説明

改善されたバイオマス前処理

標的化学物質を生産するため、糖化とそれに続く発酵において使用される改善された前処理バイオマス生産物を生産するための方法が提供され、それは前処理バイオマス生産物からの糖化および/または発酵阻害因子の除去を含む。詳細には、本方法を用いて得られる前処理バイオマス生産物は、糖含有量の低下を伴わず、糖化および/または発酵阻害因子をほとんど含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する声明
本発明は、エネルギー省によって授与された契約番号04−03−CA−70224およびDE−FC36−03GO13146の下で、米国政府後援でなされたものであった。政府は本発明における特定の権利を有する。
【0002】
糖化で使用される改善された前処理バイオマス生産物を生成し、高糖含有加水分解物を生産するための方法が提供される。詳細には、本方法を用いて得られる前処理バイオマス生産物は、糖化および/または発酵阻害因子(inhibitor)をほとんど含まない。
【背景技術】
【0003】
農業残渣、木材廃棄物、林業廃棄物、製紙汚泥、および都市および産業固体廃棄物などのセルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、燃料および他の化学物質などの価値のある製品の生産を目的とした潜在的に大きい再生可能供給原料を提供する。セルロース、ヘミセルロース、グルカンおよびリグニンを含んでなる炭水化物ポリマーよりなる、セルロース系およびリグノセルロース系の供給原料および廃棄物は、一般に種々の化学的、機械的および酵素的手段によって処理されることで主にヘキソースおよびペントース糖が放出され、次いで有用な生産物に発酵されうる。
【0004】
最初にバイオマス供給原料が処理され、糖化酵素に対するセルロース系およびリグノセルロース系材料の炭水化物ポリマーの使用がより容易になり得、それは典型的には前処理と称される。次いで、前処理バイオマスは糖化酵素の存在下でさらに加水分解され、加水分解物においてオリゴ糖および/または単糖が放出される。発酵性糖を前処理バイオマスから生産するのに使用される糖化酵素は、典型的には1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼ、例えばセルロースを加水分解するグリコシダーゼ、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼ、ならびにペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよび/またはフェルロイルエステラーゼを含む。バイオマス処理のための糖化酵素および方法については、非特許文献1にレビューされている。
【0005】
バイオマスの前処理の間、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの異なる成分が放出される可能性があり、それは糖類および/または酢酸、ギ酸、レブリン酸、フルアルデヒドおよびフェノール化合物などの化合物を含む副生産物を含みうる。副生産物の一部は、糖化酵素の活性ならびに/またはその後の発酵において使用される微生物の成長および代謝に作用する点で阻害因子である。これらの阻害因子は、糖化および/または発酵工程の効率を低下させうる。例えば糖類の回収による予備加水分解物(prehydrolyzate)の生成などの追加的ステップにより、前記阻害因子を除去するためのいくつかの試みがなされている。これらの手段は、経済的でなくかつ糖類の生産低下をまねくことから不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lynd L.R.ら、Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002年)66:506−577頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、糖類の最大の保持および阻害因子の最低限の存在を有する前処理バイオマスを別々の前処理糖の流れ(予備加水分解物)を形成せずに生産する前処理方法に対する需要が存在する。これは、有用な製品を生産するための糖化とその後の発酵に用いられるより経済的かつ有効な入力バイオマスを提供することになると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改善された前処理バイオマス生産物を調製するための方法であって、
a)バイオマスを提供するステップと、
b)前記バイオマスを適切な条件下でアンモニアを含有する水溶液と接触させ、バイオマス−水性アンモニア混合物を形成することによって前記バイオマスを前処理するステップであって、ここでアンモニアはバイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリ性pHを維持するのに少なくとも十分な濃度で存在するが、ここで前記アンモニアはバイオマスの乾燥重量に対して約12重量パーセント未満で存在し、またさらにここでバイオマスの乾燥重量はバイオマス−水性アンモニア混合物の重量に対して少なくとも約15重量パーセントの高固形物濃度であり、それにより前処理バイオマス固形生産物および1つもしくはそれ以上の阻害因子化合物を含有するバイオマス前処理液が形成されるステップと、
c)前記バイオマス前処理液を除去するステップと、
を含み、ここで前処理バイオマス固形生産物は低減された量の阻害因子化合物および糖含有物のごくわずかな低下を有する、方法を提供する。
【0009】
他の態様では、本方法は、次の様式、すなわち
i)ステップ(b)の前
ii)ステップ(b)における追加的成分として、または
iii)ステップ(b)の後の洗浄ステップとして
の中の1つもしくはそれ以上において追加的水性成分を添加するステップをさらに含む。
【0010】
さらに、前処理バイオマス固形生産物を糖化することで、糖加水分解物が形成され、次いでそれは発酵され、標的化学物質が生産されうる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、本方法によって前処理されたバイオマス、および本方法によって前処理されたバイオマスの糖化によって生産される加水分解物である。さらに他の態様は、本方法によって前処理されたバイオマスの糖化によって生産される加水分解物の生体触媒発酵によって生産される標的化学物質である。
【0012】
バイオマスは、任意のセルロース系またはリグノセルロース系材料、例えば、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、工業固形廃棄物、工場廃棄物、木材および林業廃棄物、ならびにそれらの組み合わせを示す。アンモニアを含有する水溶液は、アンモニアガス、水酸化アンモニウム、尿素、およびそれらの組み合わせから得られうる。アンモニアを含有する水溶液は、少なくとも1つの追加的塩基を含みうる。さらに、本方法においては、真空が、バイオマスとアンモニアを含有する水溶液との接触前にバイオマスに適用されうる。アンモニアはまたステップ(c)の前に除去され、アンモニアは前処理反応器に戻して再生されうる。アンモニアおよびバイオマスは、本方法において、約4℃〜約200℃の間の温度で反応されうる。可塑剤、柔軟剤またはそれらの組み合わせが、本方法において使用されうる。さらに、エネルギーは、サイズを低減するため、暴露表面積を大きくするため、および/または水性アンモニアまたは糖化酵素への接近性を増大するため、ステップ(a)の前、間、または後のバイオマスに適用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
出願人らは、本開示中にすべての引用文献の内容全体を具体的に援用する。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、ある範囲、好ましい範囲、またはより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストとして与えられる場合、これは、任意のより高い範囲限界または好ましい値と任意のより低い範囲限界または好ましい値との任意のペアから形成されるあらゆる範囲を、範囲が別々に開示されるか否かにかかわりなく具体的に開示するものとして理解されるべきである。本明細書中で数値の範囲が挙げられる場合、特に指定のない限り、同範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むように意図されている。本発明の範囲が範囲を規定する場合に挙げられる特定の値に限定されるようには意図されていない。
【0014】
本発明は、前処理バイオマス生産物中の阻害因子の量を低減する、バイオマスの前処理のための方法を提供する。低減された阻害因子の存在故に、前記バイオマスから貴重な製品を生産するための糖化および発酵工程はより効率的である。貴重な化学物質を生産するための廃棄バイオマスを含む再生可能なバイオマスの効率的使用により、オイルに対する需要が低下しうる。
【0015】
定義:
本開示では、多数の用語が使用される。以下の定義が提供される。
用語「発酵性糖」または「糖類」は、発酵工程における微生物による炭素源として使用可能なオリゴ糖および単糖を示す。
【0016】
用語「リグノセルロース系」は、リグニンおよびセルロースの双方を含有する組成物を示す。リグノセルロース系材料はまた、ヘミセルロースを含有しうる。
【0017】
用語「セルロース系」は、セルロースを含有する組成物を示す。
【0018】
バイオマスの「乾燥重量」は、すべてまたは実質的にすべての水が除去されたバイオマスの重量を意味する。乾燥重量は、典型的には、American Society for Testing and Materials(ASTM)のStandard E1756−01(Standard Test Method for Determination of Total Solids in Biomass)またはTechnical Association of the Pulp and Paper Industry,Inc.(TAPPI)のStandard T−412 om−02(Moisture in Pulp,Paper and Paperboard)に従って測定される。
【0019】
用語「可塑剤」および「柔軟剤」は、ポリマー鎖に沿ってのまたはその間での分子間凝集力の低下を引き起こす材料を示す。かかる材料は、例えば、結晶化度を低減するか、またはリグニンおよび非リグニン炭水化物繊維(例えばセルロースまたはヘミセルロース)間の結合を破壊するように作用しうる。
【0020】
用語「糖化」は、多糖類からの発酵性糖の生産を示す。
【0021】
バイオマスに関連する用語「処理する」および「前処理する」は、以下のように関連している。バイオマスが反応物質で処理され、処理バイオマス生産物が形成され、それはまた、前処理バイオマスを形成するために処理するか、または前処理バイオマスを形成するために前処理すると称されうる。「前」の使用は、バイオマスを処理することがバイオマスの糖化前であることを区別する。
【0022】
用語「前処理バイオマス」は、糖化前に前処理が施されているバイオマスを意味する。前処理工程は下記に詳述される。
【0023】
「バイオマス」は、任意のセルロース系またはリグノセルロース系材料を示し、セルロースを含んでなる、かつ場合によりヘミセルロース、リグニン、澱粉、オリゴ糖および/または単糖をさらに含んでなる材料を含む。バイオマスは、タンパク質および/または脂質などの追加成分を含んでなる場合もある。本発明によると、バイオマスは単一のソースから誘導されうるか、またはバイオマスは2つ以上のソースから誘導される混合物を含んでなる可能性がある。すなわち、例えばバイオマスであれば、トウモロコシ穂軸とコーンストーバーまたは繊維の混合物、または草と葉の混合物を含んでなる可能性がある。バイオマスは、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、製紙汚泥、工場廃棄物、木材および林業廃棄物を含むがこれらに限定されない。バイオマスの例として、限定はされないが、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮などの作物残渣、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、草、小麦、小麦のわら、大麦、大麦のわら、まぐさ、稲わら、スイッチグラス、紙くず、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀物の加工から得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花、ならびに動物糞尿が挙げられる。一実施形態では、本発明にとって有用なバイオマスは、比較的高い炭水化物値を有し、比較的密度が高く、かつ/または回収、運搬、保存および/または処理を行うのが比較的容易であるバイオマスを含む。本発明の一実施形態では、有用なバイオマスは、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維およびサトウキビバガスを含む。
【0024】
本発明の目的のため「アンモニアを含んでなる水溶液」は、水性培地内でのアンモニアガス(NH)、水酸化アンモニウムまたはアンモニウムサルフェートなどのアンモニウムイオン(NH)を含んでなる化合物、尿素など、分解時にアンモニアを放出する化合物、およびこれらの組み合わせの使用を示す。
【0025】
糖化のための「酵素共同体」は、バイオマス混合物に作用し、発酵性糖を生産することが可能な酵素の組み合わせである。典型的には、糖化酵素共同体は1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを含有する場合があり、グリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼおよび澱粉を加水分解するグリコシダーゼからなる群から選択されうる。糖化酵素共同体における他の酵素は、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよびフェルロイルエステラーゼを含みうる。
【0026】
低濃度の水性アンモニアを有する高濃度バイオマスの前処理については、共同所有される同時係属中の米国特許出願公開第20070031918A1号明細書に記載されている。出願人は、驚くべきことに、糖化および/または発酵の阻害因子が、米国特許出願公開第20070031918A1号明細書に記載の方法を用いて前処理されるバイオマスから放出される一方、放出される糖類がほとんどないことを見出している。放出される糖類はわずかであると考えられる。例えば、わずかな糖の低下は、最大約10%とする約0.0%、または約0.01%、0.02%、0.04%、0.06%、0.07%、もしくは0.09%である。阻害因子は、前処理バイオマス固形物から分離されうる液体画分の可溶性成分である。液体の除去により、阻害因子が除去されると共に糖の収量が実質的に低減せず、それにより改善された前処理バイオマス生産物が生産される。
【0027】
低水性アンモニア前処理
本方法で用いられる低水性アンモニア前処理においては、アンモニアの濃度は、最低限、バイオマス−水性アンモニア混合物のpHをアルカリ性に維持するのに十分な濃度であり、かつバイオマスの乾燥重量に対して最大で約12重量パーセント未満である。この低いアンモニアの濃度は前処理にとって十分であり、かつ低い濃度はまたバイオマスの乾燥重量に対して約10重量パーセント未満でありうる。バイオマスの乾燥重量に対して6パーセントまたはそれ未満の非常に低い濃度のアンモニアはまた、前処理において使用されうる。アルカリ性は、7.0を超えるpHを意味する。バイオマス−水性アンモニア混合物の8を超えるpHが特に適切である。一実施形態では、アンモニアはバイオマスの乾燥重量に対して約10重量パーセント未満で存在する。バイオマスの乾燥重量に対して約6重量パーセント未満のアンモニアが特に適切である。
【0028】
アンモニアを含有する水溶液は、場合により、少なくとも1つの追加的塩基、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを含みうる。少なくとも1つの追加的塩基は、アンモニウムと結合される量で添加され、バイオマスの乾燥重量に対して約20重量パーセント未満の全塩基の量が形成されうる。好ましくは、第2の塩基+アンモニアの全体は約15重量パーセント未満の量である。追加塩基が用いられることで、例えば、バイオマス中の酸が中和され、糖化酵素における金属イオン、または発酵用成長培地における金属イオンがもたらされうる。
【0029】
本方法では、バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−水性アンモニア混合物の重量の少なくとも約15%の初期濃度である。典型的には、バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−水性アンモニア混合物の重量の少なくとも約15%〜約80%の初期濃度である。別の態様では、バイオマスの乾燥重量は、バイオマス−水性アンモニア混合物の重量の少なくとも約15%〜約60%の濃度である。バイオマス−水性アンモニア混合物中のバイオマスのパーセントは、発酵における使用のため、前処理バイオマスの糖化から得られる糖類の濃度に対する要求を最小限にするように高く保持される。高いバイオマス濃度はまた、前処理材料の全容量を減少させ、工程がより経済的なものになる。
【0030】
バイオマスは、ソースから得られるように直接的に使用されうるか、あるいはエネルギーのバイオマスへの適用により、サイズが低減され、暴露表面積が増加し、かつ/あるいは、アンモニアおよび前処理バイオマスからの糖類の生産に使用される糖化酵素に対するバイオマス中に存在するセルロース、ヘミセルロース、および/またはオリゴ糖の可用性が高まりうる。サイズを低減し、暴露表面積を大きくし、かつ/あるいはアンモニアおよび糖化酵素に対するバイオマス中に存在するセルロース、ヘミセルロース、および/またはオリゴ糖の可用性を高めるのに有用なエネルギー手段は、限定はされないが、ミリング、クラッシング、粉砕、破砕、チョッピング、ディスクリファイニング、超音波、およびマイクロ波を含む。エネルギーのこの適用は、前処理の前、間または後になされうる。
【0031】
低水性アンモニア溶液を伴うバイオマスの前処理は、任意の適切な容器内で実施される。典型的には、容器は圧力に耐えうるものであり、加熱のための機構を有し、かつ内容物を混合するための機構を有する。市販の容器として、例えば、Zipperclave(登録商標)反応器(Autoclave Engineers(Erie,PA))、Jaygo反応器(一般的方法に記載;Jaygo Manufacturing,Inc.(Mahwah,NJ))、およびスチームガン反応器(一般的方法に記載;Autoclave Engineers(Erie,PA))が挙げられる。同様の能力を有する多くの大型反応器が使用されうる。あるいは、バイオマスとアンモニア溶液は1つの容器内で結合され、次いで別の反応器に移動されうる。また、バイオマスは1つの容器内で前処理され、次いでスチームガン反応器(一般的方法に記載;Autoclave Engineers(Erie,PA))などの別の反応器内でさらに処理されうる。使用可能な特に適切な装置は共同所有される同時係属中の米国特許出願第CL3949号明細書に記載され、かつ米国特許出願第CL3949号明細書に記載の装置を使用する低いアンモニア前処理用のシステムは共同所有される同時係属中の米国特許出願第CL3950号明細書に記載されている。
【0032】
バイオマスとアンモニアを含有する水溶液との接触前、真空がバイオマスを有する容器に適用されうる。バイオマスの孔から空気を排出することにより、アンモニアのバイオマスへのさらなる浸透がなされうる。真空を適用するための時間およびバイオマスに適用される負圧の量は、バイオマスのタイプに依存し、かつバイオマスの最適な前処理を行うように経験的に決定されうる(糖化後の発酵性糖の生産によって測定される)。
【0033】
バイオマスとアンモニアを含有する水溶液との接触は、約4℃〜約200℃の温度で行われる。4℃(この温度で注入が可能)でのバイオマスとアンモニアとの初期接触により、前処理されていない天然バイオマスの場合よりも糖化の効率が高まりうる。別の実施形態では、バイオマスの前記接触は約75℃〜約150℃の温度で行われる。さらに別の実施形態では、バイオマスの前記接触は90℃超〜約150℃の温度で行われる。
【0034】
バイオマスとアンモニアを含有する水溶液との接触は、最大で約25時間行われる。より長期間の前処理は可能であるが、実際の経済的理由から短期間が好ましい場合がある。典型的には、アンモニア接触処理の期間は約8時間以下である。
【0035】
一実施形態では、前処理工程は、比較的高い温度で比較的短期間、例えば約100℃〜約150℃で約5分間〜約2時間、実施されうる。別の実施形態では、前処理工程は、より低い温度で比較的長期間、例えば約75℃〜約100℃で約2時間〜約8時間、実施されうる。さらに別の実施形態では、前処理工程は、室温(約22〜26℃)で、約24時間のさらにより長い期間、実施されうる。これらの中間にあたる他の温度および時間の組み合わせもまた用いられうる。
【0036】
前処理工程においては、温度、アンモニアとの接触における時間、アンモニア濃度、1つもしくはそれ以上の追加的塩基の濃度、バイオマス濃度、バイオマスタイプおよびバイオマス粒子サイズなどの「適切な条件」は関連することから、これらの変数は最適な製品を得るために必要に応じて調整されうる。
【0037】
可塑剤、柔軟剤、またはそれらの組み合わせ、例えばポリオール(例えばグリセロール、エチレングリコール)、ポリオールのエステル(例えばグリセロールモノアセテート)、グリコールエーテル(例えばジエチレングリコール)、アセトアミド、エタノール、およびエタノールアミンが、前処理工程(すなわちステップ(a))において添加されうる。可塑剤は、水性アンモニア溶液の成分、分離溶液、または乾燥成分として添加されうる。
【0038】
前処理または前処理反応は、任意の適切な容器、例えばバッチ反応器または連続反応器において実施されうる。当業者は、より高温(100℃超)では圧力容器が必要とされることを理解するであろう。適切な容器は、バイオマス−水性アンモニア混合物を撹拌するための手段、例えばインペラーを装備しうる。反応器の設計については、Lin K.H.およびVan Ness,H.C.(Perry R.H.およびChilton C.H.(編)、「Chemical Engineer's Handbook」、第5版(1973年)、第4章、McGraw−Hill(NY))の中で検討されている。前処理反応は、バッチ工程または連続工程として実施されうる。
【0039】
窒素源が発酵の間における微生物の成長に必要であり、それ故、前処理の間にアンモニアを用いることで、窒素源が提供され、かつ窒素源を伴う発酵の間に使用される成長培地を補充する必要性が低下するかまたはなくなることは当業者には周知である。もし前処理生産物のpHが糖化酵素の活性時でのpHより大きいかまたは発酵における微生物の成長に適する範囲を超える場合、酸を用いることでpHが低下しうる。所望のpHを得るのに用いられる酸の量により、糖化酵素または微生物の成長に対して阻害性を示す濃度での塩の形成がもたらされうる。所望のpHを得るのに必要な酸の量を減少させ、かつ本前処理工程におけるNHの原料コストを低減するため、アンモニアガスを前処理反応器から排出して再生することが可能である。典型的には、アンモニアの少なくとも一部が除去され、これによりpHが低下するが、それに続く発酵における使用においてこの栄養をもたらすいくらかの窒素が残存する。
【0040】
阻害因子の放出および除去
出願人は、驚くべきことに、阻害因子が低水性アンモニアと反応されるバイオマスから放出される一方、糖類がほとんど放出されないことを見出している。阻害因子は糖化および/または発酵に対して有害な化合物であることから、前処理バイオマス生産物中に存在する阻害因子の量を低減することは望ましい。阻害因子は、バイオマスと低水性アンモニアの反応後に固形物と共に存在する液体画分の可溶化成分として見出された。阻害因子を含有するこの液体画分はバイオマス前処理液を形成する。固形物からバイオマス前処理液を除去する結果、放出された阻害因子が除去され、糖類の実質的低下を伴わずに阻害因子組成物を低減している固形物の前処理バイオマス生産物が残存する。
【0041】
この実験結果は、実質的な可溶性糖が前処理中に放出される場合の他のタイプの前処理工程(米国特許第5705369号明細書、米国特許公開第2005161038号明細書、および米国特許公開第20040016525号明細書に記載のものなど)とは異なる。これらの工程では、液体は、典型的には糖類を含有する前加水分解物として回収され、かつ発酵において使用される。したがって、阻害因子もまた液体に放出される場合、それら阻害因子を除去すると共に糖類を失わない簡単な方法は存在しない。溶質分離を含む方法、例えばクロマトグラフィーであれば必要となるが、コストがかかる。
【0042】
本方法では、放出される阻害因子が可溶化され、バイオマス前処理液が形成される場合の液体は、異なる方法で提供されうる水性成分である。水性成分は、前処理工程の任意の段階で添加されうる。水性成分は、アンモニア添加の前、間または後に添加される任意の水に基づく成分でありうる。例えば、バイオマスがバイオマスおよび水性アンモニア混合物の重量に対して約15重量パーセントの固形物濃度で前処理される場合、水は水性アンモニアの添加前にバイオマスに添加されうるか、または水性アンモニアは15パーセントの最終バイオマス濃度にするのに十分な希釈物でありうる。いずれの場合であっても、この濃度では、液体画分がバイオマスおよび水性アンモニア混合物中に存在する可能性が高い。液体はまた、バイオマスが、前処理されているバイオマスのタイプに依存し、20重量パーセントもしくはそれ以上である場合、存在しうる。蒸気が添加され、バイオマスおよび水性アンモニア混合物の温度が上昇する場合、蒸気の部分的凝縮が追加的な水性成分を提供しうる。添加される蒸気の量および液体画分をもたらす凝縮量は、バイオマス、水性アンモニア、および反応容器の初期温度、ならびに前処理における最終温度を含む因子に依存することになる。当業者は、凝縮蒸気の使用条件下での寄与度を容易に判定するであろう。その他としてまたはそれに加え、例えば、水がバイオマスに水性アンモニアとの反応後に添加され、かつ放出される阻害因子がこの添加される水に可溶化する場合での洗浄ステップがありうる。
【0043】
可溶化された阻害因子は、低水性アンモニアで処理されたバイオマスから放出される、糖化および/または発酵に対して有害な任意の化合物でありうる。発酵の阻害因子である酢酸およびアセトアミドが実質的部分としてバイオマス前処理液中に存在した。これらの化合物は、バイオマス試料から潜在的には放出されうる酢酸およびアセトアミドの理論量の約10%を示すレベルで液中に見出された。酢酸およびアセトアミドは、細菌細胞の一部のタイプの強力な成長阻害因子である。例えば、酢酸は、一般に発酵製品中で成長される大腸菌(E.coli)の阻害因子である。別の例が、エタノール生産のための発酵において使用される細菌ザイモモナス(Zymomonas)である。
【0044】
当業者に周知の方法、例えば、脱液、デカンティング、遠心分離、吸引、および/または濾過により、バイオマス前処理液は除去され、それは前処理固形物から分離されうる。さらに、バイオマスは押圧により、液をその除去において放出しうる。バイオマスを押圧し、液体を除去する場合、バイオマスをコンパクト化せず、糖化の間によりよい性能を発揮させることは好ましい。
【0045】
バイオマス前処理液の除去後、残存する前処理バイオマス生産物は、糖化、または同時糖化および発酵(SSF)において使用される。バイオマスから十分な量の糖類を得るため、バイオマスは水性アンモニア溶液で1回もしくはそれ以上の回数前処理されうる。同様に、糖化反応は1回もしくはそれ以上の回数行われうる。前処理および糖化工程の双方は所望される場合に繰り返され、より高収量の糖類が得られうる。前処理および糖化工程の性能を別々にまたは併せて評価するため、初期バイオマスから誘導可能な糖類の理論収量が決定され、測定された収量と比較されうる。
【0046】
糖化:
次いで、本方法に従って調製される改善された前処理バイオマスは糖化酵素共同体の存在下でさらに加水分解され、加水分解物におけるオリゴ糖および/または単糖が放出される。糖化酵素およびバイオマス処理のための方法については、Lynd,L.R.ら(Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2002年)66:506−577頁)中でレビューされている。
【0047】
糖化に先立ち、前処理バイオマスを処理し、糖化酵素共同体の酵素が活性を示すようにpH、組成または温度を変更しうる。pHは、固体または液体形態での酸の添加を通じて変更されうる。あるいは、二酸化炭素(CO)は、発酵から回収されうるものであり、使用によりpHが低下しうる。例えば、COは、発酵槽から回収され、フラッシュタンク内のヘッドスペースの前処理生産物に供給されるか、または、十分な液体が存在する場合、所望されるpHが得られるまでpHを監視しながら、前処理バイオマスを介して泡立たせられる場合がある。下記のとおり、温度は糖化酵素の活性に適合する温度に誘導されうる。糖化にて用いられる酵素の活性にとって必要な任意の共同因子が追加されうる。
【0048】
糖化酵素共同体は、主に、二糖、オリゴ糖、および多糖のエーテル結合を加水分解する群「グリコシダーゼ」より選択される(がこれらに限定されない)1つもしくはそれ以上の酵素を含んでなり、酵素分類として、一般群「加水分解酵素」(EC3.)のEC3.2.1.x(Enzyme Nomenclature 1992年、Academic Press(San Diego、CA)に加え、Supplement 1(1993年)、Supplement 2(1994年)、Supplement 3(1995)、Supplement 4(1997年)およびSupplement 5[各々、Eur.J.Biochem.(1994年)223:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1995年)232:1−6頁、Eur.J.Biochem.(1996年)237:1−5頁、Eur.J.Biochem.(1997年)250:1−6頁、およびEur.J.Biochem.(1999年)264:610−650頁])において見出される。本方法において有用なグリコシダーゼを、それらが加水分解するバイオマス成分によって分類してもよい。本方法において有用なグリコシダーゼは、セルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ)、ヘミセルロースを加水分解するグリコシダーゼ(例えば、キシラナーゼ、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノキシラナーゼ、マンナーゼ、ガラクターゼ、ペクチナーゼ、グルクロニダーゼ)、および澱粉を加水分解するグリコシダーゼ(例えば、アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ)を含む。さらに、ペプチダーゼ(EC3.4.x.y)、リパーゼ(EC3.1.1.xおよび3.1.4.x)、リグニナーゼ(EC1.11.1.x)、ならびにフェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)などの糖化酵素共同体に他の活性を付加することで多糖のバイオマスの他の成分からの放出を促進することは有用でありうる。多糖を加水分解する酵素を生産する微生物が、異なる基質特異性を有する数種の酵素または酵素群によって触媒される、セルロース分解などの活性を示すことが多いことは当該技術分野で周知である。したがって、微生物由来の「セルラーゼ」は、酵素群を含んでなる場合があり、それらのすべてはセルロース分解活性に寄与しうる。セルラーゼなどの商用または非商用の酵素製剤は、酵素を得るのに用いられる精製スキームに依存し、極めて多数の酵素を含んでなる場合がある。したがって、本方法の糖化酵素共同体は「セルラーゼ」などの酵素活性を含んでなる場合があるが、この活性は2種以上の酵素によって触媒されうると理解されている。
【0049】
糖化酵素は、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼ(Genencor International(Rochester、NY))およびMultifect(登録商標)キシラナーゼ(Genencor)など、商用的に入手可能である。さらに、糖化酵素は、組換え微生物の使用を含む生物学的に生産されうる。
【0050】
当業者であれば、共同体中で使用するための酵素の有効量を決定しかつ最適な酵素活性のための条件を調節する方法を知るであろう。当業者であれば、共同体中で必要とされる酵素活性のクラスを最適化しかつ選択された条件下での所定の前処理生産物の最適な糖化を得る方法も知るであろう。
【0051】
好ましくは、糖化反応は、糖化酵素における最適な温度およびpHでまたはそれらの近傍で行われる。本方法における糖化酵素共同体の場合に用いられる最適な温度は約15℃〜約100℃の範囲である。別の実施形態では、最適な温度は約20℃〜約80℃の範囲である。pH最適値は約2〜約11の範囲でありうる。別の実施形態では、本方法において糖化酵素共同体の場合に用いられるpH最適値は約4〜約10の範囲である。
【0052】
約数分〜約120時間、および好ましくは約数分〜約48時間で糖化を行ってもよい。反応における時間は、酵素濃度および比活性、ならびに用いられる基質および温度およびpHなどの環境条件に依存することになる。当業者であれば、特定の基質および糖化酵素共同体の場合に用いられるべき温度、pHおよび時間の最適な条件を容易に決定できる。
【0053】
糖化をバッチ式または連続方法で行ってもよい。さらに、糖化を1工程または多数の工程で行ってもよい。例えば、糖化に必要な異なる酵素は異なる最適なpHまたは温度を示しうる。ある温度およびpHで酵素を用いて一次処理を行った後、異なる温度および/またはpHで異なる酵素を用いて二次または三次(またはさらなる)処理を行ってもよい。さらに、順次工程で異なる酵素を用いた処理は、同じpHおよび/または温度で、あるいは、より高いpHおよび温度で安定でかつより活性のあるヘミセルラーゼ、次いでより低いpHおよび温度で活性のあるセルラーゼの使用など、異なるpHおよび温度で行われうる。
【0054】
糖化後のバイオマスからの糖類の可溶化の度合いを、単糖およびオリゴ糖の放出の測定により監視してもよい。単糖およびオリゴ糖を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、1,3−ジニトロサリチル(DNS)酸アッセイ(Miller,G.L.、Anal.Chem.(1959年)31:426−428頁)を用いて還元糖の濃度を測定してもよい。あるいは、本明細書中の「一般的方法」の項に記載のように、適切なカラムを使用し、HPLCにより糖類を測定してもよい。
【0055】
発酵
バイオマスから放出された発酵性糖の適切な微生物による使用により、標的化学物質を生産してもよい。糖化後であるが発酵に先立ち、糖化混合物を例えば蒸発により濃縮することで、発酵性糖の濃度が増加しうる。場合により、糖化生産物中の液体は、バッチ式または連続的な方法で固体から分離されうる。場合により、液体または糖化生産物全体は、発酵に先立ち殺菌されうる。pHについては、発酵の間に用いられる微生物および糖化の間に用いられるpHに依存し、発酵に適するpHに調節されうる。さらに、糖化混合物に微生物の成長にとって必要な追加の栄養を補充することが可能である。補充物は、例えば、酵母抽出物、特定のアミノ酸、リン酸塩、窒素源、塩、および微量元素を含みうる。抗生物質など、特定の生体触媒によって作製される特定の生産物の生産にとって必要な成分もまた含まれることで、酵素触媒反応において必要とされるプラスミドまたは共同因子の維持が可能である。さらに追加の糖類が含まれることで、全糖濃度が増加しうる。糖化混合物は発酵培養液の成分として用いられ、例えば最終培地の約100%〜約10%を構成しうる。
【0056】
温度および/またはヘッドスペースガスもまた、発酵微生物にとって有用な条件に応じて調節されうる。発酵は好気性または嫌気性でありうる。発酵は、糖化に続いて行われうるか、または同時糖化および発酵(SSF)により、糖化と同時に行われうる。SSFにより、糖化によってもたらされる糖レベルが低く保持され、それにより、起こり得る糖化酵素の生産物の阻害が低下し、汚染微生物における糖の使用可能性が低下し、かつ前処理されたバイオマスの単糖および/またはオリゴ糖への変換が改善される可能性がある。
【0057】
生体触媒を使用した発酵によって生産されうる標的化学物質は、例えば、酸、アルコール、アルカン、アルケン、芳香族化合物、アルデヒド、ケトン、生体高分子、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン、抗生物質、および医薬品を含む。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトールを含むがこれらに限定されない。酸は、酢酸、乳酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、酪酸、グルコン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸およびレブリン酸を含む。アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、リジン、グリシン、アルギニン、トレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。追加の標的化学物質は、メタン、エチレン、アセトンおよび工業用酵素を含む。
【0058】
標的化学物質への糖類の発酵が、単一または多段階の発酵において、1つもしくはそれ以上の適切な生体触媒により行われうる。生体触媒は、細菌、糸状真菌および酵母より選択される微生物でありうる。生体触媒は、野生型微生物または組換え微生物である場合があり、エスケリキア(Escherichia)、ジモモナス(Zymomonas)、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ピキア(Pichia)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、およびクロストリジウム(Clostridium)を含む。別の実施形態では、生体触媒は、組換え大腸菌(Escherichia coli)、ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、クロストリジア・サーモセルム(Clostridia thermocellum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリチクム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、およびピキア・スチピチス(Pichia stipitis)よりなる群から選択されうる。
【0059】
標的化学物質を生産するための発酵にて用いられる多数の生体触媒については記載がなされており、他のものは発見されるか、突然変異によって生産されるか、または組換え手段によって設計されうる。本システムを使用した、前処理バイオマスの糖化から生産される発酵性糖を用いる任意の生体触媒を使用し、発酵による生産が知られている標的化学物質が作製されうる。
【0060】
特に、エタノールおよびブタノールを含む生物燃料を生産する生体触媒が重要である。たとえば発溶媒性(solventogenic)クロストリジア(Clostridia)によるアセトン、ブタノールおよびエタノール(ABE発酵)への炭水化物の発酵については周知である(JonesおよびWoods(1986年)Microbiol.Rev.50:484−524頁)。クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)の変異株を用いる、高レベルのブタノールを生産し、さらにアセトンおよびエタノールを生産するための発酵方法が、米国特許第5,192,673号明細書に記載されている。高レベルのブタノールを生産し、さらにアセトンおよびエタノールを生産するためのクロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)の変異株の使用については、米国特許第6,358,717号明細書に記載されている。共同所有される同時係属中の特許出願、国際公開第2007/041269号パンフレットおよび国際公開第2007/050671号パンフレットは、遺伝子操作された微生物宿主内での1−ブタノールおよびイソブタノールのそれぞれの生産について開示している。共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/741892号明細書および米国特許出願第11/741916号明細書は、遺伝子操作された微生物宿主内での2−ブタノールの生産について開示している。イソブタノール、1−ブタノールまたは2−ブタノールは、開示される方法に従う、微生物宿主による、本システムを用いて生産される加水分解物の発酵から生産されうる。
【0061】
大腸菌(E.coli)の遺伝子組換え株は、エタノール生産用の生体触媒としても用いられている(Underwoodら、(2002年)Appl.Environ.Microbiol.68:6263−6272頁)。エタノールの生産を改善しているジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の遺伝子組換え株については、米国特許出願公開第2003/0162271A1号明細書に記載されている。アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)のさらに改変されたエタノール生産株およびエタノール生産のためのその使用については、共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書および米国特許出願第60/847856号明細書においてそれぞれ記載されている。エタノールは、開示される方法に従う、アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)による、本システムを用いて生産される加水分解物の発酵から生産されうる。発酵性糖に対する、除去された阻害因子を含有する前処理液を有する前処理バイオマスの糖化、それに続く糖類の標的化学物質への発酵については、エタノールへの糖類の発酵における、生体触媒としてアルコール発酵菌(Z.mobilis)を使用する前処理トウモロコシ穂軸からのエタノールの生産についての本明細書中の実施例4に例示される。
【0062】
乳酸は、大腸菌(E.coli)の組換え株(Zhouら、(2003年)Appl.Environ.Microbiol.69:399−407頁)、バチルス(Bacillus)の天然株(米国特許出願公開第2005/0250192号明細書)、および糸状菌(Rhizopus oryzae)(TayおよびYang(2002年)Biotechnol.Bioeng.80:1−12頁)による発酵において生産されている。大腸菌(E.coli)の組換え株は、1,3プロパンジオール(米国特許第6,013,494号明細書、米国特許第6,514,733号明細書)およびアジピン酸(Niuら、(2002年)Biotechnol.Prog.18:201−211頁)を生産するための発酵における生体触媒として用いられている。酢酸は、組換えクロストリジア(Clostridia)(Cheryanら、(1997年)Adv.Appl.Microbiol.43:1−33頁)および新規に同定された酵母株(Freer、(2002年)World J.Microbiol.Biotechnol.18:271−275頁)を用いた発酵により作られている。組換え大腸菌(E.coli)および他の細菌によるコハク酸の生産については、米国特許第6,159,738号明細書中で、および変異組換え大腸菌(E.coli)によるものについてはLinら、(2005年)Metab.Eng.7:116−127頁中で記載されている。ピルビン酸は、トルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata)変異酵母(Liら、(2001年)Appl.Microbiol.Technol.55:680−685頁)および変異大腸菌(E.coli)(Yokotaら、(1994年)Biosci.Biotech.Biochem.58:2164−2167頁)により生産されている。大腸菌(E.coli)の組換え株は、パラ−ヒドロキシケイ皮酸(米国特許出願公開第2003/0170834号明細書)およびキナ酸(米国特許出願公開第2006/0003429号明細書)を生産するための生体触媒として用いられている。
【0063】
プロピオン酸を生産するための発酵においては、プロピオニバクテリウム・アシジプロピオニシ(Propionibacterium acidipropionici)の変異体が用いられており(SuwannakhamおよびYang(2005年)Biotechnol.Bioeng.91:325−337頁)、酪酸についてはクロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)により作られている(WuおよびYang(2003年)Biotechnol.Bioeng.82:93−102頁)。プロピオン酸塩およびプロパノールについては、クロストリジウム属(Clostridium sp.)株17cr1(Janssen、(2004年)Arch.Microbiol.182:482−486頁)によるトレオニンからの発酵により作られている。酵母様の黒酵母(Aureobasidium pullulans)を用い、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の変異体(Singhら、(2001年)Indian J.Exp.Biol.39:1136−43頁)によりグルコン酸が作られている(アナンタシアジス(Anantassiadis)ら、(2005年)Biotechnol.Bioeng.91:494−501頁)。5−ケト−D−グルコン酸がグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)の変異体により作られ(Elfariら、(2005年)Appl Microbiol.Biotech.66:668−674頁)、イタコン酸がアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の変異体により生産され(ReddyおよびSingh(2002年)Bioresour.Technol.85:69−71頁)、クエン酸がアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)変異株により生産され(Ikram−Ul−Haqら、(2005年)Bioresour.Technol.96:645−648頁)、かつキシリトールがカンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)FTI 20037により生産された(MussattoおよびRoberto(2003年)J.Appl.Microbiol.95:331−337頁)。4−ヒドロキシバレレートを含有するバイオポリエステルは、大量の3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸も含有するものであり、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)の組換え体により生産された(Gorenfloら、(2001年)Biomacromolecules 2:45−57頁)。L−2,3−ブタンジオールが組換え大腸菌(E.coli)により作られた(Uiら、(2004年) Lett.Appl.Microbiol.39:533−537頁)。
【0064】
発酵によるアミノ酸の生産は、栄養要求株およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)およびセラティア(Serratia)のアミノ酸類似体−耐性菌を用いて行われている。例えば、ヒスチジン類似体に耐性を示す株を用いたヒスチジンの生産が日本特許出願公開第56008596号公報に、組換え株を用いた同生産が欧州特許第136359号明細書に記載されている。トリプトファン類似体に耐性がある株を使用するトリプトファンの生産については、日本特許第47004505号公報および日本特許第51019037号公報に記載されている。イソロイシン類似体に耐性がある株を使用するイソロイシンの生産については、日本特許第47038995号公報、日本特許第51006237号公報、日本特許第54032070号公報に記載されている。フェニルアラニン類似体に耐性がある株を使用するフェニルアラニンの生産については、日本特許第56010035号公報に記載されている。成長にフェニルアラニンを必要とし、チロシンに耐性を示す株(Agr.Chem.Soc.Japan 50(1)R79−R87(1976年))または組換え株(欧州特許第263515号明細書、欧州特許第332234号明細書)を用いたチロシンの生産、およびL−アルギニン類似体に耐性を示す株を用いたアルギニンの生産(Agr.Biol.Chem.(1972年)36:1675−1684頁、日本特許出願公開第54037235号公報および日本特許出願公開第5715038号公報)が記載されている。フェニルアラニンは、大腸菌(Eschericia coli)株ATCC31882、31883、および31884内での発酵によっても生産された。組換えコリネフォルム細菌におけるグルタミン酸の生産が、米国特許第6,962,805号明細書に記載されている。大腸菌(E.coli)の変異株によるトレオニンの生産が、OkamotoおよびIkeda(2000年)J.Biosci Bioeng.89:87−79頁に記載されている。メチオニンが、コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)の変異株によって生産された(Kumarら、(2005年)Bioresour.Technol.96:287−294頁)。
【0065】
有用なペプチド、酵素、および他のタンパク質もまた、生体触媒(例えば、米国特許第6,861,237号明細書、米国特許第6,777,207号明細書、米国特許第6,228,630号明細書)によって作られている。
【0066】
本発明の方法はまた、バイオマスからの1,3−プロパンジオールの生産において使用されうる。大腸菌(E.coli)の組換え株は発酵における生体触媒として使用され、1,3プロパンジオールが生産されている(米国特許第6013494号明細書、米国特許第6514733号明細書)。共同所有される同時係属中の米国特許出願第11/403087号明細書の実施例10に記載のように、本システムを用いて前処理されるバイオマスは糖化可能であり、糖化後、大腸菌(E.coli)の使用によって1,3−プロパンジオールが生産される。
【0067】
生体触媒による発酵にて生産される標的化学物質は、当該技術分野で既知の様々な方法を用いて回収されうる。生産物は、遠心分離、濾過、精密濾過、およびナノ濾過により、他の発酵成分から分離されうる。生産物は、イオン交換、溶媒抽出、または電気透析により抽出されうる。凝集剤を使用することで、生産物の分離が促進される。具体例として、バイオ生産された1−ブタノールは、ABE発酵についての当該技術分野で既知の方法を用いて発酵培地から単離されうる(例えば、Durre、Appl.Microbiol.Biotechnol.49:639−648頁(1998年)、Grootら、Process.Biochem.27:61−75頁(1992年)、およびそれらの中の参考文献を参照)。例えば、遠心分離、濾過、デカンテーションまたは同類のものにより、固体が発酵培地から除去されうる。次いで、1−ブタノールは、蒸留、共沸蒸留、液体−液体抽出、吸着、ガスストリッピング、膜蒸発、または透析蒸発などの方法を用いて発酵培地から単離されうる。発酵媒体からの1,3プロパンジオールの精製が、例えば、反応混合物に有機溶媒、蒸留、およびカラムクロマトグラフィーによる抽出を施すことにより実施されうる(米国特許第5,356,812号明細書)。この方法にとって特に良好な有機溶媒はシクロヘキサンである(米国特許第5,008,473号明細書)。アミノ酸は、イオン交換樹脂吸着および/または結晶化などの方法により発酵培地から回収されうる。
【実施例】
【0068】
一般的方法および材料
以下の略語が使用される。すなわち、「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィー、「C」は摂氏、「kPa」はキロパスカル、「m」はメートル、「mm」はミリメートル、「kW」はキロワット、「μm」はマイクロメートル、「μL」はマイクロリットル、「mL」はミリリットル、「L」はリットル、「min」は分、「mM」はミリモル、「cm」はセンチメートル、「g」はグラム、「kg」はキログラム、「wt」は重量、「hr」は時間、「temp」もしくは「T」は温度、「theoret」は理論、「pretreat」は前処理、「DWB」はバイオマス乾燥重量、「ASME」はAmerican Society of Mechanical Engineers(米国機械学会)、「s.s.」はステンレス鋼である。
【0069】
硫酸、水酸化アンモニウム、酢酸、アセトアミド、酵母抽出物、グルコース、キシロース、ソルビトール、MgSO・7HO、リン酸およびクエン酸を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。
【0070】
Jaygo反応器
Jaygo反応器は、Hastelloy(登録商標)C−22合金製の130リットル(直径約51cm×長さ91cm)の水平のパドル型反応器(Jaygo Manufacturing,Inc.(Mahwah,NJ))である。反応器は約177℃(862kPa)に加熱可能な蒸気ジャケットを装備する。バイオマスを最高で前処理温度まで速やかに誘導するため、直接蒸気注入も用いる。蒸気圧を調節および制御し、所望の前処理温度を維持する。極めて多くのポートにより、他の溶媒および温液の注入が可能になる。
【0071】
大型バレルピストン反応器
ピストンを装備した5.1cm×68.6cmのステンレス鋼バレルで水平方向に構成される(ASMEコードがスタンプされた)大型バレルピストン反応器を組み立てた。ピストンを4つのOリングでバレルに密封し、吐出行程中、ピストンの裏側を窒素で加圧した。68.6cmのバレルに8つの複数の使用ポート(4つはそれぞれ頂部および底部表面沿い)を装備し、真空の適用、水性アンモニアの注入、蒸気の注入およびバレル内部の温度を測定するための熱電対の挿入を可能にした。反応器バレルに、バレルのさらなる加熱のための蒸気ジャケットを装備した。反応器バレルを、15.2cm×61cmのステンレス鋼フラッシュタンクに垂直方向に直接装着した。バレルを、円錐状ノズルおよびシート端部剪断弁装置により、フラッシュタンクから隔てた。端部の弁を剪断するダイの直径は3.5cmであった。円錐状ノズルおよびシートに対する背圧は調整可能であり、大部分の試験を、端部剪断弁のコーン部に接続された10.2cm直径のエアシリンダへの約138kPa(ゲージ圧)の背圧を用いて実施した。端部剪断弁のコーン部は最大で1.6cm後方移動でき、粒子のフラッシュタンクへの排出を可能にした。固形物がタンクの底部におけるドーム状端部フランジのボルトを緩めることによって容易に除去される場合、端部剪断弁の出口にあるエルボーが前処理固形物をフラッシュタンクの底部へと下方誘導した。フラッシュタンクに対して上部にあるドーム状フランジにフラッシュタンクの軸に対して直角に機械加工されたスロットに適合する特別な出口を組み込んだことで、放出された蒸気のコーナ軌跡周辺から出口フィッチングへの移動が引き起こされ、それは同伴されるバイオマス粒子および水滴のベントコンデンサへのキャリーオーバーの防止に役立った。3つの電気バンドヒーター(60℃に設定)および絶縁部をフラッシュタンクに沿って追加し、熱で前処理された固形物の加熱容器へのフラッシュを可能にし、商業用工程のシミュレーションが改善された。
【0072】
フェドバッチ糖化反応器
この反応器は、共同所有される同時係属中の米国特許出願第CL3873号明細書により詳細に記載されている。
【0073】
フェドバッチ糖化反応器は、循環ポンプ、酸および塩基用ポンプ、ソレノイド弁、温度制御用熱交換器、蒸気供給、プロセス水、空気供給制御弁および濾過、背圧制御弁、ならびに排気フィルタを有する、BioStat EDデータ制御ユニットおよびそれに関連する制御モジュールによって制御される15Lの発酵糖(B.Braun Biotech International(Allentown,PA))である。発酵糖に2つの11.4cm直径の3枚羽根高効率Ligntnin A−310インペラーを装備した。底部インペラーを反応器底部から7.6cmの所に位置づけ(底部を貫通する駆動シャフトにおけるシャフトの底部近傍に大型シール装置が存在することから、それをより近い任意の場所に位置させることができなかった)、上部インペラーを反応器底部から22.9cmの所に位置づけた。発酵糖容器は、19.0cmの直径および55.9cmの最大高さを有する。4つの取り外し可能なバッフルを設置し、その各々は1.6cmの幅および48.3cmの長さを有し、容器底部から頂部の約7.6cm以内に延在した。APVローブポンプ(モデルM1/028/06)、1〜1/2−in(3.81cm)のフレキシブルホースおよびTeflonサイトフローインジケータ(sight flow indicator)で構成されるポンプアラウンドループ(pump around loop)を、発酵槽システム上の頂部および底部ポートに垂直に配置した(plumbed)。ポンプアラウンドループを、CF8Mボディ、316s.s.ボール、およびPTFEシートと共に、1〜1/2−in(3.81cm)のValmicroおよびSVFフルポートボールバルブを有する発酵容器から隔てた。さらに、Vポート剪断弁(Triac Controls)を、ボールバルブに先行し、ローブポンプの下流に位置づけることで、発酵糖の頂部ポートからポンプを隔てた。再循環サイクル中、この弁を最大60°まで徐々に閉じることで、再循環する前処理固形物のさらなる剪断をもたらした。
【0074】
分析法
固形物中のグルコースおよびキシロースの定量
各初期バイオマス試料中のグルコースおよびキシロースの量を、当該技術分野で周知の方法、例えばASTME1758−01「Standard method for the determination of carbohydrates by HPLC」を使用して測定した。
【0075】
可溶性糖、アセトアミド、乳酸および酢酸含有量の測定
糖化液中または発酵培養液中の可溶性糖(グルコース、セロビオース、キシロース、ガラクトース、アラビノースおよびマンノース)、酢酸およびエタノールを、適切な保護カラムを有するBio−Rad HPX−87PおよびBio−Rad HPX−87Hカラム(Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA))を使用し、HPLC(Agilent Model 1100、Agilent Technologies(Palo Alto,CA))によって測定した。試料のpHを測定し、必要に応じ硫酸を用いて5〜6に調節した。次いで、試料を直接に0.2μmのシリンジフィルターを通してHPLCバイアルに通過させた。HPLCの稼動条件は以下の通りであった。
HPX−87P(炭水化物用):
注入容量:10〜50μL、濃度および検出器の限界に依存
移動相:HPLCグレードの水、0.2μmに濾過および脱気
流速:0.6mL/分
カラム温度:80〜85℃、ガードカラム温度<60℃
検出器温度:可能な限り主カラム温度に近い
検出器:屈折率
実行時間:35分間のデータ収集に加え、実行後の15分間(後の溶出化合物のために可能な調節を行う)
Biorad Aminex HPX−87H(炭水化物、酢酸およびエタノール用)
注入容量:濃度および検出器限界に依存して5〜10μL
移動相:0.2μmで濾過され、脱気された0.01N硫酸
流速:0.6mL/分
カラム温度:55℃
検出器温度:可能な限りカラム温度に近づける
検出器:屈折率
実行時間:25〜75分間のデータ収集
実行後、試料中の濃度を各化合物における標準曲線から判定した。
【0076】
実施例1
低温前処理後における糖類の弱い可溶化
全粒または粉砕トウモロコシ穂軸(約13kg、乾燥重量基準)をJaygo反応器に負荷した。穂軸を、プレートC−2975を装備するディスクリファイナーに通過させることによって粉砕した(一般的方法)。生産された粉砕穂軸を1.27cmのスクリーンに通過させた。保持された任意の切片を、再びディスクリファイナーに0.5cmのより小さい間隙で通過させた。反応器に真空を適用し、希釈水酸化アンモニウム溶液を注入することで、表3に示すように所望の最終アンモニア濃度(2%もしくは6% NH3重量/乾燥バイオマス重量)および乾燥バイオマスの濃度(30%もしくは40% 乾燥バイオマス重量/全バイオマス−水性アンモニア混合物重量)が得られた。全粒穂軸の場合、初期アンモニア濃度は6%(重量/乾燥バイオマス重量)でありかつ乾燥バイオマス濃度は40%であった。粉砕穂軸の場合、初期アンモニア濃度は2%(重量/乾燥バイオマス重量)でありかつ乾燥バイオマス濃度は30%であった。真空を解放し、全粒トウモロコシ穂軸試料に対して93℃および粉砕トウモロコシ穂軸試料に対して85℃の温度まで浸漬しながら、蒸気をジャケットに適用して穂軸を加熱した。加熱速度を高める目的で、短時間の増加した撹拌器速度(最大96rpm)を適用した。浸漬した穂軸の温度を、32rpmで常に混合しながら、全粒穂軸においては8時間または粉砕穂軸においては4時間保持し、次いで連続混合しながら一晩冷却しておいた。反応器からの前処理バイオマスの除去前、反応器を90℃、真空下に置き、アンモニアを前処理バイオマスから揮散させた。
【0077】
全粒穂軸の前処理バイオマス混合物の固相および液相の組成物を一般的方法に記載のように分析した結果を表1に示す。量は初期バイオマス中の理論量の%として示され、ここで酢酸およびアセトアミドは併せてバイオマス中のアセチルに対応する。グルコースおよびキシロースが主に固形物中(それぞれセルロースおよびヘミセルロース中)に残されると共に、ごく少量の可溶性オリゴマーが液体中で測定された。供給原料アセチルの全部が、酢酸またはアセトアミドのいずれかとして液相中に見出された。
【0078】
【表1】

【0079】
粉砕穂軸の前処理バイオマス混合物の固相および液相の組成物を一般的方法に記載のように分析した結果を表2に示す。量は初期バイオマス中の理論量の%として示され、ここで酢酸およびアセトアミドは併せてバイオマス中のアセチルに対応する。全粒穂軸前処理バイオマスと同様、グルコースおよびキシロースが主に固形物中(それぞれセルロースおよびヘミセルロース中)に残されると共に、ごく少量の可溶性オリゴマーが液体中で測定された。また、供給原料アセチルの全部が、酢酸またはアセトアミドのいずれかとして液相中に見出された。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例2
高温前処理後における糖類の弱い可溶化
実施例1に記載のように調製した粉砕トウモロコシ穂軸(13kg、乾燥基準)をJaygo反応器に負荷した。反応器に対して真空を引いた後、2%アンモニア(wt/wt乾燥バイオマス)および30%バイオマスの乾燥重量濃度を与えるのに適切な強度の水酸化アンモニウム溶液を反応器にポンピングすると共に、室温、32rpmで混合した。次いで、反応器の内容物を、低圧のジャケット蒸気を使用して95℃に加熱した。一旦反応器が95℃に達すると、直接蒸気注入を用いて反応器の内容物を145℃に加熱した。反応器が145℃に達すると、反応器の内容物を、ジャケット蒸気および部分的な直接蒸気注入を用いてその温度で20分間保持した。20分後、反応器に至る通気口上で真空を引き、シュレッダーモーターを5分間作動させた。1時間後、ジャケットに対して冷却水を作動させた。Jaygo反応器の内容物を33℃〜37℃の間に冷却し、次いで反応器をCOを用いて138kPaまで加圧した。加圧されたCO雰囲気を30分間維持した。反応器の内容物の最終温度は27℃〜31℃の間であった。浸漬/前処理されたバイオマスのpHは約7.5であった。
【0082】
前処理バイオマス混合物の固相および液相の組成物を一般的方法に記載のように分析した結果を表3に示す。量は初期バイオマス中の理論量の%として示され、ここで酢酸およびアセトアミドは併せてバイオマス中のアセチルに対応する。実施例1における低温前処理バイオマスと同様、グルコースおよびキシロースが主に固形物中(それぞれセルロースおよびヘミセルロース中)に残されると共に、ごく少量の可溶性オリゴマーが液体中で測定された。また、供給原料アセチルの全部が、酢酸またはアセトアミドのいずれかとして液相中に見出された。
【0083】
【表3】

【0084】
実施例3
前処理液が発酵阻害因子を含有する
一連の前処理を、以下のように(一般的方法に記載の)大型バレルピストン反応器内で実施した。蒸気をバレルのジャケットに添加し、(一般的方法に記載の)大型バレルピストン反応器のバレルを約130℃に予熱した。フラッシュレシーバーをバンドヒーターで約60℃に予熱した。全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(delumper)(1.5kWモーター、Franklin Miller Inc.(Livingston,NJ))で加工した後、1.9cmの米国標準スクリーンを装備したSweco製スクリーンでスクリーニングし、全粒穂軸をより小さい断片に粉砕した。これらの粉砕穂軸(175g、乾燥重量基準)を、穂軸をピストンを取り出した反応器の端部に手作業で入れることにより、大型バレルピストン反応器に負荷した。ピストンを元に戻し、端部に差し込んだ。真空を反応容器およびフラッシュレシーバーに適用し、10kPa未満に降圧し、希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器に注入し、6g/100gバイオマス乾燥重量のアンモニア濃度および45g/100g全バイオマス−水性アンモニア混合物のバイオマス乾燥重量濃度を得た。一旦アンモニアを負荷すると、蒸気を反応器に注入し、温度を145℃にした。混合物を、温度を監視し、必要に応じて蒸気を添加することにより、この温度で10分間保持し、次いでピストンを駆動することによって予熱したフラッシュタンクに排出した。フラッシュレシーバーが約59℃に達するまでフラッシュタンクに対して真空を引いた。シリーズAにおいては12のかかる前処理を実施し、シリーズBにおいては13のかかる前処理を実施した。固形物を、フラッシュタンクの底部を取り出すことによって採取した。任意の過剰な液体を固形物から排出し、各前処理のシリーズから回収したすべての液体を共にプールした。この液体を、一般的方法に記載のように、糖含有物、酢酸およびアセトアミドについて分析した。表4および5に示されるように、液体は糖類が非常に少ない一方、より多量の酢酸およびアセトアミドを含有した。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
実施例4
除去される液体中に阻害因子を伴う前処理バイオマスからの糖化加水分解物を使用するエタノールの生産
蒸気をバレルのジャケットに添加し、(一般的方法に記載の)大型バレルピストン反応器のバレルを約130℃に予熱した。フラッシュレシーバーをバンドヒーターで約60℃に予熱した。粉砕穂軸を以下のように調製した。全粒トウモロコシ穂軸を、約0.95cmのジョー間隔を有するジョークラッシャー(2.2kWモーター)、その後にデランパー(delumper)(1.5kWモーター、Franklin Miller Inc.(Livingston,NJ))で処理し、その後に1.9cmの米国標準スクリーンを装備するSwecoスクリーンでスクリーニングし、全粒穂軸をより小さい切片に粉砕した。これらの加工済み穂軸(175g、乾燥重量基準)を、穂軸をピストンを取り出した反応器の端部に手作業で入れることにより、大型バレルピストン反応器に装入した。ピストンを元に戻し、端部に差し込んだ。真空を反応容器およびフラッシュレシーバーに適用し、10kPa未満に降圧し、希釈水酸化アンモニウム溶液を反応器に注入し、6g/100gバイオマス乾燥重量のアンモニア濃度および45g/100g全バイオマス−水性アンモニア混合物のバイオマス乾燥重量濃度を得た。一旦、アンモニアを装入すると、蒸気を反応器に注入し、温度を145℃にした。混合物を、温度を監視し、必要に応じて蒸気を添加することにより、この温度で10もしくは20分間保持し、次いでピストンを駆動することによって予熱したフラッシュタンクに排出した。フラッシュレシーバーが約59℃に達するまでフラッシュタンクに対して真空を引いた。遊離液体を、フラッシュレシーバーからの回収時、前処理固形物から分離し、糖化のために再び添加しなかった。合計17のかかる前処理を実施した。4つの前処理から得られる前処理穂軸を糖化のためにプールし、フェドバッチ糖化のための初期加水分解物を提供した。残りの13のランから得られる前処理穂軸をフェドバッチ糖化での使用のためにプールした。
【0088】
フェドバッチ糖化を開始するため、一般的方法に記載のフェドバッチ糖化反応器にまず加水分解物を装入し、反応器容積を第1のインペラーの底部に至るまで満たした。この加水分解物を、前処理穂軸を2.8Lの振とうフラスコ内で糖化することによって調製した。これらの振とうフラスコに、465gの前処理固形物、DI水1000ml、ならびに、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼを含む、28.4mgのSpezyme(登録商標)CP/gセルロースおよび4.2mg活性タンパク質/gセルロースのヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa(San Diego,CA))での酵素を装入した。酵素添加前、pHを8.5%HPOで5に調整した。振とうフラスコを回転振とう器内、50℃および150rpmで48時間維持し、その時点で加水分解物をフェドバッチ反応器に装入した。
【0089】
一旦、初期加水分解物を装入すると、前処理バイオマス−アンモニア混合物の第1の一定分量(約700g)を反応器に添加した。pHを8.5%HPOの添加によって設定値5.5で維持した。一旦、pHを設定値に再調整してから、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼおよびアラビノフラノシダーゼを含む、28.4mgのSpezyme(登録商標)CP/gセルロースおよびヘミセルラーゼ酵素共同体(Diversa)の4.2mg活性タンパク質/gセルロースを添加した。前処理バイオマス−アンモニア混合物、Spezyme(登録商標)CPセルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素共同体のさらなる一定分量を、t=4、8、12、22、26、30および34時間に添加した。ポンプアラウンドループを概して酵素添加の約1時間後に開始し、約1時間から最大で22時間の固形物添加の間、実行した。26時間および30時間の添加後、ポンプを酵素添加の約50分後開始し、30分間実行した。34時間の添加後、ポンプを酵素添加の約3時間後に開始し、30分間実行した。また、ポンプをt=29、33、47および49時間に30分間実行した。全糖化時間は120時間であった。この時点で、加水分解物は、約60g/Lの単量体グルコース、25g/Lの単量体キシロースおよび10g/Lの酢酸を含有した。
【0090】
この加水分解物を、アルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)株ZW800またはZW658(ATCC#PTA−7858)の発酵に使用した。ZW658は、エタノールへのキシロース発酵のために改変されているアルコール発酵菌(Zymomonas mobilis)の株であり、参照として本明細書に援用される共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書に記載されている。ZW658は、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼおよびトランスケトラーゼをコードする4つのキシロース利用遺伝子を有する2つのオペロン、PgapxylABおよびPgaptaltktを連続転位事象を介してZW1(ATCC#31821)のゲノムに統合し、その後にキシロースを含有する選択培地に適応させることによって作成した。ZW800は、グルコース−フルクトースオキシドレダクターゼをコードする遺伝子が不活性化されたZW658株であり、また共同所有される同時係属中の米国特許出願第60/847813号明細書に記載されている。
【0091】
発酵を、500mlの初期作動容積(working volume)を有する1リットルの滅菌発酵槽(BIOSTAT(登録商標) B−DCUシステム、Sartorius BBI System Inc.(Bethlehem,Pennsylvania,USA))内で実施した。接種材料を、添加後の培養液中でOD600が約1であるように、10%(v/v)のレベルで発酵糖に添加した。加水分解物は、水との均衡状態で、80%または40%(v/v)で存在した。さらなるグルコースおよびキシロースを添加し、培養液中の最終濃度をそれぞれ92g/Lおよび82g/Lにした。また、培養液に10mMソルビトールおよび1g/LのMgSO・7HOを補充した。発酵を、150rpmで撹拌しながら、33℃、pH5.8で72時間実施した。ZW800株における最終のエタノール滴定濃度は、40%加水分解物中で8g/L、80%加水分解物中で7g/Lであった。ZW658においては、最終エタノール滴定濃度は、40%加水分解物中で8g/L、80%加水分解物中で6.5g/Lであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された前処理バイオマス生産物を調製するための方法であって、
a)バイオマスを備えるステップと、
b)該バイオマスを適切な条件下でアンモニアを含有する水溶液と接触させ、バイオマス−水性アンモニア混合物を形成することによって前記バイオマスを前処理するステップであって、ここでアンモニアはバイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリ性pHを維持するのに少なくとも十分な濃度で存在するが、ここで該アンモニアはバイオマスの乾燥質量に対して約12質量パーセント未満で存在し、またさらにここでバイオマスの乾燥質量はバイオマス−水性アンモニア混合物の質量に対して少なくとも約15質量パーセントの高固体濃度であり、それにより前処理バイオマス固体生産物および1つもしくはそれ以上のインヒビター化合物を含むバイオマス前処理液が形成されるステップと、
c)該バイオマス前処理液を移動させるステップと、
を含み、ここで前処理バイオマス固体生産物は低減された量のインヒビター化合物しか有せず、かつ糖含有物がごくわずかしか低下しない、方法。
【請求項2】
次の様式、すなわち
i)ステップ(b)の前
ii)ステップ(b)における追加的成分として、または
iii)ステップ(b)の後の洗浄ステップとして
の中の1つもしくはそれ以上において追加的水性成分を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
追加的水性成分が蒸気、水、および緩衝液からなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水性成分が蒸気であり、かつステップ(b)における追加的成分として添加され、ここで蒸気は前処理の間に部分凝縮し、バイオマス前処理液の一部を形成する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前処理バイオマス固体生産物を糖化し、発酵性糖を形成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の糖類を発酵し、標的化学物質を生産させるステップをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液を移動させる方法が、排出、デカンティング、濾過、遠心分離、および押圧からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
バイオマス−水性アンモニア混合物のpHが8より大きい請求項1に記載の方法。
【請求項9】
バイオマスとアンモニアを含有する水溶液とを接触させる前に真空がバイオマスに適用される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
バイオマスの乾燥質量が、バイオマス−水性アンモニア混合物の質量に対して少なくとも約15%〜約80%の高固体濃度である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
バイオマスの乾燥質量が、バイオマス−水性アンモニア混合物の質量に対して少なくとも約15%〜約60%の高固体濃度である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アンモニアがバイオマスの乾燥質量に対して約10質量パーセント未満で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アンモニアがバイオマスの乾燥質量に対して約6%以下の質量パーセントで存在する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
バイオマスが、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、工業固形廃棄物、工場廃棄物、木材および林業廃棄物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
バイオマスが、スイッチグラス、紙くず、製紙汚泥、トウモロコシ粒、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、草、小麦、麦かん、乾草、大麦、大麦わら、稲わら、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、穀物の加工から得られる成分、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木およびブッシュ、野菜、果物、花、ならびに動物糞尿からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、トウモロコシの皮、サトウキビバガス、おがくず、スイッチグラス、麦かん、乾草、稲わら、および草からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
バイオマスが、トウモロコシ穂軸、コーンストーバー、トウモロコシ繊維、おがくず、およびサトウキビバガスからなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
バイオマスが複数の供給原料から得られる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
アンモニアが、アンモニアガス、水酸化アンモニウム、尿素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(b)が約4℃〜約200℃の温度で行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(b)が約75℃〜約150℃の温度で行なわれる請求項15に記載の方法。
【請求項22】
(b)が90℃より高く〜約150℃の温度で行なわれる請求項16に記載の方法。
【請求項23】
(b)が最大で約25時間行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項24】
(b)が最大で約8時間行なわれる請求項18に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法によって生産される前処理バイオマス生産物。
【請求項26】
請求項1に記載の方法によって生産された前処理バイオマス生産物の糖化によって生産される加水分解物。
【請求項27】
生体触媒を使用する請求項26に記載の加水分解物の発酵によって生産される標的化学物質。
【請求項28】
標的化学物質が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、酢酸、乳酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、酪酸、グルコン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、レブリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、リジン、グリシン、アルギニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、メタン、エチレン、アセトン、および工業用酵素からなる群から選択される請求項27に記載の標的化学物質。
【請求項29】
標的化学物質が、エタノール、ブタノール、およびプロパンジオールからなる群から選択される請求項28に記載の標的化学物質。

【公表番号】特表2010−536376(P2010−536376A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521954(P2010−521954)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073420
【国際公開番号】WO2009/045654
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(510046505)アライアンス・フォア・サステインナブル・エナジー・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】