図である。
【図4】関連部品データベース32の記憶内容を示す概念図である。
【図5】関連部品の接続関係を示す概念図である。
【図6】保証項目データベース33の記憶内容を示す概念図である。
【図7】ディスプレイの表示例を示す図である。
【図8】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】過去不具合事例データベースの記憶内容を示す概念図である。
【図11】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである
【図12】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである
【図13】同一の不具合現象が複数ある場合の優先順位の決定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
10…車両、
20…ケーブル、
30…改修作業保証装置
31…不具合部品データベース、
32…関連部品データベース、
33…保証項目データベース、
34…ディスプレイ、
35…制御部、
36…過去不具合事例データベース、
130…改修作業保証装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の改修時の作業を保証する改修作業保証装置および改修作業保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製品の一例として車両を例示すると、車両は組立ラインにおいて多くの部品が組み付けられる。その後検査工程において、それらの部品が正常に機能するものであるか否か、各部品の組み付けが正常に行なわれているか否かなどが検査される。
【0003】
例えば、部品として車両に搭載されたECU(電子制御ユニット)の機能の是非を検査する場合、ECUは自己診断機能を有しているので、ECUの自己診断結果が故障診断装置に送信され、検査結果が検査箇所と共に表示部に表示される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
検査工程の作業者はこの検査結果を見てECUの機能の是非を判断する。また、各部品の組み付けの是非は、例えば、ボルトが所定数取り付けられているか、部品同士の組み付け隙間は規定値内かなどを見て検査する。
【0005】
これらの検査結果が良好であれば車両はそのまま出荷される。一方、検査結果が不良であれば車両は改修ラインに運び込まれ、所望の改修作業が行なわれて不具合部品や不具合箇所が改修される。
【0006】
改修の際には、不具合部品や不具合箇所を交換または修理するために、様々な部品が取り外され、取り外された部品は交換または修理後に再組立される。改修された車両は、再度、検査工程において正規の車両検査と同様に検査される。
【特許文献1】特開平5−172705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、検査工程では、改修された車両に対して、ボルトの締め付けトルク管理、コネクタの勘合状態の管理など、通常の組み立てラインで保証している項目についての検査は行なわれない場合がある。
【0008】
例えば、改修ラインにおいて、不具合部品を交換するためにその周辺の部品を取り外すことがあるが、再組立をする場合に、それらの部品の組み立ての一切の管理は改修ラインの作業者に任せられている。そのため、部品を取り付けるボルトの締め付けトルクの管理やコネクタの勘合状態の管理を作業者が怠ると、検査工程でそれらの不具合が発見されないことがある。
【0009】
これでは、改修工程および検査工程を経た後でも、不具合が残ってしまう可能性があり、後に、この不具合の原因調査のために余計な工数が必要になってしまうことがある。
【0010】
このような可能性をなくすためには、作業者に保証が任されている全ての保証項目をも、検査工程における検査項目に追加して、検査することが考えられる。
【0011】
しかし、安全性や快適性のために、車両に装備される部品数が増大している今日の状況において、全ての保証項目まで検査項目に含めて検査するのでは、工数が膨大になってしまい、検査効率が著しく低下してしまう。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不具合部品の改修により新たに不具合が生じたとしても効率的に検査できる改修作業保証装置および改修作業保証方法を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の改修作業保証装置は、製品を組み立てる組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位を改修する改修工程および前記不具合部位を改修した場合に行われる再組立作業を保証する再組立作業保証工程が備えられた生産ラインの当該再組立作業保証工程で使用される改修作業保証装置であって、前記製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とが対応付けられたデータを記憶する関連部品記憶部と、前記関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられたデータを記憶する保証項目記憶部と、前記検査工程で不具合部位があると判断された場合に、不具合部位があると判断された製品の当該不具合部位に関連する関連部品を前記関連部品記憶部から抽出し、抽出した前記関連部品の保証項目を前記保証項目記憶部から抽出する制御部と、当該制御部により抽出された前記関連部品と前記関連部品の保証項目とを作業者に報知する報知部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の改修作業保証方法は、製品を組み立てる製品組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位の改修を行う不具合部位改修工程および前記不具合部位が改修された後に前記不具合部位の再組立作業を行う再組立作業工程とが備えられた生産ラインにおいて使用される改修作業保証方法であって、前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合が生じている製品に関するデータを作成する不具合データベース作成段階と、前記検査工程で不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品を、製品ごとに当該製品の関連部品が対応付けられて記憶されている関連部品データベースから抽出する関連部品抽出段階と、前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品の保証項目を、関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられて記憶されている保証項目データベースから抽出する保証項目抽出段階と、前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品と当該関連部品の保証項目を作業者に知らせる段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改修作業保証装置によれば、不具合部位に関連する関連部品と該関連部品の保証項目とが作業者に報知されるようになっているので、改修工程後に、保証項目に従って作業者が不具合部位の関連部品を検査することによって、不具合部位の改修により新たな不具合が生じてしまっていても、効率的に検査することができ、関連部品の不具合を確実に解消できる。
【0016】
本発明の改修作業保証方法によれば、不具合部位に関連する関連部品と該関連部品の保証項目とが作業者に知らされるようになっているので、改修工程後に、保証項目に従って作業者が不具合部位の関連部品を検査することができ、不具合部位の改修により新たな不具合が生じてしまっていても、効率的に検査し、関連部品の不具合を確実に解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下では、製造される製品が車両である場合を例に説明する。しかし、本発明を適用させることができる製品は車両に限定されるものではない。本発明は、生産ラインにおいて組み立てられるあらゆる製品に適用することができる。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態の改修作業保証装置について説明する。
【0018】
最初に、改修作業保証装置が配置される組立ラインについて、簡単に説明する。
【0019】
組立ラインは、組立工程、検査工程、改修工程および改修作業保証工程が、この順に直列に並べられて形成されている。
【0020】
組立工程は、車両を実際に組み立てる工程である。検査工程は、組み立てられた車両を検査する工程である。改修工程は、検査工程において不具合が発見された車両が運搬され、不具合部位の改修、たとえば、不具合のある部品の交換や修理が行なわれる工程である。改修作業保証工程は、改修された車両に不具合がないかを再検査して、改修作業を保証する工程である。改修作業保証工程が完了した車両は、再度検査工程に運搬され、検査される。検査結果が良好であれば、車両は出荷される。
【0021】
本発明に係る改修作業保証装置は、改修作業保証工程に配置されている。
【0022】
図1は改修作業保証装置およびその装置に接続される車両を示す図である。
【0023】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、図1に示すように、ケーブル20を介して、改修作業保証装置30に接続される。改修作業保証装置30は、改修工程において改修された車両10の不具合部位に関連する関連部品を保証する。保証のために、改修作業保証装置30は、ケーブル20を介して、車両10に搭載されている複数のECU(電子制御ユニット)と通信する。
【0024】
ここで、ECUとは、車両10の各部をそれぞれ制御する装置であり、自己診断機能を備えている。自己診断機能とは、各ECUが制御する車両10の各部が正常か否かを、ECU自身が各部と通信を行って判定する機能である。ECUは、検査工程において、自己診断を行う。したがって、検査工程では、ECUの自己診断結果に基づいて、車両10に不具合部位があるか否かが判断されている。不具合部位がある車両10は、改修工程に運搬され、改修されている。
【0025】
改修が終わった後でも、ECUは自己診断結果を保持しており、改修作業保証工程において、ECUから改修作業保証装置30に検査工程時の自己診断結果が送信される。
【0026】
次に、改修作業保証装置30について、詳細に説明する。
【0027】
図2は改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図、図3は不具合部品データベースの記憶内容を示す概念図、図4は関連部品データベースの記憶内容を示す概念図、図5は関連部品の接続関係を示す概念図、図6は保証項目データベースの記憶内容を示す概念図、図7はディスプレイの表示例を示す図である。
【0028】
改修作業保証装置30は、図2に示すように、不具合部品データベース(不具合部位記憶部)31、関連部品データベース(関連部品記憶部)32、保証項目データベース(保証項目記憶部)33、ディスプレイ(報知部)34および制御部35を有する。不具合部品データベース31、関連部品データベース32および保証項目データベース33は、制御部35に接続されている。また、ディスプレイ34も、制御部35に接続されている。
【0029】
不具合部品データベース31は、図3に示すように、ECUの種類(製品の種類)、不具合部品(不具合部位)、部品番号(不具合部位の番号)、不具合モードおよび自己診断結果の対応関係を記憶している。したがって、改修作業保証工程において、ECUからケーブル20を介して送信されてきた自己診断結果に基づいて、どのECUからの信号か、不具合部品の名前と番号は何か、不具合の原因は何かがわかる。
【0030】
関連部品データベース32は、図4に示すように、不具合部品と、該不具合部品に関連する関連部品とを対応付けて記憶している。関連部品とは、不具合部品の交換や修理に伴って、取り外し等の影響を受ける部品である。たとえば、図5に示すように、ハーネスと部品が接続されている場合、部品Aを交換するためには、ハーネスH1とH2を取り外す必要がある。したがって、部品Aの関連部品は、ハーネスH1、H2である。また、部品Bが不具合部品の場合、ハーネスH1、H3が関連部品となる。同様に、部品Cが不具合部品の場合、ハーネスH1、H2、H4が関連部品となる。このように部品とその関連部品とが記憶されているので、関連部品データベース32を参照することによって、不具合部品の改修に関連して取り外し等がされた関連部品がわかる。
【0031】
保証項目データベース33は、図6に示すように、部品番号と、該部品番号の部品に対して保証されるべき保証項目が対応付けて記録されている。たとえば、部品H1については、コネクタの嵌合が完了していることが保証項目である。部品によっては、たとえば、部品H8がネジ部品である場合、所定のトルクまで締結されていることが保証項目となる。このように、部品と、該部品の保証項目が対応付けて記憶されているので、保証項目データベース33を参照すれば、各部品に対して、その保証項目がわかる。
【0032】
ディスプレイ34は、改修作業保証工程において、保証されるべき部品およびその保証項目を表示する。ディスプレイ34は、たとえば、図7に示すように、検査対象部品と、該部品の保証項目を表示し、作業者に知らせる。
【0033】
制御部35は、上記不具合部品データベース31、関連部品データベース32および保証項目データベース33から必要なデータを検索および抽出する。そして、制御部35は、改修作業保証工程において保証されるべき検査対象部品およびその保証項目を、順にディスプレイ34に表示させる。
【0034】
次に、改修作業保証装置30の作用について、詳細に説明する。
【0035】
図8は、改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。改修作業保証装置30の動作は、制御部35によって実行される。
【0036】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、ケーブル20を介して、改修作業保証装置30に接続される。
【0037】
改修作業保証装置30の制御部35は、ケーブル20を介して、車両10の全ECUから自己診断結果を取得する(ステップS1)。制御部35は、故障モード影響解析データベースにより、自己診断結果を照会する(ステップS2)。
【0038】
制御部35は、照会により、故障の自己診断結果が出ているECU、不具合部品、部品番号および故障モードを特定し、前の改修工程において改修された不具合部品の部品番号を抽出する(ステップS3)。制御部35は、関連部品データベース32を参照して、ステップS3において抽出した不具合部品に関連する関連部品を抽出する(ステップS4)。さらに、制御部35は、保証項目データベース33を参照して、ステップS4において抽出した関連部品の保証項目を抽出する(ステップS5)。
【0039】
制御部35は、図7に示すように、関連部品を検査対象部品として、該関連部品の保証項目と共に、ディスプレイ34に表示する(ステップS6)。複数の関連部品がある場合には、その内一つの関連部品について、ディスプレイ34に表示される。
【0040】
制御部35は、検査完了が入力されたか否かを判断する(ステップS7)。たとえば、
図7に示す「OK」ボタンが、作業者により押されたか否かにより検査完了か否かを判断する。
【0041】
検査完了でない場合、すなわち、「OK」ボタンが押されていない場合(ステップS7:NO)、検査完了が入力されるまで、制御部35は待機する。
【0042】
一方、検査完了の場合、すなわち、「OK」ボタンが押された場合(ステップS7:YES)、制御部35は、全検査対象部品について、保証項目の表示が終わったか否かを判断する(ステップS8)。
【0043】
全ての検査対象部品(関連部品)について、保証項目の表示が終わっていない場合(ステップS8:NO)、ステップS6以降の処理が繰り返される。
【0044】
全検査対象部品について、保証項目の表示が終わった場合(ステップS8:YES)、改修作業保証工程が終了される。
【0045】
以上のように、本実施形態の改修作業保証装置30および該改修作業保証装置30により実行される改修作業保証方法によれば、改修工程において改修された不具合部品に関連する関連部品および該関連部品の保証項目をディスプレイ34に表示する。したがって、作業者は、ディスプレイ34の保証項目に従って、関連部品を検査していくだけで、改修時に発生しうる関連部品の不具合を確実に解消できる。
【0046】
特に、不具合部品に関連する関連部品についてのみ保証項目をディスプレイ34に表示し、保証のための検査を促すので、全部品を再検査するよりも格段に工数を低減して作業効率を向上でき、かつ確実に不具合の発生を解消できる。
【0047】
また、改修作業保証装置30および改修作業保証方法によれば、ECUの自己診断結果に基づいて、改修工程において改修された不具合部品を特定している。したがって、既存のECUの機能により、容易に不具合部品を特定できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の改修作業保証装置について説明する。図9は改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図、図10は過去不具合事例データベースの記憶内容を示す概念図である。
【0048】
第2の実施形態の改修作業保証装置130は、制御部35に過去不具合事例データベース(過去不具合事例記憶部)36が接続されている点が第1の実施形態の改修作業保証装置30と異なる。すなわち、改修作業保証装置130は、図9に示すように、不具合部品データベース(不具合部位記憶部)31、関連部品データベース(関連部品記憶部)32、保証項目データベース(保証項目記憶部)33、過去不具合事例データベース(過去不具合事例記憶部)36、ディスプレイ(報知部)34および制御部35を有する。不具合部品データベース31、関連部品データベース32、保証項目データベース33および過去不具合事例データベース36は、制御部35に接続されている。また、ディスプレイ34も、制御部35に接続されている。
【0049】
過去不具合事例データベース36は、図10に示すように、現象、原因、対策、頻度、最新発生日および根本原因対策日の対応関係を記憶している。したがって、過去にどのような不具合現象が生じ、その不具合現象の原因が何か、どのような対策が施され、その不具合現象の発生頻度はどのくらいで、その不具合現象の最新発生日、根本原因の対策が施されているか否かおよび対策を施した日がわかる。図10において、Iは同一現象(同一診断コード)において不具合原因が複数ある場合、IIは診断コードが取得できない不具合である場合、IIIは同一の不具合に対して複数の診断コードが発生する場合を示している。
【0050】
次に、改修作業保証装置130の作用について、詳細に説明する。
【0051】
図11および図12は、改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。図13は、同一の不具合現象が複数ある場合の優先順位の決定方法を示すフローチャートである。改修作業保証装置130の動作は、制御部35によって実行される。
【0052】
改修作業保証工程に運搬されてきた車両10は、ケーブル20を介して、改修作業保証装置130に接続される。
【0053】
改修作業保証装置130の制御部35は、ケーブル20を介して、車両10の全ECUから自己診断結果(診断コード)を取得する(ステップS101)。制御部35は、故障モード影響解析データベースにより、自己診断結果を照会する(ステップS102)。
【0054】
制御部35は、照会により、故障の自己診断結果が出ているECU、不具合部品、部品番号および故障モードを特定し、前の改修工程において改修された不具合部品の部品番号を抽出する(ステップS103)。
【0055】
そして、自己診断結果により故障部位が特定できたか否かを判断する(ステップS104)。故障部位が特定できた場合(ステップS104:YES)、制御部35は、関連部品データベース32を参照して、ステップS103において抽出した不具合部品に関連する関連部品を抽出する(ステップS105)。
【0056】
一方、故障部位が特定できない場合(ステップS104:NO)、図12のステップS111に移行する。この故障部位が特定できない場合には、1つの診断コード(不具合現象)に対する原因が複数存する場合(図10のI参照)、診断コードが抽出できない場合(図10のII参照)、複数の診断コードが発生する場合(図10のIII参照)がある。
【0057】
ステップS111では、ディスプレイ34に不具合現象(異音、イグニション(IGN)がONしない等)の入力画面を表示する。作業者がその入力画面に基づいて現象を入力すると、過去不具合事例データベース36の不具合現象から該当する項目を検索する(ステップS112)。
【0058】
そして、該当する項目が複数あるか否かを判断する(ステップS113)。該当する項目が複数ある場合、すなわち、同一の不具合現象(同一の診断コード)が複数ある場合(ステップS113:YES)、過去不具合事例データベース36から該当する不具合現象の頻度を抽出して優先順位を決定する(ステップS114)。
【0059】
一方、該当する項目が複数ない場合(ステップS113:NO)には、後述するステップS116に移行する。
【0060】
ステップS114における優先順位の決定は、図13に示すように、まず、過去不具合事例データベース36から根本原因対策が未の項目を抽出する(ステップS121)。次に、抽出した対策が未の項目より不具合発生日が古い順にポイントを付与する(ステップS122)。たとえば、対策が未の項目がA、B、C、Dの4項目あった場合には、これらの4項目に対して不具合発生日が古い順に1から4のポイントを付与する。そして、上記で与えたポイントと不具合の生じた頻度を加算し(ステップS123)、合計のポイントを比較してポイントが高い項目から優先順位を決定する(ステップS124)。なお、根本原因対策済みの項目についても、同様にして優先順位を決定することができる。
【0061】
次に、決定した優先順位に基づいて不具合項目を決定する(ステップS115)。そして、過去不具合事例データベース36の原因から故障部位を特定する(ステップS116)。このようにして故障部位が特定されると、図11のステップS105に戻る。
【0062】
ステップS105にて関連部品を抽出した後、制御部35は、保証項目データベース33を参照して、ステップS105において抽出した関連部品の保証項目を抽出する(ステップS106)。
【0063】
制御部35は、図7に示すように、関連部品を検査対象部品(作業部位)として、該関連部品の保証項目と共に、ディスプレイ34に表示する(ステップS107)。複数の関連部品がある場合には、その内一つの関連部品について、ディスプレイ34に表示される。
【0064】
この表示に基づいて作業者は改修作業を実施し、改修保証検査を実施する。そして、制御部35は、不具合が解決したか否かを判断する(ステップS108)。不具合が解決していない場合(ステップS108:NO)、図13のステップS115に移行し、決定した優先順位に基づいて不具合項目を決定し、過去不具合事例データベース36の原因から故障部位を再び特定して(ステップS116)、ステップS105に戻る。
【0065】
一方、不具合が解決している場合(ステップS108:YES)、作業員が検査完了を入力する。
【0066】
制御部35は、検査完了が入力されると、過去不具合事例データベース36の該当する項目に頻度を加点する(ステップS109)。制御部35は、たとえば、図7に示す「OK」ボタンが、作業者により押されたことにより検査完了を判断する。
【0067】
検査完了でない場合、すなわち、「OK」ボタンが押されていない場合、検査完了が入力されるまで、制御部35は待機する。
【0068】
検査完了の場合、すなわち、「OK」ボタンが押された場合には、制御部35は、全検査対象部品について保証項目の表示が終わったか否か、すなわち、他に作業部位があるか否かを判断する(ステップS110)。
【0069】
全ての検査対象部品(関連部品)について、保証項目の表示が終わっていない場合、すなわち、他に作業部位がある場合(ステップS110:YES)、ステップS107以降の処理が繰り返される。
【0070】
一方、全検査対象部品について、保証項目の表示が終わった場合、すなわち、他に作業部位がない場合(ステップS110:NO)、改修作業保証工程が終了される。
【0071】
以上のように、本実施形態の改修作業保証装置130および該改修作業保証装置130により実行される改修作業保証方法によれば、第1の実施形態と基本的には同様の作用効果を奏する。しかしながら、特に第2の実施形態によれば、自己診断によって不具合部位を特定できない場合にも、過去不具合事例データベース36に照らして不具合部位を推定することができ、この推定した不具合部品に関連する関連部品および該関連部品の保証項目をディスプレイ34に表示する。したがって、作業者は、ディスプレイ34の保証項目に従って、関連部品を検査していくだけで、改修時に発生しうる関連部品の不具合を確実に解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】改修作業保証装置および車両を示す図である。
【図2】改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】不具合部品データベース31の記憶内容を示す概念図である。
【図4】関連部品データベース32の記憶内容を示す概念図である。
【図5】関連部品の接続関係を示す概念図である。
【図6】保証項目データベース33の記憶内容を示す概念図である。
【図7】ディスプレイの表示例を示す図である。
【図8】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】改修作業保証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】過去不具合事例データベースの記憶内容を示す概念図である。
【図11】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである
【図12】改修作業保証装置の動作の流れを示すフローチャートである
【図13】同一の不具合現象が複数ある場合の優先順位の決定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
10…車両、
20…ケーブル、
30…改修作業保証装置
31…不具合部品データベース、
32…関連部品データベース、
33…保証項目データベース、
34…ディスプレイ、
35…制御部、
36…過去不具合事例データベース、
130…改修作業保証装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を組み立てる組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位を改修する改修工程および前記不具合部位を改修した場合に行われる再組立作業を保証する再組立作業保証工程が備えられた生産ラインの当該再組立作業保証工程で使用される改修作業保証装置であって、
前記製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とが対応付けられたデータを記憶する関連部品記憶部と、
前記関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられたデータを記憶する保証項目記憶部と、
不具合部位があると判断された場合に、不具合部位があると判断された製品の当該不具合部位に関連する関連部品を前記関連部品記憶部から抽出し、抽出した前記関連部品の保証項目を前記保証項目記憶部から抽出する制御部と、
当該制御部により抽出された前記関連部品と前記関連部品の保証項目とを作業者に報知する報知部と、
を有することを特徴とする改修作業保証装置。
【請求項2】
さらに、
過去に生じた不具合事例に関するデータを記憶する過去不具合事例記憶部を有し、
前記制御部は、不具合部位を特定できない場合に、前記過去不具合事例記憶部から過去の不具合情報を抽出することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の改修作業保証装置。
【請求項3】
前記製品には不具合の存在の有無を自ら診断できる自己診断機能が設けられており、
当該自己診断機能による不具合の存在の有無を製品の部位ごとに記憶する不具合部位記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記検査工程における前記製品の自己診断結果を前記製品から受信し、当該不具合部位記憶部に記憶されている前記製品の部位ごとの不具合の存在の有無を参照して、前記製品の不具合部位を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の改修作業保証装置。
【請求項4】
製品を組み立てる製品組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位の改修を行う不具合部位改修工程および前記不具合部位が改修された後に前記不具合部位の再組立作業を行う再組立作業工程とが備えられた生産ラインにおいて使用される改修作業保証方法であって、
前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合が生じている製品に関するデータを作成する不具合データベース作成段階と、
前記検査工程で不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品を、製品ごとに当該製品の関連部品が対応付けられて記憶されている関連部品データベースから抽出する関連部品抽出段階と、
前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品の保証項目を、関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられて記憶されている保証項目データベースから抽出する保証項目抽出段階と、
前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品と当該関連部品の保証項目を作業者に知らせる段階と、
を含むことを特徴とする改修作業保証方法。
【請求項5】
前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合部位を特定できない場合に、過去不具合事例データベースから過去の不具合情報を抽出して不具合部位を推定する段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の改修作業保証方法。
【請求項6】
過去不具合事例データベースから抽出した過去の不具合情報における不具合発生時期と根本原因対策検討中の項目からポイントを設定し、そのポイントと頻度から不具合部位に優先順位を付けて不具合部位を推定することを特徴とする請求項5に記載の改修作業保証方法。
【請求項7】
さらに、知らされた保証項目にしたがって前記作業者が前記関連部品を組み付けると共に、前記関連部品が保証項目通りに取り付けられているか否かを前記作業者自身が検査する段階を含むことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の改修作業保証方法。
【請求項8】
さらに、前記検査が終了したら作業が完了した旨を報知する段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の改修作業保証方法。
【請求項1】
製品を組み立てる組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位を改修する改修工程および前記不具合部位を改修した場合に行われる再組立作業を保証する再組立作業保証工程が備えられた生産ラインの当該再組立作業保証工程で使用される改修作業保証装置であって、
前記製品の各部位と該各部位に関連する関連部品とが対応付けられたデータを記憶する関連部品記憶部と、
前記関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられたデータを記憶する保証項目記憶部と、
不具合部位があると判断された場合に、不具合部位があると判断された製品の当該不具合部位に関連する関連部品を前記関連部品記憶部から抽出し、抽出した前記関連部品の保証項目を前記保証項目記憶部から抽出する制御部と、
当該制御部により抽出された前記関連部品と前記関連部品の保証項目とを作業者に報知する報知部と、
を有することを特徴とする改修作業保証装置。
【請求項2】
さらに、
過去に生じた不具合事例に関するデータを記憶する過去不具合事例記憶部を有し、
前記制御部は、不具合部位を特定できない場合に、前記過去不具合事例記憶部から過去の不具合情報を抽出することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の改修作業保証装置。
【請求項3】
前記製品には不具合の存在の有無を自ら診断できる自己診断機能が設けられており、
当該自己診断機能による不具合の存在の有無を製品の部位ごとに記憶する不具合部位記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記検査工程における前記製品の自己診断結果を前記製品から受信し、当該不具合部位記憶部に記憶されている前記製品の部位ごとの不具合の存在の有無を参照して、前記製品の不具合部位を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の改修作業保証装置。
【請求項4】
製品を組み立てる製品組立工程、組み立てられた製品に不具合部位があるか否かを検査する検査工程、検査の結果製品に不具合部位があると判断された場合に当該不具合部位の改修を行う不具合部位改修工程および前記不具合部位が改修された後に前記不具合部位の再組立作業を行う再組立作業工程とが備えられた生産ラインにおいて使用される改修作業保証方法であって、
前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合が生じている製品に関するデータを作成する不具合データベース作成段階と、
前記検査工程で不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品を、製品ごとに当該製品の関連部品が対応付けられて記憶されている関連部品データベースから抽出する関連部品抽出段階と、
前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品の保証項目を、関連部品ごとに前記製品として保証されるべき保証項目が対応付けられて記憶されている保証項目データベースから抽出する保証項目抽出段階と、
前記不具合部位があると判断された製品に関連する関連部品と当該関連部品の保証項目を作業者に知らせる段階と、
を含むことを特徴とする改修作業保証方法。
【請求項5】
前記検査工程で取得した検査結果に基づいて不具合部位を特定できない場合に、過去不具合事例データベースから過去の不具合情報を抽出して不具合部位を推定する段階を含むことを特徴とする請求項4に記載の改修作業保証方法。
【請求項6】
過去不具合事例データベースから抽出した過去の不具合情報における不具合発生時期と根本原因対策検討中の項目からポイントを設定し、そのポイントと頻度から不具合部位に優先順位を付けて不具合部位を推定することを特徴とする請求項5に記載の改修作業保証方法。
【請求項7】
さらに、知らされた保証項目にしたがって前記作業者が前記関連部品を組み付けると共に、前記関連部品が保証項目通りに取り付けられているか否かを前記作業者自身が検査する段階を含むことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載の改修作業保証方法。
【請求項8】
さらに、前記検査が終了したら作業が完了した旨を報知する段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の改修作業保証方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−183238(P2007−183238A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144588(P2006−144588)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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