説明

改善された外部ベース領域を備えたバイポーラ接合形トランジスタ及びその製造方法

バイポーラトランジスタ及びその製造方法に関する。第1のエピタキシャル層(23)上への第2の、より高濃度にドープされたエピタキシャル層の成長によって、外部ベース領域(40)が形成される。第2のエピタキシャル層は上にあるポリシリコンエミッタ台座(28)の下まで広がり、かつ、この台座(28)から絶縁される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイポーラトランジスタの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラトランジスタ、特に高性能のバイポーラ接合形トランジスタの設計及び製造においては、ベース領域の設計及び製造がトランジスタの性能を決める上で特に重要である。
【0003】
しばしば、内在ベースの幅を低減することによって性能向上が達成される。しかし、これは、内在ベースの抵抗及び連結ベースの抵抗を必然的に増大させる。もし、この領域への追加ドーパントを組み入れることによって内在ベース抵抗が低減されると、内在ベースの幅は増大し性能低下を伴うことになる。このように、内在ベース領域のみを変化させても性能改善は困難であることが多い。
【0004】
外部ベース領域の抵抗を低減することによっても性能向上を得ることが可能である。典型的に、外部ベース領域は熱的に活性化されたドーパントのイオン注入によって形成される。このことは、不要な横方向拡散及び高温処理の必要性を含むそれ自体の問題をもたらす。従来技術での外部ベース領域のイオン注入に関連する問題が図1と関連させながら議論される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された外部ベース領域を備えたバイポーラトランジスタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の記載において、バイポーラトランジスタの製造方法及びその構造について述べる。具体的なドーピングレベルなどの多くの具体的な詳細事項が本発明の完全な理解のために説明されるが、当業者にとって、本発明がこれらの具体的な詳細事項なしでも実施され得ることは明らかであろう。他の事例において、半導体集積回路の製造に用いられる周知の処理については、本発明を不必要に不明瞭なものとしないために詳細には述べないこととする。さらに、以下の記載では、NPNトランジスタの情報及び構造が述べられるが、当業者にとって、その記載がPNPトランジスタの形成にも適用可能であることは明らかであろう。
【0007】
本発明の実施形態について述べる前に、従来技術でのバイポーラトランジスタに関連する問題について図1と関連させて述べる。
【0008】
図1において、NPNトランジスタのコレクタが基板10に形成されている。基板はN型ドーパントでドープされた単結晶シリコン基板から成る。トランジスタは基板10に形成された2つの分離領域16の間に形成されている。
【0009】
図1のトランジスタの形成において、エピタキシャル層が基板10に成長される。この層はシリコンゲルマニウム層とし得る。そして、トランジスタのベース及びエミッタ領域がこの層に形成される。トランジスタのベース領域は内在ベース領域13、連結ベース領域14、及び外部ベース領域15を有する。
【0010】
エミッタ領域12は酸化膜17に開口を定め、ドープされたポリシリコンのエミッタ台座を形成し、かつエミッタ領域12を作成するために台座からドーパントをドライブインすることによって作成される。
【0011】
エミッタが形成された後に、外部ベース領域15の抵抗を低減するために、例えばボロンがスペーサ18と整合されてイオン注入される。
【0012】
多くの問題がこのイオン注入に関連する。第1に、注入されたドーパントが充分に活性化されることができない。第2に、イオン注入のためにダメージが内在ベース領域に導入されてしまい、それにより高品質な内在ベース領域13の形成を制約してしまう。第3に、重要な寸法及び見当合わせを実現するためには寸法に余裕を設ける必要がある。このことは、外部ベースの長さ及びトランジスタの全体サイズを大きくしてしまう。より大きいサイズはベース及びコレクタの抵抗、並びに、ベース−コレクタ間及びコレクタ−基板間の静電容量を増大させてしまう。従って、性能、特に最大発振周波数Fmaxが低下してしまう。最後に、ドーパントを活性化させるために比較的高い温度が必要であるために、厳しい熱的な制約が課されてしまう。横方向拡散が避けられないことは、濃くドープされた外部ベース領域15の急峻性を低下させ、それによって、たとえ比較的高いドーピングレベルであっても抵抗を増大させてしまう。
【0013】
後述のように、本発明は外部及び連結ベース領域の要点での抵抗を低減し、それによって、デバイスの遮断周波数(Ft)に影響を及ぼすことなくFmax及び全体的なノイズ性能を向上させるものである。
【0014】
本発明の一実施形態のためのトランジスタの製造は、最初は、従来と同様の手法で始められる。第1に、1対の空間的に離れた分離領域22が図2に示されるように単結晶シリコン基板20に製造される。分離領域22は酸化物で満たされたトレンチとし得る。基板20は、記載された実施形態では、トランジスタのコレクタ領域を規定するためにN型ドーパントでドープされる。
【0015】
次に、図3に示されるように、エピタキシャル層23が基板20に成長される。一実施形態では、通常の約1000Å厚さのエピタキシャル層が成長される。層23は例えばボロンでドープされる。層23におけるドーパントの濃度分布はこの層の下側の領域でより多くのドーパントを与え、この層の上側の領域でより少ないドーパントを与える。この濃度分布のためのP型ドーパントはドーピングレベルのピークとして、例えば約1018乃至1019cm-3のドーピングレベルを有してもよい。一実施形態において単結晶層23はシリコンゲルマニウムから成る。
【0016】
そして、図4に示されるように、層23は単一のトランジスタに限られた領域を覆うエピタキシャル層23を形成するようにパターン化される。(層を識別するために用いられた番号はまた、エッチング又はパターン形成後に残る層の部分を指定するためにも用いられている。従って、番号“23”はエッチング前の層及びエッチング後に残存している層の部分を指定するために用いられている。)図4の断面図には、層23の1つの範囲のみが示されているが、層23及びその他の層はまた、第2の範囲でもパターン化されることは理解されるであろう。
【0017】
層23がエッチングされた後、酸化膜25が基板を覆うように堆積される。酸化膜25は化学的気相成長法(CVD)で堆積された二酸化シリコン層とし得る。酸化膜25は開口26が得られるようにパターン化される。開口26は後述のように、エミッタ領域を層23に製造することを可能にする。例として、開口26は直径で1000Åとし得る。
【0018】
そして図5に示されるように、例えば1700乃至2000Åの厚さのポリシリコン層28が図4の構造を覆うように堆積される。ポリシリコン層28は、その堆積される最中に、又はその堆積後にN型ドーパントをイオン注入することによって、ヒ素等のN型ドーパントでドープされる。そして、ハードマスクを形成するために用いられる層29が、層28上に堆積される。窒化シリコン等の材料が層29に用いられ得る。層29はパターン化されてマスクとなり、図6の台座28を定めるために用いられる。加えて、台座が図6に示される酸化物領域25上に置かれるように、下地の酸化膜25がパターン化される。
【0019】
ドーパントが台座28からエピタキシャル層23内へドライブインされ、図6のN型エミッタ領域30を規定する。通常の熱処理が用いられる。典型的に、エミッタ領域が形成された後に層23に残存する内在ベース領域の幅は700乃至800Åである。
【0020】
次に、図7に示されるように、この場合も例えばCVD二酸化シリコン膜等のもう1つの酸化膜32が図6の構造を覆うように堆積される。そして、例えばドライプラズマエッチング処理等の通常の異方性エッチングを用いて層32がエッチングされる。スペーサ32がこのエッチングで残存し、台座28の側面に垂直に配置される。従って、図8に最もよく示されるように、台座構造はエミッタ台座28、側壁スペーサ32、及びエミッタのための開口を規定する下地領域25を含む。
【0021】
続いて、エピタキシャル層23をスペーサ32に整合させてエッチングするために、等方性エッチングが用いられる。これもまたプラズマエッチング処理とし得る。酸化物とシリコンとの間の選択性があるエッチング液が用いられる。この結果、図9の寸法35で示されるようにエピタキシャル層23が薄くされ、かつ、図9のアンダーカット36で示されるようにスペーサの下が除去される。注目すべきは、このエッチング中、ハードマスク29がポリシリコンの台座28を保護することである。また、台座28の下に位置する酸化物領域25が台座と層23との間に寄生の経路が形成されるのを防止することである。アンダーカット36は垂直の表面を有するように示されているが、上部でより多く落とされて若干湾曲していてもよい。エッチング化学反応はこのアンダーカットが可能な限り垂直を維持するように調整されてもよい。
【0022】
図8及び9に2つの別個のエッチング処理、すなわちスペーサ32を形成するために用いられる1つ及びエピタキシャル層23をエッチングするためのもう1つ、が記述されているが、これらは単一のエッチングチャンバに結合されてもよい。例えば、エッチングチャンバへのガスの流れが酸化物層32のエッチング後に、層23のシリコンがエッチングされるように変えられてもよい。
【0023】
図10に示されるように、続いて第2のエピタキシャル層40が層23を覆うように成長される。これはエピタキシャル層の選択的成長、又は非選択的成長とそれに続く第2のエピタキシャル層のパターン形成を用いて為され得る。一実施形態において、層40は層23を種にした単結晶シリコンゲルマニウム層である。
【0024】
層40はNPNトランジスタの外部ベース領域である。層40はボロン等のP型ドーパントで非常に濃くドープされる。例えば、シリコンゲルマニウムの飽和ドーパントレベル近くまでその場(in-situ)ドーピングが起こり得る。1020乃至1021cm-3のレベル以上のドーピングが用いられ得る。ドーパントをイオン注入によって層40に導入することも可能である。必要な場合、層40はドーパントの混入を増加させるため及び移動度を高めるために歪みを持たされてもよい。層40はまた連結ベース領域まで及ぶ。
【0025】
重要なことは、図10からわかるように、このように形成された外部ベースはエミッタポリシリコン領域30に自己整合されていることである。従来技術と異なり、外部ベースのエミッタ領域に接近する横方向への拡張が存在しない。領域25が層40と台座28のエミッタポリシリコンとの間の分離をもたらす。また、層40は比較的垂直な側面及び平坦な底面を有し、そこで層23と組み合う。従って、ドーピングレベルが急峻に変化する。
【0026】
上述の自己整合プロセスを通して、外部ベース長の約30%の縮小、及びトランジスタ全体サイズの20%の縮小が実現される。図9の横方向のアンダーカット36、熱サイクル及び層40の成長条件を制御することによって、連結ベース領域の長さを縮小することが可能であり、元の層23上の層40の高さを増大させることが可能である。これらは全て、ベース抵抗の更なる低減をもたらす。
【0027】
このように、外部ベースが別個に形成されたエピタキシャル層であるところの、改善されたバイポーラトランジスタについて述べた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のバイポーラ接合形トランジスタの断面立面図である。
【図2】空間的に離れた分離領域を有する単結晶シリコン基板を例示する断面立面図である。
【図3】エピタキシャル層が成長された後の図2の基板を例示する断面立面図である。
【図4】エピタキシャル層がパターニングされ、並びに上を覆う酸化膜が形成かつパターニングされた後の図3の基板を例示する断面立面図である。
【図5】ポリシリコン層及びハードマスク層が堆積された後の図4の基板を例示する断面立面図である。
【図6】エミッタ台座の形成及びエピタキシャル層へのエミッタ領域の形成後の図5の基板を例示する断面立面図である。
【図7】追加の酸化膜が形成された後の図6の基板を例示する断面立面図である。
【図8】エミッタ台座の周りにスペーサが形成された後の図7の基板を例示する断面立面図である。
【図9】スペーサの下を除去することを含めてエピタキシャル層がエッチングされた後の図8の基板を例示する断面立面図である。
【図10】別のエピタキシャル層が成長された後の図9の基板を例示する断面立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラトランジスタの製造方法であって:
第1エピタキシャル層へのエミッタ領域の形成工程;
エミッタ台座構造をマスキング部材として用いる前記第1エピタキシャル層のエッチング工程;及び
前記第1エピタキシャル層への第2エピタキシャル層の成長工程;
を有する製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、前記エッチング工程が前記エミッタ台座構造にアンダーカットを設けるための等方性エッチングを含む、ところの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法であって、前記第2エピタキシャル層が前記第1エピタキシャル層より濃くドープされる、ところの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法であって:
前記エミッタ領域を露出する開口を有する酸化膜上にポリシリコン層を形成する工程;
前記ポリシリコン層から前記エミッタ台座を規定する工程;及び
前記エミッタ台座に酸化物側壁スペーサを形成する工程;
を有する製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、前記第1エピタキシャル層がシリコンゲルマニウム層である、ところの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法であって、前記第2エピタキシャル層がシリコンゲルマニウム層である、ところの製造方法。
【請求項7】
バイポーラトランジスタの製造方法であって:
コレクタ領域上に第1エピタキシャル層を形成する工程;
第1エピタキシャル層内のエミッタ領域、及び前記第1エピタキシャル層上のエミッタ台座の形成工程;
前記第1エピタキシャル層上の前記エミッタ台座に側壁スペーサを形成する工程;
前記側壁スペーサにアンダーカットを設けることを含む前記第1エピタキシャル層のエッチング工程;並びに
前記第1エピタキシャル層への第2エピタキシャル層の成長工程;
を有する製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法であって、前記第1エピタキシャル層及び第2エピタキシャル層が第1導電型のドーパントでドープされる、ところの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、前記第2エピタキシャル層が前記第1エピタキシャル層より濃く前記第1導電型のドーパントでドープされる、ところの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法であって、前記第2エピタキシャル層が前記第1エピタキシャル層の上面より高い面まで成長される、ところの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法であって、前記第1エピタキシャル層及び前記第2エピタキシャル層がシリコンゲルマニウムを有する、ところの製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載の製造方法であって、前記エミッタ台座が第2導電型のドーパントでドープされたポリシリコン層から形成される、ところの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、前記エミッタ領域及びエミッタ台座の形成工程が:
酸化膜を前記第1エピタキシャル層に形成すること;
前記酸化膜に前記エミッタ領域のための開口を規定すること;
前記酸化膜上に前記ポリシリコン層を形成すること;及び
前記エミッタ領域を定めるために前記第2導電型のドーパントを前記ポリシリコン層から前記第1エピタキシャル層にドライブインすること;
を有する、ところの製造方法。
【請求項14】
請求項7に記載の製造方法であって、前記エッチング工程が等方性エッチャントの使用を有する、ところの製造方法。
【請求項15】
請求項7に記載の製造方法であって、前記第1エピタキシャル層が前記トランジスタの内在ベース領域を含み、かつ連結ベース領域の少なくとも一部分を含む、ところの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法であって、前記第2エピタキシャル層が前記トランジスタの外部ベース領域を有する、ところの製造方法。
【請求項17】
単結晶連結ベース領域に隣接する比較的垂直な側壁を有する単結晶外部ベース領域を有するバイポーラトランジスタであって、前記外部ベース領域が前記隣接する連結ベース領域より濃くドープされている、ところのバイポーラトランジスタ。
【請求項18】
請求項17に記載のトランジスタであって、前記外部ベース領域が前記隣接する連結ベース領域のドーピングレベルの10倍以上のレベルでドープされている、ところのトランジスタ。
【請求項19】
請求項17に記載のトランジスタであって、エミッタ台座、前記エミッタ台座の側面の側壁スペーサ、及び前記エミッタ台座の下の酸化物領域であり、当該トランジスタのエミッタ領域に通じる開口を有する酸化物領域、を有するエミッタ台座構造を含み、前記外部ベース領域が前記側壁スペーサの下まで広がっている、ところのトランジスタ。
【請求項20】
請求項17に記載のトランジスタであって、前記単結晶外部ベース領域が当該トランジスタの前記連結ベース領域及び内在ベース領域を有する単結晶層を下にして配置されている、ところのトランジスタ。
【請求項21】
請求項20に記載のトランジスタであって、前記単結晶外部ベース領域が前記隣接する連結ベース領域のドーピングレベルの10倍以上のレベルでドープされている、ところのトランジスタ。
【請求項22】
請求項21に記載のトランジスタであって、前記外部ベース領域及びその下にある単結晶層がシリコンゲルマニウムである、ところのトランジスタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−512687(P2007−512687A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539799(P2006−539799)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037487
【国際公開番号】WO2005/050742
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(593096712)インテル コーポレイション (931)
【Fターム(参考)】