説明

改善された効能、安定性および安全性を有する疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジン

本明細書では式(I)の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンおよびその医薬上許容される塩を提供する。変数のR、Rj、R2、R3およびR4は本明細書で定義される。本明細書で提供する特定の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドを体内の親水性または疎水性領域に標的化させるプロドラッグとして作用する。本明細書では、疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジン、および担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。細菌感染症、真菌感染症および/またはウイルス感染症を治療または予防する方法、ならびにプロテインキナーゼC調節、トポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼII調節に応答する疾患および障害を治療する方法を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年7月31日出願の米国仮出願番号第60/834,375号(その全体を参照により本明細書に組み込む)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本明細書では疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンを提供する。本明細書で提供する特定の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドを体内の親水性または疎水性領域に標的化させるプロドラッグとして作用する。本明細書では、疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンおよび担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。細菌感染症を治療または予防する方法、およびプロテインキナーゼC調節、トポイソメラーゼIおよび/またはII調節に応答する疾患および障害を治療する方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドは、何世紀にもわたって知られている薬剤として活性な天然由来の化合物の部類である。よく知られているベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドには、サンギナリン、ケレリスリン、ニチジンおよびファガロニンが含まれる。
【0004】
ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドのいくつかについてはその薬剤としての有用性が実証されている。サンギナリンおよびケレリスリンは、プロテインキナーゼC(PKC)アンタゴニスト活性、抗菌活性および抗真菌特性を有する。これらの化合物は、歯周病を治療し、歯垢を減らすのに用いられる抽出物の主成分である。血根草(Sanguinaria)抽出物(約50%のサンギナリンと25%のケレリスリンとを含む)は、市販の洗口剤や練り歯磨きに用いられている。ニチジンおよびファガロニンは抗癌活性を有しており、臨床試験で研究がなされている。心血管系毒性によって、抗癌剤としてのニチジンの開発は限られたものとなっている。
【0005】
一般に、フェナントリジニウムアルカロイドは強い細胞毒性を有しており、いくつかの他の受容体および酵素、特にプロテインキナーゼの活性なトポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼII阻害剤ならびに調節剤である。ケレリスリンはDNA付加物を安定化させないが、この部類の他のものはDNA付加物を安定化させる。
【0006】
ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドはすべてに共通してフェナントリジンコア構造を有しており、かつ共通して第四級窒素をさらに有している。ジヒドロ類似体への還元によって著しい薬理活性の低下がもたらされるので、第四級窒素および分子平面性は、これらのアルカロイドに伴う高い薬理学的効果に関わっていると考えられている。
【0007】
第四級窒素はこれらのアルカロイドに固有の化学反応性を付与する。求核剤は、隣接炭素と容易に付加して中性の疑似塩基を生成することができる。水はケレリスリンと不安定な付加物を形成し、これはNMR試験により確認することができる。さらに、6−メトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリンおよび6−エトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン(アルタリン(Artarine))は、メタノールおよびエタノール抽出による植物からのケレリスリンの単離の際に生成する副生成物として報告されている。この部類の化合物の、第四級炭素へ変換可能な疑似塩基を生成する能力は、生物学的媒体中での生成疑似塩基の溶解性、第四級となる位置に隣接する離脱基の塩基度、ならびに置換剤の芳香族置換パターンおよび特性(電子供与性または電子求引性)に依存する。サンギナリンは、pH7.4の水中でケレリスリンより多くヒドロキシル疑似塩基を生成する。塩基性の水性条件下では、ケレリスリンのヒドロキシ疑似塩基は二量体化して、環窒素に隣接する炭素に結合した、2つのケレリスリン分子間のエーテル架橋を形成する。このエーテルは、溶解度が非常に小さく、その低溶解度のため、模擬胃液中で容易にはケレリスリンに変換されない。ケレリスリン二量体を0.1N HCL中に入れ30%メタノールを加えると、ケレリスリンへの変換が急速に起こる。
【0008】
サンギナリンおよびケレリスリンの疑似アルコラート(メトキシおよびエトキシ)は、これらの化合物の親アルカロイドより強力な抗菌剤である。メトキシ、エトキシおよびシアノサンギナリン疑似塩基は、抗菌性アッセイにおいて、サンギナリンより約2倍強力である。ケレリスリンのメトキシおよびエトキシ疑似アルコラートの粗混合物も、抗菌性アッセイにおいて、親化合物より高い効能を示す。これらの疑似アルコラートは、その親フェナントリジニウムアルカロイドについてのプロドラッグとして働くと考えられているが、ニチジンの疑似アルコラート(メタノールおよびエタノール)は白血病アッセイにおいて親化合物ニチジンより活性が低いため、この仮説は一般的なものではない。親油性の疑似塩基は中性であり、親アルカロイドより、細胞膜や血液/脳関門を通過する受動拡散の能力が高い。一旦、細胞の内部や膜内の適切なミクロ環境に入ると、疑似塩基は親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドに変換されて、高い効能および/または安全性が得られるようである。受容体、酵素、および血液中の細胞種類に活性を与え、親フェナントリジニウムアルカロイドより高い選択性を有する極性疑似塩基フェナントリジンを合成することができる。ある種の例では、活性な薬剤のプロドラッグは非常に望ましい特性を有する。例えば、プロドラッグは優れた効能と安全性とを提供し得る。したがって、フェナントリジニウムアルカロイドのプロドラッグは非常に望ましいものである。本発明はこのような化合物を提供し、また、他の利点も提供するものであり、これらについては本明細書で説明する。
【発明の概要】
【0009】
第1の実施形態は、式Iの化合物または医薬上許容されるその塩を提供する。
【化1】

式中、
およびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはC〜Cアルキルエステルであるか、またはRおよびRは−O−CH−O−基によって連結されている。
は水素またはメトキシである。
およびRは、独立に、メチルもしくは水素であるか、またはRおよびRは結合して、さらなるヘテロ原子を含まない5員複素環を形成している。
Rは、(i)式−ABで表される基(式中、Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−OS(O)−、−NR(S=O)NR−、−O(C=O)−、−NR(C=O)NR−であり、mは、0、1もしくは2であり、Bは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(炭素環)C〜Cアルキル、もしくは(複素環)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−もしくはジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されているか、または、Bは5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルであり、但し、Aが−O−である場合、Bは、C〜Cアルキル、n−プロピル、またはアセチルではない)
である。
あるいは、Rは、(ii)
【化2】

である。
あるいは、Rは、(iii)少なくとも1個の窒素環員、ならびにN、OおよびSから独立に選択される0、1もしくは2個のさらなる環員を有する5員ヘテロアリール基であって、その5員ヘテロアリール基が窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノおよびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている5員ヘテロアリール基である。
あるいは、Rは、(iv)窒素原子を介して結合している5員または6員ヘテロシクロアルキル基であって、そのヘテロシクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ならびに5〜6員ヘテロシクロアルキルから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基である。
、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素であるか、またはC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキル、もしくは(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている。
【0010】
本明細書では、医薬上許容される担体と共に、式Iの化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物も提供する。
【0011】
本明細書では、ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドを用いて効果的に治療できる疾患を治療するかまたは予防するための改善された方法を提供する。本明細書では、有効量の式Iの化合物を哺乳動物に投与することを含む哺乳動物の細菌感染症を治療するかまたは予防する方法を提供する。本明細書では、有効量の式Iの化合物または塩を患者に投与することを含む、双極性障害、統合失調症の陰性症状、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、癌、AIDS、リウマチ性関節炎に罹患した患者を治療する方法も提供する。
【0012】
(発明の詳細な説明)
化学的記述および用語
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で用いる特定の用語の定義を提供することは有益であろう。本発明の化合物は標準的な命名法を用いて説明する。別段の指定のない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0013】
式Iはそのすべての下位式を含む。例えば、式Iは本明細書で開示される式II、IIIおよび1〜6の化合物を含む。文脈によって明らかに禁忌でない限り、各化合物名は、その化合物の遊離酸形または遊離塩基形、ならびに、その化合物の水和物、およびその化合物のすべての医薬上許容される塩を含む。
【0014】
「1つ(a)」および「1つ(an)」という用語は量の限定を示すものではなく、言及されている項目が少なくとも1つ存在することを示す。「または(or)」という用語は「および/または」を意味する。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」という用語は、非制限的用語(すなわち、「これらに限定されないが、〜を含む」を意味する)と解釈されるべきものである。数値の範囲への言及は、本明細書で別段の指定のない限り、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡便な方法としての役目を単に果たすようにするものであり、各別個の値は、それが本明細書に個別に挙げられているかのように本明細書に組み込まれる。すべての範囲の端点はその範囲に含まれ、かつ独立に組み合わせることができる。本明細書で説明するすべての方法は、本明細書で別段の指定のない限りまたは文脈と明らかに相反しない限り、適切な順番で実施することができる。任意かつすべての例、または例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく説明しようとするためのものであり、別段の主張のない限り、本発明の範囲に制限を加えようとするものではない。本明細書におけるどの語句も、特許請求の範囲に記載されていない要素が、本明細書で用いる本発明の実施に必須であることを示していると解釈されるべきものではない。別段の指定のない限り、本明細書で使用する技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0015】
「活性薬剤」は単独か、または別の化合物、要素もしくは混合物と組み合わせて患者に投与した場合に、患者に対して直接的または間接的に生理学的効果を与える化合物(本発明の化合物を含む)、要素または混合物を意味する。間接的な生理学的効果は、代謝産物または他の間接的機序を介して生じることがある。活性薬剤が化合物である場合、遊離化合物の塩、溶媒和物(水和物を含む)、化合物の結晶形態、非結晶形態、および任意の多形体が含まれる。
【0016】
ある種の状況下では、式Iの化合物は、立体中心、立体軸等の、1つまたは複数の不斉要素、例えば不斉炭素原子を含むことができ、それによってその化合物は、様々な立体異性体で存在することができる。これらの化合物は、例えばラセミ化合物または光学活性体であってよい。2つ以上の不斉要素を有する化合物については、これらの化合物は、さらに、ジアステレオマーの混合物であってもよい。不斉中心を有する化合物については、光学異性体およびその混合物のすべてが包含されるものと理解されたい。さらに、炭素−炭素二重結合を有する化合物はZ型およびE型であってよく、これらの化合物のすべての異性体が本発明に含まれる。このような場合、単一の鏡像異性体すなわち光学活性体は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ化合物の分割によって得ることができる。ラセミ化合物の分割は、例えば分割剤の存在下での結晶化、または例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィーなどの慣用的方法によって実施することもできる。
【0017】
化合物が様々な互変異性型で存在する場合、本発明は、特定の互変異性体のどれにも限定されず、すべての互変異性型を含むものとする。
【0018】
本発明は、本明細書で述べる化合物において存在する原子のすべての同位元素を含むものとする。同位元素には、原子番号は同じであるが異なる質量数を有する原子が含まれる。一般的な例としては、これらに限定するものではないが、水素の同位元素には三重水素および重水素が含まれ、炭素の同位元素には11C、13Cおよび14Cが含まれる。
【0019】
「医薬上許容される塩」は、その非毒性の酸または塩基の塩を作製することによってその親化合物が改変されている、開示されており化合物の誘導体を含み、さらに、このような化合物および塩の薬剤として許容される溶媒和物を指す。医薬上許容される塩の例には、(それだけに限らないが)アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩等が含まれる。医薬上許容される塩には、例えば非毒性の無機酸または有機酸から生成した、親化合物の通常の非毒性塩および第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、通常の非毒性酸塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導される塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC−(CH−COOH(nは0〜4である)などの有機酸から調製される塩等が含まれる。本発明の医薬上許容される塩は、通常の化学的方法によって、親化合物、塩基性部分または酸性部分から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形を化学量論量の適切な塩基(Na、Ca、MgまたはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩または同種のものなど)と反応させることによってか、または、これらの化合物の遊離塩基形を、化学量論量の適切な酸と反応させることによって調製することができる。このような反応は一般に、水もしくは有機溶媒、またはこの2つの混合液中で実施される。実施可能であれば、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。他の適切な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1418頁(1985年)に記載されている。
【0020】
本明細書では、変数、例えばR、R、RおよびRを含む一般式を用いて一定の化合物を記載する。別段の指定のない限り、各変数は式中の他の各変数とは独立に定義される。したがって、ある基が例えば0〜2個のRで置換されているとした場合、前記基は最大で2個のR基で置換されていてよく、Rはその存在毎に独立に選択される。また、このような組合せが安定した化合物をもたらす場合に限り、置換基および/または変数の組合せも許容される。安定した化合物は、反応混合物からの単離、およびそれに続く効果的な治療薬への製剤化を乗り切るのに十分に強固な化合物である。
【0021】
本明細書で用いる「置換された(substituted)」という用語は、表示された原子または基のいずれか1つまたは複数の水素を、示された基から選択して置き換えることを意味する。但し、表示された原子の本来の原子価数は超えないものとする。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。芳香族部分が1個のオキソ基で置換されている場合、芳香族環は、対応する部分的不飽和環で置き換えられる。例えば、オキソで置換されたピリジル基はピリドンである。置換基および/または変数の組合せは、このような組合せにより安定した化合物または有用な合成中間体がもたらされる場合のみ許容される。
【0022】
2つの文字または記号の間ではないダッシュ記号(「−」)は、置換基についての結合点を示すのに用いられる。例えば、−(CH)C〜Cシクロアルキルは、メチレン(CH)基の炭素を介して結合される。
【0023】
「アルキル」は、表示された数の炭素原子、一般に1〜約8個の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。本明細書でC〜Cアルキルを他の基と一緒に用いる場合(例えば(炭素環)C〜Cアルキル)、示された基(この場合、炭素環)は単一の共有結合(C)で直接結合されるか、または、表示された数の炭素原子(この場合1〜約4個の炭素原子)を有するアルキル鎖によって連結されている。アルキルの例には、(それだけに限らないが)メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、3−メチルブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびsec−ペンチルが含まれる。好ましいアルキル基は1〜約6個の炭素原子、または1〜約4個の炭素原子を有するもの、例えばC〜CおよびC〜Cアルキル基である。
【0024】
本明細書で用いる「アルケニル」は、鎖に沿って任意の安定な結合点において存在してよい1つまたは複数の不飽和炭素−炭素結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。本明細書で記載するアルケニル基は一般に、2〜約8個の炭素原子を有する。好ましいアルケニル基は、2〜約6個または2〜約4個の炭素原子を有するアルケニル基、例えばC〜C、C〜CおよびC〜Cアルケニル基である。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニルおよびブテニル基が含まれる。
「アルキニル」は、鎖に沿って任意の安定な結合点において存在してよい1つまたは複数の三重炭素−炭素結合を含む直鎖かまたは分岐鎖構造の炭化水素鎖、例えばエチニルおよびプロピニルなどを示す。アルキニル基は、一般的に2〜約8個の炭素原子、より一般的には2〜約6個の炭素原子を有する。
【0025】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合した表示された数の炭素原子を有する上記定義のアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、2−ペンチル、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、3−メチルペントキシ等を意味する。本明細書で好ましいアルコキシ基はC〜Cアルコキシ基である。
【0026】
「アルキルエステル」は、エステル結合を介して結合した上記定義のアルキル基である。エステル結合はいずれの方向、例えば、式−O(C=O)アルキルの基であってもよいし、式−(C=O)Oアルキルの基であってもよい。
【0027】
「アルカノイル」は、ケト(−(C=O)−)架橋を介して結合した上記定義のアルキル基である。アルカノイル基は表示された数の炭素原子を有し、ケト基の炭素はその炭素原子の数に含まれる。例えばCアルカノイル基は式CH(C=O)−を有するアセチル基である。
【0028】
「モノ−およびジ−(アルキル)アミノ」は第二または第三アルキルアミノ基であり、そのアルキル基は上記定義通りであり、かつ表示された数の炭素原子を有する。アルキルアミノ基の結合点は窒素上にある。モノ−およびジ−アルキルアミノ基の例には、エチルアミノ、ジメチルアミノおよびメチル−プロピル−アミノが含まれる。
【0029】
「炭素環」は、炭素環員のみを含む、1〜3個の縮合環、ペンダント(pendant)環またはスピロ環を有する。一般に炭素環は、3〜8個の環員(特定の実施形態では、4個または5〜7個の環員を有する環が挙げられる)を含み、縮合環、ペンダント環またはスピロ環を含む炭素環は一般に、9〜14個の環員を含む。別段の指定のない限り、炭素環は、シクロアルキル基(すなわち、各環は飽和している)、部分的に飽和した基、またはアリール基(すなわち、その基内の少なくとも1つの環は芳香族である)であってよい。炭素環基は一般に、安定した化合物が得られる限り、任意の環原子または置換基原子を介して結合していてよい。表示されている場合、4〜7員または5〜7員の基などの炭素環基は置換されていてよい。代表的な芳香族炭素環はフェニル、ナフチルおよびビフェニルである。特定の実施形態では、好ましい炭素環は、フェニルまたは3〜7員シクロアルキル基などの単一の環を有する炭素環である。
【0030】
炭素環は、直接結合していてもよいし、また、表示された結合基を介して結合していてもよい。例えば、本明細書で説明するいくつかの実施形態では、(炭素環)アルキル置換基が存在する。それぞれの場合、「炭素環」は上記の定義を有し、かつ上記の定義を有するアルキル基と共有結合している。
【0031】
「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルなどの、表示された数の炭素原子を有する飽和環基を意味する。C〜C10シクロアルキル基は3〜10環員を有し、1または2個のシクロアルキル環を有する。好ましいシクロアルキル基は3〜8環員、より好ましくは3〜7環員を有し、単一の環を有する。
【0032】
「(シクロアルキル)アルキル」または(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキルは、単一の共有結合(Cアルキル)を介するか、または表示された数の炭素原子を有するアルキル架橋を介して結合した上記定義のシクロアルキル基を意味する。
【0033】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0034】
「ハロアルキル」は、1個または複数のハロゲン原子で置換された分岐鎖または直鎖のアルキル基である(例えば、「C〜Cハロアルキル」基は1〜2個の炭素原子を有する)。ハロアルキル基の例には、(それだけに限らないが)モノ−、ジ−およびトリ−フルオロメチル;モノ−、ジ−およびトリ−クロロメチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ−フルオロエチル;およびモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−クロロエチルが含まれる。典型的なハロアルキル基は、トリフルオロメチルおよびジフルオロメチルである。
【0035】
「ハロアルコキシ」は、酸素架橋を介して結合した、上記定義のハロアルキル基を指す。「C〜Cハロアルコキシ」基は1〜2個の炭素原子を有する。典型的なハロアルコキシはトリフルオロメトキシである。
【0036】
「複素環」は、その少なくとも1つの環原子がヘテロ原子(すなわち、N、OまたはS)であり、その環原子の残りが炭素である少なくとも1つの環を含む基である。このような環は複素環と称される。複素環は1〜4個のヘテロ原子を含むことが好ましい。特定の実施形態では、1または2個のヘテロ原子が好ましい。複素環は一般に、1〜3個の縮合環またはペンダント環(そのうちの少なくとも1つは複素環である)を含む。複素環は好ましくは1個の環または2個の縮合環を含む。一般に、各環は3〜8環員(好ましくは5〜7環員)を含む。縮合環またはペンダント環を含む複素環は一般に、9〜12環員を含む。1個の複素環または2個の縮合環(合計3〜10個の環員について、そのうちの少なくとも1つは複素環である)を含む3〜10員複素環基が好ましい。5〜10員複素環基が特に好ましい。特定の実施形態では、単一の環と、N、OおよびSから独立に選択される1個または2個のヘテロ原子とを有する5〜7員複素環基が特に好ましい。複素環は、炭素環について上記した1個または複数の置換基で任意に置換されていてよい。別段の指定のない限り、複素環は、飽和(すなわち、上記したようなヘテロシクロアルキル)、部分飽和、または芳香族(ヘテロアリール)であってよい。
【0037】
「ヘテロアリール」は、炭素原子と、N、OおよびSから独立に選択される1〜4個のヘテロ原子とからなる安定した5〜7員単環式または7〜10員の二環式複素芳香族環構造を意味するものとする。ヘテロアリール基中のS原子とO原子の合計数は1以下であることが好ましい。「(ヘテロアリール)アルキル」という用語では、ヘテロアリールおよびアルキルは上記定義通りであり、結合点はアルキル基上である。
【0038】
ヘテロアリール基の例には、(それだけに限らないが)オキサゾリル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾリル、ピリジジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、ピラゾリル、チオフェニル、トリアゾリル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサジアゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、フラニル、イミダゾリル、インドリルおよびイソオキサゾリルが含まれる。
【0039】
好ましいヘテロアリール基には、イミダゾリル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジニルおよびオキサゾリルが含まれる。
【0040】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの環員がヘテロ原子(すなわち、N、SまたはO)であり、残りの環員が炭素である飽和環基を意味する。ヘテロシクロアルキル基は一般に3〜10個の環員、好ましくは8個、より好ましくは5〜7個の環員を含む。ヘテロシクロアルキル基は、一般に1〜3個のヘテロ原子を有し、ヘテロシクロアルキル基中には1個以下のS原子と1個のO原子とが存在することが好ましい。好ましいヘテロシクロアルキル基は5員または6員ヘテロシクロアルキル基、例えばモルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チオモルホリニルおよびピロリジニルである。
【0041】
「(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル」は、単一の共有結合(Cアルキル)を介するか、または表示された数の炭素原子を有するアルキル架橋を介して結合された上記定義のヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0042】
本発明の化合物の「有効量」という用語は、哺乳動物に投与した場合、症状の改善などの治療的有用性を提供するのに効果的な量、例えば疾患の症状を低減するのに効果的な量を意味する。特定の実施形態では、有効量は、癌の症状を緩和し、生物中の検出可能な癌性細胞の数を減少させ、癌性腫瘍の増殖を検出できる形で遅くするかまたは停止させるのに十分な量、あるいは、より好ましくは癌性の腫瘍を縮小させるのに十分な量である。ある種の状況下では、疾患または障害に罹患した患者は、侵されている症状を示さない可能性がある。したがって、治療有効量の化合物は、患者の血液、血清または組織中における検出可能なレベルの疾病マーカーの有意な増大を阻止するかまたはそれを有意に低下させるのに十分な量でもある。検出可能なレベルの疾病マーカーの有意な増大または低下は、スチューデントT−検定などの統計的有意性の標準的なパラメータ試験において統計的に有意な(p<0である)何らかの検出可能な変化である。
【0043】
本明細書で用いる「治療」は、(a)その疾患にかかりやすいが、かかっているとは診断されていない患者において、疾患または疾患の症状が発生するのを予防し、(b)その疾患を抑制する、すなわちその進行を阻止し、かつ、(c)その疾患を緩和させる、すなわち疾患の後退をもたらすのに十分な、式で示す化合物を提供することを含む。
【0044】
疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジン
フェナントリジニウムアルカロイドの適切な疑似塩基は、親ベンゾ[c]フェナントリジニウムより低い毒性を有する。疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、親油性領域を「標的化し」、脳内または細胞内へとより効果的に通過して所望の作用部位に分布するのに有用である。
【0045】
疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、生体媒質中で平衡
【化3】

を確立できる弱い求核剤(RH)を、適切な溶媒中で親ベンゾ[c]フェナントリジニウムと反応させると生成すると考えられる。求核剤の相対的な求核性の強度を一般的にカテゴリー化することはできないが、その強度は、化合物の塩基度とある程度相関させることはできる。したがって、本明細書では、弱塩基である化合物を弱い求核剤であるということができる。本明細書で用いる弱い求核剤は一般に、水に対して約8〜25、水に対して約8〜約20、好ましくは水に対して約8〜20、より好ましくは水に対して10〜22、より好ましくは水に対して約10〜18の解離定数すなわちイオン化定数[pKa]値を有する。
【0046】
誘導体化剤が弱い求核剤である限り、疑似塩基とフェナントリジニウムアルカロイド(親)との間に有用な平衡が樹立される。この平衡は、周囲の親油性、pH、および所望の作用部位またはその周辺に存在する可能性のある任意の内因性求核剤の影響を受けることになる。したがって、本明細書で説明する特定の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、疑似塩基を標的化して作用部位に選択的に分配し、次いで効能を有する種に戻るようにすることによって、優れた効能および安全性指標を提供する。対照的に、親フェナントリジニウムアルカロイドは、投与されると、別の方法で身体中に分配される。したがって、所望の効能対毒性プロファイルが示されることは少ない。本明細書で説明する特定の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンはまた、他の経路(すなわち、経口、非経口、経皮、皮下注射、または坐薬等)で投与された場合、異なる選択性と向上した安全性指標も示す。様々な経口剤形、例えば腸溶性コーティング剤形、即時放出剤形および持続放出剤形もまた、投与された場合、異なる選択性と向上した安全性指標を示す。
【0047】
ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイド、「親フェナントリジニウム」の例には、十分に特性評価がなされている化合物のニチジン、ファガロニン、ケレリスリン、およびサンギナリンが含まれる。そのすべては一般式
【化4】

【表1】

を有する。
【0048】
式Iの特定の好ましい化合物は、nm/sで測定される、その親フェナントリジニウムより高い細胞膜透過度を示す。細胞膜透過度は、実施例3で示すCaco−2アッセイなどの、細胞膜を通過する拡散についての標準的アッセイで測定することができる。
【0049】
細胞膜透過度の予測はLogD測定によっても得ることができる。
【0050】
n−オクタノール−水分配係数(logP)は、平衡状態および特定の温度でのオクタノール中と水中との化合物濃度の比である。LogPは、分子の疎水性の尺度として用いることができる。疎水性は、薬物の吸収や生物学的利用能に影響を及ぼすことが知られている。LogPは通常、非イオン性化合物について用いられる。これに対して、logDはイオン化した形態および中性の形態の分子について説明するのに用いられる。LogDは、所与の温度、通常25℃におけるオクタノール中の分子のすべての種(イオン種および非イオン種)と水相中の同じ種との平衡濃度の比である。LogDは、logD=Σ[Coct/Σ[Caqと定義される。但し、octはオクタノール相であり、aqは水相である。したがって、本明細書では、親フェナントリジニウムと比較した場合、25℃でのn−オクタノール−水分配係数(logD)がより大きい、式Iの特定の好ましい化合物を提供する。
【0051】
本明細書で説明する式Iの特定の化合物は、その親フェナントリジニウムより高い安定性とより長い保存寿命を有する。安定性は、MS、NMR、または他の分析技術で測定される、化合物の化学的同一性の一定性で判断され得る。本明細書で説明する化合物は、室温で1年間、無色のままで維持され(親フェナントリジニウムは明るい色である)、かつ安定に維持される。
【0052】
上記「発明の概要」で開示した式Iの化合物およびその医薬上許容される塩に加えて、以下の条件の1つまたは複数が満たされる式Iの化合物
【化5】

も提供する。
【0053】
変数RおよびR
特定の実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、メチル、またはメトキシである。
【0054】
本明細書で提供する他の実施形態では、RおよびRは−OCHO−基によって連結されている。すなわち、式IIの化合物または塩
【化6】

を形成する。
【0055】
いくつかの実施形態では、RおよびRはどちらもメトキシであり、Rは水素であるか、または、Rは水素であり、RおよびRはどちらもメトキシである。
【0056】
変数RおよびR
本明細書で提供する特定の実施形態では、RおよびRは−CH−によって連結されている。すなわち、式IIIの化合物
【化7】

を形成する。
【0057】
本発明は、式IIIの化合物を含み、
式中、
およびRがどちらもメトキシであり、Rが水素であるか、または、Rが水素であり、RおよびRがどちらもメトキシであり、
Rが、(i)式−ABで表される基(式中、Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S−、または−O(C=O)−であり、Bは、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ピリジル)C〜Cアルキル、(イミダゾリル)C〜Cアルキル、(チアゾリル)C〜Cアルキル、または(ピリミジニル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立に選択される0〜2個の置換基で置換されている)
である。
【0058】
変数R
本明細書では、Rが、(i)式−ABで表される基(AおよびBはこれらの変数についての上記定義を有する)である式Iの化合物および塩を提供する。
【0059】
特定の実施形態では、Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、または−O(C=O)である。
【0060】
式中Bが、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換された、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、または(ヘテロアリール)C〜Cアルキルである実施形態もまた含まれる。式中Bが5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルである実施形態もまた含まれる。
【0061】
式中Bが、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換された、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ピロリジニル)C〜Cアルキル、(ピペリジニル)C〜Cアルキル、(ピペラジニル)C〜Cアルキル、(モルホリニル)C〜Cアルキル、(ピリジル)C〜Cアルキル、(チエニル)C〜Cアルキル、(ピロリル)C〜Cアルキル、(フラニル)C〜Cアルキル、(イミダゾリル)C〜Cアルキル、(チアゾリル)C〜Cアルキル、(ピリミジニル)C〜Cアルキル、または(ピラジニル)C〜Cアルキルである実施形態もさらに含まれる。
【0062】
本明細書では、Rが、(ii)次式の基
【化8】

である式Iの化合物または塩を提供する。
特定の実施形態では、Rは
【化9】

であり、式中、Rは水素であり、RおよびRは、独立に、C〜Cアルキルまたは非置換のフェニルである。
【0063】
式中Rが、(iii)少なくとも1個の窒素環員、ならびにN、OおよびSから独立に選択される0、1または2個のさらなる環員を有する5員ヘテロアリール基であって、その5員ヘテロアリール基が窒素原子を介して結合されており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている5員ヘテロアリール基である、式Iの化合物または塩もまた提供する。これらの実施形態のいくつかでは、Rはピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、またはイソオキサゾリルであり、そのそれぞれは、窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている。
【0064】
式中Rが、(iv)窒素原子を介して結合した5員または6員ヘテロシクロアルキル基であって、そのヘテロシクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、およびヘテロシクロアルキルから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基である、式Iの化合物または塩もまた提供する。これらの実施形態のいくつかでは、Rは、モルホリニル、ピペリジニル、またはピロリジニルであり、そのそれぞれは、窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、およびピペリジニルから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている。
【0065】
特定の実施形態では、弱い求核剤Rのプロトン化した形態であるRHは、水に対して8〜20のPKaを有する。特定の好ましい実施形態では、RHは水に対して10〜18のPKaを示す。
【0066】
変数R、R、R、RおよびR10
本明細書では、式中R、R、R、RおよびR10が、独立に、水素であるか、または、C〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、もしくは(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜2個の置換基で置換されている、式Iの化合物および塩を提供する。
【0067】
特定の実施形態では、R、R、R、RおよびR10は、独立に、水素またはC〜Cアルキルである。
【0068】
特定の実施形態では、R、R、R、RおよびR10は、独立に、水素であるか、または、C〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、もしくは(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜2個の置換基で置換されている。
【0069】
他の実施形態では、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素またはC〜Cアルキルである。
【0070】
医薬製剤
本明細書では、少なくとも1つの医薬上許容される担体と共に、式Iの化合物またはその形態物(form)を含む医薬組成物を提供する。
【0071】
特定の実施形態では、医薬組成物は、注射用流体、エアロゾル、クリーム剤、ゲル剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、シロップ剤、点眼薬、または経皮貼布剤として製剤化される。
【0072】
本発明の化合物、塩、および他の任意の医薬上許容される形態は、化合物をそのままで投与することができるが、医薬組成物または製剤として投与することが好ましい。したがって、本発明は、1種もしくは複数の医薬上許容される担体(例えば、賦形剤、補助剤(adjuvants)、希釈剤)または他の成分と共に、式Iの化合物または医薬上許容される形態を含む医薬製剤を提供する。
【0073】
薬剤用担体は、治療を受ける動物への投与に適切にするために、純度が十分に高くかつ毒性が十分に低いものでなければならない。担体は不活性なものであってもよいし、また医薬上の利益を有するものであってもよい。化合物と一緒に用いられる担体の量は、化合物の単位用量当たり、投与のための実際的な量の材料を提供するのに十分な量である。
【0074】
例示的な医薬上許容される担体またはその成分は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカントゴム;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸やステアリン酸マグネシウムなどの固体の滑沢剤;硫酸カルシウム;合成油;ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;アルギン酸;リン酸緩衝液;TWEENなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;矯味剤;錠剤化剤;安定剤;酸化防止剤;保存剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;ならびにリン酸緩衝液である。
【0075】
本発明の化合物の活性を実質的に妨げない任意選択の活性薬剤を、医薬組成物中に含めることができる。
【0076】
医薬上許容されるその塩、エステルまたは他の誘導体を含む、有効濃度の式Iの化合物の1つまたは複数を、適切な薬剤用担体と混合する。その化合物の溶解度が不十分である場合、化合物を可溶化させる方法を用いることができる。このような方法は当業者に知られており、(それだけに限らないが)ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒、TWEENなどの界面活性剤、またはシクロデキストリン担体を使用する方法が含まれる。化合物の塩または化合物のプロドラッグなどの化合物の誘導体もまた、効果的な医薬組成物を製剤化するのに使用することができる。
【0077】
本発明の化合物を混合するかまたは添加する場合、得られる混合物は、溶液、懸濁液、乳液などであってよい。得られる混合物の形態は、意図される投与様式、および選択された担体またはベヒクル中での化合物の溶解度を含む多くの因子に依存する。治療される疾患、障害または病態の症状を軽減するのに十分に有効な量は、経験的に決定することができる。
【0078】
本明細書で説明する特定の化合物は、投薬単位製剤で、経口、局所、非経口、静脈内、筋肉内注射、吸入法または噴霧法、舌下、経皮、頬側投与(buccal administration)を介して、経直腸で、点眼薬として、または他の手段により投与することができる。
【0079】
経口使用に適した投与製剤には、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ錠(lozenges)、水性および油性懸濁剤、分散性散剤または顆粒剤、乳剤、硬質もしくは軟質のカプセル剤、ならびにシロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。経口使用のための組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で知られている任意の方法で調製することができる。薬剤として洗練された口当たりのよい製剤を提供するために、このような組成物は、甘味剤、矯味剤、着色剤、および保存剤などの1種または複数の物質を含むことができる。経口製剤は、0.1〜99%の本発明の化合物、通常少なくとも約5%(重量%)の本発明の化合物を含む。いくつかの実施形態では、約25%〜約50%または5%〜75%の本発明の化合物が含まれる。
【0080】
経口投与される組成物には、液剤、乳剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤等も含まれる。このような組成物の調製に適した医薬上許容される担体は当技術分野でよく知られている。経口製剤は、保存剤、矯味剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、風味マスキング剤、および着色剤を含むことができる。
【0081】
シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤のための担体の典型的な成分には、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール、および水が含まれる。シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースを用いて製剤化することができる。このような製剤はまた、粘滑剤(demulcent)を含むこともできる。
【0082】
経口投与される液体製剤
本明細書で説明する特定の化合物は、例えば水性もしくは油性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤、またはエリキシル剤などの経口液体製剤中に混ぜ込むことができる。さらに、これらの化合物を含む製剤は、使用前に水または他の適切なベヒクルで構成するための乾燥製品として提供され得る。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、メチルセルロース、グルコース/糖、シロップ剤、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水素添加食用硬化油脂)、乳化剤(例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴム)、食用油を含むことができる非水性ベヒクル(例えば、アーモンド油、ヤシ油、シリルエステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコール)、ならびに保存剤(例えば、メチルp−ヒドロキシ安息香酸またはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸、およびソルビン酸)などの通常の添加剤を含むことができる。
【0083】
懸濁剤
懸濁剤については、典型的な懸濁化剤には、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC−591、トラガカントゴム、およびアルギン酸ナトリウムが含まれ、典型的な湿潤剤には、レシチンおよびポリソルベート80が含まれ、典型的な保存剤には、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが含まれる。
【0084】
水性懸濁剤は、活性物質を、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合して含むことができる。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり、分散剤または湿潤剤は、天然のフォスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトール置換体(substitute)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタン置換体であってよい。水性懸濁剤はまた、1種または複数の保存剤、例えばエチルp−ヒドロキシ安息香酸またはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸を含むこともできる。
【0085】
油性懸濁剤は、活性成分を、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁させて製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えばミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含むことができる。上記の甘味剤、および矯味剤を加えて、口当たりのよい経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えて保存することができる。
【0086】
乳剤
本明細書で説明する化合物の医薬組成物はまた、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然のゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然のフォスファチド、例えば大豆レシチン、および脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレアート、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい。
【0087】
分散性散剤
水を加えて水性懸濁剤を調製するのに適した分散性散剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1種もしくは複数の保存剤と混合して活性成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、すでに上記したもので例示されている。
【0088】
錠剤およびカプセル剤
錠剤は一般に、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース、およびセルロースなどの不活性希釈剤;デンプン、ゼラチン、およびスクロースなどの結合剤;デンプン、アルギン酸、およびクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクなどの滑沢剤として薬剤適合性のある通常の補助剤を含む。粉末混合物の流動特性を改善するために、二酸化ケイ素などの流動促進剤を用いることができる。外観をよくするために、FD&C染料などの着色剤を加えることができる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、および果実フレーバーなどの甘味剤や矯味剤は、チュアブル錠剤のための有用な補助剤である。カプセル剤(時限放出型製剤および持続放出型製剤を含む)は、一般に、上記に開示の1種または複数の固体希釈剤を含む。担体成分の選択はしばしば、風味、コスト、および貯蔵安定性のような二次的な考慮事項にもよる。
【0089】
このような組成物はまた、従来の方法、一般にpHまたは時間依存性のコーティング剤でコーティングし、それによって本発明の化合物を、所望の局所適用部位の近傍で、または所望の作用を延長するために様々な時点において、胃腸管中で放出するようにコーティングすることもできる。このような剤形は一般に、(それだけに限らないが)セルロースアセタートフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、エチルセルロース、Eudragitコーティング剤、ワックス、およびセラックの1つまたは複数を含む。
【0090】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合された硬質ゼラチンカプセル剤として、あるいは、活性成分が水もしくは油性媒体、例えばラッカセイ油、流動パラフィン、またはオリーブ油と混合された軟質ゼラチンカプセル剤として提供され得る。
【0091】
腸溶性コーティング剤形
【0092】
親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドへの変換に対して疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンを保護する腸溶性コーティング製剤もまた、特に望ましい。
【0093】
腸溶コーティングは、その剤形が小腸に達するまで活性薬剤の放出を防ぐコーティングであることが好ましい。腸溶性コーティング剤形は、腸溶性ポリマーでコーティングされた式Iの化合物を含む。腸溶性ポリマーは非毒性でなければならず、腸液では大部分溶けるが胃液ではほとんど溶けない。例としては、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースアセタートスクシナート(HPMCAS)、セルロースアセタートフタラート(CAP)、メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシナート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートヘキサヒドロフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、セルロースプロピオナートフタラート、セルロースアセタートマレアート、セルロースアセタートトリメリタート、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタートプロピオナート、メタクリル酸/メタクリラートポリマー(酸価300〜330、EUDRAGIT Lとしても知られている)、(これはメタクリラート系のアニオン性コポリマーであり、粉末として入手できる(メタクリル酸コポリマー、タイプA NFとしても知られている))、メタクリル酸−メチルメタクリラートコポリマー、エチルメタクリラート−メチルメタクリラート−クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリラートコポリマー等、および上記腸溶性ポリマーの1つまたは複数を含む組合せが含まれる。他の例には、セラックなどの天然樹脂、SANDARAC、コーパルコロホリウム(copal collophorium)、および上記ポリマーの1つまたは複数を含む組合せが含まれる。腸溶性ポリマーのさらに他の例には、カルボキシル基を有する合成樹脂が含まれる。「EUDRAGIT L−100−55」の商品名で市販されている、アクリルディスパージョンのメタクリル酸:アクリル酸エチルエステル 1:1コポリマー固体物質は、適切であり得る。
【0094】
一実施形態は、メタクリル酸型の腸溶性ポリマーと任意選択で可塑剤とを含む腸溶コーティング剤でコーティングされた、式Iの化合物を含む腸溶性コーティング剤形を提供する。腸溶コーティングは、その全重量に対して、約40重量%〜約95重量%の腸溶性ポリマー(例えば、EUDRAGIT L30D−55)と、約5重量%〜約60重量%の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール)とを含むことができる。成分の相対割合、特にメタクリル酸ポリマーと可塑剤との比は、薬剤製剤化の分野の技術者に知られている方法にしたがって変えることができる。
【0095】
注射用製剤および非経口製剤
医薬組成物は、滅菌した注射用の水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、上記したような適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当技術分野で知られている技術に従って、製剤化することができる。滅菌注射用製剤はまた、非経口的に許容される非毒性の希釈剤または溶媒中の滅菌した注射用の液剤または懸濁剤(例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として)であってもよい。使用できる許容可能なベヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、滅菌した固定油が通常、溶媒または懸濁媒体として用いられる。この目的のためには、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の無菌性固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射用製剤に有用である。
【0096】
本発明の化合物は、滅菌媒体中、非経口で投与することができる。非経口投与には、皮下注射、静脈内、筋肉内、髄腔内での注射または注入技術が含まれる。本発明の1つまたは複数の化合物は、用いられるベヒクルおよび濃度に応じて、ベヒクル中に懸濁しても溶解させてもよい。有利なことには、局部麻酔薬、保存剤、および緩衝剤などの補助剤をベヒクル中に溶解させることができる。非経口投与のための多くの組成物では、担体は、全組成物の少なくとも約90重量%を構成する。非経口投与のための好ましい担体には、プロピレングリコール、オレイン酸エチル、ピロリドン、エタノール、およびゴマ油が含まれる。
【0097】
坐薬
本明細書で説明する特定の化合物はまた、薬物を経直腸投与するために、坐薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温では固体であるが直腸温で液体であり、したがって直腸内で溶融して薬物を放出する、適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。このような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0098】
局所製剤
本明細書で説明する特定の化合物は、皮膚や、目などの粘膜への局所適用などの局部または局所適用のために、ゲル剤、クリーム剤、およびローション剤の形態で製剤化することができ、また、目への適用のために製剤化することができる。本発明の局所用組成物は、例えば液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、乳剤、洗浄剤(cleanser)、保湿剤、噴霧剤、皮膚用パッチ剤等を含む任意の形態であってよい。
【0099】
このような液剤は、適当な塩を用いたpH約5〜7の0.01%〜10%等張液として製剤化することができる。本発明の化合物はまた、経皮投与用に経皮貼布剤として製剤化することもできる。
【0100】
活性化合物を含む局所用組成物は、当技術分野でよく知られている様々な担体材料、例えば、水、アルコール、アロエベラジェル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA油およびビタミンE油、鉱油、プロピレングリコール、PPG−2ミリスチルプロピオナート等と混合することができる。
【0101】
局所担体に用いるのに適した他の材料には、例えば、皮膚軟化剤、溶媒、保湿剤、増粘剤、および粉末が含まれる。単独で用いても1つまたは複数の材料の混合物で用いてもよいこの種の材料のそれぞれの例は以下の通りである。
【0102】
皮膚軟化剤、例えばステアリルアルコール、モノリシノール酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ミンクオイル、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソ−ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン−2−オール、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、ジメチルポリシロキサン、セバシン酸ジ−n−ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、鉱油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、およびミリスチン酸ミリスチル;噴射剤、例えばプロパン、ブタン、イソ−ブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、および亜酸化窒素;溶媒、例えばエチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、ヒマシ油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン;保湿剤、例えばグリセリン、ソルビトール、ナトリウム 2−ピロリドン−5−カルボキシラート、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチル、およびゼラチン;ならびに粉剤、例えばチョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム、コロイド二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学的に修飾したケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機的に修飾したモンモリロナイト粘土、ケイ酸アルミニウム水和物、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびエチレングリコールモノステアラート。
【0103】
本明細書で説明する特定の化合物はまた、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、および多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で局所投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0104】
他の製剤
本発明の化合物の全身送達を達成するのに有用な他の組成物には、舌下、頬側、および経鼻投与剤形が含まれる。このような組成物は一般に、スクロース、ソルビトール、およびマンニトールなどの可溶性充てん物質、ならびにアラビアゴム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤の1つまたは複数を含む。上記に開示した流動促進剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、酸化防止剤、および矯味剤もまた含めることができる。
【0105】
吸入用の組成物は一般に、乾燥粉末として投与されるか、または通常の噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタン)を用いたエアロゾルの形態で投与されることができる液剤、懸濁剤、または乳剤の形態で提供することができる。
【0106】
本発明の組成物はまた、任意選択で活性促進剤を含むこともできる。活性促進剤は、本発明の化合物の抗菌効果を高めるように様々な様式で機能する多種多様の分子から選択することができる。活性促進剤の具体的な部類には、皮膚浸透促進剤や吸収促進剤が含まれる。
【0107】
式Iの化合物を含む医薬組成物はまた、本発明の化合物の治療効果を高めるように様々な様式で機能することができる多種多様の分子から選択され得る追加の活性薬剤を含むこともできる。存在する場合、任意選択のこれらの他の活性薬剤は、一般に、約0.01%〜約15%の範囲の濃度で本発明の組成物中で使用される。いくつかの実施形態では、組成物の約0.1%〜約10重量%の範囲で含まれる。他の実施形態では、組成物の約0.5%〜約5重量%の範囲で含まれる。
【0108】
パッケージ化された製剤
本発明は、パッケージ化された医薬製剤を含む。このようなパッケージ化された製剤は、疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンを用いた治療に応答する疾患もしくは障害および/またはベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドを用いた治療に応答する疾患もしくは障害に罹患した哺乳動物を治療するための、あるいは患者におけるこのような疾患または障害を予防するための、1つまたは複数の式Iの化合物、その塩、または他の医薬上許容されるその形態物を容器中に含み、かつ、任意選択でその組成物を使用するための使用説明書を含む医薬組成物を含む。パッケージ化医薬製剤は、細菌感染症、あるいはプロテインキナーゼC活性、トポイソメラーゼIおよび/もしくはII活性、または細胞毒性が関わる疾患または障害に罹患した患者を治療するために、その組成物を使用するための使用説明書を含むことが好ましい。
【0109】
好ましくは、哺乳動物はヒト患者であるが、任意の哺乳動物、例えばネコもしくはイヌなどの飼いならされたコンパニオンアニマル、またはブタ、ウマ、もしくはウシなどの家畜動物であってもよい。
【0110】
特定の実施形態では、パッケージ化医薬組成物は、癌、歯周病、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、AIDS、双極性障害、または統合失調症に罹患した患者を治療するために、その組成物を使用するための使用説明書を含む。
【0111】
本発明は、例えば患者または健康管理提供者に、またはパッケージ化医薬製剤のラベルとして、処方情報を提供することを含む。処方情報には、例えば、効能、投与量、ならびに医薬製剤に関連する投与情報、禁忌および副作用情報が含まれ得る。
【0112】
上記のすべてにおいて、本発明の化合物は、単独で、混合物として、または他の活性薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0113】
治療方法
特定の態様では、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、プロテインキナーゼC、トポイソメラーゼIおよび/もしくはII調節に応答する疾患または障害を治療するかあるいはその進行を阻止するための方法が提供される。すなわち、本明細書で提供する治療方法は、すでに疾患に罹患した患者を治療するのに用いてもよいし、あるいは検出可能な細菌感染症、真菌感染症、またはプロテインキナーゼC、トポイソメラーゼIおよび/もしくはII調節に伴う疾患にかかっていない患者のこのような疾患の発病を予防または遅延させるのに用いてもよい。調節は、阻害または活性化を指す。本明細書で説明する式Iの特定の好ましい化合物は、プロテインキナーゼC、トポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼIIの強力な阻害剤である。
【0114】
プロテインキナーゼC、トポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼII調節に応答する疾患ならびに障害には、(それだけに限らないが)糖尿病性血管疾患、糖尿病性黄斑浮腫、および糖尿病性神経障害を含む糖尿病に関連する疾患;白血病、特に急性骨髄性白血病、非小細胞肺癌、および子宮頸癌を含む癌;アレルギー性炎症、アレルギー性皮膚病、アレルギー性呼吸器疾患、および喘息を含む炎症状態;双極性障害、注意力欠如障害、老人性認知症、統合失調症の陰性症状、不安障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、およびアルツハイマー型認知症を含む精神神経疾患;ならびに神経因性疼痛、特に温熱性痛覚過敏が含まれる。これらの病態は、当技術分野で確立されている基準を用いて診断し、モニターすることができる。
【0115】
本発明は、哺乳動物に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、細菌感染症、真菌感染症、またはプロテインキナーゼC、トポイソメラーゼIおよび/もしくはトポイソメラーゼII調節に応答する疾患または障害を有する哺乳動物を治療する方法を提供する。哺乳動物は、一般にヒト患者であるが、飼いならされたコンパニオンアニマル(イヌなどのペット)および家畜動物を治療する方法もまた、本発明の範囲内である。
【0116】
投薬の頻度は、使用する化合物、および治療または予防しようとする具体的な疾患に応じて変わり得る。一般に、ほとんどの障害の治療のためには、1日に4回以下の投薬計画が好ましい。精神神経疾患の治療のためには、1日に1回または2回の投薬計画が特に好ましい。しかし、任意の特定の患者のための具体的な用量レベルは、具体的な使用化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の時間、投与経路、排出速度、薬物併用、および治療を受ける患者の具体的な疾患の重篤度を含む様々な因子に依存することになることを理解されよう。特定の実施形態では、食事の際の投与が好ましい。一般に、効果的な治療を提供するのに十分な最少投薬量を用いることが好ましい。一般に、治療有効性について、治療または予防される病態に適したアッセイを用いて、患者をモニターすることができ、このようなアッセイは当業者によく知られている。
【実施例】
【0117】
概略スキーム1。ベンゾ[C]フェナントリジニウムのその疑似塩基への変換
ベンゾ[C]フェナントリジン
水は、ケレリスリンと、NMR試験で確認可能な不安定付加物を生成する。6−メトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリンおよび6−エトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリンは、赤根草からのこれらのアルカロイドのメタノールおよびエタノール抽出を含む血根草抽出工程で生成する副生成物として報告されている。
【0118】
生体媒質中で平衡
【化10】

を樹立することができる弱い求核剤(RH)を適切な溶媒中で親ベンゾ[c]フェナントリジニウムと反応させると、疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンが生成すると考えられている。これらの反応には非極性溶媒がしばしば使用される。一般に、弱い求核剤は、水に対して8〜25、より好ましくは水に対して10〜22のpKaを有する。その付加反応はスキーム1に示されている。
【化11】

【0119】
(実施例1)
ベンゾ[C]フェナントリジン疑似塩基の調製
疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンを調製するための複数の方法を以下の方法A〜Fで提供する。
【0120】
方法A:0.1N NaOH溶液(1mL)を、1−ブタノール(1mL)中のケレリスリンクロリド(30mg)の懸濁液に加える。混合物を室温で22時間激しく撹拌する。白色固体をろ取し、水で洗浄し、乾燥させて6−ブトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン(20.3mg、62%)を得る。
【0121】
方法B:6−メトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン(10mg)を、2−プロパノール(1mL)中で2時間加熱還流する。溶媒を除去して6−イソプロポキシ−5,6−ジヒドロケレリスリンを灰白色固体(4.8mg、45%)として得る。
【0122】
方法C:N−ブチルリチウム(ヘキサン中に1.6M、0.2mL、0.32mmol)を、THF(2mL)中の3−ヘキサノール(31.9mg、0.31mmol)の溶液に加える。混合物を数分間撹拌し、続いてケレリスリンクロリド(40mg、0.10mmol)を加える。反応液を2時間撹拌し、次いで溶媒を除去する。残留物を、水(1mL)と3−ヘキサノール(1mL)との混合液中、室温で3日間撹拌する。灰白色スラリーをろ過し、水で洗浄し、乾燥させて6−(3−ヘキソキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン(17.4mg、37%)を得る。
【0123】
方法D:アセトニトリル(2mL)中のケレリスリンクロリド(40mg、0.10mmol)と4−ピペリジノピペリジン(175mg、1.0mmol)との反応混合物を室温で一晩撹拌する。灰白色固体をろ過し、アセトニトリルで洗浄し、乾燥させて6−N−(4−ピペリジノピペリジン−1イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン(35.9mg、67%)を得る。
【0124】
方法E:アセトニトリル(2mL)中のケレリスリンクロリド(30mg、0.078mmol)と1−ヘキサンチオール(92mg、0.78mmol)との黄色懸濁液に、1滴のトリエチルアミンを加える。反応液は急速に無色溶液となる。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで溶媒を除去する。残留物をメタノール中で粉砕し、ろ過する。固形物をメタノールで洗浄し、乾燥させて6−(ヘキシルチオ)−5,6−ジヒドロケレリスリン(10mg、28%)を得る。
【0125】
方法F:鉱油中の水素化ナトリウム60%分散液(10.4mg、0.26mmol)および無水DMF(5mL)を乾燥した反応容器に入れる。次いでヘプタン(3滴)を加え、反応混合物を撹拌する。シリンジでマロン酸ジエチル(91.6mg、0.57mmol)を加える。ガスの発生が停止した後、ケレリスリンクロリド(100mg、0.26mmol)を加え、反応液を窒素雰囲気下、室温で、黄色い色が完全に消失するまで撹拌する。氷水(5mL)を加えて反応液をクエンチする。乳状の懸濁液を白色懸濁液になるまで室温で撹拌する。固体をろ取し、水で洗浄し、これを一定重量になるまで乾燥させて、所望のケレリスリンジエチルマロナート疑似塩基(107mg、81%の収率)を得る。
【0126】
(実施例2)
他の疑似塩基ベンゾ[C]フェナントリジン
実施例1で説明した方法A〜Fによって、表IIに示す化合物を作製する。
【表2】















【0127】
式1および2の化合物もまた、スキームIに示す方法によって調製される。
【化12】

【0128】
式中、−Aは−O−、−NH−、−SO−、−O(C=O)−、−O(SO)−または−NH(C=O)−であり、Bは−CH、−CH(CH)(CHCH)、−CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−(CHCH、−CH(CH、3−ペンチル、シクロペンチル、フェニル、ピリド−2−イル、5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル、5−(トリフルオロメチル)ピラジン−2−イル、2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ、3−(トリフルオロメチル)フェニル、1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル、またはチアゾール−5−イルである。
【0129】
式4、5または6の化合物もまた、スキームIに示す方法によって調製される。
【化13】

【0130】
式中、Rは
【化14】

である。
【0131】
(実施例3)
疑似塩基に対するCACO−2単分子層の透過性
ベンゾ[C]フェナントリジニウム誘導体
Caco−2細胞単分子層を通過する受動拡散は、親フェナントリジニウムアルカロイドに対する疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンの細胞膜透過性を評価するために使用することができる。Caco−2細胞は、24ウェル型Corning Costar Transwell(登録商標)フィルターに予めプレーティングした形で、In Vitro Technologies, Cantonsville、MDから入手できる。試験化合物をTHFで希釈し、10%FBSを含む培地に加える。最終試験化合物濃度は1μg/mlである。試験化合物/培地混合物をCaco−2細胞transwellプレートの上部ウェルに加え、5%CO雰囲気下、37℃で緩やかに振とうさせながら、プレートをインキュベーションする。transwellプレートの下部ウェル中の試験化合物濃度を、インキュベーション後2、4、6および24時間でLC/MSにより判定して対照と比較する。それぞれの疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジン化合物について、対照は、親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイドである。
【0132】
(実施例4)
疑似塩基ベンゾ[C]フェナントリジンの抗菌活性
本明細書で説明する化合物の抗菌活性は、目視による最小阻害濃度(MIC)アッセイによって評価することができる。このアッセイは、細菌株の増殖を阻害するのに必要な化合物の最小濃度を決定する。
【0133】
試験化合物を非極性溶媒に溶解し、1:50でミューラーヒントンIIブロス(Mueller−HintonIIブロス(Becton−Dickinson))に希釈して、256μg/mlストック溶液を作製する。化合物溶液を、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、ミューラーヒントンIIブロス中に連続希釈する。化合物を希釈した後、マイクロタイタープレートの各ウェルに、50μlの分量の試験生物(約1×10cfu/mL)を加える。最終試験濃度は0.125〜128μg/mLの範囲である。植菌したプレートを、周囲空気中、37℃で18〜24時間インキュベーションする。試験用に選択した生物には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および大腸菌(E.coli)が含まれる(実験室株はAmerican Type Culture Collection, Manassas, VAから購入することができる)。最小阻害濃度(MIC)は、試験生物の目視可能な増殖を阻害する化合物の最低濃度として測定される。親ベンゾ[c]フェナントリジニウムの抗菌活性は当技術分野でよく知られている。それらの親ベンゾ[c]フェナントリジニウムに変換されると、本明細書で記載の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、それらの親化合物と類似した抗菌活性を示す。
【0134】
(実施例5)
トポイソメラーゼI阻害アッセイ
疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンによるトポイソメラーゼI活性阻害を確認するためには、基本的にはPradoら、Bioorg.Med.Chem.12:3943〜3953頁(2004年)に記載されている以下のアッセイを用いることができる。超らせんDNAは、活性トポイソメラーゼIによってほどかれた(uncoiled)DNAよりもゆっくり移動する。したがって、対照と比較して遅く移動する「超らせん」DNAのレベルが高いことは、トポイソメラーゼIの阻害を示している。
【0135】
組み換えトポイソメラーゼIタンパク質は、当技術分野でよく知られている方法で、バキュロウイルス感染Sf9細胞から産生され、精製される。超らせんpKMp27 DNA(0.4μg)を、様々な濃度の式Iの化合物またはその化合物の親ベンゾ[c]フェナントリジニウムアルカロイド(対照)の存在下、緩衝液(50mMトリス pH7.8、50mM KCl、10mM MgCl、1mMジチオスレイトール、1mM EDTA)中で、4単位のトポイソメラーゼIと共に、37℃で1時間インキュベーションする。SDSを0.25%まで、およびプロテイナーゼKを250μg/mLまで加えて反応を終了させる。次いで、DNA試料を電気泳動染料混合物(3μl)に加え、エチジウム含有1%アガロースゲル中、120V、室温で約2時間電気泳動させる。ゲルを洗浄し、UV光下で写真撮影する。親ベンゾ[c]フェントリジニウムのトポイソメラーゼI阻害活性は、当技術分野でよく知られている。親ベンゾ[c]フェントリジニウムへ変換されると、本明細書で記載の疑似塩基ベンゾ[c]フェナントリジンは、その親化合物と類似したトポイソメラーゼ阻害活性を示す。
【0136】
(実施例6)
模擬胃液(SGF)および模擬腸液(SIF)中におけるケレリスリン疑似塩基の親ケレリスリンへの変換
模擬胃液(SGF):塩化ナトリウム(2gm)、750mLの蒸留水、および7.0mLの濃塩酸を1000ml容量フラスコに入れる。フラスコを振って混合し、蒸留水で容積を1000mLにする。pHは約1.2にしなければならない。
【0137】
模擬腸液(SIF):第一リン酸カリウム(6.8gm)と水酸化ナトリウム(0.616gm)とを1000ml容量フラスコ中の250mLの蒸留水に加え、これを振って溶解させる。700ml蒸留水を加え、pHをチェックする。0.2N水酸化ナトリウムかまたは0.2N塩酸を加えて、pHをpH6.8+/−0.1に調整し、容積を1000mlにする。
【0138】
一般的変換手順:疑似塩基を約0.2mg/mL濃度でSGFまたはSIFに入れ、緩やかに撹拌しながら37℃浴中に置く。水への低い溶解度を有する疑似塩基については、メタノールなどの共溶媒を最大で20%加えて溶解し易いようにする。変換の進行は、目視(色の変化)とH NMR分析によって追跡する。
【0139】
6−tert−ブトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン(1mg)を、ガラス製バイアル中の5mLの模擬胃液中に入れる。緩やかに撹拌しながら、バイアルを37℃浴に静かに置く。固体疑似塩基は徐々に溶解して、黄色溶液を生じる。この色は、親ケレリスリンクロリドに特徴的な色である。2時間後、試料を蒸発させて乾燥させ、H NMR分析用のために残留物をDMSO−d中に溶解させた。この分析により、ケレリスリンクロリドへ完全に変換していることが示された。
【0140】
N−(イソプロピル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン(1mg)を、ガラス製バイアル中の5mLの模擬腸液中に入れる。緩やかに撹拌しながら、バイアルを37℃浴に静かに置く。固体疑似塩基は徐々に溶解して、黄色溶液を生じる。この色は、親ケレリスリンクロリドに特徴的な色である。4時間後、試料を蒸発させて乾燥させ、H NMR分析のために残留物をDMSO−d中に溶解させた。この分析により、ケレリスリンクロリドへ完全に変換していることが示された。
【0141】
6−ジエチル−(5,6−ジヒドロケレリスリン)−マロナート(1mg)を、10%メタノールを含むガラス製バイアル中の5mLの模擬胃液中に入れる。緩やかに撹拌しながら、バイアルを37℃浴に静かに置く。固体疑似塩基は徐々に溶解して、黄色溶液を生じる。この色は、親ケレリスリンクロリドに特徴的な色である。16時間後、試料を蒸発させて乾燥させ、H NMR分析のために残留物をDMSO−d中に溶解させた。この分析により、ケレリスリンクロリドへ完全に変換していることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物または医薬上許容されるその塩
【化1】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはC〜Cアルキルエステルであるか、または
およびRは−O−CH−O−基によって連結されており、
は水素またはメトキシであり、
およびRは、独立に、メチルもしくは水素であるか、または
およびRは結合して、さらなるヘテロ原子を含まない5員複素環を形成しており、
Rは、
(i)式−ABで表される基
[式中、
Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−CHC(=O)−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−OS(O)−、−NR(S=O)NR−、−O(C=O)−、または−NR(C=O)NR−(mは、0、1または2である)であり、
Bは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(炭素環)C〜Cアルキル、または(複素環)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されており、但し、Aが−O−である場合、Bは、C〜Cアルキル、n−プロピル、またはアセチルではない]、
(ii)
【化2】

(iii)少なくとも1個の窒素環員、ならびにN、OおよびSから独立に選択される0、1または2個のさらなる環員を有する5員ヘテロアリール基であって、前記5員ヘテロアリール基が、窒素原子を介して結合しており、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている5員ヘテロアリール基;あるいは、
(iv)窒素原子を介して連結されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基であって、前記ヘテロシクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ならびに5員および6員ヘテロシクロアルキルから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基であり、
、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、水素であるか、または、
〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、もしくはフェニルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている]。
【請求項2】
およびRが、それぞれ独立に、水素、メチル、またはメトキシである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
次式
【化3】

を有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項4】
次式
【化4】

を有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項5】
およびRがどちらもメトキシであり、Rが水素であるか、または
が水素であり、RおよびRがどちらもメトキシである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項6】
Rが、(i)式−ABで表される基である、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項7】
Aが、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S−、または−O(C=O)−である、請求項4に記載の化合物または塩。
【請求項8】
Bが、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、または(ヘテロアリール)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている、請求項6または7に記載の化合物または塩。
【請求項9】
Bが、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ピロリジニル)C〜Cアルキル、(ピペリジニル)C〜Cアルキル、(ピペラジニル)C〜Cアルキル、(モルホリニル)C〜Cアルキル、(ピリジル)C〜Cアルキル、(チエニル)C〜Cアルキル、(ピロリル)C〜Cアルキル、(フラニル)C〜Cアルキル、(イミダゾリル)C〜Cアルキル、(チアゾリル)C〜Cアルキル、(ピリミジニル)C〜Cアルキル、または(ピラジニル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている、請求項6に記載の化合物または塩。
【請求項10】
およびRがどちらもメトキシであり、Rが水素であるか、または
が水素であり、RおよびRがどちらもメトキシであり、
Rが、(i)式−ABで表される基
(式中、
Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S−、または−O(C=O)−であり、
Bは、C〜Cアルキル、(フェニル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(ピリジル)C〜Cアルキル、(イミダゾリル)C〜Cアルキル、(チアゾリル)C〜Cアルキル、または(ピリミジニル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ならびにトリフルオロメトキシから独立に選択される0〜2個の置換基で置換されている)
である、請求項4に記載の化合物または塩。
【請求項11】
Rが、(ii)次式の基
【化5】

である、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項12】
Rが、
【化6】

(式中、Rは水素であり、RおよびRは、独立に、C〜Cアルキルまたは非置換フェニルである)
である、請求項11に記載の化合物または塩。
【請求項13】
、R、R、RおよびR10が、独立に、
水素であるか、または
〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、または(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜2個の置換基で置換されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項14】
、R、R、RおよびR10が、それぞれ独立に、水素またはC〜Cアルキルである、請求項13に記載の化合物または塩。
【請求項15】
Rが、(iii)少なくとも1個の窒素環員、ならびにN、OおよびSから独立に選択される0、1または2個のさらなる環員を有する5員ヘテロアリール基であって、前記5員ヘテロアリール基が、窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項16】
Rが、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、またはイソオキサゾリルであり、そのそれぞれが、窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、ならびにトリフルオロメトキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている、請求項14に記載の化合物または塩。
【請求項17】
Rが、(iv)窒素原子を介して結合している5員または6員ヘテロシクロアルキル基であり、前記ヘテロシクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、ならびに5〜6員ヘテロシクロアルキルから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項18】
Rが、モルホリニル、ピペリジニル、またはピロリジニルであり、そのそれぞれが、窒素原子を介して結合しており、かつ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ならびにピペリジニルから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている、請求項17に記載の化合物または塩。
【請求項19】
RHが8〜25のPKaを有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項20】
RHが10〜22のPKaを有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項21】
次式
【化7】

(式中、R、R、R、RおよびRはすべて請求項1に記載の化合物と同じ定義を有する)
を有する化合物より大きい細胞膜透過度を有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項22】
次式
【化8】

(式中、R、R、R、RおよびRはすべて請求項1に記載の化合物と同じ定義を有する)
を有する化合物と比較して、25℃においてより大きいn−オクタノール−水分配係数を有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項23】
次式
【化9】

(式中、R、R、R、RおよびRはすべて請求項1に記載の化合物と同じ定義を有する)
を有する化合物より高い安定性または長い保存寿命を有する、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項24】
6−(2−ブトキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−ブトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−イソプロポキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−ペントキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
N−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
N−(5−(トリフルオロメチル)ピラジン−2−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
N−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
6−(フェニルスルホニル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル−N−(5−(トリフルオロメチル)ピラジン−2−イル)アセトアミド;
N−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル−アセトアミド;
N−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル−N−メチルアセトアミド;
6−プロポキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−(シクロペンチルオキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−フェノキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−(ピリジン−2−イルオキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−N−(ピリジン−2−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルアセタート;
5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル安息香酸;
5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルベンゼンスルホナート;
6−(3−ペントキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
N−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル)ベンズアミド;
2−(ジエチルアミノ)−N−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル)アセトアミド;
N−(チアゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
1−N−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
6−(4−(トリフルオロメチル)−1H−イミダゾール−1−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
2−(5,6−ジヒドロニチジン−6−イル)−N,N−ジメチル−3−オキソブタンアミド;
2−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イル)−N,N−ジメチル−3−オキソブタンアミド;
6−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルオキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−ヘキソキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−イソペントキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−tert−ブトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−N−(ピペリジン−1−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−モルホリノ−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−N−(4−ピペリジノピペリジン−1−イル)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
メチル 2−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルアミノ)安息香酸;
6−(ヘキシルチオ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
N−(イソプロピル)−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
6−(シクロヘキソキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−(3−ヘキソキシ)−5,6−ジヒドロケレリスリン;
N−ピリミジン−2−イル−5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミン;
3−(トリフルオロメチル)ベンズアミド−5,6−ジヒドロケレリスリン;
6−ジフェニル−(5,6−ジヒドロケレリスリン)−マロナート;
エチル−3−(5,6−ジヒドロケレリスリン−6−アミノ)−プロパノアート;または
6−ジエチル−(5,6−ジヒドロケレリスリン)−マロナート
である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項25】
少なくとも1つの医薬上許容される担体と共に、請求項1に記載の化合物または塩を含む医薬組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの医薬上許容される担体と共に、次式を有する化合物または医薬上許容されるその塩を含む医薬組成物
【化10】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、もしくはC〜Cアルキルエステルであるか、または
およびRは−O−CH−O−基によって連結されており、
は水素またはメトキシであり、
およびRは、独立に、メチルもしくは水素であるか、または
およびRは結合して、さらなるヘテロ原子を含まない5員複素環を形成しており、
Rは、
(i)式−ABで表される基
(式中、Aは、−NR−、−O−、−NR(C=O)−、−S(O)−、−CHC(=O)−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−OS(O)−、−NR(S=O)NR−、−O(C=O)−、または−NR(C=O)NR−(mは、0、1または2である)であり、
Bは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(炭素環)C〜Cアルキル、または(複素環)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されているか、あるいは
Bは5,6−ジヒドロケレリスリン−6−イルである)
(ii)
【化11】

(iii)少なくとも1個の窒素環員、ならびにN、OおよびSから独立に選択される0、1または2個のさらなる環員を有する5員ヘテロアリール基であって、前記5員ヘテロアリール基が、窒素原子を介して結合しており、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜3個の置換基で置換されている5員ヘテロアリール基;あるいは
(iv)窒素原子を介して連結されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基であって、前記ヘテロシクロアルキルが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエステル、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、および5〜6員ヘテロシクロアルキルから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている5員または6員ヘテロシクロアルキル基
であり、
、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、
水素であるか、または
〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルカノイル、(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキル、もしくは(ヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルであり、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ−およびジ−(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、ならびにC〜Cハロアルコキシから独立に選択される0〜4個の置換基で置換されている]。
【請求項27】
前記化合物が、6−メトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリン、6−メトキシ−5,6−ジヒドロニチジン、または6−エトキシ−5,6−ジヒドロケレリスリンである、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
経口投与用に製剤化された、請求項25から27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
丸薬、錠剤、またはカプセル剤として製剤化された、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項30】
腸溶性コーティング剤形として製剤化された、請求項25または26に記載の医薬製剤。
【請求項31】
治療有効量の請求項1に記載の化合物または請求項19から24のいずれか1項に記載の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の細菌性または真菌性感染症を治療する方法。
【請求項32】
治療有効量の請求項1に記載の化合物もしくは塩または請求項19から24のいずれか1項に記載の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、癌または炎症性疾患に罹患した哺乳動物を治療する方法。
【請求項33】
前記哺乳動物がヒト患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
有効量の請求項1に記載の化合物もしくは塩または請求項25から30のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、双極性障害、注意力欠如障害、または統合失調症に罹患した患者を治療する方法。

【公表番号】特表2009−545594(P2009−545594A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522837(P2009−522837)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/017095
【国際公開番号】WO2008/016596
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509031132)マリナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】