説明

改善された乾燥粉末薬物送達システム

呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、乾燥粉末製剤を送達するためのカートリッジとを含む、肺薬物送達システムが開示される。吸入器およびカートリッジは、内分泌疾患、例えば糖尿病および/または肥満を治療するために、例えばジケトピペラジンと、インスリンおよびグルカゴン様ペプチド1などのペプチドおよびタンパク質を含めた活性成分とを含む薬物送達製剤を備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、米国特許法第119条(e)(35U.S.C.§119(e))の下、2009年3月4日に出願された米国仮特許出願第61/157,506号、2009年7月2日に出願された第61/222,810号および2009年11月4日に出願された米国仮特許出願第61/258,184号であってこれら出願のそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれている出願の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明の開示は、糖尿病および肥満などの疾患を治療するために肺管および肺循環に薬物を送達するための、乾燥粉末吸入器、カートリッジ、および医薬品組成物を含む乾燥粉末吸入システムに関する。
【0003】
[0003]本明細書に引用される全ての参考文献とそれらの参考文献は、追加のまたは代替の詳細、特徴、および/または技術的背景の教示を目的として、適切な場合には、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
[0004]活性成分を循環内に導入する疾患治療用の薬物送達システムは、非常に数が多く、経口、経皮、吸入、皮下、および静脈内投与を含む。吸入によって送達される薬物は、噴射剤により、空気中の大気圧に対して陽圧を使用して典型的には送達される。そのような薬物送達システムは、薬物を、エアロゾルとして、霧状にして、または気化させて送達する。最近になって、肺組織への薬物送達が、乾燥粉末吸入器により実現されてきた。乾燥粉末吸入器は、呼吸により活動化させることができまたは呼吸を動力として動かすことができ、担体中の薬物粒子を、空気流中に引き込まれ、患者によって吸入される微細な乾燥粉末に変換することによって、薬物を送達することができる。乾燥粉末吸入器を使用して送達された薬物は、もはや肺疾患の治療を目的とすることができるだけではなく、特定の薬物を、糖尿病および肥満を含めた多くの状態を治療するのに使用することもできる。
【0005】
[0005]薬剤を肺に送達するのに使用される乾燥粉末吸入器は、通常、バルク供給される状態または例えば硬質ゼラチンカプセルまたはブリスターパックなどの単位用量区画に入れた各用量に計量された粉末製剤の用量システムを含有する。バルク容器は、吸入直前に粉末から単回用量を取り出すための、患者によって操作される測定システムを備えている。投薬を再現性には、薬物製剤が均一であること、およびその用量を、一貫性のある再現可能な結果が得られるように患者に送達できることが必要である。したがって、理想的には、投薬システムは、患者がその用量を服用するときに、吸気動作中に効果的に製剤の全てを完全に放出するように作動する。しかし、再現性のある投薬を実現することができる限り、完全な放出は必要ではない。粉末製剤の流動特性と、この点に関する長期にわたる物理的および機械的安定性は、単回単位用量区画の場合よりバルク容器の場合に極めて重要である。良好な防湿はブリスターなどの単位用量区画でより容易に実現することができるが、ブリスターの製造に使用される材料は薬物区画内に空気を流入させ、その後、製剤は、長期保存されると存続能を失う。さらに、吸入によって薬剤を送達するためにブリスターを使用する乾燥粉末吸入器は、ブリスターのフィルムの穿孔またはフィルムの剥離から生じる空気コンジット構成のばらつきによって肺への用量送達が不定になる可能性がある。
【0006】
[0006]その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,305,986号および第7,464,706号に記載されているような乾燥粉末吸入器は、カプセル内の粉末製剤を解凝集することによって、吸気動作中に1次薬物粒子または適切な吸入噴流を発生させることができる。吸入中に吸入器のマウスピースから放出された微細な粉末の量は、例えば、粉末製剤中の微粒子間力と、これらの粒子が吸入に適したものになるように分離させる吸入器の効率とに大きく依存する。肺循環を介して薬物を送達することの利益は、非常に数多くあり、動脈循環内への迅速な流入、肝代謝による薬物分解の回避、使い易さ、即ちその他の投与経路による投与の不快感がないことを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]肺送達用に開発された乾燥粉末吸入器の製品は、実用性の欠如および/または製造コストに起因して、今日まである程度の成果しかあげられなかった。従来技術の吸入器で観察された永続的な課題のいくつかには、機器の耐久性の欠如、粉末を送達するための噴射剤の使用、投薬の一貫性、設備の不便さ、不十分な解凝集、および/または患者の薬剤服用順守の欠如が含まれる。したがって、本発明者らは、一貫した粉末送達特性、不快感のない使い易さ、およびより良好な患者の薬剤服用順守を可能にすることができる個別的な吸入器構成を有する、吸入器の設計および製造の必要性を明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]実施形態では、乾燥粉末吸入器、肺管に乾燥粉末製剤を迅速かつ効果的に送達するための乾燥粉末吸入器用カートリッジを含む、肺送達用の乾燥粉末吸入システムが本明細書に開示される。吸入システムの乾燥粉末製剤は、糖尿病および肥満を含めた疾患を治療するための活性剤を含む。粉末乾燥吸入器は、呼吸を動力として動かすことができ、コンパクトであり、再使用可能または使い捨て可能であり、様々な形状およびサイズを有し、乾燥粉末薬剤の効果的で迅速な送達のための空気流コンジット経路のシステムを含む。一実施形態では、吸入器は、カートリッジと共にまたはカートリッジなしで使用することができる、単位用量の再使用可能なまたは使い捨て可能な吸入器にすることができる。カートリッジなしでの使用とは、カートリッジが、例えば使用者による使用のために取り付けられているシステムとは対照的に、カートリッジ状の構造が吸入器と一体化しているシステムを指す。別の実施形態では、吸入器は、吸入器に取り付けられた単回単位用量カートリッジと共にまたは吸入器に組み込まれもしくは吸入器の一部として構造的に構成されたカートリッジ状構造と共に使用することができる、使い捨て可能なまたは再使用可能な多回用量吸入器にすることができる。
【0009】
[0009]別の実施形態では、乾燥粉末吸入システムは、カートリッジを備えまたはカートリッジのない乾燥粉末吸入機器または吸入器と、肺送達用の活性成分を含む医薬品製剤とを含む。いくつかの実施形態では、送達は、肺深部(即ち、肺胞領域)に至り、これらの実施形態のいくつかでは、活性剤が肺循環内に吸収されて全身送達される。システムは、単位用量カートリッジを備えたまたは備えていない乾燥粉末吸入器と、例えばジケトピペラジンおよびインスリンおよびグルカゴン様ペプチド1を含めたペプチドやポリペプチド、タンパク質などの活性成分を含む薬物送達製剤とを含むこともできる。
【0010】
[0010]一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、筐体、可動部材、およびマウスピースを含み、この可動部材は、容器を粉末収容位置から投薬位置まで動かすように動作可能に構成されている。この実施形態およびその他の実施形態では、可動部材は、様々な機構により可動するスレッド、スライドトレイ、またはキャリッジにすることができる。
【0011】
[0011]別の実施形態では、乾燥粉末吸入器は、開放位置と、閉鎖位置と、前記吸入器が開放位置から閉鎖位置に移動したときに収容位置から定量吐出、投薬、または用量送達位置へとカートリッジを受容し、保持し、および再構成するよう動作可能に構成された機構とを有するように、構造的に構成された筐体およびマウスピースを含む。このタイプの実施形態において、機構は、吸入器が開放されて使用済みのカートリッジが外されたとき、使用後に、投薬位置から収容位置にまで吸入器に取り付けられたカートリッジを再構成することもできる。一実施形態では、機構は、使用後に使い捨てまたは廃棄構成に、カートリッジを再構成することができる。そのような実施形態では、筐体は、ヒンジを含めた様々な機構によって、マウスピースに移動可能に取着されるよう構造的に構成される。収容位置から投薬位置まで、吸入器に取り付けられたカートリッジを受容し再構成するよう構成された機構は、例えば機器を開放構成から閉鎖することによって、吸入器の構成要素が動いたときに手動でまたは自動的に作動するように設計することができる。一実施形態では、カートリッジを再構成するための機構は、マウスピースに取着されかつ筐体に移動可能に取着されたスライドトレイまたはスレッドを含む。別の実施形態では、機構は、吸入器に載置されまたは適合され、例えば吸入機器のヒンジ内に一体的に載置された歯車付き機構を含む。さらに別の実施形態では、収容位置から投薬位置までカートリッジを受容し再構成するよう動作可能に構成された機構は、例えば筐体またはマウスピースの回転によりカートリッジを再構成することができるカムを含む。
【0012】
[0012]代替の実施形態では、乾燥粉末吸入器は、粉末薬剤を保持するように構成された粉末容器を備えることができる、単回使用の単位用量使い捨て吸入器として作製することができ、吸入器は、第1の構成が収容構成であり第2の構成が定量吐出の投薬構成である、第1および第2の構成を有することができる。この実施形態では、吸入器は、粉末容器を再構成するための機構を備えても備えなくてもよい。後者の実施形態の態様によれば、容器は、使用者が直接再構成することができる。
【0013】
[0013]さらに別の実施形態では、吸入器は、容器を受容するように構成された容器載置領域と、少なくとも2個の入口アパーチャおよび少なくとも1個の出口アパーチャを有するマウスピースとを含み、少なくとも2個の入口アパーチャのうちの1個の入口アパーチャは、容器領域に流体連絡しており、少なくとも2個の入口アパーチャのうちの1個は、容器領域を迂回するよう構成された流路を介して少なくとも1個の出口アパーチャに流体連絡している。
【0014】
[0014]一実施形態では、吸入器は、使用者の唇または口に接触するための近位端および遠位端などの対向する端部を有し、マウスピースおよび薬剤容器を含み、このマウスピースは、上面および底面または下面を含む。マウスピースの下面は、封止または収容構成で容器を維持するよう比較的平らに構成された第1の領域と、第1の領域より隆起した第1の領域に隣接する第2の領域とを有する。この実施形態では、容器は、収容構成から投薬構成に移動可能であり、その逆も同様であり、投薬構成では、マウスピースの下面の第2の隆起領域と容器とが空気入口通路を形成しまたは画定して、周囲空気を容器の内部容積内に進入させ、または容器の内部を周囲空気に曝す。一実施形態では、マウスピースは、複数の開口、例えば入口ポート、出口ポート、および定量吐出または投薬位置で薬剤容器に連絡するための少なくとも1個のポートを有することができ、吸入器の底面側から延びかつ吸入器のマウスピースの中心に向かって突出するフランジを有する、一体的に取着されたパネルを有するように構成することができるが、これはトラックとして働き、マウスピース上に容器を支持し、それによって、容器がトラックに沿って収容位置から定量吐出または投薬位置へと移動しかつ望みに応じて収容位置に戻るようにすることができる。一実施形態では、薬剤容器は、マウスピースパネル上のフランジに適合するように、その最上縁から延びる羽根状の突起またはウィングレットと共に構成される。一実施形態では、薬剤容器は、収容位置から投薬位置まで、および投薬後には元の収容位置まで使用者が手動で動かすことができ、またはスレッド、スライドトレイ、もしくはキャリッジを用いて動かすことができる。
【0015】
[0015]別の実施形態では、単回使用単位用量の使い捨て吸入器は、マウスピースに組み込まれかつ動作可能に構成されたスレッドを有するように構成することができる。この実施形態では、スレッド上のブリッジを薬剤容器の領域に接触させまたは載せることができ、その結果、マウスピースパネルのトラックに沿って収容位置から定量吐出または投薬位置まで容器を動かすことができる。この実施形態では、スレッドは、マウスピーストラック上で容器を動かすために手動で操作することができる。
【0016】
[0016]一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、1個または複数の空気入口と、1個または複数の空気出口とを含む。吸入器が閉鎖している場合、少なくとも1個の空気入口は、吸入器に進入する流れを可能にし、少なくとも1個の空気入口は、カートリッジ区画またはカートリッジの内部または吸入に適合させた容器に進入する流れを可能にする。一実施形態では、吸入器は、カートリッジ容器が投薬位置にある場合、カートリッジ配置領域およびカートリッジ入口ポートに連絡するように構造的に構成された開口を有する。カートリッジ内部に進入する流れは、出口または1個または複数の定量吐出ポートを通してカートリッジから出ることができ、または吸入器の容器に進入する流れは、定量吐出アパーチャの少なくとも1個を通して出て行くことができる。この実施形態では、1個または複数のカートリッジ入口ポートは、カートリッジの内部に進入する空気流の全てまたは一部が出口または1個または複数の定量吐出ポートに向けられるように、構造的に構成される。
【0017】
[0017]薬剤容器は、空気流の方向を定めることができる2つの対向した相対的に曲線を成す面を有するように、構造的に構成される。この実施形態では、吸入中に空気入口に進入する流れは、定量吐出ポートの軸に対して比較的直角な軸を中心として、容器の内部で循環することができ、それによってこの流れは、カートリッジに収容された粉末薬剤を上昇させ、回転させ、効果的に流動化させることができる。この実施形態およびその他の実施形態では、空気コンジット内で流動化した粉末を、方向または速度を変化させることによって、即ち流れ経路の粒子の加速または減速によって、より微細な粉末粒子へとさらに解凝集することができる。ある実施形態では、例えば1個または複数の定量吐出ポート、マウスピースコンジット、および/またはその界面の角度および幾何形状を変化させることによって、加速または減速の変化を実現することができる。本明細書に記述される吸入器では、粒子が吸入器内を移動するときの粒子の流動化および加速のメカニズムとは、乾燥粉末製剤の解凝集および送達が達成される方法である。
【0018】
[0018]特定の実施形態において、乾燥粉末製剤を解凝集し分散させるための方法は、容器に進入する流れによって開始され強化された1次容器領域内で回転させるステップ;容器から離れて定量吐出ポートを通る流れの中で粉末を迅速に加速するステップ;粉末が定量吐出ポートを出て行くときに方向または速度を変化させることによって、導入された粉末をさらに加速させるステップ;流れ勾配に捉えられた粉末粒子を剪断するステップであって、粒子の最上面の流れが粒子の底面の流れより速いステップ;マウスピースの空気コンジット内の断面積の増大により、流れを減速させるステップ;より高い圧力領域からより低い圧力領域に移動する粒子により、粒子内に閉じ込められた空気を膨張させるステップ、または流れ通路の任意の点で、粒子と流れコンジットとを衝突させるステップなどの、1つまたは複数のステップを含む。
【0019】
[0019]別の実施形態では、乾燥粉末吸入器は、マウスピース;スレッド、スライドトレイ、またはキャリッジ;筐体、ヒンジ、およびスレッドまたはスライドトレイの移動を達成するよう構成された歯車機構を含み、マウスピースおよび筐体がヒンジによって移動可能に取着されている。
【0020】
[0020]乾燥粉末吸入器と共に使用されるカートリッジは、吸入用の任意の乾燥意粉末薬剤を含有するように製造することができる。一実施形態では、カートリッジは、特定の乾燥粉末吸入器に適合可能になるように構造的に構成され、例えば吸入器が、並進運動または回転運動を可能にする機構を有する場合、共に使用される吸入器のサイズおよび形状に応じて任意のサイズおよび形状で作製することができる。一実施形態では、カートリッジは、このカートリッジが使用中固定されるように、例えば吸入器の整合斜縁部に対応してカートリッジの天板に斜縁部を有する定機構と共に構成することができる。一実施形態では、カートリッジは、容器および蓋またはカバーを含み、この容器は、蓋の表面に適合させることができ、蓋に対して移動可能にすることができ、または蓋は、容器上で移動可能にすることができ、その位置に応じて様々な構成を、例えば収容構成、投薬構成、または使用後の構成を実現することができる。あるいは、蓋は取り外し可能にすることができる。
【0021】
[0021]例示的な実施形態は、エンクロージャ内への流れを可能にする少なくとも1個の入口アパーチャ;エンクロージャから出て行く流れを可能にする少なくとも1個の定量吐出アパーチャを有するように構成された、薬剤を保持するエンクロージャを含むことができ、この入口アパーチャは、流れの少なくとも一部を定量吐出アパーチャに向けるようにまたは圧力勾配に応答してエンクロージャ内の定量吐出アパーチャに近付く粒子に向けるように構成される。1個または複数の定量吐出アパーチャおよび吸気アパーチャは、それぞれ独立に、長円形、長方形、円形、三角形、四角形、および卵形などの形状を有することができ、互いに近接近させることができる。吸入中、投薬位置にある吸入器に適合させたカートリッジは、空気流をエンクロージャに進入させ、粉末と混合して薬剤を流動化させる。流動化した薬剤は、薬剤が定量吐出アパーチャを通して徐々にエンクロージャから出て行くようにエンクロージャ内を移動し、定量吐出アパーチャから出て行く流動化した薬剤は、エンクロージャ内から生じたものではない2次流れによって剪断され希釈される。一実施形態では、内部容積内の空気の流れが円形状に回転し、その結果、容器またはエンクロージャ内の粉末薬剤をまき上げ、かつ引き込まれた粉末粒子または粉末塊を容器の内部容積内で再循環するようになされ、粒子が容器の定量吐出ポートまたは吸入器入口ポートもしくは空気出口もしくは定量吐出アパーチャの1個もしくは複数から出て行く前に流れの混転を促進させ、再循環流は混転を引き起こすことができ、または内部容積内の空気の渦巻き流は、薬剤を解凝集するように作用する。一実施形態では、回転軸が重力に対してほぼ直角である。別の実施形態では、回転軸が重力に対してほぼ平行である。エンクロージャ内から生じたものではない2次流れは、薬剤を解凝集するようにさらに作用する。この実施形態では、圧力差は、使用者の吸気によって生成される。乾燥粉末吸入器用カートリッジは:薬剤を保持するように構成されたエンクロージャ;エンクロージャ内に流入させる少なくとも1個の入口ポートおよびエンクロージャから流出させる少なくとも1個の定量吐出ポートを含み、前記少なくとも1個の入口ポートは、少なくとも1個の入口ポートに進入する流れの少なくとも一部が、圧力差に応答してエンクロージャ内の少なくとも1個の定量吐出ポートに向かうように構成される。
【0022】
[0022]吸入器用単位用量カートリッジは、実質的に平らなカートリッジ天板であって、構成が矢印状であり、1個または複数の入口アパーチャ、1個または複数の定量吐出アパーチャ、およびそれぞれがトラックを有している下向きに延びる2つの側面パネルを有する天板と;カートリッジ天板の側面パネルのトラックに移動可能に係合された容器であって、2つの比較的平らで平行な側面および比較的丸みを帯びた底面と内部容積を画定する内面とを備えた、比較的カップ様の形状を有するように構成されたチャンバを含む容器とを含み、前記容器は、カートリッジ天板と共に収容位置および投薬位置を実現するよう構成可能であり、吸入中に乾燥粉末吸入器と共に使用する場合、内部容積に進入する流れは、1個または複数の定量吐出アパーチャを通して流れが出て行く部分でおよび内部容積内で流れが回転し定量吐出アパーチャを通して出て行く前に内部容積内の粉末をまき上げる部分で、内部容積に進入するにつれて発散する。
【0023】
[0023]一実施形態では、肺薬物送達用の吸入システムが提供され、この吸入システムは:筐体、入口および出口ポートを有するマウスピース、入口および出口ポートの間の空気コンジット、およびカートリッジを受容するように構造的に構成された開口を含む、乾燥粉末吸入器と;スレッドなどのカートリッジ載置機構と;乾燥粉末吸入器に適合するように構成されかつ吸入用の乾燥粉末薬剤が入っているカートリッジとを含み、カートリッジは、容器と、1個もしくは複数の入口ポートまたは1個もしくは複数の定量吐出ポートを有する蓋とを含み、使用中の乾燥粉末吸入器システムは、患者に送達される全流量に対し、前記カートリッジを通して所定の空気流平衡分布を有するものである。
【0024】
[0024]本明細書で開示される実施形態では、乾燥粉末吸入器システムは、吸入器内に所定の物質流量バランスを含む。例えば、吸入器から患者へと出て行く全流量の約20%から70%の流量バランスは、定量吐出ポートによって送達されまたはカートリッジを通して通り抜け、一方、約30%から80%は、吸入器のその他のコンジットから発生する。さらに、迂回流またはカートリッジに進入せずカートリッジから出て行かない流れを、吸入器内のカートリッジの定量吐出ポートから出て行く流れと組み合わせて、流動化した粉末を希釈し、加速させ、最終的には解凝集することができ、その後、マウスピースから出すことができる。
【0025】
[0025]本明細書に記述された実施形態では、乾燥粉末吸入器が、比較的剛性の空気コンジットまたは配管システムおよび高い流れ抵抗レベルを備えており、粉末薬剤の解凝集を最大限にし、送達を容易にする。したがって、粉末薬剤放出の有効性および一貫性は、反復使用後の吸入器から得られるが、それは吸入器が、依然として同じであり変化することができない空気コンジット幾何形状を備えているからである。いくつかの実施形態では、乾燥粉末薬剤は、約3秒未満で、一般には1秒未満で、吸入器から一貫した状態で定量吐出される。いくつかの実施形態では、吸入器システムは、高い抵抗値、例えば1分当たり約0.065から約0.200(√kPa)/リットルを有することができる。したがって、このシステムでは、2から20kPaの間のピーク吸入圧力降下によって、結果的に1分当たり約7から70リットルの間のピーク流量がもたらされる。これらの流量では、カートリッジ内容物の75%超が、1から30mgの間の充填質量で定量吐出される。いくつかの実施形態では、これらの性能特性は、1回の吸入動作で最終使用者により実現され、その結果、90%より高いカートリッジ定量吐出パーセンテージがもたらされる。ある実施形態では、吸入器およびカートリッジシステムは、患者に送達される粉末の連続流としてまたは1回もしくは複数回のパルスとして吸入器から粉末を放出することにより、単回用量を提供するよう構成される。
【0026】
[0026]一実施形態では、乾燥粉末吸入器内で、吸入中に乾燥粉末製剤を効果的に解凝集する方法が提供される。この方法は、空気入口、マウスピースの空気コンジットと連絡する定量吐出ポートを有し、かつ製剤を収容しこの製剤を必要とする対象に製剤を送達する容器を含む、乾燥粉末吸入器を提供するステップと;吸入器に進入する空気流の約20から約70%が容器に進入しかつ容器から出て行くように、対象の吸気によって吸入器内に空気流を発生させるステップと;空気流を容器の入口に進入させ、定量吐出ポートに直角な軸で製剤を循環させ混転させて、流動化製剤が得られるように製剤を流動化するステップと;計測された量の流動化製剤を、定量吐出ポートを通してかつ空気コンジット内で加速させ、流動化製剤を含有する空気流を、対象に到達する前に吸入器のマウスピースの空気コンジット内で減速させるステップとを含むことができる。いくつかの特定の実施形態では、吸入器を通る全流量の20%から60%が用量送達中にカートリッジ内を通過する。
【0027】
[0027]別の実施形態では、吸入用の乾燥粉末製剤を解凝集し定量吐出するための方法が提供され、この方法は、マウスピースと、少なくとも1個の入口ポートおよび少なくとも1個の定量吐出ポートを有しかつ乾燥粉末製剤が入っている容器とを含む乾燥粉末吸入器内で空気流を発生させるステップであって、前記容器は、少なくとも1個の入口ポートと少なくとも1個の定量吐出ポートとの間に空気通路を形成するものであり、入口ポートは、容器に進入する空気流の一部を少なくとも1個の定量吐出ポートに向けるものであるステップと;空気流によって、少なくとも1個の定量吐出ポートに実質的に直角な軸で容器内の粉末を混転させ、それによって、容器内の乾燥粉末薬剤をまき上げ混合させるようにして、空気流薬剤混合物を形成するステップと;少なくとも1個の定量吐出ポートを通して容器から出て行く空気流を加速させるステップとを含む。一実施形態では、吸入器のマウスピースは、流れを減速させ、吸入器内の粉末堆積を最小限に抑え、かつ患者への粉末の最大限の送達を促進させるため、徐々に拡大する断面を有するように構成される。一実施形態では、例えば、吸入器の口内配置領域の断面積は、約3cmの近似長で約0.05cmから約0.25cmにすることができる。これらの寸法は、吸入器と共に使用される粉末のタイプと、吸入器それ自体の寸法とに依存する。
【0028】
[0028]乾燥粉末吸入器用のカートリッジは:カートリッジ天板と、内部容積を画定する容器とを含み、このカートリッジ天板は、容器上を延びる下面を有し;前記下面は、前記容器に係合するように構成され、内部容積を収容する領域と、内部容積を周囲空気に曝す領域とを含む。
【0029】
[0029]代替の実施形態では、乾燥粉末送達機器を通して粒子を送達するための方法が提供され、この方法は、粒子を閉じ込めるエンクロージャ、定量吐出アパーチャ、および吸気アパーチャを含む、粒子の収容および定量吐出のためのカートリッジを送達機器に挿入するステップであって、これらのエンクロージャ、定量吐出アパーチャ、および吸気アパーチャは、吸気が吸気アパーチャに進入するときに、粒子を分離させるため上述の解凝集の少なくとも1つの形態によって粒子が解凝集するようにかつ粒子が吸気の一部と共に定量吐出アパーチャを通して定量吐出されるように、向きが定められるステップと;定量吐出アパーチャに連絡する送達コンジット内に気体を同時に押し遣り、それによって吸気を吸気アパーチャに進入させ、粒子を解凝集させ、定量吐出アパーチャを通して吸気の一部と共に粒子を定量吐出させるステップと;機器、例えば吸入器のマウスピースの送達コンジット内に、粒子を送達するステップとを含む。本明細書に記述される実施形態では、粉末解凝集を達成するために、乾燥粉末吸入器を構造的に構成することができ、この吸入器には、粉末解凝集の1つまたは複数のゾーンを設けることができ、吸入動作中の解凝集のゾーンは、吸入器に進入する空気流による粉末の混転、粉末を含有する空気流の加速、粉末を含有する流れの減速、粉末粒子の剪断、粉末粒子に捕捉された空気の膨張、および/またはこれらの組合せを容易にすることができる。
【0030】
[0030]別の実施形態では、吸入システムは、呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、薬剤が入っているカートリッジとを含み、この薬剤は、例えばジケトピペラジンおよび活性剤を含む組成物など、肺送達用の薬物製剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、活性剤は、ペプチドおよびタンパク質、例えばインスリン、グルカゴン様ペプチド1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、エキセンジン、副甲状腺ホルモン、およびこれらの類似体などを含む。本発明の吸入システムは、例えば、薬剤の局所送達または全身送達を必要とする状態を治療するための方法で使用することができ、例えば、糖尿病、前糖尿病状態、気道感染症、肺疾患、および肥満を治療するための方法で使用することができる。一実施形態では、吸入システムは、疾患または障害を治療するため吸入システムの構成要素をそれぞれ、少なくとも1種含んだキットを含む。
【0031】
[0031]一実施形態では、対象の血流に製剤を効果的に送達する方法が提供され、この方法は、ジケトピペラジンを含む製剤が入っているカートリッジを含む吸入器を含んだ吸入システムを含み、この吸入システムは、約2.5μmから10μmに及ぶ容量メジアン幾何学径(VMGD)を有するジケトピペラジンミクロ粒子を含む粉末噴流を、送達するものである。例示的な実施形態では、ミクロ粒子のVMGDは、約2μmから約8μmに及んでもよい。例示的な実施形態では、粉末粒子のVMGDは、3.5mgから10mgに及ぶ粉末の充填質量の製剤の1回の吸入で、4μmから約7μmとすることができる。この実施形態およびその他の実施形態では、吸入システムは、カートリッジから乾燥粉末製剤の90%超を送達する。
【0032】
[0032]別の実施形態では、吸入器と、ジケトピペラジンミクロ粒子を含む全身循環に送達するための乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを含む吸入システムが提供され、ジケトピペラジンミクロ粒子は、1回の吸入で放出されるジケトピペラジンの1mg当たり1,300ng・分/mLから3,200ng・分/mLの間のAUC0〜2時間を有する血漿中濃度(曝露量)のジケトピペラジンを送達する。別の例示的な実施形態では、吸入器と、ジケトピペラジンミクロ粒子を含む全身循環に送達するための乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを含む吸入システムが提供され、ジケトピペラジンミクロ粒子は、1回の吸入で放出される粉末1mg当たり2,300ng・分/mLより高いAUC0〜∞を有する血漿中濃度のジケトピペラジンを送達する。そのような実施形態の態様では、DKPがFDKPである。この実施形態およびその他の実施形態では、ジケトピペラジンミクロ粒子は、肺機能試験により評価され、1秒間強制呼気容量(FEV1)として測定される肺機能の低下を引き起こさない。ある実施形態では、対象のFDKPに関して測定される血漿曝露量を、1回の吸入で放出されたFDKP粉末1mg当たり2,500ng・分/mLより高くすることができる。代替的な実施形態では、対象で測定されるFDKPの血漿曝露量、AUC0〜∞は、1回の吸入で放出されたFDKP粉末1mg当たり3,000ng・分/mLより高くすることができる。さらに別の実施形態では、対象のFDKP AUC0〜∞に関して測定された血漿曝露量は、FDKPを含む乾燥粉末組成物の1回の吸入で放出されたFDKP 1mg当たり約5,500ng・分/mL以下にすることができる。いくつかの実施形態では、記述される曝露量レベルは、個々の曝露量を表す。代替の実施形態では、記述される曝露量レベルは平均曝露量を表す。活性剤の量は、含量および曝露量も含め、代替として活性または質量の単位で表してもよい。
【0033】
[0033]これらおよびその他の実施形態では、ミクロ粒子は活性剤をさらに含むことができる。特定の実施形態では、活性成分はインスリンである。別の例示的な実施形態では、吸入器と、インスリンを含有するジケトピペラジンミクロ粒子を含んだ全身循環に送達するための乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを含む、吸入システムが提供され、ジケトピペラジンミクロ粒子は、1回の吸入で放出される粉末製剤中のインスリン1単位当たり160μU・分/mLより高いAUC0〜2時間である血漿中濃度(曝露量)のインスリンを送達する。この実施形態の態様では、吸入システムは、測定されたインスリンAUC0〜2時間が、1回の吸入で放出された粉末製剤中のインスリン1単位当たり約100から1,000μU・分/mLに及ぶインスリン血漿中濃度または曝露量を送達し実現するように構成される。いくつかの実施形態では、記述される曝露量レベルは個々の曝露量を表す。代替の実施形態では、記述される曝露量レベルは平均曝露量を表す。
【0034】
[0034]別の例示的な実施形態では、吸入器と、インスリンを含むジケトピペラジンミクロ粒子を含んだ全身循環に送達するための乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを含む、吸入システムが提供され、ジケトピペラジンミクロ粒子は、1回の吸入で放出された、充填されたインスリン1U当たり100μU・分/mLより高いAUC0〜4時間である血漿中濃度(曝露量)のインスリンを送達する。この実施形態の態様では、吸入システムは、インスリンおよびフマリルジケトピペラジンの製剤を患者に送達するように構成され、1回の吸入で放出されたインスリン充填用量1U当たり100から250μU・分/mLの範囲内で測定されたAUC0〜4時間を有するインスリンの血漿曝露量を実現する。これらの実施形態の態様では、AUC0〜4時間は、1回の吸入で放出された充填済みインスリン1U当たり110、125、150、または175μU・分/mLより高くすることができる。この実施形態およびその他の実施形態では、製剤のインスリン含量は、製剤の約10から約20%(w/w)を構成する。
【0035】
[0035]さらに別の例示的な実施形態では、吸入器と、インスリンを含有するジケトピペラジンミクロ粒子を含んだ全身循環に送達するための乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを含む、吸入システムが提供され、ジケトピペラジンミクロ粒子は、投与から30分以内に、1回の吸入で放出された粉末1mg当たり10μU/mLを超えるCmaxを有する血漿中濃度のインスリンを送達する。この実施形態の態様では、投与されたインスリン製剤は、1回の吸入でかつ投与後30分以内に放出された粉末1mg当たり約10から20μU/mLに及ぶCmaxを生成する。この実施形態の別の態様では、インスリンCmaxは、投与から25、20、または15分以内に実現することができる。これらCmaxの実施形態の代替例において、製剤の肺吸入後に実現されたCmaxは、カートリッジに充填されたインスリン1U当たり3μU/mLより高く、またはカートリッジ用量中のインスリン1U当たり3Uから6U、または4Uから6μU/mLの範囲にある。
【0036】
[0036]別の実施形態では:乾燥粉末吸入器と;ジケトピペラジンの複数の粉末粒子を含む乾燥粉末製剤とを含む吸入システムが提供され、この吸入システムは、ジケトピペラジンを対象の肺循環に送達するように構成され、前記ジケトピペラジンは、対象の血漿で測定して、1回の吸入で投与された乾燥粉末製剤中のジケトピペラジン含量1mg当たり2,300ng・分/mLより高い平均曝露量またはAUC0〜∞を有することができる。一実施形態では、吸入システムは、呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器に適合するよう構成されたカートリッジをさらに含む。この実施形態およびその他の実施形態では、製剤中のジケトピペラジンは、ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン(FDKP)である。
【0037】
[0037]FDKPが製剤に使用される実施形態では、システムは、1時間未満のTmaxで、FDKPを全身循環に送達することができる。いくつかの実施形態では、FDKPのT最大は、1回の吸入で、FDKPの投与後15または30分未満にすることができる。このおよびその他の実施形態では、AUCは、0から2時間、0から4時間、または0から∞で測定される。
【0038】
[0038]別の実施形態では、呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、複数のジケトピペラジン粒子を含んだ乾燥粉末製剤とを含む、吸入システムが提供され、吸入システムは、2μmから8μmに及ぶ容量メジアン幾何学径と4μm未満の幾何標準偏差とを有するジケトピペラジンミクロ粒子を含む粉末噴流を放出するように、動作可能に構成されている。
【0039】
[0039]さらに別の実施形態では:呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、複数のジケトピペラジン粒子を含んだ乾燥粉末製剤とを含む、薬物を肺送達するための吸入システムが提供され、この吸入システムは、乾燥粉末製剤の90%超を放出するように動作可能に構成され、30分未満または25分未満で溶解し、血液中に吸収されるジケトピペラジン粒子は、乾燥粉末製剤を1回吸入した後に、ピーク濃度のジケトピペラジンをもたらす。いくつかの実施形態では、このシステムは、1回の吸入で粉末粒子の95%超を放出し、これらの粒子が循環内に吸収される。
【0040】
[0040]一実施形態では:乾燥粉末吸入器と;インスリンを含む複数の乾燥粉末粒子を含んだ乾燥粉末製剤とを含む、吸入システムが提供され、この吸入システムは、対象の肺循環にインスリンを送達するように構成され、インスリンは、1回の吸入で投与された乾燥粉末製剤で放出されるインスリン1単位当たり160uU・分/mLより高い平均AUC0〜2時間を有する曝露量で、対象の血漿で測定することができる。
【0041】
[0041]一実施形態では、吸入システム、乾燥粉末製剤は、経口吸入によって対象に投与され、この製剤は、対象の全身循環にインスリンを送達することができるインスリンの粉末粒子を含んでおり;インスリンのC最大は、1回の吸入で患者に投与してから30分未満で測定される。
【0042】
[0042]実施形態では:呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、複数のジケトピペラジン粒子を含んだ粉末製剤とを含む、吸入システムが提供され、この吸入システムは、2μmから8μmに及ぶ容量メジアン幾何学径と4μm未満の幾何標準偏差とを有するジケトピペラジンミクロ粒子を含む粉末噴流を放出するように、動作可能に構成される。
【0043】
[0043]さらに別の実施形態では:呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、複数のジケトピペラジン粒子を含んだ粉末製剤とを含む、薬物を肺送達するための吸入システムが提供され、この吸入システムは、30、25、20、または15分以下で薬物のピーク濃度が得られるよう血液中に吸収される粉末粒子を放出するように、動作可能に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】[0044]吸入システムで使用される吸入器の例示的な実施形態を示す図であり、閉鎖構成にある吸入器の等角図を示す。
【図2】[0045]図1の吸入器の側面を示す図である。
【図3】[0045]図1の吸入器の上面を示す図である。
【図4】[0045]図1の吸入器の底面を示す図である。
【図5】[0045]図1の吸入器の近位図である。
【図6】[0045]図1の吸入器の遠位図である。
【図7】[0046]対応するカートリッジおよびマウスピースカバーを示す、開放構成にある図1の吸入器を含む吸入システムの実施形態の斜視図である。
【図8】[0047]図6の吸入器の等角図であって、カートリッジが中間縦軸を通る断面でホルダに取り付けられている開放構成にあり、したがってカートリッジがカートリッジホルダに取り付けられかつ収容構成にある状態を示す図である。
【図9】[0047]吸入器が閉鎖構成にあり、かつカートリッジが投薬構成にある状態を示す図である。
【図10】[0048]乾燥粉末吸入システムの代替の実施形態の斜視図であって、吸入器が開放構成で示されており、吸入器に取り付けることができる対応するカートリッジのタイプおよび向きを示す図である。
【図11】[0049]開放構成にある、図10の乾燥粉末吸入器の等角図である。
【図12】[0050]吸入器の構成部品を示す、図48の吸入器の実施形態の分解立体図である。
【図13】[0051]開放構成にあり、かつ吸入器に取り付けられたカートリッジを示す、図10の吸入器の斜視図である。
【図14】[0052]図12に示される吸入器の中間縦断面を示し、収容構成にあり、かつスレッドとこのスレッドに接触している歯車機構とに接触しているカートリッジ容器を示す図である。
【図15】[0053]閉鎖構成にあり、かつホルダ内にカートリッジを有する、図10の吸入器の斜視図である。
【図16】[0054]投薬構成にあるカートリッジ容器と、この容器内を通して確立された空気流経路とを示す、図53に示される吸入器の中間縦断面を示す図である。
【図17】[0055]図1の吸入器で使用されるカートリッジの実施形態の斜視図であって、収容構成にあるカートリッジを示す図である。
【図18】[0056]カートリッジ天板表面の構成要素構造を示す、図17のカートリッジの実施形態の平面図である。
【図19】[0057]カートリッジの下面の構成要素構造を示す、図17のカートリッジの実施形態の底面図である。
【図20】[0058]中間縦断面で示され、かつ収容構成にある、図17のカートリッジの実施形態の斜視図である。
【図21】[0059]中間縦断面で示され、かつ投薬構成にある、図17のカートリッジの実施形態の斜視図である。
【図22】[0060]収容構成にあるカートリッジの、代替の実施形態を示す斜視図である。
【図23】[0061]図22に示されるカートリッジの実施形態を、平面図で示す図である。
【図24】[0061]図22に示されるカートリッジの実施形態を、底面図で示す図である。
【図25】[0061]図22に示されるカートリッジの実施形態を、近位図で示す図である。
【図26】[0061]図22に示されるカートリッジの実施形態を、遠位図で示す図である。
【図27】[0061]図22に示されるカートリッジの実施形態を、側面図で示す図である。
【図28】[0062]投薬構成にある、図22に示されるカートリッジの実施形態の斜視図である。
【図29】[0063]図22のカートリッジの実施形態の、縦軸に沿った断面を示す図である。
【図30】[0063]図28のカートリッジの実施形態の、縦軸に沿った断面を示す図である。
【図31】[0064]矢印によって示される、乾燥粉末吸入器の粉末収容領域内での流れの動きの概略図である。
【図32】[0065]矢印によって示される、吸入器内を通る流れ経路および流れ方向を示す、乾燥粉末吸入器の実施形態の概略図である。
【図33】[0066]吸入器の流れ抵抗の例示的な実施形態に関する、ベルヌーイの法則に基づいた、流れおよび圧力の関係を示す測定値のグラフである。
【図34】[0067]吸入器と、インスリンおよびフマリルジケトピペラジン粒子を含む吸入用の乾燥粉末製剤が入っているカートリッジとを使用した、レーザ回折装置で得られた粒度分布を示す図である。
【図35】[0068]実施例の吸入システム(DPI 2)およびMEDTONE(登録商標)(MTC)に関して行った全ての試験の平均から得られたデータのグラフ表示であり、異なるカートリッジ粉末含量からの、吸入システムから放出された粒子の累積幾何粒度分布を示す図である。
【図36】[0069]粉末製剤を用いずに(曲線A)および粉末製剤を用いた(曲線B)、吸入モニタリングシステムによるおよび例示的な吸入システムで対象によって行われた、吸入記録のグラフである。
【図37】[0070]FDKPミクロ粒子を含有する乾燥粉末製剤の吸入後6時間にわたる、図36の場合と同じ対象から採取したサンプルからの、血漿中のFDKPの濃度のグラフである。
【図38】[0071]用量群による、経時的なインスリン濃度のグラフである。
【図39】[0072]用量群による、経時的なFDKP濃度のグラフである。
【図40】[0073]試験における各個体のグルコース変動のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[0074]本明細書に開示される実施形態では、乾燥粉末吸入器と、乾燥粉末吸入器用カートリッジと、肺吸入を介して患者に薬学的薬剤を送達するための吸入システムとが開示される。一実施形態では、吸入システムは、呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、医薬品として活性な物質または活性成分および医薬品として許容される担体を含む医薬品製剤が入っているカートリッジとを含む。乾燥粉末吸入器は、様々な形状およびサイズで提供され、再使用可能にまたは単回使用にすることができ、使い易くすることができ、製造が安価であり、プラスチックまたはその他の許容される材料を使用した簡単なステップで大量に生産することができる。完成したシステムに加え、吸入器、充填済みカートリッジ、および空のカートリッジが、本明細書に開示される別の実施形態を構成する。本発明の吸入システムは、任意のタイプの乾燥粉末と使用できるように、設計することができる。一実施形態では、乾燥粉末は、最適な解凝集条件を必要とする比較的凝集力の高い粉末である。一実施形態では、吸入システムは、再使用可能で小型の、呼吸を動力として動かすことができる吸入器を、予め計量された用量の乾燥粉末製剤が入っている単回使用のカートリッジと組み合わせて提供する。
【0046】
[0075]全身循環への医薬品製剤の効果的で一貫した送達のための方法も開示される。
[0076]本明細書で使用される「単位用量吸入器」という用語は、乾燥粉末製剤の1個の容器を受容するように適合され、かつ容器から使用者に吸入によって単回用量の乾燥粉末製剤が送達される吸入器を指す。ある場合には、指定された投薬を使用者に行うのに、多数の単位用量が必要になることを理解すべきである。
【0047】
[0077]本明細書で使用される「多回用量吸入器」という用語は、複数の容器を有する吸入器を指し、各容器は予め計量された用量の乾燥粉末薬剤を含んでおり、この吸入器は、単回用量の薬剤粉末を常に吸入によって送達する。
【0048】
[0078]本明細書で使用される「容器」は、乾燥粉末製剤を保持しまたは入れるように構成されたエンクロージャ、粉末含有エンクロージャであり、蓋付きのまたは蓋なしの構造にすることができる。
【0049】
[0079]本明細書で使用される「粉末塊」は、粉末粒子の凝集、または幅、直径、および長さなど不規則な幾何形状を有する凝集体を指す。
[0080]本明細書で使用される「ミクロ粒子」という用語は、正確な外部または内部構造とは無関係に、約0.5から約1000μmの直径を有する粒子を指す。しかし、10μm未満の4種の肺送達ミクロ粒子が一般に望まれ、特に、直径が約5.8μm未満の平均粒度であるものが望まれる。
【0050】
[0081]本明細書で使用される「単位用量」は、吸入用の予め計量された乾燥粉末製剤を指す。あるいは、単位用量は、計量された単回量として吸入により送達することができる製剤を多回用量分有する1個の容器にすることができる。単位用量のカートリッジ/容器は、単回用量を含有する。あるいはこのカートリッジ/容器は、単回用量がそれぞれ入っている、多数の個々に接触可能な区画を含むことができる。
【0051】
[0082]本明細書で使用される「約」という用語は、ある値が、この値を決定するのに用いられる機器または方法に関する誤差の標準偏差を含むことを示すのに使用される。
[0083]本発明の機器は、いくつかの方法によって製造することができるが、一実施形態では、吸入器およびカートリッジは、例えば射出成型技法、熱形成により、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー、ナイロン、およびその他の適合性あるポリマーなどを含めた様々なタイプのプラスチック材料を使用して作製される。ある実施形態では、乾燥粉末吸入器は、個々の構成部品のトップダウンアセンブリを使用して組み立てることができる。いくつかの実施形態で、吸入器は、寸法が約2.54cm(約1インチ)から約12.7cm(約5インチ)などのコンパクトなサイズで提供され、一般に幅および高さは、機器の長さより短い。ある実施形態では、吸入器は、比較的長方形の本体、円筒形、楕円形、管状、四角形、長円形、および円形を含めた様々な形状で提供される。
【0052】
[0084]本明細書に記述され具体化される実施形態では、吸入システムが吸入器、カートリッジ、および乾燥粉末製剤を含み、この吸入器は、空気などの気体を吸入器に進入させるため、少なくとも1つの比較的剛性の流れコンジット経路を使用することによって、乾燥粉末製剤が効果的に流動化し、解凝集し、またはエアロゾル化するようにカートリッジと共に構成される。例えば吸入器は、乾燥粉末が入っているカートリッジに進入しかつこのカートリッジから出て行くための第1の空気/気体経路と、カートリッジから出て行く第1の空気流経路と合流することができる第2の空気経路とを備える。流れコンジットは、例えば、吸入器の構成に応じて様々な形状およびサイズを有することができる。
【0053】
[0085]本明細書で具体化される実施形態では、各吸入器を、適切なカートリッジと共に使用することができる。しかし吸入システムは、吸入器およびカートリッジが互いに対応するように設計されている場合に、より効率的に機能することができる。例えば、吸入器のカートリッジ載置領域は、特定のカートリッジのみ収納するように設計することができ、したがってカートッジと吸入器との開口の構造的構成は、例えば、使用者のための安全性パラメータとして支援することができるキーイング領域または面として、互いに一致しまたは適合する。対応する吸入器およびカートリッジの例を、本明細書では下記に、カートリッジ170と共に使用することができる吸入器302、およびカートリッジ150と共に使用することができる吸入器900として示す。これらの吸入器およびカートリッジは、追加のまたは代替の詳細、特徴、および/または技術的背景の教示のために、必要に応じて、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/484,125号;第12/484,129号、および第12/484,137号に開示されている。
【0054】
[0086]乾燥粉末吸入器の実施形態を図1〜9に例示する。この実施形態において、乾燥粉末吸入器は2つの構成を有し、即ち閉鎖構成が図1から6までおよび9に示されており、開放構成が図7および8に示されている。開放構成の乾燥粉末吸入器302は、吸入用の薬剤が入っているカートリッジの設置または除去が可能である。図1〜6は、閉鎖構成の吸入器302を様々な視点から見た状態を示し、この吸入器は比較的長方形の本体を有するもので、筐体320と、本体の上方にありかつ本体から外向きに延びるマウスピース330を含む。マウスピース330の一部は、使用者との接触のために末端に向かってテーパ状になっており、開口335を有している。吸入器302は、歯車機構363およびスレッドも含む。吸入器302は、トップダウンアセンブリの手法で例えば4個の部品を使用して、製造することができる。マウスピース330は、吸入器の縦軸に沿って走るように構成された空気コンジット340をさらに含み、口内配置部分312と、空気入口310と、空気コンジットの縦軸に対してその表面角度を有するように構成されまたは勾配が付された空気出口335と、筐体からもしくは使用中に吸入器に設置されたカートリッジから空気コンジット340に空気流を進入させるために、筐体320および/または筐体320に設置されたカートリッジと流体連絡するカートリッジポート開口355とを有する。図1は、筐体320とマウスピース330のカバー部308とにより形成された吸入器300よりも、より細長い本体305であって、筐体320上に延びかつロック機構312によって、例えば突起によって筐体320に係合する本体305を有する、閉鎖位置にある吸入器302を、等角図で示す。図2〜6は、図1の吸入器の側面、平面、底面、近位面、および遠位面をそれぞれ示す。これらの図に示されるように、吸入器302は、口内配置セクション312と、図7に示される少なくとも1つの位置で筐体320に取着することができるカバー308として構成された延長部分とを有するマウスピース330を含む。マウスピース330は、ヒンジ機構363によって、ある角度の付いた方向に、使用者の手から、近位位置から開放するように旋回することができる。この実施形態では、吸入器302は、筐体320に対して吸入器またはマウスピース330を開放するためにヒンジ内に一体化された、図8に示される歯車機構363を有するようにも構成される。
【0055】
[0087]歯車機構、またはスレッド317の一部であるラック319およびピニオン363は、ヒンジ機構の一部としてマウスピースと共に構成され、それによって筐体320に係合するが、この筐体は、スレッド317を収納するように構成することもできる。この実施形態では、スレッド317は、個別の部分として構成され、ヒンジ機構上に構成された歯車に係合するラックとして構成された部分を有する。ヒンジ機構363は、マウスピース330を開放またはカートリッジ装填構成に、および閉鎖構成に、またはある角度の付いた方向にある吸入器302の位置へと移動させる。吸入器300、302の歯車機構363は、吸入器がマウスピース330の動きによって開放しまたは閉鎖するよう動作する場合、筐体320内のスレッド317の並行移動が可能になるようにスレッドを作動させることができ、このスレッド317は、歯車機構363の一部としてラック319と一体的に構成されている。カートリッジと共に使用する際、吸入器の歯車機構363は、カートリッジが吸入器収納または載置領域に設置された後のカートリッジ収容構成から吸入器が閉鎖したときの投薬構成へと、吸入器の閉鎖中にスレッド317を移動させることにより、カートリッジを再構成することができる。カートリッジ170による吸入後の開放吸入器構成、または、対象が乾燥粉末製剤の投薬を実現した後の使い捨て構成への、マウスピース330の動き。本明細書に例示される実施形態では、ヒンジおよび歯車機構は吸入器の遠位端に設けられるが、吸入器が開放し閉鎖することによりクラム状構成としてカートリッジが装填されまたは取り外されるように、その他の構成を提供することができる。
【0056】
[0088]図1に示されるようにかつ使用中、空気流は、空気入口310を通して吸入器に進入し、同時に空気コンジット340内に進入し、それが空気入口355を通してカートリッジ170を通過する。1つの例示的な実施形態では、入口ポート355から出口ポート335に延びるマウスピース330の空気コンジット340の内部容積は、約0.2cmより大きい。その他の例示的な実施形態では、内部容積は約0.3cm、または約0.3cm、または約0.4cm、または約0.5cmである。別の例示的な実施形態では、マウスピースのこの内部容積は、0.2cmより大きく、マウスピース330の内部容積である。例示的な実施形態では、マウスピースの内部容積は0.2から6.5cmに及ぶ。カートリッジ容器175内に入っている粉末は、流動化されまたは空気流中に引き込まれて、粉末分の混転を通してカートリッジに進入する。次いで流動化した粉末は、定量吐出ポート173、127を通してマウスピースの空気コンジット340内に徐々に出て行き、さらに解凝集し、空気入口310に進入する空気流で希釈され、その後、出口ポート335から出て行く。
【0057】
[0089]一実施形態では、筐体320は、1個または複数の構成部品、例えば上部316および底部318を含む。上部および底部は、密封状態で互いに適合するよう構成され、スレッド317およびヒンジおよび/または歯車機構363を収納するエンクロージャを形成する。筐体320は、空気流を筐体の内部に進入させる1個または複数の開口309と、吸入器302の閉鎖位置でマウスピースのカバー部分308を係合し固定させる突起または止め輪などのロック機構313とを有するようにも構成される。筐体320は、吸入器内で使用されるカートリッジのタイプに対応するよう構成されたカートリッジホルダまたはカートリッジ載置領域315を有するようにも構成される。この実施形態では、カートリッジ配置領域またはホルダは、筐体320の上部にある開口であり、この開口によって、カートリッジが吸入器302に設置されたときにカートリッジの底部または容器をスレッド317上に置くことも可能になる。筐体は、カートリッジを装填しまたは取り外すために吸入器が開放されるようこの吸入器をしっかりと確実に把持するために、吸入器の使用者を支援するよう構成された把持領域304、307をさらに含むことができる。筐体320は、空気チャネルまたはコンジットを画定するよう構成されたフランジをさらに含むことができ、例えば、吸入器の空気入口310に空気流を向け、および吸入器内に位置決めされたカートリッジ空気コンジットのカートリッジ空気入口に空気流を向けるようにも構成された2つの並行なフランジ303をさらに含むことができる。フランジ310は、使用者が吸入器302の入口ポート310を塞がないようにも構成される。
【0058】
[0090]図7は、マウスピースのカバー、例えばキャップ342と、カートリッジ載置領域に対応するようにかつ使用のためカートリッジホルダ315にカートリッジを設置することが可能になるように構成されたカートリッジ170とを有する、開放構成の図1の吸入器の等角図を示す。一実施形態では、収容位置からのカートリッジの再構成は、製造後に提供されるように、カートリッジをカートリッジホルダ315に設置した後に実現することができ、これは筐体320内にかつ吸入器に適合するように構成されるものであり、したがってカートリッジは、吸入器内で適正な向きを有するようになり、ただ1つの手法または向きで挿入しまたは設置することのみできるようになる。例えばカートリッジ170は、吸入器の筐体、例えば吸入器載置領域に構成されたロック機構と一致するロック機構301と共に構成することができ、またはホルダは、カートリッジの、例えば吸入器に設置されるカートリッジ170の、斜縁部180に対応可能な斜縁部301を含むことができる。この実施形態では、斜縁部は、スレッド317の移動中にカートリッジがホルダ315から抜け出すのを防止するロック機構を形成する。
【0059】
[0091]図8および9に示される、ある特定の実施形態では、カートリッジの蓋が斜縁部と共に構成され、したがって蓋は、使用中に筐体載置領域に固定されたままになり、この載置領域は、整合斜縁部を有している。図8および9は、吸入器302が、使用者に投薬する準備ができたとき、閉鎖状態の吸入器構成でまたはカートリッジの定量吐出もしくは投薬位置もしくは構成で、(1個または複数の)定量吐出ポートを有するよう構成されたカートリッジ天板の下面の下に容器が位置合わせされるよう、カートリッジ天板の下で滑動可能なカートリッジ170のカートリッジ容器175の動きを実現するために、スレッド317と共に構成されたラック機構319も示す。投薬構成において、空気入口ポートは、カートリッジ天板と容器のリムとの境界によって形成されるが、それはカートリッジ天板の下面が収容下面に対して隆起しているからである。この構成では、空気コンジットは、空気入口、周囲空気に曝されているカートリッジの内部容積、およびカートリッジ天板の開口もしくはカートリッジ天板の定量吐出ポートにより、カートリッジを通して画定され、この空気コンジットは、マウスピースの空気コンジット340に流体連絡している。
【0060】
[0092]吸入器302は、マウスピースの口内配置部分を保護するために、マウスピースキャップ342をさらに含むことができる。図8は、図1の吸入器を、中間縦軸を通した断面で示し、カートリッジはカートリッジホルダに設置されておりかつ開放構成にあり、図9では閉鎖構成にあって、カートリッジの定量吐出または投薬構成にある。
【0061】
[0093]図8は、ホルダまたは載置領域315に設置されたカートリッジ350の位置を示し、互いに対する吸入器302およびカートリッジ170の内部区画部分を示し、定量吐出327を有するボス326;歯車機構360、363、および閉鎖構成で機器を維持するのを支援するスナップ380を含んでいる。
【0062】
[0094]図10〜16は、吸入システムの乾燥粉末吸入器の、さらに別の実施形態を示す。図10は、図1〜9に示される吸入器302と同様に構造的に構成された、開放構成の吸入器900を示す。吸入器900は、マウスピース930が筐体サブアセンブリ920に対して旋回するように、ヒンジによって互いに取着されたマウスピース930と筐体サブアセンブリ920とを含む。マウスピース930は、筐体920より広い、一体的に形成された側面パネル932をさらに含み、このパネルが筐体の突起905に係合して、吸入器900の閉鎖構成を実現する。マウスピース930は、空気入口910、空気出口935;使用者の唇または口に接触するために空気入口910から空気出口935に延びる空気流コンジット940、および吸入器の空気流コンジット940に連絡する床または底面にあるアパーチャ955をさらに含む。図12は、吸入器900を分解立体図で示し、マウスピース930および筐体サブアセンブリ920を含めた吸入器の構成部品を示している。図12に示されるように、マウスピースは単一構成要素として構成され、筐体920に連結するための歯または歯車913と共に構成されたバー、シリンダ、またはチューブ911をさらに含み、したがって、ある角度をなす向きでの筐体920に対するマウスピース930の動きは、機器の閉鎖を実現するようになる。空気流をマウスピースの空気入口910に向けることができる空気チャネル912を、筐体に設けることができる。空気チャネル912は、使用中に、チャネル上に置かれた使用者の指が空気コンジット940への空気流を制限しまたは塞ぐことができないように構成される。
【0063】
[0095]図12は、エンクロージャを作製するよう製造された2個の部品を含み、かつカートリッジ配置または載置領域908と、吸入器が閉鎖構成にあるときに空気入口を画定するよう構成された切欠き918とを有する上部を含む、筐体サブアセンブリ920を示す。図12は、エンクロージャとしての筐体920を示し、製造を容易にするために2個の構成部品をさらに含んでいるが、より少なくまたはより多くの部品を使用することができる。形成される筐体の底部には開口がなく、トレイ922を含み、上部またはカバー925に接続されて、エンクロージャまたは筐体920を形成する。トレイ922は、マウスピース930と共にヒンジを形成する際に、バー、シリンダ、またはチューブ911を収納するその近位端付近に構成された切欠き914と共に構成される。トレイ922は、スレッド917も収納する。スレッド917は、トレイ922内で移動可能になるよう構成され、カートリッジ受容領域921と、マウスピース930の歯または歯車913と係合するための開口915を有するアーム状構造とを有し、したがって使用のために機器が閉鎖している場合、筐体920に対するマウスピース930の動きによってスレッドが近位方向に移動し、その結果スレッドは、吸入器ホルダまたは載置領域908に据えられたカートリッジ容器に接するようになり、容器を収容位置から投薬位置に転位させることができる。この実施形態では、カートリッジホルダ908に据えられたカートリッジは、吸入器または使用者の近位端に面して、投薬構成において空気入口開口を有する。筐体カバー925は、例えば、固定機構として底面のへりから延びる突起926を有することによって、トレイ922に確実に取着できるように構成される。図12は、吸入器の載置領域に設置される、収容構成にあるカートリッジ150の位置および向きを示す、開放構成の吸入器900を示ししている。図13は、収容構成にあるカートリッジホルダにカートリッジ150が据えられた、開放構成にある吸入器900をさらに示す。図14は、図13の吸入器の中間縦断面を示し、カートリッジ容器151の収容構成でのスレッド917に対する歯車913の位置を示しており、スレッド917に接している。この実施形態では、容器151は、カートリッジ天板156に対して移動する。吸入器900を閉鎖すると(図15)、およびマウスピース930が閉鎖構成を実現するよう動くにつれ、スレッド917は、投薬構成が実現されるまで容器151を押し、マウスピースのアパーチャ955はカートリッジのボス126上を滑り、その結果、定量吐出ポート127は、マウスピースのコンジット940に連絡するようになり、空気流経路は、空気入口アパーチャ918、カートリッジ空気入口919、および空気コンジット940の定量吐出ポート127を通して投薬のために確立される。図16に示されるように、マウスピース930は、したがって空気コンジット940は、ほぼ中間から遠位端にわたり比較的テーパ状の砂時計の形をした構成を有する。この実施形態では、スレッド917は、吸入器が使用後に開放されたとき、スレッドが収容構成に向けてカートリッジを再構成できないように構成される。この実施形態のいくつかの変形例では、使用される粉末薬剤に応じてカートリッジを再構成することが可能でありまたは望ましいと考えられる。
【0064】
[0096]本明細書に開示される実施形態では、吸入器アパーチャ、例えば355、955に、封止材、例えば破砕リブ、適合面、ガスケット、およびoリングを設けて、システム内への空気流の漏れを防止することができ、それによって空気流は、カートリッジ内のみ移動するようになる。その他の実施形態では、封止を実現するために、封止材をカートリッジに設けることができる。吸入器には、1つまたは複数の解凝集ゾーンも設けられ、これらのゾーンは、粉末の蓄積または堆積を最小限に抑えるように構成される。解凝集ゾーンは、例えば、容器および定量吐出ポートを含めたカートリッジ内と、マウスピースの空気コンジット内にある1つまたは複数の位置に設けられる。
【0065】
[0097]吸入器と共に使用されるカートリッジの実施形態は、図10、13、14、16〜21、および図7〜9、22〜30にそれぞれ示されるカートリッジ150、170など、既に記述されている。本発明のカートリッジは、少なくとも2つの構成を有するエンクロージャを形成するように構成され、貯蔵、密封、または収容位置で乾燥粉末薬剤を含有する。この実施形態およびその他の実施形態では、カートリッジは、粉末収容位置から吸入または投薬構成へと、吸入器内で再構成することができる。
【0066】
[0098]ある実施形態では、カートリッジは、蓋または天板と、1個または複数のアパーチャを有する容器、収容構成および投薬構成、外面、内部容積を画定する内面を含み、収容構成は、内部容積への連絡を制限し、定量吐出構成は、前記内部容積内に空気通路を形成して、空気流が所定の手法で内部容積に進入しかつ内部容積から出て行くことを可能にする。例えばカートリッジ容器は、粉末の放出速度が制御されるよう、カートリッジから離れる薬剤を計量するために、カートリッジの空気入口に進入する空気流が内部容積内の空気出口を越えて導かれるように構成することができ;カートリッジ内の空気流は、内部容積中の粉末を、空気出口の流れ方向に実質的に直角に混転し、混合し流動化することができ、その後に定量吐出アパーチャを通して出て行くことができる。
【0067】
[0099]一実施形態では、ラベル、エッチング、色、つや消し、フランジ、および隆起などを含めた1つまたは複数の表示を、カートリッジに付すことができる。例えば、色を選択した場合、プラスチックおよび医薬品製剤に適合可能でありまたは医薬品として許容される様々なタイプの着色顔料を、カートリッジの製造中に組み込むことができる。この実施形態およびその他の実施形態では、色は、特定の活性成分または用量強度を示すことができ、例えば緑色の蓋は、6単位のFDKPおよびインスリンの製剤を示すことができる。医薬品として許容される色は、緑、青、灰色がかった青、オレンジがかった赤、スミレ色、黄色、オレンジなどにすることができる。
【0068】
[00100]図17は、内部空間または容積を画定する天板または蓋156と容器151とを含む、カートリッジ150をさらに示す。図18は、対向する端部を有し、かつリセス領域154およびボス126を縦軸Xの対向する端部に、およびこれらの端部で一体的に構成され天板156に取着された比較的長方形のパネルの組152を、側面に沿って縦軸X上に含む、カートリッジ天板156をさらに具体化する。カートリッジ天板156のへり158は下向きに延び、パネル152と連続している。パネル152は、天板156の両側から縦軸Xに沿って下向きに延び、縦空間またはスリット157によってボス126の領域およびリセス領域154の領域から切り離されている。図17〜21は、容器151の突起または羽根166に係合するように、容器151を支持するように、およびリセス領域154の下の収容位置からボス126の領域の下の投薬位置まで容器151を移動可能にするように、構造的に構成されたフランジ153をさらに含む各パネル152も示す。パネル152は、これらがへり158に取着されているそれらの端部を越えて容器151が動かないように、各端部でストッパ132と共に構造的に構成される。この実施形態では、容器151または蓋156を、例えば天板156上での並進運動によって移動させることができ、または天板156を、容器151に対して移動させることができる。一実施形態では、容器151は、蓋または天板156が静止している場合に蓋156上のフランジ153上を滑らせることによって動かすことができ、または蓋156は、吸入構成に応じて静止している容器151上で滑らせることによって動かすことができる。ボス126付近のへり158は、カートリッジの投薬構成における入口ポート119の周辺の一部を形成するリセス領域を有する。
【0069】
[00101]図19は、カートリッジ150の底面を示し、容器151、定量吐出ポート127、パネル152、フランジ153、および比較的中空またはリセス形成されているボス126の下の領域または下面168など、収容構成における構造の関係を示している。図20は、収容構成にあるカートリッジ150の中間縦軸Xを通した断面を示し、リセス領域154で蓋156に緊密に接触しておりかつフランジ153によって支持されている、容器151を示している。ボス126の下面は中空であり、容器151の天板のへりより高い位置に比較的見ることができる。図21は、投薬構成にあるカートリッジ150を示し、容器151の上縁とボス126の領域の下のパネル158とが入口ポート119を形成し、それによって流れをカートリッジ151の内部に進入させる。
【0070】
[00102]別の実施形態では、並進カートリッジ170が図22〜30に示されているが、これはカートリッジ150の代替の実施形態であり、例えば図1〜9に示される吸入器302と共に使用することができる。図22は、内部空間を画定する天板または蓋172と容器175とを含んだエンクロージャを含む、カートリッジ170を示し、このカートリッジは収容構成にあることが示されている。このカートリッジ構成では、カートリッジの天板172は、容器175と共に封止状態を形成するように構成され、容器または蓋は、互いに対して動かすことができる。カートリッジ170は、カートリッジが使用されていることを示すために、例えばカートリッジの中央で、収容位置(図22および29)から投薬位置(図24〜28および30)までおよび使い捨て位置(図示せず)まで構成することができる。図22は、カートリッジ170の様々なフィーチャも示し、天板172は、容器の外部を部分的に覆うように構成された側面パネル171を有している。各側面パネル172は、その下縁部にフランジ177を含み、容器175の羽根状構造を支持するトラックを形成し、それによって、天板172の下縁に沿って容器175を移動させることが可能になる。カートリッジの天板172は、その一端にある外側の比較的平らな面と、開口または定量吐出ポート173を有する比較的長方形のボス174と、密封状態で容器175の内容物を維持するよう内部に構成された凹状またはリセス領域とをさらに含む。一実施形態では、定量吐出ポートは、様々なサイズを有するように構成することができ、例えば開口の幅および長さは、カートリッジ内部へのその入口で、約0.025cmから約0.25cmの幅におよび約0.125cmから約0.65cmの長さにすることができる。一実施形態では、定量吐出ポートの入口は、幅約0.06cmから長さ0.3cmの測定値になる。ある実施形態では、カートリッジ天板172は、把持面、例えばタブ176、179と、ホルダ内での適正配置のためにカートリッジを正しい向きに向けるその他の構成と、固定機構、例えば、対応する吸入器に確実に適合させるための面取りまたは斜縁部180とを含むことがきる、様々な形状を含むことができる。フランジ、ボスの外部幾何形状、タブ、および様々なその他の形状は、吸入器内でのカートリッジの適正配置を示し、容易にし、および/または必要とすることができる、キーイング面を構成することができる。さらに、これらの構造は、特定の吸入器を有するカートリッジにより提供された特定の薬剤または投薬と相関させるため、1つの吸入器−カートリッジ対偶システムから別のシステムまで様々に変えることができる。そのような手法では、第1の薬剤または投薬に関連した吸入器が意図されるカートリッジは、第2の薬剤または投薬に関連した同様の吸入器内に配置されまたはそのような吸入器と共に操作されることを防止することができる。
【0071】
[00103]図23は、ボス174、定量吐出ポート173、リセス領域178、タブ176および179を有するカートリッジ天板172の全体形状を具体化した平面図である。図24は、天板172からの各フランジ177によって、その羽根状突起182により支持されている投薬位置にある容器175を示す、カートリッジ170の底面図である。図25は、カートリッジ天板172の切欠きと容器175の上縁とによって形成された空気入口181をさらに含む、投薬構成にあるカートリッジ170を示す。この構成では、空気入口181がカートリッジの内部と連絡しており、定量吐出ポート173を有する空気コンジットを形成する。使用の際、カートリッジの空気入口181は、空気流が定量吐出ポート173からカートリッジ内部に進入するように構成される。図26は、投薬構成の反対側の端部から見たカートリッジ170を、または図25の背面図を示す。
【0072】
[00104]図27は、カートリッジ150の側面図を示し、容器175、ボス174、側面パネル172、およびタブ176など、投薬構成にある構造の関係を示している。図28は、使用のため投薬構成にあるカートリッジ170を示し、容器175と、比較的長方形の空気入口181、およびカートリッジ天板172の上面で比較的中央に位置付けられたボス174を貫通する比較的長方形の定量吐出ポート173を有する、天板172とを含んでいる。ボス174は、吸入器のマウスピースの壁面内にあるアパーチャに嵌合するよう構成される。図29および30は、それぞれ収容構成および投薬構成にあるカートリッジ170の中間縦軸Xを通した断面を示し、リセス領域178の、蓋172の下面に接触しておりかつ容器を1つの位置から別の位置に滑らせるためのトラックを形成するフランジ177によって支持されている、容器175を示す。図29に示されるように、収容構成では、容器175が、リセス領域178でカートリッジ天板172の下面と封止状態を形成する。図30は、投薬構成にあるカートリッジ170を示し、容器はリセス領域181の反対側の端部にあり、容器175およびカートリッジ天板は、周囲空気をカートリッジ170に進入させ並びに定量吐出ポート173および容器175の内部と共に空気コンジットを形成する、空気入口181を形成する。この実施形態では、投薬位置が実現されるカートリッジ天板の下面が比較的平らであり、容器175の内面は、いくらかU字形を有するように構成される。ボス174は、カートリッジ天板172の上面からわずかに突出するように構成される。
【0073】
[00105]カートリッジのその他の実施形態では、カートリッジ上面が容器に対して移動可能である場合に吸入器またはカートリッジを収容構成から投薬位置に移動させるために、または定量吐出ポートと容器との位置合わせを実現する際に天板に対して容器を投薬位置まで移動させるために、または容器もしくは天板を収容構成にまで移動させるために、回転可能な機構を有する吸入器と共に使用するのに適切な、乾燥粉末吸入器に適合させることができる。
【0074】
[00106]本明細書に記述される実施形態において、カートリッジは、1回分の単位の予め計量された用量の乾燥粉末薬剤を、使用される乾燥粉末製剤に応じて様々な量で送達するように構成することができる。カートリッジ150、170などのカートリッジの例は、ある用量の、例えば0.1mgから約50mgの乾燥粉末製剤を含有するように、構造的に構成することができる。このように、容器のサイズおよび形状は、吸入器のサイズと送達される粉末薬剤の量または質量に応じて変えることができる。例えば容器は、2つの対向する面が比較的平らでありかつ約0.4cmから約2.0cmの間の近似距離を有する、比較的円筒形状を有することができる。吸入器の性能を最適化するために、Y軸に沿ったカートリッジ内部の高さを、チャンバ内に収容されることが意図される粉末の量に応じて変化させてもよい。例えば、5mgから15mgの粉末を充填するには、最適な場合、約0.6cmから約1.2cmの高さを必要とする可能性がある。
【0075】
[00107]ある実施形態において、乾燥粉末吸入器用の薬剤カートリッジが提供され:薬剤を保持するように構成されたエンクロージャと;エンクロージャ内への流れを可能にする少なくとも1個の入口ポートと、エンクロージャから外に出る流れを可能にする少なくとも1個の定量吐出ポートとを含み、少なくとも1個の入口ポートは、少なくとも1個の入口ポートに進入する流れの少なくとも一部を、圧力差に応答してエンクロージャ内の少なくとも1個の定量吐出ポートに向けるように構成される。一実施形態では、吸入器のカートリッジは、高密度ポリエチレンプラスチックから形成される。カートリッジは、内部容積を画定する内面を有しかつ互いに隣接している底面および側壁を含み、さらに1個または複数の開口を有する容器を有している。カートリッジは、カップ状構造を有することができ、リムを備えた1個の開口を有し、1個または複数の入口ポートおよび1個または複数の定量吐出ポートを画定するよう構成可能なカートリッジの天板と容器の底面とによって形成される。カートリッジの天板および容器の底面は、収容位置、および定量吐出または投薬位置に構成可能である。
【0076】
[00108]本明細書に記述される実施形態において、乾燥粉末吸入器およびカートリッジは、調整可能なまたはモジュラー空気流抵抗を実現するよう構造的に構成することができる吸入システムを形成するが、それはシステムの空気流コンジットの任意のセクションで断面積を変えることにより実現することができるからである。一実施形態では、乾燥粉末吸入器システムは、1分当たり約0.065から約0.200(√kPa)/リットルの空気流抵抗値を有することができる。その他の実施形態では、所望の抵抗が本明細書に示される範囲内の値に到達する点である、4kPaなどの所望の圧力降下が実現されるまで、吸入器内を通る空気流を防止するのに逆止め弁を用いてもよい。
【0077】
[00109]本明細書に開示される実施形態では、乾燥粉末吸入器システムは、使用の際に所定の流れ平衡分布を有するように構成され、カートリッジ内を通る第1の流れ経路と例えばマウスピースの空気コンジット内を通る第2の流れ経路とを有する。図31および図32は、流れ分布の平衡を定めるカートリッジおよび吸入器の構造構成によって確立された空気コンジットの概略図を示す。図31は、矢印によって示されるように、乾燥粉末吸入器の定量吐出または投薬位置でのカートリッジ内の流れの概略的な方向を示す。図32は、乾燥粉末吸入器の実施形態の流れの動きを示し、矢印で示されるように、投薬位置での吸入器の流れ経路を示している。
【0078】
[00110]吸入器内の質量流の平衡は、カートリッジの流れ経路内を通過する体積が約20%から70%であり、マウスピースコンジットの開始部分では約30%から90%である。この実施形態では、カートリッジ内を通る空気流分布が薬剤を混転させて混合し、それによって乾燥粉末薬剤をカートリッジ容器内で流動化しエアロゾル化する。次いで容器内の粉末を流動化する空気流は、粉末をまき上げ、カートリッジ容器から定量吐出ポートを通して徐々に粉末粒子を外に出して行き、次いでマウスピースコンジットに進入する空気流からの剪断は、カートリッジ容器から生じる薬剤を含有する空気流を収束させる。所定のまたは計量された、カートリッジから出て行く空気流は、マウスピースの空気コンジットに進入する迂回空気流に収束されて、粉末薬剤をさらに希釈し解凝集し、その後、マウスピースの出口ポートから出て行き患者へと進入する。
【0079】
[00111]さらに別の実施形態では、容器を受容するよう構成された容器載置領域を含む吸入器と、少なくとも2個の入口アパーチャおよび少なくとも1個の出口アパーチャを有するマウスピースとを含む、乾燥粉末製剤を患者に送達するための吸入システムが提供され、少なくとも2個の入口アパーチャの1個の入口アパーチャは容器領域に流体連絡し、少なくとも2個の入口アパーチャの1個は、患者に乾燥粉末製剤を送達するため容器領域を迂回するよう構成された流路を介して少なくとも1個の出口アパーチャに流体連絡し;容器領域を迂回するよう構成された流れコンジットは、吸入中に吸入器内を通過する全流量の30%から90%を送達する。
【0080】
[00112]別の実施形態では、容器領域を含む乾燥粉末吸入器と容器とを含む、患者に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムも提供され、組み合わされた前記乾燥粉末吸入器および容器は、投薬構成で剛性流コンジットを有するように、かつ使用中に吸入システムの粉末解凝集用機構を提供する複数の構造領域を有するように構成され、解凝集のための複数の機構の少なくとも1つは、0.25mmから3mmの間の最小寸法を有する容器領域内の凝集体サイズ排除アパーチャである。
【0081】
[00113]代替の実施形態では、マウスピースおよび容器を含んだ乾燥粉末吸入器を含む、患者に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムが提供され、組み合わされた前記乾燥粉末吸入器および容器は、投薬構成で剛性流コンジットを有するように、かつ使用の際に吸入システムの粉末解凝集用機構を提供する複数の構造領域を有するように構成され、複数の解凝集用機構の少なくとも1つは、容器に流体連絡する出口アパーチャに流れを向ける、マウスピース内に構成された空気コンジットである。特定の実施形態では、吸入システムは、容器に進入する流れを回転させることを目的に案内するよう構成されたカップ状構造を含み、カップ状構造の内部容積内で再循環させ、粉末薬剤をまき上げて、容器から出て行く前に粉末塊が十分小さくなるまで粉末凝集体を流れに引き込むようになされた、凝集性粉末を解凝集するための機構をさらに含んだ容器を含む。この実施形態では、カップ状構造は、流れの停滞を防止するよう構成された1つまたは複数の半径を有する。
【0082】
[00114]本明細書に記述される実施形態では、水平および垂直軸において定量吐出ポートに近接近した入口開口を有するカートリッジが、構造的に構成される。例えば、入口と定量吐出ポートとの近さは、1つのカートリッジの幅の範囲内にあるように空気入口のすぐ隣りにすることができるが、この関係は、流量、粉末の物理的および化学的性質に応じて変えることができる。この近さのため、入口からの流れは開口を越えてカートリッジ内の定量吐出ポートに至り、流動化粉末または空気流中に引き込まれた粉末がカートリッジから出て行くのを阻止する流れ構成を生成する。このように、吸入動作中、カートリッジ容器に進入する流れは、カートリッジ容器内で乾燥粉末製剤の混転を実現することができ、カートリッジの出口または定量吐出ポートに近付く流動化粉末は、カートリッジの入口ポートに進入する流れによって阻止することができ、それによって、カートリッジ内の流れがカートリッジ容器から出て行くのを制限することができる。慣性、密度、速度、電荷相互作用、流れの位置の差に起因して、ある粒子だけが、定量吐出ポートから出て行くのに必要な経路を辿ることができる。出口ポートを通過しない粒子は、適正な質量、電荷、速度、または位置を保有するまで混転し続けなければならない。この機構は、事実上、カートリッジを離れる薬剤の量を計量することができ、粉末の解凝集に寄与することができる。出て行く流動化粉末の計量をさらに助けるために、定量吐出ポートのサイズおよび数を変化させることができる。一実施形態では、2個の定量吐出ポートが使用され、形状が円形となるように構成され、それぞれ直径0.10cmであり、空気入口ポートに向かって中心線から約0.2cmまでの、容器の中間中心線を中心とした入口アパーチャ付近に位置決めされる。その他の実施形態は、例えば、長方形を含めた様々な形状の定量吐出ポートを有することができ、1個または複数の定量吐出ポートの断面積は、0.05cmから約0.25cmに及ぶ。いくつかの実施形態では、定量吐出ポートのサイズ範囲は、約0.05cmから約0.25cmの直径にすることができる。断面積が本明細書に示される値に類似している限り、その他の形状および断面積を用いることができる。あるいは、より凝集性の高い粉末の場合、より大きな断面積の定量吐出ポートを設けることができる。ある実施形態では、定量吐出ポートの断面積は、ポートの幅に対する長さが大きいままになるように、1個または複数のポートの最小開口寸法に対し、凝集体のサイズに応じて増加させることができる。一実施形態では、吸気アパーチャの寸法が、1個または複数の定量吐出ポートの幅より広い。吸気アパーチャが長方形である実施形態では、空気入口アパーチャが、約0.2cmからカートリッジの最大幅程度に及ぶ幅を含む。一実施形態では、高さが約0.15cmであり、幅が約0.40cmである。代替の実施形態では、容器は、約0.05cmから約0.40cmの高さを有することができる。特定の実施形態では、容器の幅を約0.4cmから約1.2cmに、高さを約0.6cmから約1.2cmにすることができる。ある実施形態では、容器は、1個または複数の定量吐出ポートを含み、これらポートのそれぞれは、0.012cmから約0.25cmの間の直径を有することができる。
【0083】
[00115]特定の吸入システムでは、カートリッジ天板および容器を含む乾燥粉末吸入器用のカートリッジが提供され、カートリッジ天板は、比較的平らに構成され、かつ1個または複数の開口と、容器に係合するよう構成されたトラックを有する1個または複数のフランジとを有しており;内部容積を画定する内面を有する前記容器は、カートリッジ天板の1個または複数のフランジのトラックに移動可能に取着され、1個または複数のフランジのトラックに沿って移動させることにより収容位置および定量吐出または投薬位置を実現するよう構成可能である。
【0084】
[00116]別の実施形態では、吸入システムは、0.5ミリメートル超および3mm未満の最小寸法を有する乾燥粉末組成物の粉末塊を排除するよう構成された、1個または複数の出口ポートを有するエンクロージャを含む。一実施形態では、乾燥粉末吸入器用カートリッジは、2個以上の剛性部品を有するエンクロージャを含み、カートリッジは1個または複数の入口ポートおよび1個または複数の定量吐出ポートを有し、1個または複数の入口ポートは、定量吐出ポートの全断面積より大きい全断面積を有し、1個または複数の定量吐出ポートの全断面積は0.05cmから約0.25cmに及ぶことが含まれる。
【0085】
[00117]一実施形態では、吸入のため乾燥粉末製剤を解凝集し分散させるための方法は:マウスピースと、少なくとも1個の入口ポートおよび少なくとも1個定量吐出ポートを有しかつ乾燥粉末製剤が入っている容器とを含む乾燥粉末吸入器内に空気流を発生させるステップであって;前記容器が、少なくとも1個の入口ポートと少なくとも1個の定量吐出ポートとの間に空気コンジットを形成し、前記入口ポートは、前記容器に進入する空気流の一部を少なくとも1個の定量吐出ポートに向けるものであるステップと;空気流によって、容器内で粉末を混転させ、それにより容器内の乾燥粉末薬剤をまき上げ混合するようにして空気流薬剤混合物を形成するステップと;少なくとも1個の定量吐出ポートを通して容器から出て行く空気流を加速させるステップとを含む。この実施形態では、定量吐出ポートを通過する粉末薬剤は、入口ポートより出口ポートの断面積の縮小に起因して即座に加速することができる。この速度変化は、吸入中に、流動化しエアロゾル化した粉末薬剤をさらに解凝集してもよい。さらに、流動化した製剤中の粒子または粒子群の慣性により、定量吐出ポートから離れる粒子の速度は同じではない。マウスピースコンジット内でより速く移動する空気流は、抵抗または剪断力を、出口または定量吐出ポートから離れてゆっくり移動する流動化粉末の各粒子または粒子群に与え、そのため薬剤をさらに解凝集することができる。
【0086】
[00118]1個または複数の定量吐出ポートを通過する粉末薬剤は、容器より出口または定量吐出ポートの断面積の縮小に起因して即座に加速するが、これらは容器の空気入口より断面積が狭くなるように設計されている。この速度変化は、流動化した粉末薬剤をさらに解凝集してもよい。さらに、流動化した薬剤中の粒子または粒子群の慣性により、定量吐出ポートを離れる粒子速度と定量吐出ポートを通る流れの速度とは同じではない。
【0087】
[00119]本明細書に記述される実施形態では、定量吐出ポートから出て行く粉末は、例えば流動化した薬剤の方向および/または速度に与えられた変化によって、さらに加速することができる。定量吐出ポートから出て行きかつマウスピースコンジットに進入する流動化粉末の方向の変化は、定量吐出ポートの軸に対して約0°から約180°の角度、例えば約90°の角度で引き起こすことができる。流れの速度および方向の変化により、空気コンジットを通して流動化粉末をさらに解凝集してもよい。方向の変化は、空気流コンジットの幾何構成の変化を通して、および/または定量吐出ポートから出て行く空気流を、マウスピース入口に進入する2次空気流で妨げることによって、実現することができる。マウスピースコンジット内の流動化粉末は、コンジットの断面積増加に起因して、出て行く前に、マウスピースの口内配置部分に進入するにつれて拡張し減速する。凝集体内に捕捉された気体も膨張し、個々の粒子がばらばらになるのを助けることができる。これは、本明細書に記述される実施形態の、別の解凝集機構である。薬剤を含有する空気流は、患者の口腔に進入することができ、例えば肺循環内に効果的に送達することができる。
【0088】
[00120]本明細書に記述される解凝集機構および吸入システムの一部のそれぞれは、粉末解凝集を最大限にする多段階手法である。粉末の最大限の解凝集および送達は、1つまたは複数の加速/減速コンジット、抵抗、または凝集体内に捕捉された気体の膨張、粉末特性と吸入器構成要素材料の特性との相互作用であって、本発明の吸入器システムに必要不可欠な特徴であるものを含めた、個々の機構それぞれの作用を最適化することによって得ることができる。本明細書に記述される実施形態では、反復使用中に吸入器からの粉末薬剤放出の一貫性が存在するよう、粉末薬剤の解凝集を最大限にするために、吸入器に、比較的剛性の空気コンジットまたは配管システムが設けられる。本発明の吸入器には、剛性でありまたは同じままでありかつ変えることができないコンジットが設けられるので、ブリスターパックを使用する従来技術の吸入器に関連したフィルムの穿刺またはフィルムの剥離から得られる空気コンジット構成のばらつきが回避される。
【0089】
[00121]一実施形態では、乾燥粉末吸入システムで粉末製剤を解凝集する方法が提供され:内部容積を有する容器内の乾燥粉末製剤を、乾燥粉末吸入器に提供するステップと;粉末製剤が、1個または複数の定量吐出アパーチャを通過してマウスピースに入るよう十分に小さい粉末塊を含むまで、乾燥粉末製剤をまき上げ、引き込み、循環させるために流れの方向を定めるよう構成された前記容器に、流れを進入させるステップとを含む。この実施形態では、方法は、1個または複数の定量吐出アパーチャを離れる流れに引き込まれた粉末塊を加速させ、マウスピースに進入させるステップをさらに含むことができる。
【0090】
[00122]本明細書に開示される実施形態において、乾燥粉末薬剤は、約2秒未満で吸入器から一貫性を持って定量吐出される。本発明の吸入器システムは、1分当たり約0.065から約0.20(√kPa)/リットルという高い抵抗値を有する。したがって、カートリッジを含むシステムにおいて、2から20kPaの間に適応するピーク吸入圧力降下は、システム内で1分当たり約7から70リットルの間の結果的なピーク流量を生成する。いくつかの実施形態では、吸入器カーリッジシステムの圧力差を2kPaより低くすることができる。これらの流量は、粉末1から30mgの間の充填質量で定量吐出されたカートリッジ内容物の75%超をもたらす。いくつかの実施形態では、これらの性能特性は、90%超のカートリッジ定量吐出パーセンテージをもたらすよう、1回の吸入動作で最終使用者によって実現される。ある実施形態では、吸入器およびカートリッジシステムは、患者に送達される粉末の連続流としてまたは1つもしくは複数のパルスとして吸入器から粉末を放出することによって、単回用量を提供するように構成される。ある実施形態では、患者の肺に乾燥粉末製剤を送達するための吸入システムが提供され、このシステムは、投薬構成での全流れ抵抗が1分当たり0.065から約0.200(√kPa)/リットルの値に及ぶ流れコンジットを有するように構成された、乾燥粉末吸入器を含む。この実施形態およびその他の実施形態では、吸入システムの全流れ抵抗は、0.5kPaから7kPaの間の圧力差範囲の全域で、比較的一定である。
【0091】
[00123]吸入システムの構造的構成は、50%超の呼吸可能画分および5.8μm未満の粒子をもたらすように、解凝集機構が可能になる。吸入器は、吸入動作中に、容器に入っている粉末薬剤の85%超を放出することができる。一般に、図15に示される本明細書の吸入器は、カートリッジの内容物または容器の内容物の90%超を最大30mgまでに及ぶ充填質量のときに2から5kPaの間の圧力差で3秒未満で放出することができる。
【0092】
[00124]本発明の吸入器は、呼吸を動力として動かすことができるとして主に述べてきたが、いくつかの実施形態では、吸入器には、乾燥粉末製剤を解凝集し送達するのに必要な圧力差を発生させるための、供給源を設けることができる。例えば吸入器は、空気入口ポートに設けることができる、窒素缶からのような、圧縮ガス貯蔵エネルギー源などのガスを動力とした供給源に適合させることができる。スペーサを設けて、噴流を捕獲することにより、患者が快適なペースで吸入できるようにすることができる。
【0093】
[00125]本明細書に記述される実施形態では、吸入器は、再使用可能な吸入器としてまたは単回使用の吸入器として設けることができる。代替の実施形態では、解凝集の同様の原理を多回用量吸入器に適合することができ、この吸入器は、複数の、例えばカートリッジ状構造を単一トレイに含むことができ、単回用量は、必要に応じて指示選択することができる。この実施形態の変形例では、多回用量吸入器は、例えば1日、1週間、または1カ月にわたる薬剤供給のため、十分な用量を提供するよう構成することができる。本明細書に記述される多回用量の実施形態では、最終使用者の利便性が最適化される。例えば食事計画では、朝食、昼食、および夕食での投薬が、単一の機器で7日間投薬を行うよう構成されたシステムで実現される。追加の最終使用者の利便性は、日および投薬、例えば3日目(D3)、昼食時(L)を示す指標機構と共に構成されたシステムによって提供される。
【0094】
[00126]一実施形態では、乾燥粉末薬剤は、例えばジケトピペラジンおよび医薬品として活性な成分を含んでいてもよい。この実施形態では、医薬品として活性な成分または活性剤は、治療される疾患または状態に応じて、任意のタイプにすることができる。別の実施形態では、ジケトピペラジンは、例えば、体内の標的部位に活性剤を送達する担体システムとして使用できる、粒子およびミクロ粒子などを形成する実用性のある対称分子および非対称ジケトピペラジンを含むことができる。「活性剤」という用語は、本明細書では、ジケトピペラジン製剤に封入され、結合され、接合され、複合化され、または捕捉され、または吸着される、治療薬、またはタンパク質もしくはペプチドもしくは生体分子などの分子を指す。任意の形の活性剤を、ジケトピペラジンと組み合わせることができる。薬物送達システムは、治療的、予防的、または診断的活性を有する生物学的活性剤を送達するのに使用することができる。
【0095】
[00127]薬物の不安定性および/または低い吸収性など医薬品分野での課題を克服する、ミクロ粒子を生成するのに使用されてきた1つの種類の薬物送達剤は、2,5−ジケトピペラジンである。2,5−ジケトピペラジンは、以下に示される一般式1の化合物により表される(式中、E=Nである。)。窒素の一方または両方を酸素で置換して、それぞれ置換類似体ジケトモルホリンおよびジケトジオキサンを生成することができる。
【0096】
【化1】

【0097】
[00128]本明細書で使用される「ジケトピペラジン」または「DKP」は、一般式1の範囲内にあるジケトピペラジンとその塩、誘導体、類似体、および修飾体を含む。
[00129]これらの2,5ジケトピペラジンは、特に酸性R基を保有するものが、薬物送達で有用であることが示されている(例えば、ジケトピペラジンおよびジケトピペラジン媒介性薬物送達に関する教示にも関わらず、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる「Self Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System」という名称の米国特許第5,352,461号;「Method For Making Self−Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System」という名称の第5,503,852号;「Microparticles For Lung Delivery Comprising Diketopiperazine」という名称の第6,071,497号;および「Carbon−Substituted Diketopiperazine Delivery System」という名称の第6,331,318号参照)。ジケトピペラジンは、薬物吸着ミクロ粒子に形成することができる。薬物とジケトピペラジンとのこの組合せは、改善された薬物安定性および/または吸収特性を与えることができる。これらのミクロ粒子は、様々な投与経路により投与することができる。乾燥粉末として、これらミクロ粒子を、肺を含めた呼吸器系の特定領域に吸入によって送達することができる。
【0098】
[00130]フマリルジケトピペラジン(ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;FDKP)は、肺への適用に関して1つの好ましいジケトピペラジンである。
【0099】
【化2】

【0100】
[00131]FDKPは、酸には低い溶解度を有するが中性または塩基性pHでは容易に溶解できるので、有益なミクロ粒子マトリックスを提供する。これらの性質により、FDKPは、酸性条件下で結晶化することが可能になり、結晶は自己集合して粒子を形成する。粒子は、pHが中性である生理学的条件下で容易に溶解する。一実施形態では、本明細書に開示されるミクロ粒子は、インスリンなどの活性剤が導入されたFDKPミクロ粒子である。
【0101】
[00132]FDKPは、DKP環の置換炭素上の置換基の配置構成に対してtransおよびcis異性体を有するキラル分子である。「Diketopiperazine microparticles with defined isomer contents」という名称の米国仮特許出願第61/186,779号に記載されるように、異性体含量を約45〜65%のtransに制限することにより、粒子の形成形態のより堅牢な空気力学的性能およびコンシステンシーを得ることができる。異性体の比は、分子の合成および再結晶中に制御することができる。塩基への曝露により、環のエピマー化が促進され、例えば末端カルボキシレート基から保護基を除去する間にラセミ化が生じる。しかし、このステップで溶媒のメタノール含量を増加させることにより、高いtrans異性体含量をもたらす。trans異性体は、cis異性体より溶解性が低く、再結晶中の温度および溶媒組成の制御を、このステップでのtrans異性体の富化の促進または低下に使用することができる。
【0102】
[00133]約0.5から約10ミクロンの間の直径を有するミクロ粒子は、天然障壁のほとんどを首尾よく突破して肺に到達することができる。約10ミクロン未満の直径は、喉の曲がりを辿るのに必要であり、約0.5ミクロン以上の直径は、息が吐き出されるのを避けるのに必要である。約35から約67m/gの比表面積(SSA)を有するDKPミクロ粒子は、改善された空気力学的性能および改善された薬物吸着など、薬物を肺に送達するのに有益な特性を示す。
【0103】
[00134]「Diketopiperazine microparticles with defined specific surface areas」という名称の米国仮特許出願第61/186、773号に記載されるように、FDKP結晶のサイズ分布および形状は、新しい結晶の核生成と既存の結晶の成長との間の平衡によって影響を受ける。両方の現象は、溶液中の濃度および過飽和に強く依存する。FDKP結晶の特徴的なサイズは、核生成と成長との相対的速度の表れである。核生成が優位な場合、多くの結晶が形成されるが、これらの結晶は全て、溶液中のFDKPを目標に競合するので、比較的小さくなる。成長が優位な場合、競合する結晶は少なく、結晶の特徴的サイズはより大きくなる。
【0104】
[00135]結晶化は、過飽和に強く依存し、即ち供給流中の成分の濃度に強く依存する。より高い過飽和が多くの小さな結晶の形成に関連し;より低い過飽和がより少ないより大きな結晶を生成する。過飽和に関し:1)FDKP濃度の上昇は過飽和を上昇させ;2)アンモニア濃度の上昇は、より高いpHへと系をシフトさせ、平衡溶解度を上昇させ、過飽和を低下させ;および3)酢酸濃度の上昇は、平衡溶解度がより低い状態にあるより低いpHへと終点をシフトすることによって、過飽和を上昇させる。これら成分の濃度を低下させると、逆の作用が誘発される。
【0105】
[00136]温度は、FDKPの溶解度とFDKP結晶の核形成および成長の動力学とに対するその作用を通して、FDKPミクロ粒子の形成に影響を及ぼす。低温では、高い比表面積を有する小さな結晶が形成される。これら粒子の懸濁液は、強力な分子間引力を示す高い粘度を示す。約12℃から約26℃の温度範囲は、本明細書に開示される吸入器システムを含めた様々な吸入システムで許容される(またはより良好な)空気力学的性能を有する粒子を生成した。
【0106】
[00137]これら本発明の機器およびシステムは、広範な特性を有する粉末を目的として肺送達に有用である。本発明の実施形態は、吸入器と、一体型または設置可能な単位用量カートリッジと、改善されたまたは最適な範囲の性能を提供する定められた(1つまたは複数の)特性の粉末とを含んだシステムを含む。例えば、機器は効率的な解凝集エンジンを構成し、したがって凝集性粉末を効果的に送達することができる。これは、自由に流動しまたは流動が最適化された粒子をベースにして乾燥粉末吸入システムを開発しようとしている多くのその他の者により追跡された過程とは、全く異なる(例えば、米国特許第5,997,848号および第7,399,528号、米国特許出願第2006/0260777号と;Ferrariら、AAPS PharmSciTech 2004;5(4)Article 60を参照されたい)。このように本発明の実施形態は、機器に凝集性粉末を加えたシステムを含む。
【0107】
[00138]粉末の凝集性は、その流動性により評価することができ、または形状および褶曲度などの凹凸の評価と相関させることができる。米国薬局方USP29、2006、セクション1174で論じられるように、粉末の流動性を評価するには、医薬品の分野で4つの技法が一般に使用され、即ち:安息角;圧縮性(Carr)指数およびHausner比;オリフィスを通る流れ;および剪断セル法が使用される。後者の2つの技法では、方法の多様性が原因で、一般的なスケールが開発されていない。オリフィスを通る流れは、流量を測定するために、あるいは流れを可能にする臨界直径を決定するために、使用することができる。直接関係のある変数は、オリフィスの形状および直径、粉末床の直径および高さ、装置が作製される材料である。剪断セル機器は、円筒形、環状、および平面状の種類を含み、かなりの程度の実験制御を提供する。これらの2つの方法のどちらの場合も、設備および方法の記述は極めて重要であるが、一般的なスケールがないにも関わらず、これらの方法は、粉末流動性の定性的および相対的な特徴付けを提供するのに首尾よく使用される。
【0108】
[00139]安息角は、そこに注がれる、水平ベースに対する材料の円錐状のパイルによって仮定された角度と決定される。Hausner比は、沈降していない体積をタップ体積(タッピングが、体積にさらなる変化をもたらさなくなった後の体積)で割った値、あるいはタップ密度をバルク密度で割った値である。圧縮性指標(CI)は、
CI=100×(1−(1/HR))
としてHausner比(HR)から計算することができる。
【0109】
[00140]実験方法の若干の変更にも関わらず、一般に許容される流動特性のスケールは、安息角、圧縮性指標、およびHausner比に関して公表されている(Carr、RL、Chem.Eng.1965、72:163〜168)。
【0110】
【表1】

【0111】
[00141]CEMAコードは、いくらか異なる安息角特性を提供する。
【0112】
【表2】

【0113】
[00142]優または良の、上述の表による流動特性を有する粉末は、凝集性に関し、非凝集性または最小限に抑えられた凝集性であると特徴付けることができ、流動性が低い粉末は、凝集性であると特徴付けることができ、さらにこの粉末は、中程度の凝集性(普通または可の流動特性に対応)と高度な凝集性(任意の程度の劣である流動可能性に対応)とに分けられる。CEMAスケールによる安息角の評価では、安息角≧30°の粉末を凝集性であると見なすことができ、≧40°であるものを非常に凝集性があると見なすことができる。これらの範囲のそれぞれの粉末、またはこれらの組合せは、本発明の全く異なる実施形態の態様を構成する。
【0114】
[00143]凝集性は、褶曲度、即ち粒子表面の凹凸の尺度に相関させることもできる。褶曲度は、粒子の実際の比表面積と、同等な球の比表面積との比である:
【0115】
【数1】

【0116】
[00144]通気性など、褶曲度を直接測定するための方法も、当技術分野では公知である。2以上の褶曲度は、高い凝集性に関連付けられている。より大きな粒子(例えば、100ミクロン程度)が、いくらか高い褶曲度にも関わらず妥当な流動性を有することができるように、粒度も流動性に影響を及ぼすことを心に留めるべきである。しかし、1〜3ミクロンの1次粒子直径を有するような、肺深部に送達するのに有用な粒子の場合、さらに適度に高い褶曲度、即ち2〜6は、凝集性であるとすることができる。高度な凝集性の粉末は、褶曲度≧10を有することができる(下記の例A参照)。
【0117】
[00145]下記の実施例の多くでは、フマリルジケトピペラジン(ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;FDKP)を含む乾燥粉末を使用する。構成成分であるミクロ粒子は、結晶質プレートが自己集合した凝集体である。プレート状の表面を有する粒子からなる粉末は、概して不十分な流動性を有することが公知であり、即ち、この粉末は凝集性である。事実、滑らかな球状粒子は一般に最良の流動性を有し、流動性は一般に、粒子が長円形になり、鋭い縁部を有し、実質的に2次元の不規則な形状になり、不規則なインターロック形状を有し、または繊維状になるにつれ、低下する。拘泥するものではないが、FDKPミクロ粒子の結晶質プレートは、介挿およびインターロックすることができ、これらを含むバルク粉末の凝集性(流動性の反対)に寄与すること、さらにこのバルク粉末を、それほど凝集性のない粉末より、解凝集するのをより難しくすることが、本出願人が現在理解するところである。さらに、粒子の構造に影響を及ぼす因子は、空気力学的性能に作用する可能性がある。粒子の比表面積が閾値を超えて増大するにつれ、呼吸可能画分として測定されるその空気力学的性能は、低下する傾向にあることが観察されている。さらにFDKPは、ピペラジン環内に2個のキラル炭素原子を有し、したがってN−フマリル−4−アミノブチルのアームは、環の平面に対してcisまたはtrans配置をとることができる。ミクロ粒子の作製に使用されるFDKPのtrans−cis比が、ラセミ混合物を含めて最適な範囲から外れるにつれ、呼吸可能画分は減少し、好ましい範囲からより大きく外れると、SEMにおける粒子の形態は目に見えて異なることが観察された。このように本発明の実施形態は、機器に、好ましい範囲内の比表面積を有するDKP粉末を加えたシステムと、機器に、好ましい範囲内のtrans−cis異性体比を有するFDKP粉末を加えたシステムとを含む。
【0118】
[00146]変性していないまたは薬物例えばインスリンを含有するFDKPミクロ粒子は、高い凝集性の粉末を構成する。FDKPミクロ粒子は、1.8のHausner比、47%の圧縮性指標、および40°の安息角を有するように測定された。インスリンが投入されたFDKPミクロ粒子(TECHNOSPHERE(登録商標)インスリン;TI;MannKind Corporation、Valencia、CA)は、1.57のHausner比、36%の圧縮性指標、および50°±3°の安息角を有することが測定された。さらに、臨界オリフィス試験では、重力下で流れを確立するには、60〜90cm(2から3フィート)程度のオリフィス直径が必要とされる可能性があることが推定された(床高さ約75cm(2.5フィート)と仮定;高い圧力は、必要とされる直径のサイズを増大させる。)。同様の条件下、自由に流れる粉末は、わずか1〜2cm程度のオリフィス直径を必要とする可能性がある(Taylor,M.K.ら、AAPS PharmSciTech 1、art.18)。
【0119】
[00147]したがって、一実施形態において、本発明の吸入システムは乾燥粉末吸入器を含み、凝集性粉末を解凝集するための容器であって、16から50に及ぶCarr指数を有する凝集性乾燥粉末を含む容器が提供される。一実施形態では、乾燥粉末製剤は、FDKPを含むジケトピペラジンと、インスリン、GLP−1、副甲状腺ホルモン、オキシントモジュリン、およびこの開示の他の場所に記述されるような、内分泌ホルモンを含むペプチドまたはタンパク質を含む。
【0120】
[00148]約0.5から約10ミクロンの間の直径を有するミクロ粒子は、天然障壁のほとんどを首尾よく通過して、肺に到達することができる。約10ミクロン未満の直径が、喉の曲がりを辿るのに必要とされ、約0.5ミクロン以上の直径は、息が吐き出されるのを避けるのに必要とされる。本明細書に開示される実施形態は、比表面積(SSA)が約35から約67m/gの間のミクロ粒子が、改善された動力学的性能および改善された薬物吸着など、薬物を肺に送達するのに有益な特徴を示すことを示す。
【0121】
[00149]本明細書には、約45から約65%の特定のtrans異性体比を有するFDKPミクロ粒子も開示される。この実施形態では、ミクロ粒子は、改善された飛行性を提供する。
【0122】
[00150]一実施形態では、吸入可能な乾燥粉末を送達するためのシステムであって、a)薬剤を含む凝集性粉末と、b)粉末を入れるための内部容積を画定するエンクロージャを含んだ吸入器とを含み、このエンクロージャが気体入口および気体出口を含み、これら入口および出口は、入口を通して内部容積に流入する気体が、出口に向かって流れる気体に向けられるように位置決めされているシステムも提供される。ある実施形態では、システムは、18から50のCarr指数を有する凝集性粉末を解凝集するのに有用である。システムは、凝集性粉末が30°から55°の安息角を有する場合に粉末を送達するのに役立てることもできる。凝集性粉末は、ファンネルフローに関しては≦約96cm(3.2フィート)の臨界オリフィス寸法、または質量流に関しては≦約72cm(2.4フィート)の寸法、褶曲度>2によって特徴付けることができる。例示的な凝集性粉末粒子は、FDKP結晶を含んだ粒子を含み、FDKP異性体の比はtrans:cisが50%から65%の範囲内である。
【0123】
[00151]別の実施形態では、吸入システムは、マウスピースを含んだ吸入器を含むことができ、≧2kPaの圧力降下を吸入器全体に適用すると、マウスピースから放出される粒子の噴流が生成され、前記放出された粒子の50%は≦10ミクロンのVMGDを有し、前記放出された粒子の50%は≦8ミクロンのVMGDを有し、または前記放出された粒子の50%は≦4ミクロンのVMGDを有する。
【0124】
[00152]さらに別の実施形態では、吸入可能な乾燥粉末を送達するためのシステムであって:a)FDKP異性体の比が50%から65%の範囲内のtrans:cisであるFDKP結晶および薬剤からなる粒子を含む乾燥粉末と;b)粉末を入れるエンクロージャ、気体入口および気体出口を含むチャンバ;前記チャンバが載置され、2つの流れ経路、即ち気体をチャンバの気体入口に進入させる第1の流れ経路、気体をチャンバの気体入口から迂回させる第2の流れ経路を画定する筐体を含む吸入器とを含み、エンクロージャの気体入口を迂回する流れが、気体出口の流れ方向に実質的に直角にエンクロージャから出て行く流れに衝突するように向けられる、システムである。
【0125】
[00153]ある実施形態では、吸入可能な乾燥粉末を送達するためのシステムであって:a)ミクロ粒子が、改善された空気力学的性能や改善された1ミリグラム当たりの薬物吸着などの薬物を肺に送達するのに有益な特性を示す約35から約67m/gの間の比表面積(SSA)を有するFDKP結晶、および薬剤からなる粒子を含む乾燥粉末と;b)気体入口および気体出口を含む、粉末を入れるエンクロージャ;および前記チャンバが載置され2つの流れ経路、即ち気体をチャンバの気体入口に進入させる第1の流れ経路、気体をチャンバの気体入口から迂回させる第2の流れ経路を画定する筐体を含む吸入器とを含み、チャンバの気体入口を迂回する流れが、気体出口の流れ方向に実質的に直角にエンクロージャから出て行く流れに衝突するように向けられる、システムが提供される。
【0126】
[00154]吸入可能な乾燥粉末を送達するためのシステムであって:a)薬剤を含む乾燥粉末と;b)粉末が入っている、気体入口および気体出口を含むカートリッジ、およびカートリッジが載置され2つの流れ経路、即ち気体をカートリッジの気体入口に進入させる第1の流れ経路、気体をエンクロージャの気体入口から迂回させる第2の流れ経路を画定する筐体、およびマウスピースを含み、≧2kPaの圧力降下をエンクロージャ全体に適用すると、粒子の噴流がマウスピースから放出され、前記放出された粒子の50%が≦10ミクロンのVMGDを有する吸入器とを含み、カートリッジの気体入口を迂回する流れが、気体出口の流れ方向に実質的に直角にエンクロージャから出て行く流れに衝突するように向けられる、システムも提供される。
【0127】
[00155]本明細書に記述される組成物および方法で使用される活性剤は、任意の医薬品物質を含むことができる。これらには、例えば治療的、予防的、または診断的活性を有する、合成有機化合物、タンパク質およびペプチド、多糖およびその他の糖、脂質、無機化合物、および核酸配列を含めることができる。ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドは全て、ペプチド結合により結合されたアミノ酸の鎖である。
【0128】
[00156]ジケトピペラジン製剤を使用して、体内の標的または部位に送達することができる活性剤の例には、ホルモン、抗凝血剤、免疫修飾剤、ワクチン、細胞毒性剤、抗生剤、血管作動薬、神経作動薬、麻酔剤または鎮静剤、ステロイド、うっ血除去剤、抗ウイルス薬、アンチセンス、抗原、および抗体が含まれる。より具体的には、これらの化合物には、インスリン、ヘパリン(低分子量ヘパリンを含む。)、カルシトニン、フェルバメート、スマトリプタン、副甲状腺ホルモンおよびその活性断片、成長ホルモン、エリスロポイエチン、AZT、DDI、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ラモトリジン、絨毛性ゴナドトロピン放出因子、黄体形成ホルモン放出ホルモン、β−ガラクトシダーゼ、エキセンジン、血管作動性腸ペプチド、およびアルガトロバンが含まれる。抗体およびその断片には、非限定的に、抗−SSX−241〜49(滑膜肉腫、Xブレークポイント2)、抗−NY−ESO−1(食道腫瘍関連抗原)、抗−PRAME(メラノーマの、優先的に発現する抗原)、抗−PSMA(前立腺特異的膜抗原)、抗−Melan−A(メラノーマ腫瘍関連抗原)、および抗チロシナーゼ(メラノーマ腫瘍関連抗原)を含めることができる。
【0129】
[00157]ある実施形態では、肺循環に医薬品製剤を送達するための乾燥粉末製剤は、ペプチド、タンパク質、ホルモン、これらの類似体、およびこれらの組合せを含めた活性成分または物質を含み、活性成分は、インスリン、カルシトニン、成長ホルモン、エリスロポエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、絨毛性ゴナドトロピン放出因子、黄体形成放出ホルモン、濾胞刺激ホルモン(FSH)、血管作動性腸ペプチド、副甲状腺ホルモン(ブラックベアPTHを含む。)、副甲状腺ホルモン放出タンパク質、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、エキセンジン、オキシントモジュリン、ペプチドYY、インターロイキン2−誘発性チロシンキナーゼ、Brutonチロシンキナーゼ(BTK)、イノシトール要求キナーゼ1(IRE1)、またはこれらの類似体、活性断片、PC−DAC修飾誘導体、もしくはO−グリコシル化形態である。特定の実施形態では、医薬品組成物または乾燥粉末製剤がフマリルジケトピペラジンを含み、活性成分は、インスリン、副甲状腺ホルモン1〜34、GLP−1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、ヘパリン、およびこれらの類似体から選択された1種または複数である。
【0130】
[00158]一実施形態では、乾燥粉末吸入システムにより、ヒトの肺に乾燥粉末製剤を自己投与する方法であって:閉鎖位置にありかつマウスピースを有する乾燥粉末吸入器を得るステップ;収容構成にある、予め計量した用量の乾燥粉末製剤を含むカートリッジを得るステップ;カートリッジを設置するために乾燥粉末吸入器を開放するステップ;用量位置へのカートリッジの移動を行うために、吸入器を閉鎖するステップ;マウスピースを人の口内に置き、1回深く吸入して乾燥粉末製剤を送達するステップを含む方法も提供される。
【0131】
[00159]一実施形態では:a)ジケトピペラジンおよび活性剤を含む乾燥粉末製剤を有するカートリッジを収容する乾燥粉末吸入器を提供するステップと;b)活性成分または物質を、治療の必要がある個人に送達するステップとを含む、活性成分を送達する方法である。乾燥粉末吸入器システムは、50%超の呼吸可能な画分および5.8μm未満の粒度を有するインスリンFDKPなどの乾燥粉末製剤を送達することができる。
【0132】
[00160]さらになおその他の実施形態では、肥満、高血糖症、インスリン耐性、および/または糖尿病を治療する方法が開示される。この方法は、式2,5−ジケト−3,6−ジ(4−X−アミノブチル)ピペラジン(式中、Xは、スクシニル、グルタリル、メラニル、およびフマリルからなる群から選択される。)を有するジケトピペラジンを含む、吸入可能な乾燥粉末組成物または製剤の投与を含む。この実施形態では、乾燥粉末組成物は、ジケトピペラジン塩を含むことができる。本発明の、さらになお別の実施形態では、ジケトピペラジンが2,5−ジケト−3,6−ジ−(4−フマリル−アミノブチル)ピペラジンであり、医薬品として許容される担体または添加物を含むまたは含まない、乾燥粉末組成物または製剤が提供される。
【0133】
[00161]一実施形態では、乾燥粉末製剤を患者の肺に送達するための吸入システムは、投薬構成での流れに対する全抵抗の値が1分当たり0.065から約0.200(√kPa)/リットルに及ぶ流れコンジットを有するように構成された、乾燥粉末吸入器を含む。
【0134】
[00162]一実施形態では、上述の乾燥粉末吸入器と、呼吸器疾患、糖尿病、および肥満などの障害または疾患を治療するための乾燥粉末製剤を含んだ1個または複数の薬剤カートリッジとを含む、乾燥粉末吸入キットが提供される。この実施形態では、キットは、材料を、使用のための取扱説明書と共に含むことができる。
【0135】
[00163]本明細書に記述される吸入システムの、改善されたカートリッジの排出および解凝集能力は、乾燥粉末製剤の高いバイオアベイラビリティに寄与する。特定の実施形態では、乾燥粉末はDKP含有粉末である。バイオアベイラビリティとは、濃度対時間のプロットの曲線下面積(AUC)により一般に評価されるように、対象の全身循環内への送達から得られた活性成分(例えば、インスリン)またはDKP(DKP粉末に関するこれらの実施形態では)への曝露量を指す。そのような測定値を、投薬量に対して標準化することにより、システムの特性を明らかにすることができる。曝露量を標準化する際に使用される投薬量は、充填されまたは放出された用量を基にすることができ、粉末の単位質量で表すことができる。あるいは、曝露量は、特定の充填質量のカートリッジに対して標準化することができる。どちらの方法も、特定の製剤の特定のDKPまたは活性成分の含量を考慮するように、曝露量をさらに調節することができ、即ち曝露量は、充填または放出用量における活性剤の量またはDKPの量に対して標準化することができる。対象に関する変数、例えば流体体積は、観察される曝露量に影響を及ぼす可能性があり、したがって様々な実施形態では、システムのバイオアベイラビリティが、範囲または限度として表されることになる。
【0136】
[00164]インスリンの薬物動態プロファイルは、その生理学的作用を決定する際の重要な因子である。同様のインスリン曝露量で、迅速に実現されたピークによって特徴付けられる薬物動態プロファイルを提供する製剤のインスリン投与は、Cmaxレベルへのより遅い上昇をもたらしかつ長い平坦部により特徴付けられるインスリン投与の場合より、抑制された食事グルコース摂取および肝臓グルコース放出でより効果的である。このように、本明細書に開示される吸入システムは、インスリンのより効率的な送達をもたらし、その結果、同様のCmaxレベルは、従来技術のシステムに比べてより少ない用量のインスリンにより実現することができるようなる。他の言い方をすれば、これら吸入システムは、より高い用量の標準化Cmaxを実現する。
【実施例1】
【0137】
乾燥粉末吸入器−カートリッジシステムの抵抗および流れ分布の測定
[00165]いくつかの乾燥粉末吸入器の設計について試験をして、その流れ抵抗−1つには吸入器経路の幾何形状または構成によって決定される重要な特性を、測定した。高い抵抗性を示す吸入器は、より低い抵抗性の吸入器と同じ流量を得るのに、より大きな圧力降下を必要とする。簡単に言うと、各吸入器およびカートリッジシステムの抵抗性を測定するために、様々な流量を吸入器に適用し、吸入器を通して得られた圧力を測定する。これらの測定は、圧力降下を供給するために吸入器のマウスピースに取着された真空ポンプと、流れを変化させかつ得られた圧力を記録するための流れ制御器および圧力計とを利用することによって、実現することができる。ベルヌーイの法則によれば、圧力降下の平方根を流量に対してプロットした場合、吸入器の抵抗性は、曲線の線形部分の勾配である。これらの実験において、本明細書に記述される乾燥粉末吸入器およびカートリッジを含む吸入器システムの抵抗性は、抵抗測定機器を使用して、投薬構成で測定した。投薬構成は、吸入器の空気コンジットを通しておよび吸入器内のカートリッジを通して、空気経路を形成する。
【0138】
[00166]異なる吸入器の設計は、それらの空気経路の幾何形状のわずかなばらつきが原因で異なる抵抗値を示すので、特定の設計で使用するための圧力設定に関して理想的な間隔を決定するのに、多数の実験を実施した。圧力の平方根と流量との間の線形性に関するベルヌーイの法則に基づいて、線形性を評価するための間隔を、多数の試験の後に使用される3個の吸入器に関して予め決定し、同じ吸入器の設計のその他のバッチで適切な設定を使用できるようにした。図7に示される吸入システムについて、吸入器に関する例示的なグラフが図33に見られる。図33に示されるグラフは、図7に示される吸入システムの抵抗性を、約10から25L/分に及ぶ流量で、ベルヌーイの法則に対する良好な相関で測定できることを示す。このグラフは、例示的な吸入システムの抵抗性が0.093√kPa/LPMであると決定されたことも示す。図33は、流れおよび圧力が関係していることを示す。したがって、圧力の平方根対流れのグラフの線の勾配が下がるにつれ、即ち吸入システムがより低い抵抗性を示すにつれ、圧力の所与の変化に関する流れの変化はより大きくなる。したがって、より高い抵抗性の吸入システムは、呼吸を動力として動かすことができるシステムを用いて患者により提供された圧力の所与の変化に関して、流量のばらつきが少ないことを示す。
【0139】
[00167]表1のデータは、図10(DPI 1)および図7(DPI 2)に記述される吸入システムを使用した一組の実験の結果を示す。乾燥粉末吸入器1(DPI 1)の場合、設計150、図17から21に示されるカートリッジを使用し、設計170、図22〜30に示されるカートリッジはDPI 2と共に使用した。したがって、DPI 1はカートリッジ1を使用し、DPI 2はカートリッジ2を使用した。
【0140】
【表3】

【0141】
[00168]表1は、本明細書で試験をした吸入システムの抵抗性が、DPI 1およびDPI 2に関してそれぞれ
【0142】
【数2】

【0143】
であることを示す。データは、流れに対する吸入システムの抵抗性が、一部にはカートリッジ内の空気コンジットの幾何形状または構成によって決定されることを示す。
【実施例2】
【0144】
インスリン製剤を有する吸入器システムを使用した粒度分布の測定
[00169]アダプタ(MannKind Corp.)を備えたレーザ回折装置(Helosレーザ回折システム、Sympatec Inc.)による粒度分布の測定は、本明細書に記述されるカートリッジ−吸入器システムで提供される(図22〜30に示されるカートリッジ170を備えた、図1〜9の吸入器)、インスリンおよびフマリルジケトピペラジン粒子のミリグラム(mg)を単位とする様々な量の製剤で行った。機器は、管材の一端に取着され、それが流量計(TSI,Inc.モデル4043)および弁に適合されて、圧縮空気源からの圧力または流れを調節する。レーザシステムが作動し、かつレーザ光が噴流を測定する準備がなされると、空気弁が作動して、粉末を吸入器から放出させる。レーザシステムが、所定の測定条件に基づいて、自動的に吸入機器から出て行く噴流を測定する。レーザ回折システムは、装置に組み込まれたソフトウェアにより操作され、コンピュータプログラムによって制御される。測定を、異なる量の粉末および異なる粉末ロットを含有するサンプルで行った。測定条件は、下記の通りである:
・レーザ測定開始トリガー条件:≧0.6%のレーザ強度が特定の検出器チャネルで検出された場合;
・レーザ測定終了トリガー条件:≦0.4%のレーザ強度が特定の検出器チャネルで検出された場合;
・真空源と吸入器チャンバとの間の距離は約9.525cmである。
【0145】
[00170]多数の試験を、異なる量の粉末または充填質量を使用してカートリッジで実施した。カートリッジは、1回だけ使用した。カートリッジの重量を、吸入器から放出される前後で決定することにより、放出された粉末の重量を決定した。装置における測定値は、以下の表2に示すように、様々な圧力降下で、かつ多数回繰り返すことによって決定した。粉末噴流を測定したら、データを分析しグラフ化する。表2は、実験から得られたデータを示し、CEは空の(粉末が放出された)カートリッジを示し、Q3は、サンプルの累積粉末粒度分布の50パーセンタイルの幾何学的直径であり、q3(5.8μm)は、幾何学的直径が5.8μmより小さい粒度分布のパーセンテージを示す。
【0146】
【表4】

【0147】
[00171]表2のデータは、全粉末充填質量の92.9%から98.4%が吸入システムから放出されることを示した。さらにデータは、充填質量とは無関係に、吸入システムから放出された粒子の50%が、試験がなされた様々な時間および圧力降下で測定されたように、4.7μm未満の幾何学的直径を有していたことを示す。さらに、放出された粒子の60%から70%の間の粒子は、5.8μm未満の幾何学的直径を有していた。
【0148】
[00172]図34は、粉末充填質量10mgを使用した、別の実験から得られたデータを示す。グラフは、インスリンおよびフマリルジケトピペラジンを含む製剤の粒子を含有するサンプルの粒度分布の結果、測定された粒子の78.35%が≦5.8μmの粒度を有したことを示す。レーザは、上述の測定条件で、0.484秒の測定時間中、37.67%の光学濃度を検出した。データは、吸入システムが、関連したおよびより低い範囲の使用者の吸入能力で、即ち圧力降下で、インスリン−FDKP製剤を小さいサイズに効果的に解凝集することを示す。この凝集性(Carr指数=36%)製剤に関するこれらの小さな幾何学的サイズは、呼吸可能であると考えられる。
【実施例3】
【0149】
吸入システム性能の尺度としてのカートリッジからの粉末放出の測定
[00173]実験は、図22〜30に示されるカートリッジ170プロトタイプを備えた図1〜9に示される多数の吸入器プロトタイプを使用する、本明細書で記述される吸入システムを使用して実施した。多数のカートリッジを、各吸入器と共に使用した。各カートリッジを、充填前に電子天秤で計量した。カートリッジに所定の質量の粉末を充填し、再度計量し、各充填済みカートリッジを吸入器に配置し、粉末製剤、即ちTECHNOSPHERE(登録商標)インスリン(インスリン−FDKP;典型的には3〜4Uインスリン/mg粉末、約10〜15%インスリンw/w)粉末バッチを空にする効率に関して試験をした。多数の圧力降下を使用して性能の一貫性を特徴付けた。表3は、吸入器当たり35のカートリッジ放出測定値を使用した、この試験の結果を示す。表3のデータにおいて、全ての試験は、同じバッチの臨床級インスリン−FDKP粉末を使用して実施した。結果は、2から5kPaまで及ぶ、関連ある使用者の圧力降下は、カートリッジから粉末を非常に効率的に排出して空にするのを実証したことを示す。
【0150】
【表5】

【実施例4】
【0151】
Andersenカスケード衝突による予測的堆積の測定:
[00174]実験は、28.3LMPの流量を使用して、シミュレートされた用量送達中にステージプレート粉末堆積物を収集するために、Andersenカスケード衝突装置を使用して実施した。この流量は、吸入システム(DPIおよびカートリッジ)全体に約6kPaの圧力降下をもたらした。プレートステージ上の堆積を、フィルタおよび電子天秤を使用して重量測定により分析した。10mg、6.6mgおよび3.1mgの充填質量における凝集性粉末の充填重量を、吸入システム性能に関して評価した。各衝突試験は、5個のカートリッジで実施した。ステージ2−Fで収集された累積粉末塊を、5.8μm未満の空気力学的粒度に従い測定した。収集された粉末塊とカートリッジ充填含量との比を決定し、充填重量での呼吸可能画分(RF)パーセントとして提供する。データを表4に示す。
【0152】
[00175]データは、50%から70%に及ぶ呼吸可能画分が多数、粉末バッチで実現したことを示す。この範囲は、吸入システムの標準化された性能特性を表す。
[00176]吸入システム性能測定を、異なるカートリッジで35回繰り返した。充填質量(mg)および放出時間(秒)を、使用される各吸入器カートリッジシステムごとに測定した。さらに、粉末中の呼吸可能画分、即ち肺送達に適した粒子のパーセントも測定した。結果を、下記の表4に示す。表中、%RF/充填は、粉末中の、肺に移動可能なサイズ(≦5.8μm)を有する粒子のパーセントに等しく;CEは、空になったカートリッジおよび送達された粉末を示し;RFは、呼吸可能画分を示す。表4では、試験No.1〜10を、臨床級のインスリン−FDKP粉末の第2のバッチを使用して実施したが、11〜17に関する試験粉末は、表3で実施され示された試験と同じ粉末を使用した。
【0153】
【表6】

【0154】
[00177]上記データは、乾燥粉末吸入器と、凝集性粉末、即ちTECHNOSPHERE(登録商標)インスリン(インスリンを含むFDKP粒子)が入っているカートリッジとを含む本発明吸入システムが、粉末含量のほとんど全てを効果的に放出できることを示しているが、それは、カートリッジの全粉末含量の85%超、ほとんどの場合には95%超が、様々な充填質量および圧力降下で、一貫性を持ってかつ有意な程度の放出により得られたからである。Andersenカスケード衝突測定値は、粒子の50%超が呼吸可能な範囲内にあり、粒子は5.8μm未満でありかつ放出された粉末全体の53.5%から73%に及ぶことを示した。
【実施例5】
【0155】
TECHNOSPHERE(登録商標)インスリン(TI)の褶曲度
[00178]褶曲度は、粒子の実際の比表面積と、同等な球に関する比表面積との比である。球の比表面積は:
【0156】
【数3】

【0157】
であり、式中、deff=1.2μmは、Sympatec/RODOSレーザ回折測定からのTI粒子の表面計量直径である。
したがってTI粒子マトリックス(1.4g/cm)と同じ密度を有する平均球は、下式のSSAを有する。
【0158】
【数4】

【0159】
[00179]したがって、比表面積(SSA)が約40m/gのTI粒子に関しては、下記の通りである。
【0160】
【数5】

【0161】
[00180]比表面積が50または60m/gである、同様にサイズが決められた粒子の場合、褶曲度はそれぞれ、およそ14および16になる可能性がある。
【実施例6】
【0162】
容量メジアン幾何学径(VMGD)の特徴付けによる、放出された製剤の幾何学的粒度分析
[00181]粉末乾燥吸入器から放出された乾燥粉末製剤のレーザ回折は、粉末に対して行われる解凝集レベルを特徴付けるのに用いられる、一般的な方法である。この方法は、工業規格衝突方法で行われるような空気力学的サイズではなく、幾何学的サイズの尺度を示す。典型的には、放出された粉末の幾何学的サイズは、メジアン粒度、VMGDにより特徴付けられる容量分布を含む。重要なことは、放出された粒子の幾何学的サイズが、衝突方法により提供される空気力学的サイズに比べ、高い分解能で認められることである。より小さいサイズが好ましく、個々の粒子が肺管に送達される、より高い可能性が得られる。このように、吸入器の解凝集および最終的な性能の相違は、回折による解決をより容易にすることができる。これらの実験において、実施例3で詳述される吸入器および既存の吸入器を、レーザ回折により、実際の患者の吸気能力に類似した圧力で試験をして、粉末製剤を解凝集する吸入システムの有効性を決定する。具体的には、製剤は、凝集性ジケトピペラジン粉末を、活性インスリンが投入された成分と共におよびこの成分なしで含んでいた。これらの粉末製剤は、特徴的な表面積、異性体比、およびCarr指数を保有していた。表5には、VMGDと、試験中の容器の排出効率が報告されている。FDKP粉末は、近似的Carr指数50を有し、TI粉末は、近似的Carr指数40を有する。
【0163】
【表7】

【0164】
[00182]表5のこれらのデータは、本明細書に記述された吸入器シテムと比較した場合、既存の吸入器システムよりも粉末の解凝集が改善されたことを示す。14〜56m/gに及ぶ表面積を有するジケトピペラジン製剤は、85%を上回る排出効率および7ミクロン未満のVMGDを実証した。同様に、transが45〜66%に及ぶ異性体比を保有する製剤は、既存の機器よりも改善された性能であることを実証した。最後に、40〜50のCarr指数により特徴付けられる製剤を有する吸入器システムの性能も、同様に既存の機器よりも改善されたことが示された。全ての場合において、報告されたVMGD値は、7ミクロンより下であった。
【実施例7】
【0165】
次世代乾燥粉末送達システムで実現されたin vitro性能の改善
[00183]TECHNOSPHERE(登録商標)製剤は、MEDTONE(登録商標)送達システム(MTDS、MannKind Corporation、Valencia、CA)により、患者に首尾よく送達されてきた。このシステムは、単回使用カートリッジ内に予め計量されかつ高い抵抗性の呼吸を動力として動かすことができる再使用可能なMEDTONE(登録商標)吸入器に挿入された、乾燥粉末製剤を含む。改善された送達システム(実施例1に記述されるDPI 2)は、MTDSの代替例として開発されている。これらのシステムに関するin vitro粉末性能を、吸入器性能の様々なパラメータに関して比較した。DPI 2では、MEDTONE(登録商標)システムにおける1カートリッジ当たり2回の放出に比べ、1カートリッジ当たり1回の放出を使用した。
【0166】
[00184]上述のようなレーザ回折による粒度測定および放出された塊の定量を、これらの実験では使用した。レーザ回折機器(Sympatec HELOS)を、新規な加圧吸入器チャンバと適合させて、粉末噴流の分析を容易にした。MTDSカートリッジは、決定当たり2回放出させ、それに対してDPI 2では1回であった。吸入システムを4kPaのピーク圧力で使用して、粉末排出パーセンテージと容量メジアン幾何学径(VMGD)とをTECHNOSPHERE(登録商標)(FDKP吸入粉末)およびTECHNOSPHERE(登録商標)インスリン(FDKP−インスリン吸入粉末)製剤で評価した。
【0167】
[00185]実験の結果を表6および図35に示す。まとめると、DPI 2の場合、粉末排出パーセンテージは97.8%(FDKP−インスリン、充填重量3.5mg;n=20)、96.8%(FDKP−インスリン、充填重量6.7mg;n=20)、および92.6%(FDKP吸入粉末、充填重量10.0mg;n=15)であり;VMGD(ミクロン)はそれぞれ4.37、3.69、および6.84であった。MTDSの場合、粉末排出パーセンテージは89.9%(FDKP−インスリン、充填重量5.0mg;n=30)、91.7%(FDKP−インスリン、充填重量10.0mg;n=30)、および89.4%(FDKP吸入粉末、充填重量10.0mg;n=30)であり;VMGD(ミクロン)はそれぞれ10.56、11.23、および21.21であった。
【0168】
[00186]図35は、各吸入システムごとに行われた全ての試験の平均から得られたデータをグラフで表したものである。図35に見られるように、粒度の累積分布は、MEDTONE(登録商標)の場合よりDPI 2の場合に小さくなる。MEDTONE(登録商標)と比較した場合、DPI 2吸入システムは、より小さい粒子をより大きなパーセンテージで生成する。これは、DPI 2システムで提供された、改善された解凝集メカニズムの証拠である。これらのデータは、FDKP吸入粉末製剤を送達するための実現可能な改善された代替例として、DPI 2の臨床使用を支持する。排出パーセントはDPI 2により改善され、MTDSでの2回の放出に比べ、使用者に対して1カートリッジ当たり1回の放出という著しい利点をもたらした。メジアン幾何学粒度の減少は、DPI 2内での高い粉末解凝集を示唆する。この改善された解凝集の臨床的影響について、次に評価しなければならない。
【0169】
【表8】

【実施例8】
【0170】
吸入システムの例示的な実施形態によるFDKPのバイオアベイラビリティの改善
[00187]上記実施例1で記述された、DPI 1により送達された様々な充填重量のTECHNOSPHERE(登録商標)吸入粉末(FDKP−吸入粉末)の安全性および忍容性を評価するために、吸入システム、即ち吸入器および様々な充填重量の乾燥吸入粉末が入っているカートリッジ、修正されたCQLQ、VAS、および吸入器システムのピーク流を使用して測定を行った。MEDTONE(登録商標)吸入器システムを、比較のため使用した。実験は、吸入の労作および吸入時間の変化が、DPI 1吸入器を通したFDKP−吸入粉末として吸入されるFDKPの薬物動態(PK)に及ぼす影響を評価するために、使用中のシステムからデータを収集するのにも実施した。
【0171】
[00188]試験の開始時に、対象をモニターし、使用中の機器から放出された用量の存在を検出することができる米国特許出願第12/488,469号に開示された圧力感知機器が適合された吸入システムで、「短い」および「長い」吸入を行う練習をするよう指示した。吸入動作中、患者に対し、3〜4秒の短い吸入または6〜7秒の長い吸入と併せて、名目上の圧力差4〜6kPaを維持するよう指示した。「厳しい」吸入を行うために、対象は、名目上の吸入時間約6.5秒およびピーク圧力7kPaを提供した。逆に、「容易な」吸入を行うために、対象は、名目上の吸入時間約6.5秒およびピーク圧力5kPaを提供した。吸入モニター装置に結合させて、カートリッジから放出された粉末塊の重量測定評価を行った。これにより、各対象ごとの、投薬中の吸入動作、カートリッジ放出質量、および薬物動態プロファイルの決定の間の結合が可能になった。
【0172】
[00189]試験は、健康なボランティアの非盲検クロスオーバー2部構成試験であった。第1部では、3元3期クロスオーバー試験の10および15mgのFDKP吸入粉末を、DPI 1吸入器に通して吸入し、10mgをMEDTONE(登録商標)吸入器を通して吸入した。10名の対象にある用量のFDKP−吸入粉末を投与し、安全性および忍容性の測定(CQLQ、VAS、およびピーク流)を行った。対象から血液サンプルを採取した後に投薬し、投薬後5、10、15、25、30、60、120、240、および360分で、各処理によるFDKPの薬物動態を評価した。
【0173】
[00190]第2部では、第1部でFDKP−吸入粉末の忍容性を決定した後、次いで10mgを第2部で使用した。第2部は、流量(15対30LPM)および吸入時間(3対6秒)の影響を評価するために、2部構成2元クロスオーバー試験として実施した。試験した各パラメータごとに(即ち、流量および吸入時間)、10名の対象を各パラメータごとにクロスオーバーさせ、合計20名の対象に対し、パラメータの全てに関して行った。FDKPの薬物動態は、対象から採取した血液サンプルからの各処理により評価した。肺パラメータ(FEV1)の測定は、FDKP−吸入粉末を吸入する前後で行った。これらの実験からの結果を、表7と図36および37に示す。
【0174】
[00191]実験結果の代表的なデータを下記の表7に示すが、この表は、試験した対象で測定されたFDKPの平均AUC0〜6時間、並びに平均Cmaxを示している。
【0175】
【表9】

【0176】
[00192]図36は、感知機器によりモニターしたときの、10mg用量のFDKPと共にDPI 1を使用した対象のプロファイルの例を示し、約4秒の、粉末なしでの練習時の呼吸と、FDKPの粉末用量を用いた約1秒の投薬吸入を示している。図36は、カートリッジからの放出質量が、重力測定により10.47mgと測定されたことも示し、その結果、対象は、31,433ng・分/mLに等しいAUC0〜6時間によって特徴付けられたFDKP全身曝露量を有することになった。送達されたFDKP粉末の標準化AUC/mgは、1mg当たり3,003ng・分/mLであった。図37は、6時間モニターされた血漿中のFDKP濃度を示し、約10分で約270ng/mLのCmaxを示す。
【0177】
[00193]FDKP粉末10mgが入っているDPI 1吸入システムは、10mgが入っているMEDTONE(登録商標)のほぼ2倍のFDKPを血液中に送達した。平均してFDKP−吸入粉末15mgが入っているDPI 1吸入システムは、著しく高い標準偏差に見られるように、数名の個人が粉末に対して良好な曝露量を有していないので、粉末10mgが入っているDPI 1システムに比べて曝露量が比例する用量を送達しなかった。実験の第1部におけるデータのばらつきは、投薬中に適正な位置で吸入器を使用しなかった何名かの対象によると考えられる。
【0178】
[00194]MEDTONE(登録商標)吸入システムと比較してより長い、より短い、より厳しい、またはより容易な吸入データに関するDPI 1の10mg用量の結果を、下記の表8に列挙する。この試験は、表8に示されるように、3部構成で実施した。表8は、実験で得られたFDKP値の平均AUC0〜∞として測定された、肺循環内へのFDKPの送達を示す。データは、MEDTONE(登録商標)吸入システムと比較したDPI 1吸入システムの有効性および性能の例示であり、DPI 1は、全身循環内にFDKPを送達する際により有効であり、MEDTONE(登録商標)吸入器より約30%良好であり、DPI 1の値は、製剤中に放出されたFDKP 1mg当たりAUC0〜∞が2375から5277ng・分/mLに及んだことを示す。MEDTONE(登録商標)のAUC0〜∞は、2回の吸入後に、製剤中に放出されたFDKP 1mg当たり1465から2403ng・分/mLに及んだ。
【0179】
[00195]DPI 1機器により送達されたFDKP 10mgは、FDKP血漿AUCにより測定した場合、FDKPを送達する際に、MEDTONE(登録商標)よりほぼ2倍の増加分だけより効率的である。FDKPの送達は、吸入時間および吸入の労作とは無関係である。データは、FDKP AUCと吸入パラメータの変化がFDKP AUCに及ぼす影響とにより評価した場合、DPI 1は、MEDTONE(登録商標)より改善されたバイオアベイラビリティおよび効率を有することを示す。この試験におけるFDKPのC最大は、DPI 1(1回の吸入)で約100ng/mLより大きく、MEDTONE(登録商標)(2回の吸入)を使用した値より小さく、即ち96±30ng/mLであった。
【0180】
【表10】

【実施例9】
【0181】
例示的な吸入システムによるFDKPおよびインスリンのバイオアベイラビリティの改善。
[00196]この試験は、インスリンおよびFDKPの薬物動態(PK)によって決定されるように、肺吸入送達システム(DPI 2)により送達された様々な充填重量のTECHNOSPHERE(登録商標)インスリン吸入粉末(FDKP−インスリン)を、MEDTONE(登録商標)吸入器の場合と比較した、相対的なバイオアベイラビリティを評価するように設計された。
【0182】
[00197]これは、健康なボランティアにおける非盲検クロスオーバーPK(インスリンおよびFDKP)試験であった。C−ペプチド補正を使用して、吸入によって送達されたインスリン対内因性由来のインスリンの相対量を決定した。24名の対象(1アーム当たり12名)に、DPI 2を使用して6.7mgおよび7.3mgの用量のFDKP−インスリン吸入粉末を投与し(それぞれ20Uおよび22Uインスリン、および約10w/w%インスリン)、MEDTONE(登録商標)を使用して10mgのFDKP−インスリン吸入粉末を投与した(30Uインスリン)。その後、この試験の3元クロスオーバーアームにおいて、12名の対象に、DPI 2を使用して20Uを与え、またはMEDTONE(登録商標)を介して30Uを与えた。対象からの血液サンプルを、投薬前と、投薬後の7、15、30、60、120、240、および360分後に採取して、各処理によるFDPKの薬物動態を評価した。
【0183】
[00198]データは、DPI 2を使用した20Uまたは22Uのインスリンが、MEDTONE(登録商標)で投与した30Uのインスリンと比較した場合に同様の曝露量のインスリンおよびFDKPを送達したことを示す。インスリンの場合、血漿曝露(AUC0〜2時)の結果は、DPI 2 20UおよびMEDTONE(登録商標)30Uに関してそれぞれ3407±1460uU×分/mL対4,154±1,682uU・分/mLであり、22Uを含有するDPI 2およびMEDTONE(登録商標)30Uに関してはそれぞれ4,661±2,218uU・分/mL対3,957±1,519uU・分/mLであった。3元クロスオーバーアームでは、血漿インスリン曝露量が、DPI 2およびMEDTONE(登録商標)に関してそれぞれ4,091±1,189uU・分/mLおよび3,763±1,652uU・分/mLであった。
【0184】
[00199]3元試験からの結果は、MEDTONE(登録商標)での20.8±18.7分から、DPI 2(20U)での14.8±8.94分およびDPI 2(22U)システムを使用したときの13.6±4.3分へと、インスリンのTmaxが低下したことも示した。3元クロスオーバー試験では、6.7mgのFDKP−インスリンがDPI 2で送達され、それに対して10.0mgのFDKP−インスリン粉末がMEDTONE(登録商標)で送達された場合、送達された質量に関して標準化されたFDKP血漿曝露量(AUC0〜2時間)は、MEDTONE(登録商標)での1,324ng・分/mL/mg(17名の対象の用量の平均)に比べ、DPI 2に関しては2,059ng・分/mL/mg(16名の対象の用量の平均)であった。この例示的な実施形態では、バイオアベイラビリティ試験を、粉末製剤中約10%のインスリン含量で実施した。したがって、より高いバイオアベイラビリティ(粉末含量に対して標準化されていない。)は、より高い濃度のインスリンを提供することによって得ることができ、同様の結果は、その他の活性成分で実現することができる。同様に、より高い含量の活性成分を含有する製剤は、より低いバイオアベイラビリティのFDKP(粉末含量に対して標準化されていない。)をもたらす可能性がある。
【0185】
[00200]まとめると、DPI 2は、MEDTONE(登録商標)より、インスリン血漿曝露によって測定されたようにインスリンを送達する際により効率的である。DPI 2システムは、インスリン30Uを用いたMEDTONE(登録商標)の場合のように、インスリン20Uを用いて同様のインスリン曝露量を送達した。
【0186】
[00201]上記実験からのさらなる結果を、下記の表に示す。直前の実施例で述べた試験を、2つの追加のパートで継続した。この試験の第2のパートでは、対象に、DPI 2を使用してFDKP乾燥粉末製剤中10Uの用量のインスリンを与え、またはMEDTONE(登録商標)吸入システムを使用してFDKP中15Uのインスリンを与えた。この試験の第3部では、対象に、3元クロスオーバーで、DPI 2を使用してFDKP製剤中20Uのインスリンを与え、またはMEDTONE(登録商標)を使用して30Uを与えた。血液中のインスリン濃度を測定し、その結果を分析し評価した。
【0187】
[00202]DPI 2 20Uを使用して治療した対象から実現された、血漿インスリンおよびFDKP曝露(AUC0〜2時間)は、MEDTONE(登録商標)吸入器を使用して対象から得られた場合と同様である。データを表9に示す。示される値は、インスリン20Uを含むDPI 2を使用した投薬群の全て、第IおよびIII部から得られ、一方、MEDTONE(登録商標)吸入器の30Uのインスリンに関する値は、第I、Ia、およびIII部から得られた。DPI 2 22Uに関してインスリンのAUC血漿曝露量が予測より低いのは、インスリンの最終排出相中の時点が不十分だったことによる可能性が最も高い。後の時点のいくつかは、AUCの計算に寄与しておらず、修正により、AUClastに関して改善された結果をもたらすタイミング順序で、上昇することが認識された。DPI 2 22Uインスリンコホートが完了した後の、インスリン薬物動態時点でのこの変化は、後続の濃度時間プロファイルを改善した。DPI 2の10UおよびMEDTONE(登録商標)吸入器の15Uという、より低い用量も、同様であった。全ての個人からのインスリン濃度を、図38にプロットする。DPI 2 20UおよびMEDTONE(登録商標)吸入器30UからのFDKP曝露量、並びにDPI 2 10UおよびMEDTONE(登録商標)吸入器15Uに関するFDKP曝露量は、共に、生物均等基準内に包含された。FDKP曝露量およびインスリン曝露量との良好な相関がある。全ての個人からのFDKP濃度を、図39で用量群ごとにプロットした。
【0188】
[00203]表9のデータは、本明細書に開示される吸入器システムの性能を表し、実験で対象に関して測定された平均の血漿平均AUC0〜無限は、2回の吸入でMEDTONE(登録商標)により放出されたFDKP 1mg当たり1,879から3,383ng・分/mLに及び、DPI 2では、1回の吸入後に製剤中に放出されたFDKP 1mg当たり2,773から5124ng・分/mLに及んだことを示す。データは、全ての対象に関して製剤中に放出されたFDKP塊1mg当たり、FDKPに関して平均中央AUC0〜無限は、3,500または3,568ng・分/mLより大きいことも示す。
【0189】
[00204]DPI 2に関するこの試験での、血漿インスリン平均中央AUC0〜2時間は、1回の吸入で投与された粉末製剤中のインスリン1単位当たり約96から315μU・分/mLに及び、インスリンの平均中央値は、1回の吸入で投与された粉末製剤中のインスリン1単位当たり168から216μU・分/mLに及んだ。MEDTONE(登録商標)に関するAUC0〜無限(AUC0〜∞)値は、2回の吸入で投与された粉末製剤中のインスリン1単位当たり約76から約239μU・分/mLに及んだ。MEDTONE(登録商標)吸入器システムによる最初の吸入は、典型的に使用される1カートリッジ当たり2回の吸入で放出されたインスリンの半分未満(データは図示せず。)を提供し、同じ特徴が、製剤中の送達物質として使用される場合のFDKPに関して同様に示されることが、先に示されている。
【0190】
[00205]食後のグルコース変動を、インスリンC−ペプチドの関係を確立するのに使用される試験食事中に、並びにDPI 2またはMEDTONE(登録商標)によるインスリンの投与後の食事試験中に、各対象において評価した。DPI 2またはMEDTONE(登録商標)の間で比較した各個人のグルコース変動を、図40に表示する。試験で使用した用量は、個人に対して調節せず、したがって応答の大きさは、個人ごとに異なり、しかし、概して同等のグルコース変動が、2種の吸入器による治療間で各個人に見られた。
【0191】
【表11】

【0192】
[00206]吸入器のバイオアベイラビリティも、放射性標識FDKPを使用して静脈内ボーラスにより投与されたフマリルジケトピペラジンまたはFDKPのバイオアベイラビリティと比較し、かつAUC AUC0〜∞として評価した。この試験の結果は、MEDTONE(登録商標)システムの場合、バイオアベイラビリティが、送達されたFDKP粉末10mgおよび20mgに関してそれぞれ約26%および32%であるように計算されたことを示した。FDK 10mgを送達するために、モデル分析でDPI 1を使用して測定することにより得られたバイオアベイラビリティは、IVボーラス注射により投与されたFDKP 10mgと比べた場合、57%であった。FDKP−インスリン製剤を使用して得られたデータのモデル分析は、DPI 2および粉末の1回の吸入を使用したFDKPに関するAUC0〜∞により測定されるように、吸入器システムの性能または送達された粉末の効率を評価するのに使用した。DPI 2は、2回の吸入によるMEDTONE(登録商標)の場合の46%に比べ、全充填の6.7mgからFDKPの64%を全身循環内に送達した。このFDKP−インスリン製剤の場合、FDKP含量は約6mgであった。
【0193】
[00207]前述の開示は例示的な実施形態である。本明細書に開示された機器、技法、および方法は、本発明の開示の実施の際にうまく機能する代表的な実施形態を明らかにすることが、当業者により理解されるべきである。しかし当業者は、本発明の開示に照らし、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果を得ることができることを理解すべきである。
【0194】
[00208]他に指示しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの性質、および反応条件などを表す全ての数は、「約」という用語により全ての場合において修飾されることが理解されよう。したがって、逆の場合を示さない限り、下記の明細書および添付される特許請求の範囲に記述される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の性質に応じて変えてもよい近似値である。最低限、また特許請求の範囲と均等な原理の適用を限定するものではないが、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らしかつ通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広範囲について述べる数値範囲およびパラメータが近似値であるにも関わらず、特定の実施例で記述される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし任意の数値は、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必ず生じる、ある誤差を本来含有する。
【0195】
[00209]本発明について記述する文脈(特に、下記の特許請求の範囲の文脈)で使用される、「a」および「an」および「the」という用語、および同様の指示対象は、本明細書で他に指示しない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するよう解釈される。本明細書での値の範囲の引用は、その範囲内に包含される個々の値それぞれを個別に指すための簡潔な方法として、単に役割を果たすことが意図される。他に指示しない限り、個々の値それぞれは、あたかも本明細書に個々に引用されるように明細書に組み込まれる。本明細書に記述される全ての方法は、本明細書に他に指示しない限りまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書に示される、任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにするためのものであり、他に特許請求の範囲に示される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書では、本発明の実施に必要不可欠な特許請求の範囲に示されていない任意の要素を示すと解釈すべき言語はない。
【0196】
[00210]特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替例のみ指すことを他に明示しない限り「および/または」を指すのに使用され、またはこれら代替例は相互に排除されるが、本開示は代替例のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0197】
[00211]本明細書に開示される本発明の代替の要素または実施形態のグループ分けは、限定されると解釈するものではない。各グループの構成要素は、個々に、またはこのグループのその他の構成要素もしくは本明細書に見出されるその他の要素との任意の組合せで、言及することができかつ特許請求の範囲に記載することができる。グループの1つまたは複数の構成要素は、便宜上および/または特許性を理由として、グループに含めることができまたはグループから排除できることが期待される。任意のそのような包含または排除が行われる場合、本明細書は、修正されたグループを含有すると本明細書では見なされ、したがって添付される特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の書面による記述が実現される。
【0198】
[00212]本発明を実施するために、本発明者らに公知の最良の形態を含めた本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記述される。当然ながら、これら好ましい実施形態の変形例が、先の記述を読むことによって当業者に明らかにされよう。本発明者らは、当業者がそのような変形例を必要に応じて用いることを予測し、また本発明者らは、本発明を、本明細書に具体的に記述される以外のその他の方法によって実施することを意図するものである。したがって本発明は、適用法により許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正例および均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形例における上述の要素の任意の組合せは、他に本明細書に支持しない限りまたは他に文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書に包含される。
【0199】
[00213]本明細書に開示される特定の実施形態は、言語からなるまたは本質的に言語からなることを使用して、特許請求の範囲でさらに限定される可能性がある。特許請求で使用する場合、補正ごとに出願しても付加しても、「からなる」という移行用語は、特許請求の範囲に指示されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。「本質的に〜なる」という移行用語は、特許請求の範囲を、指示された材料またはステップと、基本的なおよび新規な(1つまたは複数の)特徴に実質的に影響を及ぼさないものとに限定する。そのように特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態は、本明細書に本質的にまたは明確に記述され可能にされる。
【0200】
[00214]さらに、本明細書の全体を通して、数多くの参照が特許および印刷刊行物になされている。上記引用された参考文献および印刷刊行物のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に個々に組み込まれる。
【0201】
[00215]さらに、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例証することが理解される。用いることができるその他の修正例は、本発明の範囲内にある。このように、例として、しかし限定することなく、本発明の代替の構成を本明細書の教示に従い利用することができる。したがって本発明は、図示され記述されるように本発明を精密に限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末吸入器と、
ジケトピペラジンの複数の粉末粒子を含む乾燥粉末製剤と
を含む吸入システムであって、
ジケトピペラジンを対象の肺循環に送達するように構成され、前記ジケトピペラジンは、対象の血漿中で測定して、1回の吸入で投与された乾燥粉末製剤中のジケトピペラジン含量1mg当たり2,300ng・分/mLより大きいAUC0〜∞を有する、吸入システム。
【請求項2】
前記乾燥粉末吸入器に適合するよう構成されたカートリッジをさらに含む、請求項1に記載の吸入システム。
【請求項3】
乾燥粉末吸入器が、呼吸を動力として動かすことができる吸入器である、請求項1に記載の吸入システム。
【請求項4】
ジケトピペラジンが、ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジンである、請求項3に記載の吸入システム。
【請求項5】
乾燥粉末製剤が活性成分を含む、請求項1に記載の吸入システム。
【請求項6】
乾燥粉末製剤を含有するカートリッジが、収容構成から投薬構成へと吸入器内で再構成可能である、請求項2に記載の吸入システム。
【請求項7】
ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジンが、1時間未満のTmaxを有する、請求項4に記載の吸入システム。
【請求項8】
活性成分が、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、またはこれらの断片である、請求項5に記載の吸入システム。
【請求項9】
活性成分がインスリンである、請求項5に記載の吸入システム。
【請求項10】
乾燥粉末吸入器と、
複数のジケトピペラジン粒子を含む乾燥粉末製剤と
を含む吸入システムであって、
2μmから8μmに及ぶ容量メジアン幾何学径と4μm未満の幾何標準偏差とを有するジケトピペラジンミクロ粒子を含む粉末噴流を放出するよう動作可能に構成されている、吸入システム。
【請求項11】
前記乾燥粉末吸入器に適合するためのカートリッジをさらに含む、請求項10に記載の吸入システム。
【請求項12】
乾燥粉末吸入器が、呼吸を動力として動かすことができる吸入器である、請求項10に記載の吸入システム。
【請求項13】
ジケトピペラジンが、ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジンである、請求項10に記載の吸入システム。
【請求項14】
乾燥粉末製剤が活性成分を含む、請求項10に記載の吸入システム。
【請求項15】
活性成分が、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、またはこれらの断片である、請求項14に記載の吸入システム。
【請求項16】
活性成分がインスリンである、請求項14に記載の吸入システム。
【請求項17】
呼吸を動力として動かすことができる乾燥粉末吸入器と、
複数のジケトピペラジン粒子を含む乾燥粉末製剤と
を含む、薬物を肺送達するための吸入システムであって、
乾燥粉末製剤の90%超を放出するよう動作可能に構成されており、30分未満で溶解し血液中に吸収されるジケトピペラジン粒子が乾燥粉末製剤の1回の吸入後にジケトピペラジンのピーク濃度をもたらす、吸入システム。
【請求項18】
乾燥粉末吸入器と、
インスリンを含む複数の乾燥粉末粒子を含む乾燥粉末製剤と
を含む吸入システムであって、
対象の肺循環にインスリンを送達するよう構成されており、前記インスリンは、対象の血漿中で測定して、1回の吸入で投与された乾燥粉末製剤中で放出されたインスリン1単位当たり160uU・分/mLより大きいAUC0〜2時間を有する曝露量となることができる吸入システム。
【請求項19】
インスリンに関するCmaxが、経口吸入により患者に投与した後30分未満で測定される、請求項18に記載の吸入システム。
【請求項20】
粉末製剤がジケトピペラジンを含む、請求項18に記載の吸入システム。
【請求項21】
ジケトピペラジンが、ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジンである、請求項19に記載の吸入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公表番号】特表2012−519550(P2012−519550A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553118(P2011−553118)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/026271
【国際公開番号】WO2010/102148
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】