説明

改善されたレオロジー特性を有する塗料配合物

【課題】艶消し剤として使用する二酸化ケイ素の添加によりレオロジー特性が低下することのない塗料配合物を提供する。
【解決手段】わずかに剪断された状態で測定された塗料配合物の粘度が、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で40%低く、強力に剪断された状態で測定された塗料配合物の粘度が、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で25%低い、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された応用技術的特性を有する、表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物及び該塗料配合物の使用に関する。
【0002】
チキソトロープアルキド樹脂を含有する塗料配合物は40年代末に実地のためにより一層重要となった。開発は、通常合成されるアルキド樹脂に極めて高い粘度を付与し、それによりある程度のチキソトロピーを達成することから始められた。本質的な進歩は、油又はアルキド樹脂を、重合リノレン酸とポリアミンとの縮合により製造されるポリアミドと反応させることにより達成された。生じる樹脂は強度に顕著なチキソトロピーを示すため、前記樹脂を含有する塗料配合物は垂直な面上で流れ落ちず、従って危惧される「垂れの形成」は生じず、刷毛から滴り落ちることもない。それに加えて、チキソトロピーにより、特に重い顔料の沈殿が妨げられる。従って前記の塗料配合物は、殊に素人が取り扱うことのできる家庭用エナメル塗料の製造に適当である。
【0003】
チキソトロープアルキド樹脂は、大抵の長鎖油の通常のアルキド樹脂と混合することができ、それによりチキソトロピーの度合いを調節することができる。この可能性は極めて頻繁に使用される。これは、例えば、強度のチキソトロピーにより塗料の流展性及び光沢が最小化されると考えられる建築用塗料の製造の際に該当する。更に、チキソトロープ樹脂は、エッグシェル光沢を有する塗料を製造するために使用することができる。
【0004】
塗料又は被覆材料の稠性を高めるためには、適当なバインダー、溶剤混合物及び場合により顔料/充填剤分の他に増粘剤も必要である。溶剤含有被覆系において、増粘剤とチキソトロープ剤とは区別される。増粘剤/チキソトロープ剤の作用は、種々の効果(膨潤、ゲル形成、ミセル会合、溶媒和、網状構造の形成及び/又は水素架橋結合)及びその相互作用に基づく。水性系において、ハイドロコロイドの分子構造及び分子量は増粘の度合いを決定付ける。
【0005】
増粘剤の1つの特別の群は会合増粘剤である。これは、水溶性化親水基の他に疎水性末端基又は側鎖基をも分子中に含むという点で、変性された天然物質とも異なるし、有機完全合成増粘剤とも異なる。それにより、会合増粘剤は界面活性剤の特性を取得し、かつミセルを形成することができる。単独で水相中での膨潤により作用する増粘剤とは異なり、会合増粘剤はバインダー分散液のラテックス粒子と相互作用し、このラテックス粒子と「ミセル架橋」を介して結合する。この場合注目すべきことに、会合増粘剤は、微細な分散液を、その大きな全表面のために、粗粒状分散液よりも強度に増粘させる。
【0006】
会合増粘剤を用いて、一方では塗料はわずかに剪断された状態で高い粘度を有する、即ち、塗料が垂直な面に施与された場合に流れ現象(例えば垂れの形成)が生じないように塗料系のレオロジー挙動を調節することができる。他方で、機械的応力により強力に剪断された状態において粘度が低下し、即ち、塗料が希液性となり、かつ、狭いノズルにより、例えばスプレーガンを用いた施与の際に容易に搬送することができる。
【0007】
塗料及び透明塗料は、前記の成分の他に、しばしば、合成により製造されたか又は天然の材料からなる、微粒子として存在する艶消し剤をも有し、かつ、種々の適用において、例えば工業的被覆、皮革及びプラスチック被覆又は印刷用インキにおいて使用される。塗料及び透明塗料において使用される艶消し剤は、理想的には以下の特性を示す:高い細孔容積、狭い粒子分布、それぞれの適用に適合された適当な粒径及び狭い細孔分布。シリカ(沈降シリカ及び熱分解法シリカをベースとして製造されたシリカ)及び/又はシリカゲルは、上記の特性の大部分を有するため、通常艶消し剤として使用される。
【0008】
前記の艶消し剤が、チキソトロープ塗装工用塗料/アルキド塗料において、又は水性分散液塗料及び水性分散液透明塗料において使用される場合、これはしばしば不所望の効果を示すため、それによって会合増粘剤の作用は不利な影響を受け、それにより塗料の粘度は劇的に低下する。
【0009】
従って、前記の先行技術から出発して、本発明の課題は、上記の欠点が少なくとも部分的に改められている新規の塗料配合物を提供するという課題であった。殊に、本発明による塗料配合物は改善された応用技術的特性、例えば改善されたレオロジー特性を有するべきである。更に、本発明による塗料配合物の製造法が提供されるべきである。
【0010】
他の明示されていない課題は、以下の記載及び実施例の全ての文脈から明らかである。
【0011】
驚異的にも、前記の課題は、以下の記載並びに請求項及び実施例において詳細に定義された本発明による塗料配合物により解決されることが見出された。
【0012】
従って本発明の対象は、
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で40%低いこと
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で25%低いこと
を特徴とする、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物である。
【0013】
更に、本発明の対象は、例えば建築物部材、窓枠及び戸等を被覆するための建築用塗料としての、本発明による塗料配合物の使用である。
【0014】
本発明による塗料配合物を用いて、レオロジー特性が二酸化ケイ素により不利な影響を受けない、二酸化ケイ素を含有する、チキソトロープないし構造粘性塗料配合物を製造することに初めて成功する。
【0015】
卓越した粘度値の他に、本発明による塗料配合物は以下の点:
・良好な浮動挙動、
・高い艶消し効果、
・高められた透明度、及び
・塗料表面の良好な耐引掻性
が顕著である。
【0016】
従って、本発明による塗料配合物は、建築物部材、窓枠、戸等を被覆するための建築用塗料として抜群に適している。
【0017】
本発明を以下に詳細に記載するが、その際、まず若干の重要な概念を定義する。
【0018】
本発明の意味における塗料配合物とは、少なくとも1種のポリマー成分及び/又は複数の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物、少なくとも1種の溶剤及び少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物であると解釈すべきである。本発明による塗料配合物は、有利にチキソトロープないし構造粘性塗料配合物、殊に、アルキド樹脂ベースの塗装工用塗料及び分散液塗料である。
【0019】
チキソトロープに調節されたか又は構造粘性の塗料配合物であると解釈できるものは当業者に公知であり、一般に辞典、例えばRoempp Lexikon Chemie 第2.0版, 1999で調べることができる。チキソトロープないし構造粘性塗料は、殊に、その粘度が、機械的応力が作用した際には低下するけれども機械的応力の終了後には再度増加することが顕著である。
【0020】
本発明の意味における二酸化ケイ素は、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリカゲル、変性された熱分解法シリカ並びに前記二酸化ケイ素の混合物から成る群から選択されている。二酸化ケイ素の表面を少なくとも1種のポリマーで変性させた場合、これを表面変性された二酸化ケイ素と呼称する。熱分解法シリカをベースとして製造されたシリカとは、この場合、DE2414478に記載された熱分解法シリカをベースとして製造することができるシリカであると解釈される。
【0021】
表面変性とは、二酸化ケイ素粒子の表面への、有機成分の化学的及び/又は物理的な結合であると解釈すべきである。即ち、表面変性された二酸化ケイ素の場合、二酸化ケイ素粒子の少なくとも一部の表面の少なくとも一部が表面変性剤で被覆されている。
【0022】
わずかに剪断された状態とは、Haake粘度計6Rを用いて6回転/分で室温で測定された動粘度に相当する。強力に剪断された状態とは、Haake粘度計6Rを用いて60回転/分で室温で測定された動粘度に相当する。
【0023】
本発明による塗料配合物は、
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された本発明による塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で40%、有利に最高で20%、殊に最高で10%低いこと
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された本発明による塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で25%、有利に最高で20%、殊に最高で15%低いこと
を特徴とする、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する。
【0024】
本発明による塗料配合物は、チキソトロープの、溶剤を含有する塗装工用塗料中で、≧1.5、有利に>2ないし>2.4のチキソトロピー指数TI 6/60を有し、構造粘性に調節された水性分散液塗料中で有利に>1.6のチキソトロピー指数TI 6/60を有し、0.5〜15質量%、有利に1〜10質量%の割合の、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する。更に、1種以上の以下の成分:
− ポリマー成分又は2種以上の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物(=バインダー及び硬化剤成分)5〜99.5質量%、有利に20〜80質量%、殊に35〜70質量%、及び/又は
− 溶剤として作用する低分子成分又はそのような低分子成分の混合物 0〜80質量%、有利に20〜70質量%、殊に30〜55質量%、及び/又は
− 変性されたポリウレタン(HEUR)又は疎水変性されたアクリル酸又はメタクリル酸コポリマー(HASE)をベースとする会合増粘剤 0.1〜5質量%、有利に0.2〜3質量%
が含まれていてよい。
【0025】
上記の成分の他に、本発明による塗料配合物は、更に通常塗料中で使用される他の助剤、例えば可塑剤、安定剤、相媒介剤(Phasenvermittler)、顔料、界面活性物質、乾燥剤、触媒、開始剤、感光剤、阻害剤、遮光剤及び保存剤を有してよい。
【0026】
上記の全ての有利な範囲を互いに独立して調節することができるが、その際、本発明による塗料配合物の特別な特性は、前記の全ての成分の組合せにより達成されることに留意しなければならない。殊に、使用される表面変性された二酸化ケイ素は、塗料配合物の特性に重大な影響を及ぼす。
【0027】
上記の利点を認めることのできる、本発明の意味における典型的な塗料配合物は、アルキド樹脂をベースとする、チキソトロープに調節された、溶剤を含有する塗料、並びに、アクリレート、アクリレート/ポリウレタン又はその混成物をベースとする、構造粘性に調節された、水性分散液塗料又は水性分散液透明塗料である。これは、殊に有利に艶消し塗料配合物である。
【0028】
本発明による塗料配合物は、その粘度が、わずかな剪断力の作用の場合にほとんど低下しないか、もしくはそれどころか二酸化ケイ素の選択に依っては増加するという利点を示す。これにより、有利な作業特性、即ち、塗料の不所望な滴り落ちを生じることなく、本発明による塗料配合物を特に刷毛又はローラを用いて取り扱うことができるという有利な作業特性がもたらされる。更に、本発明による塗料配合物は極めて良好に垂直な壁部に付着し、それにより、”垂れ”の形成を回避することができる。
【0029】
弱く剪断された状態での良好な作業特性に加え、本発明による塗料配合物は、殊に、強力に剪断された状態であっても抜群に良好に取扱いが可能であり、それというのも、強力な剪断におけるその粘度は極めて非常に低いためである。これにより、例えば、本発明による塗料配合物をスプレーガンを用いて容易に取り扱うことができる。
【0030】
理論に結びつけることなく、出願人は、本発明による塗料配合物の特別な特性が、塗料中に含まれるチキソトロープ構造が本発明による塗料中で使用される表面変性された二酸化ケイ素により損なわれないか又はわずかに損なわれるに過ぎないことに帰因するものであるという見解を示している。それにより、例えば水性塗料系中で、増粘剤と水との相互作用は、表面変性された二酸化ケイ素によりわずかに損なわれるに過ぎないか又は全く損なわれない。従って、チキソトロープ特性は維持される。
【0031】
本発明による塗料配合物は、塗料及び被覆技術において慣用の樹脂、例えば”Lackharze, Chemie, Eigenschaften und Anwendungen, Hrsg. D. Stoye, W. Freitag, Hanser Verlag, ミュンヘン, ウィーン 1996”に記載されている樹脂をバインダーとして有することができる。特に、Ullmann, 第3版, 第11巻, 第334頁以下に記載されているような(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び、(メタ)アクリル酸と他のオレフィン性不飽和化合物、例えばスチレンとの、他の官能基を有してよいエステルのポリマー及びコポリマー;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール及びエポキシ樹脂、並びに前記ポリマーの任意の混合物、並びに重縮合により製造された脂肪酸変性「アルキド樹脂」を挙げることができる。
【0032】
有利に、ポリマー成分として、有機化合物、例えばポリアクリレート−、ポリエステル−、ポリカプロラクトン−、ポリエーテル−、ポリカーボネート−、ポリウレタンポリオール及びヒドロキシ官能性エポキシ樹脂並びに前記ポリマーの任意の混合物が使用される。殊に有利なポリマー有機化合物として、水性又は溶剤含有ないし溶剤不含のポリアクリレート−及びポリエステルポリオール並びにその任意の混合物が使用される。
【0033】
適当なポリアクリレートポリオールは、特にヒドロキシル基を有するモノマーと他のオレフィン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン−、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸−及びフマル酸−モノ−及び−ジアルキルエステル、α−オレフィン及び他の不飽和オリゴマー及びポリマーとのコポリマーである。殊に適当なポリアクリレートポリオールは、ゲル透過クロマトグラフィー(標準ポリスチレン)を用いて測定可能な2000〜100000g/モル、有利に2500〜50000g/モル、殊に有利に3100〜40000g/モルの平均重量平均分子量、−50℃〜100℃、有利に−40℃〜90℃、殊に有利に−30℃〜+80℃のガラス転移温度TG、<30mgKOH/g、有利に<25mgKOH/gの酸価、並びに、0.5〜14.0のヒドロキシル基含分を有する。
【0034】
溶剤として、本発明による塗料配合物は、慣用の溶剤、例えば芳香族、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式炭化水素、部分的又は完全にハロゲン化された芳香族、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式炭化水素、アルコール、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、エステル、例えばエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、エーテルエステル、例えばメトキシプロピルアセテート又はブチルグリコールアセテート、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン、強極性溶剤、例えばジメチルホルムアミド及び水並びにその混合物を有してよい。
【0035】
前記の溶剤を分散媒体として本発明による塗料配合物のために使用する場合、前記の溶剤に他の物質を添加することができる。この場合、後の更なる使用のためにも予定されている物質、又は解凝集ないし解凝集材料の安定性を改善する物質、例えば分散樹脂又は−添加剤は有利である。オリゴマー又はポリマーの有機化合物、例えば上記の塗料及び被覆技術において慣用の樹脂及びバインダーは有利である。
【0036】
会合作用を有する増粘剤として、本発明による塗料配合物は、疎水変性された(メタ)アクリル酸コポリマー(HASE = Hydrophobically modified Alkali Swellable Emulsions)を含有してよい。上記の生成物は化学的に3つのブロックから構成されていてよい:
a)疎水性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、
b)疎水性モノマー、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート並びにメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレート、
c)会合モノマー、例えば少なくとも8個の炭素原子のメチルビニルエーテル。
【0037】
更に、強度の擬塑性粘度(構造粘性/チキソトロープ)を形成するために、いわゆるポリウレタン増粘剤(HEUR = hydrophobically modified ethyleneoxide-urethane)を本発明による塗料配合物中に導入することもできる。前記の合成増粘剤は、約8000〜70000g/モルの比較的低い分子量を有する水溶性ポリウレタンをベースとする。ポリウレタン−ポリマーは、通常、ジイソシアネートとジオールと疎水性ブロック化成分との反応により生じる。可能な疎水性ブロック化成分は、例えばオレイル、ステアリル、ドデシルプロピル、オクタデシル、ヘキサデシル及びノニルフェニルであってよい。そのようなポリウレタン増粘剤は直鎖ポリマー構造のみならず櫛状のポリマー構造をも有してよい。
【0038】
会合増粘剤の親水セグメントは、通常、ポリエーテル又はポリエステルである。ここで例示的に、マレイン酸とエチレングリコールとのポリエステル、並びにポリエーテル、例えばポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール誘導体を挙げることができる。可能なジイソシアネートは、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)及びヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)である。
【0039】
他の成分として、本発明による塗料配合物は特定の表面変性された二酸化ケイ素を含有する。上記の二酸化ケイ素は、表面がポリマーで変性された、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリカゲル又は熱分解法シリカから製造されたシリカである。適当な表面変性されたシリカの選択は、塗料配合物の特性に決定的な影響を及ぼす。
【0040】
従って、表面が少なくとも1種のポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサンで処理された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有する塗料配合物は有利である。この場合殊に、表面がポリエーテル及びアクリレートないしポリアクリレートで変性されたポリオルガノシロキサン又はポリアルコキシシロキサンで変性された二酸化ケイ素が重要である。
【0041】
有利な実施態様において、本発明による塗料配合物は、表面が、以下の一般構造式:
【0042】
【化1】

[式中、
Y=−OH、−OR又は
Y=H−O−(CO)−、H−O−(CO)−又は
【0043】
【化2】

R=−アルキル、殊にメチル又はエチル、
=アルキル又はH、
=アルキル、
=H又はアルキル、
a=0〜100、b=0〜100、c=0〜100、d=0〜100、
m=0〜100及びk=0〜100である]
を有するポリオルガノシロキサンで変性された二酸化ケイ素を含有する。
【0044】
もう1つの有利な実施態様において、本発明による塗料配合物は、表面が以下の一般構造式:
【0045】
【化3】

[式中、
=メチル基又は
【0046】
【化4】

及び/又は
【0047】
【化5】

であり、
単位aの合計=0〜100、単位bの合計=0〜15であり、その際、基Rにおいて、メチル基対アルコキシ基の比は50:1未満であり、a=0である場合にはb>1であり、b=0である場合にはa>5である]
を有するポリオルガノシロキサンで変性された二酸化ケイ素を含有する。殊に前記のポリオルガノシロキサンを製造するためのより詳細な記載は、DE3627782A1から引用することができる。前記出願の内容は同様に本願発明の対象である。
【0048】
既に記載したポリオルガノシロキサンに関連して、アルキル基とは、1〜100個のC原子、有利に1〜25個のC原子、殊に有利に1〜10個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、並びに、1〜15個のC原子を有するシクロアルキル基であると解釈すべきである。アルキル基は1個以上の二重結合又は三重結合を含有してよく、個々の原子はヘテロ原子、例えばO、N又はSにより置換されてよい。
【0049】
本発明による塗料配合物中で使用される表面変性された二酸化ケイ素は、互いに無関係に以下の物理化学的パラメータを1つ又はそれ以上有する。
炭素含分 :0.5〜30%、有利に1〜20%、殊に2〜10%
DBP(水不含) :100〜600g/100g、有利に200〜450g/100g、殊に250〜380g/100g
平均粒径d50 :0.5〜50μm、有利に1〜30μm、殊に2〜20μm
pH値 :<8
既に記載し、かつ本発明による塗料配合物中に含有される表面変性された二酸化ケイ素は、既に記載したポリマーを用いて、市販の、又は公知の方法により製造可能な二酸化ケイ素を表面処理することにより製造することができる。この場合、表面処理を自体公知の方法により行うことができる。
【0050】
例えば、市販の二酸化ケイ素、例えばGrace社の艶消し剤(Syloid ED 2、Syloid ED 3、Syloid ED 5、Syloid C 805、Syloid C 807、Syloid C 809、Syloid C 812)、Ineos社の艶消し剤(HP 260、HP 270、HP 285、HP 39、HP 395)又はSilysia社の艶消し剤(Sylysia 350、Sylysia 370、Sylysia 270)又はDegussa AG社の艶消し剤を既に記載したポリマーと混合し、室温か又は高められた温度にさらすことが可能である。
【0051】
更に、シリカの製造の間にポリマーでシリカを被覆することが可能である。ポリマーを、例えば二酸化ケイ素の沈降懸濁液中に添加することができる。しかしながら、二酸化ケイ素をポリマーと一緒に噴霧乾燥機中に噴霧し、表面変性を乾燥の間に実施することも可能である。最後に、二酸化ケイ素の被覆を乾燥後に、例えばシリカの粉砕の間に実施することも可能である。既に記載したように、二酸化ケイ素の変性のための方法は当業者に公知であるか又は明らかである方法であり、相応するポリマーの使用により容易に変更することができる。従って、既に挙げた処理変形は完全なものではない。表面変性を他の方法により実施することは可能である。相応して適応可能な表面変性法の詳細を、EP1281733A1から引用することができる。これにより、前記特許の内容は明確に本発明の明細書の内容に引用される。
【0052】
表面変性された殊に有利な二酸化ケイ素は、PCT/EP03/12380並びにドイツ国特許出願第02004012090.0号に記載されている。これにより、前記特許出願の内容は本発明の内容に明確に引用される。
【0053】
本発明による塗料配合物は、有利に、建築物部材、窓及び戸枠を被覆するための建築用塗料として使用される。
【0054】
測定方法
本発明による塗料配合物及び該塗料配合物中に導入された二酸化ケイ素の物理/化学的データを以下の方法で測定する:
突固め密度の測定
突固め密度の測定をDIN EN ISO787−11に従って行う。まだ篩別されていない試料の規定量を測定用ガラスシリンダーに満たし、そして突固め容積計を用いて固定回数の突き固めを行う。突き固めの間に試料は圧縮される。実施された調査の結果として突固め密度が得られる。
【0055】
その測定はEngelsmann社、ルートヴィヒスハーフェン、STAV2003型の計数器を有する嵩容積計で実施する。
【0056】
まず250mlのガラスシリンダーの風袋を精密計量器で測定して補正する。引き続き二酸化ケイ素250mlを、粉末漏斗を用いて、風袋を測定して補正されたメスシリンダー中に中空部が形成されないように満たす。引き続き試料の量を0.01gにまで正確に秤量する。次いでシリンダーを軽くたたくと、シリンダー中の粉末の表面は水平になる。メスシリンダーを突固め容積計のメスシリンダーホルダ中にはめ込み、そして1250回突き固める。突き固めた試料の容量を、1回の突き固め行程の後に1mlにまで正確に読み取る。突固め密度D(t)を以下のように計算する:
D(t)=m×1000/V
その際、
D(t):突固め密度(g/l)
V:突き固め後の二酸化ケイ素の容量(ml)
m:二酸化ケイ素の質量(g)
乾燥減量(TV)の測定
二酸化ケイ素の湿分又は乾燥減量(TV)をISO787−2に従って105℃で2時間乾燥させた後に測定する。この乾燥減量は、主に水湿分からなる。
【0057】
乾燥ガラスビーカー中に、精密計量器(Satorius LC621S)で粉末状二酸化ケイ素10gを0.1mgにまで正確に秤量する(初期秤量E)。ガラスビーカーを、複数の穿孔(φ1mm)を有するアルミニウム箔で被覆する。そのように被覆したガラスビーカーを105℃で2時間乾燥炉中で乾燥させる。引き続き、高温のガラスビーカーをデシケーター中で乾燥剤の上方で少なくとも1時間に亘り室温に冷却する。
【0058】
ガラスビーカーを最終秤量Aの測定のために精密計量器で0.1mgにまで正確に秤量する。湿分(TV)を%で
TV=(1−A/E)×100
但し、A=最終秤量(g)、E=初期秤量(g)
に従って測定する。
【0059】
強熱減量(GV)の測定
前記の方法により二酸化ケイ素の質量損失をDIN EN ISO3262−1に従って1000℃で測定する。前記の温度で、物理的及び化学的に結合した水並びに別の揮発性成分を抜く。調査される試料の湿分(TV)を前記の方法“乾燥減量の測定”によりDIN EN ISO787−2に従って測定する。
【0060】
二酸化ケイ素0.5gを、予熱して風袋を測定して補正した磁製坩堝中に0.1mgにまで正確に秤量する(初期秤量E)。試料をマッフル炉中で1000±50℃で2時間加熱する。引き続き磁製坩堝をデシケータ室中で乾燥剤としてのシリカゲルと一緒に室温に冷却する。最終秤量Aを重量法で測定する。
【0061】
強熱減量GVを%で
GV=(1−A/F)×100
に従って得る。
【0062】
Fは乾燥させた物質に対する補正した初期秤量(g)であり、
F=E×(1−TV/100)
に従って算出される。
【0063】
その計算においてA=最終秤量(g)を意味し、E=初期秤量(g)を意味し、そしてTV=乾燥減量(%)を意味する。
【0064】
炭素含有率の測定(C%)
二酸化ケイ素の炭素含有率の測定を、“C-mat 500”(Stroehlein Instruments社)を用いて行う。試料を約1350℃で熱処理し、そして炭素を酸素流により酸化させてCOにする。COを赤外セル中で測定する。
【0065】
その測定では、炭素含有率が1%より大きいか又は小さいかどうかで区別される。均質なシリカ試料の炭素含有量が1%を上回るのであれば、装置の“高い”領域で測定され、それが1%未満であれば、“低い”領域で測定される。
【0066】
まず対照試料を測定する。このために、焼鈍し、室温に冷却した磁器ボート(Porzellanschiffchen)に0.14〜0.18gの対照試料を分析計量器で秤量する。計量器が“C-mat”と連結されているので、スタートキーの操作により質量が受け渡される。前記のボートは、燃焼管の中央を30秒以内で移動せねばならない。燃焼の完了後に、測定値をインパルスに変換し、そして計算機により評価する。少なくとも3回の測定(合致に応じて)を実施する。場合により、装置の係数を新たに調整せねばならない(詳細については、操作マニュアル“C-mat 500”、Stroehlein Instruments社を参照のこと)。前記の係数は以下の式により計算される:
【0067】
【化6】

【0068】
引き続き二酸化ケイ素を測定する。初期秤量は0.04〜0.05gである。磁製ボートを磁製の蓋で覆う。偏差>0.005%で複数の測定を行い、そして平均値を算出する。
【0069】
“C-mat 500”の操作は、Stroehlein Instruments社の操作マニュアルを引用する。
【0070】
炭素含有率を以下のように算出し、%の単位で示す:
炭素含有率=(I×F×10−8)/E
I=インパルス
F=係数
E=初期秤量(g)
pH値の測定(pH)
DIN EN ISO787−9に従う方法を20℃での二酸化ケイ素の水性懸濁液のpH値測定のために用いる。
【0071】
pH測定の実施前に、pH測定装置(Knick社、型:766の温度センサを有するpH計Climatic)及びpH電極(Schott社の単一棒測鎖(Einstabmesskette)、N7680型)をバッファー溶液を使用して20℃で較正しなければならない。較正関数は、2種の使用されるバッファー溶液が、見込まれる試料のpH値(pH4.00及び7.00、pH7.00及びpH9.00及び場合によりpH7.00及び12.00を有するバッファー溶液)を計算に入れるように選択されねばならない。
【0072】
5.00gの粉末状の、4±2%の湿分含有率を有する二酸化ケイ素を精密計量器で0.01gにまで、事前に風袋を測定して補正したガラス製の広口フラスコ中に秤量する。100mlを印すまで、20℃の冷たい脱イオン水を補充する。種々の試料が不十分に水湿潤可能であるべき場合、100mlを印すまで50.0mlのメタノール(p.A.)及び50.0mlの脱イオン水で補充する。
【0073】
引き続き該懸濁液を閉容器中で5分間にわたり振とう器(Gerhardt社、モデルLS10、55W、ステップ7)を用いて20℃で振盪する。pH値の測定を引き続きすぐに行う。このために電極をまず脱イオン水ですすぎ、次いで懸濁液の一部ですすぎ、そして引き続き懸濁液中に浸漬する。懸濁液中にマグネットフィッシュ(Magnetfisch)を添加した後に、懸濁液が軽く渦を形成する一定の撹拌速度でpH測定を実施する。pHメータが一定の値を示したら、pH値をディスプレイ上で読み取る。
【0074】
DBP吸収の測定(DBP)
二酸化ケイ素の吸収度のための尺度であるDBP吸収(DBP数)を規格DIN53601に従って以下のように測定する:
12.50gの粉末状の二酸化ケイ素(湿分含有率4±2%)をブラベンダー吸収計”E”の混練室(商品番号279061)に投入する(トルク入力の出力フィルタ(Ausgangsfilter)の減衰なく)。永続的に混合して(混練ブレードの回転速度 125回転/分)、室温で“Dosimaten Brabender T 90/50”によってジブチルフタレートを4ml/分の速度で混合物中に滴加する。混入を低い所要エネルギーでのみ行い、そしてデジタルディスプレイをもとに追跡する。測定の終わり頃に混合物はペースト状になり、これは所要エネルギーの急上昇により示される。600桁(0.6Nmのトルク)を指示した場合に、電気接点を通じて混練機もDBP計量供給も切断する。DBP供給のための同期電動機がデジタル計数器と連結されているので、DBPの消費量をmlで読み取ることができる。
【0075】
DBP吸収量はg/100gで示され、そして以下の式をもとに計算される:
【0076】
【化7】

【0077】
DBP吸収量は水不含の乾燥された二酸化ケイ素について定義されている。湿式の二酸化ケイ素を使用する場合にはDBP吸収量を計算するために補正値Kを考慮しなければならない。この値は、補正表をもとに決定でき、例えば二酸化ケイ素の含水率5.8%はDBP吸収量について33g/(100g)の上乗せを意味する。二酸化ケイ素の湿分は記載された方法”乾燥減量の測定”に従って測定される。
【0078】
ジブチルフタレート吸収(無水)についての湿分補正表
【0079】
【表1】

【0080】
塗料の粘度及び透明塗料の粘度の測定
塗料への二酸化ケイ素の添加は、その粘度に影響を及ぼし得る。試験すべき塗料を、それぞれの製造規定に相応して製造する。相応する貯蔵時間(1日、10日及び/又は14日間)の後に、塗料80mlを100ml容器(直径45mm)中に満たす。塗料を約2時間フラッシュオフする。測定の少し前に、粘度計(Haake粘度計6)を接続し、自己試験を実施し、機器のスピンドルサイズ及び回転数を調節する。塗料の動粘度を測定するために、以下の調節を選択する:
【0081】
【表2】

【0082】
スピンドル(R6)を粘度計に取付け、スピンドル軸上の標識まで塗料に浸す。粘度計を始動させる。スピンドルを2分間塗料中で回転させ、その後、調節1)に関する測定値を読み取る。その後、スピンドルを更に2分間塗料中で回転させ、引き続き、調節2)に関する測定値を読み取る。準備及び測定を23℃及び相対湿度50%で実施する。チキソトロピー指数TI 6/60を以下のように算出する:
【0083】
【化8】

【0084】
60゜及び85゜反射率計値の測定
塗料被膜表面の意図的な粗面処理による反射特性の影響は、SiOベースの艶消し剤の傑出した特性である。従って、反射率計値は艶消し塗料被膜の特性決定のための1つの重要な基準である。
【0085】
測定のための前提条件は、測定すべき塗料被膜表面が平坦で汚れがなくかつ硬化されていることである。
【0086】
測定を、試料の少なくとも3つの代表的箇所において、DIN 67530による測定幾何を有する反射率計(例えばHaze-gloss, BYK-Instruments)を用いて実施することができる。個々の測定値の大き過ぎる偏差が得られた場合には、通常、再度、代表的な箇所での測定を行うか、又は個々の測定値の数を>3に増加すべきである。BYK haze-glossにおいて、ディスプレイに測定値の標準偏差が示される。標準偏差が>0.5の場合、上記の方法を実施することが推奨される。平均値は小数点第1位まで定める。
【0087】
艶消しした塗料被膜表面の特性決定の際に、60゜及び85゜の測定幾何で測定するのが有効であることが判明した。従って、DIN67530からの偏差において、艶消しした塗料被膜表面の反射率計値を双方の測定幾何で測定する。
【実施例】
【0088】
実施例
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものであり、その範囲を制限するためのものではない。
【0089】
下記の応用技術的試験のために、以下の二酸化ケイ素を使用する:
先行技術の二酸化ケイ素:
二酸化ケイ素1:Acematt TS 100 (Degussa AG社)
二酸化ケイ素2:Acematt HK 400 (Degussa AG社)
二酸化ケイ素3:Acematt OK 412 (Degussa AG社)
本発明による表面変性された二酸化ケイ素
二酸化ケイ素4:
以下の物理化学的特性:
BETによる比表面積[m/g] :290.0
pH値 :4.2
突固め密度[g/l] :35
乾燥減量[%] :0.8
DBP(水不含)[g/100g]:305.0
C−含有率[%] :0
を有する親水性熱分解法シリカ(Aerosil 300)、及び、以下の物理化学的特性:
【0090】
【表3】

を有する被覆剤(Coatungsmittel)(TEGO Foamex 845, TEGO GmbH社)ポリシロキサン−エマルションから製造する。
【0091】
被覆剤(TEGO Foamex 845, TEGO GmbH社)は、水210gで希釈された水性ポリシロキサン−エマルション656.4gから成る。被覆剤のpH値をNHOHの添加によりpH11.3に調節する。熱分解法シリカ2kgに被覆剤0.865kgを室温で2成分ノズルを用いて噴霧する。混合容器としてスキ刃混合機を使用する。そのように湿潤させた材料の乾燥減量は24.4%である。
【0092】
ガスジェットミルで、湿潤させた材料を粉砕し(流量7kg/h)、引き続き120℃で13時間乾燥させる。
【0093】
二酸化ケイ素5及び6:
以下のように製造する:
沈降シリカをDE1767332と同様に製造する。そのために、撹拌ユニットを備えた加熱可能な120l沈降容器中に水80lを装入し、水ガラス5.5l(密度=1.346g/l、SiO含分=27.3%、NaO含分=7.9%)を用いてアルカリ価を20に調節する。装入物を85℃に加熱する。この温度で、全体の沈降を実施する。その後、並行して、アルカリ価が変化しないように、水ガラスを計量供給速度207ml/分で供給し、硫酸(50%)を計量供給速度45ml/分で供給する。30分以上剪断ユニットを接続し、沈降の最後にd50=7μmの粒子分布が達成されるように、沈降懸濁液を更なる沈降の間に強力に剪断する。45分後、水ガラス及び硫酸の供給を30分間中断する。その後、水ガラス及び硫酸を接続し、上記と同じ速度で供給する。更に45分後、水ガラスの供給を中断し、pHが3.5となるまでの間、硫酸を供給する。その後、沈降を終了する。
【0094】
引き続き、ポリオルガノシロキサンエマルション(TEGO Foamex 845, TEGO GmbH社)1.25kg(二酸化ケイ素:5)ないし2.5kg(二酸化ケイ素:6)をシリカ懸濁液に一度に添加し、60℃に高められた温度で30分の期間に亘って後撹拌する。引き続き、そのように被覆したシリカをDE1767332と同様に濾別し、洗浄し、乾燥させ、粉砕して篩分けする。二酸化ケイ素1〜6は第1表に記載された以下の物理化学的パラメータを有する:
【0095】
【表4】

【0096】
実施例1:
チキソトロープに調節された溶剤を含有する塗装工用塗料における応用技術的結果
塗料を調製1に相応して製造する。そのために、項目1〜4の原材料を5l特殊鋼容器中に装入し、溶解機ディスク(直径75mm)を用いて2000回転/分で5分間分散させる。その後、項目5及び6を添加する。再度同じ調節で分散させる。項目7を添加し、前記のように分散させて均質な混合物を生じさせる。塗料を引き続きフラッシュオフする。
【0097】
予め製造した塗料バッチ100gを350mlのPEビーカーに移し、二酸化ケイ素を添加する。塗料工業において通常かつ慣用である溶解機(直径45mm)を用いて二酸化ケイ素5を2000回転/分で5分間、塗料中に撹拌混入する。二酸化ケイ素(項目8)の濃度を、全ての実施例のために、バインダー固体(項目1及び2)に対して一定に15質量%に定める。二酸化ケイ素の撹拌混入の後に、塗料を23℃、相対湿度50%で1日ないし10日貯蔵し、引き続き粘度を6及び60回転/分で測定する。結果を第2表にまとめる。
【0098】
【表5】

【0099】
本発明による塗料系において、表面変性された二酸化ケイ素の添加により、粘度が、二酸化ケイ素なしの塗料配合物よりも出来る限りわずかに低下されることが望ましい。粘度の増加は有利であることがあり、それというのも、それにより施与後の流展挙動が有利な影響を受けるためである。
【0100】
第2表は、本発明による塗料配合物の粘度が、二酸化ケイ素なしの同じ塗料配合物と比較して低下されていないことを示す。それとは異なり、PEロウで表面変性されたシリカを含有する先行技術の塗料配合物は、明らかに低下された粘度を示す。更に、少なくとも2の高いチキソトロピー指数により、チキソトロープ又は構造粘性塗料への要求、即ち、強力な剪断負荷の際に出来る限り希液性であるという要求が本発明による塗料配合物により満たされることが示される。
【0101】
【表6】

【0102】
実施例2:
構造粘性に調節された水性分散液透明塗料における応用技術的結果
分散液透明塗料を調製2に従って製造する。
【0103】
【表7】

【0104】
この場合、バインダー装入物(項目1)中に、撹拌下に、項目2〜6の順序で添加し、均質に混合する。引き続き、分散のために、二酸化ケイ素をブレード型撹拌機(ディスクφ45mm)を用いてこの混合物中に導入し、2000回転/分で10分間分散させる。
【0105】
調製2に基づき、二酸化ケイ素1.5質量部を撹拌混入し、ブレード型撹拌機を用いて2000回転/分で10分間分散させる。バッチを1日ないし14日間の貯蔵後に23℃でHaake RV 6、スピンドル4を用いて6及び60回転/分で測定し、チキソトロピー指数TI 6/60を測定する(第3表)。60゜及び85゜反射率計値の測定のために、二酸化ケイ素の導入の後に23℃、相対湿度50%で1日間貯蔵した塗料バッチを使用する。
【0106】
1日後の粘度の測定により、表面変性された二酸化ケイ素(二酸化ケイ素4〜6)を含有する本発明による塗料配合物が、わずかに剪断された状態でも強力に剪断された状態でも、塗料配合物の粘度にわずかに影響を及ぼすに過ぎないことを示す。わずかに剪断された状態において粘度が0〜36%だけ低下するのに対して、比較例は塗料配合物の粘度に劇的に(76%までの低下)影響を与える。
【0107】
本発明による塗料配合物のチキソトロピー指数と比較例のチキソトロピー指数とは同一の等級である。しかしながら、粘度の絶対値は、わずかに剪断された状態において、比較例を含む塗料配合物の粘度の絶対値よりも本質的に高いため、これによって、本発明による塗料配合物のみが、チキソトロープ又は構造粘性塗料配合物に関する要求、即ち、わずかに剪断された状態のみならず強力に剪断された状態においてもチキソトロープ又は構造粘性塗料配合物の粘度の影響ができる限りわずかであるという要求を満たすことが示される。
【0108】
二酸化ケイ素が艶消し剤として導入される塗料配合物の粘度が徐々に低下し得ることは公知である。14日後に測定された第3表の粘度測定値により、この低下が、塗料組成物における場合よりも比較例の場合に本質的により大きいことを示す。
【0109】
第4表において、二酸化ケイ素を添加した後、23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した塗料配合物に関して測定した、本発明による塗料配合物の60゜及び85゜反射率計値と比較例の60゜及び85゜反射率計値とを対比する。これらの値により、本発明による塗料配合物が、比較例と比較可能な艶消し作用を有することが示される。
【0110】
【表8】

【0111】
【表9】

【0112】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物において、
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、わずかに剪断された状態(6回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で40%低いこと、
− 塗料配合物を製造し、表面変性された二酸化ケイ素を添加し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された塗料配合物の粘度が、塗料配合物を製造し、かつ完成された塗料配合物を23℃、相対湿度50%で1日貯蔵した後の、強力に剪断された状態(60回転/分)で測定された、表面変性された二酸化ケイ素なしの同一の塗料配合物の粘度よりも最高で25%低いこと
を特徴とする、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物。
【請求項2】
チキソトロープ及び/又は構造粘性塗料配合物である、請求項1記載の塗料配合物。
【請求項3】
アルキド樹脂をベースとする、チキソトロープに調節された、溶剤を含有する塗料配合物である、請求項1又は2記載の塗料配合物。
【請求項4】
アクリレート、アクリレート/ポリウレタン又はその混成物をベースとする、構造粘性に調節された、水性分散液塗料又は水性分散液透明塗料である、請求項1又は2記載の塗料配合物。
【請求項5】
艶消し塗料配合物である、請求項1から4までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項6】
ポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサンで被覆された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項7】
ポリマーが以下の一般構造式:
【化1】

[式中、
Y=−OH、−OR又は
Y=H−O−(CO)−、H−O−(CO)−又は
【化2】

R=−アルキル、殊にメチル又はエチル、
=アルキル又はH、
=アルキル、
=H又はアルキル、
a=0〜100、b=0〜100、c=0〜100、d=0〜100、
m=0〜100及びk=0〜100である]
を有するポリオルガノシロキサンである、請求項6記載の塗料配合物。
【請求項8】
ポリマーが以下の一般構造式:
【化3】

[式中、
=メチル基又は
【化4】

及び/又は
【化5】

であり、単位aの合計=0〜100、単位bの合計=0〜15であり、その際、基Rにおいて、メチル基対アルコキシ基の比は50:1未満であり、a=0である場合にはb>1であり、b=0である場合にはa>5である]
を有するポリオルガノシロキサンである、請求項6記載の塗料配合物。
【請求項9】
少なくとも1種の表面変性された沈降シリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項10】
熱分解法シリカをベースとして製造された少なくとも1種の表面変性されたシリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項11】
少なくとも1種の表面変性された熱分解法シリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項12】
少なくとも1種の表面変性されたシリカゲルを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項13】
0.5〜30%の炭素含分を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項14】
100〜600g/100gのDBP(水不含)を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の塗料配合物
【請求項15】
0.5〜50μmの平均粒径d50を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項16】
8未満のpH値を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項17】
少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素0.5〜15質量%を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項18】
以下:
− ポリマー成分の固体、又は、2種以上の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物の固体 5〜99.5質量%及び/又は
− 溶剤として作用する低分子成分又はそのような低分子成分の混合物 0〜80質量%
を有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項19】
変性されたポリウレタン(HEUR)又は疎水変性されたアクリル酸又はメタクリル酸コポリマーをベースとする会合増粘剤0.1〜5質量%を有する、請求項1から18までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項20】
(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び、(メタ)アクリル酸と他のオレフィン性不飽和化合物との、付加的な官能基を有してよいエステルの、ポリマー及びコポリマー;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシ樹脂、並びに、重縮合により製造された脂肪酸変性アルキド樹脂から成る群から選択された少なくとも1種のバインダーを含有する、請求項1から19までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項21】
建築物部材、窓及び戸枠を被覆するための建築用塗料としての、請求項1から20までのいずれか1項記載の塗料配合物の使用。

【公開番号】特開2006−2152(P2006−2152A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174050(P2005−174050)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】