説明

改善されたソールを有する靴

【課題】地面へのソールの自由かつ規則的な足運び、均整な地面に対する十分な把持、不均整な地面に対する十分な把持又は引っ掛かり性能を有する靴を提供する。
【解決手段】接触面(20)は、第1の輪郭部(21)を有し、第1の輪郭部(21)が、凸部(31〜36)と凹部(41〜45)との交互配置を有する。接触面(20)は、第2の輪郭部(22)を有し、第2の輪郭部(22)が、凸部(51〜57)と凹部(61〜66)との交互配置を有する。第1の輪郭部(21)の凸部(31〜36)及び凹部(41〜45)が、第2の輪郭部(22)の凸部(51〜57)及び凹部(61〜66)に対して互い違いに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関し、特にスポーツをするための靴に関する。
【0002】
かかる靴は、スポーツ若しくはその他の歩行、又は平地若しくは山岳でのランニング、登山、あるいはスケートボード、球技などのような分野で使用され得る。
【背景技術】
【0003】
靴には、丈の長いものもあれば、丈の短いものもある。また靴には、比較的軟質のものや、逆に、より剛性のあるものもある。しかしながら、その全体的外観又は行われる活動がいかなるものであれ、靴は、利用者の期待に応えなければならない。特に、第一に靴は、足を容易に繰り出せるものでなければならない。これは、例えば平坦な地面で、足運び又は送りが自由かつ規則的でなければならないことを意味する。歩行又はランニングの際に足を繰り出す動きの度に利用者のエネルギー消費を最小限に抑えることが問題である。第二に、靴は十分に地面を把持するものでなければならない。これは、靴が、地面と足との間で、支承、衝撃、又は感覚情報の伝達を利用者が制御できるものでなければならないという意味であり、不適切なときに滑ってはならないことを意味する。
【0004】
容易な足運び及び十分な把持を得るために、従来技術では、当然ながら多数の解決策が提案されてきた。
【0005】
アウトソールの地面との接触面に小さな突起のついた靴を製造することが、特に知られている。突起間の空間がアウトソールの自由な屈曲を可能にするので、この構造は、十分な足運びの自由を与える。その上、突起の規則的な分布により、一方では規則的な足運びが、他方では平坦な地面に対する十分な把持が可能になる。かかる靴は、例えば競技場内での歩行又は徒競走に特に適している。しかしながら、このような靴は、多くの状況で、自由かつ規則的な足運びを、十分な把持と同時に提供するとしても、全ての場合に提供するわけではない。実際に、ある種の状況において把持は不十分である。山岳、更には野山や森林で遭遇するような、岩などのような障害物のある、起伏に富んだ地面では特にそうである。実際に、これらの状況において、ソールと地面との間の接触面は、十分な把持を可能にするためには弱すぎる。
【0006】
特殊な状況に適合する他の靴が存在する。
【0007】
例えば、米国特許第4130947号によれば、アウトソールの接触面は、一連の横方向溝を有する。これらの溝は、数ミリメートルというかなり大きな深さを有する。このソールは、脆い地面又は雪上での引っ掛かりを増進する。溝は、横方向の剛性を増加させ、かつ長手方向の可撓性を容易にするために設けられる。しかしながら、この靴は、足の完全に自由かつ規則的な足運びを可能にしない。実際に、横軸に沿ったアウトソールの長手方向の屈曲の可能性は、場所によって異なる。可撓性は、溝底では大きいが、2つの溝間では減少する。これは、溝によってソール厚に変動が生じるためである。その結果、アウトソールのレベルで横方向に硬いゾーンと軟らかいゾーンとが交互にできる。この交互のゾーンが、ソールの、したがって足の運びを妨害し、足の運びを不規則にする。その上、溝と溝との間の厚いゾーンが曲がるのにより大きな力を要する。この意味で、歩行又はランニングに伴うエネルギー収率は、より低くなる。溝底の薄いゾーンが疲労して破損する危険にも注目しなければならない。
【0008】
既知のいかなる靴も、単独で地面へのソールの自由かつ規則的な足運び、均整な地面に対する十分な把持、及び不均整な地面に対する把持又は引っ掛かりの能力を併せもっていないように見える。換言すると、従来技術の靴は、十分に万能でないか、又は必然の結果として過度に専門化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4130947号
【発明の概要】
【0010】
これに関連して、本発明は、従来技術による靴を改善することを、包括的な目的とする。特に、本発明の目的は、地面へのソールの自由かつ規則的な足運び、均整な地面に対する十分な把持、及び不均整な地面に対する十分な把持又は引っ掛かりの能力を単一の靴に併せもたせることである。これは、本発明が、靴を更に万能に、あらゆる状況において更に有効にしようとするものであることを意味している。
【0011】
本発明のもう一つの目的が、この万能性を幅広く適用すること、すなわち乾燥した土地のような予想可能な土地と同様に、濡れた、湿った、又は泥にまみれた土地に対しても万能性を得ることであることが、後ほどよく判るであろう。
【0012】
本発明の更なる目的は、アウトソールの領域に、幾らかの緩衝能力をもたらすことである。本発明は、行われる活動に応じて、地面に対する接触の全体又は少なくとも相当な部分の間、ソールの挙動を最適化しようとするものである。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、歩行又はランニングに伴う感覚情報又は衝撃の伝達における精度を改善することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、アウトソールの質量をできるだけ減少させることである。
【0015】
このために、本発明は、アウトソールとアッパーとを含み、アウトソールが、後端部から前端部までの長手方向及び外側(lateral)縁と内側(medial)縁との間の幅方向にわたって延在し、アウトソールが、地面との接触面を有する靴を提案する。
【0016】
本発明による靴は、接触面が、第1の輪郭部を有し、第1の輪郭部上に凸部と凹部が交互に配列し、接触面が、第2の輪郭部を有し、第2の輪郭部上に凸部と凹部が交互に並び、第1の輪郭部の凸部及び凹部が、第2の輪郭部の凸部及び凹部に対して互い違いに配置されることを特徴とする。
【0017】
第1の輪郭部が、1つの凸部と1つの凹部を有する基準セグメントを含み、第2の輪郭部が、1つの凸部と1つの凹部を有する基準セグメントを含み、第1の輪郭部の基準セグメントの凸部が、第2の輪郭部の基準セグメントの凹部の横に位置し、かつ第1の輪郭部の基準セグメントの凹部が、第2の輪郭部の基準セグメントの凸部の横に位置していると言うこともできる。
【0018】
この構造においては、輪郭部の長手方向において凸部と凹部が交互に並び、輪郭部の長手方向と垂直な横方向において凸部と凹部が交互に並ぶように構成される。輪郭部は、接触面を区分する分割領域又はセグメントに対応し、その輪郭部は直線形態であっても、湾曲状の曲線的形態でよく、かつ靴の長手方向又は他の方向に沿って配向させ得ることが、後ほどよく判るであろう。当然ながら、先に言及した交互配置は、本発明による凸部と凹部を有する接触面の分割されたセグメントにおいて行われる。接触面が、複数の分割セグメントを含んでもよく、また完全にそのように構成されてもよいことが、後ほどよく判るであろう。
【0019】
アウトソールの足運び方向がどうであれ、分割セグメントにおいて、凸部は、均整な地面に交互に接触する。これは、アウトソールが輪郭部の方向に繰り出されるならば、後で第2の輪郭部の凸部が地面と接触しようと、あるいは後で第1の輪郭部の他の凸部が地面と接触しようと、第1の輪郭部の凸部が地面と接触し、以下同様であることを意味する。当然ながら、この現象は、あらゆる足運び方向に関して生じる。その結果、アウトソールの運びは、したがって足の運びも、規則的かつ自由である。同様に、一方の凸部から他方の凸部への移行が、支承の面で規則的なので、この地面に対する把持は、満足できるものであるように思われる。第1が、第2に対して繰り出されるとき、地面に対するソールの接触の連続性が観察されるとも言えるであろう。
【0020】
山岳において多少とも岩で覆われたような不均整な地面の場合、地面の凹凸が靴の凹部と協働する。実際に、これらの凹凸は、靴の凹部内に多少とも嵌り込む。靴の凹部が、凸部間に画定される開口部の面積に比べて大きな接触面積を与えるので、靴の凹部の領域で把持の増大が観察される。その上、靴の凹部は、地面の凹凸とアウトソールとの間の障害物を介した連結を生み出す。その結果、不均整な地面に対する把持及び/又は引っ掛かりが、従来技術による靴で得られるそれに比べて、改善される。泥だらけの地面についても、靴の凹部が大きなかすがいの役目を果たし、そこから泥が非常に容易に排出されるので、同様に従来技術に対し改善される。
【0021】
最後に、本発明による靴において、アウトソールは、均整な地面に対して規則的かつ自由に繰り出され、この地面を十分に把持し、かつ不均整な地面に対してももちろん可逆的に把持し又は引っ掛かる。それは結局、本発明による靴が、万能であり、地面が均整であれ不均整であれ、地面を把持するということである。
【0022】
本発明による靴は、従来技術の靴に比べて引っ掛かりの著しい改善を可能にする。
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明がいかにして実施できるかを、非限定的な実施形態に従って示す添付図面を参照し、以下に続く説明を用いてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態による靴の下からの前方斜視図である。
【図2】図1による靴の側面図である。
【図3】図1による靴の底面図である。
【図4】図3のIV−IVに沿った断面図である。
【図5】図3のV−Vに沿った断面図である。
【図6】図5のVI−VIに沿った断面図である。
【図7】図5のVII−VIIに沿った断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に関する図4と同様の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に関する図5と同様の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に関する図1と同様の図である。
【図11】本発明の第4の実施形態による靴の下からの前方斜視図である。
【図12】図11による靴の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下で説明する第1の実施形態は、とりわけ、平地又は起伏のある土地での歩行又はランニングのための靴に関する。しかしながら、本発明は、前述のような他の分野にも適用される。
【0026】
この第1の形態について、図1〜7を用いて以下に説明する。
【0027】
図1〜3に示すように、歩行靴は、利用者の足を収容するように提供される。
【0028】
公知のように、一般的に、靴1は、長手方向Lに沿って後端部3と前端部4との間に延在し、かつ長手方向と垂直な横方向Wに沿って外縁5と内縁6との間に延在する、アウトソール2を備えている。ソール2は、後部又は踵部7と、前部8とを備える。ソールの第1の実施形態によれば、ソール2は、踵部7及び前部8が互いに延びる方向で一体である。しかしながら、これらの部分7、8は、互いに分離され離隔されていてもよい。
【0029】
また、靴1は、ソール上に配置されたアッパー9を含む。図示したように、アッパー9は、上部を除き、足を取り囲むように設けられた下部10を含む。しかしながら、アッパーが上部も含むようにすることもできる。
【0030】
アッパー9は、特に外側クォーター12と、内側クォーター13と、舌革14とを含む。舌革14は、アッパー9にその連続性を与えるために、クォーター12、13を互いに連結する。しかしながら、舌革を使用しないようにすることもできる。この場合、クォーター12、13は、分離したままでも、重ね合わせてもよい。
【0031】
本明細書では詳述しないが、締め付け装置は、アッパー9を可逆的に締め付けるために設けられる。しかしながら、靴1は、締め付け装置を持たなくてもよい。
【0032】
アッパーの構造がいかなるものであれ、アウトソール2は、地面との接触面20を有する。接触面20は、全部で2つ以上の輪郭部21、22、23、24、25を有するように構成されている。輪郭部は、その長さが幅よりもが大きい、接触面20の分割されたセグメント(区分)である。輪郭部は、細長い分割セグメントであるが、後ほど判るように、様々な形状又は様々な湾曲形態を有し得ると言うことができる。特に、輪郭部は、長方形のように直線で構成されてもよく、また例えば、大文字のC若しくはSのような形状に従う湾曲形状でもよい。
【0033】
限定するものではないが、接触面20は、少なくとも1つの第1の輪郭部21と、第2の輪郭部22とを有する。接触面20が、第3の輪郭部23、第4の輪郭部24、第5の輪郭部25、更にはそれ以上の輪郭部を有し得ることが後ほど判るであろう。
【0034】
第1の輪郭部21は、例えば、前端部4と後端部3との間で交互に続く、凸部(凸領域)31、32、33、34、35、36及び凹部(凹領域)41、42、43、44、45の交互配置を含む。あらゆる場合に、第1の輪郭部21は、凸部32と凹部41とを有する基準セグメント47を含む。当然ながら、基準セグメント47の凸部32及び凹部41は、一方が輪郭部21に沿って他方に続くという意味で、互いに隣接する。このセグメント47は、図面上でよく見えるので、説明を容易にするために選択されている。
【0035】
同じ趣旨で、第2の輪郭部22は、例えば、前端部4と後端部3との間で交互に続く、凸部51、52、53、54、55、56、57及び凹部61、62、63、64、65、66の交互配置を含む。あらゆる場合に、第2の輪郭部22は、凸部52と凹部62とを有する基準セグメント67を含む。ここでも当然ながら、基準セグメント67の凸部52及び凹部62は、一方が輪郭部22に沿って他方に続くという意味で、互いに隣接している。このセグメントも、図面上でよく見えるので、説明を容易にするために選択された。
【0036】
本発明によれば、第2の輪郭部22は、第1の輪郭部21に隣接し、第1の輪郭部21の基準セグメント47の凸部32は、第2の輪郭部22の基準セグメント67の凹部62の横(隣)に位置し、かつ第1の輪郭部21の基準セグメント47の凹部41は、第2の輪郭部22の基準セグメント67の凸部52の横(隣)に位置している。
【0037】
第1の輪郭部21及び第2の輪郭部22の基準セグメント47、67を含む接触面20の分割されたセグメントの領域において、輪郭部21、22の長手方向において凸部と凹部が交互配置されており、また輪郭部21、22と長手方向と垂直な方向において凸部と凹部の交互に配置されていることが観察される。この分割されたセグメントにおいて、アウトソール2は、均整な地面に規則的かつ自由に足運び、この地面を十分に把持し、かつ不均整な地面にも同様に、可逆的に把持又は引っ掛かる。この分割されたセグメントの領域において、少なくとも本発明による靴は、万能である。
【0038】
記載した第1の実施形態によれば、限定するものではないが、接触面20は、第3の輪郭部23を有する。輪郭部23は、例えば、前端部4と後端部3との間で交互に続く、凸部71、72、73、74、75、76及び凹部81、82、83、84、85の交互配置を含む。第3の輪郭部23は、凸部72と凹部81とを有する基準セグメント87を含む。当然ながら、基準セグメント87の凸部72及び凹部81は、輪郭部23に沿って、互いに隣接している。ここでもこのセグメント87は、図面上でよく見えるので、考慮された。
【0039】
本発明の趣旨において、第3の輪郭部23は、第2の輪郭部22に隣接し、第2の輪郭部22の基準セグメント67の凸部52は、第3の輪郭部23の基準セグメント87の凹部81の横(隣)にあり、かつ第2の輪郭部22の基準セグメント67の凹部62は、第3の輪郭部23の基準セグメント87の凸部72の横(隣)にある。
【0040】
第2の輪郭部22及び第3の輪郭部23の基準セグメント67、87を含む接触面20の分割されたセグメントの領域において、輪郭部22、23の長手方向において凸部及び凹部が交互に配置され、また輪郭部22、23の長手方向と垂直な横方向において凸部及び凹部の交互配置が観察される。ここでも、この分割されたセグメントにおいて、アウトソール2は、均整な地面に規則的かつ自由に足運び、この地面を十分に把持し、かつ不均整な地面にも同様に、可逆的に把持又は引っ掛かる。この分割されたセグメントの領域において、靴は、万能である。
【0041】
第1の実施形態によれば、接触面20は、ちょうど3つの輪郭部21、22、23を含むが、輪郭部はそれより多くても、少なくてもよい。したがって、輪郭部21、22、23は、接触面20全体にわたり延在している。例えば、第1の輪郭部21は外側に位置し、第2の輪郭部22は中央に位置し、第3の輪郭部23は内側に位置している。このことにより、接触面20全体にわたって、地面の把持及び足運びの能力が発揮されるという意味で、それらの能力が最適にされる。
【0042】
当然ながら、この最適化の意味において、第1の輪郭部21は、幾つかのセグメント47を含み、第2の輪郭部22は、幾つかのセグメント67を含み、第3の輪郭部23は、幾つかのセグメント87を含む。
【0043】
非限定的な例として、第1の実施形態では、以下の構成が提案されている。第1の輪郭部21が、5つの凹部41、42、43、44、45を有し、第2の輪郭部22が、6つの凹部61、62、63、64、65、66を有し、第3の輪郭部23が、5つの凹部81、82、83、84、85を有する。必然の結果として、第1の輪郭部21が、6つの凸部31、32、33、34、35、36を有し、第2の輪郭部22が、7つの凸部51、52、53、54、55、56、57を有し、第3の輪郭部23が、6つの凸部71、72、73、74、75、76を有する。凸部及び凹部が、各輪郭部の長手方向に沿って交互に配置され、かつ各輪郭部の長手方向と垂直な横方向にも同様に交互に配置されていることがわかる。実際、凸部及び凹部は、接触面20全体にわたっていわゆる市松模様で分布している。
【0044】
第1の輪郭部21、第2の輪郭部22及び第3の輪郭部23は、ソール2の長手方向Lでもある、靴1の長さに沿って配向されることが認められる。この配向は、前進方向での歩行又はランニングの際、足の自然な足運び中、ソール2に安定性を与える。
【0045】
加えて、第1の輪郭部21の凹部41〜45が、第3の輪郭部の凹部81〜85とそれぞれ横方向に、すなわちアウトソール2の横方向Wに沿って整列している。必然の結果として、第1の輪郭部21の凸部31〜36は、第3の輪郭部23の凸部71〜76とそれぞれほぼ横方向に整列する。その結果、特に地面が平坦である場合、地面に対する支承において高い横方向安定性が生じる。他方、起伏のある地面に対する良好な横方向の引っ掛かりも得られる。実際に、中央の輪郭部22の各凹部は、それぞれ外側の輪郭部21及び内側の輪郭部23の外側凸部及び内側凸部の各々隣接している。したがって、中央の輪郭部22の各凹部61〜66は、接触面20の領域において単に凹んでいるソール2のキャビティである。それ故に、岩の突起のような地面の凹凸が、中央の輪郭部22の凹部内に場所を占める場合、アウトソール2の横方向滑動が、あるときは外側凸部によって、また、あるときは内側凸部によって妨げられる。実際、各外側又は内側凸部は、横方向における止め具として機能する。このため、横方向に沿った時宜を得ない把持の喪失が、回避されないにせよ、少なくとも稀になるので、靴1は、山岳でのランニングの際に特に有効である。
【0046】
寸法の点では、例えば、第1の輪郭部21の幅が、アウトソール2の幅の5〜30%であり、第2の輪郭部22の幅が、アウトソール2の幅の20〜80%であり、第3の輪郭部23の幅が、アウトソール2の幅の5〜30%であるように構成される。その結果、中央の輪郭部22が、通常、外側の輪郭部21及び内側の輪郭部23よりも幅広く選択されることになる。そこから生じる利点は、起伏のある土地での横方向引っ掛かりが最適化されることである。
【0047】
第1の実施形態においては、長手方向の領域において、第1の輪郭部21、第2の輪郭部22及び第3の輪郭部23の各々の長さは、アウトソール2の長さの85〜100%である。こうすると、常に前述の把持及び足運び特性を最適化する方向に進む。それでも、第1の輪郭部21、第2の輪郭部22及び第3の輪郭部23の各々の長さが、アウトソール2の長さの20〜100%であるとき、満足できる結果が観察された。
【0048】
限定するものではないが、第1の輪郭部21及び第3の輪郭部23は、それぞれ後端部3の領域及び前端部4の領域において、後部ブリッジ93及び前部ブリッジ94によって互いに延長されるようになっている。それは結局、外側の輪郭部21及び内側の輪郭部23が、後端部3の領域及び/又は前端部4の領域で、互いに伸張されるということである。最後に、外側の輪郭部21、後部ブリッジ93、内側の輪郭部23及び前部ブリッジ94は、接触面20の周縁ベルトを形成する。このベルトは、アウトソール2の足運びを更に規則的にするのに寄与する。当然ながら、後端部3の領域において、又は前端部4の領域において、単一のブリッジ93、94を設けることや、またはいかなるブリッジも設けないことも可能である。
【0049】
第1の輪郭部21の幅が一定であり、第3の輪郭部23の幅が一定であり、第2の輪郭部22の幅が可変であることが認められる。実際に、第2の輪郭部22すなわち中央の輪郭部は、全体として後部7よりも前部8が広い。これにより、横方向の引っ掛かりが前方に向かって増加する。そこから生じる利点は、特に地面が起伏のある場合に、足の中足領域において強く支承される際のソール2の安定性が高いことである。ここでも、この靴は、山岳でのランニングにおいて非常に高性能である。
【0050】
やはり性能に配慮して、アウトソール2が、軽量で、かつ地面との接触による摩耗に対する耐性を有するようになされている。実際にアウトソール2は、地面に接触するための磨滅層95と、磨滅層95を靴1の残りの部分に連結する連結層96とを備える。磨滅層95が、接触面20を画定することは、自明である。磨滅層95は、例えばゴム、又は同等のあらゆる材料から構成される。連結層96については、第1の実施形態によれば、限定するものではないが、これは緩衝層である。したがって、この層96は、頭文字EVAによって表されるエチレン−酢酸ビニル・フォームのような、低密度の剛性材料、又はあらゆる同等物を含む。
【0051】
層95、96の各々は、アウトソール2の全体に沿って延在する。これは、把持能力を接触面20全体に対する緩衝能力と同時に与える。
【0052】
当然ながら、ソール2は、2以上の層及び/又は追加の要素を含むことができる。
【0053】
図1〜7全体から理解されるように、第1の実施形態によれば、アウトソール2は、厚さtが通常は一定である磨滅層95を含む。これにより、製造が容易になり、かつソール2を最大限に軽くすることが可能になる。
【0054】
通常は一定であるという表現は、磨滅層95が、湿った地面に対する把持を改善するために加えられた小さい突起にもかかわらず、一定の厚さを有することを意味する。実際に、凸部31〜36、51〜57、71〜76は、大部分が、全て参照符号97で表した凹凸を有する。例えばV字形のこれらの凹凸は、厚さ0.5〜7mmの小さな突起であり、1〜3mmの値で良好な結果が得られたことを承知されたい。
【0055】
これらの凹凸(突起)97は、特に均整な表面の地面と協働するためのものであるので、それを凹部に設けることは、必要でない。換言すると、これら凹部41〜45、61〜66、81〜85は、大部分が均整な、更には平滑な表面を有する。これは、凹部が起伏のある土地の突起と協働するのに適する限りにおいて、理にかなっている。
【0056】
なお別法として、凸部31〜36、51〜57、71〜76は、大部分が、均整な、すなわち凹凸97のない表面を有するようにしてもよいことが観察される。この場合、靴1は、乾燥した地面に対して、それが均整であるにせよ、起伏があるにせよ、非常に高性能である。
【0057】
第1の実施形態によれば、凹凸(突起)97とは無関係に、アウトソール2は、厚さtが0.5〜5mmである磨滅層95を備えることが観察され、1〜3mmの値で良好な結果が得られたことを承知されたい。
【0058】
図4〜7から更に明確に理解されるように、接触面20の横(幅)方向における分割されたセグメントに沿う、凸部32、52、53、72の頂部は、ほぼ同一平面内にある。更に、一般的には、全ての凸部のそれぞれの頂部は、接触面20の足運び時に地面の均整な表面に接して、印圧するようにされている。したがってこのことにより、当然ながらアウトソール2及び足の規則的な足運びが可能になる。
【0059】
特に図4及び5に関して、横方向に、すなわち外側縁5から内側縁6へと緩衝層96が連続していることが観察される。磨滅層95については、これは区分されている。より詳細には、各輪郭部21、22、23は、磨滅層95が一体的ではなく個別に設けられており、分割されたセグメントに対応する。このことにより、磨滅層95が、当初は平地に適合した場合でも、突起状の接触面20を得ることが可能になる。しかしながら、後ほどよく判るように、磨滅層95全体を一体部品として成形することも可能である。
【0060】
図1〜7全体から、特に図6及び7から理解されるように、大部分の凹部は、湾曲した曲面形状を有する。例えば、第1の輪郭部21の第1凹部41は、凹面の底部100と、凸面の壁101、102とを有し、凸面の壁は、底部100を同じ輪郭部の凸部31、32に連結する。これにより、ソール2の製造が容易になりし、かつ起伏のある土地に対する支承と、平坦又は均整な土地に対する支承との間の良好な推移も可能になる。
【0061】
他の実施形態を、図8〜12により以下に示す。便宜上、第1の実施形態と共通の要素は、同じ参照符号によって示す。本質的に相違点のみが明確に示されている。
【0062】
まず、第2の実施形態について、図8及び9により述べる。実際に、図4及び5と同様に、2つの横断面図が示されている。ここでは、アウトソール2の磨滅層105が、外側縁5から内側縁6まで連続することが判る。それは結局、磨滅層105全体が一体部品であるということである。
【0063】
第3の実施形態は、図10に示されている。図1と同様に、靴1のアウトソール2は、第1の輪郭部21と、第2の輪郭部22と、第3の輪郭部23とを有する。この実施形態に特有なことは、1つ又は複数の凹部62〜66が区分又は分割されていることである。例えば、本質的に第2の輪郭部22の凹部62〜66が、第2の輪郭部22の第2凹部62について111、112と参照符号を付されているような、薄い壁によって分割されている。これらの壁111、112は、例えば足の運びに関連した、ソール2の変形後に弾性復元を及ぼすための、弾性要素であってよい。この配置により、足の運びに関連したエネルギーを蓄積し、足運びの終了時にエネルギーを復元することが可能になる。靴の、したがって足の再運びが、改善される。
【0064】
次に、第4の実施形態は、ここで図11及び12に示されている。それが、やはり第1の輪郭部21と、第2の輪郭部22と、第3の輪郭部23とを有し、接触面20は更に、第4の輪郭部24も有し、第4の輪郭部は、凸部121〜124及び凹部131〜133の交互配置を有し、接触面20は、更に第5の輪郭部25を有し、第5の輪郭部は、凸部141〜145及び凹部151〜154の交互配置を有し、所与の輪郭部の凸部及び凹部は、隣接する輪郭部の凸部及び凹部に対して交互に配置される。輪郭部21〜25が、互いに隣接することが認められる。
【0065】
第1の輪郭部21、第2の輪郭部22、第3の輪郭部23、第4の輪郭部24及び第5の輪郭部25が、靴の長手方向に沿って配向されていることが観察される。ここで、第1の輪郭部は外側に位置し、第2の輪郭部22、第3の輪郭部23、及び第4の輪郭部24は中央に位置し、第5の輪郭部25は内側に位置している。限定するものではないが、第1の輪郭部21は4つの凹部161〜164を有し、第2の輪郭部22は3つの凹部171〜173を有し、第3の輪郭部23は4つの凹部181〜184を有し、第4の輪郭部24は3つの凹部131〜133を有し、第5の輪郭部25は4つの凹部151〜154を有する。最後に、第4の実施形態による靴1は、他の実施形態と同じ技術思想を採用している。この意味で、靴は、先に説明したように非常に万能であるが、輪郭部当たりの凹部の数が少ないので、靴1は、起伏のある部分よりも均整な部分を幾分か多く含む混合コースに適している。
【0066】
あらゆる場合において、本発明は、当業者に公知の材料から、当業者に公知の実施技術によって実施される。
【0067】
当然ながら、本発明は、以上に記載した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれ得るあらゆる同等物を含む。
【0068】
具体的には、輪郭部の数を変えることができる。輪郭部の広がりに応じて、様々な凹部が、異なる寸法を有し得る。同様に、様々な凸部も、異なる寸法を有し得る。
【0069】
凹部については、それら、又はその幾つかが、磨滅層を全部又は一部のみ持たなくてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトソール(2)と、アッパー(9)とを含み、前記アウトソール(2)が、後端部(3)から前端部(4)までの長手方向及び外側縁(5)と内側縁(6)との間の幅方向にわたって延在しており、前記アウトソール(2)が、地面との接触面(20)を有する靴(1)において、前記接触面(20)が、第1の輪郭部(21)を有し、前記第1の輪郭部(21)は、凸部(31〜36)と凹部(41〜45)とが交互に配置されており、
前記接触面(20)が、第2の輪郭部(22)を有し、前記第2の輪郭部(22)は、凸部(51〜57)と凹部(61〜66)とが交互に配置されており、前記第1の輪郭部(21)の前記凸部(31〜36)及び凹部(41〜45)が、前記第2の輪郭部(22)の前記凸部(51〜57)及び凹部(61〜66)に対して互い違いに配置されることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記第1の輪郭部(21)は、凸部(32)及び凹部(41)を有する基準セグメント(47)を含み、前記第2の輪郭部(22)が、凸部(52)及び凹部(62)を有する基準セグメント(67)を含み、前記第1の輪郭部(21)の前記基準セグメント(47)の前記凸部(32)が、前記第2の輪郭部(22)の前記基準セグメント(67)の前記凹部(62)の横に位置し、前記第1の輪郭部(21)の前記基準セグメント(47)の前記凹部(41)が、前記第2の輪郭部(22)の前記基準セグメント(67)の前記凸部(32)の横に位置していることを特徴とする請求項1に記載の靴(1)。
【請求項3】
前記接触面(20)が、第3の輪郭部(23)を有し、前記第3の輪郭部(23)が、凸部(72)及び凹部(81)を有する基準セグメント(87)を含み、前記第2の輪郭部(22)の前記基準セグメント(67)の前記凸部が、前記第3の輪郭部(23)の前記基準セグメント(87)の前記凹部(81)の横に位置しており、前記第2の輪郭部(22)の前記基準セグメント(67)の前記凹部(62)が、前記第3の輪郭部(23)の前記基準セグメント(87)の前記凸部(72)の横に位置していることを特徴とする請求項2に記載の靴(1)。
【請求項4】
前記第1の輪郭部(21)、前記第2の輪郭部(22)及び前記第3の輪郭部(23)が、前記靴の長手方向に沿って配向されることを特徴とする請求項2又は3に記載の靴(1)。
【請求項5】
前記第1の輪郭部(21)が靴の外側に位置し、前記第2の輪郭部(22)が靴の中央に位置し、前記第3の輪郭部(23)が靴の内側に位置することを特徴とする請求項3又は4に記載の靴(1)。
【請求項6】
前記第1の輪郭部(21)が複数のセグメント(47)を含み、前記第2の輪郭部(22)が複数のセグメント(67)を含み、前記第3の輪郭部(23)が複数のセグメント(87)を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項7】
前記第1の輪郭部(21)が5つの凹部(41〜45)を有し、前記第2の輪郭部(22)が6つの凹部(61〜66)を有し、前記第3の輪郭部(23)が5つの凹部(81〜85)を有することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項8】
前記第1の輪郭部(21)の前記凹部(41〜45)が、それぞれ前記第3の輪郭部(23)の前記凹部(81〜85)と横方向に整列することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項9】
前記第1の輪郭部(21)の幅が、前記アウトソール(2)の幅の5〜30%であり、前記第2の輪郭部(22)の幅が、前記アウトソール(2)の幅の20〜80%であり、かつ前記第3の輪郭部(23)の幅が、前記アウトソール(2)の幅の5〜30%であることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項10】
前記第1の輪郭部(21)、前記第2の輪郭部(22)及び前記第3の輪郭部(23)の各々の長さが、前記アウトソール(2)の長さの50〜100%であることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項11】
前記接触面(20)が、第4の輪郭部(24)を有し、前記第4の輪郭部(24)は、凸部(121〜124)と凹部(131〜133)とが交互に配置されており、前記接触面(20)が、第5の輪郭部(25)を有し、前記第5の輪郭部(25)は、凸部(141〜145)と凹部(151〜154)とが交互に配置されており、所与の輪郭部の凸部及び凹部が、隣接する輪郭部の凸部及び凹部に対して互い違いに配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載の靴(1)。
【請求項12】
前記第1の輪郭部(21)、前記第2の輪郭部(22)、前記第3の輪郭部(23)、前記第4の輪郭部(24)及び前記第5の輪郭部(25)が、靴の長手方向に沿って配向されることを特徴とする請求項11に記載の靴(1)。
【請求項13】
前記第1の輪郭部(21)が靴の外側に位置し、前記第2の輪郭部(22)、前記第3の輪郭部(23)、及び前記第4の輪郭部(24)が靴の中央に位置し、前記第5の輪郭部(25)が靴の内側に位置していることを特徴とする請求項12に記載の靴(1)。
【請求項14】
前記第1の輪郭部(21)が4つの凹部(161〜164)を有し、前記第2の輪郭部(22)が3つの凹部(171〜173)を有し、前記第3の輪郭部(23)が4つの凹部(181〜184)を有し、前記第4の輪郭部(24)が3つの凹部(131〜133)を有し、前記第5の輪郭部(25)が4つの凹部(151〜154)を有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項15】
前記外側の輪郭部(21)及び前記内側の輪郭部(23、25)が、前記後端部(3)の領域において及び/又は前記前端部(4)の領域において、ともに伸張されていることを特徴とする請求項5乃至14のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項16】
前記凸部は、ほぼ平坦な表面を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項17】
前記凸部は、複数の凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項18】
前記凹部は、ほぼ平坦な表面を有することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項19】
1つ又は複数の凹部(62又は66)が、区分されていることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項20】
前記接触面(20)の横方向における分割されたセグメントに沿う、前記凸部(32、52、53、72)の頂部が、ほぼ同一平面内にあることを特徴とする請求項4乃至19のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項21】
前記凸部のそれぞれの前記頂部が、前記接触面の足運び時に地面の均整な表面に接するようにされていることを特徴とする請求項4乃至20のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項22】
前記アウトソール(2)が、厚さ(t)0.5〜5mmの磨滅層(95)を含むことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項23】
前記アウトソール(2)は、厚さ(t)がほぼ一定である磨滅層(95)を含むことを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の靴(1)。
【請求項24】
前記凹部が、曲面形状を有することを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の靴(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−20136(P2012−20136A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156845(P2011−156845)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(508280601)サロモン エス.エー.エス. (5)
【Fターム(参考)】