説明

改善されたヒドロゲルの合成

本発明は、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーからヒドロゲルを調製するための方法を提供し、この方法は、以下の工程: (i) ポリマーの溶液を調製する工程; (ii) この溶液を、ヒドロゲルを架橋するために十分な時間、縮合反応が起きるために十分な温度まで加熱する工程を含み、親水性ポリマーは第1及び第2の親水性ポリマーを含み、工程(i)は親水性ポリマーを混合して非常に均一なポリマーの混合物を調製する工程を含み、加熱する工程(ii)は大気圧を超える圧力で行われる。本発明の方法は、比較的コストが低く、健康及び安全についてより安全な手順であり、液体状態で行われ、かつフィルムの厚さに制限されないため、有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロゲルを調製するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは、大量の水及び/又は生体液を吸収することができる親水性ポリマーから形成された、三次元的に架橋されたネットワークである。これは、あらゆる水溶性ポリマー又はモノマーから調製することができる。膨潤した状態において、ヒドロゲルは軟らかく、湿潤している弾性材料であり、これは天然の生体組織に似ており、生体材料及び/又は剤形を開発するための候補である。
【0003】
生物医学及び薬学におけるヒドロゲルの用途には、ソフトコンタクトレンズ、創傷包帯、薬物送達システム、及び再生医療のための足場が含まれる。ヒドロゲルは、多孔質の構造を有しており、透明であり、これらはゲルマトリックス内の架橋密度及び溶媒、例えば水に対するネットワークの親和性を変化させることによって容易に調整することができる。ヒドロゲルの多孔性は、小分子及び比較的大きな分子をネットワーク内に担持させることができ、続けて分子の構造及びサイズによって、並びにマトリックスの性質によって制御された速度でこれらを放出することができる。
【0004】
架橋の性質に応じて、ヒドロゲルは2つの分類に細かく分けることができる:物理的ヒドロゲルと化学的ヒドロゲルである。物理的ヒドロゲルは、水溶性ポリマーの巨大分子が、静電引力、水素結合、疎水性効果、ファンデルワールス力、又は結晶ドメイン及び鎖の絡み合いの形成などの物理的相互作用によって結合される場合に形成する。物理的ヒドロゲルの例には、ゼラチンゲル、アルギン酸カルシウムゲル又はポリビニルアルコールクライオゲルが含まれる。物理的ヒドロゲルの形成は通常可逆的なプロセスであり、すなわちヒドロゲルは、pH、イオン強度、温度及び溶媒の性質などの環境条件を変化させることによって、再溶解され得る。対照的に、化学的ヒドロゲルは、水溶性ポリマーの巨大分子が共有結合によって一緒に結合される場合に形成し、環境条件の変化によっては破壊され得ない。
【0005】
化学的ヒドロゲルを合成するために最も一般的に使用される方法は、(1)架橋剤の存在下における親水性モノマーの重合(いわゆる三次元重合)、及び(2)水溶性ポリマーの既製品の巨大分子の架橋である。前者の方法の問題は、一般的に有害又は有毒でさえある不飽和モノマー(つまり、フリーラジカル重合において)を典型的には使用することである。既製品の巨大分子の架橋が、商業的に利用可能な水溶性ポリマーからのヒドロゲルの合成に使用され得る。
【0006】
巨大分子の架橋は、固体状態又は溶液の水溶性ポリマーを、ガンマ線、X線、加速電子又はUV放射などのイオン化放射線で照射することによって達成することができる。
【0007】
水溶性ポリマーを架橋するためにイオン化放射線を使用する利点は、容易なプロセス制御、1つの技術的な工程によるヒドロゲルの形成と殺菌とを一緒にできる可能性、並びに開始剤及び架橋剤を加える必要性がないことを含む。ポリマーの照射は、水溶液又は固体状態で行うことができる。後者は一般的に溶液と比較して効率が悪く、多量の放射線を必要とする。放射線に基づく技術の欠点には、放射線設備を利用することの困難性、製造中の健康及び安全の予防、並びに相対的に高い製造コストが含まれる。さらに、全てのポリマーがこの技術によって架橋され得るわけではなく、いくつかの巨大分子は照射によって分解する傾向がある。例えば、セルロースエーテル又はキトサンなどの水溶性多糖類の照射処理は、鎖の切断、及びゲル化よりむしろ溶液粘度の低下をもたらす。
【0008】
いくつかの水溶性ポリマーは、低分子量の架橋剤と反応することによって、容易に架橋することができる。例には、ヒドロキシル及びアミノ含有ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、セルロースエーテル、キトサン、グアーガム及びゼラチンを架橋するためのグルタルアルデヒドの使用が含まれる。
【0009】
いくつかの水溶性ポリマー及びそれらの混合物(ブレンド)は、熱処理によって、(溶媒を含まない)固体状態で架橋することができる。この方法は、カルボキシル含有ポリマー及び非イオン性ポリアルコールの組成物に基づくポリマーフィルムの数多くの研究で報告されている。乾燥したポリマーブレンドの熱処理は、エステル化反応及び共有架橋結合の形成をもたらす。架橋されたフィルムの水中における膨潤特性は、熱処理の温度及び時間、並びにブレンド中のポリ(カルボン酸):非イオン性ポリマーの比に依存する。この方法の欠点は、サンプルの厚さの制限である-薄いフィルムのみが、固体状態における熱処理によって効果的に架橋され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの問題を改善する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーからヒドロゲルを調製するための方法が提供され、この方法は、以下の工程:
(i) ポリマーの溶液を調製する工程;
(ii) この溶液を、ヒドロゲルを架橋するために十分な時間、縮合反応が起きるために十分な温度まで加熱する工程
を含み、親水性ポリマーは第1及び第2の親水性ポリマーを含み、工程(i)は親水性ポリマーを混合して非常に均一なポリマーの混合物を調製する工程を含み、加熱する工程(ii)は大気圧を超える圧力で行われる。
【0012】
本発明の方法は、比較的コストが低く、健康及び安全についてより安全な手順であり、液体状態で行われ、かつフィルムの厚さに制限されないため、有利である。驚くべきことに、加熱を使用して水溶液中のヒドロゲルを十分に形成するために、親水性ポリマーの特定の組み合わせを架橋することが可能であることが分かった。この現象のさらなる研究において、この加熱で誘起される溶液中の架橋が、架橋の共有結合を形成するための縮合反応を起こすことができるポリマーに対の反応性基が存在する場合にのみ起きることが分かった。この発見は今まで予測されておらず、現在の技術は、固体状態になるポリマー及びその混合物(ブレンド)を必要とする熱の架橋が、反応性基の間が十分に近接している場合に可能であることを教示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ポリアクリル酸とポリビニルアルコールとの間の実施例1で記載されたとおりに行われた反応について、垂直なy軸が平均乾燥ゲル収率(質量%)、水平なx軸が照射温度を示すグラフである。
【図2】ポリアクリル酸とポリビニルアルコールとの間の実施例1で記載されたとおりに行われた反応について、垂直なy軸が平均平衡膨潤度(ESD)、水平なx軸が照射温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
縮合反応は、2つの基が一緒に結合され、水分子、塩化水素、酢酸又はメタノールなどの小分子の形成をもたらす2つの基の間の反応である。
【0015】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、縮合反応において共反応することができる1つ以上(例えば2つ)の官能基を含む、単独の多官能性親水性ポリマーであってもよい。代わりに、親水性ポリマーは、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基をそれぞれ含む、2つ以上の親水性ポリマーを含んでもよい。例えば、親水性ポリマーは、第1及び第2の親水性ポリマーを含んでもよく、ここで、第1の親水性ポリマーは第1の官能基を有し、第2の親水性ポリマーは第2の官能基を有し、第1の官能基と第2の官能基は、縮合反応において共反応することができる。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、飽和又は不飽和の炭素鎖のポリマー、或いは多糖類のポリマーであってもよい。官能基はポリマー上の隣接した原子における置換基として提供されてもよく、又は、官能基の置換基の間に1つ以上のポリマー鎖の原子の間隔が存在してもよい。官能基の置換基の間の間隔が大きい場合、当業者は架橋度が低下することを予測する。この制限において、官能基の間の間隔が大き過ぎる場合、架橋度はヒドロゲルを形成するには低くなりすぎる可能性がある。当業者は、適切なヒドロゲルを形成するための親水性ポリマーにおける官能基の間の好適な間隔を、容易に決定することができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーは、1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーと、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する縮合モノマーとによって提供されてもよい。例えば、親水性ポリマーが第1の官能基を有し、縮合モノマーが第2の官能基を有してもよく、ここで、第1の官能基と第2の官能基は、縮合反応において共反応することができる。このような実施形態において、工程(i)は、親水性ポリマーと縮合モノマーを混合して、ポリマーと縮合モノマーの非常に均一な混合物を調製する工程を含む。
【0017】
本発明の方法において、工程(ii)は、親水性ポリマーを架橋するために十分な時間、加圧下で、溶液を加熱する工程を含むことが理解される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーを含む、1つ以上の出発物質からヒドロゲルを調製するための方法を含み、この方法は、以下の工程:
(i) 出発物質の溶液を調製する工程;
(ii) この溶液を、出発物質を架橋するために十分な時間、縮合反応が起きるために十分な温度まで加熱する工程
を含み、出発物質は(a) 第1及び第2の親水性ポリマー; 及び/又は(b) 縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する第1の親水性ポリマー及び縮合モノマーを含み、工程(i)は、出発物質を混合して非常に均一な混合物を調製する工程を含み、加熱する工程(ii)は、大気圧を超える圧力で行われる。本明細書におけるポリマー又は親水性ポリマーとの言及は、出発物質も表すことが理解される。
【0019】
親水性ポリマー(又は出発物質)が2つ以上の親水性ポリマー(例えば、第1及び第2の親水性ポリマー、又は親水性ポリマーと縮合モノマー)を含む場合、親水性ポリマーの水溶液を調製する工程は、親水性ポリマーを混合して、非常に均一なポリマーの混合物を調製する工程を含む。混合工程は、例えば、1、4、6又は12時間から14、18、24又は36時間行われてもよい。時間の長さは、ポリマー溶液の粘度、並びに使用するミキサーの種類及び効率に依存する。研究室の装置では、工業的な装置と比較して長時間を必要とする可能性がある。当業者は、混合工程の好適な時間の長さを決定することができる。混合工程の利点は、親水性ポリマーの異なる官能基の間で効率的な縮合反応ができることである。これは多官能性親水性ポリマーでは必要ない。混合工程は、本発明の方法を、架橋のためのイオン化放射線の使用と区別し、これはイオン化放射線の方法は、2つ以上の官能基の共反応を必要としないからである。
【0020】
縮合反応において共反応することができる2つ以上の官能基は、第1の官能基と第2の官能基を含んでもよい。第1の官能基には、アルコール基、カルボニル基及び/又はエステル基、例えば1つ以上のヒドロキシル基、カルボニル基及び/又はカルボン酸エステル基で置換された飽和若しくは不飽和の炭素鎖が含まれる。第2の官能基には、アミド基、カルボン酸基、カルボニル基及び/又はカルボン酸エステル基、例えば1つ以上のアミド基、カルボン酸基、カルボニル基及び/又はカルボン酸エステル基で置換された飽和若しくは不飽和の炭素鎖が含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーが2つ以上の親水性ポリマーを含む場合、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PMVEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、2-ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びポリアクリルアミド(PAAM)のうちの2つ以上であってもよい。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーが2つ以上の官能基を含む単独の多官能性親水性ポリマーである場合、親水性ポリマーは、ポリアクリルアミド-co-アクリル酸及び/又はポリアクリルアミドであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明において使用される親水性ポリマーは、使用され得る官能基の組み合わせを例示することを意図した以下の系のうちの1つ以上であってもよい(官能基で置換された飽和又は不飽和の炭素鎖の性質が変化し得る)。
【0023】
(i) ポリビニルアルコールとポリアクリル酸を架橋することによってヒドロゲルを形成する系(PVA+PAA)であって、縮合(エステル)結合によって形成されるゲル構造が例示される(他の系において、対応する縮合結合が形成されるが、例示はしていない):
【0024】
【化1】

【0025】
(ii) ポリアクリルアミドとポリアクリル酸(PAAM+PAA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0026】
【化2】

【0027】
(iii) ポリビニルアルコールとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PVA+PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0028】
【化3】

【0029】
(iv) ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドン(PVA+PVP)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0030】
【化4】

【0031】
(v) ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)(P(AAM-co-AA))を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0032】
【化5】

【0033】
(vi) ポリアクリルアミド(PAAM)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0034】
【化6】

【0035】
(vii) ヒドロキシエチルセルロースとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(HEC+PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0036】
【化7】

【0037】
(viii) デキストランとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0038】
【化8】

【0039】
(ix) ポリアクリル酸とトリエチルアミン(PAA+TEA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0040】
【化9】

【0041】
(x) ポリアクリル酸とトリス(2-アミノエチル)アミン(PAA+TREN)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0042】
【化10】

【0043】
(xi) ポリアクリル酸(PAA)とグリセロール又はエチレングリコールを架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【0044】
【化11】

【0045】
いくつかの実施形態において、本発明において使用される親水性ポリマーは、系(i)から(viii)のうちの1つ以上であってもよい。このような系を使用する利点には、モノマーを含まないことが含まれる。毒性の可能性による、ヒドロゲル中の未反応の架橋剤(例えば残留グルタルアルデヒド)の存在についての懸念が存在する。ヒドロゲルを合成するために使用される多くの非縮合モノマー(特にフリーラジカル重合のための不飽和モノマー)は、アレルギー性、有害又は毒性でさえあり、注意して最終生成物を未反応の残留物から精製しなければならない。縮合モノマーは毒性は低いが、経時で形成したヒドロゲルから浸出し得るモノマーを含まないため、系(i)から(viii)が有利である。この精製はたいてい、ゲルのサイズ、親水性及び多孔性に応じて、水で抽出することによって行われ、この方法は数週間かかり得る。親水性ポリマーが系(i)から(viii)のうちの1つ以上である場合、このような問題は避けられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、第2の親水性ポリマー又は縮合モノマーに対する第1の親水性ポリマーのモル比は、少なくとも1:1であってもよい。モル比は1:1から2:1の範囲、例えば約1.5:1であってもよい。
【0047】
一実施形態において、加熱する工程は、溶液を、マイクロ波放射線で照射することによって、及び/又はオートクレーブ、圧力鍋若しくは他の密閉されていない容器内又は加熱装置に直接接触する加熱装置中で溶液を加熱することによって行われてもよい。一実施形態において、加熱する工程は、10から60分間、例えば15から40分間行われてもよい。加熱する工程は、ポリマーの実質的な分解が起きることなく、ポリマーを架橋させるために十分な時間行われる。ポリマーの実質的な分解は、ポリマーの色が変化した場合か、初期溶液と比較して粘度が低下した場合に示される。当業者は、好適な時間の長さを決めることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、1リットルあたり約0.1、好ましくは約0.5モルの繰り返し単位から、1リットルあたり約4、好ましくは約2モルの繰り返し単位、例えば1リットルあたり約1モルの繰り返し単位の濃度で使用される。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーの溶液は予め濃縮されておらず、例えば親水性ポリマーの溶液は、乾燥されていない、又は濃縮されていない親水性ポリマーの溶液である。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書中に規定する工程(i)及び(ii)から実質的になるか、或いは本発明の方法は、上で規定する工程(i)及び(ii)からなり、乾燥又は他の本発明の方法における工程(i)で得られたポリマーの溶液を濃縮する工程は存在しない。乾燥又は濃縮された親水性ポリマーの溶液を使用しないことの利点は、本発明の方法の製品が、高い膨潤比を有するヒドロゲルとなることである。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、0.1wt%、好ましくは0.5wt%から、ポリマーの通常の溶解度の制限まで、好ましくは50wt%、好ましくは30wt%、より好ましくは20wt%までの濃度で使用される。「ポリマーの通常の溶解度の制限」とは、室温及び大気圧で工程(i)におけるポリマーの溶液を形成するために使用される溶媒中の、ポリマーの通常の溶解度を表す。
【0049】
一実施形態において、加熱する工程は、100から170℃、例えば140から160℃の温度で行われてもよい。加熱する工程は、ポリマーの実質的な分解が起きることなく、ポリマー(又は出発物質)を架橋させるために十分な温度で行われる。ポリマーの実質的な分解は、ポリマーの色が変化した場合か、初期溶液と比較して粘度が低下した場合に示される。当業者は、好適な温度を決めることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、加熱する工程は、大気圧より高い圧力下で行われてもよい。大気圧より高い圧力を使用することの利点には、温度を溶液の通常の沸点よりも上げることができ、縮合反応がより迅速に起こり得ることが含まれる。いくつかの実施形態において、低い溶媒含有量を有するヒドロゲル(例えば部分的に脱水されている)が望まれる場合、加熱する工程は、大気圧より高い圧力を有する通気口付きの容器、例えば圧力鍋中で行われてもよい。いくつかの実施形態において、高い溶媒含有量を有するヒドロゲル(例えば部分的に又は完全に水和されている)が望まれる場合、加熱する工程は、密閉された容器、例えば電子レンジ中又はオートクレーブ中の密閉された容器で行われてもよい。電子レンジは、オートクレーブを使用するよりも速いという利点がある。
【0051】
いくつかの実施形態において、加熱する工程(ii)は、15から200psi(103kPaから1380kPa)の圧力で行われる。実際には、加熱する工程(ii)が行われる圧力は、使用される装置に依存する。電子レンジなどの密閉され、加圧される系では、密閉された容器内の圧力がいつも高くなる動作温度に設定することが通常である。したがって、圧力は、使用者によって定められなくてもよく、容器の温度、内容及びサイズに応じた値を有する。任意で、しかし通常は、到達した場合に安全な最大圧力を設定し、例えば密閉された容器中の圧力を開放することによって、装置は加熱を停止し、警告が鳴り、又は電源が切れる。150℃以上の温度が使用される場合、プロセスの初期段階で200psi(1380kPa)の圧力に達するが、すぐに100psi(690kPa)未満に落ち着く。より低い温度に対しては、圧力は200psi(1380kPa)には達しにくい。例えば、120℃でPAA及びPVAを使用することにより、初期段階で140psi(96.5kPa)のピークになり、その後約20〜40psi(138kPa〜276kPa)に落ち着く。使用される圧力は、当業者によって知られているとおり、ポリマーの組合せに応じて変化してもよい。
【0052】
一定の予め決められた圧力で動作する他の加圧系(例えばオートクレーブ又は電子レンジ)において、加熱する工程(ii)は、使用される溶媒に応じた温度で行われ、ポリマーの溶液が調製される。溶媒が水であり、加熱する工程(ii)がオートクレーブ中で行われる場合、121℃の温度により15psi(103kPa)の圧力になり、132℃の温度により30psi(206kPa)の圧力になることが確立されている。同様に、圧力鍋の動作圧力を測定することができ、及び/又は予め決められた動作温度から計算することができる。したがって、オートクレーブを使用して加熱する工程(ii)を、120℃を超える温度で動作させることができ、これはゲルを形成する反応のために少なくともこの温度を必要とするいくつかのポリマーの組合せにとって理想的である。さらなる選択肢は、実施例10に例示したとおり圧力セルを使用することであり、加熱する工程(ii)のために150℃の温度が使用される。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリマーの溶液は、極性プロトン性溶媒(例えばアルコール、カルボン酸又は水)又は非プロトン性溶媒(例えばジメチルスルホキシド、又はジクロロメタン若しくはジメチルホルムアミドなどのハロ溶媒)中のポリマーの溶液である。溶媒としてアルコールを使用することの利点は、形成するヒドロゲルが抗菌性ヒドロゲルであり得ることである。加熱する工程がマイクロ波放射線で溶液を照射することによって行われる場合、ポリマーの溶液は、加熱効果をより高くするための水溶液であってもよい。
【0054】
ここで、本発明は、特許請求の範囲を限定することを意図しない、以下の実施例を参照して例示される。
【実施例】
【0055】
実施例において、以下の物質を使用した。ポリアクリル酸(Mw 450kDa、Cat. 181285、Lot. 0461E1-235)、ポリビニルアルコール 99+%けん化型(Mw 160kDa、Cat. 363065、Lot. 06721PH-278)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(Mw 1080kDa、Cat. 416320、Lot. 09901EH)、ポリアクリルアミド-co-アクリル酸(Mw 〜5000kDa、Cat. 181277、Lot. 09308CD)、2-ヒドロキシエチルセルロース(Mw 250kDa、Cat. 308633、Lot. S44007-108)、2-ヒドロキシエチルセルロース(Mw 750kDa、Cat. 434973、Lot. 070130H)、及びトリス(2-アミノエチル)アミン(Cat. 225630)を全てAldrich Chemical Companyから購入した。ポリアクリルアミド-非イオン性(Mw 5から6000kDa、Cat. 17042500、Lot. A0262628)をAcros Organicsから購入した。トリエタノールアミン(Cat. T/3150/08、Lot. 0921271)をFisher Scientificから購入した。Plasdone K-90として販売されているポリビニルピロリドン(Mw 1300kDa、Cat. 1272045、Lot. 03800199538)をInternational Speciality Productsから購入した。全ての試薬を、さらなる精製をすることなく、受領したまま使用した(97から99+%の純度と記載)。
【0056】
実施例で使用した溶液を、以下のとおりに調製した。0.1モルのポリマーを表す質量(当業者は、これが0.1モルのポリマーの繰り返し単位を使用することを意味することを理解する)を、100mLの蒸留水中に溶解し、1mol/dm3の溶液とした。ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルセルロース、トリエタノールアミン又はトリス(2-アミノエチル)アミンの場合において、これらの溶液を12から18時間タンブリング装置(tumbling machine)で攪拌し、透明な粘性溶液とした。ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)は同様の処理を必要とし、初期の白色の不透明な溶液が終夜又は加熱で透明に変わった。この変化は、マレイン酸無水物の開環によって、ポリマレイン酸となったことによる。ポリアクリルアミドとポリビニルアルコールは、6から18時間、それぞれ50℃と85℃までの加熱を必要とし、透明な粘性溶液となる。
【0057】
ここで、本発明は、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図しない、以下の実施例を参照して例示される。これらの実施例において記載されるポリマー系に対して、ゲル収率及び膨潤特性を、80℃から200℃の温度範囲で測定した。一般的に、ゲル収率は、それぞれの実施例で例示されるものよりも低い温度で低下する傾向がある。いくつかの実施例において、ポリマーの分解が実施例で示した温度よりも高い温度で観察された。平衡膨潤度も、照射温度で変化することが分かった。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、52.8mgのポリマーを1.2mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、57.6mgのポリマーを0.8mLの脱イオン水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間160℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:66mg、57%。ヒドロゲルの平衡膨潤度(ESD)を、以下の式(1)で計算した:
ESD = (Ws-Wd)/Wd
式中、WsとWdは、それぞれ膨潤したゲルと乾燥ゲルの質量(g)である。
【0060】
平衡膨潤度は、乾燥した架橋ポリマーによって吸収された水の量を示す。この実施例で合成されたヒドロゲルのESDは、約121であることが分かり、これは121gの水が1gの乾燥材料によって取り込まれたことを意味する。
【0061】
(実施例2)
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(1080kDa)の17.4%w/v溶液を、174mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、水浴中のタンブリング装置で40℃で18時間攪拌することによって調製した。初期の白色の不透明な溶液が、終夜で透明になった。この変化は、マレイン酸無水物の開環により、ポリマレイン酸となったことによる(したがって、当業者は、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)のマレイン酸無水物基が開環してマレイン酸基となったことを理解する)。ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、44mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間100℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:150mg、83%; ESD = 569。
【0062】
(実施例3)
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(1080kDa)の17.4%w/v溶液を、174mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、40℃の水浴中のタンブリング装置で室温で18時間攪拌することによって調製した(当業者は、実施例2のとおりに行われるこの工程が、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)のマレイン酸無水物基を開環させてマレイン酸基とするために行われることを理解する)。2-ヒドロキシエチルセルロース(250kDa)の5.0%w/v溶液を、50mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に室温で溶解し、タンブリング装置で18時間攪拌して透明な粘性液体を得ることによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:46.4mg、42%; ESD = 35。
【0063】
(実施例4)
ポリアクリルアミド(5000〜6000kDa)の2.5%w/v溶液を、25mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に溶解し、タンブリング装置で18時間室温で攪拌することによって調製した。ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、72mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:16.8mg、11.8%; ESD = 1146。
【0064】
(実施例5)
ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)(〜5000kDa)の14.3%w/v溶液を、286mgのポリマーを2mLの脱イオン水中に溶解し、タンブリング装置で18時間室温で攪拌することによって調製した。この溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間135℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:2mg、1%; ESD = 78。
【0065】
(実施例6)
ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)(〜5000kDa)の14.3%w/v溶液を、143mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に溶解し、タンブリング装置で18時間室温で攪拌することによって調製した。14.9%w/v溶液を、149mgのトリエタノールアミンを1mL中に溶解し、1時間室温で攪拌することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間135℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:26mg、9%; ESD = 1281。
【0066】
(実施例7)
ポリビニルピロリドン(Plasdone K-90、1300kDa)の11.1%w/v溶液を、111mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に溶解し、タンブリング装置で18時間室温で攪拌することによって調製した。ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、44mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:93mg、60%; ESD = 123。
【0067】
(実施例8)
ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、57.6mgのポリマーを0.8mLの脱イオン水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。14.9%w/v溶液を、149mgのトリエタノールアミンを1mL中に溶解し、1時間室温で攪拌することによって調製した。これらの溶液を10mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:2.7mg、1.3%; ESD = 2462。
【0068】
(実施例9)
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(1080kDa)の17.4%w/v溶液を、174mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、40℃の水浴中で18時間攪拌することによって調製した。初期の白色の不透明な溶液が、終夜で透明になった。この変化は、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)のマレイン酸無水物基が開環されてマレイン酸基となることによる。ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、44mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。これらの溶液をHungateチューブに加え、密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物をPriorclave Tactrol 2のオートクレーブに入れ、120℃に加熱し、120℃で15分間保った。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:154mg、70.5%; ESD = 613。
【0069】
ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、52.8mgのポリマーを1.2mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、57.6mgのポリマーを0.8mLの脱イオン水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。これらの溶液を35mLのACE加圧セルに加え、このセルに備わる糸を通した蓋で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物をホットプレート上の砂浴で150℃に1時間で加熱した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:11mg、10%。この実験を、利用可能なオートクレーブ中で得られるよりも高い温度を必要とするPVA/PAAなどの系を使用して、マイクロ波の非存在下、並びにマイクロ波の存在下でヒドロゲルを生成するために行った。
【0070】
(実施例11)
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(1080kDa)の17.4%w/v溶液を、174mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、40℃の水浴中で18時間攪拌することによって調製した。初期の白色の不透明な溶液が、終夜で透明になった。この変化は、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)のマレイン酸無水物基が開環されてマレイン酸基となることによる。ポリビニルアルコール(160kDa、99%けん化型)の4.4%w/v溶液を、44mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に85℃で18時間溶解することによって調製した。これらの溶液をガラス瓶に加え、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、この瓶を開け、下に約2インチの蒸留水を有する、Morphy Richards 48815圧力鍋の高くなった台の上に置いた。圧力鍋を使用して120℃の熱を30分間適用した。圧力鍋を使用する場合、圧力は断続的なガス抜きによって一定に保たれる。瓶が密閉されておらず、ガス抜き中の蒸気として失われるため、反応を通して混合物の含水量は低下する。したがって、電子レンジ又はオートクレーブ中の密閉された容器で形成されたヒドロゲルとは異なり、得られたヒドロゲルは部分的に脱水されている。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:96.6mg、44%; ESD = 930。
【0071】
(実施例12)
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(1080kDa)の17.4%w/v溶液を、174mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、40℃の水浴中で18時間攪拌することによって調製した。初期の白色の不透明な溶液が、終夜で透明になった。この変化は、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)のマレイン酸無水物基が開環されてマレイン酸基となることによる。2-ヒドロキシエチルセルロース(250kDa)の2.5%w/v溶液を、25mgのポリマーを1mLの脱イオン水中に溶解することによって調製した。これらの溶液をガラス瓶に加え、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、この瓶を、下に約2インチの蒸留水を有する、Morphy Richards 48815圧力鍋の高くなった台の上に置いた。圧力鍋を使用して120℃の熱を30、90又は180分間適用した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。
【0072】
【表2】

【0073】
(実施例13)
ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、72mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。トリス(2-アミノエチル)アミンの14.6%w/v溶液を、146mgの化合物を1mLの蒸留水中に溶解することによって調製した。これらの溶液を25mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間140℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:166mg、76%; ESD = 5。
【0074】
(実施例14)
ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、72mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。グリセロールの9.2%w/v溶液を、92mgの化合物を1mLの蒸留水中に溶解することによって調製した。これらの溶液を25mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機を使用して乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:68mg、41.2%; ESD = 4.7。
【0075】
(実施例15)
ポリアクリル酸(450kDa)の7.2%w/v溶液を、72mgのポリマーを1mLの蒸留水中に溶解し、室温で18時間攪拌することによって調製した。ジエチレングリコールの10.6%w/v溶液を、106mgの化合物を1mLの蒸留水中に溶解することによって調製した。これらの溶液を25mLのCEM圧力容器に加え、CEM隔壁で密閉し、その後タンブリング装置を使用して12時間十分に混合した。その後、溶液混合物を容器中で、200Wのマイクロ波放射線で20分間150℃で、圧力を13.8bar(200psi)でカットオフして照射した。その後、この混合物をビーカーに注ぎ、脱イオン水(200mL)を加え、その後この水を2日おきに6日間交換した。この後、ヒドロゲルを濾過し、過剰な水を濾紙で除去し、膨潤したサンプルの質量を量った。その後、膨潤したヒドロゲルを凍結乾燥機で乾燥し、固体のポリマーの質量を測定した。乾燥収率:19mg、10.5%; ESD = 307。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーからヒドロゲルを調製するための方法であって、以下の工程:
(i) 前記ポリマーの溶液を調製する工程;
(ii) 前記溶液を、ヒドロゲルを架橋するために十分な時間、縮合反応が起きるために十分な温度まで加熱する工程
を含み、前記親水性ポリマーは第1及び第2の親水性ポリマーを含み、工程(i)は親水性ポリマーを混合して非常に均一なポリマーの混合物を調製する工程を含み、加熱する工程(ii)は大気圧を超える圧力で行われる、方法。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、縮合反応において共反応することができる2つ以上の官能基を含む単独の多官能性親水性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、縮合反応において共反応することができる1つ以上の官能基をそれぞれ含む、2つ以上の親水性ポリマーを含み、好ましくは前記親水性ポリマーは第1及び第2の親水性ポリマーを含み、前記第1の親水性ポリマーは第1の官能基を有し、前記第2の親水性ポリマーは第2の官能基を有し、前記第1及び第2の官能基は縮合反応において共反応することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、1つ以上の官能基を有する親水性ポリマーと、1つ以上の官能基を有する縮合モノマーとを含み、前記官能基は縮合反応において共反応することができ、好ましくは前記親水性ポリマーは1つ以上の第1の官能基を有し、前記縮合モノマーは1つ以上の第2の官能基を有し、前記第1及び第2の官能基は縮合反応において共反応することができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合する工程が、1から36時間行われる、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
縮合反応において共反応することができる2つ以上の前記官能基が、第1の官能基及び第2の官能基を含み、
前記第1の官能基が、アルコール、カルボニル、及び/又はエステル基を、好ましくは、1つ以上のヒドロキシル基、カルボニル基、及び/又はカルボン酸エステル基で置換されている飽和又は不飽和の炭素鎖を含有し、かつ、
前記第2の官能基が、アミド基、カルボン酸基、カルボニル基、及び/又はカルボン酸エステル基を、好ましくは、1つ以上のアミド基、カルボン酸基、カルボニル基、及び/又はカルボン酸エステル基で置換されている飽和又は不飽和の炭素鎖を含有する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メチルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PMVEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、2-ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、及びポリアクリルアミド(PAAM)のうちの2つ以上の親水性ポリマーを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記親水性ポリマーが、以下の系:
(i) ポリビニルアルコールとポリアクリル酸(PVA+PAA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化1】

(ii) ポリアクリルアミドとポリアクリル酸(PAAM+PAA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化2】

(iii) ポリビニルアルコールとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PVA+PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化3】

(iv) ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドン(PVA+PVP)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化4】

(v) ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)(P(AAM-co-AA))を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化5】

(vi) ポリアクリルアミド(PAAM)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化6】

(vii) ヒドロキシエチルセルロースとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(HEC+PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化7】

(viii) デキストランとポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)(PMVEMA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化8】

(ix) ポリアクリル酸とトリエチルアミン(PAA+TEA)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化9】

(x) ポリアクリル酸とトリス(2-アミノエチル)アミン(PAA+TREN)を架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化10】

及び/又は
(xi) ポリアクリル酸(PAA)とグリセロール又はエチレングリコールを架橋することによってヒドロゲルを形成する系:
【化11】

のうちの1つ以上である、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の親水性ポリマーの前記第2の親水性ポリマー又は前記縮合モノマーに対するモル比が、少なくとも1:1であり、好ましくは前記モル比が1:1から2:1の範囲であり、より好ましくは約1.5:1である、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、ポリアクリルアミド-co-アクリル酸及び/又はポリアクリルアミドである、請求項2又は6(請求項2に従属しているもの)に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)が、10から60分間、好ましくは15から40分間行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)が、100から170℃の温度、好ましくは140から160℃の温度に溶液を加熱するために十分な強度のマイクロ波照射で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)で使用される前記ポリマーの溶液が、以下の特徴:
(i) 前記溶液が乾燥されていない溶液であり;
(ii) 前記溶液中の前記ポリマーの濃度が、1リットルあたり0.5モルの繰り返し単位から1リットルあたり約2モルの繰り返し単位までの濃度であり; 及び/又は
(iii) 前記溶液中の前記ポリマーの濃度が、0.1wt%、好ましくは0.5wt%から、ポリマーの通常の溶解度の制限、好ましくは50wt%、好ましくは30wt%、好ましくは20wt%までである
のうちの1つ以上を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)が、103kPaから1380kPaの圧力で行われる、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
本明細書において実施例で実質的に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−517366(P2013−517366A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549422(P2012−549422)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050093
【国際公開番号】WO2011/089432
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512189200)ザ・ユニヴァーシティ・オブ・レディング (1)
【Fターム(参考)】