説明

改善されたビーディング特性を有する表面を撥水性になるように被覆するための弗素不含組成物

本発明は、多孔質の鉱物質基体を疎水化するため、および基質の表面上でビーディング効果を形成させるための弗素不含の組成物に関し、この場合この組成物は、少なくとも1つの疎水性の作用物質および少なくとも1つの疎水性の金属酸化物を基礎とする。更に、本発明は、このような組成物の製造法ならびに前記組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の鉱物質基体を疎水性にするため、および多孔質の鉱物質基体にビーディング特性を付与するためのアルキルアルコキシシランおよび/またはアルキルアルコキシシロキサンを基礎とする組成物、その製造および建造物を保護するための該組成物の使用に関する。また、以下、アルキルアルコキシシランおよびアルキルアルコキシシロキサンは、疎水性作用物質と略記して呼称されるかまたはシラン系、オリゴマーシラン系またはシランオリゴマーと略記して呼称される。
【0002】
アルキル鎖を有するシラン化合物が、多孔質の鉱物質物質に対して疎水性の性質を形成しうることは、久しく公知である。即ち、殊にモノマーの短鎖状アルキルアルコキシシランは、良好な深部含浸(Tiefimpaegnierung)を示す(欧州特許第0101816号明細書)。
【0003】
オリゴマーシラン系、例えばアルキルアルコキシシロキサンは、疎水剤としての使用に関連して利点を有し、それというのも、このアルキルアルコキシシロキサンは、殆ど揮発性でない有機化合物(VOC)の使用の際にモノマーのシラン系として遊離するからである。
【0004】
更に、建築物保護剤を溶液の形または液状またはペースト状、またはクリーム状の、即ち高粘稠な乳濁液の形で使用することは、公知である(なかんずく、欧州特許第0814110号明細書、欧州特許第1205481号明細書、欧州特許第1205505号明細書、WO 06/081891)。
【0005】
用途によってしばしば望まれる、疎水化の品質特徴は、疎水化された支持体の表面上で水滴を弾き返すことである(略して、ビーディング効果と呼称される)。このような撥水効果(Wasserabperleffekte)は、付加的に微生物、例えば藻類、蘚苔類または真菌類の成長を減少させる補助をする。
【0006】
残念ながら、前記の建築物保護剤は、多孔質の鉱物質基体上への適用後に、水の侵入を阻止する(疎水化)が、しかし、この場合には、大抵、全くビーディング効果は達成されないかまたは極めて弱いビーディング特性が達成されるにすぎない。
【0007】
米国特許第4846886号明細書、米国特許第5674967号明細書、特開2006−335969号公報および欧州特許第0826650号明細書の記載から、それぞれシラン含有配合物またはシロキサン含有配合物が公知であり、これらの配合物は、多孔質の鉱物質表面上でこのようなビーディング効果を形成しうる。しかし、十分に強いビーディング効果は、弗素含有化合物を使用することによってのみ達成される。弗素化有機化合物は、高価であり、この弗素化有機化合物を代替するという強められた生態学的関心事が存在する(J.M.Conder et al.,Environmental Science Technology,2008,42(4),995−1003,K.S.Kumar Research Journal of Chemistry and Environment,2005,9(3),50−79.)。
【0008】
更に、刊行物の記載から、珪酸を使用することによって、または一般に酸化物ナノ粒子を使用することによって、表面変性のために強い撥水効果が達成されうることは、公知である。相応する被覆は、例えば特開2002−338943号公報またはWO 2008/106494中に記載されている。
【0009】
特開2008−031275号公報には、シラン系の水性乳濁液が記載されており、このシラン系の水性乳濁液には、撥水挙動を改善するために親水性金属酸化物が添加される。このような親水性金属酸化物を使用する際の欠点は、表面の撥水能が導入された親水性によって不利に損なわれうることである。
【0010】
疎水性金属酸化物および殊に珪酸の製造および性質は、例えば特開2007−161510号公報、ドイツ連邦共和国特許第102004010756号明細書またはドイツ連邦共和国特許第102004055585号明細書中に記載されている。
【0011】
本発明は、多孔質の鉱物質表面または多孔質の鉱物質基体を疎水性にするように処理することができかつ改善された撥水効果を付与することができる、弗素不含の配合物を提供するという課題に基づくものであった。即ち、疎水性作用物質によって水吸収量の減少が得られ、ならびにその他の点でなかんずく弗素基によって達成可能な撥水効果("テフロン効果")が達成されるはずである。
【0012】
課された課題は、本発明により、特許請求の範囲の記載に相応して解決される。
【0013】
更に、意外なことに、疎水性珪酸または疎水化された珪酸を疎水性作用物質中に導入することによって、望ましい性質が達成されることが見い出された。この手段は、意外なことに、簡単で安価で、それにも拘わらず効果の大きいものであり、この場合好ましくは、少なくとも1つの疎水性作用物質およびこの疎水性作用物質中に導入される、少なくとも1つの疎水化された金属酸化物を基礎とする本発明による作用物質を多孔質の鉱物質表面または多孔質の鉱物質基体上に適用する際に、顕著な疎水化および同時に優れた、別の弗素不含の疎水化系と比較して明らかに改善されたビーディング効果を達成することができた。更に、本発明による教示によって、公知の弗素含有処理系の品質に少なくとも匹敵するかまたは、それどころかこの品質を凌駕するビーディング効果が達成される。
【0014】
疎水性作用物質または疎水性試薬は、本発明の範囲内で、鉱物質基質上への適用の際に基質の疎水化を生じるかまたは基質表面上で疎水化を生じる物質である。
【0015】
従って、本発明の対象は、多孔質の鉱物質基体を疎水化するため、および基質の表面上でビーディング効果を形成させるための弗素不含の組成物であり、この場合この組成物は、少なくとも1つの疎水性の作用物質および少なくとも1つの疎水性の金属酸化物を基礎とする。
更に、成分として、本発明による組成物は、
場合によっては少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒、
場合によっては少なくとも1つの有機溶剤、
場合によっては水、
場合によっては少なくとも1つの乳化剤および/または
場合によっては他の助剤を含有することができる。
【0016】
本発明による組成物は、特に溶剤不含の組成物である。
【0017】
本発明による組成物は、疎水性作用物質として有利に一般式I
【化1】

〔式中、R1は、C1〜C18アルキル基を表わし、基R2は、同一かまたは異なり、R2は、水素原子であるかまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチルまたはエチルである〕で示される1つ以上のアルキル置換シランを含有することができる。好ましい例は、次の基を有するものである:
1=CH3−、C25−、C37−、C49−、i−C49−、C613−、i−C613−、C816−、i−C816−および
2=H、メチル−またはエチル−。
【0018】
更に、疎水性作用物質は、一連の直鎖状、環状または分枝鎖状のオリゴマーのシロキサン、殊に分枝鎖状、直鎖状または環状のアルキルアルコキシシロキサン、一般に理想化された式II
【化2】

〔式中、基R1およびR3は、互いに独立に、一連のN、O、Cl、PまたはSからの1個以上のヘテロ原子を有する置換基を含有していてよいC1〜C18アルキル基であり、R2は、同一かまたは異なり、R2は、水素原子であるかまたは1〜6個の炭素原子、特に1または2個の炭素原子を有するアルキル基、即ちメチルまたはエチルであり、(n+m)は、2〜50、有利に2〜30、特に有利に3〜20、殊に3〜15の数値を有するオリゴマー化度である〕から選択されていてよい。これは、好ましくは2〜50(その間に存在する全ての数を含めて)、特に2〜30の平均オリゴマー化度を有するオリゴマー混合物であり、この場合平均モル質量は、有利に300〜10000g/mol(その間に存在する全ての数を含めて)である。この場合、一般式IIのシランオリゴマーは、直鎖状単位、環状単位および/または分枝鎖状単位として存在することができる。前記オリゴマーのモル質量または平均モル質量は、例えばGPC分析により測定することができる。
【0019】
式IIのシランオリゴマーは、好ましくは欧州特許第0814110号明細書、欧州特許第1205481号明細書、欧州特許第1205505号明細書の記載により製造することができる。従って、前記刊行物は、全ての範囲で本明細書の構成成分である。
【0020】
シランオリゴマーの好ましい例は、次の基を有するものである:
1=CH3−、C25−、C37−、C49−、i−C49−、C613−、i−C613−、C816−、i−C816−および
2=H、メチル−またはエチル−、
3=CH3−、C25−、C37−、C49−、i−C49−、C613−、i−C613−、C816−、i−C816−、NH2−C36−、NH2−C24−NH−C36−、NH2−C24−NH−C24−NH−C36−、および
【化3】

【0021】
最終的に、疎水性作用物質は、一連の一般に理想化された式III
【化4】

〔式中、R4は、互いに独立に、水素を表わすかまたは1〜6個の炭素原子、特に1または2個の炭素原子を有するアルキル基、即ちメチルまたはエチルを表わし、oは、0〜50(その間に存在する全ての数を含めて)、有利に1〜10の数である〕で示されるアルキルシリケートから選択されていてよい。
【0022】
更に、一般式I、IIおよびIIIの前記の疎水性作用物質からなる混合物が使用されてよい。この場合、それぞれの疎水性作用物質I、IIおよびIIIは、互いに独立に、疎水性作用物質の全体量に対して0〜100%(その間に存在する数を含めて)からなることができる。
【0023】
本発明による組成物は、1つ以上の疎水性金属酸化物を含有する。金属酸化物は、本発明の範囲内で元素のアルミニウム、珪素およびチタンの酸化物、水酸化物または酸化物水和物であることができる。好ましくは、珪酸、例えばフレーム珪酸、沈降珪酸、結晶性珪酸またはゼオライトが使用される。本発明により使用される疎水性金属酸化物は、殊に粉末状の固体であり;例えばゾル、例えば珪酸ゾルとしての液状の形での使用は、排除されている。適当な疎水性金属酸化物は、例えば前記金属酸化物を疎水性試薬で処理することにより得ることができる。この処理は、例えば前記金属酸化物を疎水性試薬で湿潤(混合、混練、粉砕、浸漬、浸水)させ、引続き例えば乾燥キャビン中で熱的に後処理することによって行なうことができる。しかし、この処理は、金属酸化物に疎水性試薬を、場合によっては高い温度の影響下に、および場合によっては蒸気の形で噴霧することによって行なうこともできる。また、粉末の粉砕および/または確認は、先に、または後に実施されてよい。この場合、疎水性試薬としては、例えばアルキルアルコキシシラン、例えば幾つかのものだけを挙げるとすると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、また、アルキルアルコキシシロキサン、例えばなかんずく欧州特許第0814110号明細書、欧州特許第1205481号明細書、欧州特許第1205505号明細書の記載から確認することができるように、プロピル官能性メトキシシロキサンまたはオクチル官能性メトキシシロキサン、プロピル官能性エトキシシロキサンまたはオクチル官能性エトキシシロキサン、またはシリコーン、ワックスまたは油が使用されてよい。このように処理された金属酸化物は、本発明の範囲内で疎水化された金属酸化物と呼称される。
【0024】
本発明により使用される疎水性金属酸化物の平均粒径は、好ましくは1〜300nm(その間に存在する全ての数を含めて)、特に2〜150nm、特に有利に3〜100nm、殊に有利に4〜70nm、殊に5〜50nmである。平均粒径は、例えば透過電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
【0025】
本発明により使用される疎水性金属酸化物の比表面積は、20〜800g/m2(その間に存在する全ての数を含めて)、特に25〜600g/m2、特に有利に50〜500g/m2、殊に有利に60〜400g/m2、殊に70〜300g/m2である。比表面積(BET)は、例えばDIN 66131に依拠して測定されてよい。
【0026】
本発明による組成物は、好ましくは組成物の全質量に対して疎水性金属酸化物を0.01〜10質量%(その間に存在する全ての数を含めて)、有利に0.01〜5質量%、特に有利に0.05〜4質量%、殊に0.1〜2質量%含有する。
【0027】
本発明による組成物は、有機溶剤中に溶解された物質中に存在することができかつ使用されてよく、水性乳濁液として存在することができかつ使用されてよく、または水溶液として存在することができかつ使用されてよい。使用可能な配合物は、好ましくは組成物に対して0.5〜99.99質量%(その間に存在する数を含めて)、有利に5〜99.95質量%、特に有利に8〜99.9質量%、殊に有利に10〜75質量%の疎水性作用物質または疎水性作用物質混合物の含量を有する。
【0028】
有機溶剤として、本発明によれば、殊にアルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノール、極性の非プロトン性溶剤、例えばアセトン、DMSOまたはNMP、脂肪族または芳香族溶剤、例えばn−ヘキサン、トルエンまたはキシレン、または鉱油、例えばホワイトスピリットが使用されてよい。
【0029】
即ち、本発明による組成物は、好ましくは一連の室温を上廻る沸点を有する脂肪族炭化水素ならびに芳香族炭化水素、特にC6〜C12アルカン、ベンジン、石油ベンジン、ディーゼル油、ケロシン、トルエン、キシレン、アルコールまたはポリオール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、グリセリンまたはケトン、特にアセトンからの少なくとも1つの有機溶剤または希釈剤、または前記の有機溶剤または希釈剤の少なくとも2つからなる混合物の含量を有することができる。
【0030】
本発明による組成物が水性乳濁液の形で存在する限り、この組成物は、少なくとも1つの乳化剤を有することができ、この場合この乳化剤は、好ましくは一連のC8〜C18アルキルを有するアルキルスルフェート、疎水性基中にC8〜C18アルキルおよび1〜40個のエチレンオキシド(EO)単位またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキルエーテルスルフェートおよびアルカリールエーテルスルフェート、C8〜C18アルキルを有するアルキルスルホネート、C8〜C18アルキルを有するアルカリールスルホネート、スルホコハク酸と5〜15個の炭素原子を有する1価アルコールまたはアルキルフェノールとの半エステル、アルキル−、アリール−、アルカリール−またはアラルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、有機基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスフェートおよびアルカリールホスフェート、アルキル基またはアルカリール基中の8〜20個の炭素原子および1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルホスフェートまたはアルカリールエーテルホスフェート、8〜40個のEO単位およびアルキル基またはアリール基中のC8〜C20炭素原子を有するアルキルポリグリコールエーテルおよびアルカリールポリグリコールエーテル、8〜40個のEO単位またはPO単位を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、C8〜C22アルキル基を有するアルキルアミンとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの付加生成物、直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和C8〜C24アルキル基および1〜10個のヘキソース単位またはペントース単位を有するアルキルポリグリコシド、珪素官能性界面活性剤または前記乳化剤の混合物から選択されていてよい。
【0031】
本発明による組成物中の乳化剤の含量は、乳濁液の全質量に対して特に0.01〜5質量%、特に有利に0.05〜4質量%(その間に存在する全ての数を含めて)である。
【0032】
更に、本発明による組成物は、一連の錯体化合物、例えばハロゲン化物、酸化物、水酸化物、イミド、アルコラート、アミド、チオラート、カルボキシラートおよび/またはこれらの置換基と元素の周期律表(PSE)の第3主族および第4主族の元素ならびにPSEの第II副族、第III副族、第IV副族、第V副族、第VI副族、第VII副族および第VIIIa副族、第VIIIb副族および第VIIIc副族の元素との組合せ、殊にチタネートまたはジルコネート、例えばテトラ−n−ブチルオルトチタネートまたはテトラ−n−プロピルオルトジルコネートからなる少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒の含量を有することができる。更に、触媒としてPSEの第1主族および第2主族の酸化物、水酸化物、水素化ホスフェート、水素化スルフェート、スルフィド、水素化スルフィド、炭酸塩または水素化炭酸塩および/またはアルコラート、特にナトリウムメタノラートまたはナトリウムエタノラートおよび/またはアミノアルコール、特に2−アミノエタノールまたは2−(N,N−ジメチル)アミノエタノールを含有していてよい。更に、カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸またはプロピオン酸、ならびに鉱酸、例えば塩酸または燐酸、または記載された触媒の少なくとも2つからなる混合物は、加水分解触媒または縮合触媒として有利に使用されてもよい。
【0033】
前述の加水分解触媒または縮合触媒は、好ましくは使用される疎水性作用物質の量に対して0.05〜5質量%(その間に存在する全ての数を含めて)、有利に0.1〜2質量%、殊に有利に0.2〜1.8質量%の量で使用されてよい。
【0034】
更に、本発明による組成物は、好ましくは一連の無機酸または有機酸、緩衝剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺藻剤、殺微生物剤、臭気剤、耐蝕剤、防腐剤、レオロジー助剤から選択された、少なくとも1つの他の助剤の含量を有することができる。
【0035】
更に、本発明による組成物には、他の助剤として1つ以上の疎水化されていない金属酸化物が1つ以上の記載された加水分解触媒または縮合触媒と共に添加されてもよく、それによって好ましくは、なおビーディング効果のよりいっそう大きな摩耗安定性を達成することができる。
【0036】
本発明による組成物は、好ましくは個々の成分を適当な混合装置を備えた容器中で簡単に混合することによって調製することができる。この混合は、連続的に、例えば混合管を使用することによって行なうことができるか、または非連続的に行なうことができる。
【0037】
水性乳濁液の製造は、技術的視点から、例えばWO 06/081892ならびにWO 06/081891中に詳細に記載されている。この場合、好ましくは、少なくとも1つの疎水性作用物質と少なくとも1つの疎水性金属酸化物とからなる本発明による組成物が油相として使用されてよい。従って、前記刊行物は、全ての範囲で本明細書の構成成分である。
【0038】
即ち、本発明による組成物は、前記成分を順次に適当な容器中に計量供給し、および混合することによって均質化することにより、有利に製造することができる。
【0039】
従って、本発明の対象は、
少なくとも1つの疎水性作用物質および
少なくとも1つの疎水性金属酸化物を混合装置中で一緒にし、
場合によっては少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒、
場合によっては水、
場合によっては少なくとも1つの有機溶剤、
場合によっては少なくとも1つの乳化剤および
場合によっては少なくとも1つの他の助剤と連続的または非連続的に混合することにより、本発明による組成物を製造する方法である。
【0040】
更に、本発明の対象は、本発明による方法により得られた、弗素不含の組成物である。
【0041】
最後に、本発明の対象は、多孔質の鉱物質基体を疎水化するため、および殊に建築材料、例えばコンクリート、繊維セメント、粘土、ローム、煉瓦、大理石、石膏、石膏を基礎とするかまたは石膏含有の基質、花崗岩、砂岩または石灰質砂岩の基質表面上でビーディング効果を形成させるための本発明による弗素不含の組成物または本発明による方法により製造された組成物の使用であり、この場合1分間の時間に亘って、処理された基質表面上に残留する1つ以上水滴は、前記表面を実質的に濡らさず、こうして有利に裸眼で確認できる濡れた斑点を全く残さない。
【0042】
殊に、僅かな求核性を有する鉱物質基質は、一般に僅かな含量の遊離OH基を有するものであり、これまでの常用の手段では十分に撥水性を付与することができなかった。このような鉱物質基質は、例えば炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウム、または炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムを基礎とする基質、例えば石灰岩、または硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウム、または硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムを基礎とする基質、例えば石膏であり、建築工業においてしばしば使用されている。意外なことに、本発明による組成物は、特に有利に疎水性の性質の形成のため、およびこのような基質または相応する原材料、生成物、製品、建築部材または生産物上での撥水効果の形成のためにも好適である。
【0043】
従って、対象は、本発明による組成物で処理された生産物、殊にコンクリート、石膏、石灰質砂岩、石灰岩を基礎とするものである。
【0044】
本発明を以下の例により詳細に説明するが、本発明の対象はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
質量%での次の全ての記載は、完成した配合物の全質量に対するものである。
【0046】
例1
室温でアルキルトリアルコキシシラン(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)BHN)を清潔な乾燥したガラス容器中に装入し、疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 202 0.5質量%(Evonik Degussa GmbH社から入手可能)を添加した。生じた混合物をさらに5分間攪拌し、引続き直ちに使用することができた。
【0047】
例2
室温でエタノールを清潔な乾燥したガラス容器中に装入し、順次にアルキルトリアルコキシシラン20質量%(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)BHN)、エチルポリシリケート20%(Evonik Degussa GmbH社のDynasylan A)、触媒1.5質量%(DuPont社のTyzor TnBT)ならびに疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 202 0.5質量%(Evonik Degussa GmbH社から入手可能)を添加した。生じた混合物をさらに5分間攪拌し、引続き直ちに使用することができた。
【0048】
例3
室温でShellsol D 60(Shell Chemicals社から入手可能)を清潔な乾燥したガラス容器中に装入し、順次にアルキルシロキサン10質量%(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)266)ならびに疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 972 1質量%(Evonik Degussa GmbH社から入手可能)を添加した。生じた混合物をさらに5分間攪拌し、引続き直ちに使用することができた。
【0049】
例4(比較例):
純粋なアルキルトリアルコキシシラン(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)BHN)を使用した。
【0050】
例5(比較例)
室温で、乾燥した清潔なガラス容器中で疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 202 0.5質量%(Evonik Degussa GmbH社から入手可能)をエタノール中に懸濁させた。
【0051】
例6(比較例):
例2と同様に行なうが、しかし、疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 202の添加なしに行なった。
【0052】
例7(比較例):
室温でアルキルシロキサン(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)WS 600)の水性乳濁液を清潔な乾燥したガラス容器中に装入し、疎水性珪酸AEROSIL(登録商標)R 202 1質量%(Evonik Degussa GmbH社から入手可能)を添加した。生じた混合物をさらに5分間攪拌し、引続き直ちに使用することができた。
【0053】
実施例の評価
次の第1表は、上記の実施例の結果を示す。そのために、直ちに使用できる溶液を寸法15×7.5×1cmのコンクリート板ならびに石灰質砂岩板上にそれぞれ記載された塗布量で前記板の浸漬によって施した。ビーディング特性の等級の測定のために、水滴を載置し、1分間の接触時間後に吸収されない限り、いわゆる濡れ角または接触角を測定した。(接触角の測定は、DIN EN 828により行なった。)付加的に液滴を10分間の接触時間後に拭き取り、後に残った面を評価した(斑点形成:0=液滴が弾き返された、1=濡れなし、2=接触面の半分が濡れた、3=接触面が完全に濡れた、4=接触面が暗色に着色され、液滴の若干が吸収された、5=接触面が暗色に着色され、液滴の50%が吸収された、6=接触面が暗色に着色され、液滴が完全に吸収された)。
【0054】
疎水性の性質は、個々の混合物の水吸収量が減少されることによって表わされる。そのために、寸法15×7.5cmのコンクリート板、石灰質砂岩ボードまたは石膏ボードを記載された量で浸漬によって処理した。2週間の硬化時間後、コンクリート板および石灰質砂岩ボードを24時間完全に水中に貯蔵した。引続き、質量の増加率を測定した。水吸収量の減少は、未処理のダイス(Wuerfel)と比較してもたらされる。
【0055】
石膏試験体(水/石膏値=0.5)をDIN EN 520により2時間水中に貯蔵し、引続き質量の増加率を%で測定した。この規格には、最高の等級に対して5%未満の質量の増加率が設けられている。
【0056】
【表1】

【0057】
結論
本発明による組成物は、コンクリートおよび石灰質砂岩に対して、ならびに石膏に対して優れたビーディング特性および同時に存在する優れた疎水性の作用(水中での貯蔵の際の水吸収量または質量増加率の減少として表わされた)を示す。
【0058】
本発明による成分の1つを欠く配合物は、高められた水吸収量および/または劣悪なビーディング特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の鉱物質基体を疎水性にするため、および該基体の表面上にビーディング効果を形成するための弗素不含の組成物であって、この場合この組成物は、
少なくとも1つの疎水性作用物質および
少なくとも1つの疎水性金属酸化物を基礎とする、上記の弗素不含の組成物。
【請求項2】
前記組成物が他の成分として
場合によっては少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒、
場合によっては少なくとも1つの有機溶剤、
場合によっては水、
場合によっては少なくとも1つの乳化剤および/または
場合によっては他の助剤を含有することができる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
疎水性作用物質が一般式I
【化1】

〔式中、R1は、C1〜C18アルキル基を表わし、基R2は、同一かまたは異なり、R2は、水素原子であるかまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である〕で示される一連のアルキル置換シランから選択されている、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
疎水性作用物質が理想化された式II
【化2】

〔式中、基R1およびR3は、互いに独立に、一連のN、O、Cl、PまたはSからの1個以上のヘテロ原子を有する置換基を含有していてよいC1〜C18アルキル基であり、R2は、同一かまたは異なり、R2は、水素原子であるかまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、(n+m)は、2〜50の数値を有するオリゴマー化度であり、混合物の場合には、2〜50の値を有する平均オリゴマー化度であり、この場合平均モル質量は、300〜10000g/molである〕で示される一連の直鎖状、環状または分枝鎖状のオリゴマーシロキサン、または少なくとも2つの直鎖状、環状および/または分枝鎖状のオリゴマーのシロキサンからなる混合物から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
疎水性作用物質が理想化された一般式III
【化3】

〔式中、R4は、互いに無関係に水素原子を表わすかまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、oは、0〜50の数である〕で示される一連のアルキルシリケートから選択されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が理想化された式I、IIおよび/またはIIIの疎水性作用物質の混合物を基礎とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
疎水性作用物質の含量が前記組成物に対して0.5〜99.99質量%である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
疎水性金属酸化物の含量が前記組成物に対して0.01〜10質量%である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
一連の脂肪族または芳香族溶剤、室温を上廻る沸点を有する脂肪族炭化水素ならびに芳香族炭化水素、極性の非プロトン性溶剤、アルコールまたはポリオール、ケトンからなる少なくとも1つの有機溶剤または希釈剤、または前記の有機溶剤または希釈剤の少なくとも2つからなる混合物の含量を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
元素の周期律表(PSE)の第3主族および第4主族の元素ならびにPSEの第II副族、第III副族、第IV副族、第V副族、第VI副族、第VII副族および第VIIIa副族、第VIIIb副族および第VIIIc副族の元素の一連の錯体化合物、殊にチタネートまたはジルコネート、PSEの第1主族および第2主族の元素の一連の塩、一連のアルコラート、一連のアミノアルコール、一連のカルボン酸または鉱酸からなる少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒、または前記の加水分解触媒または縮合触媒の少なくとも2つからなる混合物の含量を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
使用された疎水性作用物質の量に対して0.05〜5質量%の触媒の含量を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
8〜C18アルキルを有するアルキルスルフェート、疎水性基中にC8〜C18アルキルおよび1〜40個のエチレンオキシド(EO)単位またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキルエーテルスルフェートおよびアルカリールエーテルスルフェート、C8〜C18アルキルを有するアルキルスルホネート、C8〜C18アルキルを有するアルカリールスルホネート、スルホコハク酸と5〜15個の炭素原子を有する1価アルコールまたはアルキルフェノールとの半エステル、アルキル−、アリール−、アルカリール−またはアラルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、有機基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスフェートおよびアルカリールホスフェート、アルキル基またはアルカリール基中の8〜20個の炭素原子および1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルホスフェートまたはアルカリールエーテルホスフェート、8〜40個のEO単位およびアルキル基またはアリール基中のC8〜C20炭素原子を有するアルキルポリグリコールエーテルおよびアルカリールポリグリコールエーテル、8〜40個のEO単位またはPO単位を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、C8〜C22アルキル基を有するアルキルアミンとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの付加生成物、直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和C8〜C24アルキル基および1〜10個のヘキソース単位またはペントース単位を有するアルキルポリグリコシド、珪素官能性界面活性剤から選択された少なくとも1つの乳化剤または前記乳化剤の少なくとも2つからなる混合物の含量を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の全質量に対して0.01〜5質量%の乳化剤の含量を有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
一連の無機酸または有機酸、緩衝剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺藻剤、殺微生物剤、臭気剤、耐蝕剤、防腐剤、レオロジー助剤から選択された、少なくとも1つの助剤の含量を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の弗素不含の組成物を製造する方法であって、
少なくとも1つの疎水性作用物質および
少なくとも1つの疎水性金属酸化物を混合装置中で一緒にし、
場合によっては少なくとも1つの加水分解触媒または縮合触媒、
場合によっては水、
場合によっては少なくとも1つの有機溶剤、
場合によっては少なくとも1つの乳化剤および
場合によっては少なくとも1つの他の助剤と連続的または非連続的に混合することにより、請求項1から14までのいずれか1項に記載の弗素不含の組成物を製造する方法。
【請求項16】
請求項15の記載により得られた組成物。
【請求項17】
多孔質の鉱物質基体を疎水化するため、および処理された基質表面上でビーディング効果を形成させるための請求項1から14までのいずれか1項または請求項16に記載の組成物または請求項15記載の方法により製造された組成物の使用であって、この場合1分間の時間に亘って、処理された基質表面上に残留する1つ以上水滴は、濡れた斑点を全く残さない、上記使用。

【公表番号】特表2012−516828(P2012−516828A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548626(P2011−548626)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050207
【国際公開番号】WO2010/089166
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】