説明

改善されたイムノアッセイ法

【課題】疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーを使用する診断又は予後予測のアッセイを提供する。
【解決手段】(a)試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):(i)試験試料希釈液を、抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップを実施するステップと、(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップと、(c)各試験試料希釈液に関する、抗体と抗原の特異的結合の量及び被験抗原の量に基づいて、疾患状態又は疾患感受性の有無を判定するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は全般に、診断又は予後予測のアッセイの分野に関し、具体的には、患者の体液を含む試料中の抗体の検出のためのアッセイであって、このような抗体を、疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーとして使用するアッセイに関する。
【0002】
[発明の背景]
多くの診断、予後予測及び/又はモニター用アッセイは、特定の疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーの検出を利用するものである。このような生物学的マーカーは、一般に、特定の疾患に特有であり、又は疾患に対する感受性と関連するタンパク質又はポリペプチドである。
【0003】
近年、抗体、特に自己抗体、もまた疾患又は疾患感受性の生物学的マーカーとなりうることが明らかになった。自己抗体は、たとえ抗原が実際にはその個体に由来していても、個体の免疫系が外来として認識する抗原を対象とする天然に存在する抗体である。それらは遊離の循環自己抗体として、又はそれらの標的抗原に結合した自己抗体からなる循環免疫複合体の形態で循環の中に存在し得る。「正常」細胞によって発現する野生型のタンパク質と、疾患細胞によって、又は疾患の過程において産生される変化した形のタンパク質との違いから、場合によっては個体の免疫系により「非自己」として認識される変化したタンパク質がもたらされ、それによりその個体において免疫反応が誘発される可能性がある。これは、変化したタンパク質に対して免疫学的に特異的な自己抗体の産生をもたらす、液性(すなわち、B細胞により媒介される)免疫応答であり得る。
【0004】
国際公開第99/58978号パンフレットは、2種以上の異なる腫瘍マーカーに対する個体の免疫応答の評価に基づく、癌の検出/診断における使用方法を記載している。これらの方法は、一般的に、個体から採取された体液の試料と、それぞれ別の腫瘍マーカータンパク質に由来する、2種以上の異なる腫瘍マーカー抗原のパネルとを接触させるステップと、腫瘍マーカー抗原と、腫瘍マーカータンパク質に免疫学的に特異的な循環自己抗体とが結合した複合体の形成を検出するステップとを含む。このような循環自己抗体の存在が、癌の存在の指標として見なされる。
【0005】
自己抗体の産生に関する、腫瘍マーカータンパク質の存在に対する個体の免疫応答を測定するアッセイは、体液中の腫瘍マーカータンパク質の直接の測定又は検出の代わりとなる方法を提供する。このようなアッセイが、腫瘍マーカータンパク質の存在の間接的な検出を本質的に構成する。免疫応答の性質により、自己抗体は、非常に少量の循環腫瘍マーカータンパク質により誘発でき、したがって、腫瘍マーカーに対する免疫応答の検出を利用する間接的方法は、体液中の腫瘍マーカーの直接的測定方法より高感度である可能性が高い。したがって、自己抗体の検出に基づくアッセイ方法は、疾患過程の早期において特に有用であり得、無症候性患者のスクリーニングに関して、例えば、無症候性個体の集団の中の疾患を発症する「危険性がある」個体を特定するための、又は無症候性個体の集団の中の疾患を発症している個体を特定するためのスクリーニングにおいてもまた有用であり得る。さらに、自己抗体の検出に基づくアッセイ方法は、疾患過程の早期において特に有用であり得、無症候性個体の集団の中の、疾患を発症している個体を特定するためにもまた使用できる。さらに、それらは再発疾患の早期検出のために有用であり得る。本アッセイ方法は、疾患のための治療法の選択又はモニタリングにおいてもまた有用であり得る。
【0006】
抗体及び自己抗体は、他の疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーとしての役目を果たすこともでき、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎)、自己免疫性胃炎(例えば、悪性貧血)、自己免疫性副腎炎(例えば、アジソン病)、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病(例えば、1型糖尿病)、重症筋無力症は例に過ぎない。
【0007】
本発明者らは、抗体の検出に基づくアッセイを、集団の中の個体の疾患状態、疾患の進行又は疾患感受性を評価するために診断的又は予後予測的に使用した場合、存在する抗体の絶対量が個体ごとに劇的に変化するため、スクリーニングされる対象の全集団に関して適切な標準化アッセイ手順の立案において困難が生じ得ることを認識していた。これは、例えば、少量の抗体を有する個体の中で、偽陰性結果の高発生率をもたらし得る。同様に、個体ごとの抗体の絶対量の変動は、スクリーニングされた集団の中の全個体に適切な、アッセイの陽性結果に関する閾値を設定することが難しいことを意味するので、真陽性結果を得ることは困難である。
【0008】
本発明者らは、疾患の生物学的マーカーとしての抗体、特に自己抗体の検出に基づくアッセイの性能、より具体的には臨床的有用性及び信頼性が、抗原の滴定ステップを包含することにより劇的に改善できることを見出した。異なる抗原量の系列に対して抗体を含むことが疑われる試料を試験すること及び滴定曲線を作図することにより、試料中に存在する抗体の絶対量とは独立して、真陽性のスクリーニング結果を確実に特定できる。このような取り組みは、実際の患者の試料における抗体を検出するために使用する、最も適切な抗原濃度を特定可能にするための較正曲線を作成するためだけに抗原を滴定する、従来技術の方法に反する。これらの方法において、実際の診断のためには、一点のみ測定することが提案される。それ故に、これらの方法は、偽陽性及び偽陰性の発生をもたらす、個体ごとの検出される抗体量の変動を考慮に入れられないであろう。本発明者らは、抗原の滴定に基づくアッセイ方法が、1つの抗原濃度での自己抗体の反応性を測定するより、高い特異性及び感受性を示すことを見出した。
【0009】
本発明者らは、抗原滴定と、試験試料の同時滴定とを組み合わせたアッセイ方法が、特に自己抗体の検出との関連で、抗原滴定単独に基づく方法より実に大きな利点を示すことをさらに見出した。これらのいわゆる「交差滴定(cross−titration)」法が、本発明の主題となる。
【0010】
[発明の概要]
本発明の第1の態様によれば、試験試料中の抗体を検出することを含み、試験試料が哺乳動物対象由来の体液を含み、前記抗体が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーである、前記哺乳動物対象における疾患状態又は疾患感受性を検出する方法であって、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップと、
(c)各試験試料希釈液に関する前記抗体と前記抗原の特異的結合の量及び被験抗原の量に基づいて、前記疾患状態又は疾患感受性の有無を判定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の抗体を検出する方法であって、前記抗体が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーであり、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、このアッセイに使用した抗原と反応性のある抗体が試験試料中に存在することが、試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関して一般的なS字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の抗体を検出する方法であって、前記抗体が、前記哺乳動物対象に導入された外来物質を対象とし、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、このアッセイに使用した抗原と反応性のある抗体が試験試料中に存在することが、試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関して一般的なS字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の全態様において、哺乳動物対象は、好ましくはヒトである。
【0014】
本発明の全態様において、抗体は自己抗体であってよい。
【0015】
本発明の全態様において、本方法は、哺乳動物対象から得た、又は調製された体液を含む試験試料に対して、in vitroで実施されることが好ましい。
【0016】
本発明の全態様において、アッセイのステップ(a)は、試験試料希釈液と抗原量の全ての可能な組合せが試験されるように、アッセイに使用した、試験試料のありとあらゆる希釈液と、抗原のありとあらゆる量とを接触させるステップを含むことが好ましいであろう。
【0017】
本発明の全態様において、本発明の格別な特徴は、関連する抗体が試験試料中に存在するか、又は存在しないかどうかの判断が、1つの抗原濃度において、又は1つの試験試料希釈液に関してのみ読み取るのではなく、試験試料希釈液と被験抗原の濃度とのありとあらゆる異なる組合せにおいて観察される特異的結合の量に基づく、言い換えれば集合的評価である。それ故に、疾患状態又は疾患感受性或いは患者の試料中の外来物質に対する抗体の有無の判定は、これらの集合的評価に直接基づくことができる。一実施形態において、特異的結合の量が、試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関する抗原量に対してプロットされた場合、この判断は一般的S字型又はシグモイド曲線の存在に基づいて実施される。本明細書中の実施例から明らかなように、本発明者らは、本発明の方法が、抗原滴定単独に基づく診断又は検出の方法と少なくとも同等の特異性で、より高い感受性を有し、偽陽性及び偽陰性の判定の発生を減少させることを観察した。
【0018】
本発明を、ここからさらに説明する。以下の節において、本発明の様々な態様の様々な特徴をより詳細に定義する。本発明の一態様と関連させてさらに定義したそれぞれの特徴を、そうではないことを明記していない限り、本発明の任意の他の態様と関連させて記載した特徴と組み合わせることができる。具体的には、好ましい又は有利であることが示唆される任意の特徴を、そうではないことを明記していない限り、好ましい又は有利であることが示唆される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1b】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1c】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1d】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1e】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1f】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1g】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図1h】乳癌を有する患者から採取した血清試料中の、p53(図1、aからd)及びc−myc(図1、eからh)に対する自己抗体を検出するための交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の異なる希釈液を、さまざまな量の組換えp53又はc−myc抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した(1/10,000の血清希釈液が「非血清」対照として有効である)。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。
【図2】実施例3に従った、最適血清及び抗原濃度(OSAAC)のアッセイを実施するために使用した滴定プレートのレイアウトの例を例示する図である。注:血清及び抗原の希釈液は別のプレート上に示すが、実際には血清及び抗原の希釈液は、同じ1つのプレートの対応するウェルに加える。
【図3a】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗p53自己抗体を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図3b】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗p53自己抗体を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図4a】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗ECD6自己抗体(ECD6抗原を使用)を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図4b】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗ECD6自己抗体(ECD6抗原を使用)を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図5a】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗ECD6自己抗体(ECD6 3’抗原を使用)を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図5b】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。原発性乳癌患者(パネルa)又は正常対照である対象(パネルb)の血清中の、抗ECD6自己抗体(ECD6 3’抗原を使用)を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図6a】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。p53抗原(パネルA)、ECD6抗原(パネルB)又はECD6 3’抗原(パネルC)を使用して、同じ原発性乳癌患者の血清中の、抗p53自己抗体又は抗ECD6自己抗体を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図6b】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。p53抗原(パネルA)、ECD6抗原(パネルB)又はECD6 3’抗原(パネルC)を使用して、同じ原発性乳癌患者の血清中の、抗p53自己抗体又は抗ECD6自己抗体を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図6c】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。p53抗原(パネルA)、ECD6抗原(パネルB)又はECD6 3’抗原(パネルC)を使用して、同じ原発性乳癌患者の血清中の、抗p53自己抗体又は抗ECD6自己抗体を検出するための代表的な滴定曲線を示す図である。
【図7a】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。実施例3において参照する、さらなる滴定曲線を示す図である(パネルaからd)。
【図7b】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。実施例3において参照する、さらなる滴定曲線を示す図である(パネルaからd)。
【図7c】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。実施例3において参照する、さらなる滴定曲線を示す図である(パネルaからd)。
【図7d】原発性乳癌を有する患者及び正常対照である対象から採取した血清試料中の、p53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)及びECD6の3’断片に対する自己抗体を検出するための、交差滴定曲線の系列を示す図である。各実験において、患者の血清の6種の希釈液を、さまざまな量の組換えp53、ECD6、又はECD6の3’断片抗原の滴定系列に対する特異的結合に関して個別に試験した。各抗原に関して、特異的結合(650nmにおける吸光度として表した)対抗原濃度の個別の曲線を、患者の血清の各希釈液に関してプロットした。実施例3において参照する、さらなる滴定曲線を示す図である(パネルaからd)。
【0020】
[発明の詳細な説明]
大まかに言えば、本発明は、抗体(試験試料)の存在に関して試験する試料の2種以上の希釈液を、抗体に特異的な異なる量の抗原に対する特異的結合に関してそれぞれアッセイし、抗体/抗原の結合量対被験抗原量の個別の滴定曲線を、試験試料の異なる希釈液それぞれに関して作成することを特徴とする、疾患状態又は疾患感受性のための生物学的マーカーとなる抗体を検出するためのイムノアッセイ法を提供する。簡単に言えば、本アッセイは、試験試料及びイムノアッセイにおいて試薬として使用した抗原の両方の交差滴定に基づく。
【0021】
イムノアッセイ、例えばELISA、放射イムノアッセイなどの一般的特徴は、当業者には公知である(Immunoassay、E.Diamandis及びT.Christopoulus、Academic Press,Inc.、San Diego、CA、1996年を参照されたい)。特定の免疫学的特異性を有する抗体を検出するためのイムノアッセイは、一般に試験において抗体と特異的な免疫学的反応性を示す試薬(抗原)の使用を必要とする。このアッセイのフォーマットにより、この抗原は、固体支持体に固定されていてよい。抗体の存在に関して試験する試料を、抗原と接触させ、必要な免疫学的特異性の抗体が試料中に存在する場合、それらは抗原と免疫学的に反応し、その後検出又は定量的に測定され得る、抗体抗原複合体を形成するであろう。
【0022】
本発明の方法は、抗体の存在に関して試験される試料の、2種以上の異なる希釈液を、複数の異なる量の抗原(本明細書中において抗原滴定系列とも称する)に対してそれぞれ試験することを特徴とする。本アッセイは、試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液を試験することを含まなければならないが、3、4、5種又は6から10種又はさらにそれ以上の試験試料の異なる希釈液を試験することを含んでもよい。試験試料のそれぞれの個別の希釈液は、少なくとも2種及び好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、又はそれ以上の異なる量の抗原に対して試験される。典型的なアッセイは、いかなる抗原も含まない陰性対照及び/又は陰性試験試料対照、例えば試験試料の1/10,000希釈液などもまた含んでもよい。
【0023】
本文脈において、「抗原」という用語は、検出されることを希望する標的抗体と特異的に相互作用できる、少なくとも1種の抗原決定基又はエピトープを含む物質或いは前記抗体の可変領域又は相補性決定領域と特異的に相互作用する任意の捕捉剤を指す。抗原は、典型的には、例えばタンパク質若しくはペプチド、多糖類又は核酸などの天然に存在する若しくは合成の生物学的巨大分子であり、抗イディオタイプ抗体などの抗体又はそれらの断片を含み得る。
【0024】
熟練した読者は、本発明の方法において、標的抗体への結合に利用できる抗原決定基又はエピトープの量が、滴定系列を確立するために重要であることを理解するであろう。多くのアッセイのフォーマットにおいて、結合に利用できる抗原決定基又はエピトープの量は、存在する抗原分子の量と直接相関する。しかし、特定の固相アッセイ系などの他の実施形態において、露出された抗原決定基又はエピトープの量は、抗原の量と直接相関しないことがあり、固体表面への付着などの他の因子に依存することがある。これらの実施形態において、滴定系列における「異なる量の抗原」に対する本明細書での言及は、異なる量の抗原決定基又はエピトープを指すと解釈できる。
【0025】
(試験試料希釈液中に存在する)抗体と、抗原との特異的結合の、相対的又は絶対的な量は、試験試料希釈液と被験抗原(抗原決定基又はエピトープ)の量とのそれぞれの異なる組合せに関して判定される。結果を、特異的結合の(相対的又は絶対的)量対被験抗原のそれぞれの量に関する抗原量の曲線の系列、アッセイに使用したそれぞれの試験試料希釈液に関して作図された個別の曲線のプロット又は計算に、その後使用する。典型的な結果を、単に例として、多くの異なる抗体の検出に関する添付の図に例示する。アッセイに使用した抗原と反応する抗体の試験試料中の存在は、アッセイに使用するそれぞれの試験試料希釈液に関するそれぞれの抗原量において観察される特異的結合量に基づいて判定し、通常は、少なくとも2種の異なる試験試料希釈液に関する一般的S字型又はシグモイド曲線の存在により示される。
【0026】
抗体と抗原との特異的結合の絶対量は、定量的測定の実行を望まない限り、一般的には重要ではない。抗体の有無の単純なイエス/ノー判定では、正しい形状の曲線が、本アッセイにおける異なる被験試験試料希釈液の少なくとも2種に関して作成されるだけで十分である。任意の被験試験試料希釈液に関する、異なる量の被験抗原にわたって、検出可能な結合に変動がない場合、このことは検出可能な抗体量は不在として判定され得る。本発明の好ましい実施形態において、本方法は非定量的である。それ故に、本方法は、シグナル強度に独立した無次元の比例関係を使用して、抗体の有無のイエス/ノー判定をもたらし得る。
【0027】
所望であれば、特定の試料に存在する抗体量の測定は、交差滴定アッセイの結果から導き得る。患者集団の臨床試験を含む非限定的実施形態において、特定の患者の結果を陽性として判定するためのカットオフ(cut−off)は、正常対象の対照グループから得られた結果と比較して確立でき、例えば、正常グループの平均+2標準偏差のカットオフを確立できる。標的抗体に対する抗原の特異的結合(例えば、非特異的結合に関して修正した後に得られた値)が、少なくとも1種の抗原濃度に関してこのカットオフより上に収まる患者試料を、陽性として判定できる。
【0028】
本発明の他の非限定的実施形態において、較正システムは、未知の試験試料を陽性又は陰性と判定するために使用できる。1つのこのような較正システムは、既知の陽性対照試料又は陰性対照試料の使用に基づくことができる。陽性及び陰性の対照/較正試料は、本発明のアッセイ方法論を使用して、試験試料と並行して分析できる。未知の試験試料は、較正因子として使用した既知の陽性及び陰性の対照試料と比較することによって、陽性又は陰性として判断する。
【0029】
本発明の方法は、存在する標的抗体の絶対量が、患者ごとに大きく変動し得る場合、臨床的診断、予後予測、予測及び/又はモニター用アッセイにおける使用に有利である。本発明者らは、このようなアッセイが、試験抗原の単一の量/濃度を使用した抗体結合の検出に基づく場合、集団にわたって、(抗体の量の)標準的な生理学的範囲の最低限度又は最高限度の抗体の量を含む患者試料が、アッセイの方法論の限界のため見逃される可能性があり、抗体量の低い試料は偽陰性結果として判定され得、一方抗体レベルが非常に高い試料は、選択されたアッセイ方法論の正確な検出のための尺度から外れてしまうことがあることを観察した。
【0030】
本発明の全実施形態において、交差滴定アッセイ方法論を使用して検出された抗体は、自己抗体であってよい。
【0031】
本発明の交差滴定アッセイ方法は、患者に存在する抗体/自己抗体の絶対量と、抗体/自己抗体の特異性、特に抗体/自己抗体の、その標的抗原に対する親和性との両方において患者ごとに相当量の変動がある場合、疾患状態又は感受性の生物学的マーカーとしての抗体/自己抗体の検出に特に適している。それらの本来の性質による自己抗体応答は、患者ごとに有意に変動し得、変動は、存在する自己抗体の絶対量と、自己抗体の特異性/親和性との両方において発生する。本発明の方法は、この患者ごとの変動を考慮に入れることができ、それ故に、任意の所与の抗体/自己抗体のための(集団内の全個体を試験するための使用に適した)標準的アッセイフォーマットを確立できる。
【0032】
自己抗体とそれらの標的抗原との相互作用は一般的に親和性が低いが、上に要約したように、結合強度は患者ごとに変動し得る。陽性結果は、本アッセイに使用したそれぞれの試験試料希釈液に関して作成される滴定曲線の形状から推測できるので、本発明の方法は、低親和性結合の検出に特に適している。
【0033】
本発明の方法は、抗原滴定単独に基づくアッセイ方法(すなわち、抗原滴定系列に対して1つの試験試料を試験することを含むアッセイ)とは、本方法でなければ試験試料中の非標的成分との(本アッセイに使用される抗原の)非特異的結合によりマスクされるであろう、少量及び/又は低親和性の抗体の結合によるシグナルの検出が可能であるという点で異なる。
【0034】
本発明者らは、標的抗体の最適な検出に必要とされる最適試験試料希釈液における、抗原間及び抗原内のかなりの変動を観察した。それ故に、同じ患者の試験試料は、第1の抗原に対する抗体の検出のための第1の最適希釈及び、異なるタンパク質に由来する第2の抗原に対する抗体の検出のための異なる最適希釈を有し得る(抗原間の変動)。異なるタンパク質に由来する2種の抗原に関する最適試験試料希釈液における「差」は、数桁であってもよい。例えば、第1抗原(タンパク質A)に対する抗体の検出のための所与の試験試料の最適希釈は1:800であってよいが、同じ試験試料が、第2の抗原(タンパク質B)に対する抗体の検出のためには1:50の最適希釈を必要としてもよい。使用抗原が、同じタンパク質の異なる断片又は完全長タンパク質及びこのタンパク質の小断片(抗原内の変動)である場合、同様の効果が観察できる。それ故に、試験試料を、(異なるタンパク質又は1種のタンパク質の断片或いはそれらの組合せに由来する)異なる抗原のパネルに対する反応性に関して試験した場合、パネル内の各抗原に必要とされる試験試料の最適な希釈液は、異なるであろう。本発明の方法は、この問題を、本方法が臨床の場で実施されるたびに、パネル内の各抗原の様々な希釈液に対して、試験試料の異なる希釈液を試験することによって回避した。それ故に、パネル内の各抗原は、その「最適」試験試料希釈液で自動的に試験されるであろう。
【0035】
本発明者らは、特定の抗原に関する最適試験試料希釈液において、個体差が発生し得ることも観察した。それ故に、任意の所与の抗原に関して、第1の対象に由来する試験試料が、第1の試験試料希釈液(例えば、1:100)で最適な結果を得ることができ、一方、第2の対象に由来する試験試料を同じ抗原を使用して試験した場合に、異なる希釈の試験試料(1:500)が最適であることもある。本発明の方法は、各被験抗原に関して、臨床の場においてアッセイを実施するたびに、抗原希釈液の範囲に対して試験試料希釈液の範囲を試験するので、このような患者と患者との変動を考慮に入れることができる。それ故に、本発明の方法は、各試験試料に対する各被験抗原に関して、常に最適試験試料希釈液を使用する。
【0036】
本発明の方法はまた、診断、予後予測及び/又は(疾患状態又は療法の)モニターの目的のために自己抗体/抗体を検出するために使用されるイムノアッセイの実施において、日々の変動に対するセーフガードを提供する。患者の体液を含む試料中の抗体を検出するためにイムノアッセイを実施する場合、シグナル強度に相当な日々の変動があり得ることがしばしば観察される。このような変動は、例えば、試料を得た方法、及び試験前の保存方法の違いなどにより発生し得る。このような因子により、例えば、抗体/抗原の結合の単純な閾値に基づいて、確実性のある臨床的アッセイの結果を判定することが難しくなる。本発明は、抗体の存在に関する陽性結果が、シグナル強度に独立して、アッセイに使用した各試験試料希釈液に関して作成された滴定曲線の形状からはっきりと明確になるため、このような日々の変動の影響を最小にする。
【0037】
本発明の方法のなおさらなる利点は、患者の試料の希釈液であっても矛盾のない結果を出すことができ、また、1個体の異なる供給源(例えば、血液又は血清対腹水又は胸水)からの体液を使用して、抗体の絶対濃度が、異なる体液においては異なることがあるにもかかわらず、全般に同じ定量的スクリーニング結果(陽性/陰性)を出すことである。
【0038】
本発明の方法は、抗体を含むことが疑われる試料の複数の希釈液と、複数の異なる量の抗原とを接触させることができる任意の適切なフォーマットを実施し得る。都合のよいことには、試料の異なる希釈液と異なる量の抗原との接触は、マイクロタイタープレートのウェルなどの、個別であるが並行した反応チャンバーにおいて行うことができる。異なる量の抗原を、マイクロタイタープレートのウェル上に、抗原のストックからの系列の希釈液を調製することによって、マイクロタイタープレートのウェルにわたってコートすることができる。抗原のストックは、既知の又は未知の濃度であってよい。調製した試験試料の希釈液のアリコートをその後プレートのウェルに加えることができ、試験試料の容量は各ウェル中で一定に保つ。マイクロタイタープレートのウェルに加える抗原の絶対量は、当業者により理解されるように、標的抗体の性質、試験下の試料の性質、試験試料の希釈液、などの因子により変動させ得る。一般的に、抗原量及び試験試料希釈液は、本方法において抗体/抗原結合の検出のために選択される、読み取り可能な検出範囲に収まるシグナル強度範囲を作り出すように選択される。抗腫瘍マーカーの自己抗体を含むことが疑われるヒト血清試料の試験のための代表的な量及び希釈は、添付の実施例において示す。単なる例としてであるが、試験試料の代表的な希釈は、1/30から1/10,000(又は1:50から1:1600)までの範囲で変動可能である。抗原の被験量は、これに限定するつもりはないが、典型的には0.01μg/mlから10μg/ml(又は0.16nMから160nM)の範囲で変動可能である。
【0039】
前述のように、ストックにおける抗原の絶対濃度が未知である場合にも、抗原の1つのストックから出発して試験試料の2種以上の希釈液に関する滴定曲線を構築することが可能である。同じ1つのストック溶液を使用して、同じ様式で系列として希釈するという条件で、異なる出発試験試料において実行したこの抗原に関する個別の滴定アッセイの結果を比較することが可能である。
【0040】
本アッセイのさらなる実施形態において、異なる量の抗原(抗原決定基又はエピトープ)は、固体支持体の別個の場所又は反応部位に固定されていてもよい。反応部位のサブフラクション(sub−fraction)を含む全支持体又はその別個の領域を、その後試験試料の希釈液と接触させ、抗体と抗原との結合を、別個の場所又は反応部位のそれぞれにおいて個別に検出又は測定できる。適切な固体支持体はまた、マイクロアレイ、例えば、アレイ上の別個の部位又はスポットが異なる量の抗原を含むアレイを含む。マイクロアレイは、異なる量の特定の抗原を、アレイ上の別個の、分解可能な反応部位に固定することによって調製できる。他の実施形態において、固定化抗原分子の実際の量は、実質的に一定に保つことができるが、利用可能な結合エピトープの量を変えるためにアレイ上の部位又はスポットのサイズは変動しえ、異なる量の利用可能な結合エピトープを有する部位又はスポットの滴定系列を提供する。このような実施形態において、抗原の結合エピトープの二次元表面濃度は、抗原の絶対量ではなく滴定系列の調製において重要である。タンパク質/ペプチドマイクロアレイの調製及び照合に関する技術は、当分野において一般的に公知である。
【0041】
上の議論から、本発明の全実施形態において、抗原量の変動は、試験試料希釈液に対して試験した抗原又はエピトープの濃さを変更することによって、或いは抗原又はエピトープの濃さを維持するが、抗原が固定された表面面積を増加することによって、或いは両方によって達成できることが理解されるであろう。
【0042】
マイクロアレイは、異なる特異性の抗体に関する複数のアッセイを並行して実施するために使用できる。これは、異なる抗原の多数のセットを含むアレイを使用して実施でき、各セットは特定の抗原を複数の異なる量又は濃度で含む。「異なる抗原」という用語は、異なるタンパク質又はポリペプチド(異なる遺伝子によってコードされる関連のないタンパク質に由来する抗原など)に由来する抗原、及びさらに1つのタンパク質又はポリペプチドの異なるペプチドエピトープに由来する抗原を包含する。所与のマイクロアレイは、異なるタンパク質又はポリペプチドに由来する異なる抗原のセットを排他的に、或いは1つのタンパク質又はポリペプチドの異なるペプチドエピトープに由来する異なる抗原のセットを排他的に、或いはこの2つの任意の比率の混合物を含み得る。本発明の全実施形態において、それぞれの個々の抗原滴定系列は、たった1種の抗原のみの異なる量又は濃度を含み、抗原の混合物は含まないことが好ましいことに留意すべきである。
【0043】
本明細書中で使用する場合、「体液」という用語は、本発明の方法を使用して抗体の存在に関して試験される物質を指す場合、血漿、血清、全血液、尿、汗、リンパ液、排泄物、脳脊髄液、腹水、胸水、精液、唾液、乳頭吸引液、術後漿液又は創傷排出液を含む。前述のように、本発明の方法は、試験対照から取り出した体液を含む試験試料の希釈液についてin vitroで実施することが好ましい。使用する体液の種類は、試験される抗体の同一性及びアッセイが使用される臨床的状況により変えることができる。一般的に、血清又は血漿の試料についてアッセイを実施することが好ましい。試験試料は、体液に加えてさらなる成分、例えば、希釈剤、保存料、安定剤、バッファーなどを含み得る。試験試料の希釈液は、任意の適切な希釈剤を使用して調製できる。熟練した読者には、試験試料の希釈液を調製する理由が、単に、イムノアッセイにおいて検出されるべき標的抗体の異なる絶対量をそれぞれ含む試験試料の系列を作製するためであることが理解されるであろう。異なる量の標的抗体を含む「試験試料」を得る他の手段を排除する意図のものではない。例として、患者から取り出した試験試料を、天然に存在するより高い濃度の抗体を含む試験試料を得るために、希釈する代わりに、実際には、例えば透析を使用して「濃縮」することもあり得る。他の実施形態において、患者から取り出した体液が標的抗体に関して相対的に薄い場合など、体液をまず濃縮し(例えば、透析又は同様の技術により)、後で本発明に従ったアッセイに使用するための、希釈液の系列を調製するために使用する濃縮ストックを調製してもよい。
【0044】
本明細書中で使用する場合、「抗原」という用語は、広い意味で、検出されるべき標的抗体と特異的免疫学的反応性を示す任意の物質を指す。適切な抗原は、限定するものではないが、天然に存在するタンパク質、組換え又は合成のタンパク質又はポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣体など、さらに多糖類及び核酸を含み得る。具体的には、本明細書中で「抗原」を使用する場合は、ヒト由来、哺乳動物由来であるかどうかにかかわらず、検出されるべき抗体の可変領域又は相補性決定領域と特異的免疫学的相互作用が可能な任意の捕捉剤を包含することが意図される。例えば、抗イディオタイプ抗体は、ファージディスプレイによって作製された抗原がそうであるのと同様に、本目的に関して抗原としてみなすことができる。
【0045】
特定の抗原は、限定するものではないが、患者の組織又は体液から単離されたタンパク質又はポリペプチドを含む、天然供給源から単離されたタンパク質又はポリペプチドを含み得る又はそれに由来し得る。このような実施形態において、抗原は、実質的に全ての天然に存在するタンパク質、すなわち、実質的に天然供給源から単離された形態のタンパク質を含み得、又は天然に存在するタンパク質の断片を含み得る。本発明の方法において抗原として有効であるためには、任意のこのような「断片」が、試験に使用される抗体と免疫学的反応性を維持していなければならない。適切な断片は、例えば、単離タンパク質の化学的又は酵素的な切断によって調製されていてよい。
【0046】
使用されるアッセイの正確な性質に依存して、抗原は、生体分子には天然には存在しない、いくつかの所望の特徴を授ける、1つ又は複数のさらなる分子と連結した天然に存在する生体分子(例えば、タンパク質又はそれらの断片)を含み得る。例えば、生体分子(例えば、タンパク質又はポリペプチド断片)は、例えば蛍光標識、色素標識、発光標識、放射標識又はコロイド金などの重金属などの明示標識と接合できる。他の実施形態において、タンパク質又は断片は、融合タンパク質として発現できる。例としては、融合タンパク質は、N末端又はC末端にタグペプチドを含むことができ、組換え的に発現した抗原の精製において役立つ。
【0047】
使用されるアッセイのフォーマットにより、抗原は例えばマイクロタイタープレートのウェル、マイクロアレイのビーズ又はチップ或いは磁気ビーズなどの固体支持体に固定されていてもよい。固定は、非共有吸着又は共有結合を介して達成できる。
【0048】
抗原が標的抗体と免疫学的に反応する能力に対して、著しい不利な影響を与えなければ、任意の適切な結合手段が使用できる。
【0049】
本発明は、固相のアッセイに限定されるものではなく、液相、例えば溶液相のビーズアッセイにおいて、全体又は部分的に実施されるアッセイもまた包含する。
【0050】
一実施形態において、抗原は、ビオチンなどの、固定化を容易にするであろうリガンドを用いて標識できる。抗原は、その後、適切な滴定範囲に希釈でき、その後溶液において患者の試料内の自己抗体と反応させることが可能である。得られた免疫複合体をその後、リガンドと受容体の相互作用(例えばビオチン−ストレプトアビジン)を介して固体支持体に固定でき、以下に記載のようにアッセイの残りを実施できる。
【0051】
本発明のアッセイ方法における使用のための、ビオチン化ポリペプチド抗原の産生を容易にするために、完全長ポリペプチド抗原、それらの切断型又はそれらの抗原性断片をコードするcDNAは、ビオチン補因子が酵素反応を介して結合できるタンパク質又はポリペプチドのタグで標識された、融合タンパク質として発現できる。組換えビオチン化抗原の産生のためのベクターは、多くの供給業者から市販されている。
【0052】
ビオチン化抗原を用いた交差滴定の取り組みの使用のさらなる利点は、本アッセイが、ビオチン成分と抗ビオチン抗体との結合と、抗原とその同種抗体との真の結合とを識別できることである。本発明者らは、多くのヒト集団が、ビオチン化抗原の使用に基づくアッセイにおいて偽陽性結果の発生をもたらし得る抗ビオチン抗体を天然に産生することを観察した。
【0053】
前述のように、本発明に従った抗体を検出するために使用される「イムノアッセイ」は、複数の量の抗原が、選択された試験試料の複数の異なる希釈液と反応できる滴定系列を作製するために使用されることを除けば、当分野において公知の標準的技術に基づくことができる。最も好ましい実施形態において、イムノアッセイはELISAであってよい。ELISAは、当分野において一般的に周知である。典型的な「間接的」ELISAにおいて、試験下の抗体に特異性を有する抗原を、固体表面(例えば、標準的マイクロタイターアッセイプレートのウェル或いはマイクロビーズ又はマイクロアレイの表面)に固定し、抗体の存在に関して試験される体液を含む試料を、固定化抗原と接触させる。試料中に存在する所望の特異性の任意の抗体は、固定化抗原と結合するであろう。抗体/抗原の結合複合体は、その後、任意の適切な方法を使用して検出できる。好ましい一実施形態において、1種又は複数種のヒト免疫グロブリンに共通のエピトープを特異的に認識する、標識二次抗ヒト免疫グロブリン抗体を、抗体/抗原複合体の検出に使用する。典型的には、二次抗体は、抗−IgG又は抗−IgMとなる。二次抗体は、通常、検出可能なマーカー、典型的には、例えばペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼなどの酵素的なマーカーを用いて標識し、検出可能な生成物、例えば、色素性、化学的発光性又は蛍光性生成物を産生する酵素の基質を加えることによって定量的検出を可能にする。当分野で公知の、検出可能な他の型の標識も使用できる。
【0054】
本発明は、疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーである抗体の検出方法に関する。本発明のこの特別な態様は、癌のマーカーを伴うワクチン接種以外のワクチンのチャレンジ又は免疫化プロトコルの結果として産生された抗体に関して試験するように設計されたアッセイは除くことが好ましい。したがって、本発明のこの態様に従ったアッセイは、ワクチン接種/免疫化の後の抗ウィルス抗体又は抗菌抗体の存在に関して試験するように設計されたアッセイは含まないことが好ましい。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、抗体は自己抗体であってよい。上記のように、「自己抗体」という用語は、抗原が実際には個体の中で発生しているにもかかわらず、個体の免疫系が外来として認識する抗原を対象とする天然に存在する抗体を指す。自己抗体は、疾患細胞によって、又は疾患の過程において産生された、天然に存在するタンパク質の変化形態を対象とする抗体を含む。タンパク質の変化形態は個体の中で発生するが、個体の免疫系によって「非自己」としてみなされることがあり、それ故に、変化したタンパク質に対して免疫学的に特異的な自己抗体の形態で、その個体の中で免疫応答を誘発する。このようなタンパク質の変化形態は、例えば、場合により二次、三次又は四次構造に変化を伴う変化したアミノ酸配列、短縮型、スプライス変異体、変化した糖鎖などを有する突然変異体を含み得る。他の実施形態において、自己抗体は、疾患状態において、例えば、遺伝子増幅又は異常な転写制御の結果として、過剰発現したタンパク質を対象とし得る。通常は、免疫系の細胞が有意な量では遭遇しないタンパク質の過剰発現は、自己抗体の産生をもたらす免疫応答を誘発し得る。尚さらなる実施形態において、自己抗体は、疾患状態において発現するようになった、胎児型のタンパク質を対象とし得る。免疫系が機能する前の発達の早期にのみ正常に発現する胎児性タンパク質が、疾患状態において発現するようになった場合、胎児型は免疫系によって「外来」として認識されることがあり、自己抗体の産生をもたらす免疫応答を誘発し得る。
【0056】
一実施形態において、抗体は、腫瘍マーカータンパク質に特異的な自己抗体であってよく、より具体的には「癌関連」抗腫瘍自己抗体であってよい。
【0057】
「癌関連」抗腫瘍自己抗体という用語は、癌の疾患状態において選択的に発現する腫瘍マーカータンパク質の形態に存在するエピトープを対象とする自己抗体を指す。このような自己抗体の存在が、癌の疾患状態又は無症候性患者における癌に対する素因の特徴である。
【0058】
好ましい適用において、本発明の方法は、ヒト対象又は患者に由来する試験試料において癌関連抗腫瘍自己抗体の存在を検出するために使用され(本方法は、他の非ヒトの哺乳動物に由来する試験試料についても使用できるが)、最も好ましくは、in vitroのイムノアッセイの形態をとり、対象/患者から採取した体液の試料を含む試験試料の2種以上の希釈液について実施されるであろう。体液の試料は、任意の適切なバッファーで希釈でき、長期保存のため、又は試験前に処理され得る。
【0059】
in vitroのイムノアッセイは、非侵襲的であり、「危険性のある」個体のスクリーニングにおいてなどの疾患発症の前、又は疾患の過程を通してのいずれかの、患者において自己抗体の産生のプロフィールを作成することが必要であると思われるたびに反復可能である(本方法の好ましい適用に関しては、以下にさらに述べる)。
【0060】
特定の、しかし非限定の実施形態において、本発明の方法は、それぞれが、同じ又は関連する腫瘍マーカータンパク質(例えば、異なるアイソタイプ又は1つの遺伝子によりコードされる変異体)の異なるエピトープに、又は異なる腫瘍マーカータンパク質(異なる遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する)のエピトープに特異性を有する、2種以上の自己抗体を(同時に)検出するためのイムノアッセイを含み得る。これらの方法は、典型的には2種以上の抗原セットのパネル使用を含み、上記のように抗原セットは、同じ腫瘍マーカータンパク質の異なるエピトープもまた含むことができるが、各抗原セットは、通常異なる腫瘍マーカータンパク質(本文脈において異なるは、異なる遺伝子の産物であるタンパク質を意味する)に由来する。抗原の「セット」は、本発明の方法において、異なる量/濃度で試験される単一の抗原を指す。これ以降「パネルアッセイ」と称し得るこれらの方法は、2種以上の抗原セットのパネルを利用して、腫瘍又は他の発癌性/腫瘍性変化に対する個体の全免疫応答をモニターする。それ故に、これらの方法は、所与の個体の免疫応答の「プロフィール」を検出し、どの腫瘍マーカーが自己抗体の産生をもたらす免疫応答を誘発するかを示唆する。2種以上の異なる腫瘍マーカーに対する自己抗体の産生をモニターするための、2種以上の抗原のパネルの使用は、単一のマーカーに対する自己抗体の検出より一般的に感度が高く、偽陰性をもたらす頻度がかなり低い(国際公開第99/58978号パンフレット及び国際公開第2004/044590号パンフレットを参照されたい、これらの内容は参照によりその全体を本明細書に組込む)。
【0061】
したがって、非限定的な実施形態において、本発明は、哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の2種以上の抗体を検出する方法であって、前記抗体の少なくとも1種が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーであり、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)試験試料希釈液を、2種以上の抗原セットと接触させるステップであり、前記抗原セットのそれぞれ1種が、試験試料中の検出される前記抗体の1種に特異的であり、各抗原セットが複数の異なる量の同じ抗原を含むステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原セットにおける各抗原量に対する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液と各抗原セットに関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、このアッセイに使用した抗原セットのいずれか1種と反応性である抗体が試験試料中に存在することが、試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液とその抗原セットに関する、一般的なS字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法を提供する。
【0062】
本方法の一実施形態において、前記2種以上の抗体それぞれが疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーである、しかしながら、疾患マーカー抗原に関する交差滴定アッセイと、同じ試験試料中の、疾患マーカーである、又は疾患マーカーでない可能性がある任意の他の型の抗体に関する交差滴定アッセイとを組み合わせることも本発明の範囲内である。
【0063】
どちらにしても、試験試料中に関連抗体が存在するか否かの判定は、試験における異なる抗原それぞれについての異なる抗原濃度それぞれにおいて観察される特異的結合の量に基づく、言いかえれば各抗原に関する単一の濃度で読み取るのではなく各抗原の集合的評価に基づく。それ故に、患者の試料中の2種以上の抗体の存在に基づく、疾患状態又は疾患感受性の有無の判定は、各抗原に関するこれらの集合的評価に基づくことができる。好ましくは、この判定は、試験において存在する、任意の又はすべての抗原に関する少なくとも2種の異なる試験試料希釈液に関する、一般的なS字型又はシグモイド曲線の表示に基づいて実施される。
【0064】
疑念を回避するために、抗体の検出のための単一の型の抗原の使用に基づくアッセイを、本明細書中で「シングルマーカーアッセイ」と称し、一方、2種以上の抗原パネルの使用に基づくアッセイを「パネルアッセイ」と称することができる。
【0065】
パネルアッセイ法の好ましい実施形態において、アッセイにおいて検出された抗体の少なくとも1種及び好ましくは全てが、腫瘍マーカータンパク質と反応性の自己抗体である。
【0066】
本発明に従った交差滴定アッセイは、適切な抗原がシングルマーカーアッセイとして、又はパネルアッセイの要素として調製され得る、任意の腫瘍マーカータンパク質に対する自己抗体の検出における使用に原則的に適用できる。特に、本方法は、以下の腫瘍マーカータンパク質のいずれか1種又は2種以上の任意の組合せに対して免疫学的に特異的な自己抗体を、対応する抗原の使用によって、検出/測定するために適合できる:
【0067】
上皮成長因子受容体タンパク質EGFR(Downward他、(1984)Nature.307:521〜527;Robertson他、(2001)Archives of Pathology and Laboratory Medicine 126;177〜81);
【0068】
MUC1(Batra,S.K.他、(1992)Int.J.Pancreatology.12:271〜283);
【0069】
Myc(c−myc)(Blackwood,E.M.他、(1994)Molecular Biology of the Cell 5:597〜609);
【0070】
p53(Matlashewski,G.他.(1984)EMBO J.3:3257〜3262;Wolf,D.他、(1985)Mol.Cell.Biol.5:1887〜1893);
【0071】
ras(又はRas)(Capella,G.他、(1991)Environ Health Perspectives.93:125〜131);
【0072】
BRCA1(Scully,R.他、(1997)PNAS 94:5605〜10);
【0073】
BRCA2(Sharan,S.K.他、(1997)Nature.386:804〜810);
【0074】
APC(Su,L.K.他、(1993)Cancer Res.53:2728〜2731;Munemitsu,S.他、(1995)PNAS 92:3046〜50);
【0075】
CA125(Nouwen,E.J.他、(1990)Differentiation.45:192〜8;Norum LF,他、Tumour Biol.2001 Jul〜Aug;22(4):223〜8;Perey L,他、Br J Cancer.1990 Oct;62(4):668〜70;Devine PL,他、Anticancer Res.1992 May〜Jun;12(3):709〜17);
【0076】
PSA(Rosenberg,R.S.他、(1998)Biochem Biophys Res Commun.248:935〜939);
【0077】
癌胎児性抗原CEA(Duffy,M.J.(2001)Clin Chem,Apr 47(4):624〜30);
【0078】
CA19.9(Haga,Y.他、(1989)Clin Biochem(1989)Oct 22(5):363〜8);
【0079】
NY−ESO−1(癌/精巣抗原;Chen,Y.−T.他、Proc.Nat.Acad.Sci.94:1914〜1918,1997);
【0080】
PSMA(前立腺特異的膜抗原;Israeli,R.S.他、Cancer Res.53:227〜230,1993);
【0081】
PSCA(前立腺幹細胞抗原;Reiter,R.E.他、Proc.Nat.Acad.Sci.95:1735〜1740,1998);
【0082】
EpCam(上皮細胞接着分子;Szala,S.他、Proc.Nat.Acad.Sci.87:3542〜3546,1990);
【0083】
HER2−neu(c−erbB2としても知られる)(Coussens,L.他、Science 230:1132〜1139,1985);
【0084】
EDC6、これはHER2の細胞外ドメインの別称である。
【0085】
CAGE(Jager D,他、Cancer Res.1999 Dec 15;59(24):6197〜204;Mashino K,他、Br J Cancer.2001 Sep 1;85(5):713〜20);
【0086】
サイトケラチン(Moll R,他、Cell.1982 Nov;31(1):11〜24;Braun S,他、N Engl J Med.2000;342:525〜533)。「サイトケラチン」という用語は、対応する自己抗体が腫瘍マーカーとして機能する、サイトケラチンファミリーの任意の一員を指すために、総称的に使用される。好ましい例は、サイトケラチン5/14、8/18(Kim MJ,Ro JY,Ahn SH,Kim HH,Kim SB.,Gong G Hum Pathol.2006 Sep;37(9):1217〜26.Epub 2006 Jul 18);サイトケラチン7、20(Vang R,Gown AM,Barry TS,Wheeler DT,Yemelyanova A,Seidman JD,Ronnett BM.Am J Surg Pathol.2006 Sep;30(9):1130〜1139);及びサイトケラチン8/18/19(Barak V,Goike H,Panaretakis KW,Einarsson R.Clin Biochem.2004 Jul;37(7):529〜40)である。
【0087】
リカバリン(Maeda A,他、Cancer Res.2000 Apr 1;60(7):1914〜20);
【0088】
カリクレイン(Kim H,他、Br J Cancer 2001;84:643〜650;Yousef GM,他、Tumor Biol 2002;23:185〜192)。「カリクレイン」という用語は、対応する自己抗体が腫瘍マーカーとして機能する、カリクレインファミリーの任意の一員を指すために、総称的に使用される。好ましい例は、カリクレイン1から15(KLK1〜15/Hk1〜Hk15)(Obiezu CV,Diamandis EP.Cancer Lett.2005 Jun 16;224(1):1〜22;Diamandis EP,Yousef GM.Clin Chem.2002 Aug;48(8):1198〜205)、特にKLK4〜7(Prezas P,Arlt MJ,Viktorov P,Soosaipillai A,Holzscheiter L,Schmitt M,Talieri M,Diamandis EP,Kruger A,Magdolen V.Biol Chem.2006 Jun;387(6):807〜11;Diamandis EP,Yousef GM,Luo LY,Magklara A,Obiezu CV.The new human kallikrein gene family:implications in carcinogenesis.Trends Endocrinol Metab.2000 Mar;11(2):54〜60.Review.);
【0089】
アネキシン(Hudelist G,他、Brest Cancer Res Treat.2004 Aug;86(3):281〜91;.Gerke,V.&Moss,S.E.Physiological Reviews 2002 82:331〜371)。「アネキシン」という用語は、対応する自己抗体が腫瘍マーカーとして機能する、アネキシンファミリーの任意の一員を指すために、総称的に使用される。好ましい例は、アネキシン1及び2(Pedrero,J.M.G.,Fernandez,M.P.,Morgan,O.,Zapatero,A.H.,Gonzalez,M.V.,Nieto,C.S.&Rodrigo,J.P.American Journal of Pathology 2004 164(1):73〜79;Brichory,F.M.,Misek,D.E.,Yim,A.,Krause,M.C.,Giordano,T.J.,Beer,D.G.,Hanash,S.M.2001 Medical Sciences 98(17):9824〜9829)並びにアネキシンXI−A(Fernandez−Madrid,F.,Tang,N.,Alansari,H.,Granda,J.L.,Tait,L.,Amirikia,K.C.,Moroianu,M.,Wang,X.&Karvonen,R.L.Cancer Research 2004 64:5089〜5096)である;
【0090】
α−フェトプロテイン(AFP)(Stiller D,他、Acta Histochem Suppl.1986;33:225〜31);
【0091】
GRP78(Block TM,他、Proc Natl Acad Sci USA.2005 Jan 18;102(3):779〜84;Hsu WM,他、Int J Cancer.2005 Mar 1;113(6):920〜7);
【0092】
マンマグロビン(Zehentner BK,他、Clin Chem.2004 Nov;50(11):2069〜76;Zehentner BK,Carter D.Clin Biochem.2004、Apr;37(4):249〜57);
【0093】
raf(Callans LS.他、Ann Surg Oncol.1995、Jan;2(1):38〜42;Pratt MA,他、Mol Cell Biochem.1998、Dec;189(1−2):119〜25);
【0094】
β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン b−HCG(Ayala AR,他、Am J Reprod Immunol.1983、Apr−May;3(3):149〜51;Gregory JJ Jr,他、Drugs.1999 Apr;57(4):463〜7);
【0095】
4−5抗原(Krause P,他、J Immunol Methods.2003、Dec;283(1−2):261〜7);
【0096】
NY−BR−1(Jage D,Stockert E,Gure AO,Scenlan MJ,Karbach J,Jage E,Knuth A,Old LJ,Chen YT.(2001)Identification of a tissue−specific putative transcription factor in breast tissue by serological screening of a breast cancer library.Cancer Res 61(5):2055〜61);
【0097】
リビン(Kasof GM,Gomes BC(2001)Livin,a novel inhibitor of apoptosis protein family.J Biol Chem,276(5):3238〜46);
【0098】
サバイビン(Ambrosini G,Adida C,Altieri DC(1997)A novel anti−apoptois gene,survivin,expressed in cancer and lymphoma.Nature Med,3(8):917〜21);
【0099】
MUC2(糖タンパク質)
Griffiths B,Matthews DJ,West L,Attwood J,Povey S,Swallow DM,Gum JR Kim YS(1990)Assignment of the polymorphic intestinal mucin gene MUC2 to chromosome−11p15.Ann Hum Genet,54:277〜85.
【0100】
エンドスタチン(Standker L,Schrader M,Kanse SM,Jurgens M,Forssmann WG,Preissner KT(1997)Isolation and characterisation of the circulating form of human endostatin.FEBS Lett,420(2−3):129〜33;
【0101】
Bcl−2(Tsujimoto Y,Croce CM(1986)Analysis of the structure,transcripts,and protein products of Bcl−2,the gene involved in human follicular lymphoma.PNAS USA,83(14):5214−8);
【0102】
BIRC7(Wu Hy,Ma Yh,Zhu Yk,Shen Y,Gu CM,Ye ZY,Lin HL(2006)The expression of BIRC7 protein and mRNA in non−Hodgkin’s lymphoma.Leukemia&Lymphoma 47(6):1110〜6);
【0103】
熱ショックタンパク質(熱ショックタンパク質という用語は、対応する自己抗体が腫瘍マーカーとして機能する、任意の熱ショックタンパク質を指すために、総称的に使用される)は排他的ではないが、HSP70(Tauchi K,Tsutsumi Y,Hori S,Yoshimura.S,Osamura Ry,Watanabe K(1991)Expression of heat shock protein−70 and c−myc protein in human breast−cancer−an immunohistochemical study.Jap J Clin Oncol,21(4):256〜63);HSP27(Differential expression of alphaB−crystallin and Hsp27−1 in anaplastic thyroid carcinomas because of tumor−specific alphaB−crystallin gene(CRYAB)silencing.Mineva I,Gartner W,Hauser P,Kainz A,Loffler M,Wolf G,Oberbauer R,Weissel M,Wagner L.Cell Stress Chaperones.2005 Autumn;10(3):171〜84);及びCRYAB(Seitz S,Korsching E,Weimer J,Jacobsen A,Arnold N,Meindl A,Arnold W,Gustavus D,Klebig C,Petersen I,Scherneck S.Genes Chromosomes Cancer.2006 Jun;45(6):612〜27)を含む。
【0104】
No55(Fossa A,Siebert R,Aasheim HC,Maelandsmo GM,Berner A,Fossa SD,Smeland EB Gaudernack G(2000)Identification of a nucleolar protein No55 as a tumour−associated auto−antigen in patients with prostate cancer.Br J Cancer 83(6):743〜9).
【0105】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)(Booyse FM,Osikowicz G,Feder S,Scheinbuks J(1984)Isolation and characterisation of a urokinase−type plasminogen activator(MR=54,000)from cultures human epithelial cells indistinguishable from urinary urokinase.J Biol Chem 259(11):7198〜205);
【0106】
テトラネクチン(プラスミノーゲン結合タンパク質)(Clemmensen I,Petersen LC,Kluft C(1986)Purification and characterization of a novel,Oligomeric,Plasminogen Kringle 4 binding−protein from human plasma −Tetranectin.Eur J Biochem 156(2):237〜333);
【0107】
プロラクチン(Riddle O,bates RW,Dykshorn SW(1933)The preparation,identification and assey of prolactin−A hormone of the anterior pituitary.Am J Physiol 105(1):191〜216);
【0108】
オステオポンチン(Butler WT,Martin TJ,Raisz LG,Slavkin HC Termine JD,Rodan GA,Veis A(1988)Osteopontin−Structure and biological activity.CBA Foundation Symposia 136:203〜206;Kiefer MC,Bauer DM,Barr PJ(1989)The CDNA and derived amino−acid sequence for human Osteopontin.Nuclei Acids Res 17(8):3306〜3306);
【0109】
ヒト精巣特異的タンパク質(HE4)Kirchoff C,Habben I,Ivell R,Krull N(1991)A major human epididymis−specific cDNA encodes a protein with sequence homology to extracellular proteinase−inhibitors.Biology of Reproduction 45(2):350〜357);
【0110】
腫瘍関連トリプシン阻害因子(TATI)(Huhtala ML,Kahanpaa K,Seppala M,Halila H,Stenman UH(1983)Excretion of a tumour associated trypsin−inhibitor(TATI)in urine of patients with Gynecological Malignancy.Int J Cancer 31(6):711〜714,1983;
【0111】
インヒビン(Chari S,Hopkinson CRN,Fritze E,Sturm G,Hirschhauser C.(1977)Partial−Purification of Inhibin from Human Testicular Extracts.ACTA Endocrinologia 85(Suppl 212):215〜219);
【0112】
ビメンチン(Yang YC,Li X,Chen W.Acta Biochim Biophys Sin(Shanghai).2006 Sep;38(9):602〜10);
【0113】
Cox−1及びCox−2(Xu Z,Choudhary S,Voznesensky O,Mehrotra M,Woodard M,Hansen M,Herschman H,Pilbeam C.Cancer Res.2006 Jul 1;66(13):6657〜64;Cervello M,Montalto G.World J Gastroenterol.2006 Aug 28;12(28):5113〜5121)。
【0114】
本発明が、上記の特異的腫瘍マーカーに対する自己抗体の検出に限定する意図のものではなく、単なる例であることは理解されるであろう。
【0115】
(シングルマーカー又はパネルアッセイの形態における)抗腫瘍マーカー自己抗体の検出に基づく、本発明に従ったアッセイ方法は、様々な異なる臨床状況において用いることができる。具体的には、本方法は、特定の患者における使用のための、症候性又は無症候性のヒト対象における癌の検出又は診断に、癌と診断された患者の予後の評価に、療法に対する応答の予測に、患者における癌又は他の腫瘍性疾患の進行のモニターに、無症候性ヒト対象における早期腫瘍性又は早期発癌性変化の検出に、癌の発症の危険性が増大している対象を特定するため、又は癌の存在を診断するためのどちらかのための、無症候性ヒト対象集団のスクリーニングに、抗癌治療(例えば、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法)に対する癌患者の応答の予測に、抗癌治療(例えば、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法)に対する癌患者の応答のモニターに、存在する癌の量を減少させるため抗癌治療を受けたことがある、癌を有すると以前に診断された患者における再発疾患の検出に、又は抗癌治療(例えば、ワクチン、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法)の選択に使用できる。
【0116】
本発明者らは、癌関連自己抗体のレベルが疾患状態と正相関を示すことを一般的に観察している(国際公開第99/58979号パンフレットもまた参照されたい、この内容は参照により本明細書に組込む)。したがって、本発明の方法が臨床適用で使用される場合、適切な対照と比較した抗腫瘍マーカー自己抗体のレベルの上昇は、本明細書中で特に明記しない限り、癌の疾患状態を示唆するものと一般的に解釈される。
【0117】
イムノアッセイを、ヒト個体(癌に関して症候性又は無症候性のいずれか)において癌の診断に使用する場合、「正常な」対照個体と比較して自己抗体レベルが上昇していることが、個体が癌を有することを示唆するものと通常解釈される。「正常な」対照個体は、臨床的、画像的及び/又は生化学的基準に基づく癌の診断を受けたことがない、年齢の合った対照であることが好ましいであろう。本方法の特に有用な適用は、癌の診断の実施又は確認に役立てるための、すでに癌の症状を示す(例えば、臨床的、画像的及び/又は生物学的基準に基づいて)ヒト対象の試験においてである。
【0118】
イムノアッセイを抗癌治療(例えば、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法)に対する癌患者の応答の予測に使用する場合、「正常な」対照個体と比較して自己抗体レベルが上昇していることが、個体が抗癌治療に応答し得るか否かを示唆するものと解釈できる。「正常な」対照個体は、臨床的、画像的及び/又は生化学的基準に基づく癌の診断を受けたことがない、年齢の合った対照であることが好ましいであろう。上記の治療それぞれに関して、対照と比較した自己抗体レベルと、治療の成功の可能性との関係は、自己抗体の状況が治療の間中モニターされた患者において、このような治療の結果を観察することによって確立できる。あらかじめ確立された関係を、その後自己抗体の状況の評価に基づいて、所与の患者における各治療の成功の可能性を予測するために使用できる。
【0119】
イムノアッセイを、患者において癌又は他の腫瘍性疾患の進行をモニターするために使用する場合、「正常な対照」と比較して自己抗体レベルが上昇していることが、患者における癌の存在を示唆するものと解釈される。「正常な対照」は、好ましくは、臨床的、画像的及び/又は生化学的基準に基づく癌の診断を受けたことがない、年齢の合った対照個体に存在する自己抗体のレベルであってよい。或いは、「正常な対照」は試験下の特定の患者に関して確立された「ベースライン」のレベルであってよい。「ベースライン」のレベルは、例えば、癌の初回診断又は再発癌の診断のいずれかが為された時に存在する自己抗体のレベルであってよい。ベースラインレベルを超えていくらか上昇することから、患者に存在する癌の量が増加したことを示唆するものと解釈され、一方ベースラインを下回りいくら減少することから、患者に存在する癌の量が減少したことを示唆するものと解釈される。「ベースライン」の値はまた、例えば、新しい治療を始める前のレベルであってもよい。自己抗体のレベルの変化は、治療の有効性を示唆するものと解釈することになる。治療に対する陽性応答を示唆する「変化」(すなわち、上昇と減少)の方向は、治療の正確な性質に依存する。任意の所与の治療に関して、陽性結果を示唆する自己抗体レベルの「変化」の方向は、例えば、治療に対する応答の、他の臨床的又は生化学的指標と比較して自己抗体レベルをモニターすることによって容易に判定できる。
【0120】
イムノアッセイを、無症候性ヒト対象集団のスクリーニングに使用する場合、これは、癌発症の危険性が増大している対象を特定することであってよく、「正常な」対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇した個体を、癌発症の「危険性」があるとして特定する。「正常」対照個体は、癌発症の素因、又は癌発症の危険性の有意な上昇が全くないと特定される、年齢の合った対照であることが好ましいであろう。年齢そのものが主要な危険因子である場合は例外である。
【0121】
イムノアッセイを、無症候性ヒト対象集団のスクリーニングにおいて使用する場合、これは、癌をすでに発症している対象における癌の診断であってよく、「正常な」対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇した個体を、癌又はいくつかの腫瘍性形態の変化を有すると判定する。「正常」対照個体は、癌発症の素因、又は癌発症の危険性の有意な上昇が全くないと特定される、年齢の合った対照であることが好ましいであろう。年齢そのものが主要な危険因子である場合は例外である。或いは、「正常対照」は、試験下の特定の患者に対して確立された「ベースライン」レベルであってよい。「ベースライン」のレベルは、例えば、患者をまず試験し、「正常対照」集団よりレベルが上昇していないことが見いだされた場合に存在する自己抗体のレベルであってよい。その後のこのベースライン測定に対するいくらかの上昇から、その個体における癌の存在を示唆するものと解釈される。それ故に、このようなベースライン試験を経た個体は、将来の自己抗体測定に関するそれら自身の対照になる。
【0122】
イムノアッセイを抗癌治療(例えば、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法)に対する癌患者の応答のモニターに使用する場合、治療後の自己抗体のレベルに変化があることから、患者がその治療に正に応答したことを示唆するものと解釈される。治療開始前に採取された自己抗体のベースラインレベルは、治療が、自己抗体レベルに上昇又は減少をもたらすかどうかを判定するための比較目的のために使用できる。自己抗体レベルの変化から、療法の有効性を示唆するものと解釈される。治療に対する陽性応答を示唆する「変化」(すなわち、上昇と減少)の方向は、治療の正確な性質に依存するであろう。任意の所与の治療に関して、陽性結果を示唆する自己抗体のレベルの「変化」の方向は、例えば、治療に対する応答の他の臨床的又は生化学的指標との比較において自己抗体レベルをモニターすることによって、容易に判定できる。
【0123】
本発明の方法は、基本的に任意の公知の抗癌治療に対する個体の応答の予測及び/又はモニターに使用できる。これは、例えば、モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体が患者に注入されるヒト抗体療法、非限定的具体例である抗成長因子抗体のHerceptin(商標)(Baselga,J.,D.Tripathy他、J Clin Oncol.,14(3),737〜744,1996)を用いた治療を含む。天然自己抗体応答の存在が、人工的に注入された治療抗体を用いた治療の有効性を増強又は阻害することがある。本発明の方法を使用して、抗体療法を含む任意の抗癌治療に対する応答と、治療過程の前及び治療過程にわたって、任意の患者又は患者グループの自己抗体の天然レベルとを相関させることが可能である。その後、この情報を、今度は、他の患者(又は反復治療の場合は同じ患者)が同じ治療に対してどのように応答するかを予測するために使用できる。
【0124】
イムノアッセイを、再発疾患の検出に使用する場合、「正常対照」と比較して患者において自己抗体のレベルが上昇していることが、疾患が再発したことを示唆するものと解釈される。「正常対照」は、対照個体、好ましくは、臨床的、画像的及び/又は生化学的基準に基づく癌の診断を受けたことがない、年齢の合った対照個体に存在する自己抗体のレベルであってよい。或いは、「正常対照」は、試験下の特定の患者に関して確立された「ベースライン」レベルであってよい。「ベースライン」レベルは、例えば、臨床的、画像的及び/又は生化学的基準に基づく、疾患からの回復期に存在する自己抗体のレベルであってよい。
【0125】
本発明のアッセイ方法は、多くの異なる型の癌の検出に適用でき、これらの例は、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌及び卵巣癌である。本アッセイは、従来のスクリーニング及び調査の方法を補足できる。例えば、原発性乳癌の場合、自己抗体に関する免疫測定は、臨床医に警告を発し、X線写真上疑わしいと思われないマンモグラムでの小型の病変に生検を行う、又は乳腺画像化を実施する、又は計画より早く画像化を繰り返すために使用できる。臨床において、本発明のアッセイ方法は、成功がオペレーターに依存し得る、現在の画像化技術(すなわち、マンモグラフィー及び超音波)と比較してより客観的及び再現可能であることが期待される。
【0126】
「パネルアッセイ」は、特定の臨床適用を考慮して調整できる。少なくともp53及びHER2−neu(c−erbB2)に対する自己抗体の検出のための抗原のパネルは、多くの癌型に特に有用であり、任意選択で、検出されるべき特定の癌又は特定の癌の病期に関連することが公知である他のマーカーを補足できる。例えば、乳癌に関しては、パネルはMUC1及び/又はc−myc及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はマンマグロビン及び/又はEpCam及び/又はEGFR及び/又はサイトケラチン及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はアネキシン11A及び/又はサバイビンをさらに含むことができ、一方膀胱癌に関しては、パネルは、任意選択でMUC1及び/又はc−myc、結腸直腸癌に関しては、ras及び/又はAPC及び/又はMUC2、前立腺癌に関しては、PSA及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はp62、卵巣癌に関しては、BRCA1及び/又はBRCA2及び/又はCA125及び/又はβ−HCG及び/又はカリクレイン及び/又はAPC並びに肺癌に関しては、リビン及び/又はサバイビン及び/又はEpCam及び/又はリカバリン及び/又はサイトケラチン及び/又はl−myc及び/又はCEA及び/又はMUC1及び/又はリカバリン、肝細胞癌に関しては、AFP及び/又はβ−HCG及び/又はgp78及び/又はp62及び/又はサバイビンを含むことができる。p53又はHER2−neuが必ずしも必須ではない他の好ましい実施形態がある。
【0127】
乳癌の場合、適切なパネルは以下から選択できる:
p53及びMUC1と、任意選択でHER2−neu及び/又はc−myc,及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
p53及びc−mycと、任意選択でHER2−neu及び/又はMUC1及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
p53及びBRCA1と、任意選択でc−erB2及び/又はMUC1及び/又はc−myc及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
p53及びBRCA2と、任意選択でHER2−neu及び/又はMUC1及び/又はc−myc及び/又はBRCA1及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
HER2−neu及びMUC1と、任意選択でp53及び/又はc−myc及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
HER2−neu及びc−mycと、任意選択でp53及び/又はMUC1及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
HER2−neu及びBRCA1と、任意選択でp53及び/又はMUC1及び/又はc−myc及び/又はBRCA2及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam;
HER2−neu及びBRCA2と、任意選択でp53及び/又はMUC1及び/又はc−myc及び/又はBRCA1及び/又はPSA及び/又はNY−ESO−1及び/又はNY−BR−1及び/又はEpCam及び/又はマンマグロビン及び/又はサバイビン及び/又はアネキシン11A及び/又はサイトケラチン及び/又はEpCam。
このようなパネルは、p53及び/又はc−myc及び/又はNY−ESO−1及び/又はBRCA2もまた含むことができる。
【0128】
結腸直腸癌の場合、適切なパネルは、例えば以下から選択することができる:
p53及びrasと、任意選択でHER2−neu及び/又はAPC及び/又はMUC2;
p53及びAPCと、任意選択でHER2−neu及び/又はRas及び/又はMUC2;
Ras及びAPCと、任意選択でp53及び/又はHER2−neu及び/又はMUC2。
このようなパネルは、CEA及び/又はCA19−9もまた含むことができる。
【0129】
前立腺癌の場合、適切なパネルは、例えば以下から選択することができる:
p53及びPSAと、任意選択でBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はHER2−neu及び/又はp62;
HER2−neu及びPSAと、任意選択でp53及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はp62。
このようなパネルは、PSMA及び/又はPSCA及び/又はカリクレインもまた含むことができる。
【0130】
卵巣癌の場合、適切なパネルは、例えば以下から選択することができる:
p53及びCA125と、任意選択でHER2−neu及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はAPC;
HER2−neu及びCA125と、任意選択でp53及び/又はBRCA1及び/又はBRCA2及び/又はAPC。
このようなパネルは、アネキシン及び/又はCAGE及び/又は4−5もまた含むことができる。
【0131】
肺癌の場合、適切なパネルは、
p53及びNY−ESO−1、任意選択でさらなるマーカー;
HER2、アネキシン、リビン、サバイビン、リカバリン、MUC1、c−myc、l−myc、CEA、β−HCG、CAGE及び4−5から選択することができる。
【0132】
本発明の方法を、異なるタンパク質に由来する2種以上の腫瘍マーカー抗原に基づく「パネルアッセイ」を実施するために使用する場合、パネル内の抗原の少なくとも1種は、複数の異なる抗原量に対する2種以上の試験試料希釈液の試験に基づき、使用した試験試料希釈液それぞれに関して1つの滴定曲線の系列を作成する、本発明に従った交差滴定アッセイで試験しなければならない。パネルを形成する各抗原は、本発明の交差滴定アッセイに従って試験し、滴定曲線の系列は、パネル内の個々の抗原それぞれに関してプロット/計算することが好ましい。
【0133】
本発明は、少なくとも1種の抗腫瘍マーカー抗体の検出のための交差滴定アッセイが、同じ患者試料の中の少なくとも1種の腫瘍マーカータンパク質(交差滴定アッセイに使用する抗原と関連があっても関連がなくてもよい)を検出するために設計されたアッセイと組み合わせて使用できることもまた企図する。それ故に、抗腫瘍マーカー自己抗体のためのアッセイ及び腫瘍マーカータンパク質のためのアッセイは、単一の患者試料について並行して実施できる。
【0134】
さらなる実施形態において、本発明のイムノアッセイ法は、特定の患者に使用するための抗癌ワクチンの選択に使用できる。この実施形態において、患者から採取した体液試料は、異なる腫瘍マーカータンパク質それぞれに対応する2種以上の抗原のパネルを使用して、異なる腫瘍マーカータンパク質それぞれに対する患者の免疫応答の相対的強度を判定するために、試験する。所与の腫瘍マーカータンパク質又は複数の腫瘍マーカータンパク質に対する「免疫応答の強度」は、イムノアッセイを使用して検出されるその腫瘍マーカータンパク質に特異的な癌関連自己抗体の存在及び/又は量によって示唆され、自己抗体を定量する場合、癌関連自己抗体のレベルが高いほど、免疫応答の強度が強い。患者において、最も強い免疫応答又は強い応答を誘発する(すなわち、自己抗体の最も高いレベル)として特定された腫瘍マーカータンパク質又は複数の腫瘍マーカータンパク質は、その後患者に使用するための抗癌ワクチンの基礎原料を形成するために選択される。
【0135】
本発明の方法の有用性は、抗腫瘍自己抗体の検出に限定されるものではないが、本アッセイはこの目的に特に有用である。癌は、自己抗体の検出を疾患状態/疾患感受性のための生物学的マーカーとして使用できる疾患の単に1つの例である。本発明者らは、実質的有利性が、患者試料の中の自己抗体を検出するための交差滴定の取り組みの使用によって得られることを示した。したがって、同様の有利性が、癌以外の疾患のための生物学的マーカーである自己抗体を検出するための交差滴定の取り組みの使用によって得られるであろうと結論することは妥当である。したがって、本方法は、自己抗体の産生に関連することが示されている(又は示され得る)任意の疾患において、疾患状態又は疾患感受性のための生物学的マーカーとなる、任意の自己抗体の検出に適用できる。
【0136】
本発明の方法の他の適用は、限定するものではないが、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎)、自己免疫性胃炎(例えば、悪性貧血)、自己免疫性副腎炎(例えば、アジソン病)、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病(例えば、I型糖尿病)又は重症筋無力症などの自己免疫疾患の生物学的マーカーである自己抗体の検出、並びにいずれかの器官の機能不全又は不全をもたらす腎臓又は肝臓の疾患に関する患者試料のスクリーニング、並びに疾患組織(移植後in−situに残っている)に対する、又は移植組織に対する抗体の存在を検出するための、移植後の患者試料のスクリーニングを含む。
【0137】
本発明のさらなる態様において、哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の抗体を検出する方法であって、前記抗体が前記哺乳動物対象に導入された外来物質を対象とし、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を、前記抗体に特異的な抗原の複数の異なる量と個別に接触させるステップと、
(b)ステップ(a)で使用した試験試料と抗原の各組合せに関する、抗体と抗原の特異的結合の量を検出するステップと、
(c)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、このアッセイに使用した抗原と反応性である抗体が試験試料中に存在することが、試験試料の少なくとも2種の異なる濃度に関して一般的なS字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと、
を含む方法を提供する。
【0138】
本発明のこの態様において、交差滴定方法論は、哺乳動物対象、及び好ましくはヒト対象の、前記対象に導入された任意の外来物質に対する免疫応答を評価するために使用できる。
【0139】
一実施形態において、外来物質は、例えば薬剤又はプロドラッグ、ヒト抗体療法薬又はワクチンなどの治療薬であってよい。本発明の方法は、患者に対する治療薬の投与が、治療薬のエピトープ又は治療薬と共に投与される送達媒体、賦形剤、担体などの成分に特異的な抗体の産生をもたらす免疫応答を誘発するかどうかを評価するために使用できる。
【0140】
本発明のこの実施形態に使用する抗原は、合成の又は天然に存在するものでよい。
【0141】
治療薬の正確な性質は本発明を限定するものではない。非限定的実施形態において、本発明の方法は、合成小分子、天然に存在する物質、天然に存在し又は合成により作製された生物剤、又は任意選択で賦形剤、担体又は送達媒体と組み合わせて、前述の2種以上の任意の組合せに対する免疫応答を評価するために使用できる。
【0142】
有用な一実施形態において、本発明の方法は、治療薬又はワクチンの非標的部分に対する免疫応答を評価するために使用できる。「非標的」部分は、治療薬の場合、治療活性に直接貢献しない、又はワクチンの場合、宿主において抗体の産生を誘発するものではない、投与する治療薬又はワクチンの成分を意味する。非標的部分は、例えば、治療薬若しくはワクチンの精製を容易にするために存在でき、又は治療薬/ワクチンの送達、取り込み若しくは標的化を助けるために設計され得る。このような「非標的」部分の例は、限定するものではないが、ビオチン標識、ヒスチジンタグなどの、組換え的に発現するポリペプチドに共通に結合するリンカー又はマーカーを含む。
【0143】
本発明のこの態様の別の実施形態において、外来物質は、真菌、細菌、ウィルス又は寄生生物などの感染作用因子であってよい。
【0144】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照すると、さらに理解されるであろう。
【0145】
実施例1−自己抗体アッセイにおける抗原の最適血清及び抗原濃度(OSAAC)の滴定に関する一般的プロトコル
腫瘍マーカー抗原の試料は、国際公開第99/58978号パンフレットに記載のものに類似した方法に従った組換え発現によって調製できる。
【0146】
簡潔に言うと、対象となるマーカー抗原をコードするcDNAを、発現タンパク質の精製を助けるため、ビオチンタグ及び6×ヒスチジンタグをコードするように修飾されたpET21ベクター(Invitrogen)にクローン化した。得られたクローンを、適切な細菌宿主細胞(封入体において)において成長させ、細菌を溶解し、変性させ、発現した抗原をニッケルキレートアフィニティカラム(Hi−trap、Amershamから市販されている、製造業者のプロトコルに従った)を介して回収した。発現した抗原を適切なバッファーで透析することによって復元し、発現タンパク質の収率をSDS−PAGE、ウェスタンブロット及びELISAによって評価し、保存の前に定量した。明記しない限り、以下の実施例に使用した全抗原は、修飾pET21ベクターから組換え発現によって調製し、したがって、N末端ビオチン化タグ(pET21由来)及びC末端Hisタグを含む融合タンパク質として発現させた。
【0147】
マーカーcDNA(又はコードされたタンパク質)の番号に関するGenBankアクセッション番号は以下の通りである:
P53:B003596
c−myc:V00568
HER2(erbB−2)アイソフォームa:NP_004439
【0148】
1.抗原を、0.1M炭酸バッファーで適切な濃度に希釈し、その後、片対数滴定範囲を形成するように系列希釈した(表1を参照されたい)。抗原希釈液を、50μl/ウェルで、Falconのマイクロタイタープレートの列に、プレートレイアウトに従って、Tecan Evolyzerのピぺットステーションロボットを使用して分注した。プレートにふたをし、4℃において48時間保存した。
2.プレートを、PBS+0.1%ツィーン20で、自動プレートウォシャーを使用して1度洗浄し、その後ティッシュペーパーの上で軽くたたいて乾燥させた。
3.プレートを、高塩濃度インキュベーションバッファー(HSB、PBS+0.5MNaCl+0.1%カゼイン)を用いて、200μl/ウェルで90分ブロックした(ふたをして、4℃において保存)。
4.ブロッキングインキュベーションの間、血清試料を解凍し、ボルテックスにかけ、HSBで1/30から1/10,000の片対数系列に、室温において、チューブ内で系列希釈した。
5.プレートを空にし、ティッシュペーパーの上で軽くたたいて乾燥させた。希釈した血清試料を、50μl/ウェルでマイクロタイタープレートの全ウェルに、電動マルチチャンネルピペットを使用して分注し、片対数滴定範囲を形成した(表1を参照されたい)。プレートにふたをして、90分間室温において振とうさせながらインキュベートした。
6.洗浄ステップ:プレートを、PBS+0.1%ツィーン20で、自動プレートウォッシャーを使用して3回洗浄し、その後ティッシュペーパーの上で軽くたたいて乾燥させた。
7.ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIg(Jackson、HSBで1/10,000)を、50μl/ウェルでマイクロタイタープレートの全ウェルに分注した。HRP結合ウサギ抗マウスIg(HSBで1/1000)を、抗抗原抗体を含む対照ウェルに分注した。次いでプレートを室温において1時間、振とうさせながらインキュベートさせた。
8.プレートをステップ6のように洗浄した。
9.予め調製したTMB基質を、50μl/ウェルで加え、プレートをベンチで10分間インキュベートした。プレートを穏やかに軽く叩いて混合した。
10.ウェルの吸光度を、650nmにおいて、標準的プレートリーダーのプロトコルを使用して判定した。
【0149】
【表1】

【0150】
抗原滴定曲線を、血清希釈液の範囲にわたって、各試料に関するデュプリケートの平均値を使用して作成した。各血清希釈液に関する非特異的結合のレベルに対応する値は、各血清希釈液に関する抗原に結合しなかった値から、バックグラウンドレベル(1/10,000の血清及び抗原なし)を差し引くことによって計算した。その後、これをデュプリケートの各セットにおける非特異的結合を修正するために使用した。
【0151】
実施例2−原発性乳癌における自己抗体の検出
以下のデータは、原発性乳癌(PBC)における交差滴定自己抗体アッセイ(OSAAC)のパネルの感受性及び再現性を評価するためのパイロット試験から得た。この研究は、癌の兆候のない14例の女性由来の血清及び原発性乳癌を有する14例の女性由来の術前の血清試料を含んだ。正常及び癌の試料は、年齢を合わせた。
【0152】
アッセイは、抗原p53及びc−mycを使用して実施例1に示されたプロトコルに従って実施した。2例の正常試料(1例はp53に関する)は、血清及び抗原の濃度の範囲にわたって持続的な及び非常に高いレベルの自己抗体結合を示したため、研究から取り除かなければならなかった。
【0153】
図1は、交差滴定アッセイを血清中のp53及びc−myc自己抗体を測定するために使用した場合、得られる曲線の例を示す。いくつかの試料(例えば、試料17179及び18781)では、予想通りに、最も高濃度の血清が最も強いシグナルを示す滴定範囲を得たことが見られる。しかし、他の試料(例えば、試料19150及び18057)において、曲線は基本的に平坦であったが、血清濃度が上がるに従ってシグナルも増加した。これは、血清免疫グロブリンの非特異的結合によると考えられ、上記のような非特異的結合の是正によって補正した。
【0154】
自己抗体レベルは、試験抗原との結合に関する吸光度(650nm)から、非特異的結合に関する吸光度を減じて表した。標準的なカットオフを、正常グループの95パーセンタイル(平均+2標準偏差)として計算した。試料を、1/30から1/1000の少なくとも2種の血清希釈液及び10μg/mlから1μg/mlの2種の抗原濃度においてカットオフを超えるレベルを示した場合に、陽性として見なした。陽性試料を表2に特定した。
【0155】
【表2】

【0156】
実施例3−抗原滴定単独と比較した、交差滴定アッセイの感受性及び特異性の分析
自己抗体(AAb)測定を、交差滴定アッセイ(OSAAC)及び自己抗体の測定を、1/100の血清希釈液のみにおいて実施するだけの、抗原のみの滴定法の両方を使用して、原発性乳癌(PBC)を有する14例の女性について実施した。それらが、抗原滴定曲線について10及び3μg/mlの両方においてカットオフレベルを超えた場合、試料を陽性と見なした。下の表2は、2つの方法の直接の比較を示す。
【0157】
【表3】

【0158】
抗原濃度及び血清濃度の両方が変動する、抗原滴定曲線の系列を使用することによって、抗原濃度のみが変動する滴定曲線と比較して、より高い感受性及び少なくとも同等の特異性の両方が得られることが見られる。
【0159】
自己抗体測定のための交差滴定アッセイ(OSAAC)が、原発性乳癌の検出に関する感受性に関して、1種の血清希釈液に対する抗原滴定に基づくアッセイより優れていることを示している。これは、p53及びc−myc自己抗体の両方に関する事例であり、これが抗原の範囲に関して事実ではないと評価する理由はない。理論に縛られるものではないが、本出願人らは、抗原及び試験試料の交差滴定に基づくアッセイの、より高い感度が観察されたことには多くの理由があると考えている。
【0160】
(i)本アッセイのフォーマットは、非常に広い動的な範囲を有する。これは、高い抗原濃度において親和性の低い抗体、並びに逆に高い抗原濃度において引き寄せられる多量の抗体の両方を検出するための範囲を提供する。
【0161】
(ii)高レベルの非特異的結合によってマスクされることがある少量の抗体を、低濃度の血清で検出できる。
【0162】
(iii)本明細書に適用した、試料を陽性として定義するためのストリンジェントな基準(少なくとも2種の抗原濃度及び2種の血清希釈液に関する正常集団の平均+2SDを超える)は、技術者が、陽性測定が真陽性であることにさらに自信を持てることを意味する。
【0163】
実施例4−抗原の交差滴定による原発性乳癌の血清の検出
原発性乳癌(PBC、n=8(6例のPBC血清は全抗原において同じであり、2例のPBC血清はp53又はECD6タンパク質のどちらかに特異的であった))を有する女性及び悪性疾患の兆候がない女性(n=10)由来の血清を、本研究において使用した。本アッセイは、実施例1に記載の一般的プロトコルの変形を使用してデュプリケートで実施した。簡潔に言うと、マイクロタイタープレートのセットを、抗原タンパク質:組換えp53、ECD6(HER2の細胞外ドメインとしても知られている)又はECD6 3’断片を用いてコートした。ECD6抗原は、N末端ビオチン化配列及びC末端Hisタグと融合した、アクセッション番号NM_004439で示される完全長HER2(erbB−2)アミノ酸配列のアミノ酸1〜647を含む。ECD6 3’断片抗原は、N末端ビオチン化配列及びC末端Hisタグと再度融合した、アクセッション番号NM_004439で示される完全長HER2(erbB−2)アミノ酸配列のアミノ酸361〜647を含む。
【0164】
抗原を、160nM、50nM、16nM、5nM、1.6nM、0.5nM、0.16nMの濃度(上から下に)で各プレートを連続して滴定した。バッファーだけの「抗原を含まない」対照を、各プレートの最下列として含んだ。抗原を48時間吸着可能にし、その後プレートを洗浄し、カゼイン(0.1% w/v)及びNaCl(0.5M)を含むPBSで90分間ブロックした。
【0165】
ブロッキングインキュベーションの間、血清滴定系列のセットを、1:1600、1:800、1:400、1:200、1:100及び1:50の希釈でチューブ内に調製した。ブロッキングバッファーを取り除いた後、これらを抗原によりコートされたプレート(プレートの左から右にかけて希釈:1:1600、1:800、1:400、1:200、1:100及び1:50を加えた)に加え、90分間インキュベートした。アッセイの残りを、実施例1に記載のように実施した(プレートのレイアウトを図2に要約した)。
【0166】
抗原滴定曲線を、血清希釈液の範囲にわたって各試料に関するデュプリケートの平均値を使用して作成した。自己抗体応答のレベルに対応する値を、非特異的バックグラウンド(0.16nMの抗原に対する血清応答)を差し引くことによって得た。
【0167】
結果
代表的な滴定曲線を図3から7に示す。いくつかの試料(例えば、ECD6に関して試料20642及び20620)では、予想通りに、最も高濃度の血清が最も強いシグナルを示す滴定範囲を得たことが見られる。しかし、他の試料(例えば、ECD6 3’断片に関して試料MVV272及びEAO220)では、曲線は基本的に平坦であったが、血清濃度が上がるに従ってシグナルも増加した。これは、血清免疫グロブリンの非特異的結合によると考えられる。
【0168】
陽性のカットオフを、正常集団の平均+2SDとして計算した。両試行及び160nM又は50nMの抗原濃度のどちらかにおいてカットオフを超えるレベルを示した場合に、試料を陽性であると見なした。表4は、自己抗体の検出のために現在使用した1:100の血清希釈液が、必ずしも最適ではないことを実証している。さらに、この表は、最適血清希釈液の抗原間の変動があることを示している。血清を1:50に希釈した場合、ECD6に関する感受性の最も高いレベルは75%であった。これは、1:50では感受性が0%である、ECD6 3’断片と反対であった。これは、部分的には、分析した正常試料(例えば、試料MMV272及びEAO220)におけるECD6 3’断片に対するシグナルが上昇したためであった。
【0169】
【表4】

【0170】
表5は、血清を異なる濃度に希釈した場合の本アッセイの特異性を要約している。このアッセイにおいて分析した試料を使用して、アッセイの特異性に差は観察されなかった。
【0171】
【表5】

【0172】
表6において、最適血清希釈を、全抗原に対して分析した6例のPBC血清に関して比較する。最適血清希釈は、自己抗体応答が検出できる最も高い希釈である。例としては、血清20628は1:800まで希釈でき、p53に対する応答(すなわち、自己抗体)を検出できるが、同じ血清を、ECD6に対する自己抗体の検出のためには1:50に希釈することが必要とされる。したがって、この抗原に関する最適希釈は、全陽性自己抗体応答が特定できるように1:50であろう。
【0173】
【表6】

【0174】
表7は、各被験抗原に対する自己抗体を検出するために交差滴定法を使用した場合、原発性乳癌の検出のための全アッセイの感受性が増加したことを要約している。
【0175】
【表7】

【0176】
結論
自己抗体測定のためのOSAACアッセイが、原発性乳癌の検出のための感受性に関して、抗原滴定単独よりも優れていることを示した。これはp53、ECD6及びECD6 3’自己抗体に関する事例であり、これが全腫瘍マーカー自己抗体に関して事実でないであろうと評価する理由はない。これは、このアッセイフォーマットが非常に広い動的な範囲を有するという事実によると思われる。これは、高い抗原濃度において親和性の低い自己抗体、並びに逆に高い抗原濃度において引き寄せられる多量の自己抗体の両方を検出するための範囲を提供する。さらに、高レベルの非特異的結合によってマスクされることがある少量の自己抗体を、低い血清濃度において検出できると思われる。
【0177】
本明細書中に引用された、全ての特許、特許出願及び公開文献を、参照によりその全体をここに組込む。本発明は、好ましい実施形態を参照することにより具体的に示し、説明したが、形式及び詳細の多様な変更が特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく実施可能であることは、当業者により理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料中の抗体を検出することを含み、前記試験試料が哺乳動物対象由来の体液を含み、前記抗体が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーである、前記哺乳動物対象における疾患状態又は疾患感受性を検出する方法であって、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)前記試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、前記抗体と前記抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップと、
(c)各試験試料希釈液に関する、前記抗体と前記抗原の特異的結合の量及び被験抗原の量に基づいて、前記疾患状態又は疾患感受性の有無を判定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
全試験試料希釈液に関する特異的結合の量及び被験抗原量の集合的評価に基づいて、前記疾患状態又は疾患感受性の有無を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)において得られる前記曲線を、1つ又は複数の一般的S字型又はシグモイド曲線の存在に関して評価することによって、前記疾患状態又は疾患感受性の有無を判定する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験試料中の前記抗体の存在が、前記試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関する一般的S字型又はシグモイド曲線の存在によって示唆される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の抗体を検出する方法であって、前記抗体が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーであり、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)前記試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、前記抗体と前記抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、アッセイに使用した前記抗原と反応性である抗体が前記試験試料中に存在することが、前記試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関して一般的S字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法。
【請求項6】
前記抗体が自己抗体である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記自己抗体が腫瘍マーカータンパク質に特異的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原が腫瘍マーカータンパク質又はそれらの抗原性断片若しくはエピトープを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍マーカータンパク質が、MUC1、MUC16、c−myc、EGFR、p53、ras、BRCA1、BRCA2、APC、HER2−neu、PSA、CEA、CA19.9、NY−ESO−1、4−5、CAGE、PSMA、PSCA、EpCam、サイトケラチン、リカバリン、カリクレイン、アネキシン、AFP、b−HCG、GRP78、CA125、マンマグロビン、raf、NY−BR−1、リビン、サバイビン、MUC2、エンドスタチン、Bcl−2、BIRC7、HSP70、No55、uPA、テトラネクチン、プロラクチン、オステオポンチン、HE4、TATI、インヒビン、ビメンチン、cox−1及びcox−2からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
癌の診断、予後予測又はモニターにおける、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記対象から採取された体液の試料であり、正常対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇している対象が、癌の発症の危険性があるとして特定される、癌の発症の危険性が増大している対象を特定するための無症候性ヒト対象集団のスクリーニングにおける、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項12】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記対象から採取された体液の試料であり、正常対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇していることが、前記対象における早期腫瘍性又は早期発癌性の変化を示唆するものと解釈される、無症候性ヒト対象における早期腫瘍性又は早期発癌性の変化の検出における、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項13】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記対象から採取された体液の試料であり、正常対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇している対象が癌を有すると診断される、癌を発症している対象を特定するための無症候性ヒト対象集団のスクリーニングにおける、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項14】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記対象から採取された体液の試料であり、正常対照個体と比較して自己抗体のレベルが上昇している対象が癌を有すると診断される、癌を発症している対象を特定するための症候性ヒト対象集団の試験における、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
前記方法を使用して試験される前記試料がヒト患者から採取された体液の試料であり、正常対照と比較して自己抗体のレベルが上昇していることが、前記患者における癌の存在を示唆するものと解釈される、患者における癌又は他の腫瘍性疾患の進行のモニターにおける、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項16】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記患者から採取された体液の試料であり、正常対照と比較して前記患者において自己抗体のレベルが上昇していることが、疾患が再発したことを示唆するものと解釈される、以前に癌を有すると診断され、存在する癌の量を減少させるために抗癌治療を受けたことがあるヒト患者における再発疾患の検出における、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項17】
前記方法を使用して試験される前記試料がヒト患者から採取された体液の試料であり、正常対照と比較して自己抗体のレベルが上昇していることが、癌からの前記患者の予後を示唆すると解釈される、癌からの予後の評価における、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項18】
前記方法を使用して試験される前記試料がヒト患者から採取された体液の試料であり、自己抗体のレベルと起こりそうな治療結果との関係があらかじめ確立されている、前記患者における自己抗体のレベルの比較を使用することにより、このような抗癌治療に対して前記患者が応答するかどうかが示唆される、抗癌治療に対する応答の予測における、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項19】
前記抗癌治療が、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、又は化学療法である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記方法を使用して試験される前記試料が前記患者から採取された体液の試料であり、治療後の自己抗体のレベルにおける変化が、前記患者が前記治療に対して応答しているか否かを示唆するものと解釈される、抗癌治療に対するヒト癌患者の応答のモニターにおける、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項21】
前記治療が、ワクチン接種、抗成長因子又はシグナル伝達療法、放射線治療、内分泌療法、ヒト抗体療法、又は化学療法であり、治療後の自己抗体のレベルにおける変化が、前記患者が前記治療に対して正に応答していることを示唆するものと解釈される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記抗体が、自己免疫疾患に特有であり、又は自己免疫疾患に関連する自己抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性胃炎、悪性貧血、自己免疫性副腎炎、アジソン病、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病又は重症筋無力症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、腎臓又は肝臓の疾患に特有であり、又は腎臓若しくは肝臓の疾患に関連し、どちらかの器官の機能不全又は不全をもたらす自己抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、前記哺乳動物対象に移植された組織に存在するエピトープを対象とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の抗体を検出する方法であって、前記抗体が、前記哺乳動物対象に導入された外来物質を対象とし、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)前記試験試料希釈液を、前記抗体に特異的な、複数の異なる量の抗原と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原量に対する、前記抗体と前記抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液に関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、アッセイに使用した前記抗原と反応性である抗体が前記試験試料中に存在することが、前記試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液に関して一般的S字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法。
【請求項27】
前記哺乳動物対象がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記外来物質が治療薬である、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記治療薬が、薬剤、プロドラッグ又は抗体療法薬である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記外来物質が、ワクチンである、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記外来物質が、治療薬又はワクチンの非標的部分である、請求項28又は請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記非標的部分がビオチンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記外来物質が、真菌、細菌、ウィルス又は寄生虫などの感染作用因子である、請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項34】
哺乳動物対象由来の体液を含む試験試料中の2種以上の抗体を検出する方法であって、前記抗体の少なくとも1種が疾患状態又は疾患感受性の生物学的マーカーであり、
(a)前記試験試料の2種以上の異なる希釈液を調製し、各試験試料希釈液について以下のステップ(i)及び(ii):
(i)前記試験試料希釈液を、2種以上の抗原セットと接触させるステップであり、前記抗原セットのそれぞれ1種が、前記試験試料中の検出される前記抗体の1種に特異的であり、各抗原セットが複数の異なる量の同じ抗原を含むステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した各抗原セットにおける各抗原量に対する、前記抗体と前記抗原の特異的結合の量を検出するステップ
を実施するステップと、
(b)ステップ(a)で使用した各試験試料希釈液と各抗原セットに関する、特異的結合量対抗原量の個別の曲線をプロット又は計算するステップであり、アッセイに使用した前記抗原セットのいずれか1種と反応性である抗体が前記試験試料中に存在することが、前記試験試料の少なくとも2種の異なる希釈液と前記抗原セットに関する、一般的S字型又はシグモイド曲線によって示唆されるステップと
を含む方法。
【請求項35】
前記2種以上の抗体の少なくとも1種が、自己抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記2種以上の抗体の少なくとも1種が、腫瘍マーカータンパク質に特異的な自己抗体である、請求項35に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図1h】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【公開番号】特開2012−255797(P2012−255797A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−176030(P2012−176030)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2009−527890(P2009−527890)の分割
【原出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(508056268)オンクイミューン リミテッド (3)
【Fターム(参考)】